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木は高さ100m,重さ100tに達する地球上で 最大の生物である。自ら移動することはできず, ふつうは他の樹木と寄り合って森林を作ってい る。 森林は長寿命であるためその変化は目に見えにくいが, 破壊と修復の過程を経ながら,自律的に遷移する。破壊 の要因としては,微生物,昆虫などによる攻撃,山火事, 土砂崩れ,台風,津波などが挙げられるが,それにも増し て人類の直接的・間接的影響は大きい。人類は森林から 木を伐り出し,跡地を農耕地に変えるとともに,環境調節, 災害防止などさまざまな恩恵を得てきた。同時に,自ら植 林するなど,森林を修復し,変容させ,温暖化など環境 条件そのものの変化をもたらしてきた。森林は人類による 社会的構築物なのである。 かぬように見える森林も,その内外に激しい 変化への動因を抱えていることが理解される。 私たちは,森林に新たな価値を見い出し,そ れを持続的に利用してゆく道を探らなくてはならない。 2018年3月刊行開始 森林科学シリーズ 3月12日 発売 3月12日 発売 3月23日 発売 3月23日 発売 菊沢喜八郎・中静 透・柴田 英昭 生方 史数・三枝 信子・滝 久智 編集委員 刊行にあたって (抜粋)

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Page 1: 森林科学シリーズ - kyoritsu-pub.co.jp › forest › info.pdf · 2.1 先史時代 樹木種の多様性の起源 ... 6.2 森林と渓流の放射性セシウム汚染の実態

木は高さ100m,重さ100tに達する地球上で最大の生物である。自ら移動することはできず,ふつうは他の樹木と寄り合って森林を作ってい

る。森林は長寿命であるためその変化は目に見えにくいが,破壊と修復の過程を経ながら,自律的に遷移する。破壊の要因としては,微生物,昆虫などによる攻撃,山火事,土砂崩れ,台風,津波などが挙げられるが,それにも増して人類の直接的・間接的影響は大きい。人類は森林から木を伐り出し,跡地を農耕地に変えるとともに,環境調節,災害防止などさまざまな恩恵を得てきた。同時に,自ら植林するなど,森林を修復し,変容させ,温暖化など環境条件そのものの変化をもたらしてきた。森林は人類による社会的構築物なのである。

かぬように見える森林も,その内外に激しい変化への動因を抱えていることが理解される。私たちは,森林に新たな価値を見い出し,そ

れを持続的に利用してゆく道を探らなくてはならない。

2018年3月刊行開始!

森林科学シリーズ

3月12日発売

3月12日発売

3月23日発売

3月23日発売

菊沢喜八郎・中静 透・柴田 英昭生方 史数・三枝 信子・滝 久智

編集委員

刊行にあたって(抜粋)

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序章 森林と人間の歴史(菊沢喜八郎・中静 透)0.1 寝そべっていては競争に勝てない0.2 いよいよ人類の登場だ

第1部 森林の変貌第1章 世界の森林減少の歴史(辻野 亮)1.1 人類の発展と人口,森林面積の関わりの歴史1.2 各地域の森林減少史

第2章 日本列島の森林の歴史的変化―人との関係において―(大住克博)2.1 先史時代 樹木種の多様性の起源2.2 古代から中世 採取の時代2.3 近世 採取から管理へ2.4 近代前半 林業的管理と生産の拡大2.5 近代後半 林業的管理の急進から森林管理への移行,そして混迷2.6 日本列島における森林と人との関係の歴史的変化を特徴づけるもの

第2部 森林の構造・機能と生態系サービスの変化第3章 森林の変化と樹木(清和研二)3.1 森林のすがた3.2 拡大造林は日本の森の姿をどう変えたか3.3 これからの森林管理:生物多様性の復元による林業の振興

第4章 森林の変化と生物多様性(岡部貴美子・中静 透)4.1 植物の多様性の変化4.2 きのこ類の多様性の変化4.3 昆虫の多様性の変化4.4 鳥類の多様性の変化4.5 哺乳類の多様性の変化

第5章 森林の変化と生態系サービス(中静 透)5.1 森林の生態系サービス5.2 日本の森林変化と生態系サービス5.3 他の国の森林変化と生態系サービス5.4 21世紀における生態系サービス評価5.5 生態系サービスの持続的利用にむけて

序章 森林と災害(中村太士)0.1 森林の水土保全機能の歴史と現状,課題0.2 Eco-DRRとしての森林0.3 東日本大震災がもたらした新たな課題

第1章 水循環に及ぼす森林の影響(谷 誠)1.1 蒸発散過程1.2 雨水の流出過程

第2章 表層崩壊(阿部和時)2.1 森林状態と表層崩壊の関係2.2 根による表層崩壊防止機能のメカニズム2.3 表層崩壊防止機能の力学的評価2.4 森林施業と表層崩壊防止機能2.5 森林の表層崩壊防止機能の解明における課題

第3章 土石流(小山内信智)3.1 土石流の基本3.2 森林の土砂流出抑制機能3.3 土石流被害のおそれがある区域の把握と対策の考え方

第4章 河川における水害と樹林(渡邊康玄)4.1 河道における樹林の働き4.2 河道の樹林化の現状と課題4.3 河道内からの樹林の排除の試み4.4 水害防備林としての機能と効果

第5章 海岸林の津波被害と津波被害軽減機能(坂本知己)5.1 海岸林の津波被害5.2 津波に対する海岸林の機能5.3 海岸林の限界5.4 津波に対する防災施設としての海岸林の特徴5.5 今後に向けて:求める海岸林

第6章 原子力災害がもたらす森林-渓流生態系の放射性セシウム汚染(五味高志・戸田浩人・境 優)

6.1 森林の物質循環と放射性セシウムの移行6.2 森林と渓流の放射性セシウム汚染の実態6.3 森林-渓流生態系の食物網構造と放射性セシウムの移行6.4 森林における放射性セシウム軽減対策

現在の森林科学における,各分野の到達点!!森林の変化と人類

森林科学シリーズ1 森林科学シリーズ3

中村太士・菊沢喜八郎 編

森林の変化は,森林のもつさまざまな構造や生物多様性の変化を引き起こした。特定の有用な資源の枯渇が進むと利用する樹木の種類が変化する一方,人工林の造林・経営技術が発達する。大量の人工林の出現により,そこに棲む生物は大きな影響を受ける。食物連鎖の頂点に位置するオオカミの絶滅は,里山の利用低下ともあいまって,シカ,イノシシなどの増加,農作物被害の増加などによるさらなる里山の利用低下を招いた。森林の組成や構造の変化は森林の機能や生態系サービスの変化となり,生物多様性とそれがもたらす生態系サービスの変化が,森林管理の大きな問題へつながる。このように,森林変化は人とのかかわりを抜きには語りえない。第1巻では森林の変化と人類の関わりの歴史を振り返り,シリーズ続巻を読む上での基礎的な知識を修得する。

森林と災害のつながりは,日本人にとっては馴染みあるテーマであり,気候変動に伴う斜面崩壊や土石流災害が多発する現在,さらに関心は高くなっている。森林がもつ防災・減災機能のなかでも本書で扱った水土保全機能は古くから注目され,研究も進められてきた。一方で,過去の研究の多くは小流域における皆伐実験であり,細かな水文・地形変動プロセス,樹種による影響の違い,間伐による密度管理の効果,下層植生の影響などは評価されてこなかった。本書では森林における水の動きに着目し,森林における水収支,森林からの流出と斜面崩壊,土石流災害,河川と森林,津波と海岸林,原発事故について,上記諸点も加味した最新の知見を紹介する。

中静 透・菊沢喜八郎 編

森林と災 害

A5判・並製・274頁・定価(本体3,300円+税) A5判・並製・248頁・定価(本体3,300円+税)

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いま,森林で何が起きているのか?

第1章 総論(柴田英昭)1.1 森林と土壌の相互関係1.2 日本の森林土壌を取り巻く環境変化と学術的課題1.3 本書のねらいと構成

第2章 森林土壌の分類と機能(藤井一至)2.1 土壌構成成分   2.2 土壌生成因子2.3 土壌生成プロセス 2.4 土壌分類および分布2.5 世界および日本の土壌の機能

第3章 広域風成塵と火山噴出物が土壌生成に及ぼす影響(平舘俊太郎)3.1 残積土と累積土  3.2 累積土的な土壌生成概念の必要性3.3 土壌中における累積性堆積物としての広域風成塵3.4 土壌中における累積性堆積物としての火山噴出物

第4章 森林土壌に生息する土壌動物(菱 拓雄)4.1 土壌動物を制御する土壌環境  4.2 土壌動物の特徴と種類4.3 土壌環境条件に対する土壌動物の分布の特徴4.4 土壌動物による土壌機能への影響

第5章 森林土壌微生物の構成と養分動態へのかかわり(磯部一夫)5.1 微生物の進化系統と生理生態機能  5.2 森林土壌中の微生物群集の解析5.3 微生物の生息環境と構成および地理分布5.4 土壌微生物の窒素動態へのかかわり5.5 森林における土壌微生物群集の生態系機能

第6章 土壌有機物の特性と機能(保原 達)6.1 土壌有機物とは  6.2 土壌有機物の組成6.3 土壌有機物が土壌環境にもたらすもの6.4 土壌有機物の生成:落葉分解と土壌有機物6.5 植物栄養と土壌有機物 6.6 土壌有機物と鉱物の相互作用6.7 森林の外とつながる土壌有機物

第1章 序論(柴田英昭・大手信人)1.1 森林生態系における物質循環の概念フレームワーク1.2 森林の物質循環を駆動する主な要因1.3 本書のねらいと構成

第2章 大気窒素沈着による森林生態系の窒素飽和現象―安定同位体を用いた研究アプローチ―(木庭啓介)

2.1 窒素安定同位体の利用2.2 酸素同位体の利用

第3章 流域から河川へのリン流出機構(早川 敦)3.1 森林流域におけるリンの循環と河川流出の概要3.2 森林流域におけるリンの循環と流出機構

第4章 土壌窒素動態の空間変動(浦川梨恵子)4.1 森林土壌における窒素無機化過程4.2 窒素無機化・硝化を取り巻く環境要因

第5章 物質循環モデルと森林施業影響(大場 真)5.1 本章の背景となる考え方5.2 森林を対象としたさまざまなモデル5.3 森林施業の影響:生態系サービスの観点から5.4 森林物質循環モデルBGC-ES5.5 上流から下流までを空間・定量評価:BaIMモデル

森林と土 壌

森林科学シリーズ7 森林科学シリーズ8

柴田英昭 編

巨大な樹木を中心とした複雑な森林空間には,多種多様な動植物が生息している。樹木の成長を支えるためには土壌に含まれる水と養分が不可欠であり,樹木は大地に生やした根を通じてそれらを吸収している。土壌の厚さは,樹高のように数十mを超えることはほとんどなく,ほぼ1~ 2m以内,養分が特に多い土壌は数十cm以内に分布している。このことは,森林の高い光合成能力や豊富な生物多様性が,地面のごく表層の薄い土壌によって支えられていることを意味している。樹木の高さと比べごく薄いその土壌の中には,実に多種多様な微生物,土壌動物が生育している。そこには,地上からは直接目にすることのできないダイナミックな生物の営みと,さまざまな物質や水の動きが存在している。本書では,森林土壌の生成や性質,機能について,学ぶべき代表的な内容を解説する。通読することによって,森林土壌の特徴,機能,役割などを理解でき,森林における土壌の重要性や周辺諸科学との関連性などを深く理解する助けとなるであろう。

生態系の物質循環を取り扱う学問分野は「生物地球化学(biogeochemistry)」と呼ばれ,生物と環境(非生物)をめぐる物質の動きや変化,相互作用を明らかにすることで,生態系の仕組みや環境保全機能を理解することに寄与している。本書は森林の物質循環,すなわち生物地球化学プロセスについて取り扱う。その中心的な役割を担うのは,樹木,土壌,微生物,その他の動植物であり,その場の気象や地形,地質条件などによって特有の生物地球化学プロセスを形成している。本書を通読することで,さまざまな環境変動下において森林生態系の物質循環がどのような仕組みで成り立っているのかを多角的に理解することができるであろう。本書が新規課題や研究の方向性を考える上での助けとなり,今後の持続的な森林管理や環境機能保全に向けた取り組みがいっそう進むことを願う。

柴田英昭 編

森林と物質循環

A5判・並製・264頁・定価(本体3,300円+税) A5判・並製・218頁・定価(本体3,300円+税)

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森林科学シリーズ

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http://www.kyoritsu-pub.co.jp/共立出版株式会社

①巻:森林の変化と人類

③巻:森林と災害

⑦巻:森林と土壌

⑧巻:森林と物質循環

シリーズ構成(全13巻)

各巻:A5判・並製・200 ~300頁/定価(本体2,000 ~3,500円+税)※書名などは予告なく変更される場合があります。

1巻 森林の変化と人類・・・・・・・・・・・・・・・中静 透・菊沢喜八郎 編

2巻 森のつくられかた―社会構築物としての自然― ・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・生方史数・内藤大輔・百村帝彦 編

3巻 森林と災害・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・中村太士・菊沢喜八郎 編

4巻 フォレスト・プロダクツ・・・・・・・・・・・・林 知行・高田克彦 編

5巻 森林と水・・・・・・・・・・・・・・・三枝信子・柴田英昭・高梨 聡 編

6巻 森林と地球環境変動・・・・・・・・・・・・・・三枝信子・柴田英昭 編

7巻 森林と土壌・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・柴田英昭 編

8巻 森林と物質循環・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・柴田英昭 編

9巻 森林と昆虫・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・滝 久智・尾崎研一 編

10巻 森林と菌類・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・升屋勇人 編

11巻 森林と野生哺乳類 ・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・小池伸介・山浦悠一・滝 久智 編

12巻 森林と文化―森とともに生きる民俗知のゆくえ― ・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・蛯原一平・斉藤暖生・生方史数 編

13巻 グローバル森林管理における市場メカニズムの拡大と地域住民 ・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・内藤大輔・生方史数・百村帝彦 編