conceptbook 2018-2019 1225...

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2 0 1 8 - 2 0 1 9 後援 | 文部科学省     協力 | EDIBLE SCHOOLYARD JAPAN 音楽のちから GARAGE TOPYARD 西條鶴酒造 サタケ 山友会 酒類総合研究所 schop school スタトバン そごう西武 田村写真 茅山荘 藤源寺 にしき堂 日清製粉 NOMAD 福屋 福山通運 福山商店街 本郷林業 村上家住宅 モリウミアス 森の馬小屋 茂林寺

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学びは生活の中にあり

2018-2019後援 | 文部科学省   協力 | EDIBLE SCHOOLYARD JAPAN 音楽のちから GARAGE TOPYARD 西條鶴酒造

サタケ 山友会 酒類総合研究所 schop school スタートバーン そごう西武 田村写真 茅山荘 藤源寺 にしき堂

日清製粉 NOMAD 福屋 福山通運 福山商店街 本郷林業 村上家住宅 モリウミアス 森の馬小屋 茂林寺

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面白いだけじゃダメと言われる。

危ないことはしちゃダメと言われる。

人と違うことをしちゃダメと言われる。

漢字を覚えなくちゃダメと言われる。

ダメな事をしないようにルールを作る。

決まりを守ると好きなことが出来なくなる。

好きなことはルールが許可する。

そんな形だけの世界が人をダメにする。

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とりあえずはダメと言われる。目的をはっきりさせなさいと言われる。計画を提出しな

さいと言われる。そんな社会で育った子どもにとってとりあえずは不安で仕方ない。

そんな子ども達に、とりあえず羽田空港に22時集合と伝える。そしてとりあえずバンコク

行きの飛行機に乗る。

とりあえず

「勉強」を辞書で調べると、「将来役に立つことのために努力すること」「気が進まない

ことを、仕方なしにすること」とある。社会の評価軸は学力試験の成績を重んじる傾向

が強い。勉強が出来ないことは、個人の努力が足りない、あるいは、頭が悪いと考える人

が多いが、決してそうではない。総合点が悪くても、特定の分野だけでは突き抜けた成績

を収める人もいる。誰も興味を示さない役に立たないと思われることに必死に取り組む

人もいる。彼らは誰よりも探求し、発見と創造を繰り返している。「学び」の楽しさを知っ

ている人は放っておいても勉強を始める。

勉強と学び

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米やシャンプー、靴やパンツ、トイレやキッチン、植物や昆虫、政治や宗教。ありとあ

らゆるものを見比べては、その違いを感じ、考える時間。日本とネパールという世界の

片隅にあるこの国々を、小さなスポットで見ながら繋げていく。

同じものなのになぜ違う?単純比較だけでは見えない社会の繋がりを想像し、目では

見えない点線をつくっていく。100年前の暮らしが残る村を訪ね、そこに住む人達の

温かく柔らかな眼差しから幸せな生活をイメージする一方、集落の一角で手洗いの洗濯

で流れ出る汚水は一体どこに流れゆくのか想像を巡らせる。

ネパールでは誕生の末端に位置する「死」さえも命の循環の環の中で隅ではなくなり、

グルグルと廻っていく。そして焼かれた死者の灰は川へと流れ込みながら個人が全体へ

と融合され、また新たな生命へと生まれ変わる。

部分的に見れば辻褄が合って正しいことも、他との兼ね合いや全体の文脈の中では優先

順位や重要性は常に変動する。ネパールの隅から隅まで見渡しながら、子ども達は一面

的には決まらない相対的価値に気づいていく。

相対的価値を考えながら、その場その時の行動をどう創るのか。この自分ごとの思考

とアクションを生み出すためにROCKETでは学ぶ。経済、宗教、環境、教育、死生観

などの様々な隅っこから見えてくるのは、世の中の全体の輪郭の中にある異なる個々人

の数多の暮らし。それらの点在する点を繋ぐ見えない点線が何かを探す学びの扉は

いま開かれたばかりだ。

隅から隅まで

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バンコクに着いた子ども達はネパールルピーを大量に持っている事に気づく。しかし、

トランジットの時間のフードコートで食事をするのにネパールルピーは両替もできない。

日本に帰って、どうしてカトマンズを出るときに両替するように勧めてくれなかったのか

という声を聞いた。見方を変えればリアルな学びのチャンスである。「なぜバンコクで

両替できなかったのか?」「日本で両替するにはどうすればいいか?」「ネパールの人は

両替をどうしているのか?」という宿題を子どもに出した。日本のパスポートはビザなし

で渡航できる国の多さで世界一である。円もほとんどの国で両替できる。それは日本

人が長い時間かけて築いた国際的な信用の結果であることに気づいて欲しい。

ルピーからの学び

友達と群れるより一人が好きだと言う子どもが ROCKETには多い。そんな彼らが全国

各地からROCKET に集結する。付かず離れず距離感を保ちながら、自らの意思で

動き、自分の理想に向かい彼らは進んでいく。ROCKETをはじめて5年、最初は自信

なく歩いていた子ども達が、自分の道を堂々と進み始めている。彼らがどこかで手を

結び、進む時、日本が躍動していくにちがいない。

堂々と進め

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料理研究家は語る。同じように調理しても同じ味にはならない。何故なら食材の産地

や天候が違うから。その産地や食材の違いを楽しむのも食事であると。

親は語る。専門家の言う通りに子育てしたのに、思い通りに育たない。子どもの性格

や認知特性は皆違う。親は一生懸命育てるが、子どもは期待外れの方向に向かって

いく。それを楽しむのが子育てかもしれない。

期待外れを楽しむ

障害差別や人種差別を無くそう。これが学校で行われる多様性理解教育の柱である。

しかし、これらの多くは人種や障害というラベルを教えるに過ぎない。だから隣に座る

ユニークな子どもの理解にはなかなか結びつかない。

人は皆違う。例えば、同じように振舞うことが出来ても、意識せずにできる人と、必死

に頑張ってやっと出来る人がいる。このペースの違いを理解している人がどれだけ

いるだろうか? 真の多様性理解とは、障害や人種の違いを理解することではなく、

隣にいる人の性格や認知特性を理解し、その行動を認めることだと思う。

多様性の理解

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読みにくいけどおもしろい。

子どもの要望書

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答えを見つけるまでの決まった道筋なんてものはない。しかし、大人は子どもが失敗

しないルートを準備する。ROCKETはあえて子どもを幾つにも別れた道の入口に連れ

ていく。先の見えない道に飛び込む子ども達は、次第にいつもと違う道を進む楽しさ

に気づいていく。

ルート

古くからの商店街には驚くほどたくさんのものがある。ペンキ、仏壇、電動ドリル、水引

など新しいショッピングモールにはないものもある。かつてはこの雑多な世界の中で

子ども達は育った。

30店舗の商店から、3時間で100個の荷物を集めよ!

こんな任務を受けた子ども達は普段足が遠のいていた商店街に足を運び、店を回りな

がら、店主に商品の特徴や荷造りの手ほどきを受け、物を預かり届けた。それは店主

の商品への愛や人との関わりを感じる時間そのものだった。学校を飛び出し、商店街が

学び場に変わった時、彼らの学びも変わる。かつて当たり前にあった町中の学び場を、

時空を超えて繋げていくのがROCKETの役目なのかもしれない。

商店街

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ROCKETを開始しておよそ5年が過ぎた。異才は育ちましたか?と尋ねられる。

答えはNOである。異才は人と異なる才をもつ人である。もし親や教師の意図が働けば、

社会が理想とする普通の子どもに近づいていく。異才は子どものポテンシャルが開花

する環境に出会った時に生まれる偶然の産物だと思う。社会はPDCAで物事を動かせ

と言う。目的を明確に、短期に成果を求められる社会である。大人が理想とする環境

に子どもを押し込んでいく。ROCKET では、予期せぬ出会いや場所こそがすべてで

ある。その偶然の中で子どもが光を放つ。当然、右肩上がりの成長はない。浮き沈み

がある。長く寄り添うことがすべてである。

異才とは

「アメリカの老人ホームの孤独な老人」を「英語が話せる時間的余裕のある高齢者」と

捉え直したことで、オンライン英語塾の教師として仕事が生まれたという話を聞いた。

「明るく仲良く元気よく」をモットーに行われた教育に浸った人からは、「引きこもり」

には暗く一人で沈んでいるといったネガティブなイメージがつきまとう。見方を変えれば

彼らは「誰にも邪魔されず静かに熟考している」人達である。そう考えるだけでいつか

羽ばたく日を待とうと思えるようになる。

引きこもりは考える人

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「進まぬ工事にもう手を引こうかと思うとった。」

90才の炭焼職人の言葉に子ども達は覚悟を決めた。今度こそ、炭窯を仕上げるまで

帰れない。しかし、時に荒れ狂う自然は容赦ない。暴風雨は彼らをあざ笑うかのように

ブルーシートを幾度となくまくしあげた。粘土と火山灰を積み上げた窯の壁が水に濡れ

るとすべての努力が泡と化す。必死に自然に立ち向かう子ども達の姿がそこにあった。

ブルーに染まって

Project Based Learning

ROCKETの子ども達に与えられるのは文字からではなく活動からの学び。

2019年のPBLでは、以下の3つのミッションを達成することが求められた。

■ 炭焼き窯を再生せよ!

■ 30年前のMINIに息をふきこめ!

■ はしからはしへ

プロジェクトに没頭するその中で・・・

偶然起こる出会いとトラブルが感動と葛藤を呼び覚ます。

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子ども達は旅先で牧場に立ち寄った。バイオリンの音色が馬小屋から聞こえてくる。

美しい音色が現実と夢の境界を曖昧に揺らしていく。優しく激しく、高く低く、軽やか

に動く音が高く弾け出たその瞬間!

「ヒヒ~~~~~~~~~ン!!!」

けたたましい鳴き声と共に、馬が沈黙を破り、共演者となった。同じ音が響く度、馬も

呼応し歌い続けた。10年後、不思議な記憶を掘り起こし、無計画な旅に出る青年がいる

ならば、あの肌寒い夏の終わりの夜にかかった魔法のせいかもしれない。

偶然が生み出す感動という魔法に。

馬とバイオリン

「クラシックカーのレストア」をやっていると聞くと、誰もが胸を踊らして楽しげな車

いじりを想像する。だが華やかに見える世界の裏には想像以上に泥臭い作業が待っ

ていた。膨大な時間と労力を費やし、2年の歳月を経てようやくミニは完成した。錆び

ついて動かなかったミニは、子ども達に考えることを教える最高の教師でもあった。

ミニ先生

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鈴木康広/現代アーティスト

僕の作品は、見間違えや違和感を別の角度からすくいとる

ことから始まります。科学の発見にも、間違いや失敗から

うまれたものが少なくありません。無駄に思えるようなもの

に対して「それが何の役に立つのか?」と問われる社会の

中でこそ、不思議なことや、新しい物事を考えるための余白

や遊びが大切ではないでしょうか。

科学の大発見にアートは必要か

養老孟司/解剖学者

君達は、言葉の世界に依存しすぎているから、「生」と「死」

を明確にわけられると思っている。でも「人」の定義が怪

しくなってくるのが、死ぬところと、生まれてくるところ。

生と死の境目を明確に決めることはできないのです。言葉

がある上で物事を捉えるから、言葉を使う以上表せない

ことが出てくるのです。

バカの壁を崩せ

Top Runners Talk

iPS細胞の研究では、これまでにもルール破りがたくさん

ありました。人間と協業できるAIは、医療やバイオロジーを

根本から変えていくことになります。過去・現在・未来へと

ルールに沿って考えると、ルールが無いものはできないと

思って止まってしまう。未来から逆算して考えるなら、ルール

をつくってしまえばいい。行き当たりバッチリの時代です。

最先端の研究はルールを壊す髙橋政代/眼科医

お江戸日本橋をスタートした旅の最後の行程は大雪山の裏にある湖までの道。

上士幌町にある十勝西部森林管理署で借りた鍵で林道のゲートを開け、「熊出没中」

の看板を見ながら奥に進む。車を停め、森を歩いて抜けるとそこには言葉にならない

光景が広がっていた。タウシュベツ橋梁。なぜこんな橋があるのか?

そこで子ども達は、この橋が日本の産業の端でもあったことに気づく。

はしからはしへ

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