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多変量時系 (291) 多変量時系列変動要因分析モデル 皿llI はじめに MTVモデルの理論的側面について1主成分分析のダイナ MTVモデルによるTOPIXの変動要因分析と予測 むすび 1 はじめに 本稿の目的は、東証株価指数(東京証券取引所株価指数)を対象として、多変 く胃冨8目ぎ①Q。①N一窃く碧圃鋤琴①Ooヨ”o昌魯けζo号一)を適用し、このモデ 291

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多変量時系列変動要因分析モデル(MTVモデル)

       による東証株価指数の変動要因分析と予測

(291)

多変量時系列変動要因分析モデル

皿llI

目 次

はじめに

MTVモデルの理論的側面について1主成分分析のダイナミック化とその利用法

MTVモデルによるTOPIXの変動要因分析と予測

むすび

1

はじめに

 本稿の目的は、東証株価指数(東京証券取引所株価指数)を対象として、多変量時系列変動要因分析モデル(ζ巳亭

く胃冨8目ぎ①Q。①N一窃く碧圃鋤琴①Ooヨ”o昌魯けζo号一)を適用し、このモデルが株価指数の変動要因の分析及び予測に

291

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多変量時系列変動要因分析キデル

おいてどの程度の有効性を有するかを検討することにある。

 総合的な株価水準の指標として、わが国では「日経平均株価」と「東証株価指数(TOPIX)」が知られている。この

二つの指標は株式市場の動向を示すものとして頻繁に取り上げられてきたが、一九八八年からこれらの指標を対象とする

株価指数先物取引が開始されたことにより、また今後オプション取引も開始される見込みであることから、その予測の重

要性は一層高まるものと予想される。日経平均株価も東証株価指数もともに指標の連続性を保つために、配当権利落ちな

どに対して修正が施されてはいるが、両者は株価水準の異なった側面を表すものである。簡潔にいえぽ、日経平均株価は

                                                 (1)

代表的銘柄二二五種の単純平均であり、東証株価指数は一部上場全企業の株式時価発行総額を指数化したものである。一

般の新聞紙上では日経平均株価が株価指標の代名詞のように扱われているが、この指標に対しては、次のような批判があ

(2)

る。第一に、一部上場企業の総数が約一一〇〇にのぼるにもかかわらず、採用銘柄が二二五種に限られており、必ずしも

市場全体の動きを反映しているとはいえないことである。第二に、各銘柄の発行株式数を考慮していないので、大型株と

小型株が同等に扱われており、このため一部の品薄株の影響のために株価平均全体が異常に上下する可能性があることで

ある。第三に、配当権利落ちなどに対する修正の積み重ねによって修正株価平均そのものが大きな数値となっており、現

実の市場価格の動きが増幅された形で表されることである。これらの理由から、日経平均株価は株式市場の動向を代表す

る指標としては必ずしも適切であるとはいえない。このため、本稿では株式市場の動向を代表する指標として、東証株価

指数(以下においてはTOPIXと略称する)を取り上げ、これを分析の対象とする。

 TOPIXの統計分析を考える場合、その接近方法を次の二種類に大別することができる。第一は、伝統的な時系列分 292(292)

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多変量時系列変動要因分析モデル

析に代表される、データの記述分析に主眼をおくアプローチであり、第二は、モデル分析によるアプローチである。前者

は、与えられたデータに種々の統計的手法を形式的に適用し、現象の構造を記述することを狙いとするものである。この

アプローチの下でも与えられたデータに形式的なモデルが適用される。すなわち、実際に観測されるデータの変動はトレ

ソド・循環変動・季節変動・不規則変動の四つの要素の変動によって生ずると仮定され、これら四つの変動要因の結合の

仕方として加法モデルと乗法モデルが考えられてきた。しかしこの場合、そのモデルが現象の変動メカニズムを把握して

いるという視点は弱い。これに対して後者のモデル分析によるアプローチでは、データの変動の背後には何らかの意味で

安定的な確率的構造があると想定し、その構造の近似的な表現としてモデルを構築する。そしてこの構造の把握を通じて

                (3)

現象の変動を予測することを狙いとする。

 本稿で考察の対象とする多変量時系列変動要因分析モデルはモデル分析の視点にたつ予測方法であるが、モデル分析に

                          (4)

よるアプローチ自体、さらに次のように分類することができる。第一は経済理論等に基づいた因果論的モデルを想定する

アプロ:チであり、第二は特別な因果論的発想に基づかないで、直接的に対象の変動を表現する確率モデルを想定するア

プローチである。前者を構造解析アプローチ、後老をブラックボックス・アプローチと呼ぶことができる。構造解析アプ

ローチの分析手法は回帰分析が中心であり、代表的モデルとしては回帰モデルと同時方程式モデルがある。これらのモデ

ルは計量経済学における根幹となるモデルであることから、計量モデルと総称することができる。他方、ブラックボック

ス・アプローチによる分析手法としては、一変量時系列モデル、多変量時系列モデル、多変量時系列変動要因分析モデル

などがある。

(293)293

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多変量時系列変動要因分析モデル

                                           (5)

 計量モデルを用いてTOPIXの予測を行った例としては、下村昌作氏の研究(一九八八年)がある。また、TOPI

Xを対象としたものではないが、下村氏の研究以外にも総合的な株価水準のモデルを定式化したものとして、高橋克秀氏

           (6)

の研究(一九八九年)がある。このように総合的な株価水準の変動を予測するための回帰モデルならびに同時方程式モデ

ルの作成が一部の研究者によって行われているとはいえ、同様のモデルが需要予測やGNPの予測に頻繁に用いられてい

ることに比べると、これらのモデルによる株価予測は概して低調である。その理由は、総合的な株価変動が種々の要因と

複雑に絡み合っており、説得力のある一般的な理論を構築することが困難であること、また、証券市場のように急速にそ

の構造が変化する可能性のある対象に対しては、回帰モデルや同時方程式モデルを適用することが必ずしも妥当ではない

ことにあると考えられる。

 これに対してブラックボックス・ア。フローチの見地にたつ時系列モデルでは、明示的なアプリオリな行動仮説を導入せ

                                            (7)

ずに、多数の要因が作用した結果成立する現象に対して、そのなかに潜む確率論的規則性をモデル化する。このモデルは

                             (8)

ボックス(O°国゜即ωo×)1ージェンキンス(O°ζ゜臼Φ昌犀冒ω)の研究によって一九七〇年代に急速に普及したものである

が、その普及の背景には、一九七〇年以降の激しい経済構造の変化のなかで計量モデルの予測能力に関して疑問が生じて

        (9)

いたという事情がある。このモデルの最も簡単なものは一変量時系列モデルであり、また、一変量時系列モデルのもつ制

約を克服することを目的として考案されたのが多変量時系列モデルである。時系列モデルは比較的単純なモデルの構造で

あるにもかかわらず、その予測力が優れていることから多大な期待がよせられた。しかし、一変量時系列モデルについて

は、このモデルをもってしては経済構造のメカニズムの把握ができないこと、また、多変量時系列モデルに関しては、こ

294(294)

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多変量時系列変動要因分析モデル

れが経済構造のメカニズムに関して若干の光を当てることができるものの、パラメーターの推定が著しく困難であること

              (10)

から、実用性に欠けるとの批判がある。なお、時系列モデルを株価分析(個別銘柄の株価予測)に適用したものとしては

               (11)

斉藤瀞氏の研究(一九八六年)がある。

 上記のような時系列モデルの持つ欠陥を補うものとして、刈谷武昭氏によって提示されたのが多変量時系列変動要因分

                     (12)

析モデル(以下、MTVモデルと略称する)である。MTVモデルは、後述するように、形式的には主成分分析に時系列

の要素を加味したモデルであるといえる。例えぽ、株価指数を予測する場合に、このモデルの下では、株価指数とこれ,に

直接・間接に関連すると考えられる経済諸指標とを一括して主成分分析にかけ、その結果抽出された主成分に時系列モデ

ルをあてはめるのである。このモデルも時系列モデルの場合と同様に、分析対象に関してアプリオリな仮説を導入しない

という点において、ブラックボックス・アプローチの視点にたつものであるといえるが、主成分分析を基礎にすることか

ら、現象の変動構造についての情報を与えることができるという点に特微がある。したがって、このモデルは基本的には

ブラックボックス.ア。フローチの立場に立つ手法であるが、構造解析アプローチの要素も兼ね備えているといえる。MT

Vモデルはこれまで個別銘柄の株価の変動要因の分析とその予測に主として用いられてきたが、TOPIXの予測、また、

株価と経済変数の関係の分析には用いられていない。ただし、株価水準の分析を目的としたものではないが、変数の一っ

として株価指標を組み入れてこのモデルを現実のデータの分析に応用した研究(一九八五年)が、日本銀行調査統計局計

量分析係によって行われた。この日銀の研究は為替レートの変動分析と予測を目的としたもので、一九個のマクロ経済変

            (13)

数が分析対象として選択された。

(295)295

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 本稿の構成は以下のとおりである。まず次節においては、MTVモデルの理論的側面について若干の考察を行う。次に 96

                                                      2

三節では、下村氏、高橋氏、日銀調査統計局の各研究における変数選択を参考にして、一九七七年第1四半期から一九八

八年第4四半期までの=一年間の四半期データを用いて、MTVモデルがTOPIXの変動要因の解明と予測に対してど

の程度有効であるかを検討する。

多変量時系列変動要因分析モデル

   H MTVモデルの理論的側面についてー主成分分析のダイナミック化とその利用法

                                      (14)

 本節においては、MTVモデルの理論的側面とその利用方法について若干の考察を行う。前節において言及したように、

MTVモデルは形式的には主成分分析を時系列化(ダイナミック化)したものである。したがって、主成分分析との関連

において検討することによって、MTVモデルの理論的基礎が明らかになるはずである。

 主成分分析は、互いに相関のある多種類の特性値の持つ情報を、互いに無相関な少数個の総合特性値に要約するための

   (15)

手法である。いま、ρ種類の変数(例えぽ、東証株価指数、鉱工業生産指数、マネーサプライなど)についてπ個の観察

値が与えられているとする。仮に、このρ種類の変数が互いに無相関であるとすれぽ、その一つ一つについて%個の観察

値の散布度を評価すればよい。しかし、もしこれらの変数の間に相関がある場合、一つ一つ解析する方法は、その相関を

もたらした共通要因については重複して解析することになる。そこで、主成分分析では、ρ種類の変数の値をできるだけ

情報の損失なしに、互いに独立な少数個の総合特性値(これを主成分胃冒。甘9。一8ヨ℃oロ。暮と呼ぶ)で表そうとするの

である。

(296)

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多変量時系列変動要因分析モデル

 いま、ρ種類の変数はいずれも確率変数であると仮定し、第.3変数のオ番目の値を娩h、(暁”H℃…も…艦11Hり…愚)で表し、

また、主成分分析によって求められる各主成分をゐ、乃、…、ムで表すことにすると、この分析手法では次式に示すよう

なモデルを仮定するのである。

 冨鴨11§斗ご十犠旨謎、十……十自ζ蓄、

 瀞、11§斗ご十§呉鯉十……十§暦さ鮎

 §隔ロミ斗ご十亀誌爵軸十……十犠ξ蓄怖

 》、11鳥ミ雲ご十窺蕊聴貯十……十亀ミさ、

ただし、

            サ

  §㌔十ミ“。。。十……十§㌔旺図§㌔陛H

            馬11 

ε(さ。)

 ここで、ω式における係数伽は以下に述べる条件を満たすように決定される。まず、第一主成分んにおける蜘の係数

伽(.¢H1、・:、ρ)を、②式の条件のもとでルの分散が最大になるように定める。次に、第二主成分んの係数伽(・z111、

…、ρ)を、②式を満足し、しかもルとんとが独立になるという条件のもとで、んの分散が最大になるように定める。す

なわち、第一主成分んですでに把握した情報と第二主成分の把握する情報とが重複しないように、OO〈(〉”》)日Oと

いう制約を課したうえで、んで把握しきれなかった情報を最も大きく把握しようとするのである。以下同様にして、第

(297)297

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多変量時系列変動要因分析モデル

々主成分の係数伽を、ルがル、ん、・・:-、

したがって、このようにして得られた主成分の間には、

   〈〉勾(》)V〈〉閃(》)〉……V〈〉濁(》、)                 (ω)

の関係が成立する。また、抽出される主成分の数が変数の数に等しい、すなわち、§U博のとき、

の分散の総和は、変数蜘、勘、……、細の分散の総和に等しくなる。すなわち、

   〈〉渕(聴=)十……十〈〉勾(蓄鴨)ロ〈〉濁(冨h)十……十〈〉勾(番鴨)         (と

 このため、勉個の主成分で全体の変動をどの程度把握したかをみる尺度として、

   き11猷〈〉男(》隔)\睡く》図(賊こ)               (9

     瀞11一        軌肚一

を考えることができる。この煽によって示される割合のことを累積寄与率という。

                                (16)

痴・無相関になるという条件のもとで、ルの分散が最大になる、うに定める。㎜

主成分ん、ん、:…・、ル

 主成分分析は、これまでにさまざまな経済データの分析に用いられてきたが、従来の研究においては主として記述統計

                                     (17)

的な利用がなされてきたのであり、しかもクロスセクショソデータの分析が中心であった。このため、刈屋武昭氏が明ら

かにしたように、主成分分析においては、分析対象となる変数間に、暗黙裡に次の二つの仮定が前提とされてきたのであ

(18)

る。すなわち、

 ①各’に対する蜘と勘の共分散は、オに依存せずに一定。

   OO〈(聴こ襲し11qこ  (斜、UHb》…も)                   δ)

(298)

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多変量時系列変動要因分析モデル

 ②各(♪、)に対して、翫と毎は、井も。のもとで無相関。

   OO<(きごき向)110                              {刈)

という二つの仮定がおかれてきたのである。主成分分析はこれらの仮定の上に構築されているのであるから、現実のデー

タはこれらの仮定を満たす必要がある。しかし、実際の経済時系列は何らかの時間的相関構造を持って変動することが一

般的であろう。したがって、各簡が’に関して無相関であるとの仮定を改める必要がある。そこで、MTVモデルでは、

通常の主成分モデルにおける二つの仮定、すなわち、

 ω OO<(》”》馬)110  (、愚1ード”…》§)                    (oo)

 ② 〈〉菊(悌、)〉〈〉菊(瀞h)V……V〈〉ヵ(番馬)                  (⑩》

                             (19)

という二つの仮定に加えて、次の仮定を各主成分に対して設けるのである。

 ㈲ 各ルは、定常自己回帰移動平均モデル(諺ロ8冨oQ話ω゜。ぞ①ζ〇三口σq>〈①屋σq①竃oユ①一)に従う。

                                (20)

ここで、ルが定常であるとは、ルが次の三つの条件を満たしている場合である。

 ㈲ ルの平均がゼロ……肉(})目O

 ω んの分散が時点≠に依存せず一定……〈〉因(》)119

㈲んと痴?次の自己相関係警は、時点乏依存しない…〒。・勾(}》し

また、自己回帰移動平均モデルとは、自己回帰モデルと移動平均モデルが混合したモデルであり、次式のように表すこと

  (21)

ができる。

(299)299

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多変量時系列変動要因分析モデル

   》陛§~工+……+§S↑“+・、+魁竜丁牛-…・+肝9よ            ロe

     ー皿四回乖嬰津L  ー鮒響剰潜幾導L

ただし、㎝式におけるεは偶然変動(ホワイトノイズ)であり、㎝式は通常は、簡潔にARMA(畠、砺)と表示される。

 この仮定個がMTVモデルの第一の特徴であるが、MTVモデルの第二の特徴は、このモデルを因子分析的に利用して、

各変数の変動要因を明らかにできることである。変数の変動要因の分析では、ω式を基礎にした、次式で示されるモデル

を仮定する。

   娩こ11套隔+鼻~鴨+……十§ヘミ                        巨

ただし、侮は蜘の平均である。

 ところで、勉個の主成分で蜘の変動のかなりの部分が説明できるとすれぽ、蜘の分散は、

   <》因(き鴨)R奪μ悼〈〉図(冨、)十……十奪㌔〈〉閃(》、)              §

    (22)

で近似できる。この働式の関係から、蜘の変動のうち第ん主成分で説明される割合は、

   〈〉因(奪$隔)\〈〉因(き鴨)                          §

と表すことができる。したがって、㈲式で示されるこの割合に基づいて、変数蜘に対する各主成分の説明力を判断する

ことができる。

 第三の特徴は、MTVモデルを利用すれぽ、各変数の将来値を予測することが可能なことである。各変数の予測を行う

ためには、予め主成分ごとにモデルの構造の推定を行うことが必要となる。前述のように、MTVモデルでは各主成分が

300(300)

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多変量時系列変動要因分析モデル

定常ARMA(ゐ、鳶LOC)モデルに従うことを仮定しているのであるから、モデルの推定とは、自己回帰部分の次数傷と移

動平均部分の次数αを決定することにほかならない。一旦、ARMA(ゐ、鳶700)が推定されたならば、これを用いて1期

先のゐの値痴穿期・でのルで予測す・・とができ・。し奈・て、㎝式の右辺に各主成分9期先の予測値を代入す

れば、各変数蜘?期先の値徹得られる.」とになる(次式)。

   娩こ之ロ簿壬+尋~…+・:…+奪ミ》壬                     竃

qの

ョを用いて予測を行う場合、必ずしも抽出した主成分をすべて用いる必要はなく、変数の変動を一定割合まで把握でき

るだけの個数の主成分を選択すればよい。

 以上がMTVモデルの基本的な考え方であるが、次に、与えられたデータからMTVモデルを推定する方法について述

べることにする。このモデルで分析の対象とする変数は異なった単位をもつのが一般的であるから、通常はデータを標準

化したうえで分析が行われる。いま、蜘を標準化したものを衙とすれぽ、Nこ口(執こ1悪こ)\3で求められる。この標準化

                     (23)

データを用いれぽ、前記のω式は次式の形となる。

   窒110=瀞、十:::十奪ミ》・                          8

また、標準化データでは、〈〉因(Nこ)陛Hであるので、前記の働式は、

   HR翁H。,〈〉菊(誉)+亀歯。,〈〉閑(》)+……+奪ヨ。、〈〉閃(畢鴨)          葺

となる。他方、衙とルの相関係数は、MTVモデルにおける第三の仮定から、各主成分の分散〈〉カ(》、)が定常、すな

わち一定であることから、次式のように整理できる。

(301)301

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多変量時系列変動要因分析モデル

   OO閃(Nξ誉)1100<(N5}馬)\[<諺閑(Nこ)〈〉閃(嶺、)]、\、11自簿く<〉菊(》隔)11欝ヤ §

標準化データについて得られるこの伽は因子負荷量(鵠90H一〇鋤象昌σq)と呼ばれる。㎝式から明らかなように、寝壽,。11

§・,<弗(乙である。,伽すなわち§・,<勇(》)は、衙の変動のうち、第皇成分に起因する変動の大きさを表す

ことになり、例えば、曾戸。、HρOとなった場合には、衙の変動の六割が第一主成分で説明されることを意味する。さらに、

この伽を使うと、個式は、

   Nご日寝二噂 、+……+曾ヨQミ                        (邑

と表せる。ただし、Q書11}\<<》菊(謡h)であり、これは因子得点と呼ぽれる。

 上記の⑮~国式に含まれるパラメーターの推定にあたり、統計パッケージに含まれている通常の主成分分析のプログラ

ムがそのまま利用できる。統計パッケージでは、原データを入力するとデータは自動的に標準化され、固有値としてのム

の分散<》即(》)の推定値、固有ベクトルとしてのウエイト伽の推定値、因子負荷量幽の推定値、因子得点軌の推定

値が計算される。

 このようにして各種の推定値が得られたならば、砺の~111、…、%の値を用いてARMA(舟、b)モデルを選択し、そ

のパラメーターを推定する。さらに、推定された時系列モデルを用いて必要な予測値を作り、.」れを用いて璽予測する。

この段階では、SAS(ω$二゜。ユ8一〉昌巴嘱ω一ωω唄ω8ヨ)、SPSSX(ω富け尻ユo巴勺β゜o犀oσQΦh。同岳①ω。。一⇔一ω。冨け。①ω)、

                                          (24)

RATSなどの統計パッケージに用意されている時系列分析のプログラムを利用することができる。

 MTVモデルの推定方法は以上のとおりであるが、主成分分析と共通する部分にっいては、得られた主成分の解釈を除

302(302)

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多変量時系列変動要因分析毛デル

けば、その推定方法に関して主観性が排除されており、一義的な解が得られるため問題はないであろう。すなわち、主成

分分析は本来は因子分析(殉⇔20同〉昌巴唄゜。一゜。)の一変形として考案されたものであり、共通性(8日ヨ§巴一曙)の推定に

関してかなりの恣意性が入り込む余地があるという、因子分析が抱える問題点を回避することを目的として開発された分

     (25)

析手法である。具体的には、この恣意性を避けるために、主成分分析では相関行列の主対角要素に共通性の推定値をおか

ずに、これを一のままにして因子(主成分)の抽出を行うようにしたものであり、これによって一義的な解が得られるの

である。他方、抽出された総合特性値としてのそれぞれの主成分が何を表しているかを明らかにする場合、主成分の意味

付けは、経済学の知識に基づいて、それぞれの主成分と相関の高い経済変数との関連において行われるので、分析者の判

断が介入する余地がある。

 MTVモデルの推定において最も厄介なのは、各主成分に時系列モデルをあてはめる段階であるように思われる。AR

MAモデルの推定は、ボックス開ジェンキンス法、あるいはAIC情報量基準をベースにした手法などで行うことができ

るが、どの手法を用いるにしても、モデル構造の同定↓モデルのパラメーターの推定↓モデル適性の診断のステップを何

回か繰り返すことが要求される。一般に、モデル・ビルディングという活動は、科学(ωOμ①昌OΦ)ではなくて、技術(⇔暮)

であるといわれるように、分析者の判断に左右される部分が大きいが、時系列モデルの推定についても同様のことがいえ

   (26)

るであろう。

 時系列モデルに関連して、MTVモデルによる予測についても問題点を指摘できる。MTVモデルによる予測精度は、

定常ARMA(鳶、為700)モデルの安定性に左右されることになるが、各主成分は必ずしも定常性の条件を満たすとは限ら (303)303

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多変量時系列変動要因分析モデル

ない。このため、刈谷氏は、原データにトレンドが認められる場合には、単回帰式でトレンドを推定し、このトレンドを

                               (27)

原データから取り除いた値を主成分分析にかけるべきことを提案している。トレンドを除去する方法としては、他に階差

                                  (28)

を取る方法などがあるが、その場合には階差の経済学的な意味付けが困難になる。しかし、定常性を得るためにどのよう

な方法を採用するにしても、一般に経済データに関しては定常性を確保することはむずかしい。このことはMTVモデル

に固有の問題点であるというよりも、むしろ時系列モデルそのものにおける基本問題であるといえる。

MTVモデルによるTOPIXの変動要因分析と予測

 本節では、MTVモデルを用いてTOPIXの変動要因の分析と予測を行うことを課題とする。分析に先だって、変数

の選択を行うことが必要であるが、変数の選択は、株価がどのような要因によって規定されるかという点についての考察

を踏まえたうえで行うべきであろう。

                                                   (29)

 一般に、株価は株式購入によって獲得される利益を現在の割引率(市場利子率)で評価したものと考えることができる。

したがって、株式市場全体の株価水準の指標としてのTOPIXについても、その基本的な変動要因としては次の二つの

ものが影響を及ぼしていると考えることができよう。第一は名目GNPや全産業経常利益などのように、上場企業の企業

業績に関する要因であり、第二はマネーサプライや市場利子率などの金利要因である。これら二つの要因以外にも為替レ

                                    (30)

ート、物価水準、海外経済要因などが株価水準に影響を及ぼす要因として考えられる。本稿においては上記のような要因

を考慮に入れ、TOPIXを始めとする次の一五系列の経済変数を分析の対象とした。①TOPIX、②名目GNP、

304(304)

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多変量時系列変動要因分析モデル

図表1 採用系列の因子負荷量

変 数因  子  負  荷  量

第・主成分1第・主成分悌・主成分 第4主成分

TOP IX 0.9760 0.0978

名目GNP 0.8238 0.5206

全産業経常利益 0.8085 0.4503

機械受 注 0.7388 0.6283

原材料在庫率 一〇.7975 一〇.1051

住宅着工戸数α3931鴨

一〇.6927

マーシャルのK 0.9096 0.3542

コール・レート 一〇。5749 0.5746

長期国債利回り 一〇.8218 0.3384

外貨準備高 0.8740 一〇.0914

為替レート 一〇.8067 0.1072

TB レー ト 一〇.4994 0.6129

N Y ダ ウ 0.9559 0.0565

原 油 価 格 一〇.3460 0.9021

卸売物価指数 一〇,1531 0.9620

固  有  値

寄 与 率(%)

累積寄与率(%)

8.1752

 54.5

 54.5

4.0772

 27.2

 81,7

 0.0111

-O.1733

 0.1492

-O.0282

-0.0089

 0.4088

-0.1411

 0.1972

 0.2477

 0.3324

-0.4051

 0,4876

-0.0566

 0.0873

-O.1309

0.8809

 5.9

 87.6

一〇.0576

-0,0502

 0.1792

 0.1019

-0.4819

 0.2623

-0.0131

 0.2992

 0.2004

-0.1990

 0.2230

-0.1922

-0.0525

-0.1214

-0.0299

O. 6234

 4.2

 91.8

(資料) 東京証券取引所r東証統計月報』東京証券取引所調査部。日本銀行調査

  統計局r経済統計月報』日本銀行。大蔵省r財政金融統計月報』大蔵省印

  刷局。経済企画庁調査局r経済月報』大蔵省印刷局。International Mone・

  tary Funds, International Financiat Statistics.

五系列の変数の一九七七年第1四半期

305

以下において使用するのは、これら

準に関する指標とみることができよう。

関係する指標であり、⑭、⑮は物価水

⑩~⑬は海外要因、金利要因の両者に

~⑨は金利要因に関する指標である。

業業績に関する指標である。また、⑦

五系列のデータのうち、②~⑥は企

⑭原油価格、⑮卸売物価指数。これら

ート、

⑬NYダウ工業株三〇種平均、

外貨準備高、⑪為替レート、⑫TBレ

ート、

⑨国債利回り(最長期物)、

数、⑦マーシャルのK、⑧コール・レ

率指数(製造業)、⑥新設住宅着工戸

舶・電力を除く民需)、⑤原材料在庫

③全産業経常利益、④機械受注(船

(305)

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多変量時系列変動要因分析モデル

から一九八七年第4四半期までの期間の四半期データである(ただし、②、④、⑤は季節調整済みの数値を使用した)。

 上記の一五系列の変数を対象としたMTVモデルによる分析結果を、以下の順で検討する。まず最初に、抽出された各

主成分の内容を検討し、次に、これらの主成分を用いてTOPIXの変動要因の分析を行い、最後にTOPIXの予測を

行う。

 図表1には各主成分の固有値、寄与率、累積寄与率、および変数ごとの因子負荷量を示してある。これらの数値は通常

の主成分分析を行うことによって得ることができる。この表から明らかなように、主成分のうち固有値が一以上の大きさ

をもつのは第二主成分までで、第一主成分、第二主成分の固有値はそれぞれ八・一八、四・〇八である。また、各主成分

の寄与率は、第一主成分五四・五%、第二主成分二七・二%、第三主成分五・九%、第四主成分四.二%であり、第四主

成分までで変数全体の変動の九一・七%を説明している。それでは、各主成分はどのような経済学的意味をもつのであろ

うか。このことを検討するために、図表2に各主成分の因子得点の推移を示した。これを参考にしながら、第一主成分か

らその経済学的な意味を検討していくことにする。

 まず、第一主成分の因子得点の推移を示したグラフをみると、右上がりのトレンドが観察される。この主成分と相関が

高い(因子負荷量の大きい)変数を調べると、正の相関を示したものの中ではTOPIXが最も高く、この外にNYダウ、

マーシャルのKが○・九以上の相関を示し、さらに外貨準備高、名目GNP、全産業経常利益が○・八以上の相関を示し

ている。他方、負の相関をもつ変数では長期国債利子率、為替レート、在庫率の三変数が比較的高い負の相関を示してい

る。正の相関をもつ変数は、いずれも上昇トレンドをもつものであり、他方、負の相関を示した変数は趨勢的にその水準

306(306)

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         多変量時系列変動要因分析モデル

           図表2 因子得点の推移

(a)’第1主成分の因子得点

3

2

1

0

-1

-2

  L1977」  L1978」  L1979」 L1980」 L1981」  Ll982」  L1983」  L1984」  L1985」  Ll986」  L1987」

(b)第2主成分の因子得点

1.5

 1

 0

-1

-2

朗舶鯉㎞副㎞劇触副舶酬㎞副㎞側㎞か肋鯉舶が㎞

を低下させてきた

ものである。した

がって、第一主成

分はトレンドを表

すものと解釈でき

   (31)

るであろう。

 次に、第二主成

分の因子得点の推

移を示したグラフ

を見ると、一九七

九年に因子得点が

急激に増加し、 一

九七九年から一九

八五年にかけて高

い水準で推移した

後、一九八六年に

り30(073

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         多変量時系列変動要因分析モデル

(c)第3主成分の因子得点

2

1

0

一1

一2

L1977」 LI978」  L1979」  L1980」  L1981」  L1982」  L1983」  L1984」  Ll985」  L1986」  Ll987」

二 (d)第4主成分の因子得点

  3

2

1

0

一1

一2  Ll977J LI97S」し1971」. lil8Q」、 L1981」L1982」L1983」L1984」L1985」し1986」L1987」

(資料) 図表1に同じ。

油価格を始めとす

る一次産品の価格

の下落がみられ、

的30(

一九八六年には原

通りである。また、

れたことは周知の

ーションに見舞わ

に高率のインフレ

半を通じて世界的

後一九八〇年代前

た年であり、その

ショックが発生し

年は第二次オイル

再び低い水準に戻 08

          3

っていることが判

明する。 一九七八

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多変量時系列変動要因分析モデル

物価水準の低下がもたらされたことも記憶に新しい。この第二主成分に関して高い正の相関を示したのは原油価格と卸売

物価指数であり、このことから第二主成分は物価要因を表しているとみなすことができる。この二変数以外に第二主成分

に対して正の相関を示した変数のうち、相関係数がプラス○・五以上となったのは名目GNP、機械受注、コール・レー

ト、TBレートである。名目GNPと機械受注が物価水準にある程度呼応した動きを示したのは、これらの系列が実質値

ではなく名目値であるためであると考えられる。また、コール・レートならびにTBレートの二変数が正の相関を示して

いるのは、インフレ期においては、物価の高騰を抑制するために金利が高く設定され、また物価安定期には金利は低めに

設定されることを反映したものと解釈できよう。他方、絶対値が○・五以上の負の相関が観察されたのは新設住宅着工戸

数の一変数だけである。これは一九七九年から一九八〇年代前半の高金利時代において住宅建設が冷え込んだことを示唆

している。

 第三主成分ならびに第四主成分に関しては、高い相関を示した変数は見あたらない。第三主成分についてはその相関係

数の絶対値が○・四~○・五の数値を示したのは、TBレート、新設住宅着工戸数、為替レートの三変数にすぎない。T

Bレートと為替レートは逆相関であり、アメリカの金利と円のレートとの問に、米国の高金利と円安、あるいは米国の金

利の低下と円高という関係があることは説明が可能であるが、これら二変数と住宅建設との関係については解釈が困難で

ある。したがって、第三主成分に対して経済学的な意味づけを行うことは困難であるといわざるをえない。第四主成分に

対して相関を持つ変数はさらに限定され、僅かに在庫率がマイナス○・四八の値を示しているにすぎず、他の変数はいず

れも相関係数の絶対値が○.三未満である。敢えて第四主成分の意味付けを行うとすれぽ、この主成分が在庫循環の逆サ

(309)309

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多変量時系列変動要因分析モデル

イクルを表しているということになろう。

 以上の結果を参考にしてTOPIXの変動要因の分析を行うことにする。図表1で与えられた第一主成分~第四主成分

の因子負荷量を、前節で示した個式に代入すると、TOPIXの変動は次のように近似できる。

   N、11ρミ88+98刈o。欝+ρO目HQ°・「ρ8♂Q£               §

ただし、左辺の銑は時点~におけるTOPIXの標準得点であり、右辺の因子負荷量はTOPIXと各主成分との相関を

表している。ところで因子負荷量の二乗は、各主成分がTOPIXの変動を説明する割合を示す。そこでTOPIXに対

する各主成分の説明力をみるために、因子負荷量の二乗を計算すると、第一主成分でTOPIXの変動の九五.二六%が

説明されることになり、第二主成分、第三主成分、第四主成分はそれぞれ○・九六%、○・〇一%、○.三三%の説明力

しか持たないことが判明する。つまり、TOPIXの変動は第一主成分だけでほぼ説明されることになる。このように第

二主成分以下の各主成分の説明力が低いことから、TOPIXに関しては、その変動要因を表わすモデルとして、第一主

成分の因子得点だけを説明変数とする次式を考えても差し支えないであろう。

   N-ρり♂Qご                              8

 ところで、すでに述べたように、MTVモデルでは、各主成分の因子得点が定常ARMAモデルに従うことを仮定して

おり、変数の変動要因を特定するためには、さらに各主成分の因子得点に時系列モデルをあてはめる必要がある。しかし、

上述のように、TOPIXの変動の九五・二六%が第一主成分の変動で説明されるわけであるから、この場合、時系列モ

デルのあてはめは第一主成分の因子得点だけを対象としても差し支えないであろう。そこで、図表3に示した第一主成分

310(310)

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多変量時系列変動要因分析モデル

図表3 TOPIXの実績値と推定値

期 間

123412341234123412341234

77778888

77777777

99999999

11111111

99990000

77778888

99999999

11111111

11112222

88888888

99999999

11111111

12341234

33334444

88888888

99999999

11111111

1234123412341234

55556666

88888888

99999999

11111111

77778888

88888888

99999999

11111111

第1主成分の

因子得点

19986431

10000000

一一一一 一一

誕溺霧箋護覆畿麗鰯繋錘藏㌶藻躍搬飛㎜鰯鰯

33478688

00000000

一一一一一一

76866676

00000000

一一一}一 一

42200102

00000000

【【一

24468345

00000111

84467801

12222233

    ****

TO P I X

実 績 値

00396472

05222741

96105031

77878124

33333444

35452562

35381237

37993552

54446679

44444444

15713512

15741775

96360383

05856426

55555555

33704186

90978735

12121181

93798296

56667878

07670239

30809007

49027656

58228766

99000244

  11占1111

61568656

48033043

70114354

42607761

71099112

12211222

推 定 値

98894270

48610428

21379857

74606618

23344566

29121661

17802565

07730077

12759680

66543434

79806590

53731720

95032723

17808628

44354444

49638158

43711726

48341791

76782581

56678879

31718078

33664159

37395749

19078736

99001344

  111111⊥

12325095

53645371

43240905

31973851

69890012

11112222

    ****

(注)*

(資料)

311

は予測値。

図表1に同じ。

(311)

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多変量時系列変動要因分析モデル

の因子得点に時系列モデルをあてはめると、次のような一次の自己回帰モデルARωがえられる。

   Qご11H°OミQ〒μ+9                           巨

このモデルの係数は、一・〇四七と一にきわめて近く、第一主成分の因子得点の変動がランダムウォ:ク(鑓ロαoヨ芝巴犀)

的であることが明らかである。ランダムウォークモデルとは、’期の変数の値を銑、(鳳ーH)期の値を卸とするとき、斯

の変動を

   き11き上十9                            .   豊

で表すものである。このモデルでは、時点~から時点(~1]°)への変化分は時点≠の誤差項軌で決まる。したがって、’

期の値に対する情報はすべて一期前の値に集約されていて、それを把握すれぽ~期の値の中にはもはや過去のシステマテ

                (32)

イックな規則性を残さないモデルである。このモデルでは平均も分散も存在しないが、⑳式では(~lH)期の変数の係数

が一よりも大きいために、図表2㈲に示した因子得点のグラフが上方にシフトする形になっているのである。

 それでは、砺の変動がランダムウォーク的であることの経済学的な意味はどのようなものであろうか。株価理論にお

いては、弱意効率的市場仮説(≦①舞①臣9。三日帥蒔gげ巻oひ①ω冨)と同義のものとしてランダムウォーク仮説が提示

されている。この仮説は、ある期の株価は、それに先行する各期の株価変動からまったく独立であることを主張するもの

である。すなわち、株価の変動になんらかの規則性があるとすれぽ、過去の変動パターンを分析することによって将来の

変動を予測することができることになるが、もしそのような規則性があれぽ直ちに多くの人がそれを利用して利益を得よ

うとして売買し、その結果、現在の株価が修正されてしまうので、結局そのような規則性そのものが消滅してしまうと考

312(312)

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多変量時系列変動要因分析モデル

図表4 TOPIXの実績値と推定値TOPIX

2200

2000

1800

1600

1400

1200

1000

800

600

400

200

0

凡例

一TOPIXの実績値一一一 sOPIXの推定値。 予測魑

 ,、 ノ  、9ρ、’        、

〉、_ρ_ノ、》’ρ㌔、》/

t’t,”

’’

’’一

  L1977」 L1978」 Ll979」 し1980」 L1981」 L1982」  L1983」 Ll984」 し198

(資料) 図表3から作成。

    (33)

えるのである。今日では、この仮説の妥当性は理論的にも経験的に

        (34)

もほぼ認められている。このように第一主成分の因子得点の変動は

ランダムウォーク的であり、しかもこの変動がTOPIXの変動の

大部分を説明していることから、総合的な株価の指標であるTOP

IXについても、ランダムウォーク仮説が妥当することを指摘でき

よう。

 本節の最後の課題は、MTVモデルを用いてTOPIXの予測を

行うことである。ここでは、一九八八年第1四半期~第4四半期の

四つの時点について、29式に基づいて第一主成分の因子得点を予測

し、これを基礎にしてTOPIXの予測値を計算した。例えば、一

九八八年第1四半期の因子得点は、⑳式を基礎にして予測すると

二.七四六となる。これを20式に代入すると、N11ρり蕊×P謡011

P①。。Oとなるが、さらに元の単位に変換するためには、この二・六

八〇にTOPIXの標準偏差をかけたうえで、TOPIXの平均を

加えれぽよい。すなわち、一九八八年第1四半期のTOPIXの予

測値を名とすると、齢11謡Nり。。+ド①゜。×駆①刈゜ω①H卜σO°。9紹が得られ

(313)313

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多変量時系列変動要因分析モデル

繍四

ッ様にして、一九八八年第2四半期~第4四半期のTOPIXの予測値をそれぞれ商、病、ぬで表すと、あ11二〇八

九ニニ○、・挽11一二五〇・七九、飾11二二一五・一五が得られる。他方、一九八八年第1四半期~第4四半期のTOPI

Xの実績値は、一九七四・三八、二一七三・〇六、一=六五・四五、二二一四・三六であったので、予測値は実績値に対

して、プラスニ・八四%、マイナス三・八五%、マイナス○・六八%、プラス○・〇四%の誤差を示したことになる。し

たがって、この四つの時点に関する限りMTVモデルの予測力は良好であるといえるであろう。このことから短期の予測

に関しては、MTVモデルは予測力をもっているように思われる。しかし、MTVモデルが常に株価水準の変動を説明.

予測できるとは限らない。図表4にはTOPIXの実績値とMTVモデルによるTOPIXの推定値の推移を図示してあ

るが、これから明らかなように、第二次ナイルショック、および一九八七年における株価の急激な変動などのように、急

速な状況の変化が生じた場合においては、推定値と実績値の乖離は大きくなっているのである。

W む す び

 本稿においては、一五系列の経済変数を対象としてMTVモデルを適用し、TOPIXの変動要因の分析と予測を行っ.

た。変動要因の分析では、一五変数から抽出された主成分のうち、第一主成分だけでTOPIXの変動の九五.二六%が

説明された。第一主成分と高い相関をもつ変数との関連においてこの主成分の意味を考察すると、この主成分がトレンド

を表すものであると推察された。第一主成分の因子得点に時系列モデルをあてはめると、因子得点の変動はランダムウォ

ーク的であることが明らかとなった。第一主成分はTOPIXの変動の大部分を説明できるわけであるから、TOPIX

314(314)

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多変量時系列変動要因分析モデル

自体の変動もランダムウォーク的であると判断できる。このように総合的な株価の指標としてのTOPIXの変動がラン

ダムウォーク的であることは、株価理論において指摘されている証券市場の効率性を確認するものであるといえよう。他

方、TOPIXの将来値予測に関しては、MTVモデルの予測力は比較的高いように思われた。しかし、MTVモデルの

前提である定常性の条件が満たされるという保証はないので、モデルの安定性に関してはさらに検討の余地があろう。

 以上が、総合的な株価水準の指標としてのTOPIXを対象として行った、MTVモデルによる分析結果の要点である。

本稿での分析を通じて、このモデルには次のような利点があることを確認できた。第一に、計量モデルの識別(ω℃①9騨

                                         (36)

。象一§)には時間と労力を要する場合が多いが、これに対して、MTVモデルの識別は容易である。第二に、多変量時系

列の変動要因を、いくつかの要素に分解できることである。本稿の図表2に示したようにトレンド、構造変化などの要素

を主成分の変動から把握することが可能である。第三に、従来の主成分分析が現象の記述のために使用される範囲にとど

まっていたのに対して、MTVモデルでは時系列的な要素が加味されているので、予測モデルとして利用できることであ

るQ

 MTVモデルによる時系列分析はまだ一部で行われているにすぎないので、MTVモデルの有効性を検討するためには、

今後も引続き次のような研究が行われる必要があろう。第一に、株価や為替レートといった特定の経済現象にとどまらず

に、他の経済現象にもこのモデルを適用することである。第二に、経済現象の変動に関する説明力ならびに予測力を他の

分析方法と比較検討することである。第三に、MTVモデルの前提である、主成分の定常性に関して理論的に再検討を行

うことである。

(315)315

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多変量時系列変動要因分析モデル

  注

(1) 株価指数については、次の文献を参照した。住ノ江佐一郎『株式価格要論』ダイヤモンド社、一九六八年、一〇一-一=二頁。

  小野二郎『証券価格論』同文館、一九七九年、一八六ー二一八頁。

(2) 小野二郎、前掲書、二〇七頁。

(3) 刈谷武昭『計量経済分析の考え方と実際』東洋経済新報社、一九八六年、五頁。

(4) 前掲書、五-六頁。

(5) 下村昌作「TOpIX(東証株価指数)の予測モデルについて」『証券』第四〇巻四六九号、一九八八年、八1二三頁。

(6) 高橋克秀「株価の変動とマクロ経済」小峰隆夫編著『株価・地価変動と日本経済』東洋経済新報社、一九八九年、四一ー五九頁。

(7) 刈谷武昭、前掲書、七頁。

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(9) 時系列モデルが経済学において注目を浴びた事情については、次の論文が簡潔に説明している。加納悟「時系列解析と時系列モ

  デル」『季刊現代経済』臨時増刊号、一九八二年、一七〇頁。

(10) 西尾敦「時系列因子分析の応用について」統計研究会『景気変動の分析と予測に関する調査』一九八四年、一〇五頁。

(11) 斉藤瀞「時系列分析i株価への適用1」『証券調査』新日本証券調査センター、一八六号、一九八六年、四四-五四頁。

(12) 刈谷武昭「多変量時系列変動要因分析モデル」『経済研究』第三七巻一号、一九八六年、=ニー二三頁。

(13) 日本銀行調査統計局計量分析係「MTVモデルによる為替レートの変動分析と予測」第一六回マクロ計量モデル研究会議報告、

  一九八五年。この報告資料を入手するために日銀の担当部署に問い合わせたところ、これは内部資料であるため、外部には出せな

  いとのことであった。しかし、報告の内容は刈谷氏の『計量経済分析の考え方と実際』の中で詳細に紹介されているので、これに

  依拠しても差し支えないとのことであった。したがって、本稿では、日銀のこの研究については、刈谷氏の著作に依拠した。

(14) 本節の記述は、刈谷武昭、前掲書、第四章に依拠した。また、本節のω~㈹式も同書を参考にした。

(15) 奥野忠一・久米均・芳賀敏郎・吉澤正『多変且里解析法』日科技連、一九七一年、一五九頁。

(16) 主成分分析のアルゴリズムについては、U邑o亭≦°幻゜。ロ畠Oo冠゜。沖99ζニミミ欺蛇ミご譜》ミミ携龍%ミミ瀞o譜霜§儀』特黛㍗

316(316)

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多変量時系列変動要因分析モデル

  “ミご蕊隔旨§≦一一Φ《睾αω89Z①謹曜o蒔Hり゜。倉℃,卜。ωーαP奥野忠一他、前掲書、一五九-二五八頁、等を参照されたい。

(17) 刈谷武昭、前掲書、九七ー九八頁。

(18)勿論、経済時系列の分析に主成分分析が用いられなかったわけではない。株価の時系列分析を例にとっても、主成分分析を応用

  した代表的なものとして次の論文がある。閏①自①ざ菊゜ゆ巳出窃8び∪°P”..ω8集ζp蒔oけぎ巳8。・“〉℃Hぎ。首巴Ooヨb80三

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(19) 刈谷武昭、前掲書、八九頁。

(20) ここでの定常性は、「弱定常性(≦㊦算ω霊ユ8霞一蔓)」を仮定する。定常性についての詳細な議論は、次の文献を参照されたい。

  Z①匡o〈ρζ二〇話臣①ひO」≦。⇔昌畠O胃爵臣9臼゜い二』蕊ミ携賊いo、肉“§o§讐↓馬§恥ωミ馬塁b>oo山①日凶o℃お■■--層Z⑦毛嘱o噌犀

  H⑩圃P署。邸ω山O°また、弱定常性の簡潔な定義は、〉巳臼゜・oPO°U二§§偽⑦ミ鳶い臥嵩ミ携蹄黛§賊き、鳴§詮ミ肉、↓営馳o苧

  、§ミ塁毎廿㌧、o§智ゆ仁洋o同≦o#ゲ伊ピo巳8一〇刈ρ唱℃°○。1心において与えられている。

(21) 時系列モデルに関しては多数の文献が存在するが、本稿では以下の文献を主に参照した。加納悟、前掲論文、一七〇1一八六頁。

  高森寛「経済データの時系列分析と予測ω~ω」『オペレーションズ・リサーチ』第二九巻二号~五号、 一九八四年。溝口敏行・

  刈谷武昭『経済時系列分析入門』東洋経済新報社、 一九八三年、 一〇五-二〇二頁。℃言音。ぎ開゜Qo°導鳥勾直げぎh99∪°い二

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(22) 刈谷武昭、前掲書、九三頁。

(23) 以下、㈲~働式は、刈谷武昭、前掲書、九二ー九三頁、を参照した。

(24) RATSはわが国ではまだ普及していないが、時系列分析を主目的とした統計パッケージであり、メインフレーム用のバージョ

  ンと、パソコン(IBM PC)用のバージョンが提供されている。パソコン用のバージョンでは、ロータスーi213などのア

  プリケーションソフトで作成したファイルとの間で直接読み書きできるのが特徴となっている。U。mP↓°〉°°。ロ山ζ葺魯臼ρ。昌”即’

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(317)317

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多変量時系列変動要因分析モデル

(25) 岩田暁一『計量経済学』有斐閣、一九八二年、二九三頁。                            18

(26) 高森寛、前掲論文、第二九巻三号、四四頁。                                     3

(27) 刈谷武昭、前掲書、九六頁。

(28) 階差の経済的意味について示唆に富む説明が次の文献に示されている。山本拓『経済の時系列分析』創文社、一九八八年。

(29) 下村昌作、前掲論文、一二頁。

(30) わが国の株価とマクロ経済変数との関係については、次の文献を参照されたい。松本和男『株価変動と景気循環』日本経済新聞

  社、一九八五年、二五-一一〇頁。

(31) MTVモデルを用いた実証研究では、第一主成分がトレンドとして解釈されることが多い。

(32) 刈谷武昭、前掲書、八〇頁。

(33) 米沢康博・丸淳子『日本の株式市場』東洋経済新報社、一九八四年、四七ー四八頁。証券団体協議会編『証券用語辞典』東洋経

  済新報社、一九八八年、一四一、一五六頁。

(34) 丸淳子・首藤恵・小峰みどり『現代証券市場分析』東洋経済新報社、一九八六年、一五〇ー一六二頁。

(35) MTVモデルにおいても予測値の信頼区間を求めることができる。この信頼区間は、時系列モデルによる因子得点の将来値の予

  測の段階で得られる。

(36)9曇”≦9巳ω゜ご葺y・、田a冨;°罵。9具ぎ・密三昌さ三毒聾・凋。§婁冨。島§§一。↓一目㌫巴…..・

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(318)