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私が考える総合診療 - Dr. Gが日本の医療を救う? - 平成261210洛和会音羽病院 感染症科 総合診療科 神谷 亨 高松赤十字病院学術講演会

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私が考える総合診療 - Dr. Gが日本の医療を救う? -

平成26年12月10日

洛和会音羽病院 感染症科 総合診療科

神谷 亨

高松赤十字病院学術講演会

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病床数 595床 一般病床 415床 ICU/CCU 12床、救命救急病棟 28床 SCU 6床、医療療養型病床 50床 回復期リハビリテーション病床 50床 老人性認知症疾患治療病床 60床 緩和ケア病床 20床

看護基準 7対1 職員数 1,169名(医師188名) 診療科目 41科目 平均在院日数 13.5日(H25年) 1日平均外来患者数 1,172名(H25年平均) 救急搬入件数 6,028件/年(H25年) 2001年 機能評価認証 電子カルテ導入 2003年 ISO9001-2000認証取得 2007年 プライバシーマーク認証取得 2009年 KES(ステップ2)認証取得 2010年 病院機能評価Ver.6更新 2011年 新電子カルテ更新移行 2011年 新棟開設、PET-CT稼働 2012年 救命救急センター指定

洛和会音羽病院 施設概要

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診療科 (43診療科、内科系14科)

総合診療科 外科 歯科

消化器内科 肝胆膵外科 口腔外科

心臓内科 消化器外科 矯正歯科

循環器内科 乳腺外科 小児歯科

呼吸器内科 心臓血管外科 小児科

神経内科 整形外科 産婦人科

糖尿病内分泌内科 呼吸器外科 皮膚科

腎臓内科 脳神経外科 精神科

リウマチ科 耳鼻咽喉科 麻酔科

血液内科 頭頚部外科 リハビリテーション科

感染症内科 眼科 病理診断科

緩和ケア内科 形成外科 放射線科

心療内科 泌尿器科 放射線治療科

アレルギー科 肛門外科 救急科

小児外科

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• 当院43診療科の中で最大の診療科

• 専門科に振り分けられない疾患の入院・外来診療

• 研修医教育、内科系救急診療のメインエンジン

• スタッフ 12名 (総合内科、家庭医療、膠原病、感染症、救急医療、ICU、疫学、心療内科、

老年医学、終末期医療、医療安全、臨床研究など様々な分野に興味を持ち研鑽中)

• フェロー 2名

• シニアレジデント 13名

3年目 4名

2年目 7名 総合診療科を中心に、内科系をローテート研修

1年目 2名

総合診療科

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洛和会音羽病院

総合診療科のMission(使命)

• 総合内科診療を通じて地域に貢献する

• 日本にジェネラルマインドを持った

よき臨床医を輩出する。

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今日は、「総合診療」について

お話をしてみたいと思います。

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それではまず、

私が経験した

印象深かった症例について

お話します。

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48歳女性

【現病歴】

2005年6月、両下肢浮腫、右大量胸水、低Alb血症のため

他院に入院し、精査加療を受けた。

心不全、肝硬変、ネフローゼ症候群は否定的であった。

血液検査上、各種自己抗体は陰性。

胸水は漏出性。培養は陰性であった。

蛋白漏出性胃腸症が疑われて蛋白漏出シンチが施行されたが

異常を認めなかった。

その後、下肢DVT、肺塞栓を発症して一時CCU管理を要した。

原因不明であったが、PSL 30mg/日、利尿剤、ワーファリンの

投与で徐々に胸水が消失、低Albも改善し、退院となった。

PSLは漸減され、中止となった。

以後、Alb 3.0g/dl前後で経過。

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【現病歴】

2011年2月より低Alb血症が増悪し、再度両下肢浮腫、腹部膨満

が出現した。

4月より外来でPSL 20mg/日を再開。一旦軽快し、PSLを漸減した。

7月より再度、低Alb血症、全身浮腫、腹部膨満、下痢が悪化。

7月22日、右胸水増量に対して、lasix 20mg/日→40mg/日、

PSLを7.5mg/日→22.5mg/日に増量した。

その後も症状が悪化し、尿量の低下を来したため、

8月1日当科に入院となった。

ROS:

(+) 倦怠感、労作時息切れ、腹部膨満、下痢(1日5回)、尿量減少

(-) 発熱、悪寒、咳、痰、腹痛、嘔気、嘔吐、

日光過敏、口腔潰瘍、関節痛

48歳女性

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【PE】 BP 100/60 mmHg HR 110 /分 RR 24-28/分

Sat 90-92% RA

結膜蒼白なし、黄染なし

蝶形紅斑なし、口腔潰瘍なし

リンパ節腫大なし

JVDなし

心雑音なし

右下肺野で呼吸音低下

腹部 膨満、shifting dullness+

全身浮腫 2+

【入院時検査】

WBC 11,800, Hb 16.7 Plt 389

TP 4.8, Alb 1.7、肝機能正常、腎機能正常

PT、APTT 正常

尿蛋白1+

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心エコー: 心不全は否定的

胸水、腹水: 漏出性、ADA 8〜10 U/L、培養(ー)

胸部CT: 肺実質に異常なし、リンパ節腫大なし

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プロブレムリスト

48歳女性 # 全身浮腫 # 胸水、腹水(漏出性) # 労作時息切れ、酸素飽和度低下 # 低アルブミン血症、低蛋白血症

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低アルブミン血症・低蛋白血症

• 摂取不足: そこまで栄養摂取不足ではない

• 産生不足: 肝炎、肝硬変は否定的

• 喪失

腎から: 尿蛋白定量(蓄尿) 493mg/日

ネフローゼ症候群は否定的

創部から: 熱傷、浸出液の多い難治性創部なし

腹水、胸水の頻回のドレナージ: なし

腸管から: 蛋白漏出性胃腸症

(しかし、2005年前医で否定されている)

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蛋白漏出性胃腸症

• 粘膜のびらん・潰瘍による炎症性浸出液漏出

Crohn病、潰瘍性大腸炎、胃がん、悪性リンパ腫、カポジ肉腫、α鎖病

偽膜性腸炎、多発胃潰瘍・びらん、NSAID腸症、化学療法後、ポリポーシス

GVHD

• リンパ管閉塞による腸管からのリンパ液漏出

原発性腸リンパ管拡張症、右心不全(心不全、収縮性心膜炎、先天性心疾

患)、後腹膜リンパ節腫大(化学療法、感染、毒素)、肝硬変・門亢症、肝静

脈閉塞、腸リンパ管瘻、腸間膜静脈閉塞症、腸結核、腸サルコイドーシス、

硬化性腸炎、腸間膜リンパ節・リンパ管を巻き込む悪性腫瘍、仮性嚢胞を合

併する慢性膵炎、Crohn病、Whipple病、胸管閉塞、先天性リンパ管奇形、

後腹膜線維症

• びらんや潰瘍のない粘膜病変からの蛋白漏出

セリアック病、熱帯スプルー、Menetrier病、リンパ球性胃炎、アミロイドーシ

ス、Secretory hypertrophic gastropathy、Whipple病、感染性腸炎

膠原病(SLE, RA, MCTD, 腸管血管炎)、アレルギー性胃腸症、好酸球性胃腸

炎、膠原線維性腸炎 etc.

UpToDate

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【入院時検査】

抗核抗体 160倍 speckled

抗DNA RIA (-)

抗ds-DNA抗体 ELISA (-)

抗ss-DNA抗体 ELISA (-)

抗RNP抗体 (-)

抗SSA/Ro抗体 (-)

抗SSB/La抗体 (-)

抗Sm抗体 (-)

抗カルジオリピン抗体IgG (-)

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TP (g/dl)

(g/dl)

入院後 の状態が約40日間持続した。 食事も徐々に摂れなくなり、胸腹水増量による労作時息切れにより寝たきりとなった。

上部、下部消化管内視鏡: 腸リンパ管拡張症やWhipple病、炎症性腸疾患、悪性腫瘍、好酸球性腸炎は否定的 収縮性心膜炎(心カテ施行): 否定的

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うーん手詰まりか、、、、。

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しかし、どう考えても、 腸管から蛋白が漏れ出ているとしか

考えられない。

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6年前に前医で否定されているが、 もう一回、蛋白漏出性胃腸症かどうかの

検査をしてみよう。

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蛋白漏出シンチ (99mTc-HSA 静注6時間後)

* Tc-HSA:Tc標識人血清アルブミン

PSL 22.5 mg/日

便α1アンチトリプシン 1日排泄量 645mg/day (< 60mg/day) 便α1アンチトリプシン クリアランス 413 ml/day (< 20ml/day) *α1アンチトリプシン:主に肝臓で生成されて腸管に分泌される蛋白分解酵素阻害物質

便中α1アンチトリプシン定量、腸管クリアランス測定(3日蓄便)

蛋白漏出性胃腸症と考えてよい!

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入院後経過

• 高蛋白脂肪食 無効

• PSL 22.5mg/日 無効

• 利尿剤、Alb点滴、サンドスタチン皮下注、ヘパリン点滴 無効

• IVH併用

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48歳女性

【現病歴】

•2005年6月、両下肢浮腫、右大量胸水、著明なAlb血症のため他院に入院し、精査加療を受けた。

•心不全、肝硬変、ネフローゼ症候群は否定的であった。

•血液検査上、各種自己抗体は陰性。

•胸水は漏出性。培養は陰性であった。

•蛋白漏出性胃腸症が疑われて蛋白漏出シンチが施行されたが異常を認めなかった。

•その後、下肢DVT、肺塞栓を発症して一時CCU管理を要した。

•原因不明であったが、PSL 30mg/日、利尿剤、ワーファリンの投与で徐々に胸水が消失、低Albも改善し、退院となった。

•PSLは漸減され、中止となった。

•以後、Alb 3.0g/dl前後で経過。

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【現病歴】

•2011年2月より低Alb血症が増悪し、再度両下肢浮腫、腹部膨満が出現した。

•4月より外来でPSL 20mg/日を再開。一旦軽快し、PSLを漸減した。

•7月より再度、低Alb血症、全身浮腫、腹部膨満、下痢が悪化。

•7月22日、右胸水増量に対して、lasix 20mg/日→40mg/日、PSLを7.5mg/日→22.5mg/日に増量した。

•その後も症状が悪化し、尿量の低下を来したため、

8月1日当科に入院となった。

•ROS:

(+) 倦怠感、労作時息切れ、腹部膨満、下痢、尿量減少

(-) 発熱、悪寒、咳、痰、腹痛、嘔気、嘔吐、日光過敏、

口腔潰瘍、関節痛

48歳女性

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入院後経過

• 高蛋白脂肪食 無効

• PSL 22.5mg/日 無効

• 利尿剤、Alb点滴、サンドスタチン皮下注、ヘパリン点滴 無効

• IVH併用。

• 9/10~ PSL 60mg/day iv を開始。

• 9/21 Alb 1.9に増加。

• 9/30 Alb 2.9

• 10/1 PSL 50mg/dayに減量。

• 10/15 PSL 45mg/day

• 10/18 イムラン 50mg/day

• 10/19 自宅退院 (Alb 4.1)

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抗核抗体 160倍 speckled オクタロニー法 ELISA法 抗RNP抗体 (-) (+) 抗SSA/Ro抗体 (-) (+) 抗Sm抗体 (-) (-) 抗SSB/La抗体 (-) (-) 補体関連 (経過中の最低値) 血清補体価 <12.0 CH50/ml C3 23 mg/dl ( 86 – 160 ) C4 2 mg/dl ( 17 – 45 )

診断: 自己免疫が関連した蛋白漏出性胃腸症

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蛋白漏出シンチ (99mTc-HSA 静注6時間後)

* Tc-HSA:Tc標識人血清アルブミン

PSL 22.5 mg/日 PSL60mg/日 治療1ヶ月後

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教訓

• 診断がつかずに手詰まりになったときに、医者の真の力が試される。

• 出会った事のない疾患であっても、文献を調べて、論理的思考を駆使して粘り強く鑑別を進める必要がある。

• もちろん、それでもわからないことはいくらでもある。

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診断が難しい症例について

鑑別診断を考えて

正しい診断と治療を探って行くのは

まるで、NHKの 「Dr. G」 のようですね。

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しかし、「Dr. G」 的な仕事をする医師が

「総合診療医」、「総合医」だと考えて

よいのでしょうか?

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実は、私はそうではないと

考えているのです。

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• 日本の代表的21万世帯から5,387世帯をランダムに抽出し、

アンケートを送付、1,464世帯から回答を得た。

• 日本人の代表的な1,000人が1ヶ月当たり、

何人体調を崩してどの医療機関を受診するかを調べた。

1000人中

862人 体調不良

232人 プライマリケア医

88人 病院の外来受診

10人 救急部受診

7人 一般病院入院

6人 大学病院外来受診

0.3人 大学病院入院

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当たり前のことではありますが、

人々が健康を害したときは、

common diseaseであることが多く、

専門的な治療を要する場合は

相対的に少ないのです。

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従って当然、

総合診療医も日々の診療で

common diseaseを診ていることが

圧倒的に多いのです。

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総合診療医は

毎日診断の難しい・珍しい疾患ばかりを

診ているわけではありません。

Dr. G的な内容は、仕事のごく一部にすぎません。

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これからの時代に求められている

総合診療医とは?

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近年、人口の高齢化を反映して65歳以上の死亡数が増加し、特に80歳以上の死亡数の増加

は顕著で、全死亡数に占める割合は上昇しており、平成24年では58.3%となっている。

我が国の人口動態 平成24年までの動向 政府統計

高齢化と多死社会

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我が国の人口動態 平成24年までの動向 政府統計

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平成25年 人口動態統計月報年計の概況

厚生労働省

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厚生労働省ホームページより

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これからの25年間は?

• さらなる高齢化、多死社会 (非がん死も増加)

• 複数の慢性疾患を抱える患者が増加

• 要支援・要介護高齢者、一人暮らし高齢者の増加

• 治す医療 → 治す医療 + 支える医療

(専門医が得意) (ジェネラリストが得意)

• ジェネラリスト と 専門医 が協力する体制ができれば

専門医はより専門的な領域の診療に集中できる。

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健康 30%

慢性疾患 40%

虚弱状態 20%

死が近い

状態 10%

最大限の医療 Full(フル) ICU、人工呼吸器 etc.

状況に応じた 過度でない医療

緩和中心の医療

ステージに応じた医療の提供

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• 恐らく日本の国民は、普段の「かかりつけ医」と、「優秀な専門医」の両者を求めている。

• 医療は益々高度化しており専門医でも知識のupdateは大変な時代である。

普段やっていないことはできなくなる。

普段考えていないことはわからなくなる。

• かかりつけ医(プライマリケア医)と専門医の 両者が必要な時代になるだろう。

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総合医とは?

• 日本医師会生涯教育推進委員会+3学会

総合医とは,「頻度の高い疾病と傷害,予防,保健,福祉など,健康にかかわる幅広い問題について,わが国の医療体制の中で,適切な初期対応と必要に応じた継続医療を全人的視点から提供できる」医師である。

• 臓器にかかわらず,年齢や性別,器質的疾患か機能性・精神心理社会的問題かを問わず,さまざまな症候の鑑別診断ができ,緊急に専門医療施設に紹介するべきかどうかの判断ができ,自分自身で治療する時にはエビデンスに基づいた標準治療が行える能力などを必須能力と考えている。

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1975

1980

1985

1990

1995

2000

2005

2010

2015

天理よろず相談所病院

「総合診療方式」の研修医教育(1975)

川崎医大に「総合診療部」設立(1981)

「家庭医療研究会」(1986)

「総合診療研究会」(1993) 日本内科学会 「認定医」「内科専門医」(1994)

「日本総合診療医学会」(2000)

「日本家庭医療学会」(2002)

日本内科学会

「総合内科専門医」(2008)

日本プライマリケア連合学会(2010)

認定医、家庭医療専門医

佐賀医大に「総合診療部」設立(1986)

「日本病院総合診療医学会」(1999)

日本内科学会 (1968)

実地医家のための会(1963)

「家庭医に関する懇談会」(1985)

「米国家庭医療学会」(1969)

国立病院医師のプライマリケア留学(1980〜83)

北海道家庭医療学

センター(1996)

奈義ファミリークリニック(1995)

家庭医療専門医(2009)

プライマリケアに関連する歴史

総合診療専門医(2020) 新内科専門医(2020)

日本プライマリケア学会(1978)

日本プライマリケア

認定医(1995)

認定医(2012)

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総合診療医の役割

総合病院 かかりつけ医

“家庭医” “病院総合医”

(“総合内科医”、

“ホスピタリスト”)

家庭医の

後方支援

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総合内科医と家庭医の 診療の場と守備範囲の違い

診療の場 一次医療 二次医療 三次医療

総合内科医 (病院総合医) ◯ ◎ △

家庭医 ◎ (△) なし

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総合内科医と家庭医の 共通点と相違

共通点 Bio Psycho Social

総合内科医 (病院総合医)

総合的に

診療したい

◎ ◯ ◯

家庭医 ◯ ◎ ◎

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総合内科医と家庭医の 相違点・問題点

すき間産業の悩み

総合内科医 (病院総合医)

中小病院 大病院 1医療機関、1個人が総合内科医と家庭医の両者を展開する

ことは困難

○ ◎

家庭医 なし

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専門店

= 専門医

イオン(日用品) =総合診療科

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病院総合診療医の守備範囲

高齢者の Common diseases

感染症

リウマチ 疾患

成人の 慢性疾患

心療内科的疾患

緩和医療

介護、社会的資源調整

内科的 救急疾患

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最後に、日常遭遇することが

比較的多い疾患をひとつ

お話します。

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78歳 女性

主訴:発熱

2週間前に脳梗塞にて神経内科に入院。

昨日より発熱があり当科コンサルト。

今朝から急に後頚部が痛くて、首が回せなくなった。

診察では、特に頚部の左右の回旋時に痛みが強く誘発される。

血液検査では、WBC 9800 CRP 3.6 以外異常なし。

尿検査、胸部レントゲン異常なし。

頸椎CT → Crowned dens syndrome

DDx :頸椎椎体椎間板炎、硬膜外膿瘍、外傷など

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軸椎歯突起後方に環椎横靱帯の石灰化を認める

Crowned dens syderome

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偽痛風のリスクと誘発因子

• リスクとなる基礎疾患

変形性関節症、甲状腺機能低下症、副甲状腺機能亢進症

痛風

低リン血症、低マグネシウム血症

ヘモクロマトーシス、ウィルソン病 など

• 誘発因子

外傷

手術

肺炎などの感染症

心筋梗塞 などの各種ストレス

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ご清聴ありがとうございました。