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立体地図、3D 地図についての予備的考察
2017 年 9月
地図のデジタル利用にともない、立体地図が話題になります。3D地図とも表現されま
す。ここでは全く同じ意味と考え、立体地図(3D地図)と表記します。
その立体地図(3D地図)について、概念の混乱があるような気がしています。
つまり、立体地図(3D地図)は、平面なのか、立体なのかということです。
地図の基本に立ち返って考えてみましょう。
●地図は2次元(平面)である。
地図は3次元の地球表面を2次元に表したものです。従って、立体地図というのは本来
は矛盾した表現です。『地図学用語辞典(増補改訂版)』(日本国際地図学会編)ではどの
ように書いてあるでしょうか。
「平面としての地図に土地の起伏に応じた高低を加えた立体的な地図。プラスチックベー
スに耐熱性のインキで地図を印刷し,あらかじめ用意された同じ地図の起伏を型取った母
型に重ねて,加熱・プレスして作成する。少量の作成であれば,ボール紙を重ねたり,粘
土を用いたりして手工的に作成することもできる。水平方向の縮尺に対し垂直方向の縮尺
を2~3倍程度誇張して地形を読取りやすくするのが一般である。[同]レリーフマップ」
これは 1998 年に発行されたものです。記述内容に、時代を感じる方も多いのではないで
しょうか。それはともかく、例示でもわかるように文字通りの立体的な地図のことを指し
ています。立体的に見える、ではなく、実際に高さのある立体です。
一方、この本が出版された時には影も形もなかったグーグルマップは、今は3D表示が
当たり前になりました。例えば次の説明をご覧ください。
「2013 年に登場した新しい Google マップでは Earth ビューでの 3D 表示が可能となりユ
ーザーを驚かせましたが、今ではそれも普通のことになってしまいました。・・・ところが最
近、ウェブ版 Google マップにちょっとしたアップデートが加えられていたようで、上下左
右にグリグリと好きなように 3D 表示を回転させられるフル 3D モードが利用できるように
なっています」(2016 年3月。http://appllio.com/google-maps-full-3d-mode-free-rotation)。
3D表示の地図例として以下の図が掲載されています。
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●国土地理院の説明
国土地理院は立体地図(3D地図)をどのように説明しているでしょうか。地理院地図
の機能に3Dがあります。また、「立体地図(地理院地図3D・触地図)」というページが
あります(https://maps.gsi.go.jp/3d/index.html)。
「地理院地図では、「誰でも・簡単に・日本全国どこでも」3 次元で見ることができます。
3D プリンタ用のデータをダウンロードすることもできます。本サイトでは、立体地図の使
い方や立体模型、触地図の作り方をご紹介します」。
なかなか微妙な表現をしています。地理院地図3Dは「3次元で見ることができる」と
しています。地理院地図3Dは「立体地図」なのですが、それとは別に「立体模型」とい
う表現もしています。実際に下の図のような例示がされています。3Dプリンタで作製し
た文字通りの立体模型です。立体模型と言えば当然ながら地図だけではないので、丁寧に
言うならば「立体模型地図」になるでしょう。
伊豆大島(被災状況を重ね合わせ)
(https://maps.gsi.go.jp/3d/creating.html)
●2種類の立体地図(3D地図)
立体地図(3D地図)といった時に、今は、2次元で表示されているが、見た目が立体
的に見えるものを指すのが普通のようです。一方、「立体模型地図」ももちろ立体地図(3
D地図)ですから、それはそれとして間違った名称ではありません
文脈の中でどちらの意味で使われているかは判断がつくでしょうから、混乱することは
ないと思いますが、同じ名称で、異なった意味があるのはいささか釈然としません。
しつこいようですが、グーグルマップなどの立体地図(3D地図)は、あくまでも2次
元の平面に表された地図です。ただし立体模型地図を見ているかのような表現になってい
るので、立体地図(3D地図)と呼んでいるに過ぎません。
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●伊能図は立体地図(3D地図)?
(伊能大図「第百 甲斐 駿河」(国立国会図書館)
伊能大図では富士山が真上からではなく、斜め上から鳥瞰図風に描かれています。
(カシミール3Dによる)
こちらは、カシミール3Dにより駿河湾上空1万mから描いた鳥瞰図です。富士山は
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似たような形になっていますが、両者には大きな違いがあります。
伊能図はあくまでも「普通」の地図であり、地表を真上から描いたものです(正射影)。
従って、富士山や他の山が横から見たよう形になるのは、今の地図の考え方からすればお
かしいのですが、あくまでもそこに山があるという「絵」としての表現になっているので
す(山頂が描かれている場所に、平面的に見た場合の、つまり地図上の山頂がきます)。
カシミール3Dによる鳥瞰図は、近くが大きく、遠くが小さくなります。同一縮尺では
ありません。それはグーグルマップの航空写真の3D表示も同様です。
伊能図は、いわゆる鳥瞰図ではありませんが、山を立体的に見せているという点では間
違いなく立体地図(3D地図)と言ってもよいのではないでしょうか。
●どこまでが立体地図(3D地図)か?
立体感が得られるのが立体地図(3D地図)だとしたら、レリーフマップはどうなるの
でしょうか。先の『地図学用語辞典(増補改訂版)』は立体地図と同義としていました。
地理院地図の色別標高図はどうでしょうか。立体地図(3D地図)と呼べるのではない
でしょうか。
(地理院地図 色別標高図)
2万5千分1地形図の多色刷は、山にぼかしが入っています。立体感をもって眺めるこ
とができるので、これも立体地図(3D地図)と言ってよいのでしょうか。
地理院地図のデフォルトである標準地図も、もちろんレリーフ表現がしてあり、立体感
をもって眺めることができるので、立体地図(3D地図)でしょうか。
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(地理院地図 標準地図)
カシミール3Dの「地理院地図+スーパー地形」による表示は文句なしの立体地図(3
D地図)でしょう。
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(カシミール3Dの「地理院地図+スーパー地形」)
多色刷以前の地形図は、ぼかしなど立体化するための手法は講じてありません。しかし、
読図の達人は、等高線だけで、地形が立体的に浮き上がって見えると言います。そういう
人には、2次元の等高線地図も立体地図(3D地図)と言えるかもしれません。
●地球儀の画像は立体地図(3D地図)?
地球儀を地図に含めて考える人がいます。立体地図(3D地図)も地図と考えれば、広
義の地図にはなりますが、地図は2次元のものという大前提に立てば、地図とするよりも、
やはり地図模型、地球模型として、いわゆる地図とは区別すべきです。
では、平面に表された地球儀の画像は立体地図(3D地図)と言えるのでしょうか。
単なる地図なのでしょうか。
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(地球儀)
平面の画像ですが、光や影の着け方によっては、立体感を持って眺めることができます。
この地球儀を眺めるような表現ができるのが、正射図法です。
(正射図法)
これにぼかしをつければ、立体地図(3D地図)として見ることができるでしょう。
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●立体写真の場合
地図と写真は密接な関係にあります。但し、この立体については明確な違いがあるよう
に思います。立体地図(3D地図)は、実際には2次元のものを指す場合が多いのですが、
立体写真の場合は、ステレオ写真、つまり、文字通りの立体像が脳内に浮かぶ場合をさし
ています。その関連で、立体地図、立体地形図という言葉が使われることもあります。画
像単体では平面なのですが、2枚同時に見ることにより、立体画像になるのです。
●とりあえずのまとめ
立体地図(3D地図)には2種類ある。
①平面の地図だが、描画内容が鳥瞰図のようになっており、立体感を持って眺めること
ができる。
②文字通りの立体地図模型。
なお、立体視できる場合を考えると、①’として、合計3種類と言うことができるかも
しれません。
何を立体地図(3D地図)とすべきなのか、定義をしっかり決めておく必要があります。
引き続き、検討を続けていきたいと思います。