CL-Quantアドオンモジュール 「機械学習-画像分類...

Application note_jp_008_v1.0 Application Note CL-Quantアドオンモジュール 「機械学習-画像分類」を用いたヒトiPS細胞 由来GABA作動性神経細胞の画像分類 < BioStation CT 使用例> コンピューターの性能向上により、機械学習を用いた画像解析を行えるようになりました。ヒトの目による画 像分類を機械学習で実施することは、作業者による精度のバラつきや見逃しの改善、作業の軽減などにつなが ります。さらに、画像解析の処理量及び速度向上の観点から、様々な分野で導入が要求されています。 画像解析ソフトウェアCL-Quantのアドオンモジュール「デシジョンモジュール」には、デシジョンツリー(決 定木)による機械学習を実施する機能があります。CL-Quant アドオンモジュール「機械学習-画像分類」と組 み合わせて使用することで、教師画像全体のテクスチャーや輝度などに基づくデシジョンツリーを簡単に作成 することが可能です。作成したデシジョンツリーを用いた画像分類により、細胞の状態を自動判別できます。 細胞培養観察装置BioStation CTを用いて撮影したヒトiPS細胞由来GABA作動性神経細胞の位相差画像を、 本アドオンモジュールを用いて画像分類し、培養日数の違いによる差を判別しました。 観察装置 ■ BioStation CT (Nikon, MLA10000) 画像解析ソフトウェア ■ CL-Quant ver. 5.02 (Nikon, MLS21000) CL-Quant アドオンモジュール ■ CL-Quantデシジョンモジュール (Nikon, MLS21010) ■ 機械学習-画像分類 PC-IC01 (Nikon, MLS30401) 細胞 ■ ヒトiPS細胞由来GABA作動性神経細胞:hiPSC- derived GABAergic Neuron from Healthy Donor(Elixirgen Scientific, EXGS-QNGSVF- CW50065-1M) 試薬及び材料 ■ DMEM/F-12, no glutamine (Thermo Fisher Scientific, 21331020) ■ Neurobasal TM Medium (Thermo Fisher Scientific, 21103049) ■ GlutaMAX TM Supplement (ThermoFisher Scientific, 35050061) ■ Penicillin-Streptomycin, Liquid(Thermo Fisher Scientific, 15140122) ■ iMatrix-511 silk(MATRIXOME, 892 021) ■ Y-27632 2HCl (Selleck Chemicals, S1049) ■ Quick-Neuron TM GABAergic- Maintenance Medium (Elixirgen Scientific, EXGS-QNGM) ■ Coster® 24-well TC-treated Multiple Well Plates(Corning, 3526) 方法 ヒトiPS細胞由来GABA作動性神経細胞を解凍し、 iMatrix-511 silkをコートした24ウェルプレートの2 ウェルに、2.0×10 5 細胞/ウェルの細胞密度で播種しま した。播種した細胞はBioStation CTで37℃、加湿した 5% CO 2 環境下で培養しました。 BioStation CTの中で1日間培養後と29日間培養後に、 10倍の対物レンズでウェル中心部の20×20視野(約 15mm×15mm)をカスタム観察地点登録し、カスタ ムフォーカスにて位相差画像を撮影しました。 まず、片方のウェルの画像からメニスカスの影響のな い領域の10視野を教師画像として選定しました。播種 1日後と29日後に撮影された教師画像(各10画像)を CL-Quantのアドオンモジュール「機械学習-画像分類」 を用いて解析し、得られた計測値を用いて「Decision Procedure」からデシジョンツリーを作成しました。 作成されたデシジョンツリーは「Wizard Decision Procedure 1」として解析メニューの項目に自動表示 されました。 次に、残った一方のウェルの画像から、メニスカスの 影響のない領域の3視野をテスト画像として選定し ました。播種1日後と29日後に撮影されたテスト画 像(各3画像;「Day 1_no1」、 「Day 1_no2」及び「Day 1_no3」並びに「Day 29_no1」、 「Day 29_no2」及び 「Day 29_no3」)を「機械学習-画像分類」を用いて計測 したのち、教師画像から作成した「Wizard Decision Procedure 1」を用いて解析することで、デシジョン ツリーに従った画像分類結果を得ました。

Transcript of CL-Quantアドオンモジュール 「機械学習-画像分類...

Page 1: CL-Quantアドオンモジュール 「機械学習-画像分類 …...定木)による機械学習を実施する機能があります。CL-Quant アドオンモジュール「機械学習-画像分類」と組

Application note_jp_008_v1.0

Application Note

CL-Quantアドオンモジュール

「機械学習-画像分類」を用いたヒトiPS細胞 由来GABA作動性神経細胞の画像分類

< BioStation CT 使用例>

コンピューターの性能向上により、機械学習を用いた画像解析を行えるようになりました。ヒトの目による画像分類を機械学習で実施することは、作業者による精度のバラつきや見逃しの改善、作業の軽減などにつながります。さらに、画像解析の処理量及び速度向上の観点から、様々な分野で導入が要求されています。画像解析ソフトウェアCL-Quantのアドオンモジュール 「デシジョンモジュール」には、デシジョンツリー(決定木)による機械学習を実施する機能があります。CL-Quant アドオンモジュール「機械学習-画像分類」と組み合わせて使用することで、教師画像全体のテクスチャーや輝度などに基づくデシジョンツリーを簡単に作成することが可能です。作成したデシジョンツリーを用いた画像分類により、細胞の状態を自動判別できます。細胞培養観察装置BioStation CTを用いて撮影したヒトiPS細胞由来GABA作動性神経細胞の位相差画像を、本アドオンモジュールを用いて画像分類し、培養日数の違いによる差を判別しました。

観察装置■ BioStation CT (Nikon, MLA10000)

画像解析ソフトウェア■ CL-Quant ver. 5.02 (Nikon, MLS21000)

CL-Quant アドオンモジュール■ CL-Quantデシジョンモジュール (Nikon,

MLS21010)■ 機械学習-画像分類 PC-IC01 (Nikon,

MLS30401)

細胞■ ヒトiPS細胞由来GABA作動性神経細胞:hiPSC-

derived GABAergic Neuron from Healthy Donor(Elixirgen Scientific, EXGS-QNGSVF-CW50065-1M)

試薬及び材料■ DMEM/F-12, no glutamine (Thermo Fisher

Scientific, 21331020)■ NeurobasalTM Medium (Thermo Fisher

Scientific, 21103049)■ GlutaMAXTM Supplement (ThermoFisher

Scientific, 35050061)■ Penicillin-Streptomycin, Liquid(Thermo

Fisher Scientific, 15140122)■ iMatrix-511 silk(MATRIXOME, 892 021)■ Y-27632 2HCl(Selleck Chemicals, S1049)■ Quick-NeuronTM GABAergic- Maintenance

Medium (Elixirgen Scientific, EXGS-QNGM)■ Coster® 24-well TC-treated Multiple Well

Plates(Corning, 3526)

方法ヒトiPS細胞由来GABA作動性神経細胞を解凍し、iMatrix-511 silkをコートした24ウェルプレートの2ウェルに、2.0×105細胞/ウェルの細胞密度で播種しました。播種した細胞はBioStation CTで37℃、加湿した5% CO2環境下で培養しました。BioStation CTの中で1日間培養後と29日間培養後に、10倍の対物レンズでウェル中心部の20×20視野(約15mm×15mm)をカスタム観察地点登録し、カスタムフォーカスにて位相差画像を撮影しました。まず、片方のウェルの画像からメニスカスの影響のない領域の10視野を教師画像として選定しました。播種1日後と29日後に撮影された教師画像(各10画像)をCL-Quantのアドオンモジュール「機械学習-画像分類」を用いて解析し、得られた計測値を用いて「Decision Procedure」からデシジョンツリーを作成しました。作成されたデシジョンツリーは「Wizard Decision Procedure 1」として解析メニューの項目に自動表示されました。次に、残った一方のウェルの画像から、メニスカスの影響のない領域の3視野をテスト画像として選定しました。播種1日後と29日後に撮影されたテスト画像(各3画像;「Day 1_no1」、「Day 1_no2」及び「Day 1_no3」並びに「Day 29_no1」、「Day 29_no2」及び

「Day 29_no3」)を「機械学習-画像分類」を用いて計測したのち、教師画像から作成した「Wizard Decision Procedure 1」を用いて解析することで、デシジョンツリーに従った画像分類結果を得ました。

Page 2: CL-Quantアドオンモジュール 「機械学習-画像分類 …...定木)による機械学習を実施する機能があります。CL-Quant アドオンモジュール「機械学習-画像分類」と組

<観察装置のご紹介>インキュベータに内蔵した顕微鏡で細胞を長期モニタリングできるBioStation CTや、ステージを動かさずにスクリーニング可能なBioStudio-T。いずれも細胞に与えるストレスを抑え、経時変化をタイムラプス撮影できます。ニコンのライブセルイメージング機器と独自の画像解析技術を用いることにより、細胞の特性をリアルタイムで、経時的に観察・解析することが可能です。

BioStation CT BioStudio-T

108-6290 東京都港区港南2-15-3(品川インターシティ C棟)https://www.nikon.co.jp/

バイオサイエンス営業本部140-0015 東京都品川区西大井1-6-3(株式会社ニコン 大井ウエストビル3F)Tel:(03)3773-8138https://www.microscope.healthcare.nikon.com/ja_JP/

お問い合わせ先

結果教師画像として使用した、播種1日後と29日後のヒトiPS細胞由来GABA作動性神経細胞の代表画像を図1に示しました。また、これらの教師画像の学習で得られたデシジョンツリーを図2に示しました。

次に、テスト画像の分類結果を図3に示しました。「Day 1_no1」、「Day 1_no2」及び「Day 1_no3」は、Day 1として分類され、「Day 29_no1」、「Day 29_no2」及び「Day 29_no3」はDay 29として分類されました。分類結果は 「イメージパネル」 及び「コンテントパネル」に色分け表示されるとともに、

「Subset」列に文字で表示され容易に確認できました。さらに、「Chartsパネル」でテスト画像6枚の

「Correlation2East」の値の分布を確認できました。

図1 教師画像の代表例播種1日後(A)と29日後(B)のヒトiPS細胞由来GABA作動性神経細胞の位相差画像

図3 画像分類結果自動解析後の「Rフレーム(認識フレーム)」 を示した。

まとめCL-Quant Add-on Module「機械学習-画像分類」及び

「Decision Module」を用いることで、培養日数に対応するヒトiPS細胞由来GABA作動性神経細胞の位相差画像を分類することができることが示されました。

図2 デシジョンツリー「Correlation2East」が0.4136より大きい場合はDay 1に、0.4136以下の場合はDay 29に分類された。