Chronic care model ポートフォリオ

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Assessment of Chronic Illness Care:ACIC ACICChronic Care Model を臨床現場に応用するため、どの程度システ ムが整備されているかを評価する基準 であり、2002Bonomiらによっ て開発された。以下のパートで構成されている。 パート1 :組織化された慢性疾患ケアの提供 パート2 :地域との連携 パート3a:自己管理支援 パート3b:診療における意思決定支援 パート3c :医療提供システムの設計 パート3d:臨床情報システム パート4 :要素の統合 介入前にACICを使用し、当院の骨粗鬆症ケアに関するシステムを評価 改善点をピックアップし各々のパート毎に介入を行った 青木拓也 日本医療福祉生活協同組合連合会 家庭医療学開発センター、東京ほくと医療生活協同組合 北足立生協診療所 慢性疾患ケアの質を高めるためには、それを提供するシステムの改善が重要である。 Chronic Care Model(CCM)1990年代米国で開発された慢性疾患ケアのための枠組みで あり、実際に質改善のエビデンスが蓄積されている。我が国においては、これまであまり注目されてこなかった経緯があるが、家庭医が慢性疾患ケアを行う上で非常に有用な枠 組みである。今回当院においてCCMの発展型であるThe Expanded Chronic Care Modelに基づき、骨粗鬆症に関するシステム改善を実施したため、その内容を報告する。 NEXT STEP 慢性疾患ケアのシステム改善には、地域の健康計画との連携も重要であるが、我が国で は現状困難なケースが多い。慢性疾患ケアにおける臨床現場での課題を抽出・集約し、 地域の医療政策に反映させるシステム作りを検討すべきと考える。 参考文献 1)藤沼康樹.新・総合診療医学 家庭医療学編.カイ書林;2012 2) Victoria J. Barr et al . The Expanded Chronic Care Model:An Integration of Concepts and Strategies from Population Health Promotion and the Chronic Care . HOSPITAL QUARTERLY 2003 ; 7 : 73-82. 考察 ACICは自施設の慢性疾患ケア・システム(今回は骨粗鬆症)を事前に評価し、問題点 を抽出することにおいて有用であった。またThe Expanded Chronic Care Modelを適用 し、自治体への政策提言も行ったが今回は実現には至らなかった。検診事業には自治 体の財政状況や地元医師会の見解等が影響すると思われるが、東京都23区内でも各 区で慢性疾患や癌の検診項目にばらつきが存在することは課題と考える。 Information Systems ACIC パート 3d に相当 「特定疾患の患者のリストアップ」 「医療者へのリマインダー / フィードバック」 Action 慢性疾患管理システム ( 電子カルテ連動 ) を用いた骨粗鬆症患者のリストアップ ガイドラインに準じた 検査のリマインダー・フィードバック・システムの構築 Self Management ACIC パート 3a に相当 「情報源 ( パンフレット等 ) を用いた行動変容」 「指導者への紹介による自己管理支援」 Action 骨粗鬆症ガイドラインに基づいた 生活習慣指導についてパンフレットを作成 骨粗鬆症患者・骨量減少域の患者に配布 骨粗鬆症患者の 管理栄養士への紹介 を開始し、 効果的な行動変容を促す Decision Support ACIC パート 3b に相当 「エビデンスに基づいたガイドラインについて医療スタッフへ教育」 「ガイドラインについて患者への情報提供」 Action 骨粗鬆症ガイドラインの内容を含めたケアの在り方について スタッフ 向け学習会 を実施 ビスホスホネートと顎骨壊死に関する提言書 に基づいた 歯科治療に関するパンフレットを 作成 し、患者への情報提供 Organization of Health Care ACIC パート 1 に相当 「慢性疾患ケアに関する組織のリーダーシップ」 「慢性疾患ケアについての組織の到達目標を設定」 「慢性疾患ケアを提供することによるインセンティブ」 Action 組織の骨粗鬆症到達目標を設定し共有 必要な生活習慣指導を医療スタッフが行える 適切な治療効果判定・副反応モニタリングを実施・継続できる 適切な対象に骨粗鬆症スクリーニングを推奨し、新規の定期通院患者 を獲得し、診療所の患者増に繋げる Strengthen Community Action ACIC パート 2 に相当 「患者と外部の地域社会資源のつながりを強化」 Action 組合員や地域住民を対象とした学習会を実施 し、組合員活動 ( 運動 サークル ) への参加など、食事・運動療法に おける患者同士の積極的な協調を支援 Build Healthy Public Policy ACIC パート 2 に相当 「地域の健康計画における、慢性疾患ケアのガイドライン、健康指標の 測定、地域社会資源の連携」 Action 足立区では骨密度検診が未導入など、骨粗鬆症ケアが重要視されず 足立区衛生部に 骨密度検診の導入・転倒予防事業の強化に ついて政策提言 残念ながら検診は現時点で導入予定なしとの回答 骨代謝マーカーの統一化 薬物副反応モニタリング のリマインダー Chronic Care Model の発展型であり、 Community 要因 (population health promotion) を強化し、 地域社会資源や医療政策を巻き込んだ慢性疾患ケア・システムの改善を図ろうとするモデル

Transcript of Chronic care model ポートフォリオ

Assessment of Chronic Illness Care:ACICACICはChronic Care Modelを臨床現場に応用するため、どの程度システムが整備されているかを評価する基準であり、2002年Bonomiらによって開発された。以下のパートで構成されている。パート1 :組織化された慢性疾患ケアの提供パート2 :地域との連携パート3a:自己管理支援パート3b:診療における意思決定支援パート3c :医療提供システムの設計パート3d:臨床情報システムパート4 :要素の統合

介入前にACICを使用し、当院の骨粗鬆症ケアに関するシステムを評価

改善点をピックアップし各々のパート毎に介入を行った

青木拓也

日本医療福祉生活協同組合連合会 家庭医療学開発センター、東京ほくと医療生活協同組合 北足立生協診療所

慢性疾患ケアの質を高めるためには、それを提供するシステムの改善が重要である。Chronic Care Model(CCM)は1990年代米国で開発された慢性疾患ケアのための枠組みで

あり、実際に質改善のエビデンスが蓄積されている。我が国においては、これまであまり注目されてこなかった経緯があるが、家庭医が慢性疾患ケアを行う上で非常に有用な枠組みである。今回当院においてCCMの発展型であるThe Expanded Chronic Care Modelに基づき、骨粗鬆症に関するシステム改善を実施したため、その内容を報告する。

NEXT STEP

慢性疾患ケアのシステム改善には、地域の健康計画との連携も重要であるが、我が国では現状困難なケースが多い。慢性疾患ケアにおける臨床現場での課題を抽出・集約し、地域の医療政策に反映させるシステム作りを検討すべきと考える。参考文献 1)藤沼康樹.新・総合診療医学 家庭医療学編.カイ書林;2012

2) Victoria J. Barr et al . The Expanded Chronic Care Model:An Integration of Concepts and Strategies from

Population Health Promotion and the Chronic Care . HOSPITAL QUARTERLY 2003 ; 7 : 73-82.

考察ACICは自施設の慢性疾患ケア・システム(今回は骨粗鬆症)を事前に評価し、問題点を抽出することにおいて有用であった。またThe Expanded Chronic Care Modelを適用

し、自治体への政策提言も行ったが今回は実現には至らなかった。検診事業には自治体の財政状況や地元医師会の見解等が影響すると思われるが、東京都23区内でも各区で慢性疾患や癌の検診項目にばらつきが存在することは課題と考える。

【Information Systems】 ACICパート3dに相当「特定疾患の患者のリストアップ」

「医療者へのリマインダー/フィードバック」Action

①慢性疾患管理システム(電子カルテ連動)を用いた骨粗鬆症患者のリストアップ②ガイドラインに準じた検査のリマインダー・フィードバック・システムの構築

【Self Management】 ACICパート3aに相当「情報源(パンフレット等)を用いた行動変容」「指導者への紹介による自己管理支援」

Action①骨粗鬆症ガイドラインに基づいた生活習慣指導についてパンフレットを作成⇒骨粗鬆症患者・骨量減少域の患者に配布

②骨粗鬆症患者の管理栄養士への紹介を開始し、効果的な行動変容を促す

【Decision Support】 ACICパート3bに相当「エビデンスに基づいたガイドラインについて医療スタッフへ教育」

「ガイドラインについて患者への情報提供」Action

①骨粗鬆症ガイドラインの内容を含めたケアの在り方についてスタッフ向け学習会を実施

②ビスホスホネートと顎骨壊死に関する提言書に基づいた歯科治療に関するパンフレットを作成し、患者への情報提供

【Organization of Health Care】 ACICパート1に相当「慢性疾患ケアに関する組織のリーダーシップ」

「慢性疾患ケアについての組織の到達目標を設定」「慢性疾患ケアを提供することによるインセンティブ」

Action組織の骨粗鬆症到達目標を設定し共有

①必要な生活習慣指導を医療スタッフが行える②適切な治療効果判定・副反応モニタリングを実施・継続できる③適切な対象に骨粗鬆症スクリーニングを推奨し、新規の定期通院患者を獲得し、診療所の患者増に繋げる

【Strengthen Community Action】 ACICパート2に相当「患者と外部の地域社会資源のつながりを強化」

Action組合員や地域住民を対象とした学習会を実施し、組合員活動(運動サークル)への参加など、食事・運動療法における患者同士の積極的な協調を支援

【Build Healthy Public Policy】 ACICパート2に相当「地域の健康計画における、慢性疾患ケアのガイドライン、健康指標の測定、地域社会資源の連携」

Action足立区では骨密度検診が未導入など、骨粗鬆症ケアが重要視されず

足立区衛生部に骨密度検診の導入・転倒予防事業の強化について政策提言

⇒残念ながら検診は現時点で導入予定なしとの回答骨代謝マーカーの統一化

薬物副反応モニタリングのリマインダー

Chronic Care Modelの発展型であり、Community要因(population health promotion)を強化し、地域社会資源や医療政策を巻き込んだ慢性疾患ケア・システムの改善を図ろうとするモデル