放射線は恐いというイメージがありますが、放射線...

38
空を見上げると飛行機雲を見かけることがあります。 飛行機雲はどうしてできるのでしょうか?飛行機が飛んでいる上空は、非常に温度 が低く、水蒸気は氷の粒になっていて、氷の粒がたくさんあります。 ここに飛行機が通ると、飛行機から出る排気ガスが核になって、氷の粒が集まって どんどんくっつき、大きくなって雲のように見えます。これが飛行機雲です。 放射線は目に見えない、におわない、聞こえない、触れない、五感に感じないもの で、つかみどころがありませんが、飛行機雲の原理を応用した霧箱を使って、放射 線が通った飛跡を見ることができます。 放射線は恐いというイメージがありますが、放射線は身の回りにたくさんあって、 放射線そのものが恐いのではなく、放射線に被ばくする量が多くなると恐いことをご 理解ください。 この資料は、文部科学省の放射線等に関する副読本の図やイラストを使用していま す。 1

Transcript of 放射線は恐いというイメージがありますが、放射線...

Page 1: 放射線は恐いというイメージがありますが、放射線 …空を見上げると飛行機雲を見かけることがあります。 飛行機雲はどうしてできるのでしょうか?飛行機が飛んでいる上空は、非常に温度

空を見上げると飛行機雲を見かけることがあります。

飛行機雲はどうしてできるのでしょうか?飛行機が飛んでいる上空は、非常に温度が低く、水蒸気は氷の粒になっていて、氷の粒がたくさんあります。

ここに飛行機が通ると、飛行機から出る排気ガスが核になって、氷の粒が集まってどんどんくっつき、大きくなって雲のように見えます。これが飛行機雲です。

放射線は目に見えない、におわない、聞こえない、触れない、五感に感じないもので、つかみどころがありませんが、飛行機雲の原理を応用した霧箱を使って、放射線が通った飛跡を見ることができます。

放射線は恐いというイメージがありますが、放射線は身の回りにたくさんあって、放射線そのものが恐いのではなく、放射線に被ばくする量が多くなると恐いことをご理解ください。

この資料は、文部科学省の放射線等に関する副読本の図やイラストを使用しています。

1

Page 2: 放射線は恐いというイメージがありますが、放射線 …空を見上げると飛行機雲を見かけることがあります。 飛行機雲はどうしてできるのでしょうか?飛行機が飛んでいる上空は、非常に温度

左の写真は、はスイセンから出ている自然放射線を写し出したものです。色の明るい部分は、スイセンの中に含まれる自然放射性物質カリウム40によるものです。 右の写真は、最近のCTの画像ですが立体的で鮮明な画像を得ることができます。

青い部分は、人工血管を表しています。放射線を使って立体的な画像を得ることで、人工血管の様子を観察することができます。

2

Page 3: 放射線は恐いというイメージがありますが、放射線 …空を見上げると飛行機雲を見かけることがあります。 飛行機雲はどうしてできるのでしょうか?飛行機が飛んでいる上空は、非常に温度

物質は、原子が集まってできています。 原子の構造は、中心にある原子核とその周囲に存在する電子から成ります。 原子核は、正の電荷を持つ陽子と電荷を持たない中性子から成り立っています。 原子番号は陽子の数と同じです。 陽子の数で原子の性質が違ってきます。

同じ原子番号でも質量数が異なる(中性子の数が異なる)ものを同位体(アイソトープ)と言います。

原子番号1の水素は、陽子1個に、中性子がないもの(水素)、中性子が1個くっついたもの(重水素)、中性子が2個くっついたもの(三重水素)の3種類あります。同じ水素ですが、質量数が違い(中性子の数が違う)ます。原子番号が同じ元素で、質量数の違う元素をお互い同位体といいます。このうちエネルギー的に不安定な元素は放射線というエネルギーを発散して、安定な元素になります。放射線を出す元素のことを放射性同位元素(ラジオアイソトープ)といいます。 陽子と中性子の数のバランスが悪い元素は、放射線を出します。

3

Page 4: 放射線は恐いというイメージがありますが、放射線 …空を見上げると飛行機雲を見かけることがあります。 飛行機雲はどうしてできるのでしょうか?飛行機が飛んでいる上空は、非常に温度

では、なぜ放射性同位元素は放射線を出すのでしょうか?

化学反応・物理反応が示すように、一般的に不安定な状態のものは、安定な状態になろうとします 例えば、熱い熱湯を考えてください。

熱湯は、熱と言うエネルギーを持っており、エネルギー的に不安定な状態にあります。 そして、熱というエネルギーを放出することで、安定な水に変わります。

下図の赤い丸を放射性同位元素とすると、放射性同位元素を含む物質を放射性物質といいます。放射性物質は熱湯に相当し、エネルギー的に不安定なため、放射線というエネルギーを放出することで、安定な元素に変わります。 つまり、放射線はエネルギーの塊と考えてください。

4

Page 5: 放射線は恐いというイメージがありますが、放射線 …空を見上げると飛行機雲を見かけることがあります。 飛行機雲はどうしてできるのでしょうか?飛行機が飛んでいる上空は、非常に温度

原子核には、エネルギー的に不安定で、放射線というエネルギーを放出して、別の原子核に変わります。この現象を壊変(崩壊)と言います。

放射線は、その時に放出される高速の粒子と高いエネルギーを持った電磁波のことです。

三朝温泉などのラジウム温泉は、温泉成分のラジウムがアルファ線を出して、気体のラドンに変わります。ラドンもラジオアイソトープで放射線を出しています。温泉に入ると、このラドンを吸い込みます。 ベータ線を出すものもあります。 ガンマ線は、アルファ壊変やベータ壊変に伴って放出される場合があります。

光には、私たちが見ることのできる可視光以外に、見えない光、(紫外線・赤外線、電波等)があります。紫外線より波長が短くエネルギーを持つ光を放射線と言います。 海水浴で紫外線で日焼けするのは、被ばくの始まりです。

5

Page 6: 放射線は恐いというイメージがありますが、放射線 …空を見上げると飛行機雲を見かけることがあります。 飛行機雲はどうしてできるのでしょうか?飛行機が飛んでいる上空は、非常に温度

放射線は、大きく粒子と電磁波に分けられ、X線、ガンマ線は電磁波です。 ベータ線、アルファ線、中性子は粒子です。

ベータ線は、マイナスの電荷を、アルファ線は、プラスの電荷を持ち、中性子は電荷がありません。

6

Page 7: 放射線は恐いというイメージがありますが、放射線 …空を見上げると飛行機雲を見かけることがあります。 飛行機雲はどうしてできるのでしょうか?飛行機が飛んでいる上空は、非常に温度

放射線が物を透過する力は、放射線が粒子か電磁波か、粒子の大きさ、電荷を持っているかで違ってきます。粒子より電磁波の方が透過しやすく、粒子の中でも粒子径が小さいほど、また電荷を持たないことで透過しやすくなります。

7

Page 8: 放射線は恐いというイメージがありますが、放射線 …空を見上げると飛行機雲を見かけることがあります。 飛行機雲はどうしてできるのでしょうか?飛行機が飛んでいる上空は、非常に温度

放射性物質が放射線を出す能力、つまり放射能の強さを表す単位をベクレルと言います。

1ベクレルとは、1秒間に一つの原子核が放射線を出して別の原子核に変わることを言います。 1万ベクレルは、原子核が放射線を出して別の原子核に変わることを言います。

8

Page 9: 放射線は恐いというイメージがありますが、放射線 …空を見上げると飛行機雲を見かけることがあります。 飛行機雲はどうしてできるのでしょうか?飛行機が飛んでいる上空は、非常に温度

放射線が物質にあたると、放射線は物質にエネルギーを与え、物質はエネルギーを吸収します。 単位質量あたりに物質が吸収したエネルギーをグレイ(Gy)と言う単位で表します。

放射線が当たる物質が人体のとき、同じように人体にエネルギーが吸収され、人体に影響が表れます。これをシーベルト(Sv)と言う単位で表します。

物質や人体の組織1キログラム当りに放射線から吸収したエネルギーが1ジュール(※)のとき、1グレイと言います。 ※標準大気圧(1気圧)で20℃の水1グラムを約0.24℃上昇させるエネルギー

9

Page 10: 放射線は恐いというイメージがありますが、放射線 …空を見上げると飛行機雲を見かけることがあります。 飛行機雲はどうしてできるのでしょうか?飛行機が飛んでいる上空は、非常に温度

身体への影響は、放射線の種類で違ってきます。この違いを表す係数を放射線荷重係数といい、数値が大きいほど影響は強くなります。また放射線の感受性は組織や臓器で違ってきます。この違いを表す係数を、組織荷重係数といい、数値が大きいほど影響を受けやすい臓器です。

組織荷重係数は身体全体を1として、組織や臓器の放射線の感受性の割合で割り振っています。組織、臓器ごとの被ばく量を等価線量といい、等価線量=吸収線量×放射線荷重係数で算出します。 例えば、胃は、放射性物質1が放出する放射線Aと放射性物質2が放出する放射線Bから被ばくを受けており、その等価線量は①のとおりとなります。肺は、放射性物質2が放出する放射線Bから被ばくを受けており、その等価線量は②のとおりとな

ります。身体全体の被ばく量を実効線量といい、組織、臓器の等価線量に組織荷重係数を乗じた総和となります(③)。

10

Page 11: 放射線は恐いというイメージがありますが、放射線 …空を見上げると飛行機雲を見かけることがあります。 飛行機雲はどうしてできるのでしょうか?飛行機が飛んでいる上空は、非常に温度

放射性物質から出て来る放射線には強いもの、弱いもの、いろいろあります。中央の男の子は、左右の放射性物質から放射線を浴びています。

左右の放射性物質は、同じ1000ベクレルですが、右のほうが左より強い放射線を出しています。 fは、放射性物質1ベクレルあたりに出て来る放射線が、人体に与える影響を表す数値です。 この場合、右の方が、左より10倍強いfになるので、男の子は左の放射性物質から10mSvの放射線を、右からその10倍の100mSvの放射線の被ばくを受けることになります。

11

Page 12: 放射線は恐いというイメージがありますが、放射線 …空を見上げると飛行機雲を見かけることがあります。 飛行機雲はどうしてできるのでしょうか?飛行機が飛んでいる上空は、非常に温度

放射性物質が放射線を出す能力(放射能)は、時間とともに減っていきます。 放射能がその半分の1/2になる時間、更に1/2からその半分の1/4になる時間は、放射性物質の種類で固有のもので、半減期といいます。 地球が誕生したときできたトリウム232の半減期は141億年、ウラン238は45億年で、まだまだ地球上に残っています。原発事故で有名になったヨウ素131の半減期は8日、セシウム137の半減期は30年です。

12

Page 13: 放射線は恐いというイメージがありますが、放射線 …空を見上げると飛行機雲を見かけることがあります。 飛行機雲はどうしてできるのでしょうか?飛行機が飛んでいる上空は、非常に温度

放射線が物質を通過する時、持っているエネルギーを原子や分子に与え、電子をはじき出す働きを電離作用といいます。これが人体で起った場合、DNAの損傷が起きます。 放射線は、レントゲンで利用されるように、物を通過する透過作用があります。 蛍光物質に当たると蛍光を発します。

13

Page 14: 放射線は恐いというイメージがありますが、放射線 …空を見上げると飛行機雲を見かけることがあります。 飛行機雲はどうしてできるのでしょうか?飛行機が飛んでいる上空は、非常に温度

放射線の被ばくには、放射線を外から浴びる外部被ばくと、呼吸することや飲食することで身体に取り込んだ放射性物質から放出される放射線で被ばくする内部被ばくがあります。

内部被ばくでは、取り込んだ放射性物質は半減期で減衰し、体の代謝で体外に排出されます。内部被ばく線量は今後の50年間を考慮したものとなります(子どもは、70歳までを考慮)。

内部被ばくは、身体の中に放射性物質を取り込むことで被ばくするので、外部被ばくより危険というのは大きな間違いです。内部被ばくも外部被ばくもシーベルトと言う単位で表せば平等に評価されます。

14

Page 15: 放射線は恐いというイメージがありますが、放射線 …空を見上げると飛行機雲を見かけることがあります。 飛行機雲はどうしてできるのでしょうか?飛行機が飛んでいる上空は、非常に温度

放射線被ばくでがんになるメカニズムは、身体の細胞のDNAを傷つけることから始まります。DNAは、2本鎖からできています。DNAは、1本鎖だけ傷つけられても、元通り修復しま

す。しかし2本鎖を同時に傷つけられると修復は困難になり、将来がんになる可能性が出て来ます。 放射線には、直接DNAに当たって傷をつける直接作用があり、この場合の2本鎖切断は100mSv以上で多くなります。 また、放射線が身体の中の水分子の電子を電離し、活性酸素(・OH:ラジカル)を作り、この活性酸素がDNAを傷つける間接作用があります。この場合も同時に2本鎖を傷つけられると影響は強くなります。 放射線は、直接にDNAを傷つける直接作用のイメージが強いですが、100mSv以下の低線量であれば間接作用の方が多いです。

活性酸素の生成は、放射線に特異的ではありません。日常生活の発がん物質が日常的に活性酸素を生成し、絶えずDNAを傷つけています。しかしながら、直接作用であっても間

接作用であっても、相当なハードルを超えない限り、簡単にはがんになりません。これは、身体の免疫機能が働くからです。

15

Page 16: 放射線は恐いというイメージがありますが、放射線 …空を見上げると飛行機雲を見かけることがあります。 飛行機雲はどうしてできるのでしょうか?飛行機が飛んでいる上空は、非常に温度

日常生活の発がん物質や放射線は、DNAを直接傷つけたり、身体の中で活性酸素を生成してDNAを傷つけますが、身体には受けた傷を修復する能力があるので、もとどおりに修復します。 傷が修復できないと、DNAに異常が残りますが、この場合もアポトーシスと呼ばれる異常遺伝子を持った細胞を殺す免疫機能が働き、がん化を抑えます。

アポトーシスをすり抜けて、異常遺伝子を持つ細胞ががん細胞になりますが、これを排除する免疫細胞も身体には備わっています。

このように、身体はがんに対して何重もの防御機能を持っていて、身体を健康に保つことができます。 日常生活での発がん物質や放射線の量が増えると、DNAの傷が多くなり、身体の防御機能の能力を超えてしまうと健康被害が起ります。

16

Page 17: 放射線は恐いというイメージがありますが、放射線 …空を見上げると飛行機雲を見かけることがあります。 飛行機雲はどうしてできるのでしょうか?飛行機が飛んでいる上空は、非常に温度

細胞や細胞内のDNAは、日常生活の発がん物質の直接、あるいは生成した活性

酸素により、絶えず攻撃を受け傷ついています。活性酸素は、呼吸するだけでも作られます。 DNAは、傷が長期間に渡り蓄積するとがんになる可能性が高くなります。 放射線は、被ばくする線量が多くなれば、細胞やDNAへの攻撃は大きいものとなり

ますが、被ばく線量が少ないと攻撃も小さいものとなり、日常生活の発がん物質による攻撃に埋もれてしまいます。

ところで、身体にはこれらの攻撃に対して、防御する機能が備わっています。この中心になる免疫機能は、良い健康状態、十分な栄養、十分な運動、十分な睡眠、十分な野菜果物摂取、たばこを減らす、良い心理状態、前向きの姿勢に心がけることで活性化することが知られています。

17

Page 18: 放射線は恐いというイメージがありますが、放射線 …空を見上げると飛行機雲を見かけることがあります。 飛行機雲はどうしてできるのでしょうか?飛行機が飛んでいる上空は、非常に温度

ところで、遺伝子の損傷については、一つの細胞において日常的に1日5万〜50万

回の修復が行なわれており、修復ミスは起こりうることです。この遺伝子の異常が蓄積することで、発がんのリスクが高まります。外部被ばくでは細胞が均一に被ばくを受けます。一方、内部被ばくでは、放射性物質が細胞の至近距離にあり、高線量を受ける近傍の細胞は細胞死を起こし、放射性物質から遠い細胞では、放射線が当たらない細胞もあります。このことから線量が同じであれば、がん化のリスクとしては、内部被ばくは外部被ばくより低い傾向にあると言えます。

18

Page 19: 放射線は恐いというイメージがありますが、放射線 …空を見上げると飛行機雲を見かけることがあります。 飛行機雲はどうしてできるのでしょうか?飛行機が飛んでいる上空は、非常に温度

福島原発事故の鼻血問題ですが、放射線の影響で鼻血が出ると主張する者は、空気中に浮遊する放射性セシウムが多数吸着した砂塵(セシウムは土と吸着しやすく、風で土が舞い上がるため)が鼻腔粘膜に付着し、至近距離から被ばくを受ける(下図、内部被ばくのような状況)ことで鼻血が出ると説明しており、某新聞でも大きく取り上げていました。

では、実際の被ばく量はどうなのでしょう?原発事故直後、多量の放射性物質が空気中に拡散した頃の福島県のデータはありませんが、つくば市の高エネルギー研究所の観測データ(1)を基に、この空気を一日間呼吸することで、放射性セシウムが全て鼻腔粘膜に付着したと仮定して被ばく量を算出します(表1)。現実的ではありませんが過大評価します。福島第一原発から100km離れたつくば市の1時間あたりの吸収線量率ですが、この数値から類推しても、鼻血は数千mSv以上でなければ

起らないので、福島県で鼻血を起こす被ばく量ではないことがわかります。鼻血があっても原因は放射線ではありません。 (1)http://legacy.kek.jp/quake/radmonitor/GeMonitor6.html

19

Page 20: 放射線は恐いというイメージがありますが、放射線 …空を見上げると飛行機雲を見かけることがあります。 飛行機雲はどうしてできるのでしょうか?飛行機が飛んでいる上空は、非常に温度

放射線は、どのようにして人体に影響を与えるのでしょうか?

人体は、細胞が集まってできています。このグリーンの丸一つ一つが細胞です。人体に放射線が当たると細胞のいくつかは傷ついたり死んだりします。しかしながら、DNAや細胞の修復機能あるいは回りの細胞のおかげで元通り回復します(回復作用)。

一度にたくさんの放射線を被ばくすると、傷ついたり死んだりする細胞が増えます。元通り回復できない場合、組織器官の機能喪失、形質異常が起ります。

元通り回復できたとしても、一部修復ミスにより突然変異細胞が出現し、増殖することでがんになる場合があります。

しかしながら、突然変異細胞が現れたとしても、通常は身体の防御機構が働くので、相当なハードルを超えない限りがんになりません。

放射線の人体影響については、被ばくしてすぐに現れる急性影響と被ばくして数年後に現れる晩発影響があります。

20

3/23/13

Page 21: 放射線は恐いというイメージがありますが、放射線 …空を見上げると飛行機雲を見かけることがあります。 飛行機雲はどうしてできるのでしょうか?飛行機が飛んでいる上空は、非常に温度

放射線の人体影響は、被ばくした本人に現れる身体的影響と、その子孫に現れる遺伝的影響があります。

また被ばくしてすぐに現れる急性影響と、被ばくして数年数十年後に現れる晩発影響、妊婦が被ばくして起る胎児への障害があります。

急性影響、胎児への障害、白内障などは、確定的影響と呼ばれ、ある被ばく線量(しきい線量)を被ばくしなければこのような影響は表れません。

がん・白血病、遺伝的影響(後で詳しくお話します)は、確率的影響と呼ばれ、どんなに少ない被ばく線量でも起る可能性があります。しかしながら放射線以外の原因でも起こるので、点線部分の被ばく線量では、この原因に埋もれてしまい、影響が起ってもその原因が放射線によるものか放射線以外の原因なのか判別できない領域です。

21

Page 22: 放射線は恐いというイメージがありますが、放射線 …空を見上げると飛行機雲を見かけることがあります。 飛行機雲はどうしてできるのでしょうか?飛行機が飛んでいる上空は、非常に温度

この図は、一度に多量の放射線を被ばくして、すぐに現れる急性影響について表しています。影響は、しきい線量以上の被ばくをすることで起ります。ここでは、グレイと言う単位は、シーベルトと同じと考えてください。

黄緑で書かれた影響については、罹患率と死亡率が1%になることを表しています。 例えば、睾丸への0.1グレイ(100ミリシーベルト)の被ばくで一時不妊が起ります。そのうち不妊は解消します。 骨髄への1グレイ(1000mSv)の被ばくで治療しないで置くと1%の人が死亡します。 骨髄への2グレイ(2000mSv)の被ばくあたりから治療しても1%の人が死亡します。 全身への3グレイ(3000mSv)の被ばくあたりから半分の人が30日以内に死亡します。全身への7グレイ(7000mSv)の被ばくあたりから全員が死亡します。 ただし、被ばく量がどんなに多くなっても放射線で即死することはありません。

ここに書かれている急性影響は、一度にしきい線量以上の被ばくをするから起る影響であって、同じ線量であっても長期に渡って被ばくする場合は、身体の回復作用が働くため、このような影響は起りません。

鼻血は、放射線影響として一般的ではありません。鼻血は鼻粘膜の障害で起きますが、粘膜が一度に1000mSvを超える被ばくをしない限り障害は起きません。

22

Page 23: 放射線は恐いというイメージがありますが、放射線 …空を見上げると飛行機雲を見かけることがあります。 飛行機雲はどうしてできるのでしょうか?飛行機が飛んでいる上空は、非常に温度

現代社会では、人口1000人のうちがんになるのは500人で、300人ががんで死亡すると言われています。

図の水色の部分が自然発生によるがんの死亡者で、その原因は主に個人の生活習慣によるものです。 原爆被爆のデータ(※)から計算すると、1000人が一様に100mSv被ばくすると、がんリスクが0.5%増えるので5人が放射線によって追加死亡することになり、合計で305人が死亡することになります。 100mSv未満の被ばくは、身体の回復作用が働くので、被ばく量と発がんのリスクの関係が認められていません。しかしながら100mSv未満の被ばくでがんにならないとも言い切れません。そこが難しいところです。 100mSv未満の被ばくは、明確に分かっていないがリスクが小さいから安心と考え

るのか、リスクは小さいが明確に分かっていないから危険と考えるかは、その人次第です。 ※放射線影響研究所には、原爆被爆では、1000人が一様に1000mSvの被ばくをすると放射線による被ばくによって150人ががんで死亡したデータがあります。放射線被ばく以外の原因(自然発生)で死亡する300人を含めると合計450人が死亡することになります。

23

Page 24: 放射線は恐いというイメージがありますが、放射線 …空を見上げると飛行機雲を見かけることがあります。 飛行機雲はどうしてできるのでしょうか?飛行機が飛んでいる上空は、非常に温度

男性の精子や女性の卵子といった生殖細胞は、被ばく線量(しきい線量)に応じて、不妊や一時不妊を起こします。詳しくは「放射線の急性影響」。

生殖細胞が被ばくして、次の世代に起る遺伝的影響は、ねずみなどのげっ歯類では1000mSvの被ばくで報告がありますが、人では原爆被爆後に妊娠して生まれた子

供については、現在まで発がんの上昇や遺伝子の変化などの影響が確認されていないため、遺伝的影響はないと言われています。これは精子や卵子が被ばくして異常を起こすと、受精しないか受精しても流産を起こし、次の世代に引き継がれないのだろうと言われています。

妊婦さんが被ばくして、胎児に起る影響は、妊娠の時期で胎児への影響は違ってきます。 生殖細胞への一時不妊、不妊、胎児への影響、これらは、一度に100mSvの被ばく

をしなければ起こらないと言われています。日本産婦人科学会ガイドラインにおいても胎児の被ばくは、国際放射線防護委員会(ICRP)の「100mSv以下は、妊娠中絶の理由とすべきでない」の勧告を取り入れ、さらにより安全側を見込み50mSv未満は安全としています。

24

Page 25: 放射線は恐いというイメージがありますが、放射線 …空を見上げると飛行機雲を見かけることがあります。 飛行機雲はどうしてできるのでしょうか?飛行機が飛んでいる上空は、非常に温度

上の表は、生活習慣と放射線被ばくのがんリスクを比べたものです。 100mSv未満の被ばくであれば、がんのリスクは上がりません。 野菜不足や家族に喫煙者がいて、長年受動喫煙をしていると、放射線被ばくの100-200mSvと同じがんリスクになっています。この報告書に寄れば、福島で起っている放射線被ばくより野菜不足の方ががんになり易いことになります。 肥満ややせ型、運動不足の人は放射線被ばくの200-500mSvと同じがんリスクになっています。喫煙者や大量飲酒者は放射線被ばくの1000-2000mSvと同じがんリスクになっており、原爆の爆心地並の被ばくと同じがんリスクになっています。

下の表は、中国の自然放射線が高い地域に住む人、あるいは職業柄、放射線被ばくの多い人が、長期に渡り一般の人より多く被ばくを受けたとしても、むしろがんの死亡率が減少していることを表しています。これは、少量の放射線を被ばくすることは身体にいいと言うホルミシス効果ではないかと言われていますが、科学的には証明されていません。

25

Page 26: 放射線は恐いというイメージがありますが、放射線 …空を見上げると飛行機雲を見かけることがあります。 飛行機雲はどうしてできるのでしょうか?飛行機が飛んでいる上空は、非常に温度

日本人の死亡原因の約30%はがんです。残り70%は心疾患、脳疾患、感染症などとなっています。

このがんの主な原因は、喫煙、ウィルス感染、飲酒など主に個人の生活習慣によるものです。(国立がん研究センター) 放射線では、100mSv被ばくするとがんになるリスクが0.5%増えます。 100mSvの被ばくは、放射線に関係しない個人の生活習慣などに埋もれてしまい、後者の原因の方ががんになりやすいことが分かります。

26

Page 27: 放射線は恐いというイメージがありますが、放射線 …空を見上げると飛行機雲を見かけることがあります。 飛行機雲はどうしてできるのでしょうか?飛行機が飛んでいる上空は、非常に温度

私たちの身の回りには、たくさんの放射線があります。 図の右側は、自然界から受ける放射線です。私たちは、宇宙から大地から外部被ばくを、また空気中のラドンを呼吸することで食物を食べることで内部被ばくを自然界から受けています。日本人は年間平均で2.1mSvの被ばくを自然界から受けています。世界を見ると、イランのラムサール、インドのケララなどのように、自然放射線の高い地域があります。飛行機に乗ると、東京—ニューヨーク間の往復で0.2mSv被ばくします。 図の左側は医療で利用する人工放射線です。Gyと言う単位はSvとほぼ同じと考えてください。健康診断の胸のレントゲン撮影では、0.05mSv被ばくします。CTでは、平均7mSv被ばくします。がんの放射線治療では、最大70Gy被ばくします。人が一度に70Gy被ばくすると死んでしまいますが、選択的にがん細胞に照射することで、また分割して照射することでがん細胞は死にますが、正常細胞は身体の回復作用のおかげで助かります。ところで、自然放射線は、年間に渡る積算の被ばく量であるのに対し、医療の被ばくは一瞬の被ばくです。この違いはありますが、外部被ばくも内部被ばくも、自然放射線も人工放射線もSvで表した数値が同じであれば、人体への影響も同じことになります。 ところで、人体影響は、100mSvを超える被ばくで現れ始めると言われています。これ以下の線量であれば、身体の回復作用が働くので、人体影響が認められていません。一般公衆の年間被ばく限度は、1mSvで、放射線を取り扱う放射線業務従事者の年間被ばく限度は50mSv(5年間で100mSv)となっています。これは、放射線業務従事者と一般市民に身体の違いがあるのではありません。放射線業務従事者の年間被ばく限度50mSvは、人体影響をより安全側に考慮したものとなりますが、一般市民の年間被ばく限度1mSvは、環境中の放射線量の基準であって、1mSvを超えると健康被害が現れるのではありません。

27

Page 28: 放射線は恐いというイメージがありますが、放射線 …空を見上げると飛行機雲を見かけることがあります。 飛行機雲はどうしてできるのでしょうか?飛行機が飛んでいる上空は、非常に温度

ここでは、一般公衆の年間被ばく線量限度についてお話します。 一般公衆の年間被ばく線量限度の1mSvは、原発事故でにわかに注目されていますが、我が国においてこれは原子力発電所や病院、大学の放射線施設から漏れ出る放射線の環境基準のことであって、1mSvを超えると健康被害が現れるのではありません。また、これには自然放射線や医療被ばくは含みません。 1mSvが担保されているのは、原子力発電所や病院、大学の放射線施設が、事業所から外へ漏れる放射線量を年間1mSv以下になるよう対策をとっているからです。もし、法律で一般公衆の年間被ばく線量限度が1mSvと規程されていれば、人が生まれた瞬間から被ばく線量を測定しなければいけないことになります。 福島県の原子力発電所事故では、放射性物質が多量に漏れ出たので、環境基準が年間1mSvを超える地域が広範囲に広がり、さらには年間20mSvを超えるような人々を避難させなければならない地域ができてしまいました。 そして、原発事故で引き上げた事故時の一般公衆の被ばく線量限度年20mSvは、国際基準では最大100mSvですが、元の1mSvに戻すために懸命な除染が行われています。 ところで原発事故により、通常の放射線管理区域より汚染された地域から避難すべきとのご意見がありますが、放射線を取り扱う施設を対象とした管理区域と原子力災害によって汚染された一般の居住区域を同一に考えるのは、法律の目的の対象が違うため、次元の異なる問題です。 原子力災害では、居住区域において、そこからどのくらい外部被ばくを受け、また汚染された土壌等から放射性物質が農作物等にどの程度移行し、それによってどのくらいの内部被ばくがあるかで判断すべきではないでしょうか。

28

Page 29: 放射線は恐いというイメージがありますが、放射線 …空を見上げると飛行機雲を見かけることがあります。 飛行機雲はどうしてできるのでしょうか?飛行機が飛んでいる上空は、非常に温度

宇宙には、宇宙放射線があります。また地球には、地球が誕生した時にできた放射性物質がまだまだ残っており、それは地面の岩石に、空気中に、食べ物に含まれています。

地球では、高度が高くなると(宇宙に近づくと)、宇宙放射線の被ばくを受けます。飛行機に乗ると東京-ニューヨーク間の往復で0.2mSv被ばくします。宇宙ステーションでは、毎日およそ1mSv被ばくします。これは、毎日レントゲン写真を20枚撮っているのと同じです。

29

Page 30: 放射線は恐いというイメージがありますが、放射線 …空を見上げると飛行機雲を見かけることがあります。 飛行機雲はどうしてできるのでしょうか?飛行機が飛んでいる上空は、非常に温度

地球が誕生する時にできた放射性物質のうち、半減期が長いものはまだまだ地球上に残っています。ウラン238(核燃料に使用するのはウラン235)、トリウム232、カリウム40などです。 ウラン238とトリウム238は、放射線を出して様々な放射性物質に変化し、最後は安定な鉛になります。これらすべてが自然放射性物質です。

私たちは、大地から、空気中からこれら自然放射性物質から出る放射線で被ばくしています。 カリウム40は、どの食品にも含まれています。

自然放射性物質のうち、ラドン以降の放射性物質(赤枠内)は、空気中に含まれています。ラドンは気体ですが、それ以外は、空気中の塵や埃にくっ付いています。

私たちは呼吸することで、これら放射性物質を身体に取り込み、内部被ばくを受けています。

30

Page 31: 放射線は恐いというイメージがありますが、放射線 …空を見上げると飛行機雲を見かけることがあります。 飛行機雲はどうしてできるのでしょうか?飛行機が飛んでいる上空は、非常に温度

この図は、福島第一原子力発電所事故以前の全国の自然放射線量を表したものです。

自然放射線量は、日本の中でも地域で違います。火山性岩石の多い西日本のほうが東日本より高い傾向にあります。 今からおよそ300年前に噴火した富士山の灰が降り積もってできた関東ローム層により、富士山を中心に大地からの自然放射線が遮られているのが分かります。

31

Page 32: 放射線は恐いというイメージがありますが、放射線 …空を見上げると飛行機雲を見かけることがあります。 飛行機雲はどうしてできるのでしょうか?飛行機が飛んでいる上空は、非常に温度

世界の中には、自然放射線の高い地域はたくさんあります。 イランのラムサールでは、年間平均10.2mSv、最大で260mSvの被ばくを受ける場所

もあります。インドのケララ、中国の陽江、ブラジルのガラパリも自然放射線の高い地域となります。 そして、これらの地域で発がんや奇形が多いと言う報告はありません。

32

Page 33: 放射線は恐いというイメージがありますが、放射線 …空を見上げると飛行機雲を見かけることがあります。 飛行機雲はどうしてできるのでしょうか?飛行機が飛んでいる上空は、非常に温度

ほとんどの食品には、自然放射性物質が含まれています。 図の数値は、食品1kgあたりの自然放射性物質カリウム40の量を表しています。 米や食パンで30ベクレル ほうれんそう200ベクレル ポテトチップス400ベクレルあります。

そして私たちは、これら放射性物質を含む食物を食べることで、またラドンを呼吸することで、体重60kgあたりカリウム40の4000ベクレルを始め、放射性物質が 約7000ベクレルあり、ここから、内部被ばくをうけています。

33

Page 34: 放射線は恐いというイメージがありますが、放射線 …空を見上げると飛行機雲を見かけることがあります。 飛行機雲はどうしてできるのでしょうか?飛行機が飛んでいる上空は、非常に温度

放射線の人体影響のうち、急性影響は100mSv未満では起りません。慢性影響はがんですが、これは100mSv未満の被ばくであれば身体の回復作用が働き、被ばく量とがんのリスクが明確に分かっていません。

ところで放射線防護を考える場合、何らかの基準が必要になります。そのために100mSv未満であってもがんリスクは存在すると赤点線のように仮定して放射線防護の基準にしています。

つまり放射線防護上では、被ばく量が少量であっても被ばく量に合わせて人体影響があるということになるので、被ばくはできる限りしないようにという考え方をとります。

しかしながら、私たちは放射線を利用することで、様々な恩恵を受けています。例えば、レントゲン写真を撮ることで、身体の病変を見つけることができます。つまりレントゲンを撮ることで、被ばくするリスクはあるが、身体の病変を見つけるベネフィットがあるわけです。

放射線利用では、リスクよりベネフィットが上回る場合、放射線を利用するという考え方を採用します。

34

Page 35: 放射線は恐いというイメージがありますが、放射線 …空を見上げると飛行機雲を見かけることがあります。 飛行機雲はどうしてできるのでしょうか?飛行機が飛んでいる上空は、非常に温度

外部被ばくから身を守る方法は、放射性物質から距離を取る、放射線を受ける時間を短くする、遮へい効果のあるコンクリートなどの建物の中に入るがあります。

内部被ばくから身を守る方法は、内部被ばくとなる経路を遮断することです。経路としては、呼吸すること、食べ物を食べること、傷口からの侵入があります。

原発事故などで放射性物質が環境中に放出された場合は、屋内待機することで屋外の空気を呼吸することを避ける(屋内では呼吸による内部被ばくを屋外に比べ1/4〜1/10減らすことができる)、放射性物質が多く含まれる飲食物を早期に突き止め出荷制限を行う。外出から戻ったら、手洗いやうがいを行うなどです。

放射性ヨウ素への対策は、安定ヨウ素剤の服用は自治体の指示に従うことになりますが、家にあるわかめやこんぶなどを食べることでも効果はあります。ヨウ素を含むからといってもくれぐれもイソジンガーグルなどは服用しないでください。返って粘膜を傷つけます。

35

Page 36: 放射線は恐いというイメージがありますが、放射線 …空を見上げると飛行機雲を見かけることがあります。 飛行機雲はどうしてできるのでしょうか?飛行機が飛んでいる上空は、非常に温度

原子力発電所や放射性物質を扱う施設での事故の直後は、空気中に放射性物質が拡散しているため、屋外に出ない、出るときはマスクやハンカチで口をふさぐ。摂取制限のある食品は食べない、飲まないなどの対策が取られますが、事故後しばらく経つと、放射性物質は地面に落ち空気中に少なくなる、半減期で少なくなるなどするので、それまでの対策を取り続ける必要はなくなります。

36

Page 37: 放射線は恐いというイメージがありますが、放射線 …空を見上げると飛行機雲を見かけることがあります。 飛行機雲はどうしてできるのでしょうか?飛行機が飛んでいる上空は、非常に温度

放射線は、医療・農業・工業などで多岐に渡り利用されています。 X線撮影は、今や病気の診断に欠かせないものになっています。

ウリミバエは、ゴーヤやスイカに卵を産みつけて、被害をもたらします。ウリミバエにコバルト60の放射線を当てて、不妊させます。すると卵は、孵らないのでウリミバエ

は減少し、被害を押させることができます。このミッションは過酷なものでした。人里離れたところに、小屋を建て、その中にウリミバエの幼虫を数十万匹飼い、放射線を照射します。想像してください。数十万匹のウジ虫の中での作業。においも強烈だったそうです。おかげで私たちは、ゴーヤを食べることができます。

タイヤに放射線を当てると、分子間の結合がより強力になり、力学的特性や耐久性が強化されます。

植物の品種改良は、放射線を当てて、意図的に突然変異を起こさせ、病気に強い品種を作り出したり、いろいろな色やかたちの花を作り出します。

放射線の透過作用や減衰を利用してアルミホイルやサランラップの厚さを測ります。放射線のがん治療は、メスを使わないので、身体を傷つけずに身体の深部の腫瘍を消滅させます。特に重粒子線は、炭素が使われ、正常細胞の負担を少なくしながら腫瘍を消滅します。費用は300万円くらいかかります。

37

Page 38: 放射線は恐いというイメージがありますが、放射線 …空を見上げると飛行機雲を見かけることがあります。 飛行機雲はどうしてできるのでしょうか?飛行機が飛んでいる上空は、非常に温度

茨城県の東海村にあるJ-PARCです。兵庫県上郡にあるSpring8は放射光を利用するものですが、ここは中性子とニュートリノを取り出して利用しています。 2013年加速器が暴走したせいで、ターゲットの金が気化して、研究員が被ばくし、さらに外

に漏れた事故があったところです。事故があったのは左上のハドロン実験施設、下方向から光速のプロトン(陽子)がやって来てターゲットにあたり、そこから出てくる中性子を利用して、実験を行うものです。右上は中性子線を流すビームライン。四角い構造物は、中性子線を遮へいするコンクリートです。 もう一つの計画として、J-PARCからニュートリノを発射して、約300キロ離れた岐阜県のスーパーカミオカンデで観察し、その動態を観察する計画があります。(中央下と右下) 左下、見えにくいですが、ここに祝ミュオン誕生とあります。2008年のことです。ニュートリノ

ができるとき、同時にミュオンという素粒子ができます。ニュートリノはご存知のとおり、観測は大変困難ですが、ミュオンの観測は容易で、ミュオンが観測されたら、ニュートリノもできたことがわかる訳です。ミュオンが観測されている最中はこのあたりは致死量の数倍の数十Svになるそうです。

38