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米国アセットマネジメント業界の規制強化の方向性 (SECホワイト議長の講演より) ムーディーズ・アナリティックス ディレクター 野 裕 [email protected] 2015年1月23日

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米国アセットマネジメント業界の規制強化の方向性

(SECホワイト議長の講演より)

ムーディーズ・アナリティックス

ディレクター

水 野 裕 二

[email protected]

2015年1月23日

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米国アセットマネジメント業界の規制強化の方向性

本資料は米国証券取引委員会(SEC)のメアリー・ジョー・ホワイト議長が2014年

12月11日に実施した講演「アセットマネジメント業界のリスクモニタリングと規制

的な安全措置を高める」やその他の資料に基づき、アセットマネジメント業界へ

の規制強化の動向についてご紹介するものです。

“Enhancing Risk Monitoring and Regulatory Safeguards for the Asset Management Industry”

(SEC Chair Mary Jo White, Dec. 11, 2014)

“Examination Priorities for 2015” (SEC / Office of Compliance Inspections and Examinations

(OCIE), Jan13, 2015)

“The future of financial reform” (Speech given by Mark Carney, Governor of the Bank of

England, Chair of the Financial Stability Board / Monetary Authority of Singapore Lecture / 17

November 2014)

“2015 Outlook – Global Asset Managers” (Moody’s Investors Service, Dec10, 2015)

はじめに

本資料では当局資料の一部を翻訳してご紹介しておりますが、弊社はその正確な内容を保証するものでは

ありません。正確な内容につきましては、原文をご参照くださいますようお願い致します。

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米国アセットマネジメント業界の規制強化の方向性

目次

1. 米国アセットマネジメント業界の規制強化の方向性

(SECホワイト議長の講演より)

2. SECの2015年の検査重点項目

3. FSB/マーク・カーニー議長による警告

(流動性イリュージョンとファンド解約リスク)

4. 米国アセットマネジメント業界の状況

(ムーディーズ・インベスターズ・サービスの2015年アウトルックより)

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米国アセットマネジメント業界の規制強化の方向性

エグゼクティブ・サマリー

米国SECがアセットマネジメント業界について規制強化を検討しているのは以下の3分野

① アセットマネジメント業界から収集するデータや情報の改善

② ポートフォリオ構成に関するリスク(流動性やデリバティブ)への対処

③ 顧客資産の移管計画とストレステスト

(MA水野注)最近の銀行規制にたとえると、①はバーゼルによるリスクデータ集計、②は流動性リスク規制やレバレッジ比率規制、③は再生破綻処理計画とストレステスト、にそれぞれ類似している。

米国SECの2015年検査重点項目では、アセットマネジメント業界での商品多様化を背景とした「個人投資家の保護」のほか、マーケットワイドなリスクの検査、違法行為のサインを発見するためのデータ分析の3項目が挙げられている。

FSBのマーク・カーニー議長は近年のフィクスト・インカム市場で市場流動性が見かけよりも枯渇していることを指摘し、同じ文脈でミューチュアル・ファンドの解約リスクについても警告を発している。

最近の米国ファンド市場では市場拡大と共に、大手アセットマネジメント会社の寡占や商品の多様化(スマートベータやリキッド・オルタナティブ)が進んでいる。

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米国アセットマネジメント業界の規制強化の方向性

1.米国アセットマネジメント業界の規制強化の方向性

(SECホワイト議長の講演より)

“Enhancing Risk Monitoring and Regulatory Safeguards for the Asset

Management Industry” (SEC Chair Mary Jo White, Dec. 11, 2014)

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米国アセットマネジメント業界の規制強化の方向性

SECとアセットマネジメント業界の関わりについて

【アセットマネジメント業界は新たな規制変化の時代を迎える】

私はSEC議長を18ヶ月務めてきたが、SECは2015年に向けて多くの重要な課題を抱えている。証券市場の複雑で分散した構造上の問題、公開企業のディスクロージャーを投資家にとってより有意義なものとすること、ドッド・フランク法やJOBS法(Jumpstart Our Business Startups、新規産業活性化法)の下で議会から指定されている規制策定を完了させること、などがある。本講演で話すのはアセットマネジメント業界の規制である。

SECは75年前の1940年以降、アセットマネジメント業界を規制対象としてきた。我々の目的は投資家保護、公正で秩序ある効率的市場を維持すること、資本形成を促すこと、である。過去数年、我々の規制プログラムは成長を続ける市場やその進化がもたらす課題に対応するため、発展を遂げてきた。我々は証券業界の長期的トレンドと金融危機の教訓に基づき、新たな規制変化の時代へと乗り出そうとしている。

今日の講演では規制上の問題に着目し、それらへの対応方法を強化する計画を示しながら、アセットマネジメント業界に対するSECの見解を述べていきたい。

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米国アセットマネジメント業界の規制強化の方向性

進化するアセットマネジメント業界と進化する規制ツール

【アセットマネジメント業界は急成長している】

現在、アセットマネジメント業界のAUMは63兆ドル以上に達し、経済の重要な部分を担っている。SECには11,000人以上の投資アドバイザーと10,000件のミューチュアル・ファンドが登録されている。

投資家、特に個人投資家は金融ニーズを満たすために投資アドバイザーの助言とミューチュアルファンドへの投資に依存する度合いを高めている。2013年時点で、米国全体の46%を占める5,700万の家計がミューチュアル・ファンドを保有している。

アセットマネジメント業界は増大する投資家の様々なニーズに対応するため、新商品を開発し、新たな投資ストラテジーを導入してきた。上場型商品は1990年初頭に登場し、急成長してきた。2014年10月時点で、米国の上場ETFとその他の上場型商品の取引額は米国エクイティ・トレーディング額の1/4に達している。プライベートファンドも数とサイズの点で急成長しており、多くのミューチュアルファンドがオルタナティブ投資戦略やデリバティブを使用している。

アセットマネジメント業界が新たなリスクと課題を伴って進化していることは目新しい現象ではない。過去数年、SECは「現場で起きている事実」を規制とより良く調和させるため、重要な施策プログラムを実施してきた。

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米国アセットマネジメント業界の規制強化の方向性

SECが進化するアセマネ業界へ対処するために行ってきた施策

【SECが行ってきた3つの規制の柱】

各法律が規定しているアセットマネジメントの規制手段を理解することが、現在SECが進めているプロセスを理解するのに役立つ。各法律は幅広い分野を対象とする包括的な規制フレームワークを構築している。我々に与えられた3つの重要な規制ツールは次の通りである。

① 利害相反関係のコントロール

② 登録、報告、ディスクロージャーの体制

③ ファンドのポートフォリオ構成上のリスクとオペレーショナル・リスクのコントロール

第一に、利害相反のコントロールに関する法規制では、投資アドバイザーやファンドの組織、業務、経営における利害相反関係から生じる、投資家に対するリスクに対処する方策とインセンティブを確立している。

第二に、登録、報告、ディスクロージャー体制である。登録制度はSECがファンドとアドバイザーを特定・モニター・規制する重要な基盤である。定期的な報告とディスクロージャーは監督作業にとって極めて重要である。ここでもSECは重要な施策を行ってきた。ドッド・フランク法で与えられた権限に基づき、一定のプライベート・ファンドの投資アドバイザーに関する包括的な登録制度を導入した。SECはまた、ミューチュアルファンドの投資家がフィーとリスクにより良く注目するために、サマリープロスペクタス(要約目論見書)制度を作った。

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米国アセットマネジメント業界の規制強化の方向性

ポートフォリオの構成リスクとオペレーショナルリスクに対処する

【ポートフォリオ構成リスクとオペレーショナルリスクのコントロール】

本日、私が強調したいのは3つ目のポイントのポートフォリオの構成リスクとオペレーショナル・リスクのコントロールである。「ポートフォリオの構成リスク」というのは、ファンド投資構成に関連したリスクとその構成がファンドにもたらす影響を指している。ポートフォリオ構成リスクにはファンドの保有資産の流動性やレバレッジが含まれる。また、「オペレーショナル・リスク」とは内部プロセスやシステムの不適切さや欠陥から生じるリスクのことである。

我々の法規制ではこれらの問題へ対処するフレームワークが規定されている。そのため、ミューチュアルファンドと投資アドバイザーにはどこに、どのような条件で資産管理を委託するかについて制約がある。資本構成規制ではレバレッジを制限し、登録投資会社の資産と投資家を過度な借入や過度なエクスポージャー保有のリスクから保全している。一定のファンドには資産保有を分散化させる義務もある。そして、もちろん、ミューチュアル・ファンドは持分所有者の要請に応じて7日以内に資金を返済する義務がある。

SECではポートフォリオ構成リスクとオペレーショナル・リスクに関する規制を高度化するよう努めてきた。最近、SECはマネーマーケットファンドに対する大きな規制改革を認可した。また、他の当局と協力してプライベートファンドのアドバイザーに対する報告要件も確立した。オペレーショナル・リスクに関しては、SECは顧客情報を保護するための多くのルールを導入してきた。

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米国アセットマネジメント業界の規制強化の方向性

SECが取り組んでいる3つの新規制イニシアティブ

【SECは今後、3つの新規制に取り組む】

これらの施策は全て重要だが、まだやるべき作業が残っている。金融危機によってファンドとアドバイザーの注意深い管理が重要だということが明らかになった。SECは業界の監督を拡大し、深化させてきた。それによりリスクをより良く特定し、モニターし、評価することが可能になってきた。しかし、それだけでは十分ではない。より複雑化しているポートフォリオ構成とオペレーションに規制が対応するために、より幅広いイニシアティブが必要である。そのためにSECスタッフが私の指示の下で3つのコア・イニシアティブを策定している。

① アセットマネジメント業界から収集するデータや情報の改善

② ポートフォリオ構成に関するリスク(流動性やデリバティブ)への対処

③ 顧客資産の移管計画とストレステスト

第一に、アセットマネジメント業界のリスクや規制対応を検討するために使用するデータや情報を改善する。既存のデータ要件を拡張し、アップデートしなければならない。

第二に、登録ファンドがファンドレベルのコントロールを高め、ポートフォリオ構成に関するリスク(流動性から生じるリスクやデリバティブなど特定取引から生じるリスクなど)を特定し、対処できるようにしなければならない。

第三に、各社は必要な際に顧客資産を移管する計画を確立しなければならない。金融危機の教訓でもあるが、我々は最悪の事態に備えてテストし、計画を立てなければならない。

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米国アセットマネジメント業界の規制強化の方向性

第1の課題: データ・レポーティングを高度化する

【ファンドから現在受けている報告では不十分である】

SECにファンドレベルと業界全体レベルでリスクをモニターできる能力がなければ、アセットマネジメント業界のリスクを特定し、対処する能力は減じられてしまう。ファンドとアドバイザーは現在、ポートフォリオやオペレーションに関する重要情報をSECに報告しているが、これらの報告義務は(私の観点では)業界で新たに登場するプロダクトや投資戦略についていけていない。例えば、我々のルールではデリバティブの多くの種類の報告を要求していない。ファンドが利用しているデリバティブのボリュームと複雑さを考えれば、これは明らかなギャップである。同様に、我々はファンドの1/4が実施している証券ファイナンスについて完全な情報を受領していない。

SECではファンドとアドバイザーのデータ報告を高度化する案を策定中である。基本的な登録情報の報告も新たにし、業界の進展状況と潜在的なコンプライアンス問題をモニターできるようにすべきである。さらに、ファンドのデリバティブ投資、投資資産の流動性と時価評価、証券ファイナンス状況に関する報告とディスクロージャーは全て高度化されるべきである。アドバイザーが特定顧客の資産を運用するマネージドアカウントから個別により多くのデータを集めることは、検査の重点項目(注)とそれらのアカウントのリスク評価により良い情報をもたらすだろう。

(MA水野注)SECによる検査の重点項目については後述。

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第2の課題: ポートフォリオ構成リスクをコントロールする

【ファンドの流動性リスク管理とデリバティブ管理を強化する】

登録ファンドが現状のポートフォリオ構成のリスクを効果的に特定し、管理する必要もある。ミューチュアルファンドとETFにおける流動性管理とデリバティブ利用はSECによる2つの重要な着眼点である。これらの分野のコントロールが不適切だと、ファンドとその投資家に大きなリスクが生じ得るし、金融システム全体への潜在影響もあるのではないかという疑問も生じる。

流動性リスクは投資資産を通じてオープンエンド投資会社とETFの投資家に影響を与える。流動性リスクを管理しないファンドでは、ストレス時の解約ニーズに応えられなくなる恐れがある。特にオープンエンド投資会社では7日以内の支払義務があるため、なおさらである。また、解約ニーズが増大しているファンドにストレス状況が生じることで、投資先の市場に波及効果をもたらす可能性がある。例えば、ディストレスト・ファンドが解約要請に応じて市場価格以下で証券を売却せざるを得なくなると、その市場の資産価格の下落に拍車をかける恐れがある。

デリバティブも別のリスクをもたらす。近年ではファンドによるデリバティブ利用が急増し、より複雑な方法で利用されている。ファンドはエクスポージャーをリスクを管理したり、効率的にエクスポージャー調整をするためにデリバティブを使用することが多いが、デリバティブはしばしばレバレッジのかかった投資や将来的な負債を生み出すものである。

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第2の課題の主眼は流動性リスクとデリバティブ利用

【流動性基準の見直しとレバレッジ制限を検討中】

ファンド資産がますます多様になり、デリバティブ利用が増えることから生じるリスクに対処するには、より包括的なアプローチが必要である。SECではこれらの問題に取り組んでおり、その努力の結果は規制策定を推奨するものとなる。

最も基本的なレベルとして、SECは流動性リスクとデリバティブ利用に関連するリスクに対処するため、広範なリスク管理プログラムがミューチュアルファンドとETFに必要かどうか、また、SECによるそのプログラムの包括的な監督手法を検討している。また、SECは個別の規制要件の選択肢も検討している。例えば、流動性基準の見直し、流動性リスクのディスクロージャー、デリバティブ利用により生じるレバレッジを適切に制限する施策などである。そのような変更は投資家保護を改善し、流動性リスクに関する透明性を高め、ファンドが解約ニーズに応えて強制的に資産を売却する際の市場影響を緩和することに役立つ(注)。

(MA水野注) FSBのマークカーニー議長は2014年11月の講演で、フィクストインカム市場の「流動性イリュージョン」について指摘し、市場流動性が低下している環境下で、ファンドが一斉に解約されることにより市場価格が大幅に下落するリスクを指摘している。詳細については後述。

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第3の課題: 資産移管計画とストレステスト

【ファンド破綻時にすみやかに顧客資産を移管できるよう計画を策定する】

3つ目のフォーカスは市場ストレス状況時もしくは投資アドバイザーが機能しなくなった場合における投資家への影響に関する規制の高度化である。そのような事態に関連するリスクにはいくつかのものがある。例えば、アドバイザーの破綻時やキーパーソンの退職時において、アドバイザーは顧客ニーズに応えられない状況に陥ることがあるが、それでもなお、他の会社に速やかにアセットマネジメント・サービスを移管しなければならない。

このリスクを正しく理解するためには、投資アドバイザー会社を解体することに伴うリスクは、他の種類の金融企業に関するリスクとは異なるということを認識することが重要である。顧客資産はアドバイザー自身の思案ではなく、アドバイザーは通常は市場にインパクトを与えることなく、市場から撤退することができる。しかし、そのような撤退行為は簡単なものではなく、その難しさは顧客資産によって異なる。例えば、投資家が資産にアクセスしたり、資産をアドバイザーの下から移転させる能力が限られていたり、もっと一般的に言えば、非流動的な資産や市場環境により生じる事実上の制約がある場合、そのアドバイザーに明確な移管計画があれば、投資家や市場のメリットになる。

SECでは投資アドバイザーが業務混乱に見舞われた際に備えて移管計画を策定することを義務付ける規制推奨案を策定中である。そのような計画をあらかじめ策定するプロセスにより、投資アドバイザー会社やその顧客は移管に対処するための準備ができる。

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米国アセットマネジメント業界の規制強化の方向性

第3の課題: 資産移管計画とストレステスト

【ストレステストの義務付けを検討中】

SECはドッド・フランク法の規定に従い、大手投資アドバイザー会社と大手ファンドによる年次ストレステストの新要件を導入する方法を検討中である。ストレステストは銀行規制当局によって定期的に実施されている重要なツールである。アセットマネジメント業界にこの新しい義務を導入することにより、市場参加者及びSECがストレス事由による潜在的なインパクトを正確に理解することに役立つだろう。マネーマーケット改革を通じてストレステストについて学んだことに基づいて、SECでは投資アドバイザーと投資会社にはどのような手続が適切であるかを評価している最中である。移管計画と同様、SECはこれらの要件をアセットマネジメント業界の様々に異なる会社に合わせていくべきかを検討している。

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システミック・リスクについて

話題を変えて、システミックリスクに関するSECの役割について述べたい。システミックリスクという言葉は広い意味を持っているが、金融危機後にSECを含む全ての金融規制当局に見られた根本的な変化は、証券市場や金融システム全体にシステミックな影響を及ぼすリスクに対処することに重点が置かれていることである。これは我々の長期的なミッションである投資家保護、公正で秩序だった効率的市場の維持、資本形成の促進などの課題を補完するものである。

私が今まで述べた施策プログラムは我々のミッションに資するものであると同時に、金融システム全体に対して広く影響を及ぼすものである。アセットマネジメントは金融システムの重要なセグメントであり、重要なセグメントに生じる変化は他のセグメントに影響を及ぼすものである。

システミックリスクに対処するためには、1つの当局が実施できる施策よりも広いプログラムが要求され、1つの当局だけでは対処できない。そのリスクは結局、「システミック」なものだからである。金融システムの中を伝播していくリスクは幅広い範囲の市場参加者に影響しうるが、その多くは我々の監督下にはない。FSOC(金融安定監督評議会)はシステミックリスクを研究し、特定する重要なフォーラムである。SECがもたらす市場の観点はFSOCによる努力の重要な部分となっている。FSOCが現在、米国のアセットマネジメントの金融システムの安定性に対する潜在リスクをレビューしているが、それは我々が行っている作業を補完するものである。

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2.SECの2015年の検査重点項目

“Examination Priorities for 2015” (SEC / Office of Compliance

Inspections and Examinations (OCIE), Jan13, 2015)

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SECによる2015年検査重点項目のアナウンス

【SECによる3つの検査重点項目】

SECは2015年1月13日に、法令遵守調査・検査局(OCIE)による2015年の重点項目を公表した。今回は特に3つの分野を重視している。対象は投資アドバイザー、投資会社、ブローカーディーラー、決済機関、証券取引所など広範囲な金融機関である。

① 個人投資家の保護(特に退職に備えた貯蓄をしている人や退職している人)

② マーケットワイドなリスクの検査

③ 違法行為のサインを発見するためのデータ分析

① 個人投資家へいわゆるオルタナティブ商品や機関投資家向けの商品が提供されることがある。例えば、プライベートファンド、非流動的な投資、ストラクチャード商品などである。また、退職設計に関する個人投資家向けの商品提供やアドバイスも広範囲に行われている。これらのトレンドから生じる個人投資家へのリスクを検査する。

② 業界全体に関わる構造的リスクやトレンドを検査する。大手ブローカーディーラーやアセットマネジャーの検査、決済機関の年次検査、サイバーセキュリティ検査などが含まれる。

③ OCIEでは大量のデータを効率的・効果的に分析する能力を向上させてきた。この能力を活用して違法行為の特定に活用する。

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3.FSB/マーク・カーニー議長による警告

(流動性イリュージョンとファンド解約リスク)

“The future of financial reform” (Speech given by Mark Carney, Governor of the

Bank of England, Chair of the Financial Stability Board / Monetary Authority of

Singapore Lecture / 17 November 2014)

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市場流動性が見かけよりも枯渇しており、流動性イリュージョン(幻想)が発生している

特に注意したいのは、イールドを求める動きが市場全体にわたって流動性プレミアムを圧迫していることだ。これは中期的には持続可能ではないと思われる。なぜならこれがマーケットメイク活動がかなり減少した背景において発生しているからだ。基本的には、流動性はセカンダリーのフィクストインカム市場においてより枯渇してきている。それは単にそう見えないだけの話だ。

その変化の理由は明らかである。新しいプルデンシャル規制上の要件によって、銀行がリスクポジションを積み上げるインセンティブが減少しているのだ。ディーラーのフィクストインカムの在庫ポジションは金融危機前から70%減少しており、その一方で、フィクストインカム資産残高は2倍になっている。そして、銀行のトレーディング勘定のVaRは2002年当時の水準まで減少している。一定のポジションを手仕舞いする所要期間の長さは2008年当時と比べると7倍になっており、フィクストインカム市場におけるトレードサイズが非常に小さくなっていることを反映している。

現在の流動性に関する幻想は、部分的にはゼロ金利、金融システムの過剰なリザーブ、中央銀行のリアクション機能の認知などに示唆されるリスクの非対称性の産物である。しかし、先進国の金利はこれほど低い水準が永遠に続くわけではない。いったん正常化プロセスが始まり、おそらくは市場の認識がシフトして正常化が始まると予想されるようになれば、プライシング調整が予想されるようになるだろう。

【流動性リスク・プレミアムは非常に低い】

世界のコーポレートボンド市場における流動性プレミアムをモデルベースで推計したもの。流動性リスク・プレミアムは金融危機前の水準に戻っている。

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市場流動性イリュージョンにより、オーバーシュートが発生する可能性がある

その転換が秩序立ったものになるかどうかについては議論の余地がある。確かに、従来型のレバレッジや流動性サイクルは規制によって弱められたが、また動き始める可能性がある。高いボラティリティは低い価格とあいまって、ファイナンス環境をタイトにし、一部の資産の売却を強制し、価格を下げ、ボラティリティを更に上昇させる。オーバーシュートが発生する可能性はあるのだ。

【ディーラー在庫は著しく減少している】

コーポレートボンド、ノンエージェンシーRMBS・CMBS、コマーシャルペーパーの残高と在庫

【セカンダリーボンド市場の流動性は低下している】

米国ディーラーによる店頭取引データに基づく。(b)は米ドル建て投資適格事業債の5百万ドル以上の取引の平均取引サイズ。(c)は米ドル建て投資適格及びハイイールド債券の残高に対するトレーディング額の割合

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市場ベース・ファイナンス増加の裏側では、短期間の通知により解約可能なファンドが急増し、「解約リスク」を増大させている

中には流動性イリュージョンに基づいたプライシングとアセット配分から生じる追加リスクがあると主張する者もいる。これはHyun Shin氏によって詳しく述べられている通り、「解約リスク」につながり得るものである。彼らの主張は市場ベースファイナンスへのシフトの大部分がファンドによる運用資産(AUM)の増加を伴っているという観測結果から出発している。

グローバルな運用資産の70兆ドルのほぼ半分が短い通知期間での解約償還を可能としているファンド形態になっていることが分かっている。同時にファンドはより高いイールドで、流動性の低い資産への投資を増加させている。1つの例としては「高流動性オルタナティブ」(リキッド・オルタナティブ)の急激な成長である。これはリテール投資信託の投資家にヘッジファンドのような投資戦略へのアクセスを提供している。

【グローバルAUMは危機以降、急激に増加】

ミューチュアルファンド、マネーマーケットファンド、ETFなど、短期間の通知により解約可能なファンド(redeemable funds)の運用資産残高。

【ミューチュアルファンドが運用する低流動性資産が急増】

特にハイイールド資産の保有額が急激に増加している。

(MA水野注)文中の「高流動性オルタナティブ」については後述

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米国アセットマネジメント業界の規制強化の方向性

4.米国アセットマネジメント業界の状況

(ムーディーズ・インベスターズ・サービスの2015年アウトルックより)

“2015 Outlook – Global Asset Managers”(Moody’s Investors Service, Dec10, 2015)

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米国アセットマネジメント業界の規制強化の方向性

大きなアセットマネジメント会社がより大きくなる傾向

最大規模のアセットマネジャー会社グループが成長を続けている。

世界トップ20に含まれる米国マネージャー12社が全世界AUMの27%を運用している。

それらの米国マネージャーの市場シェアは2008年以降、急成長している。

スケールメリットを追及できるアセットマネージャーは

急速に成長している市場(ETFやオルタナティブ)へ参入する能力がある。

グローバルな販売ネットワークがある。

【AUMランキングでグループ分けしたアセットマネジメント会社のAUM額の推移】

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米国アセットマネジメント業界の規制強化の方向性

ファンド投資傾向/商品の多様化とパッシブ運用の伸びが目立つ

アクティブとパッシブの投資形態により深い区分(「アルファ/ベータ分離」の傾向)

新たな投資形態が爆発的に増加

アクティブ:低流動性及び高流動性オルタナティブ(リキッドオルタナティブ)、マルチアセット・アプローチ

パッシブ:ファクター依存型インデックス商品(「スマート・ベータ」)、エキゾチック商品投資

投資家は個別プロダクトのパフォーマンスよりも自身のポートフォリオ結果を重視

リスク調整後リターンの重視

エクイティとのコリレーションの低い投資やダウンサイド・プロテクションを求める傾向

パッシブ型商品の市場シェアが伸びている

パッシブAUMは10兆ドルを超過し、世界全体の運用資産の約15%に達する

パッシブAUMの伸びは世界500社の平均の2倍

【パッシブ型運用の成長が市場を牽引している】

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米国アセットマネジメント業界の規制強化の方向性

スマート・ベータ指数を活用したパッシブ運用の急成長

スマートベータ指数とは

幅広い銘柄群を時価総額で加重平均する一般的な市場指数とは異なり、時価総額以外の基準で銘柄を選定し、ウェイト付けする指数。従来型の市場指数に基づく運用の非効率性が指摘されてきたことや、スマートベータ指数に基づく運用パフォーマンスが市場指数によるものよりも優れていることが示されてきたことから、投資家の関心を集めている。

スマートベータETF

透明性や流動性が高く、低コストなETFの特徴に、スマートベータ指標手法を組み合わせた商品

投資家のインセンティブ

コスト意識が高く、アクティブ運用に懐疑的な投資家

スマートベータ投資資産は約3,500億ドルで、過去12ヶ月に約30%増加

シンプルな再ウェイト型 リスク重視型 リターン重視型

均等ウェイト ボラティリティ 財務諸表

地域ごとの均等ウェイト シャープレシオ最大化 モメンタム

リスク寄与度均等ウェイト 非相関最大化 配当イールド

GDPウェイト 非集中最大化

【オルタナティブ指標(スマートベータ)のウェイト付けスキームの事例】

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米国アセットマネジメント業界の規制強化の方向性

高流動性オルタナティブ(リキッド・オルタナティブ)

高流動性オルタナティブ(リキッド・オルタナティブ)とは

ヘッジファンド型の運用戦略を流動性の高い公募ファンドの形態にしたもの。日次解約が可能。

最低投資金額が小さく、リテール投資家向けに販売されている。

現在、米国で急成長しており、ネット・インフローは年間で40%増加(約500億ドル)、465ファンド、AUM1,620億ドル

一部の大手投資家の間に、私募ファンド(ヘッジファンド等)を「高いフィーコストと複雑さを避けるため」に解約し、公募ファンドに乗り換える動きが見られる。

【2014年にローンチされたリキッド・オルタナティブ・ファンドの投資戦略別の件数】

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ムーディーズ・アナリティックスの受賞歴

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