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安定的な収益構造と強固な 財務基盤を構築していきます。 梅宮 真 取締役 執行役常務 財務・主計グループ長 (グループCFO) 〈みずほ〉 の財務運営の考え方 〈みずほ〉 は、安定的な収益構造と強固な財務基盤を構築し、い かなる時でも金融仲介機能を安定的に発揮していくとともに、事 業環境や顧客ニーズの構造変化に対応した柔軟な事業・収益構 造へと転換していくことで、金融の枠を超え、最適なサービスやソリ ューションを提供し、お客さまと社会の持続的成長に貢献すること を財務運営の基本的な考え方としています。 2018年度の総括 2018年度は、日本および世界経済の緩やかな回復が継続する 中、国内外の顧客部門は大幅な増益となる一方で、外債等ポート フォリオの健全化に伴う損失等(1,947億円)を主因とした市場部 門の減益等により、連結粗利益(ETF関係損益等 を含む)は前年 度比約8%減少の18,277億円となりました。 営業経費につきましては、構造改革の推進や経費コントロール 21 みずほフィナンシャルグループ 価値創造のための戦略 CFOメッセージ

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Page 1: CFOメッセージ - みずほフィナンシャルグループ...CFOメッセージ pdf011_7080567811907.indd 21 2019/07/10 14:36:57 4,083 億円 前期比 1,296億円 2018年度連結業務純益

安定的な収益構造と強固な

財務基盤を構築していきます。

梅宮 真取締役 執行役常務財務・主計グループ長

(グループCFO)

〈みずほ〉の財務運営の考え方

 〈みずほ〉は、安定的な収益構造と強固な財務基盤を構築し、いかなる時でも金融仲介機能を安定的に発揮していくとともに、事業環境や顧客ニーズの構造変化に対応した柔軟な事業・収益構造へと転換していくことで、金融の枠を超え、最適なサービスやソリューションを提供し、お客さまと社会の持続的成長に貢献することを財務運営の基本的な考え方としています。

2018年度の総括

 2018年度は、日本および世界経済の緩やかな回復が継続する中、国内外の顧客部門は大幅な増益となる一方で、外債等ポートフォリオの健全化に伴う損失等(1,947億円)を主因とした市場部門の減益等により、連結粗利益(ETF関係損益等※を含む)は前年度比約8%減少の18,277億円となりました。 営業経費につきましては、構造改革の推進や経費コントロール

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CFOメッセージ

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Page 2: CFOメッセージ - みずほフィナンシャルグループ...CFOメッセージ pdf011_7080567811907.indd 21 2019/07/10 14:36:57 4,083 億円 前期比 1,296億円 2018年度連結業務純益

4,083億円

前期比▲1,296億円

■ 2018年度連結業務純益 (ETF関係損益等を含む)

965億円

前期比▲4,799億円

■ 2018年度親会社株主に帰属する当期純利益

の徹底により約4%減の14,308億円となり、結果として連結業務純益(ETF関係損益等を含む)は前年度比で約24%減益となる4,083億円となりました。 与信関係費用は195億円の損失を計上、株式等関係損益(ETF関係損益等を除く)は政策保有株式の売却推進等により2,598億円の利益となりました。また特別損益は、構造改革への取り組みを踏まえた損失(5,007億円)の計上等により4,978億円の損失となり、以上の結果、親会社株主に帰属する当期純利益は、前年度から約83%減益の965億円となりました。 なお、将来の財務上の負担を一気に解消し、構造改革を加速させていくことを目的として計上した一時損失6,954億円を除いた場合、連結業務純益(ETF関係損益等を含む)は6,031億円と前年度比約12%増益、親会社株主に帰属する当期純利益は5,818億円と前年度から約1%の増益となっております。※ 銀行・信託のETF関係損益、証券連結の営業有価証券等損益の

合計値

前中期経営計画の振り返り

 前中期経営計画においては、自己資本比率に関する国際的な規制強化の動向が不透明な中、資本の費消を抑制しつつ収益力を高めていくため、「One Mizuho」戦略の推進を通じた非金利収益の増強に努めてまいりました。その結果、前年度の顧客部門非金利収益は過去最高益を計上するとともに、最重要と位置づけている連結普通株式等Tier1比率(CET1比率)※1は10.71%と前中期経営計画の目標である10%程度を超過達成いたしました。 また、政策保有株式の削減については、2015年度~2018年度までの目標額5,500億円に対する実績は5,430億円となりましたが、売却応諾ベースでは約5,800億円と目標を達成しております。 一方で、収益性を示す連結ROEや効率性を示す経費率については、一時損失処理の影響を控除した場合でも、目標を下回ることとなり、課題が

■ 前中期経営計画の振り返り

前中期経営計画2018年度目標 2018年度(実績) 2018年度(実績)

(一時損失処理前)

CET1比率※1 10%程度 ▶ 10.71% -

連結ROE※2 8%程度 ▶ 1.2% 7.4%

親会社株主純利益RORA 0.9%程度 ▶ 0.1% 1.0%

非金利収支比率 60%程度 ▶ 56% -

政策保有株式の削減※3 5,500億円削減 ▶ 5,430億円削減(応諾ベース約5,800億円削減) -

経費率※4 60%程度 ▶ 78.8% 71.1%

※1. バーゼルⅢ完全施行ベース(現行規制を前提)、その他有価証券評価差額金を除く※2. その他有価証券評価差額金を除く※3. 国内上場株式、取得原価ベース、2015年度~2018年度の累計額※4. グループ合算

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価値創造のための戦略 CFOメッセージ

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Page 3: CFOメッセージ - みずほフィナンシャルグループ...CFOメッセージ pdf011_7080567811907.indd 21 2019/07/10 14:36:57 4,083 億円 前期比 1,296億円 2018年度連結業務純益

員のスリム化やシステムの見直し・効率化を徹底的に進め、約2,000億円の削減を行ってまいります。一方で、捻出した資本や経費等の経営資源を、新規事業領域や、海外ビジネス・決済為替業務等の安定的な収益が期待できる分野、成長性が高くアップサイドの収益が期待できる分野等に重点的に投下してまいります。

以上の取り組みを通じ、安定収益基盤を2021年度の段階でマイナス金利導入前の水準にまで回復させるといったことを含め、連結業務純益全体では、2018年度の約6,000億円(一時損失処理前)から2021年度には約7,000億円、2023年度には約9,000億円まで増加させていく計画です。また、連結ROEについては7~8%程度を目指すとともに、経費率を60%程度まで改善させていきます。

5ヵ年経営計画について

財務構造の改革1.経営資源の再配分と安定収益基盤の強化

CEOメッセージでも触れられている通り、資本対比の「リスクリターン(粗利ROE)」と投資・経費対比の「コストリターン(経費率)」に加え、「成長性」と「安定性」という「4つの視点」でビジネス領域ごとに事業・収益構造上の課題を明確化し、効率化分野から注力・成長分野へ経営資源を再配分していくことで、より効率性が高く、安定的な収益を確保可能な事業ポートフォリオへの転換を加速してまいります。

具体的には、政策保有株式を今後3年間でさらに3,000億円売却するとともに、資本対比の収益性に課題を抱える貸出資産等の削減を進めてまいります。また経費については、構造改革により人

残る結果となりました。資本や投資・経費等の経営資源の投下が粗利益増強には十分に結び付かないといったミスマッチが、社会構造・顧客ニーズの変化やマイナス金利長期化という環境下で拡大していることに加え、市場性収益や非金利収益等の市場環境に

影響を受けやすくボラティリティの高い収益に大きく依存する構造になってきております。 こうした収益構造上の課題を踏まえ、5ヵ年経営計画では財務構造改革を進めてまいります。

■ 連結業務純益の見通し※1 (概数)

■ バンキング勘定収益:ALM収益※2を除く、バンキング勘定収益■ アップサイド収益:経常性のない対顧収益 + トレーディング関連収益■ 安定収益:経常的な対顧収益 + ALM収益※2

アップサイド収益の追求

安定収益の強化

※1. ETF関係損益等を含む  ※2. 資産・負債の総合管理から生じるバンキング勘定収益※3. 一時損失計上前ベース ※4. J.Score、みずほスマートビジネスローン等

2018年度 2021年度 2023年度

固定費削減を軸に安定収益を強化

アップサイド収益具現化による成長の加速

固定費削減 +700粗利益増減 +200安定収益 +900

3,300

1,600

1,100

6,031※3

7,000程度

9,000程度

4,200

2,000

1,100

5,000

2,700

1,600

マイナス金利前

(2015 年度)水準到達

固定費削減 +200粗利益増減 +600安定収益 +800

2018年度 2023年度

1,600

2,700

100 その他

300S&T

ファンド投資等

300100

法人ソリューション資産運用

経費削減(ネット)

粗利益増減(グロス)

500

2018年度 2023年度

3,300

5,000300300

政策株個人預貸

新規事業領域※4

法人預貸(主に海外)

リース・投融資

資産運用決済・為替

その他経費削減(ネット)

粗利益増減(グロス)

900300

400

300200

200

(億円)

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Page 4: CFOメッセージ - みずほフィナンシャルグループ...CFOメッセージ pdf011_7080567811907.indd 21 2019/07/10 14:36:57 4,083 億円 前期比 1,296億円 2018年度連結業務純益

■ 財務目標

※1. その他有価証券評価差額金を除く※2. 連結業務純益+ETF関係損益(みずほ銀行、みずほ信託銀行合算)+営業有価

証券等損益(みずほ証券連結)

2023年度

連結ROE※1 7%~8%程度

連結業務純益※2 9,000億円程度

■ その他主要計数

※1. バーゼルⅢ新規制 完全適用ベース。その他有価証券評価差額金を除く※2. 取得原価ベース

普通株式等Tier1(CET1)比率の目指す水準※1 9%台前半

政策保有株式削減の取り組み 3,000億円削減※2

(2021年度末まで)

2.財務基盤の更なる強化2018年度末における現行規制ベースの連結普通株式等Tier1

比率(CET1比率)は10.71%となり、また新規制・完全適用後ベースでも8.2%※を確保しております。これは、2021年度末から段階的に導入され2026年度末には完全適用となる新規制ベースでの所要水準を既に上回るところまで資本蓄積が進んだことに加え、今後、リーマンショック並みのストレスが生じた場合でも必要な資本水準を確保し続けるだけのストレス耐性が備わったということです。

ただし、成長投資や株主還元拡充等の資本活用をより柔軟に実施していくためには、新規制・完全適用後ベースのCET1比率を9%台前半まで引き上げていく必要があると認識しております。自己資本の充実を引き続き進め、資本活用フェーズへの早期転換を目指してまいります。※ その他有価証券評価差額金を除く

規律ある資本政策と株主還元〈みずほ〉が持続的に成長し、様々なステークホルダーの期待に

応えつつ、経済環境の悪化時においても金融仲介機能を十分に発揮していくためには、安定的な自己資本の充実が重要となります。また、株主・投資家の皆さまへの着実な利益還元も経営上の重要な責務との認識のもと、当社は、安定的な自己資本の充実と着実な株主還元の最適なバランスを図る「規律ある資本政策」を遂行しております。

株主還元につきましては、足許の資本の状況や新しい経営計画を踏まえ、これまでの「連結配当性向30%程度を一つの目処としたうえで安定的な配当を実施する」から、「当面は現状の配当水準を維持しつつ、資本基盤の一層の強化を進め早期の株主還元拡充を目指す」に方針を変更いたしました。これは、安定配当方針をこれまでよりも明確化するとともに、将来的に株主還元拡充を目指すことを明記したものであります。

5ヵ年経営計画の着実な遂行による資本基盤強化を通じ、早期の株主還元拡充を目指してまいります。

■ (新)株主還元方針

■ 一株あたり配当金

2019年度(予想) 7円50銭

中間配当(予想) 3円75銭

期末配当(予想) 3円75銭

当面は現状の配当水準を維持しつつ、資本基盤の一層の強化を進め早期の株主還元拡充を目指す

各期の株主還元については、当社グループの業績、収益基盤、自己資本の状況およびバーゼル規制をはじめとした

国内外の規制動向等、事業環境を総合的に勘案し、決定

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Page 5: CFOメッセージ - みずほフィナンシャルグループ...CFOメッセージ pdf011_7080567811907.indd 21 2019/07/10 14:36:57 4,083 億円 前期比 1,296億円 2018年度連結業務純益

株主・投資家のみなさまとの双方向のコミュニケーション 〈みずほ〉では公正かつ適時・適切な情報開示を経営上の重要課題に位置づけ、ウェブサイトにも掲載している「ディスクロージャー方針」にのっとり、株主・投資家の皆さまとの双方向の対話を推進しています。 〈みずほ〉の経営陣による株主総会や投資家向け各種説明会や内外IR活動を通じ、経営戦略やガバナンス等の開示、説明に取り組んでおります。 当社グループの経営戦略や財務状況等に関する内容を的確に理解いただけるようにつとめることで、市場の信頼と適正な評価を得ることを目指します。

対話実績■ 2018年度の取り組み

 〈みずほ〉では株主総会を、株主の皆さまと直接に意見交換させていただける重要な機会と考え、充実した双方向のコミュニケーションを行うべく様々な取り組みを行っております。 具体的には、情報発信の充実(招集通知の早期開示・内容の充実、当日の説明のビジュアル化やウェブでの公開・質疑応答要旨の公開)、議決権行使環境の整備(QRコードを活用して簡単に

議決権行使ができる仕組みの導入)、アンケートの実施と結果の公開等に取り組んでいます。 2019年6月21日には、東京国際フォーラムで第17期定時株主総会を開催し、1,931名の株主さまにご出席いただきました。お寄せいただいた貴重なご意見を踏まえ、企業価値向上に努めてまいります。

株主総会

210件(うち海外60件)

経営陣にて実施

320件(うち海外100件)

IR部にて実施

機関投資家面談件数

(延べ数、概数)

530件(うち海外160件)

機関投資家・アナリスト

個人投資家

4月 5月 6月 7月 1月8月 2月9月 10月 11月 12月 3月

個人投資家向けウェブサイト更新

オンライン会社説明会

会社説明会

会社説明会 IR Day

海外投資家訪問

株主総会

海外投資家訪問

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Page 6: CFOメッセージ - みずほフィナンシャルグループ...CFOメッセージ pdf011_7080567811907.indd 21 2019/07/10 14:36:57 4,083 億円 前期比 1,296億円 2018年度連結業務純益

建設的な対話の状況

5ヵ年経営計画 2019年5月に発表した「5ヵ年経営計画」の策定においては、投資家の皆さま方から株主総会や各種説明会に加えて、投資家の皆さまとの面談等で頂いているご意見等を、取締役・経営陣間で共有し参考にさせていただきました。 また、「5ヵ年経営計画」発表後においても、対話を通じて〈みずほ〉の考え方についてご説明を行い、投資家の皆さまから伺ったご意見を参考にさせて頂いております。

開示の充実

有価証券報告書の開示内容充実 2019年3月期の有価証券報告書より、【経営方針、経営環境および対処すべき課題等】について、開示内容をより分かりやすく充実させた他、【事業等のリスク】について、経営者が認識する重大なリスクである「トップリスク」を明示的に記載するなど、開示の充実を図りました。

個人投資家向けウェブサイト

 個人投資家向けにはウェブサイトで「個人投資家の皆さまへ」というコーナーを設け、〈みずほ〉の概要や経営戦略について分かりやすく解説するよう努めております。 また、ウェブサイトで、株価チャートに決算発表やプレスリリースを合わせて表示できる機能を追加する等、投資家の皆さまの利便性向上に努めております。 全国各地の投資家の皆さまとCFOとの双方向のコミュニケーションを推進する場として、メガバンク初のオンライン会社説明会(インターネットによるライブ中継)を2015年より4年連続で開催しております。2018年度は、動画視聴も含めて、累計で2,000名強の投資家の方々にご覧いただきました。

個人投資家の皆さま

 決算発表後にネットカンファレンスや会社説明会を実施しており、説明会の動画やスクリプト等もウェブサイトで公開しております。 部門別事業戦略説明会「IR Day」は、業界初の取り組みとして2012年から継続開催しており、2015年からは投資家の皆さまからの要望も踏まえ、社外取締役による説明、質疑応答の場も設定しております。 なお、説明要旨や質疑応答の内容についても、ウェブサイトでご確認いただけます。 その他、投資家のみなさまの関心を踏まえたテーマ別説明会

「IR Select」を随時開催する等、様々な説明・対話の場の提供に努めています。

機関投資家の皆さま

会社説明会

IR Day オンライン会社説明会

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