環境分析のための標準物質 - Unit環境分析の一般的なスキーム 1 .はじめに...

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環境分析のための標準物質 羽成修康(産総研計量標準総合センター: NMIJ

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環境分析のための標準物質

羽成修康(産総研計量標準総合センター:NMIJ)

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アウトライン

1.はじめに

2.NMIJ製認証標準物質(NMIJ CRM)の紹介

~環境分析用~

3.NMIJ CRMの開発概要

4.開発過程での諸問題

~有機ふっ素化合物を中心に~

5.おわりに

2

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環境分析の一般的なスキーム

1.はじめに

組成型標準物質

標準液

データ解析

校正

SI

前処理

分析結果

分析

濃度応

試料

測定方法の妥当性確認

純物質

トレーサビリティ

機器測定

3

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標準物質・試薬

• いろいろな研究機関・学会などから頒布

国家計量標準機関

研究機関

大学

学協会

試薬会社 ‥‥

• 信頼性のある定量値算出には、用いる標準物質の質を理解することが重要

1.はじめに

4

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NMIJ1.はじめに

5

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計量のトレーサビリティと国際同等性

1.はじめに

6

国家標準

実用標準

事業者

NMIJ

事業者

国家標準

実用標準

事業者

国家計量標準機関

事業者

A国測定能力の同等性確認

国家標準の同等性を相互承認

国際比較

国際同等性

「いつでも、どこでも公正・正確」

同等性 同等性

トレーサビリティ

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一次標準測定法

• “最高の質を有し、その操作が完全に記述され、理解され、かつ不確かさがSI単位を用い

て完全に記述される方法で、その量についての他の標準を参照せずに測定結果を標準として使用できる方法”

• 重量法/電量法/滴定法/凝固点降下法/同位体希釈質量分析法(IDMS)

1.はじめに

7

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純物質物質群 物質名・サービス 値付けに使用した機器及

び手法等

揮発性有機化合物(VOC)

トルエン, エタノール 他 (JCSS)* 断熱型熱量計, 示差走査熱量計(DSC), 差数法**

フタル酸エステル類 フタル酸ジ-n-ヘキシル 他 (JCSS)* DSC, 差数法**アルキルフェノール類

4-n-ノニルフェノール 他 (JCSS)* DSC, 差数法**

有機ふっ素化合物 PFOA 滴定装置, 差数法**残留農薬 [NMIJ校正サービス] NMR, DSC, クロマトグラフ

臨床検査用 17β-エストラジオール 他 滴定装置, NMR, 差数法**定量NMR用 3,5-ビス(トリフルオロメチル)安息香酸 DSC, 滴定装置, 差数法**

*計量法校正事業者登録制度**不純物総和を差引く純度評価手法で、可能な限り不純物を検出するため複数機器を組合せる

2.NMIJ CRMの紹介

8

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標準液物質群 物質名 値付けに使用した機器及

び手法等

PCB, 塩素系農薬 γ-HCH標準液, カネクロール混合標準液 他

DSC, 差数法, 質量比混合法*

PAH ベンゾ[a]ピレン標準液 DSC, 質量比混合法*有機ふっ素化合物 K-PFOS標準液 DSC, 差数法, 質量比混合

法*硫黄分 チオフェン標準液 他 DSC, 差数法, 質量比混合

法*水分分析用 水標準 滴定装置

*溶質・溶媒を天秤ではかり取り、質量での希釈分率を調製値とする手法

2.NMIJ CRMの紹介

9

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組成型測定対象 マトリックス 値付けに使用した機器及び手

法等

残留農薬 リンゴ粉末, 大豆, ネギ, キャベツ, 玄米

Homogenizing,固相抽出(SPE), 同位体希釈(ID)-GC(LC)/MS

PFOS ABS樹脂, スズキ[参考情報] 溶解/再沈殿, ID-LC/MS

PCB 鉱物油, スズキ, 海底質 加圧液体抽出(PFE), マイクロ波支援抽出(MAE), SPE/LC, ID-GC/MS

塩素系農薬(DDT 他)

スズキ, 海底質 PFE, MAE, SPE/LC, ID-GC/MS

PAH トンネル粉塵, 湖底質 PFE, MAE, SPE, ID-GC/MS

燃料系 バイオエタノール, バイオディーゼル燃料(2015年頒布予定)

滴定装置, 紫外蛍光分析計, ID-ICP-MS, ID-GC/MS 他

2.NMIJ CRMの紹介

10

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技能試験

• 技能試験に関する国際規格(ISO/IEC 17043)に準拠した試験。参加者の分析方法の妥当性や分析能力を、客観的に評価可能。

2.NMIJ CRMの紹介

-玄米中の農薬分析-

農薬残留分析の信頼性向上のための技能試験

(第4回)

11

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純物質の開発概要

滴定法 差数法凝固点降下法定量NMR法*

原則として2つ以上の方法より値付け純度決定(不確かさ見積もり含)

均質性及び安定性評価(不確かさ見積もり)

NMIJ CRMの供給

GC, LC,KFT, TGA

+ 熱重量測定装置(TGA),カールフィッシャー水分計(KFT)

+ LC(必要な場合)

3.NMIJ CRMの開発概要

12*一次標準測定法に準ずる純度評価手法として認知され始めている

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標準液の開発概要

滴定法 差数法凝固点降下法定量NMR法*

原則として2つ以上の方法より値付け純度決定(不確かさ見積もり含)

均質性及び安定性評価(不確かさ見積もり)

NMIJ CRMの供給

GC, LC,KFT, TGA

+ TGA, KFT+ LC(必要な場合)

標準液の調製(不確かさ見積もり含) 質量比混合法

3.NMIJ CRMの開発概要

13*一次標準測定法に準ずる純度評価手法として認知され始めている

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組成型標準物質の開発概要(ABS樹脂)

混練

射出成形

切り出し

候補標準物質

保管

(室温)

試薬等準備

ABS

PFOSカリウム塩

値付け分析(分析法:2通り)

頒 布

均質性評価

安定性評価

安定性モニタリング

認 証調 製

IDMS

袋詰め

K

3.NMIJ CRMの開発概要

14

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1.から3.までのまとめ

• 標準物質の質を知った上で用いることが重要

• NMIJ CRMは、分析値の信頼性向上のため、多くの労力をかけて開発

• 測定機器の校正や測定方法の妥当性確認にぜひご使用ください

15

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開発過程での諸問題

• ベンゾ[a]ピレン標準液

GC-FIDで検出された不純物が凝固点降下法

で観測困難

• 4-n-ヘプチルフェノール

小分けした候補標準物質(アンプル)内/間

の水分が大きく変動

• PFOA環境汚染物質と言われているが‥

4.開発過程での諸問題

16

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有機ふっ素化合物

• 耐熱性・耐薬品性・光学特性など優れた性質を有する(PFOS、PFOAなどが有名)

• 環境残留性や生体への悪影響等が明らかになり、規制導入(POPs条約、US EPAの管理責任プログラムなど)

→信頼性の高い標準物質が必要

CC

CC

CC

CC

SO-

F FFFFF

FF F F F F F F

F

F

F

O

OC

CC

CC

CC

CO-

F FFFFF

FF F F F F O

F

F

F

PFOS PFOA

17

4.開発過程での諸問題

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K-PFOS標準液の開発

• 高純度の原料準備を

Wellington Laboratoriesが特注品で対応

差数法凝固点降下法

原則として2つ以上の方法より値付け純度決定(不確かさ見積もり含)

均質性及び安定性評価(不確かさ見積もり)

NMIJ CRM 4220-aの供給

LC, KFT, ヘッドスペースGC

+ KFT, ヘッドスペースGC

標準液の調製(不確かさ見積もり含) 質量比混合法

4.開発過程での諸問題

18

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K-PFOS標準液NMIJ CRM 4220-a

認証値(濃度) 拡張不確かさ

(mg/kg) (mg/kg)9.93 0.15

4.開発過程での諸問題

19Hanari et al. (2013) Int. J. Environ. Anal. Chem. 93, 692-705.

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PFOA標準液の開発

• 高純度の原料なし

• 標準液の安定性に疑義

差数法凝固点降下法

原則として2つ以上の方法より値付け純度決定(不確かさ見積もり含)

均質性及び安定性評価(不確かさ見積もり)

NMIJ CRMの供給

LC, KFT, ヘッドスペースGC,TGA

標準液の調製(不確かさ見積もり含) 質量比混合法

×

??

+ KFT, ヘッドスペースGC,TGA

4.開発過程での諸問題

20

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Wellington Laboratories製PFOA標準液の試験成績書

4.開発過程での諸問題

21

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調製したPFOA標準液の安定性

• 調製月が異なるPFOA標準液(メタノール溶液)のLC/MS面積値がばらつく!

• 再調製しても、アルカリ加えてもばらつきが‥

0

0.2

0.4

0.6

0.8

1

1.2

0 1 2 3 4 5

C

F

G

小分け番号

調製値で規格化

した

LC/M

S面積

4.開発過程での諸問題

◆C:初月(0ヶ月)■F:3ヶ月後▲G:6ヶ月後

22

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調製したPFOA標準液の安定性

• 初期値と比較すると、保管期間が長くなるほど、LC/MSの面積値(内標で規格化)が減少

• 室温保管では、より顕著な減少傾向

0.45

0.55

0.65

0.75

0.85

0 200 400 600 800 1000 1200 1400 1600 Am

ount

of p

erfl

uoro

octa

noat

e

Period of storage (month)

4 16 23 42 48

Initial (0 month)

4.開発過程での諸問題

○Storage at room temp▲Storage at around 4 ºC

23

PFOAがメタノールと反応してMePFOAを生成?!

Hanari et al. (2014) Chemosphere94, 116-120.

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調製したPFOA標準液中のMePFOA4.開発過程での諸問題

24

Abu

ndan

ce

Retention time

• 保管期間とMePFOA強度に相関がある?!

Hanari et al. (2014) Chemosphere94, 116-120.

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標準液中のPFOAとMePFOA

• PFOA減少量とMePFOA生成量がほぼ一致

4.開発過程での諸問題

0

0.02

0.04

0.06

0.08

0.1

0.12

0.14

0 month 4 months 16 months 23 months 42 months 48 months

Sum

med

am

ount

of P

FOA

and

M

ePFO

A (m

mol

kg-1

)

Period of storage

5 °C

MePFOA PFOA

0

0.02

0.04

0.06

0.08

0.1

0.12

0.14

0 month 4 months 16 months 23 months 42 months 48 months

Sum

med

am

ount

of P

FOA

and

M

ePFO

A (m

mol

kg-1

)

Period of storage

Room temperature

MePFOA PFOA

Tota

l am

ount

of P

FOA

and

MeP

FOA

(m m

olkg

-1)

25Hanari et al. (2014) Chemosphere94, 116-120.

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PFOA標準液(メタノール溶液)使用上の注意点

• MePFOAが生成する可能性あり→GC/MSで確認可能

• 粉体から溶液調製した場合は、保管期間に要注意

• PFHxA、PFHpA、PFNAでもメチル体を検出

• アルカリを加えることで、MePFOAの生成を制御可能?!

保管PFCA標準液の取扱には注意!

4.開発過程での諸問題

26

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PFOA標準物質の開発

滴定法 差数法凝固点降下法定量NMR法

原則として2つ以上の方法より値付け純度決定(不確かさ見積もり含)

均質性及び安定性評価(不確かさ見積もり)

NMIJ CRMの供給

+ LC(必要な場合)

×吸湿性!

×*当時は1Hのみ LC, KFT, ヘッド

スペースGC,TGA

4.開発過程での諸問題

27

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• SDSに記載あり

(和光純薬工業)

• 水和物としての販売

分子式:C8HF15O2・xH2O=414.07(as anhydrous)

PFOAの吸湿性

4.開発過程での諸問題

28

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PFOAの吸湿性

• ロットの異なる試験成績書の水分

ロットA ロットB水分 0.8 % 4.3 %

• 水分により純度が3 %以上変動する可能性

↓純度評価が困難

4.開発過程での諸問題

29

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PFOAの吸湿性

• 両ロットをミクロ天秤に静置(実験室環境23 ℃~25 ℃、湿度20 %~60 %)

• ロットA(水分0.8 %)の質量増加を観測

→KFTで水分測定

• 水分増加も観測

静置時間増に伴い水分も増

• PFOA一水和物として安定[4.2 %≑18/(414+18)]

0.0

1.0

2.0

3.0

4.0

5.0

0 10 20 30 40

水分

(%)

静置時間(日)

4.開発過程での諸問題

30

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PFOA水和物の純度

• 作業環境による純度

変動を観察

(一水和物として水分

一定のバルクを使用)

*グローブボックスでの

取扱(露点約-20 ℃)

50 mg 5 mg

5 mg

5 mg

5 mg

5 mg

5 mg

5 mg

5 mg

5 mg

In a laboratory atmosphere

5 mg

5 mg

5 mg

5 mg

5 mg

5 mg

5 mg

5 mg

5 mg

Under a dried-air atmosphere

5 mg

Movement using glass Petri dish

1. Opening of Petri dish lid2. Setting for each timepoint

1 hour 3 hours 12 hours

KFT KFTKFT

Movement using glass Petri dish

(ACN)LC/MS

(ACN)LC/MS

(ACN)LC/MS

Placing in a laboratory atmosphere for the same timepoints

Movement using glass Petri dish

KFT KFTKFT

Under a dried-air atmosphere

Dividing×3

Fig. 1

4.開発過程での諸問題

31 Hanari et al. (2013) Accredit. Qual. Assur. 18, 137-142.

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PFOA水和物の脱水・吸湿

• グローブボックス内で水分減少(◇)

• グローブボックス内で水分減少したが、実験室内で吸湿(◆)

0

10

20

30

40

50

0 2 4 6 8 10 12 14

Wat

er m

ass f

ract

ion

(g k

g–1)

Exposure time (hour)

Initial

4.開発過程での諸問題

PFNA・PFDAでも脱水・吸湿を確認

32 Hanari et al. (2013) Accredit. Qual. Assur. 18, 137-142.

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PFOA水和物中の構造類似不純物

• グローブボックス内で静置しても構造類似不純物の濃度はほとんど変動無し

0.001

0.01

0.1

1

0 2 4 6 8 10 12 14

Peak

are

a pe

rcen

tage

s of

isom

ers/

hom

olog

ues

rela

tive t

o to

tal p

eak

area

(%)

Exposure time under a dried-air atmosphere (hour)

Perfluorohexanoate homologue Perfluoroheptanoate homologue Branched perfluorooctanoate isomers

4.開発過程での諸問題

Perc

enta

ges o

f iso

mer

s/ho

mol

ogue

s re

lativ

e to

tota

l pea

k ar

ea (%

)

33 Hanari et al. (2013) Accredit. Qual. Assur. 18, 137-142.

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PFOA水和物の取扱上の注意点

• 水和物として安定化したPFOAなら、通常の温湿度下で取扱可能(実験室環境:23 ℃~25 ℃、湿度20 %~60 %)

粉体のPFCAなら、PFOAと同様に取扱可能!

4.開発過程での諸問題

34

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PFOA標準物質の開発

滴定法 差数法

原則として2つ以上の方法より値付け純度決定(不確かさ見積もり含)

均質性及び安定性評価(不確かさ見積もり)

NMIJ CRM 4056-aの供給

+ LC LC, KFT, ヘッドスペースGC,TGA

4.開発過程での諸問題

35

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PFOA標準物質NMIJ CRM 4056-a

認証値(純度) 拡張不確かさ

(kg/kg) (kg/kg)0.959 0.005

*実験室環境:23 ℃~25 ℃、湿度20 %~60 %*最小使用量:10 mg

4.開発過程での諸問題

36Hanari et al. (2014) Accredit. Qual. Assur.19, 391-396.

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ABS樹脂

K-PFOS(ペルフルオロアルキル化合物)

Na-PFOA(ペルフルオロアルキル化合物)

EU-PFOS指令に関わる樹脂中PFOSの測定方法評価のための試験所間比較用試料

調製値が30 mg/kg~50 mg/kgとなるよう混練

ABS樹脂の候補標準物質の調製

4.開発過程での諸問題

37

Page 38: 環境分析のための標準物質 - Unit環境分析の一般的なスキーム 1 .はじめに 組成型標準物質 標準液 データ解析 校正 SI 前処理 分析結果

ABS樹脂中の有機ふっ素化合物に関する試験所間比較

4.開発過程での諸問題

38

2.1

7.1

12.1

17.1

22.1

27.1

32.1

37.1

0 1 2 3 4 5 6 7 8 9

PFO

S (m

g/kg

)

Participation No.

• PFOSでは調製値(赤線)に近い分析値を、参加機関が報告

Page 39: 環境分析のための標準物質 - Unit環境分析の一般的なスキーム 1 .はじめに 組成型標準物質 標準液 データ解析 校正 SI 前処理 分析結果

ABS樹脂中の有機ふっ素化合物に関する試験所間比較

4.開発過程での諸問題

39

• PFOAでは分析値が1 mg/kg程度

• 測定方法の問題ではなさそう‥

0.040

0.140

0.240

0.340

0.440

0.540

0.640

0.740

0 1 2 3 4 5 6 7 8 9

PFO

A (m

g/kg

)

Participation No.

混練中にPFOAが揮散?分解?

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Na-PFOAの挙動

• 熱重量分析の結果から、揮散は考えにくい

• では、分解?

4.開発過程での諸問題

40

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ABS樹脂溶液の19F NMRスペクトル

1

2

3

4

4

PFOS_FLUORINE_cd3od_1_1_01C6F6 3

PFOA_FLUORINE_cd3od_1_1_01C6F6 2

PFOA_inPla_FLUORINE_cd3od_1_1_01PFOA_inPla 1

ABS樹脂

PFOA

PFOS

4.開発過程での諸問題

41

Compound X

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Na-PFOAの挙動

• NMR分析の結果から、分解の可能性

• ただし、分解物が有機物なのか?、無機物なのか?樹脂に存在するのか?、揮散したのか?

• 現在、検証実験中

4.開発過程での諸問題

42

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ABS樹脂(直鎖型PFOS)4.開発過程での諸問題

43

認証値(濃度) 拡張不確かさ

(mg/kg) (mg/kg)33.1 5.0

*分岐型PFOS濃度、塩素濃度、臭素濃度は参考情報

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4.のまとめ

• 諸問題(分析上のバイアス)の解決は、正確な環境分析を行う上で非常に重要

• 特に、有機ふっ素化合物であるPFOAは、PFOSとは異なる挙動を示す可能性あり

• PFOAの定量値算出だけではなく、環境動態解明やリスク評価に対しても注意が必要

44

4.開発過程での諸問題

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まとめ

• 標準物質の質を理解した上で、目的・用途に応じて使い分けることが重要

• 測定対象の物性等を理解した上で、結果を解析することが正確な考察には必須

45

5.おわりに

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お知らせ

5.おわりに

46

• ABS樹脂中のPFOA挙動等の検証実験中。

ご興味のある方は共同分析のご用命を。

• 技能試験に適した均質な組成型CRM(原料)

を所有(底質、粉塵等)。新たな測定対象の分析技能評価などに、技能試験や試験所間比較をお考えでしたら、今すぐご連絡を。

e-mail:[email protected]:https://www.nmij.jp/~org-chem/org-std-2/