産業活動分析(平成24年1~3月期) 【高齢者世帯...

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産業活動分析(平成24年1~3月期) - 52 - 【高齢者世帯の消費について】 高齢化が急速に進展する中で、世帯主が60歳以上の高齢者世帯 1 (以下、単に「高 齢者世帯」という。)の年間最終消費支出額は、23年に 100 兆円を超え、SNAベース の名目家計最終消費支出額(除く持ち家の帰属家賃)の約 44%に達した 2 (第Ⅱ-1- 12図)。 高齢者世帯の増加は今後確実に進み、我が国の個人消費全体に及ぼす影響は一 層大きくなることが予想される。そうした中で、高齢者世帯の消費について、他の年代と の違い、高齢者世帯の中での年代別、属性別による違い等を明らかにし、高齢者の ニーズに応じた財、サービスを供給していくことが、我が国の個人消費を活性化させる 上で重要であると思われる。 今回の分析では、まず、①高齢者世帯の消費支出動向を概観する。次に、②高齢者 が何を消費しているのか把握するため、高齢者世帯の費目別の消費支出内訳につい て、他の年代と比較して見るとともに、高齢者世帯の中での属性(勤労者世帯と無職世 帯)による違いも見てみる。最後に、③高齢者のニーズの高い財、サービスは何か、品 目ベースで確認するため、品目毎の年齢階級別の消費支出額を全年齢平均で除した 値を算出し、高齢者世帯の消費支出額が高い品目を抽出する。また、高齢者世帯の消 費支出額が高く、かつ消費支出総額に占める割合の大きい品目を抽出し、その品目の 最近の消費動向を見ることとする。 1 一般的に「高齢者」は65歳以上と定義づけられているが、総務省「家計調査」及び総務省「全国消費実 態調査」の総世帯ベース(二人以上世帯+単身世帯)の集計結果では、世帯主の年齢階級を「~29歳」、 「30~39歳」、「40~49歳」、「50~59歳」、「60~69歳」、「70歳~」と区分して表章している。「65歳 ~」は再掲があるものの、それ以外の年齢階級については、5歳刻みでは集計はされていない。本稿では、 総世帯ベースで、他の年齢階級との比較や高齢者世帯の中での年代別の比較等を行うため、世帯主が6 0歳以上(「60~69歳」、「70歳~」)の世帯を「高齢者世帯」と定義する。 2 内閣府「国民経済計算」の23年の家計最終消費支出額(除く持ち家の帰属家賃)を、当該年の「家計 調査」(総務省)の年齢階級別消費支出規模(1世帯当たりの消費支出額×世帯数分布)の比率で按分し て推計。

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産業活動分析(平成24年1~3月期)

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【高齢者世帯の消費について】

高齢化が急速に進展する中で、世帯主が60歳以上の高齢者世帯1(以下、単に「高

齢者世帯」という。)の年間最終消費支出額は、23年に 100 兆円を超え、SNAベース

の名目家計最終消費支出額(除く持ち家の帰属家賃)の約 44%に達した2(第Ⅱ-1-

12図)。

高齢者世帯の増加は今後確実に進み、我が国の個人消費全体に及ぼす影響は一

層大きくなることが予想される。そうした中で、高齢者世帯の消費について、他の年代と

の違い、高齢者世帯の中での年代別、属性別による違い等を明らかにし、高齢者の

ニーズに応じた財、サービスを供給していくことが、我が国の個人消費を活性化させる

上で重要であると思われる。

今回の分析では、まず、①高齢者世帯の消費支出動向を概観する。次に、②高齢者

が何を消費しているのか把握するため、高齢者世帯の費目別の消費支出内訳につい

て、他の年代と比較して見るとともに、高齢者世帯の中での属性(勤労者世帯と無職世

帯)による違いも見てみる。最後に、③高齢者のニーズの高い財、サービスは何か、品

目ベースで確認するため、品目毎の年齢階級別の消費支出額を全年齢平均で除した

値を算出し、高齢者世帯の消費支出額が高い品目を抽出する。また、高齢者世帯の消

費支出額が高く、かつ消費支出総額に占める割合の大きい品目を抽出し、その品目の

最近の消費動向を見ることとする。

1 一般的に「高齢者」は65歳以上と定義づけられているが、総務省「家計調査」及び総務省「全国消費実態調査」の総世帯ベース(二人以上世帯+単身世帯)の集計結果では、世帯主の年齢階級を「~29歳」、

「30~39歳」、「40~49歳」、「50~59歳」、「60~69歳」、「70歳~」と区分して表章している。「65歳

~」は再掲があるものの、それ以外の年齢階級については、5歳刻みでは集計はされていない。本稿では、

総世帯ベースで、他の年齢階級との比較や高齢者世帯の中での年代別の比較等を行うため、世帯主が6

0歳以上(「60~69歳」、「70歳~」)の世帯を「高齢者世帯」と定義する。 2 内閣府「国民経済計算」の23年の家計最終消費支出額(除く持ち家の帰属家賃)を、当該年の「家計

調査」(総務省)の年齢階級別消費支出規模(1世帯当たりの消費支出額×世帯数分布)の比率で按分し

て推計。

産業活動分析(平成24年1~3月期)

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第Ⅱ-1-12図 高齢者世帯最終消費支出額の動向

0

5

10

15

20

25

30

35

40

45

50

0

50,000

100,000

150,000

200,000

250,000

300,000

12 13 14 15 16 17 18 19 20 21 22 23

(10億円)

59歳以下世帯の最終消費支出額

高齢者世帯の最終消費支出額

高齢者世帯の対最終消費支出額比率(右軸)

(%)

(注) 「国民経済計算」の家計最終消費支出額(除く持ち家の帰属家賃)を当該年の「家計調査」の年齢階級

別消費支出規模(1世帯当たりの消費支出額×世帯数分布)の比率で按分して推計。

資料:「国民経済計算」(内閣府)、「家計調査」(総務省)から作成。

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(1) 高齢者世帯の消費支出動向

① 高齢者人口及び高齢者世帯数の推移

我が国では高齢化が急速に進展しており、22年には、60歳以上の高齢者人口の全

人口に占める比率(人口構成比)は 30.7%、高齢者世帯の一般世帯総数に占める比率

(世帯数構成比)は 41.7%となった(第Ⅱ-1-13図、第Ⅱ-1-14図)。国立社会保

障・人口問題研究所によれば、高齢者人口は25年後の49年(2037年)まで増加し続

け、人口構成比は38年後の62年(2050年)に 45.1%まで上昇すると推計3されている。

第Ⅱ-1-13図 60歳以上の高齢者人口と高齢者世帯数及びそれぞれの構成比の推移

0%

5%

10%

15%

20%

25%

30%

35%

40%

45%

50%

0

5,000

10,000

15,000

20,000

25,000

30,000

35,000

40,000

45,000

50,000

高齢者人口 推計高齢者人口 高齢者世帯数

人口構成比(右軸) 推計人口構成比(右軸) 世帯数構成比(右軸)

(千人、千世帯)

資料:「国勢調査」(総務省)、「日本の将来推計人口」(国立社会保障・人口問題研究所)から作成。

第Ⅱ-1-14図 年齢階級別人口分布及び世帯数分布(22年)

9.3

28.6

14.9

14.2

15.8

13.1

16.7

12.7

41.7

30.7

0 10 20 30 40 50 60 70 80 90 100

世帯数分布

人口分布

~29歳

30~39歳

40~49歳

50~59歳

60歳~

(%)

(注) 年齢不詳の人口、世帯数を除外しているため、人口分布、世帯数分布ともに計 100.0%とはならない。

資料:「国勢調査」(総務省)から作成。

3 日本の将来推計人口はいくつかの仮定があるが、ここでは出生中位(死亡中位)推計を参照している。

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② 世帯主の年齢階級別消費支出規模の動向

総務省の「家計調査」から、世帯主の年齢階級別1世帯当たり1か月間の消費支出額

と世帯数分布(12~23年平均、総世帯ベース4)をみると、全世帯数の約4割を占める

高齢者世帯の消費支出額は平均よりも少ない(第Ⅱ-1-15図)。

第Ⅱ-1-15図 世帯主の年齢階級別1世帯当たり1か月間の消費支出額と世帯数分布

(12~23年平均、総世帯ベース)

0

5

10

15

20

25

30

35

40

45

0

5

10

15

20

25

30

35

~29歳 30~39歳 40~49歳 50~59歳 60歳~

(60~69歳、70歳~)

1世帯当たり1か月間の消費支出額

世帯平均

世帯数分布(右軸)

(万円) (%)

資料:「家計調査」(総務省)から作成。

しかしながら、1世帯当たりの消費支出額に世帯数分布を乗じた「消費支出規模」(1

2年=1005、総世帯ベース)の動向を世帯主の年齢階級別に見てみると、高齢者世帯

の消費支出規模は拡大傾向で推移している(第Ⅱ-1-16図)。

第Ⅱ-1-16図 世帯主の年齢階級別消費支出規模の動向

(12年=100、総世帯ベース)

50

60

70

80

90

100

110

120

130

140

12 13 14 15 16 17 18 19 20 21 22 23 年

29歳以下

30-39歳

40-49歳

50-59歳

60歳以上

全世帯

(注) 消費支出規模=1世帯当たりの消費支出額×世帯数分布

資料:「家計調査」(総務省)から作成。

4 総務省「家計調査」の「総世帯」は「二人以上の世帯」の「勤労者世帯」と「無職世帯」、「単身世帯」の「勤労者世帯」と「無職世帯」から成る。 5 総務省「家計調査」が総世帯ベースの数字を公表している平成12年以降を対象としている。

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消費支出規模の伸び率(前年比)及び年齢階級別寄与度の動向(12年=100、総

世帯ベース)を見てみると、高齢者世帯は、13年以降、18年と20年を除く全ての年で

プラスに寄与しており、全体を下支えしている(第Ⅱ-1-17図)。

第Ⅱ-1-17図 消費支出規模の伸び率(前年比)及び年齢階級別寄与度の動向

(12年=100、総世帯ベース)

13 14 15 16 17 18 19 20 21 22 23

▲ 4

▲ 3

▲ 2

▲ 1

0

1

2

3

4(%)

60歳以上

50-59歳

40-49歳

30-39歳

29歳以下

全世帯

(注) 消費支出規模=1世帯当たりの消費支出額×世帯数分布

資料:「家計調査」(総務省)から作成。

次に、高齢者世帯の1世帯当たりの消費支出額の動向を確認するため、世帯主の年

齢階級別1世帯当たりの消費支出額(12年=100、総世帯ベース)の動向を見てみると、

高齢者世帯の消費支出額は、他の年代と同じように減少傾向で推移している(第Ⅱ-1

-18図)。しかしながら、高齢者世帯の減少幅は他の年代の世帯と比べて小さい。

第Ⅱ-1-18図 世帯主の年齢階級別1世帯当たりの消費支出額の動向

(12年=100、総世帯ベース)

80

85

90

95

100

105

12 13 14 15 16 17 18 19 20 21 22 23 年

29歳以下

30-39歳

40-49歳

50-59歳

60歳以上

平均

資料:「家計調査」(総務省)から作成。

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高齢者世帯の消費支出規模の増減(前年差)を世帯数要因と消費支出額要因に分

解して見てみると、高齢者世帯の消費支出規模の拡大は、概ね世帯数増加要因に拠る

ものとなっている(第Ⅱ-1-19図)。

第Ⅱ-1-19図 高齢者世帯の消費支出規模増減(前年差)の要因分解

(12年=100、総世帯ベース)

13 14 15 16 17 18 19 20 21 22 23年

▲ 10

▲ 8

▲ 6

▲ 4

▲ 2

0

2

4

6

8

10消費支出額要因

世帯数要因

消費支出規模

(%)

(注)消費支出規模=1世帯当たりの消費支出額×世帯数分布

資料:「家計調査」(総務省)から作成。

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③ 高齢者世帯の平均消費性向

次に、世帯主の年齢階級別1世帯当たりの貯蓄・負債、年間収入、持ち家率(23年、

二人以上世帯ベース)を見てみると、高齢者世帯は他の年代と比較して、年間収入は

少ないが、大きな純貯蓄を有しており、持ち家率も高くなっている(第Ⅱ-1-20図)。

第Ⅱ-1-20図 世帯主の年齢階級別1世帯当たりの貯蓄・負債、年間収入、持ち家率

(23年、二人以上世帯ベース)

▲ 40

▲ 20

0

20

40

60

80

100

▲ 1000

▲ 500

0

500

1000

1500

2000

2500

貯蓄

負債

年間収入

持家率(%、右軸)

(万円) (%)→高齢者世帯

資料:「家計調査」(総務省)

可処分所得に占める消費支出の割合、すなわち、平均消費性向(23年、総世帯のう

ち勤労者世帯ベース)について年齢階級別に見てみると、高齢者勤労者世帯の平均消

費性向は 93.3%と他の年代の勤労者世帯と比較して高くなっている(第Ⅱ-1-21図)。

第Ⅱ-1-21図 世帯主の年齢階級別平均消費性向

(23年、総世帯のうち勤労者世帯ベース)

72.5

67.4 67.9 68.0

73.6

93.3

0

10

20

30

40

50

60

70

80

90

100

0

50,000

100,000

150,000

200,000

250,000

300,000

350,000

400,000

450,000

500,000

平均 ~29歳 30~39歳 40~49歳 50~59歳 60歳~

消費支出 可処分所得 平均消費性向(右軸)

(円) (%)

資料:「家計調査」(総務省)

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また、高齢者世帯の中で、世帯主の属性別で見てみると、高齢者世帯の約7割を占

める高齢者無職世帯6の平均消費性向は 128.0%と、高齢者勤労者世帯の 93.3%よりも

さらに高くなっている(第Ⅱ-1-22図)。高齢者無職世帯では、金融資産の取り崩しな

どで不足分を賄いながら、可処分所得を上回る消費をしている7(第Ⅱ-1-23図)。

第Ⅱ-1-22図 高齢者世帯の世帯属性別平均消費性向(23年、総世帯ベース)

93.3

128.0 128.0122.4

0

20

40

60

80

100

120

140

0

50,000

100,000

150,000

200,000

250,000

300,000

350,000

高齢者勤労者世帯 高齢者無職世帯 うち高齢者単身無職世帯 うち高齢夫婦無職世帯

消費支出 可処分所得 平均消費性向(右軸)(円) (%)

(注)高齢夫婦無職世帯は、夫65歳以上、妻60歳以上の世帯。

資料:「家計調査」(総務省)

6 総務省「家計調査」の高齢者世帯の世帯属性別分布(23年、総世帯ベース)をみると、「無職世帯」が68.3%、「無職世帯を除く勤労者以外の世帯(世帯主が商人、職人、個人経営者、農林漁業従事者、法

人経営者、自由業者などの世帯)」が 16.5%、「勤労者世帯」が 15.3%を占める。なお、「無職世帯」の内

訳をみると、「60歳以上の単身無職世帯」が 25.7%、「高齢夫婦無職世帯(夫65歳以上、妻60歳以上の

世帯)」が 23.3%、「その他」が 19.3%を占める。 7 内閣府「平成 22年度年次経済財政報告」では、「無職者を中心とする高齢者世帯がマクロの平均消費

性向を押し上げてきた」と分析している。また。無職世帯では、「可処分所得が減少しても、資産を取り崩し

て消費水準を維持した結果、消費性向が上昇した」と分析している。

産業活動分析(平成24年1~3月期)

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第Ⅱ-1-23図 高齢者世帯の1世帯当たり1か月平均の収支と金融資産増減額の動向

(総世帯ベース)

①高齢者勤労者世帯 ②高齢者無職世帯

19 20 21 22 23

▲60,000

▲10,000

40,000

90,000

140,000

190,000

240,000

290,000

340,000

390,000(円)

可処分所得 消費支出 黒字(可処分所得-消費支出)

19 20 21 22 23

▲60,000

▲10,000

40,000

90,000

140,000

190,000

240,000

290,000

340,000

390,000

(円)

可処分所得 消費支出 黒字(可処分所得-消費支出)

19 20 21 22 23

▲ 60,000

▲ 50,000

▲ 40,000

▲ 30,000

▲ 20,000

▲ 10,000

0

10,000

20,000

30,000

40,000

(円)

高齢者勤労者世帯黒字

高齢者無職世帯黒字

高齢者勤労者世帯金融資産純増減額

高齢者無職世帯金融資産純増減額

(注)「家計調査」(総務省)では、可処分所得から消費支出を控除したものを「黒字」と表記している。

資料:「家計調査」(総務省)から作成。

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(2) 高齢者世帯の費目別消費支出の内訳

次に、高齢者が何を消費しているのか把握するため、高齢者世帯の費目別消費支

出の内訳について、他の年代と比較して見るとともに、高齢者世帯の中での属性(勤労

者世帯と無職世帯)による違いも見てみることとする。

① 高齢者世帯の費目別消費支出額及び構成比

まず、世帯主の年齢階級別で、1世帯当たり1か月間の費目別消費支出額(23年、

総世帯ベース)を見てみると、高齢者世帯では、贈与金等の「交際費」8、「保健医療」、

「光熱・水道」、「家具・家事用品」に対する消費支出額が59歳以下の世帯と比較して

多くなっている(第Ⅱ-1-24図)。

第Ⅱ-1-24図 世帯主の年齢階級別1世帯当たり1か月間の費目別消費支出額

(23年、総世帯ベース)

55,584 61,034

15,771

23,20118,957

18,4788,5478,4767,811

11,90812,968

8,74122,972

39,64124,228

28,462

27,702

15,831

29,441

37,411

0

50,000

100,000

150,000

200,000

250,000

300,000

350,000

その他

交際費

教養娯楽

教育

交通・通信

保健医療

被服及び履物

家具・家事用品

光熱・水道

住居

食料

(円)

資料:「家計調査」(総務省)

8 総世帯ベースでは交際費の内訳は分からないため、二人以上世帯で確認すると、60歳以上の「交際

費」のうち贈与金の占める割合は約 90%である(23年)。

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また、高齢者世帯では、消費支出額に占める「交際費」、「保健医療」、「食料」、

「光熱・水道」、「家具・家事用品」、「教養娯楽」の割合が59歳以下の世帯と比較して

大きくなっている(第Ⅱ-1-25図)。こうした背景には、高齢者世帯では、子供や孫

への贈与金が含まれる「交際費」に対する支出が多くなることや、他の年代と比べて

自宅にとどまる時間が長くなることから、「光熱・水道」、「家具・家事用品」に対する支

出が多くなること等があるものと考えられる9。

第Ⅱ-1-25図 世帯主の年齢階級別1世帯当たり1か月間の消費支出額費目別構成比

(23年、総世帯ベース)

24.7% 22.7%

7.0% 8.6%

8.4% 6.9%

3.8%3.2%

3.5%4.4%

5.8%3.3%

10.2%14.8%

0.4%5.6%

10.8%

10.6%

12.3%5.9%

13.1% 13.9%

0%

10%

20%

30%

40%

50%

60%

70%

80%

90%

100%

その他

交際費

教養娯楽

教育

交通・通信

保健医療

被服及び履物

家具・家事用品

光熱・水道

住居

食料

資料:「家計調査」(総務省)

② 高齢者世帯の世帯主の属性別費目別消費支出額及び構成比

次に、高齢者世帯の世帯主の属性別で1世帯当たり1か月間の費目別消費支出

額(23年、総世帯ベース)を見てみると、高齢者勤労者世帯では全ての費目の消費

支出額が高齢者無職世帯より多くなっており、「交通・通信」や「食料」、「こづかい(使

途不明)」などで高齢者無職世帯との間に大きな差が生じている(第Ⅱ-1-26図

①)。

また、高齢者無職世帯の中でも、高齢者夫婦無職世帯では、「教育」を除く全ての

費目の支出額が高齢者単身無職世帯より多くなっており、「食料」や「交通・通信」、

9 内閣府「平成 22年度年次経済財政報告」第2章第2節「個人消費を巡る論点」参照。

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「交際費」などで高齢者単身無職世帯との間に大きな差が生じている(第Ⅱ-1-26

図②)。

第Ⅱ-1-26図 高齢者世帯の世帯主の属性別

1世帯当たり1か月間の費目別消費支出額(23年、総世帯ベース)

①高齢者世帯、高齢者勤労者世帯、高齢者無職世帯の1世帯当たり1か月間の費目別消費支出額

食料

住居

光熱・水道

家具・家事用品

被服及び履物

保健医療

交通・通信

教育

教養娯楽

こづかい(使途不明)

交際費

その他

高齢者勤労者世帯

高齢者無職世帯

高齢者世帯

②高齢者世帯、高齢者勤労者世帯、高齢者無職世帯各属性別の1世帯当たり1か月間の費目別消費支

出額

0

50,000

100,000

150,000

200,000

250,000

300,000

その他

交際費

こづかい(使途不明)

教養娯楽

教育

交通・通信

保健医療

被服及び履物

家具・家事用品

光熱・水道

住居

食料

(円)

資料:「家計調査」(総務省)

産業活動分析(平成24年1~3月期)

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高齢者世帯の世帯主の属性別で1世帯当たり1か月間の消費支出額費目別構成

比(23年、総世帯ベース)を見てみると、高齢者勤労者世帯では、消費支出額に占

める「交通・通信」、「こづかい(使途不明)」、「被服及び履物」などの割合が高齢者無

職世帯と比較して大きくなっている(第Ⅱ-1-27図)。一方、高齢者無職世帯では、

消費支出額に占める「食料」、「交際費」、「保健医療」などの割合が高齢者勤労者世

帯と比較して大きくなっている。

また、高齢者無職世帯の中でも、高齢者夫婦無職世帯では、消費支出額に占める

「こづかい(使途不明)」、「食料」、「交通・通信」などの割合が高齢者単身無職世帯と

比較して大きく、高齢者単身無職世帯では、消費支出額に占める「交際費」、「住居」、

「教養娯楽」の割合が高齢者夫婦無職世帯と比較して大きくなっている。

第Ⅱ-1-27図 高齢者世帯の世帯主の属性別

1世帯当たり1か月間の消費支出額費目別構成比

(23年、総世帯ベース)

24.7% 23.1% 25.2% 23.0% 24.7%

7.0% 7.7%7.3% 8.7% 7.2%

8.4% 7.2%8.7% 8.8% 8.2%

3.8%3.6%

3.9% 3.9% 3.9%

3.5%3.6%

3.2% 3.7% 2.9%

5.8%4.5%

6.1% 5.5% 6.7%

10.2%13.1%

9.2% 7.9% 9.5%

10.8% 10.0% 11.3% 12.5% 11.3%

3.0% 5.4% 2.7%0.0%

3.1%

12.3% 10.7% 12.7%15.4%

13.5%

10.1% 10.3% 9.7% 10.7% 9.0%

0%

10%

20%

30%

40%

50%

60%

70%

80%

90%

100%

その他

交際費

こづかい(使途不明)

教養娯楽

教育

交通・通信

保健医療

被服及び履物

家具・家事用品

光熱・水道

住居

食料

資料:「家計調査」(総務省)

産業活動分析(平成24年1~3月期)

- 65 -

(3) 高齢者世帯の消費支出額が高い品目及びその品目の最近の消費動向

最後に、高齢者世帯のニーズが高い財、サービスは何か、品目ベースで確認するた

めに、総務省の「全国消費実態調査」(21年)10から、品目毎に年齢階級別の1世帯当

たり1か月間の消費支出額を全年齢平均で除した値を算出し、高齢者世帯の消費支出

額が高い品目を抽出する。また、高齢者世帯の消費支出額が高く、かつ消費支出総額

に占める割合の大きい品目を抽出し、その品目の最近の消費動向を見ることとしたい。

① 高齢者世帯の消費支出額が高い品目

第Ⅱ-1-4表は、総務省の「全国消費実態調査」(21年)から、各品目に対する

年齢階級別の1世帯当たり1か月間の消費支出額が、全年齢平均の何倍となってい

るかを示したものである。

10 総務省「全国消費実態調査」は、5年に1回の頻度で実施される調査であり、最新の結果が21年と、データとしてはやや古いが、サンプル世帯数が約 57,000 と多く、総世帯ベースで年齢階級別の消費支出

額を細かい品目まで確認することが可能である。一方、総務省「家計調査」は23年の動向まで確認できる

が、サンプル世帯数が約 9,000 と少なく、総世帯ベースで年齢階級別に細かい品目を確認することができ

ない(「二人以上の世帯」でしか確認できない)。

産業活動分析(平成24年1~3月期)

- 66 -

第Ⅱ-1-4表 各品目に対する年齢階級別消費支出額/全年齢平均消費支出額

(21年、総世帯ベース)

※品目別消費支出額(全年齢平均)に対する倍率1.0倍未満1.0~1.2倍未満1.2~1.4倍未満1.4倍以上

→高齢者世帯

~29歳 30~39歳 40~49歳 50~59歳 60~69歳 (60~69歳勤労者世帯)

70歳~ (70歳~勤労者世帯)

米        パン      

めん類      生鮮魚介      塩干魚介      魚肉練製品      牛肉      豚肉      鶏肉      ハム・ソーセージ      牛乳    ヨーグルト      バター・チーズ      卵      生鮮野菜      豆腐      野菜の漬物      

  生鮮果物      菓子類      弁当    すし(弁当)      冷凍調理食品      緑茶        茶飲料    コーヒー      コーヒー飲料    果実・野菜ジュース    清酒      焼ちゅう        ビール      発泡酒・ビール風アルコール飲料    食事代    喫茶代      飲酒代      学校給食        家賃      設備器具      

  修繕材料      修繕・維持工事費      火災・地震保険料      電気代      都市ガス      

  プロパンガス      灯油      上下水道料      電気冷蔵庫        布団      

  食卓用品    台所用品        ティッシュ・トイレットペーパー      

光熱・水道

家具・家事用品

(注)1.消費支出総額(全年齢平均)に占める割合が 0.1%未満の品目は除外。

2.その他の品目(「他の○○」、「○○その他」)は除外。

3.「-」はデータ無し。

産業活動分析(平成24年1~3月期)

- 67 -

→高齢者世帯

~29歳 30~39歳 40~49歳 50~59歳 60~69歳 (60~69歳勤労者世帯)

70歳~ (70歳~勤労者世帯)

背広服    男子用ズボン      婦人服    婦人用上着      婦人用スラックス      婦人用コート      

  子供用洋服        婦人用セーター      男子用下着類      婦人用下着類      男子靴    婦人靴    洗濯代      医薬品      健康保持用摂取品        保健用消耗品      眼鏡    医科診療代        歯科診療代      鉄道運賃      鉄道通学定期代        鉄道通勤定期代    バス代        タクシー代          航空運賃    有料道路料    自動車購入      ガソリン      

  自動車等部品      自動車等関連用品    自動車整備費      年極・月極駐車場借料      自動車保険料      郵便料        固定電話通信料    移動電話通信料    宅配便運送料      国公立小学校        国公立中学校          国公立高校        私立高校 -      国公立大学        

  私立大学        国公立幼稚園         -

私立幼稚園        専修学校 -      幼児・小学校補習教育        中学校補習教育        高校補習教育・予備校        

被服・履物

保健医療

交通・通信

教育

産業活動分析(平成24年1~3月期)

- 68 -

→高齢者世帯

~29歳 30~39歳 40~49歳 50~59歳 60~69歳 (60~69歳勤労者世帯)

70歳~ (70歳~勤労者世帯)

テレビ        パソコン    消耗性文房具        スポーツ用具      スポーツ用品    音楽・映像収録済メディア      切り花      ペットフード      動物病院代      園芸品・同用品        新聞      雑誌・週刊誌      書籍    

  宿泊料        国内パック旅行費        外国パック旅行費      音楽月謝        スポーツ月謝        NHK放送受信料(BSを含む)      ケーブルテレビ受信料      映画・演劇・文化施設等入場料    ゴルフプレー料金        スポーツクラブ使用料      諸会費        現像焼付代        インターネット接続料    

理髪料      パーマ・カット代        浴用・洗顔石けん      シャンプー・歯磨き      化粧品      かばん類    装身具      たばこ    信仰・祭祀費        祭具・墓石      

  婚礼関係費       -

葬儀関係費      非貯蓄型保険料    保育所費用      介護サービス      世帯主こづかい    贈与金      つきあい費    住宅関係負担費        国内遊学仕送り金        

教養娯楽

その他の消費支出

資料:「全国消費実態調査」(21年)(総務省)から作成。

産業活動分析(平成24年1~3月期)

- 69 -

この表から、高齢者世帯の消費支出額が全年齢平均を大幅(1.4 倍以上)に上

回っている品目を、60~69歳と70歳以上で分けて抽出すると、第Ⅱ-1-5表のよう

になる。「園芸品・同用品」、「修繕・維持工事費」、「ゴルフプレー料金」などが60~6

9歳、「介護サービス」、「信仰・祭祀費」、「タクシー代」などが70歳以上の高齢者世帯

の消費支出額が全年齢平均を大幅に上回る品目となっている。

第Ⅱ-1-5表 高齢者世帯の消費支出額が全年齢平均を 1.4倍以上上回る品目

(21年、総世帯ベース)

①60~69歳世帯 ②70歳以上世帯

品目 (費目)(参考:全年齢平均に対する倍率)

品目 (費目)(参考:全年齢平均に対する倍率)

園芸品・同用品 (教養娯楽) 1.67 介護サービス (その他の消費支出) 1.90

修繕・維持工事費 (住居) 1.59 信仰・祭祀費 (その他の消費支出) 1.81ゴルフプレー料金 (教養娯楽) 1.57 タクシー代 (交通・通信) 1.75国内パック旅行費 (教養娯楽) 1.52 緑茶 (食料) 1.69信仰・祭祀費 (その他の消費支出) 1.52 祭具・墓石 (その他の消費支出) 1.61外国パック旅行費 (教養娯楽) 1.51 パーマ・カット代 (その他の消費支出) 1.60修繕材料 (住居) 1.48 健康保持用摂取品 (保健医療) 1.55設備器具 (住居) 1.47 修繕・維持工事費 (住居) 1.47宅配便運送料 (交通・通信) 1.47 切り花 (教養娯楽) 1.46祭具・墓石 (その他の消費支出) 1.46 諸会費 (教養娯楽) 1.46切り花 (教養娯楽) 1.45 贈与金 (その他の消費支出) 1.46布団 (家具・家事用品) 1.43 国内パック旅行費 (教養娯楽) 1.41贈与金 (その他の消費支出) 1.42 郵便料 (交通・通信) 1.40

生鮮果物 (食料) 1.41テレビ (教養娯楽) 1.40

資料:「全国消費実態調査」(21年)(総務省)から作成。

次に、高齢者世帯の消費支出額が高く、かつ消費支出総額に占める割合が大き

い品目を確認するため、第Ⅱ-1-4表から、60~69歳または70歳以上の高齢者世

帯の1世帯当たり1か月間の各品目に対する消費支出額が全年齢平均の 1.4倍以上

となっている品目を抜き出し、それら品目を消費支出総額に占める割合が大きい順に

並び替えて示したものが第Ⅱ-1-6表である。「贈与金」、「修繕・維持工事費」、「国

内パック旅行費」、「信仰・祭祀費」などが、両年齢とも高齢者世帯の消費支出額が高

く、かつ消費支出総額に占める割合が大きい品目となっている。

なお、これら品目のうち、「贈与金」、「国内パック旅行費」は、高齢者勤労者世帯で

も、消費支出額が全年齢平均の 1.4倍以上と高くなっている。

産業活動分析(平成24年1~3月期)

- 70 -

第Ⅱ-1-6表 高齢者世帯の消費支出額が高く、

かつ消費支出総額に占める割合が大きい品目

(21年、総世帯ベース)

※品目別消費支出額(全年齢平均)に対する倍率1.0倍未満1.0~1.2倍未満1.2~1.4倍未満1.4倍以上

消費支出総額に占める割合(60歳以上)

60~69歳 (60~69歳勤労者世帯)

70歳~ (70歳~勤労者世帯)

贈与金 5.90%

修繕・維持工事費 3.51%

世帯主こづかい 2.63%

自動車購入 2.01%

国内パック旅行費 1.68%

生鮮果物 1.52%

鉄道運賃 0.92%

テレビ 0.85%

信仰・祭祀費 0.79%

外国パック旅行費 0.68%

健康保持用摂取品 0.62%

設備器具 0.55%

パーマ・カット代 0.49%

切り花 0.44%

園芸品・同用品 0.44%

ゴルフプレー料金 0.42%

火災・地震保険料 0.40%

郵便料 0.38%

清酒 0.30%

タクシー代 0.30%

野菜の漬物 0.29%

諸会費 0.24%

介護サービス 0.23%

婚礼関係費 0.23% -鉄道通勤定期代 0.23%

祭具・墓石 0.23%

焼ちゅう 0.23%

ペットフード 0.22%

緑茶 0.20%

宅配便運送料 0.18%

修繕材料 0.16%

布団 0.14%

(注)1.第Ⅱ-1-4表から、60~69歳または70歳以上の高齢者世帯の1世帯当たり1か月間の各品目に対する消費支

出額が、全年齢平均の消費支出額の 1.4 倍以上となっている品目を抜き出し、それら品目を消費支出総額に占め

る割合が大きい順(60歳以上、総世帯ベース)に並び替えて示したものである。

2.「-」はデータ無し。

資料:「全国消費実態調査」(21年)(総務省)から作成。

産業活動分析(平成24年1~3月期)

- 71 -

② 「国内パック旅行」の最近の消費動向

第Ⅱ-1-6表(前掲)で見たとおり、「国内パック旅行費」は、60~69歳及び70歳

以上の高齢者総世帯、高齢者勤労者世帯ともに消費支出額が全年齢平均の 1.4 倍

以上であり、かつ消費支出割合が大きい品目の一つである。そこで、以下では、「国

内パック旅行」を取り上げ、最近の消費動向を供給側及び需要側から見てみたい。

まず、供給側から、第3次産業活動指数(平成17年=100.0)で「国内旅行」11の動

向を見てみると、震災が発生した23年1~3月期、4~6月期は大きく落ち込んだもの

の、7~9月期、10~12月期は上昇した(第Ⅱ-1-28図)。震災が発生した23年 1

~3月期を 100.0 として、「旅行業」全体の回復動向を見てみると、主に「国内旅行」が

けん引していたことが確認できる(第Ⅱ-1-29図)。

第Ⅱ-1-28図 第3次産業活動指数「国内旅行」(17年=100.0)の動向

80

85

90

95

100

105

Ⅰ Ⅱ Ⅲ Ⅳ Ⅰ Ⅱ Ⅲ Ⅳ Ⅰ

22 23 24

(平成17年=100.0)

(年/期)

資料:第3次産業活動指数

11 第3次産業活動指数の「国内旅行」は、主要旅行業者の国内旅行取扱高を基礎データとしており、パック旅行のみの動きではないことに留意が必要である。

産業活動分析(平成24年1~3月期)

- 72 -

第Ⅱ-1-29図 第3次産業活動指数「旅行業」(23年 1~3月期=100.0)の動向

40

50

60

70

80

90

100

110

120

Ⅰ Ⅱ Ⅲ Ⅳ Ⅰ

23 24

旅行業

国内旅行

海外旅行

外人旅行

(23年1~3月期=100.0)

(年/期)

資料:第3次産業活動指数から作成。

次に、需要側から、総務省の「家計消費状況調査」12で、「パック旅行費(国内)」に対

する、世帯主の年齢階級別1世帯当たり1か月間の消費支出額(総世帯ベース、23年

平均)を見てみると、60~69歳、70歳以上の高齢者世帯の消費支出額が多くなってお

り、全体に占めるシェアも約7割(66.5%)と大きくなっている(第Ⅱ-1-30図、第Ⅱ-1

-31図)。

第Ⅱ-1-30図 「パック旅行費(国内)」

世帯主の年齢階級別 1世帯当たり 1か月間の消費支出額(総世帯ベース、23年平均)

828

1,290

1,907

2,198

3,246

3,009

0

500

1,000

1,500

2,000

2,500

3,000

3,500

~29歳 30~39歳 40~49歳 50~59歳 60~69歳 70歳~

(円)

資料:「家計消費状況調査」(総務省)

12 家計消費状況調査のサンプル数は、全国で 30,000世帯(なお、10世帯のうち 1世帯は単身世帯)。

産業活動分析(平成24年1~3月期)

- 73 -

第Ⅱ-1-31図 「パック旅行費(国内)」 世帯主の年齢階級別支出シェア

(総世帯ベース、23年平均)

~29歳, 1.3%30~39歳, 5.0%

40~49歳, 10.0%

50~59歳, 17.3%

60~69歳, 37.6%

70歳~, 28.9%

(注) 各年齢層の消費支出額に世帯ウェイトを乗じて計算。

資料:「家計消費状況調査」(総務省)から作成。

「パック旅行費(国内)」に対する世帯主の年齢階級別1世帯当たり1か月間の消費支

出額(総世帯ベース)の動向を見てみると、60~69歳、70歳以上の世帯はプラス傾向

で推移しており、23年後半の「パック旅行費(国内)」支出の伸びを高齢者世帯がけん

引していたことが見てとれる13(第Ⅱ-1-32図)。

13 なお、今回分析を行った「国内パック旅行費」の他、「修繕・維持工事費」等についても、高齢者世帯の消費支出額が大きいことから、今後注目すべき品目であると言える。住宅改修費用は、介護保険の認定を

受けている高齢者世帯は補助が出る場合があり、今後、社会福祉の分析と併せて見ていく必要があろう。

産業活動分析(平成24年1~3月期)

- 74 -

第Ⅱ-1-32図 「パック旅行費(国内)」

世帯主の年齢階級別 1世帯当たり 1か月間の消費支出額の動向

(総世帯ベース、四半期)

0

500

1,000

1,500

2,000

2,500

3,000

3,500

4,000

4,500

Ⅰ Ⅱ Ⅲ Ⅳ

23

~29歳

30~39歳

40~49歳

50~59歳

60~69歳

70歳~

(円)

(年/期)

資料:「家計消費状況調査」(総務省)

(4) まとめ

今回のトピックでは、我が国の個人消費に占めるウェイトが高まる高齢者世帯の消費

の特徴や高齢者世帯のニーズが高い財、サービスを明らかにしたいと考え、分析を行っ

た。

①高齢化が急速に進展する中で、高齢者世帯の消費支出規模は、世帯数の増加を

主要因として、拡大傾向で推移している(第Ⅱ-1-33図)。高齢者世帯は他の年代と

比較して、年間収入は少ないが、大きな純貯蓄を有しており、持ち家率も高い。こうした

背景から、高齢者勤労者世帯の平均消費性向は他の年代の勤労者世帯と比較して高

くなっている。高齢者世帯の約7割を占める高齢者無職世帯では、金融資産を取り崩し

ながら、所得を上回る消費をしており、平均消費性向は、高齢者勤労者世帯よりもさらに

高くなっている。

②高齢者が何を消費しているのか、総務省の「家計調査」から、高齢者世帯の費目別

消費支出額について、他の年代と比較して見てみると、贈与金等の「交際費」 、「保健

医療」、「光熱・水道」、「家具・家事用品」に対する消費支出額が59歳以下の世帯と比

較して多くなっている。また、高齢者世帯では、消費支出額に占める「交際費」、「保健

医療」、「食料」、「光熱・水道」、「家具・家事用品」、「教養娯楽」の割合が59歳以下の

世帯と比較して大きくなっている。

高齢者世帯の中でも、高齢者勤労者世帯では全ての費目の消費支出額が高齢者無

産業活動分析(平成24年1~3月期)

- 75 -

職世帯より多くなっており、「交通・通信」や「食料」、「こづかい(使途不明)」などで高齢

者無職世帯との間に大きな差が生じている。また、高齢者勤労者世帯では、消費支出

額に占める「交通・通信」、「こづかい(使途不明)」、「被服及び履物」などの割合が高齢

者無職世帯と比較して大きく、高齢者無職世帯では、消費支出額に占める「食料」、「交

際費」、「保険医療」などの割合が高齢者勤労者世帯と比較して大きくなっている。

③高齢者世帯のニーズが高い財、サービスは何か、品目ベースで確認するため、総

務省の「全国消費実態調査」から、品目毎に年齢階級別の消費支出額を全年齢平均で

除した値を算出し、高齢者世帯の消費支出額が全年齢平均を大幅に上回っている品

目を抽出してみたところ、「園芸品・同用品」、「修繕・維持工事費」、「ゴルフプレー料

金」などが60~69歳、「介護サービス」、「信仰・祭祀費」、「タクシー代」などが70歳以

上の高齢者世帯の消費支出額が全年齢平均を大幅に上回る品目となっている。「贈与

金」、「修繕・維持工事費」、「国内パック旅行費」、「信仰・祭祀費」などは、60~69歳と

70歳以上の両方の高齢者世帯の消費支出額が高く、かつ消費支出総額に占める割合

が大きい品目となっている。

「国内パック旅行費」は、60~69歳及び70歳以上の高齢者総世帯、高齢者勤労者

世帯ともに消費支出額が全年齢平均の 1.4 倍以上であり、かつ消費支出総額に占める

割合が大きい品目の一つであることから、「国内パック旅行費」を取り上げ、最近の消費

動向を見てみると、23年後半の国内旅行の伸びは、消費支出額で全体の約7割のシェ

アを占める高齢者世帯がけん引していた。

高齢化の進展とともに、高齢者世帯の消費支出が我が国の個人消費全体に及ぼす

影響は、今後一層大きくなることが予想される。こうした中で、高齢者のニーズに応じた

財やサービスを供給し、それを高齢者の消費支出につなげ、我が国の個人消費を活性

化させていくことが期待される。

産業活動分析(平成24年1~3月期)

- 76 -

第Ⅱ-1-33図 高齢者世帯の消費の特徴(まとめ)

(勤労者世帯)

(無職世帯)

<~59歳> <60歳~>

世帯数の増加→消費支出規模の増加

<60~69歳> <70歳~>

「交際費」、「保健医療」、「光熱・水道」、「家具・家事用品」に対する消費支出額が若年・中年層より多い

60~69歳の高齢者世帯の消費支出が全年齢平均を大幅に上回る品目

「食料」、「交際費」などの割合大

消費>所得(金融資産の取り崩し)

※震災後の「国内パック旅行」の伸びは高齢者世帯がけん引

・「贈与金」、「修繕・維持工事費」、「国内パック旅行費」、「信仰・祭祀費」などは高齢者世帯の消費支出額が高く、かつ消費支出総額に占める割合も大

「交通・通信」、「こづかい」などの割合大

全ての費目で無職世帯より消費支出額多い

消費支出額に占める「交際費」、「保健医療」、「食料」、「光熱・水道」、「家具・家事用品」、「教養娯楽」の割合が若年・中年層より大きい

・園芸品・同用品・修繕・維持工事費・ゴルフプレー料金 等

70歳以上の高齢者世帯の消費支出が全年齢平均を大幅に上回る品目

・介護サービス・信仰・祭祀費・タクシー代 等

(P.58~60)

(P.61)

(P.62)

(P.63)

(P.64)

(P.64)

(P.54~57)

(P.65~69)

(P.70)

(P.71~74)

(P.65~69)

産業活動分析(平成24年1~3月期)

利用上の注意

1. 前期比は季節調整済の数値、前年(同期)比は原数値を使用している。なお、在庫の変化率は、前期末

比(季節調整済の数値)、前年(同期)末比(原数値)を使用している。

2. 四半期別伸び率寄与度は、特記しない限り前期比伸び率に対する寄与度である。なお、個々の系列毎

に季節調整を行っているため、内訳の寄与度の積み上げと全体の伸び率は一致しないことがある。

3. 原則として「鉱工業生産指数」、「鉱工業生産者出荷指数」、「鉱工業生産者製品在庫指数」、「鉱工業

生産者製品在庫率指数」を、それぞれ「生産」、「出荷」、「在庫」、「在庫率」と略記しているが、他の指数に

ついても同様に多くの場合「指数」という語を省略している。

4. 指数の伸び率の記述は、原則として「上昇」、「低下」を用いているが、統合分類の変動要因などを説明

するため、その内訳の分類を使用する場合には、混乱を避けるため「増加」、「減少」を用いている。同様の

理由から、鉱工業指数の品目別指数及び第3次産業活動指数の小分類業種別指数についても「増加」、

「減少」を用いている。

5.「鉱工業生産者製品在庫指数」の暦年値は12月末時点のため、基準年の指数水準は100にならないこと

がある。

6. 年の表示は和暦であり、元号は特記しない限り原則として平成である。

7. グラフに記入されたⅠ~Ⅳの数字は、第1四半期から第4四半期(暦年ベース)を表している。

8. 本書で使用した数値は、原則として以下のとおりである(特記してある場合を除く)。

また、数値の作成機関について記載がないものは「経済産業省」である。

① 第Ⅰ章第1節、第Ⅲ章第1節 : 鉱工業指数 ② 第Ⅰ章第2節 : 第3次産業活動指数

③ 第Ⅲ章第2節 (商業動向 : 商業販売統計)

(特定サービス産業動向 : 特定サービス産業動態統計)

なお、本書に記載された数値及び内容を他に転載するときは、「経済産業省:産業活動分析」による旨を

必ず明記する。

9.本書では「東日本大震災(長野県北部地震を含む)」について、「震災」と略記している。

10. 「鉱工業総供給表」(総供給、国産及び輸入)の平成24年1月以降は、貿易統計(財務省)速報値を用

いている。

11. 「全産業供給指数」は、供給側の統計指標を、平成17年産業連関表の粗付加価値額から算定したウ

ェイトにより、需要項目別に再集計した試算値である。

12. 「鉱工業指数」「第3次産業活動指数」「鉱工業出荷内訳表」「鉱工業総供給表」「全産業供給指数」に

ついては、23年年間補正とともに貿易統計との品目接続表の見直し、季節指数の再計算などを行って

いる。

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