CEPA第9次補充(Supplement IX) -香港サービス …3 CEPA第9次補充(Supplement...

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▪概要 ・22のサービス分野を対象とする37の自由化措置 ・1つのサービス分野が追加、また個人所有店に4つのサービス分野を開放 ・5件の前海地区措置を含む、CEPAに基づく17の広東省パイロット措置 ・CEPA原産地規則の適用品目が7品目追加され計1,739品目に拡大 中華人民共和国香港特別行政区(HKSAR)の15周年を記念する胡錦濤主席の香港訪問に 歩調を合わせ、中央政府と香港政府は、2012年6月29日に「中国・香港経済貿易緊密化協 定(CEPA)」付属文書IXに基づく一連の自由化措置に関して同意した。これは2011年12 月の付属文書VIIIの発表後たったの半年しか経っておらず、付属文書発表の間隔が最短で あった 1 2013年1月から実施されるCEPA付属文書IXは、37の自由化措置を追加し、21の既存サー ビス分野および新分野の自由化を拡大・強化するものである。この新たな一連の措置によっ て、中央政府はCEPAに基づく自由化サービス分野を合計47から48に拡大することになる。 自由化措置の累計は338件に増加する。 付属文書IXは「6大新産業」すべてに及ぶ措置を組み込んでおり、新分野として教育サー CEPA第9次補充 (Supplement IX) -香港サービスへの恩恵 1 第10弾となるこのCEPA自由化措置は、2004年から2012年にかけて毎年実施された9件の付属文書に続いて、2012年6月 29日に付属文書IXとして調印された。

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▪概要

・22のサービス分野を対象とする37の自由化措置 ・1つのサービス分野が追加、また個人所有店に4つのサービス分野を開放・5件の前海地区措置を含む、CEPAに基づく17の広東省パイロット措置 ・CEPA原産地規則の適用品目が7品目追加され計1,739品目に拡大

中華人民共和国香港特別行政区(HKSAR)の15周年を記念する胡錦濤主席の香港訪問に歩調を合わせ、中央政府と香港政府は、2012年6月29日に「中国・香港経済貿易緊密化協定(CEPA)」付属文書IXに基づく一連の自由化措置に関して同意した。これは2011年12月の付属文書VIIIの発表後たったの半年しか経っておらず、付属文書発表の間隔が最短であった1。

2013年1月から実施されるCEPA付属文書IXは、37の自由化措置を追加し、21の既存サービス分野および新分野の自由化を拡大・強化するものである。この新たな一連の措置によって、中央政府はCEPAに基づく自由化サービス分野を合計47から48に拡大することになる。自由化措置の累計は338件に増加する。

付属文書IXは「6大新産業」すべてに及ぶ措置を組み込んでおり、新分野として教育サー

CEPA第9次補充(Supplement IX)-香港サービスへの恩恵

1 第10弾となるこのCEPA自由化措置は、2004年から2012年にかけて毎年実施された9件の付属文書に続いて、2012年6月29日に付属文書IXとして調印された。

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ビスが追加することで自由化適用範囲がすべて揃い、香港は明らかにその利点を享受することになる。これは付属文書VIIの重要テーマを土台にしており、6大新産業に関する措置に最初に取り入れられたものである。一方、付属文書VIII2は、香港のサービスサプライヤー

(HKSS)に適用される「実質的事業活動」基準を緩和することで、CEPAの新たな展開となった。付属文書IXでは、前海地区パイロット措置の発表が目立つ。

5つの前海地区措置は、会計、教育、データベース、印刷、文化サービスの分野を対象としている。それ以外の広東省パイロット措置は、医療サービス、製品試験サービス、商業用ファクタリングサービス、環境サービス、流通サービスを対象としている。付属文書IXに基づく広東省措置の数が、付属文書VIIIに基づく同措置の数の2倍を超えることは注目に値する。

さらに付属文書IXでは、2010年4月3に発表された「広東省・香港協力枠組み協定」、および2011年3月に中央政府によって発表されたP12参照「第12次5カ年計画」の香港についての章に記されているように、広東省と香港の協調を深めることについてその重要性を強調している。

付属文書IXでは、銀行や証券分野へ利益をもたらす香港金融産業の本土市場進出を強化する措置のほかに、香港と本土間の金融分野での協力強化を進めるイニシアチブも多く含まれている。付属文書VIIIに基づき、人民元適格海外機関投資家(RQFII)スキームを通じて香港から本土証券市場に投資することが許可されたことに続き、付属文書IXでは、香港の金融機関のRQFII資格要件を下げるための積極的な追求を提示している。2012年初めに登場して以来RQFIIは、香港のオフショア人民元(5,600億人民元に上る)を長期的金融投資として本土の金融市場に還流する有益なメカニズムを証明した。本土企業の国際資金調達プラットフォームとしての香港だが、香港を後押しするもうひとつの取り組みとして、付属文書IXに基づいて、本土が中小企業(SME)を含む本土企業の海外上場要件を改正・改善し、香港における上場を試みることが挙げられる。

これまでの付属文書と同様、付属文書IXは新たに4つの分野を追加して、中国公民の香港永住者が経営する個人所有店の事業範囲を拡大している。また個人所有店が雇用できる従業員数と店舗面積の制限が解除され、これは最近雇用人員および店舗面積に関する条件を緩和した付属文書VIIIから大幅に改善されている。

付属文書IXは香港の6大新産業に利益をもたらすだけでなく、従来の産業も支援するものとなっている。相次ぐ広東省と前海地区パイロット措置、および数々の投資貿易奨励措置

2 CEPA付属文書VIIIの措置についての分析は下記リンクに記載されている。http://economists-pick-research.hktdc.com/business-news/article/Economic-Forum/CEPA-Supplement-VIII-Measures-Trade-In-Goods-And-Services-Opportunities-For-Hong-Kong/ef/en/1/1X000000/1X07TO5V.htm3 中国語の「広東省・香港協力枠組み協定」および2010年の関連事業計画はそれぞれ下記リンクに記載されている。http://gia.info.gov.hk/general/201004/07/P201004070113_0113_63622.pdf http://gia.info.gov.hk/general/201004/07/P201004070113_0113_63623.pdf.

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CEPA第9次補充(Supplement IX)-香港サービスへの恩恵

が、本土市場の事業機会を認識している香港の企業、専門職従事者、その他の香港居住者に利益をもたらすであろう。広東省・香港間の経済協力については、2012年9月中旬に広東省が2014年末までに両区間の自由貿易達成を目指すと示唆したことから、地域統合もさらに勢いづくであろう。

CEPA原産地規則に適合するあらゆる種類の香港製品を、2006年から無関税で本土に輸出できるようになった。2004年のCEPA実施から2012年6月まで、CEPA無関税待遇の適用品目は273品目から1,732品目に拡大された。さらに2012年7月からは、無関税リストの記載品目にオリーブオイル、プラスチック製食器、台所用品、アルミワイヤーボンダーが追加され、7品目増加の計1,739品目となった。従来、これらの追加品目には4%から10%の関税が課されていた。

▪サービス貿易

中国中央政府と香港政府は、2012年6月29日にCEPA第10弾となるCEPA付属文書IXを共同発表した。実施は2013年1月からとなる。CEPA付属文書IXには、22のサービス分野(21の既存分野と1新分野)を対象とする計37の自由化措置が盛り込まれている。これによってCEPAの適用対象となるサービス分野の合計数は47から48に拡大された。2013年1月に付属文書IXが実施されると、計338件のサービス自由化措置が導入されることになる。

中央政府はCEPA付属文書IXに基づくサービス自由化措置に従い、(i)法務、(ii)会計、(iii)建築、(iv)医療、(v)コンピュータおよび関連サービス、(vi)技術試験・分析・製品試験、(vii)人員配置・提供、(viii)印刷、(ix)会議・展示会、(x)その他業務サービス、(xi)通信、

(xii)オーディオ・ビジュアル、(xiii)流通、(xiv)環境、(xv)銀行、(xvi)証券、(xvii)社会福祉、(xviii)観光、(xix)文化、(xx)鉄道輸送、(xxi)個人所有店、(xxii)教育(付属文書IXに基づく新分野)の22分野において市場アクセス条件を緩和した。

2011年8月に李克強副首相が香港を支援する36の一連の措置を携えて訪港し、その4 ヶ月後にCEPA付属文書VIIIが発表された昨年とは異なり、2012年6月下旬に胡錦濤主席はHKSARの15周年記念祝典のため訪港したが、付属文書IXと一連の特別香港措置について発表はなかった。

李克強副首相が、中国本土および香港間のサービス貿易は2015年の第12次5カ年計画の期間末までに基本的に自由になると述べたことから、付属文書IXの発表に続いて、2013年および2014年のCEPAには、同2地域間でさらに自由サービス貿易の約束に向けて推進する措置が含まれることが予想される。また香港のサービスサプライヤーおよび専門職従事者は2015年に基本的に内国民待遇を認可されるであろう。広東省は2012年9月中旬に、2014年末までに広東省・香港間でサービス貿易自由化を達成する努力を行なうと述べている。

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CEPAの適用対象となるサービス分野(第1 〜第10段階)

会計*^学際研究および試験的開発サービス

鉄道輸送*

広告 人員配置・提供サービス* 陸運

航空輸送 法務* 研究開発

オーディオ・ビジュアル* 物流 科学・技術コンサルティングサービス

銀行* 経営コンサルティング 証券*

ビル清掃 市場調査経営コンサルティングやプロジェクト管理関連サービス

コンピュータおよび関連サービス*^

医療・歯科*~高齢者・障害者向け福祉サービス

建設および不動産 *~ 製造サービス レクリエーション・文化・スポーツ(図書館/美術館サービスを含む)

会議および展示会* 海上運送 倉庫・保管

文化・エンターテインメント*^ 鉱業 技術試験・分析・製品試験*~

流通*~ その他の業務サービス*~ 通信*~

教育サービス#^ 特許事務代理 観光*~

環境*~ 写真 商標登録

運送 印刷*^ 翻訳・通訳

個人所有店* 専門資格試験*

保険 公益企業

* CEPA付属文書IXの自由化措置が適用される既存サービス分野~ CEPA付属文書IXに基づく広東省パイロット措置による開放分野^ CEPA付属文書IXに基づく前海地区パイロット措置による開放分野# CEPA付属文書IXで追加された新分野

2012年7月末時点で、CEPAの最初から第9弾までの認可された香港サービスサプライヤー(HKSS)の申請件数は1,641件であった。香港政府は2010年に推定として、HKSS認可を受けた香港企業の約半数が中国本土に事業所を確立したと言及していた。これまでHKSSの申請件数が最も多いのは輸送・物流、流通サービス、航空輸送サービスの3分野であり、これらの3分野が全体の申請認可件数のおよそ60%を占めていることから、その本土事業所設置比率も全体の平均を上回っているものと考えられる。

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CEPA第9次補充(Supplement IX)-香港サービスへの恩恵

2012年8月時点の香港サービスサプライヤー認可申請(第1弾〜第9弾)

サービスセクター 受理した申請数 認可された申請数

輸送・物流サービス 605 599

流通サービス 271 265

航空輸送サービス 133 128

広告サービス 122 116

印刷サービス 81 78

人員配置・提供サービス 80 78

建設専門サービスおよび関連エンジニアリング・サービス

80 76

オーディオ・ビジュアル・サービス 48 47

付加価値通信サービス 47 42

経営コンサルティングおよび関連サービス 42 33

合計 1,692 1,641

出典: 香港工業貿易署

▪広東省および前海地区パイロット措置

広東省は、香港の後背地であると同時に、香港の製品およびサービスにおいてますます重要な市場である。付属文書Vに基づいて初めて紹介された広東省の早期パイロット実施措置(先行先試)は、過去数年間、CEPA付属文書の重要な要素となっている。付属文書IXに基づいた広東省におけるパイロット実施のための計17件の自由化措置が発表されたが、これには前海地区と横琴の具体的な5つの措置が含まれている。2013年に一連の付属文書IXが実施されると、広東省パイロット措置は60を超えるものとなる。ただし、付属文書V以前のCEPAに、上海や広東を含むパイロット地域で採用されたが、広東省の早期パイロット実施措置の中で、ある意味で厳密に分類されていない他の措置が存在している。

CEPA、広東省および前海地区パイロット措置の数

CEPA付属文書 措置の数 広東省パイロット

措置の数前海地区パイロット

措置の数

IX 43 17 5

VIII 32 7 -

VII 35 7 -

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VI 29 9 -

V 32 25 -

出典: 香港特別行政区、さまざまなCEPA文書

2011年3月に中央政府が発表した第12次5カ年計画は丸一章を香港のために割いているが、これは前例がないことだった。その中で香港・広東省の協力拡大を強調し、珠江デルタ地域(PRD)のさらなる自由化および香港との協力強化のためにCEPAの広東省パイロット措置を利用すること、広東省・香港協力枠組み協定(「枠組み協定」)を実施することを提唱している。この枠組み協定は、2008年12月に中央政府によって発表された珠江デルタ地区改革発展計画綱要(「綱要」)(2008-2020)のマクロ政策を具体化することを目的に、2010年4月に両政府によって締結された。重要なことに綱要は具体的に広東省と香港の協力を国家政策レベルにまで高めた4。

前海地区などの広東省の規定された都市についての措置以外に、付属文書IXに基づく広東省の12の自由化措置は、建設、消費者金融、流通、環境、ファクタリング、医療、鉄道輸送、技術試験、通信サービス、個人所有店の10件に及ぶ。具体的には、HKSSは広東省の都市間鉄道プロジェクトの建設および業務を行なう株式を過半数所有する企業の設立が許可され、広東省での委託環境モニタリングが地区当局によって認可されるようになる(広東省措置については関連する自由化措置のセクションにて後述する)。

前海地区と香港 - 前海地区協力の戦略的位置づけ

2008年に発表された綱要に続いて、香港と深圳は2009年に前海地区における香港・深圳間の近代サービス産業の協力推進を目的とする文書(「前海地区文書」)を締結した。この前海地区文書は、香港のサービス産業の推進・強化に焦点を当てる一方、深圳の前海地区開発に参加することで香港の長期的な経済成長を強化するものである。綱要同様、中央政府はまた、前海地区開発を国家戦略計画のひとつに指定し、2010年10月に前海地区の近代サービス産業における深圳・香港協力に関する総合開発計画(「前海地区開発計画」)を承認した。

前海地区開発計画の中で、システムが備い、法制度が近代サービス産業に適した前海地区は、2020年までに国際的な近代サービス産業における重要な役割を果たすであろうことを視野に入れて、広東省と香港間の近代サービス産業の革新的協力のための模範ゾーンとして位置づけられている。前海地区がCEPAの早期パイロット措置を利用して、香港のサービス産業と協力していく新たな形態を検討していくことが規定されている。

2010年の前海地区開発計画の承認に続き、中央政府は、2012年6月に前海地区開発および香港との協力を促進するための優遇政策を承認した。これは深圳前海地区 - 香港近代サー

4 中国国家発展改革委員会は、2008年12月に 「珠江デルタ地区改革発展計画綱要(2008-2020)」(http://en.ndrc.gov.cn/policyrelease/P020090120342179907030.doc)を発表した。

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CEPA第9次補充(Supplement IX)-香港サービスへの恩恵

ビス協力ゾーンの開発促進に関する政策についての正式回答(「前海地区政策」)に記載されている。それによると、一定の投資や、金融、証券、専門職、教育、医療、通信分野における事業制限の緩和を含む先行優遇待遇が前海地区政策に基づいて認められる。また前海地区の有資格企業や海外からの人材に対する金融および税優遇措置を提供するものでもある。CEPA付属文書IXに基づいて、前海地区に関連する5つのパイロット自由化措置が提供され、会計、教育、データベース、印刷、文化サービスなどの分野が対象となっている。

前海地区における投資

前述の内容から、前海地区の開発は確実に香港企業に新たな機会をもたらすであろう。2012年7月に、前海地区の関係者は香港で350億米ドル相当の37社と合意締結に至った。このうち18社は金融分野(契約額合計280億米ドル)で、HSBC、Bank of East Asia(東亜銀行)、Hang Seng Bank(恒生銀行)などが調印者であった。合計13のプロジェクトが、金融決済センターや業務管理センターなどを含む企業本社に関与している。前海地区当局が、金融以外のプロジェクトの査定および承認を行う権限を与えられていることは注目すべきである。通常、これは国家計画によって具体的に指定された地方自治体にのみ与えられる特権である。

▪本土でビジネスを行うHKSSのための柔軟性拡大 

2012年4月からは、現在香港で実施されている分野以外のサービス分野でも、CEPAの恩恵を受けるため本土当局に申請できるようになり、本土で行う事業分野の選択においてHKSSの柔軟性がより拡大された。47の既存サービス分野全体で業務上の柔軟性を享受するには、HKSSは、少なくとも3年から5年、香港の法律によって取得を義務づけられた関連免許または許可を保有し、香港において実質的に事業活動に従事してきたことを証明しなければならない。またHKSS認可申請は、47の指定されたサービス分野以外の香港企業に拡大される可能性がある。例えば、管理および補助サービス、個人、ペット、家庭サービスの分野などである。

このHKSSに対する変更点が、分野間にわたる申請においてどれほど著しい成長につながるかは今後注目すべきである。一方、分野間にわたるHKSS申請に関与した香港企業は、現在香港で運営しているサービス分野ではなく、本土で希望する事業を対象とするサービス分野に申請を反映できる。この状況においては、別の統計が提供されない限り、分野間にわたるHKSS申請が及ぼす影響について、判断および評価するのは困難であろう。

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▪6大新産業 – 付属文書IX自由化措置

香港の従来産業が国際的金融危機によって打撃を受けたあと、香港に競争優位性がある香港6大新産業を開発支援するため、2010年以来、付属文書VIIからIXに基づいてそれらの関連産業により多くの自由化措置が連続して導入されている。香港政府は、伝統的な4大支柱産業である金融、貿易・物流、観光、専門職業サービス(これらの分野は2010年に香港の国内総生産の半分以上に相当)だけでなく、過去数年間にわたって施政方針に盛り込まれている関連法案とともに、6大新産業の開発が急務であると考えている。

6大新産業、すなわち、医療サービス、試験・認証サービス、環境産業、技術革新、教育サービス、文化・創造産業は、2009年から、GDPおよび雇用条件の両方において新たなグループとなる。統計では、これらの分野は2010年に香港のGDPの8.4%を占めており、2009年の8%から拡大している。この6大産業における雇用者数は、2010年に40万人を超え、全雇用者の11.6%に相当した。2009年は11.3%であった5。これまでのCEPA付属文書を土台に、付属文書IXでは教育サービスが新たな分野として追加されることで、全6大新産業の許可される業務範囲がすべて揃う。これが前海地区パイロット措置である。これによってCEPAに基づくサービス分野の合計数は47から48に拡大されることになる(6大新産業に関する詳細は後述する)。

CEPA付属文書

6大新産業

教育 医療 試験・認証 環境 文化・創造 技術革新

IX # # # # # #

VIII # # # #

VII # # #

VI # # #

V # #

IV # # # #

出典: 香港特別行政区、複数のCEPA文書

医療サービス

香港の医療サービスの高度な水準と専門性は、これら一流の医療サービスを受けるため香港を訪れる人が多い近隣の広東省だけでなく、中国本土の他の地域でもますます認められている。さまざまなCEPA付属文書に基づく注目すべき動向の恩恵を受け、HKSSは中国本土の医療分野へしっかりと進出の足がかりを掴んでいる。現在HKSSは、外来診療所、病後療養所、病院を含め、広東省に独資の医療機関を設置できる。また、非CEPAサービ

5 香港政府統計処が2012年3月に発表した「2010年における香港の6大新産業の状況」による。

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CEPA第9次補充(Supplement IX)-香港サービスへの恩恵

スサプライヤーよりも少額の最低投資額要件が適用される。2012年4月以来、HKSSは独資または合弁の病院をすべての省都および地方自治体に設立できる。

付属文書IXに基づき、HKSSは医療分野において、2013年1月から中国本土で内国民待遇を認可されると言えるであろう。それはHKSSが独資または本土側パートナーとの合弁事業にかかわらず、全国的にあらゆる種類の医療機関を設置でき、本土の事業体や個人が設立した医療機関に適用される基準および要件の対象となるからである。この措置によってHKSSが香港スタイルの経営および医療サービスを提供しながら異なる種類の香港経営の医療施設を本土に設置する際に、地理的選択肢が大幅に拡大されることになる。

付属文書IXが合弁の医療機関にとって特別なのは、HKSSが医療機関以外の本土機関と初めて提携が可能となる点である。つまりHKSSにとって、合弁事業パートナーとしての本土企業の選択肢が大幅に広がる可能性がある。特に合弁事業に対して、資本、企業経営または非医療分野における貢献をもたらす提携相手が対象となることが考えられる。さらに独資の医療施設や病後療養所を除く、合弁または独資の医療機関は、2013年1月以降、省レベルの保健行政部門によって承認が行なわれる。

本土への医療機関設置についてCEPAがHKSSに与える柔軟性の拡大に伴い、香港の医療従事者は、内国民待遇の取得も含めて、将来、香港経営の医療機関での勤務について大幅な選択肢の広がりを見込めるであろう。CEPAによって全12種類の法定医療従事者6は、本土で医療サービスを提供するにあたって、CEPAに基づいた3年間の更新可能な免許の申請を行うことができる。この制度の受益者は7万6,000人以上にのぼると見られる。2012年7月末現在、医療および歯科サービス分野において19のHKSS認可書が発行されている。また深圳を中心に広東省に香港経営の外来診療所がいくつか設置されている。

下表に明らかなように、CEPAはHKSSに特恵的アクセスを提供し、医療機関を設置する場所、および合弁事業設立にあたっての提携相手の選択肢を拡大し、本土市場の参入制限を他の外国企業よりも実質的に引き下げて優遇している(他の外国企業には下表左の

「現行アクセス範囲」の列に記された本土の規制が参入条件として課される。したがってCEPAは明確に「WTOプラス」の待遇を提供する)。

6 香港の法律によれば、12種類の法定医療従事者は、香港で営業に従事する前に各管轄委員会または局に登録しなければならない。医療従事者とは、医師、漢方医、歯科医師、薬剤師、看護師、助産婦、医療研究所技術者、作業療法士、検眼士、X線撮影技師、理学療法士、脊柱指圧療法師の12である。

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現行のアクセス範囲 CEPAに基づくHKSSのアクセス範囲

- 合弁の医療機関7の設立が許可されている。

- それぞれの適応投資要件を満たすことを条件に、HKSSは、広東省、上海、重慶、福建、海南、中央政府管轄下にあるすべての地方自治体および省都に独資の病院を設立できる。

- 2013年1月から、本土事業体や個人によって設立される医療機関に適用される基準および要件を満たすことを条件に、HKSSは、本土で独資医療機関または、本土医療機関、会社、企業およびその他の経済組織との合弁または合作会社の形態で医療機関を設立できる。

- 2013年1月から、HKSSによって本土に設立された、合弁または合作会社の形態の医療機関、あるいは独資病院を除く独資医療機関および独資病後療養所は、省の保健行政部門によって承認が行なわれる。

- 2013年1月から、広東省の保健行政部門が、同省のHKSSによる独資病院のプロジェクト設置および設立手順の承認を管轄する。~

- 合弁病院の最低総投資額は、200億人民元。

- HKSSが合弁または合作会社によって病院を設立する際の最低投資額は、1,000万人民元である。

- HKSSが合弁または合作会社によって病院を広東省に設立する際、総投資額要件は適用されない。

- HKSSはHKSSと本土側パートナーの出資比率の制限を受けずに、広東省、上海、重慶、福建、海南に合弁または合作会社によって病院を設立できる。

7 「医療機関の管理規制の実施に関する規則」(中華人民共和国衛生部、命令No.35)によると、医療機関は次のように分類されている。(1)総合病院、漢方医学病院、総合漢方・西洋医学病院、民族病院、専門病院、リハビリテーション病院(2)母子医療センター(3)地域保健サービスセンター、地域保健サービスステーション(4)中央保健センター、町保健センター、街頭保健センター(5)病後療養所(6)総合外来診療所、専門医外来診療所、漢方外来診療所、総合漢方西洋医学外来診療所、民族外来診療所(7)診療所、漢方医学診療所、民族診療所、保健センター、診療所、保健センター、健康センター(8)村保健局(センター)(9)応急センター、応急ステーション(10)臨床試験センター(11)専門病気予防治療病院、専門病気予防治療機関、専門病気予防治療ステーション(12)老人ホーム、看護ステーション(13)その他医療機関。

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CEPA第9次補充(Supplement IX)-香港サービスへの恩恵

- HKSSは、総投資額要件の適用を受けずに、広東省に独資の外来診療所を設立できる。

- HKSSによる広東省での合弁または合作診療所の設立:

- 合弁または合作診療所の場合、HKSSと本土側パートナーの出資比率は制限されていない。

- 合弁または合作診療所の総投資額は制限されていない。

- HKSSは、広東で医療サービスを提供する病後療養所を独資、合弁会社または合作会社の形態で設立許可される。

- 広東の保健行政部門は、HKSSによる広東での外来診療所の設立に独資、合弁会社または合作会社ベースで設置する場合にプロジェクト設置および承認手順を管轄する。

- 広東の保健行政部門は、HKSSによる広東での合弁会社または合作会社ベースの医療機関の設置において、プロジェクト設置および承認手順を管轄する。

- 合弁病院または診療所が雇用する医療スタッフの大半は中国国籍を有していなければならない。

- 合弁病院または診療所は医療スタッフの大半に香港永久居民を雇用できる。

- 香港で開業する法的資格を有し 、5年間以上の実務経験を持つ香港永久居民は、本土の開業資格を取得した後、本土で外来診療所を設立することができる。

- 中国公民である有資格香港永久居民は、認知を受けることによって本土の資格を申請、取得することができる。

- 香港で医院および歯科の開業医資格を有する、香港永久居民は、本土の資格試験を受験できる。

- 香港の免許薬剤師であり、本土の免許薬剤師暫定資格審査制の申請資格を満たす香港永久居民は、本土の薬剤師試験を受験できる。

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- 試験合格者には本土の「薬剤師免許」が発行され、本土の免許薬剤師暫定資格審査制および関連規制に従い登録することができる。

- 本土で短期医療サービスを提供する外国人開業医に対して発行される開業免許の有効期間は、最長 6カ月。

- 免許は失効時に 1年間の延長を申請できる。

- 香港で営業するために登録した法定医療従事者は、3年を限度に本土で短期医療サービスを提供できる。免許は更新可能。

- 短期免許は更新可能

~ CEPA付属文書IXに基づく広東省パイロット実施措置

▪技術試験・分析および製品試験

中国は、世界の工場であることに加えて、豊かな市場として先進国からますます注目されている。発展国の成長の勢いが減速するにつれて中国の輸出に影響を与え、本土当局は、第12次5カ年計画でも概説されているように、民間消費需要を高めて経済成長に拍車をかけようとしている。

本土で販売される製品には、CCCマークと呼ばれる中国強制製品認証の取得が義務づけられている。香港の6大新産業を支援するため、中国本土は2010年に、CCC製品の試験を新たなサービス分野としてHKKSに開放することに合意した。これは他の非CEPA試験サービスサプライヤーには付与されていないWTOプラス特権である。HKSSは、必要とされるCCC製品試験を請け負うために本土の指定認証機関と協力する必要がある8。

香港政府の香港認可署による認証を受けて、この制度の恩恵を受けられる香港の試験機関はおよそ160ある。現在、CCCに関連する香港で加工されているすべての既存の製品が、認証された香港の試験機関によって取り扱い可能である9。

香港で加工したCCC関連製品の本土市場を狙う香港企業にとって、地元で製品の試験および認証を受けることで迅速に本土市場に参入できる。一方、本土市場を狙う海外製品は、

8 香港の試験研究所は、CEPAの「中国国家認証認可監督管理委員会(CNCA)実施措置」に従って、香港の試験所認定制度に基づいた香港認証サービス(HKAS)による認証を受ける申請をすることになる。その後、本土のCCC指定認証機関との協定を締結する必要があるが、事前にCNCAに草稿の承認を受けていなければならない。9 CCCを必要とする既存製品は次のとおりである。(1)電気ケーブルおよび配線(2)電気スイッチ、保護装置、接続装置

(3)低電圧電気設備(4)小型電気モーター(5)電気工具(6)電気溶接機(7)家電機器および類似電気用品(8)オーディオ・ビデオ装置(9)情報技術装置(10)照明器具(11)自動車および安全付属品(12)自動車用タイヤ(13)安全ガラス

(14)農器具(15)ラテックス製品(16)通信機器(17)医療機器(18)消防設備(19)セキュリティシステム製品(20)無線LAN製品(21)装飾製品(22)玩具。

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CEPA第9次補充(Supplement IX)-香港サービスへの恩恵

本土のCCC準拠の試験機関による試験を受ける必要があり、この手続きには数ヶ月かかる場合がある。

付属文書IXでは、CCC製品の範囲内に食品が含まれているため、香港の試験機関にさらに恩恵をもたらすであろう。香港原産として承認された製品は、中国本土に輸出される際に無関税待遇を受ける。食品と飲料は原産地証明(CO)の品目数リストの最上位を占めるものである。これらの措置は大幅に改善されたものの、業界ではいずれ香港でのCCC製品試験が、香港で加工された製品以外にも拡大されることが期待されている。

現行のアクセス範囲 CEPAに基づくHKSSのアクセス範囲

- 海外の試験機関は、中国強制製品認証制度に基づく製品試験を許可されていない。

- 香港の試験機関は本土の指定機関と協力して、試験的に中国強制製品認証(CCC)制度に基づく製品試験を実施することができる。

- 香港を拠点とする試験機関は次の条件を満たしていなければならない。

1. 香港認可署の認定を受け、かつ、CCC制度の適用品目の試験を実施する能力を備えていなければならない。

2. CCC認定サービスを要する香港で加工された食品以外のすべての既存製品の試験を実施すること。

2013年1月から、香港認可署によるCCC認定サービス範囲は、広東省でパイロットベースとして食品に拡大される。

3. 中華人民共和国証明認証規制で概説された協力取決めを遵守しなければならない。

~ CEPA付属文書IXに基づく広東省パイロット実施措置

文化サービス

さまざまなCEPA付属文書によってHKSSは、レクリエーション・カルチャー・サービス産業において本土市場に大幅に参入できるようになり、独資の上演会場、合弁興行会社、独資のアートショップ・画廊、図書館や美術館に専門職サービスを提供する独資機関、マイナー出資のインターネット・カルチャー事業体、インターネット・オンライン・サービス事業体を本土で設置できるようになった。

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付属文書IXにより、本土にインターネット・オンライン・サービス事業体を設置するHKSSは、2013年1月から所有株式を100%に増加できる。さらにHKSSは、マイナー出資の舞台芸術だけでなく、独資の娯楽施設を前海地区と横琴にパイロットベースで設置可能となる。これは、前海地区当局が近年行っている環境改善や、インフラ施設、病院、インターナショナルスクールの建設促進を行うことで、より快適な生活環境を創出するという同地区の加速している開発と同調する(詳細に関しては後述の教育サービスを参照のこと)。2012年7月に、前海地区関係者は23企業が登録手続きを完了したことを示唆した。

現行のアクセス範囲 CEPAに基づくHKSSのアクセス範囲

- 外国投資企業はインターネット文化事業への関与を許可されていない。

- HKSSは、本土の提携相手が主要な株式を所有する合作会社形態で、本土にインターネット・カルチャー事業体およびインターネット・オンライン・サービス事業体を設立できる。

- 2013年1月から、HKSSは本土に独資のインターネット・オンライン・サービス事業体を設立できる。

- 2013年1月から、HKSSは独資の娯楽施設を前海地区と横琴にパイロットベースで設置できる。^

- 2013年1月から、HKSSは本土で合弁会社形態で、本土の合弁提携相手が過半数の株式を所有すれば舞台芸術グループを設立できる。

^ CEPA付属文書IXに基づく前海地区パイロット措置

教育サービス

付属文書IXは、CEPAに基づいて教育サービスを新たな分野に追加している。これは、HKSSが前海地区および横琴にパイロットベースで独資のインターナショナルスクールを運営することを許可する自由化措置で、前海地区と横琴の開発を補完するものである。

この措置により、全6大新産業において許可されたサービス範囲がすべて揃う一方、教育分野に関するCEPAに基づく以前の協力措置からの拡大とも見ることができる。付属文書VIのもと教育部と広東省は、広東省と香港が共同で運営する教育機関やプロジェクトの評価・承認を行う共同承認メカニズムを設立することに同意した。また付属文書VIIでは、教育における二国間協力について多分野に亘って概説しており、その範囲は交流、連絡、研修の強化、訪問の企画から、共同教育プログラムの提供、共同研究施設の設置、本土の大学およびそれ以上のレベルでの人材育成に及ぶ。

2003年3月に中国国務院によって発表され、同年9月から施行となった学校規則の運営における中国と外国との協力(「中外学校条例」)は、中国および外国機関が、本土で営利目的

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CEPA第9次補充(Supplement IX)-香港サービスへの恩恵

の共同教育機関を設立することを許可している。この条例は、さまざまな教育機関を協力して設立できる一方、義務教育のカリキュラム、および警察、軍、宗教教育に関する特定の教育を提供する機関の設立は許可していない。さらに外国投資企業が、中国の学生が入学する独資の教育機関を設立することも許されていない。

中外学校条例を踏まえると、独資の外資系インターナショナルスクールが2013年1月より設立を許されることから、新たな付属文書IX措置はWTOプラスであると思われる。さらにこの条例では、これらのインターナショナルスクールが、海外に在住したことのある中国公民、および海外留学後に前海地区や横琴で勤務している帰国人材の子女を含む中国の学生を受け入れることが可能であることを特記している。

2005年に中国の国務院は、技術を持った労働力の育成および雇用率の向上の目的で「職業教育の積極的な開発に関する決定」を発表した。その中で外国投資に対しては、中外合弁事業の設立を奨励している。これに関連して付属文書IXは、独資の訓練機関を許可する段階に入ったが、業務に関する訓練が許可される範囲についての規則の実施は明確にされていない。

現行のアクセス範囲 CEPAに基づくHKSSのアクセス範囲

- 外国投資企業は、本土における共同教育機関(インターナショナルスクールを含む)の設立が許されている。

- 2013年1月から、HKSSは、海外に在住した中国公民の子女および海外留学後に前海地区や横琴で勤務している帰国人材を学生とする独資のインターナショナルスクールを前海地区と横琴に設立できる。^

- 2013年1月から、HKSSは、独資、合弁または合作会社の業務ベースの訓練機関を本土に設立できる。

^ CEPA付属文書IXに基づく前海地区パイロット措置

ファクタリングサービス

商業用ファクタリングは、付属文書IXでその他の業務サービス分野として導入されている。この導入によって2013年1月からHKSSは、深圳と広東省でファクタリングサービスを提供する事業体を設立する機会が与えられる。ファクタリングは、多くが中小企業である商社などが、売掛債権のような短期資産を活用してキャッシュフローを迅速に促進できるため、運用資金が不足しがちな企業にとって有益な手段である。必然的に、景気が向上するにつれ、ファクタリング機関も成長することになる。

中国本土では、ファクタリング事業は常に大手金融機関が独占していた。国際的金融危機の後、中小企業および小企業にとっての追加的な資金調達手段を支援するため、本土当局は、営利企業がファクタリングサービスを天津の浜海新区などのパイロット地域で提供す

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ることを許可し始めた。2009年以来、営利ファクタリング企業の登記を承認している。この天津での動きは、その後上海の浦東に続き、現在では本土の営利ファクタリング会社のおよそ半数が浦東にある。香港のGoldin Financial Ltd.は、初めて承認され浦東に設立された外資系ファクタリング企業である。

2012年7月に、中国商務部は商業ファクタリングに関する通知を発表した。この通知では、天津の浜海および上海の浦東の両地域が緊密に協力し、監督・規制規則のメカニズムを生み出し、営利ファクタリングの開発にとって最良の手段を模索するよう要請してパイロット両地区での営利ファクタリングの発展を奨励している10。

営利ファクタリング企業に許可されるサービスは、貿易金融(国際および国内のファクタリングの両方)、売上元帳管理、顧客信用調査と評価、売掛金管理と回収、そして信用リスク保険サービスが含まれる。商業ファクタリングに関する通知では、申請者はファクタリング業務の運営管理に関する経験があり、自己資金による事業規模にふさわしい登記資本を持っていなければならない。また営利ファクタリング企業は、受信業務や貸金業務に関与していない独立企業であるべきとされていることから、中小企業や小企業に資金提供が可能な銀行以外の新たな手段が確立されることになる。

つまり、許可される規定の発表が関係当局によって保留となっており、HKSSが営利ファクタリング企業を深圳および広東省で設立するための明確な資本や既存の業務要件については明らかにされていない。

現行のアクセス範囲 CEPAに基づくHKSSのアクセス範囲

- 外国投資企業は、関連当局の承認を得ることを条件に、パイロットベースで天津の浜海と上海の浦東に営利ファクタリング企業の運営を申請することができる。

- 2013年1月から、HKSSは、パイロットベースで深圳および広東省で営利ファクタリング企業の設立が可能である。~

~ CEPA付属文書IXに基づく広東省パイロット実施措置

▪4つの支柱産業 – 付属文書IX措置

最新の公式統計によると、香港の4大支柱産業である金融、観光、貿易・物流、専門職サービスは、2010年に香港の総労働人口の48.2%を雇用し、GDPの58%を占めた11。統計値は

10 中国商務部が発行した中国語版の「商業ファクタリングに関する通知(商務部關於商業保理試點有關工作的通知)」は次のリンクに掲載されている。http://www.mofcom.gov.cn/aarticle/b/f/201207/20120708212890.html11 香港政府統計処が2010年2月に発表した「20110年における香港の4大新産業の状況」による。

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CEPA第9次補充(Supplement IX)-香港サービスへの恩恵

2009年から大きく向上し、経済危機の発生以前のレベルすら超えている。2010年までの5年間で4大支柱産業の平均成長率は5.5%であり、経済全般と比較して1パーセント高くなっている。

2010年には金融サービスだけで、香港の総労働人口の6.3%に相当する21万9,500人以上を雇用し、香港のGDPの15.4%を占めた。GDPに占める比率は2008年の16%から低下したが、雇用数は2008年の総労働人口の5.9%に相当する20万6,100人よりも増大した。2008年から2010年の銀行・保険における雇用数減少は、その他の金融サービスでのそれ以上の雇用拡大によって相殺されている。2010年の、銀行を除く香港の金融産業の優れた業績は、香港における強力なIPO活動によって強調されている。香港は2009年から2011年に、ニューヨークとロンドンの両都市の合計資金を超えるIPO資金を集め、世界トップのIPOセンターとなっている。2011年に香港は348米ドルのIPO資金を集め、証券・投資銀行分野を支援している。

CEPAは、2012年4月に付属文書VIIIが実施されて以来、47分野において累計300を超える自由化措置を提供して、4大支柱産業のHKSSおよび関連専門職やスタッフの本土市場参入を促進している。近年では、金融分野がサービス自由化および二国間協力において重点分野である。中国の12次5 ヵ年計画の中でも、香港について丸一章を割いて、香港の国際金融の中心地としての競争優位性の強化・拡大において、またオフショア人民元センターの開発において中央政府の支援を強調している。2011年8月に李克強副首相は、香港経済を支援する一連の36措置を発表したが、そのうち11措置は金融産業に関連し、それにはRMB外国直接投資(RFDI)や人民元適格海外機関投資家(RQFII)スキームなどが含まれる。付属文書IXのもと中国は、香港の金融機関がQFII特権を申請する際の資格要件引き下げを積極的に検討し、本土の資本市場における香港の長期的な資本投資を促進している。

付属文書IXに基づくその他の金融的協力に含まれる内容は、本土が海外上場に関する要件を修正・改善し、本土企業が香港の上場要件を満たし、本土企業、特に中小企業にとって望ましい海外上場条件を作成する支援をすると同時に、本土と香港間で商品先物市場の協力促進を積極的に模索する、となっている。

銀行サービス

広東省パイロット実施措置の多くが採用されて以来CEPAは、中国および香港政府が、HKSSに本土市場、特に広東省への費用効果の高い「WTOプラス」のアクセスを提供しながら、本土・香港間の金融分野の相互協力強化を進めるための重要なメカニズムであった。付属文書IXでは2013年1月から、有資格香港銀行に対して、証券会社の顧客の決済資金および将来取引の委託証拠金の保管サービスの提供を許可し、香港金融機関がパイロットベースで広東省に消費者金融会社を設立することを許可して、HKSSの銀行・金融業務の範囲を拡大する。

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国際金融危機の後、中国の国内需要を重視することとあわせて、2009年7月に中国銀行監督管理委員会(CBRC)は、消費者金融施行管理弁法(「消費者金融措置」)を導入した。CBRCは、資格、事業目的、コーポレート・ガバナンス、危機管理メカニズム、業務運営、専門職従事者チームとの関連から各申請者の資格を評価する12。

消費者金融措置のもとでは消費者金融会社の主要な出資者は、国内または海外金融機関、あるいはCBRCによって承認されたその他の出資者となる。海外金融機関の場合、中国本土の駐在員事務所は最低2年間存続している、または、支店を持ち、本土市場を十分に理解している必要があり、申請前年の総資産は600億人民元以上が必要である。消費者金融会社を設立するには、金融機関の場合、登記資本が3億人民元(一括支払い)以上で、非金融機関の場合、純資産比率は30%以上でなければならない。この新たな措置で、香港の金融機関は、深圳や広洲といった広東省の都市で消費者金融会社を設立できるようになり、本土での新たな業務分野が開放されることになる。

現行アクセス範囲 CEPAに基づくHKSSのアクセス範囲

- 本土に支店を設置する外資系銀行は、次の要件を満たしていなければならない。

1. 申請前年末現在の総資産額が200億米ドル以上でなければならない。

2. 最初の支店設置を申請する前に2年間以上、本土の申請地区に駐在員事務所を設置しなければならない。

- 香港銀行#が本土に支店を設置するには、60億米ドルの資産を有していなければならない。

- 香港銀行が本土に100%外資系銀行または外資系支店を設立するには、申請の1年以上前に駐在員事務所を本土に設置しなければならない。

#「香港銀行」と認められるための条件:(1)香港で登記された銀行であり、かつ(2)香港で以下の営業実績要件を満たしていなければならない。

- 香港で支店を2年以上運営し、法人として 3年以上活動していれば、営業実績要件を満たすと見なされる。

- 合弁事業設立の前に駐在員事務所を設置する要件は撤廃された。

- 香港銀行が中国本土の銀行の株式を保有するための要件として規定された申請前年末時点の総資産は60億米ドル以上に引き下げられた。

12 「パイロットの消費者金融会社の管理のための措置」(2009年7月に発表)は即座に発効となり、次のリンクで閲覧可能。http://www.fdi.gov.cn/pub/FDI_EN/Laws/Banking/t20090826_110381.jsp.

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CEPA第9次補充(Supplement IX)-香港サービスへの恩恵

- 営業中の外資系銀行が人民元業務を申請する場合、次の両方の要件を満たしていなければならない。

i. 申請の3年以上前に本土に営業所を設置していなければならない。

ii. 申請前に2年連続して黒字経営でなければならない。

- 香港銀行が所有する本土の営業金融機関が人民元業務を申請するには、本土で2年以上営業し、申請前の1年が黒字でなければならない。

- 本土での人民元業務を申請する香港銀行の支店の収益性は、個々の支店ではなく、全支店の総合的財務状態によって評価する。

- 外国銀行は、すでに支店を設置した都市に複数の出張所を開設できる。

- 広東省に設置された香港銀行の支店は、同省内への「隣接地」出張所の設置を申請できる。すなわち、別の行政区にまず支店を設置しなくても、出張所を設置できる。##

- 香港銀行によって本土で設立された独資の外資系銀行の広東省を拠点とする支店は、同省内へ「隣接地」出張所の設置を申請できる。すなわち、別の行政区にまず支店を設置しなくても、その行政区に出張所を設置できる。##

##出張所設置のための関連本土規則に準拠

- 香港銀行が本土に設立した銀行はミューチュアルファンド(投資信託)の販売流通に従事できる。

- 香港銀行が本土で設立した外資系銀行は、本土の関連規制に従い中小企業に金融サービスを提供する専門金融機関を設立できる。

- 2013 年1月から、有資格香港銀行は、証券会社の顧客の決済資金および将来取引の委託証拠金の保管サービスを提供できる。

- 2013年の1月から、香港金融機関は、パイロットの消費金融会社の管理のための措置に従って、パイロットベースで消費者金融会社を広東省に設立できる。~

~ CEPA付属文書IXに基づく広東省パイロット実施措置

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証券、先物、資金運用サービス

付属文書VIに含まれる措置を土台に、有資格香港証券会社およびその本土の提携相手は広東省に合弁証券投資顧問会社を設立することを許可されたが、付属文書IXではこの地理的対象範囲が中国全本土に拡大されている。さらにHKSSの合弁会社の株式保有制限は、33%から49%に増加する。この拡大措置によって香港の仲介業者は、上海を含む急成長市場において先行者利益を享受できる。国際証券取引所連合によると、上海市場の時価総額は、2012年に東京と香港に続いて7カ月中3カ月間第3位であった。

CEPAによって香港金融仲介業者は、マイノリティ合弁の先物証券仲買会社を中国本土に設立できる一方、付属文書VIIIでは2011年12月に、香港は人民元適格海外機関投資家

(RQFII)を通して本土証券市場に投資できると述べている。本土の資金運用会社や証券会社によって香港に設置された子会社は、香港で調達した人民元を本土の証券市場に投資できる。2011年12月当初の枠は200億人民元、また確定利付証券と他の証券との投資比率を80対20とすることが規定された。香港の有資格金融機関のRQFII商品開発に対する強い関心から、中国証券監督管理委員会(CSRC)は2012年4月にこの投資割当枠を500億人民元に引き上げた。

RQFII制度は、本土金融機関の香港子会社が本土の金融市場に投資するための主要ルートではあるが、それに加えてCSRCは、将来さらに多くの海外機関投資家のパイロットRQFII制度への参加を可能にすることや、投資比率の引上げ、商品拡大の可能性を調査しているとを示唆した。RQFII制度は、オフショアRMBを本土に環流するメカニズムを強化するだけでなく、香港の金融機関の国際競争力を高めながら、オフショアRMBセンターとして香港がRMB関連商品やファンドマネジメントにおいて果たす役割を拡大することができる。2012年6月現在、香港のRMB預金高は5,630億人民元に及ぶ。

2011年8月に李克強副首相が36措置を発表した際、本土の投資家が香港上場株に投資できる上場投信(ETF)について言及した。ETF制度は今後、香港上場株式の需要を刺激し、出来高を拡大することになるであろう。これにより、一方では香港の金融専門家にはETF商品を本土市場向けにパッケージする機会が、またもう一方では本土の投資家に香港上場株への投資による投資多角化のオプションが提供されることになるだろう。

さらに香港と上海の株式市場規制当局も、国境を越える二重上場に関する要件を緊密に協力しながら練り上げている。2012年6月下旬に、香港の証券先物委員会(SFC)は世界で初めてRQFII - A株ETFを承認し、2012年7月中旬に香港に上場した。WFEによると、香港のETF市場は、2012年最初の7 ヶ月にアジアで韓国に次ぐ2番目であり、上海と深圳を凌ぐ売上高を記録した。

また、証券専門家が両地域の証券市場へ参入できる柔軟性を促す職業資格の相互認定や関連資格試験のおかげで、香港証券市場は、CEPAを通じて本土における事業の機会に恵ま

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CEPA第9次補充(Supplement IX)-香港サービスへの恩恵

れるであろう13。

現行のアクセス範囲 CEPAに基づくHKSSのアクセス範囲

- 合弁証券会社(外国提携相手の株式所有は1/3未満)の設立が許可されている。合弁証券会社は、本土の仲介企業を介さずに直接的に、A株の発行引受、B株の発行引受および売買、公債および社債の売買を行える。

- 同じ。

- 外国の証券会社は、本土の仲介企業を介さず行われるB株の越境取引に従事できる。

- 同じ。

- 付属文書VIIIでは、人民元適格海外機関投資家(RQFII)を利用して香港から本土の証券市場へ投資可能であることが規定されている。

- 外資系証券会社海外株主資格要件を満たす香港の証券会社は、合弁の証券投資顧問会社を、子会社設立要件を満たす中国本土の証券会社と広東省に共同で設立できる。

- 合合弁投資顧問会社は、本土の証券会社の子会社となり、証券投資顧問業務に専従する。

- 香港の証券会社は、この合弁投資顧問会社の株式を最大3分の1保有できる。

- 2013年1月から、この自由化措置の地理的対象範囲は、広東省から国全体に拡大され、最大所有株式も49%までに増加する。

13 CEPAの実施において、中国証券業協会と香港証券専業学会は、本土または香港の資格試験の受験を希望する証券実務者がそれぞれの地元で受験できるようにした。これにより香港の規則および法律に関する試験に合格した者は、本土で該当する資格取得を申請することができ、その逆も可能である。

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- 香港の仲介企業#は、本土に先物仲介合弁会社をマイノリティ出資で設立できる。

- 先物仲介合弁会社の業務範囲および最低資本額は、本土企業と同一である。

- 本土の先物仲介会社の現在の最低資本額は 3,000万人民元である。

- 香港の専門職従事者##は、訓練を受け、本土の法律および規制に関する試験に合格すれば、本土の証券・先物専門職資格を取得できる。専門知識に関する試験は不要である。

注記 # 仲介会社とは、香港証券先物委員会(SFC)に登録された仲介代理店を指す。## 専門職従事者とは、SFCの免許を取得した香港永久居民を指す。

観光および旅行関連サービス

観光は4大支柱産業の中で最も小規模で、2010年には香港のGDPの4.4%を占め、総労働人口の6.2%に相当する約21万8,000人を雇用した14。発表された最新の公式データによると、付加価値のおよそ80%、および雇用の87%が香港への観光(インバウンド観光)に関連しており、残りは香港外への観光(アウトバウンド観光)による。2010年までの5年間に、インバウンド観光による付加価値は平均年率で12.5%増加し、経済全般の増加率4.6%のおよそ3倍を打ち出している。

2011年には4,190万人の観光客が香港を訪れており、前年比16.4%増となっている。翌2012年の上半期合計には2,230万人となり、前年比で15.5%増加している。個人旅行制度(IVS)の開始と漸進的な拡大により、中国本土からの訪問者は継続して増加し、成長の主な推進力となっている。IVSはCEPA協定の重要な要素のひとつで、2003年下半期に導入され香港経済に大きく貢献した。

2012年上半期、本土からの訪問者の来訪は前年比22.7%に急増し1,560万人に上った。そのうちおよそ1,030万人の訪問者、または本土からの全訪問者の66%がIVS訪問者であり、前年比で25.6%とさらに増加に拍車がかかった。2012年6月末時点で合計8,900万人が本土から香港へIVS観光客として訪問した。

14 香港政府統計処の分類によれば、観光業には、香港を訪れる観光客または海外旅行する香港居民に提供される小売業、ホテル、その他の宿泊、レストラン、越境乗客輸送サービス、旅行代理店サービス、航空チケット販売代理サービスを含め、国内・海外観光の両方が含まれる。

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CEPA第9次補充(Supplement IX)-香港サービスへの恩恵

2012年上半期に本土から香港を訪れた訪問客のおよそ57%が日帰り観光客である。これは前年比34.6%増で、その多くが、IVSに基づいた一年間の複数回入国ビサで香港に旅行が可能である深圳を含む広東省からの訪問客である。

また本土は、CEPAに基づいて海外観光市場を香港の旅行代理店に開放した。HKSSが北京、福建、広東、広西、貴州、海南、湖南、江西、上海、四川、雲南などに設置した独資または合弁の旅行代理店は、これらの地域の永住者を対象にした香港およびマカオ団体旅行を企画できる。2013年1月から団体旅行の手配は、すべての省、自治区、地方自治体の永住者に拡大され、本土から香港に向かう旅行者を管轄する地域が広がる。遠方の地方自治体または省からの旅行者は、団体で香港を訪れることが多く滞在期間も長いため、支出総額もそれだけ多い。

2012年4月に発表された2012年中国海外観光開発年次報告によると、中国は7,000万人を超える規模の海外観光市場とされる。海外に旅行した中国公民の合計数は、2011年に22%上昇し、さらに2012年の最初の2 ヶ月間では20%増加し、およそ1,300万人に上った。この報告では、中国から出国する観光客数と消費高が過去最高を記録したと述べられている。中国の海外観光市場はすでに米国を凌ぎ、日本の3倍である。この強力な上昇傾向は今後も続くと見られている。中国観光客の主な目的地はそれでもアジアが中心だが、他の国々や地域でも中国からの訪問者が見られるようになってきている。

こういった事情を背景に、HKSSに香港・マカオを越える海外観光市場が認められると、多大な事業機会がもたらされる。付属文書IXに基づいて、2013年1月から有資格HKSSの1社が、香港・マカオを超える訪問地(台湾を除く)への海外旅行団体旅行を本土公民のためにパイロットベースで運営することが許される。業界では、将来さらに多くのHKSSが香港・マカオを超える訪問先への海外旅行ツアーを運営できるようになると期待している。

現行のアクセス範囲 CEPAに基づくHKSSのアクセス範囲

- 外国企業は独資の旅行会社を設立できる。申請企業は、年商1,500万米ドル以上、登録資本250万人民元以上でなくてはならない。

- 同じ

- パイロット措置として、HKSSが以下の地域に設立した独資または合弁旅行会社は、同地域の住民を対象に香港・マカオ団体旅行の実施を申請することが許可された。

- 広東、広西、湖南、海南、福建、江西、雲南、貴州、四川、北京、上海

- 2013年1月から、団体旅行の手配は、すべての省、自治区、自治体の永住者に拡大される

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- 外資系の合弁旅行会社を設立できる。

- 外国企業側パートナーは、(全世界の)年商が800万米ドル以上でなければならない。

- 広東省は、独資、合弁または合作会社によって広東省に企業を設立するHKSSの認可業務を委託された。

- 2013年1月から、有資格本土・香港間合弁旅行代理店1社は、パイロットベースで香港・マカオを越える行き先(台湾を除く)の海外団体旅行を本土永住民のために運営できる。

- 144時間便利ビザ政策を最適化するために、適切な時期に団体旅行の人数についての要件を見直すことで、広東省の出国管理地点での事前登録要件が緩和される。

- 外国企業はツアーガイドとして中国公民を雇用しなくてはならない。

- 中国公民である香港永久居民は、本土のツアーガイド資格試験を受験できる。試験に合格すれば関連要件に基づいて本土ツアーガイド資格を取得できる。

- 中国公民である香港永久居民は、本土の海外旅行添乗員資格を取得できる。団体海外旅行の主催を許可された本土の国際旅行会社や、本土居住者の香港・マカオ団体旅行の主催を許可された香港およびマカオの旅行代理店は、この資格を取得した香港永久居民を雇用できる。

- 台湾団体旅行の主催を許可された本土の旅行会社は、有効な出入国許可と、トランジットの際に香港を訪れて滞在できるLビザの両方を保有する本土居住者の台湾団体旅行の主催を許可された。この措置は、本土居住者の海外旅行を奨励し、香港の旅行会社が複数の目的地向けの団体旅行商品を開発できるようにするためのものである。

会議・展示会サービス

中国は、2004年に会議および展示会サービスの本国市場を外国企業に開放したが、外国企業が海外あるいはアウトバウンド市場での展示会を企画することは禁じられている。CEPAに基づいて本土は、アウトバウンドの展示会市場を香港企業に開放することに同意し、大きな自由化への努力を見せている。

2007年からHKSSは、展示会会社を本土に設立することが可能となり、アウトバウンドの展示会市場に参入できるようになった。当初、広東と上海で登記した企業がアウトバウンドの展示会をパイロットベースで企画することしか許可されていなかったが、現在対象は北京、重慶、福建、広西、貴州、海南、湖南、江西、四川、天津、雲南、浙江に拡大され

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CEPA第9次補充(Supplement IX)-香港サービスへの恩恵

ている。付属文書IXに基づきHKSSは2013年1月から、本土でパイロットベースで海外展示会事業を行なう合作会社の設立を許される。参加企業は当該省、自治区、自治体での登記が必要である。

見本市のメッカである香港は、CEPAの恩恵のもと香港での事業所設置を狙う多くの国際的プレーヤーを惹きつけてきたが、香港の展示会企業の多くは、比較的小規模の事業である。「越境取引」ベースの本土展示会企画に関するCEPA規定は、小規模のHKSSがよりコスト効率の良い本土展示会戦略を考案するのに役立つであろう。現在HKSSは、北京、重慶、江蘇、上海、天津、浙江などでサービスの提供が許可されている。

現行のアクセス範囲 CEPAに基づくHKSSのアクセス範囲

- 外国会議・展示会会社は、次の企画サービスを提供するために、独資または合弁の会社を本土に設立できる。

- 本土での展示会および会議

- 海外市場における会議

- 同じ

- 本土にあるHKSSが投資した展示会企業は、香港およびマカオでの展示会の企画を許される。

- HKSSが設立した独資、合作、合弁の企業は、参加企業が登記している場所において、パイロットベースで海外展示会を企画できる。それらの場所には次が含まれる。#

- 広東、上海、北京、天津、重慶、浙江、広西、湖南、海南、福建、江西、雲南、貴州、四川

- 2013年1月から、HKSSは、本土に合作会社を設立して、海外展示会事業をパイロットベースで運営できる。参加企業は、当該の省、自治区、自治体での登記が必要である。#

- HKSSは、越境取引の形態で次の場所においてパイロットベースで展示会を企画できる。##

- 広東、上海、次の省と自治体も追加される: 北京、天津、重慶、浙江、江蘇、福建

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- 広東は、各省において1000平方メートルを超える展示面積を持つ、外国の経済および技術に関する展示会を企画するために必要なHKSS申請の承認をする権限を委任されている。###

# 本土の関連法規に基づき、中国国際貿易促進委員会(CCPIT)の承認が必要## 本土の関連法規に基づき、中国商務部(MOFCOM)の承認が必要### 展示会のタイトルの先頭に「中国/中国の」の語句を使用する場合のみ、広東省の商務当局による通知に基づくMOFCOMの承認が必要

▪専門職サービス

香港は国際的なサービス業のハブであり、法務、経理、監査、建築、施工、管理コンサルティングを含め、幅広い専門サービスを提供している。さらに海外の専門職サービス企業の多くが、香港に地元本社や事務所を設立している。香港の最新の公式概算によると、他の生産者サービス15と合わせ、専門職サービスは、2010年に香港の総労働人口の13.3%に相当する46万6,700人を雇用し、GDPの12.8%を占め、貿易・物流、金融に続く第3番目の経済支柱産業となっている。

専門職サービスだけで、香港の総労働人口の約5.1%に相当する17万9,800人を雇用し、2010年のGDPの4.5%を占めている。2010年までの5年間で、専門職サービスの付加価値は平均年率で10.3%増加し、4大支柱産業全体の5.5%を大きく上回っている。また、経済全体の平均年率4.6%の2倍以上でもある。このことは専門職サービスが、経済全般においてGDPにますます貢献していることを明確に強調するものである。

会計サービス

CEPAには全般に、香港の会計事務所や専門職のための市場自由化措置は盛り込まれていない。HKSS認定が承認された数は、2012年8月末時点で2件である。香港の小規模会計事務所にとって、本土市場にサービスを提供する主な選択肢となるのは監査関連業務実施のための仮ライセンス(一時監査許可)を取得することである。一時監査許可の有効期間は、2009年から5年間延長されている。付属文書IXに基づいて中国本土は、香港の会計事務所が本土で一時的業務を行なう申請に必要な文書要件を、簡略化することに力を入れている。CEPAの様々な付属文書に基づく一時監査許可の漸進な改善によって、CEPAの恩恵を受けない他の企業に適用される要件と比較すると、香港の会計事務所にかかる管理上の負担はさらに削減されるであろう。

15 他の生産者サービスとは、金融、貿易・物流、観光、専門職サービス以外の生産者サービスを指す。

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CEPA第9次補充(Supplement IX)-香港サービスへの恩恵

さらにCEPAは、中国会計士協会(CICPA)会員と、香港会計士協会(HKICPA)資格認定プログラム修了者との間で相互に免除される資格試験科目を拡大した。これにより、資格認定プログラムを通して資格を得ていなくても、KICPA会員は皆その恩恵を享受できる。これらの措置は、試験センターを深圳、東莞、香港に設立する取り決めと併せて、香港の専門職従事者に対して本土の会計業務資格取得を容易にしている。

前海地区の発展を近代サービスの模範とすることを踏まえ、付属文書IXは、CICPA資格を取得した香港の専門職従事者は、2013年1月からパイロットベースで前海地区の合資会社の共同出資者になることができると明記している。

現行のアクセス範囲 CEPAに基づくHKSSのアクセス範囲

- 本土で監査サービスを実施するための一時監査許可の申請が可能。

- この許可は、半年ごとに更新しなければならない。

- 香港の会計事務所に対する現在の一時監査許可の有効期限は5年である。

- 2013年1月から、香港の会計事務所が本土で一時的に業務を行なうための申請に必要な文書要件は大幅に簡略化される。

- 香港は、本土の「全国会計専業技術資格考試」を行なうために試験センターを設立できる。

- 深圳と東莞は、香港住民専用の試験センターを設立でき、本土の会計資格試験の実施と、関連業務を行うことができる。広東省は、試験に合格した者に会計士資格証明書を発行する。

- 2013年1月から、中国公認会計士(CPA)資格を取得した香港の専門職従事者は、パイロットベースで前海地区で合資会社の共同出資者になることができる。^

^ CEPA付属文書IXに基づく前海地区パイロット措置

建築サービス

他の外国企業も本土に独資または合弁企業を設立することが可能であるが、HKSSおよび香港の専門職従事者は、その他の外資系建築/エンジニアリング会社および専門職従事者と比較すると、本土市場での資格審査、スタッフ、出資比率、居住要件の面でより緩やかな条件が認められており、さらには特定の範囲において内国民待遇を受けられる。

以前の付属文書で導入された一連の措置と共に、付属文書IXに含まれている3つの新たな自由化措置は、広東省での起業免許を求める建築/エンジニアリング分野のHKSSの柔軟性を大幅に改善した。それは、承認された本土の建築士または施工技師資格を持つ香港の

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専門職従事者が、相互の承認および/または試験を経て、広東省内の建築/エンジニアリング企業の申告に関して、登録開業者と認定されるようになるからである。この優遇措置が適用される香港のエンジニア分野は広範囲となり、建築士および建築監督技師から、構造、土木技師(港湾水路)、公的施設技師、化学技師、電気技師に及ぶ。これにより香港の建築士および構造技師の多くが付属文書IX規定の恩恵を受けることとなり、広東省内での起業免許取得を狙うHKSSも同様である。

さらに、相互認定制度に基づいて本土の1級登録構造技師または1級登録建築士の資格を持つ香港の専門職従事者は、2012年4月から本土の同職従業者と同様に広東省で登録開業することが許可され、香港での登録開業の有無を問わず、内国民待遇を受けることになる。

2012年8月末の時点では、建築サービスおよび建築関連サービスで76件のHKSS申請が認可されている。

現行のアクセス範囲 CEPAに基づくHKSSのアクセス範囲

- 本土の1級登録建築技師または1級登録構造技師の資格を持つ香港の専門職は、関連資格要件に従い本土に建設/エンジニアリング設計事務所を設立する際のパートナーを務めることができる。

- 上記の企業には、香港パートナーの本土パートナーに対する比率、香港および本土の出資比率、香港パートナーの本土居住に関する制限は適用されない。

- 相互認定により本土の1級登録構造技師または1級登録建築技師の資格を取得した香港の専門職は、香港での登録開業の有無を問わず、広東省で登録開業できる。

- 相互認定制度に基づき本土の1級登録建築士または構造技師の資格を持つ香港の専門職は、本土の適用規制に基づき、広東省内のエンジニアリング・デザイン事務所の申告に関して登録開業者と認定される。

- 2013年1月から、試験制度に基づき本土の登録建築士の資格を持つ香港の専門職は、香港での登録開業の有無を問わず、広東省で登録開業できるようになる。広東省内のエンジニアリング・デザイン事務所の申告に関して、これらの香港の専門職は本土の適用規制に従い登録開業者と認定されるようになる。~

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CEPA第9次補充(Supplement IX)-香港サービスへの恩恵

- 2013年1月から、本土の建築監督技師の資格を持つ香港の専門職は、香港での登録開業の有無を問わず、広東省で登録開業できるようになる。広東省内の建築監督事務所の申告に関して、これらの香港の専門職は本土の適用規制に従い登録開業者と認定されるようになる。~

- 2013年1月から、試験制度に基づき(i)登録構造技師、(ii)登録土木技師(港湾水路)、(iii)登録公的施設技師、(iv)登録化学技師、または(v)登録電気技師として本土の施工資格を持つ香港の専門職は、香港での登録開業の有無を問わず、広東省で登録開業できるようになる。広東省内のエンジニアリング・デザイン事務所の申告に関して、これらの香港の専門職は本土の適用規制に従い登録開業者と認定されるようになる。~

- 相互認定制度に基づき本土の建設専門職資格を取得した香港の専門職は、広東省で登録開業でき、同じ専門資格を有する本土の専門職と同等に取り扱われる。

- 外国企業が独自の設計・建築会社を設立できる。

- 独資の設計建築会社の設立を申請するには、中国内で建築士・設計士資格を得た外国人の数が、出願審査条件によって義務づけられた全有資格者数の4分の1未満であってはならず、関連する設計・経験を持つ外国人の数が、出願審査条件によって義務づけられた重要技術スタッフ数の4分の1未満であってはならない。

- HKSSは、独資または合弁の建設/エンジニアリング設計会社を設立できる。

- HKSSが設立する建設/エンジニアリング設計会社および都市計画サービス会社の設立審査では、香港と中国本土両方での実績が考慮される。

- MOC部令第114号「外資系設計・建築会社管理規定」の要件に関して、HKSSは、この要件を満たすために現地の登録専門職を雇用できる。

- 設計・建築の合弁企業または合作会社を設立する際、HKSSの本土側パートナーには、登記資本の比率要件が適用されない。

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- 合弁の設計建築会社の設立を申請するには、中国内で建築士・設計士資格を得た外国人の数が、出願審査条件によって義務づけられた全有資格者数の8分の1未満であってはならず、関連する設計経験を持つ外国人の数が、出願審査条件によって義務づけられた重要技術スタッフ数の8分の1未満であってはならない。

- 合弁の場合、登録資本に対 す る 中 国 本 土 パ ー トナーの出資比率が4分の1未満であってはならない。

- HKSSは、独資の都市計画サービス会社を本土に設立できる。

- HKSSは独資の都市計画サービス会社を設立できる。

- 2名以上のHKSSが設立する合弁都市計画サービス会社の設立審査では、全関係者の香港と中国本土両方での実績が考慮される。

- 本土の登録都市計画資格を持つ香港の専門職は、香港での登録開業の有無を問わず、広東省で登録開業できる。

- 外資系設計建築会社または都市計画サービス会社が雇用する外国人専門家および技術スタッフは、年通算6 ヶ月以上中国本土に居住しなければならない。

- 本土駐在の香港の専門職および技術スタッフについては居住要件を緩和。香港に居住した期間も中国本土内居住期間に算入できる。

~ CEPA付属文書IXに基づく広東省パイロット措置

法務サービス

HKSSの一員である香港の法律事務所は、本土の外国法律事務所とは異なり、CEPAによって本土の法律事務所との提携が許されている。付属文書VIIIのもと、中国本土と香港はさ

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CEPA第9次補充(Supplement IX)-香港サービスへの恩恵

らに協力強化を図り、両地域の法律事務所の提携手続き改善のための手段を探究していくことに合意した。これに続き、付属文書IXでは、香港の法律事務所の駐在員事務所と提携できる本土の法律事務所の最大数を1から3へ増加した。これにより、本土の提携先との提携形態に関して香港の法律事務所に大きな柔軟性が与えられ、本土での事業機会が向上することになる。だが一般的には、こうした提携によって営業する香港の弁護士は、中国法関連の業務に従事できない。

CEPAでは、香港の法律事務所と提携する本土の法律事務所に対する地理的制限は定めていない。また設立後1年以上が経過し、かつ1名以上の設立者が法律業務に5年以上従事した広東省の法律事務所と提携する場合には、さらに提携の柔軟性が拡大された。

付属文書IXの措置は、外国の法律事務所や弁護士に関するCEPA規定とともに、中央政府が本土の法務サービス市場を香港に対して開放することを、他の法律時事務所や弁護士以上に重視していることを示している。その一例として、本土にある外国の法律事務所は中国法関連の業務を行えないが、CEPAに基づき香港居住者は、本土の司法試験を受けて資格を取得し、かつ香港を拠点とする本土の法律事務所で研修を受けるか、本土の弁護士協会が行う1カ月以上の集中訓練を受講すれば、中国本関連の業務に従事できる16。

本土の弁護士資格または法務専門職資格を取得し、弁護士活動を行うための本土の弁護士営業免許証を有する者は現在、本土の弁護士として香港関連の婚姻および相続問題の代理人を務めることが許可されている。また、香港の法廷弁護士は、本土の民事訴訟に公民資格で代理人を務めることができる17。

付属文書VIIIの規定に従い、中国本土当局は、本土の法務専門職資格を取得し、本土の弁護士開業免許証を保有する香港居住者に許可される業務範囲を拡大し、本土における香港居住者および法人関連の民事訴訟において代理人を務められるようにすることを検討することになっている。

新規追加の付属文書措置によって、本土法務サービス市場進出を狙う香港の法律事務所および弁護士のビジネスチャンスが拡大されるであろう。2012年8月末現在、法務サービス分野で18件のHKSS申請が認可されている。また香港の法律事務所6社が本土の法律事務所と提携契約を締結している。

16 「(中国本土で弁護士として営業するための本土法務専門職資格を取得した香港特別行政区およびマカオ特別行政区居住者の審査制度)」に定められるとおり、本土の弁護士としての営業を申請する弁護士は、あらかじめ考査に合格している必要がある。この規定は、本土の弁護士として営業するための要件を満たしていることを確実にするものである。17 民事訴訟法チャプター V、セクション2では、弁護士、当事者の近親者、当事者が所属する関連社会組織または団体に推薦された人物、または人民裁判所に認定されたその他の市民が当事者の「訴訟代理人」として指名されることができると定められている。代理人を指名した人物は、争点の委託と権限の委任を人民裁判所に書面で提出しなければならない。さらに民事訴訟法では、「訴訟代理人」は、調査と証拠収集の権利を有し、訴訟に関連する資料を利用することができると規定している。ただし、弁護士法では、経済的恩恵を目的として、弁護士営業免許証を取得せずに訴訟における代理人活動または依頼人の弁護を行う営業に関わった人物は、違法な法関連業務を中止しなければならないとしている。

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現行のアクセス範囲 CEPAに基づくHKSSのアクセス範囲- 外国法律事務所は本土の

法律事務所と提携できない。

- 本土の法律事務所と提携するには、香港の法律事務所は次の4つの条件を満たしていなければならない。

1.独自の社名、社屋、定款がなければならない。

2.資産が10万人民元以上

3.パートナーが 3名以上(弁護士資格を所有し3年以上の実務経験が必要)

4.提携契約が書面で既定されていなければならない。

- CEPAでは、香港の法律事務所と提携する本土の法律事務所は、設立後3年以上経過していなければならないと規定されている。本土の法律事務所に雇用される常勤弁護士の人数は規定されていない。

- 現在、本土に駐在員事務所を置く香港の法律事務所は、地理的制限なしに本土の法律事務所1社と提携できる。

➢ 地理的制限は課されていない。

➢ �設立後設立後1年以上が経過し、かつ1名以上の設立者が法律業務に5年以上従事した広東省の本土法律事務所と提携して営業できる。

- 付属文書VIIIでは、中国本土と香港はさらに協力を強化し、両地域の法律事務所の提携手続きを改善するための方法を探究する規定されている。

- 2013年1月から、本土に駐在員事務所を置く香港の法律事務所は、地理的制限なしに本土の法律事務所1 〜 3社と提携できる。

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CEPA第9次補充(Supplement IX)-香港サービスへの恩恵

- 外国法律事務所は中国法の業務を行えない。

- 中国公民の香港居住者は、本土の司法試験を受験できる。

- 本土の法律事務所で1年間の研修を受ける本土の法律専門職資格を取得した香港居住者は、弁護士としての営業を申請できる。#

- 研修は、香港に設置された本土法律事務所の支社で受けることができる。

# 「実務訓練概要」および「実務訓練ガイドライン」に準拠

- 実務経験が5年以上あり、かつ本土の司法試験に合格した香港の弁護士は、本土の弁護士協会が実施する1 ヶ月以内の集中訓練を受けることができる。この訓練を受け、考査に合格すれば、本土での弁護士としての営業を申請できる。##

##「中華人民共和国弁護士法」および全中国弁護士協会の法務申請のための研修管理規則(暫定規則)」に準拠。

- 香港の法廷弁護士は、本土の民事訴訟において公民資格で代理人を務めることができる(本土当局が必要な実施規則および要件を制定中)。

- 付属文書VIIIでは、中国本土当局は、本土の法務専門職資格を取得し、本土の弁護士開業免許証を有する香港居住者に許可される業務範囲を拡大し、本土における香港居住者および法人関連の民事訴訟において代理人を務められるようにすることを検討すると規定されている。

- 外国法律事務所の駐在員事務所:毎年6カ月の駐在が義務づけられている。

- 香港法律事務所の駐在員事務所の駐在員は、駐在義務を免除されている。

職業紹介・職業仲介サービス

中国本土で職業紹介業務を行なう他国の事業者に比べて、職業紹介分野に従事するHKSSは、本土において独資の職業紹介・仲介会社を設立できるため、CEPAによって巨大な中国本土市場への参入がより柔軟に行なえるようになっている。広東省パイロット措置によ

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り、広東省で職業紹介会社を設立する際の最低資本金要件は、2009年より本土の他地域での設立に必要とされる12万5,000米ドルから10万人民元へ大幅に引き下げられ、HKSSは内国民待遇を受けることとなった。

付属文書IXでは、この優遇措置を2013年1月より広東省のみから北京、天津、上海、重慶の4直轄市と江蘇および福建の2省へ拡大し、独資の職業紹介・仲介会社を設立する際にHKSSに課せられる最低登録資本は、それら地方自治体および省で本土企業に適用される要件(10万人民元)と同じく適用される。この規制緩和によって、HKSSは広東省以外の本土市場でも市場進出を加速できるようになる。

参入規制の引き下げや内国民待遇のおかげで、近年、職業紹介・職業仲介サービス分野で認可されるHKSSの申請件数が急増している。2012年8月末現在、これら分野で78件のHKSS申請が認可されている。この認可件数は、輸送・物流、流通、航空輸送、広告、建設に次いで6番目に多い。

現行のアクセス範囲 CEPAに基づくHKSSのアクセス範囲

- 外国企業は中国本土に独資の職業紹介法人を設立できない。

- 中国本土に合弁による職業紹介・仲介法人を設立する際の最低登録資本は30万米ドルとする。

- 外国企業の出資比率は25%以上49%以下とする。

- HKSSは中国本土に独資の職業紹介法人を設立できる。

- 最低登録資本は12万5,000米ドル。

- HKSSが広東省内に職業紹介・仲介法人を設立する際の最低登録資本は、広東省内の中国本土企業と同じとなる。

- 2013年1月から、HKSSが独資の職業紹介法人を(i)北京、(ii)天津、(iii)上海、(iv)重慶の4直轄市および(v)江蘇、(vi)福建の2省で設立する際の最低登録資本は、それら地方自治体および省の中国本土企業に適用される基準と同じとする。

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CEPA第9次補充(Supplement IX)-香港サービスへの恩恵

- 中国人力資源・社会保障部が承認した人的資源サービス産業団地にHKSSが人的資源サービスサプライヤーを設立する際の最低登録資本には、産業団地所在地の地方自治体が本土企業に適用するのと同じ基準が適用される。

コンピュータおよび関連サービス

HKSSは、ソフトウェア展開およびデータ処理サービス分野における他の外資系サービスサプライヤーと比較すると、同サービスの独資企業の設立が許可されている。ソフトウェア展開サービスとは、一般向けとカスタマイズの両方を含むソフトウェアの開発と展開に関するあらゆるコンサルティングサービスを指す。それに対してデータ処理サービスとは、入力準備、データ処理および表作成、タイムシェアリング、その他のサービスを指す。

付属文書IXはHKSSに新たな事業分野を開放し、2013年1月から本土でデータベースサービスを提供する合弁企業の設立を可能とする。この企業の株式保有率は50%に制限される。ただし許可される事業範囲は、インターネットデータセンターサービス、保管・転送サービス、コンテンツサービスに限定される。WTOの公約のもと中国は、ソフトウェア展開およびデータ処理サービスのみを適用範囲とし、データベースサービスは適用外とした。

データベースサービスのほかにもHKSSは、前海および横琴地区における越境データベースサービスの提供を試験的に許可される。これは前海地区の事業インフラストラクチャー開発の大幅推進に同調するものである。

現行のアクセス範囲 CEPAに基づくHKSSのアクセス範囲

- ソフトウェア展開分野では、外資が株式の過半数を持つ合弁企業が許可されている。

- データ処理分野では、外資が株式の過半数を持つ合弁企業が許可されている。

- HKSSは、本土で独資企業を設立してソフトウェア展開サービスを提供できる。

- HKSSは、本土で独資企業を設立してデータ処理サービスを提供できる。

- 2013年1月から、HKSSは本土で合弁企業を設立してデータ処理サービスを提供できるようになる。ただし、株式保有率は50%に制限される。

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- 2013年1月から、HKSSには前海および横琴地区での越境データベースサービスの提供が試験的に許可されるようになる。^

^ CEPA付属文書IXの前海パイロット措置

印刷サービス

CEPAは、香港のサービスサプライヤーが本土市場へ参入するにあたって、障壁の引き下げを促す。他の外国企業が梱包材向け印刷サービスを提供する印刷会社を設立するには、1,000万人民元の最低資本要件が課せられるのに対し、香港の会社が同サービスの企業を設立する際の最低資本要件は、1,000万人民元よりも大幅に低い150万人民元と優遇されている。

現在、出版物とその他印刷物の印刷サービス分野ではHKSSはマイノリティ出資の合弁企業を本土で設立できるが、前海および横琴地区においては株式保有率70%以下の過半数所有企業の設立が許可される予定である。

現行のアクセス範囲 CEPAに基づくHKSSのアクセス範囲

- 外国企業には、出版物およびその他の印刷物の印刷分野でマイノリティ出資の合弁企業が許可されている。

- HKSSは、出版物およびその他の印刷物の印刷事業において合弁企業を設立できる。HKSSによる株式保有率は49%を超えてはならない。

- 2013年1月から試験的措置として、HKSSは前海および横琴地区で出版物およびその他の印刷物の印刷事業の合弁企業を設立できるようになる。HKSSによる株式保有率は70%を超えてはならない。^

- 梱包材の印刷業務を行う印刷企業の設立に必要とされる最低登録資本は、1,000万人民元である。

- HKSSは、梱包材の印刷および製作を行う独資企業を設立することが許可されている。

- 最低登録資本は、本土企業に適用される要件と同じく、150万人民元である。

- - HKSSは本土において、製版および製造サービスの独資、合弁または合作会社を設立して、書籍の校正、デザイン、植字といった出版前工程サービスを提供できる。

^ CEPA付属文書IXの前海パイロット措置

個人所有店

中国政府は、外国人経営の個人所有店(IOS)に関して、WTO加盟の際の議定書でいか

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CEPA第9次補充(Supplement IX)-香港サービスへの恩恵

なる開放にも言及していない。したがって、CEPAのIOS規定は、香港居民の起業家精神と本土進出を促す重要な措置といえる。IOSの設置手続も合理化され、外資に適用される承認手続が不要になった。また、香港住民により優れた投資機会を提供するために、本土市場の成長に伴い、香港永久居民がIOSを通じて本土で従事できる分野が2004年にCEPAの第1段階が施行されて以来大幅に拡大された。

CEPA付属文書IXでは、通商ブローカー /コミッションエージェンシー、農作物の初期処理サービス、企業式典サービス、個人商業サービスの4つの新分野が追加された。これにより中国公民資格を持つ香港永久居民は、計37の分野で本土にIOSを設置できるようになった。

またCEPA付属文書IXからは、IOSの従業員数と事業所面積の制限が撤廃される。さらに、広東省でIOSを設立する、中国公民資格を持つ香港永久居民に対する身元証明の要件も撤廃となる。これらIOS経営条件の緩和によって、より多くの香港の起業家がCEPAの恩恵に浴するようになるだろう。

現行のアクセス範囲 CEPAに基づくHKSSのアクセス範囲

- 中国のWTOに対する公約には、外国人による本土での個人所有店経営の許可が含まれていない。

- CEPAに基づいて、中国公民である香港の永久居民だけが、外資としての認可手続を適用されることなく中国本土のどの省・都市にも以下のサービスを行なう個人所有店を開設できる(フランチャイズを除く)。

(1)小売(2)食品およびケータリング(3)理髪(4)美容・ヘルスケア・サービス(5)浴場(6)家電・日用品修理(7)製品・技術輸出入(8)DPE(9)クリーニングおよび染色(10)自動車修理整備(11)作物栽培(12)畜産(13)水産養殖

(14)コンピュータ修理(15)技術交換・促進サービス(16)コンピュータ・サービス(17)ソフトウェア・サービス(18)陸運貨物輸送(19)その他の輸送サービス(国際配送・宅配を除く)(20)倉庫・保管サービス(21)業務翻訳・通訳サービス(22)ビル清掃(23)広告制作(24)個人診療所(25)経済・貿易コンサルティングサービス(26)経営コンサルティングサービス(27)卸売(繊維製品、衣料、日用品、文房具、スポーツ用品、他の文化関連商品に限定)

(28)結婚サービス(結婚相手紹介サービスは除く)(29)コミック、電子アニメーションゲーム、アニメーション音響・映像製品のレンタル/リース(広東省の事業範囲には住宅のリース・賃貸以外のほとんどの製品が含まれる)(30)獣医サービス、ペット診療所(都市部のみ)(31)商品詰

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め合わせ、小分け、包装・ラベル貼付・ギフトラッピングを含む包装サービス(32)看板、トロフィー、銘板、メダル、絹製バナーのデザインおよび制作を含むオフィスサービス(33)レジャー・娯楽目的の工芸(34)通商ブローカーおよびコミッションエージェンシー(オークションを除く)

(35)農作物の初期処理サービス(植物油脂、米および小麦粉の処理、主食製品の購入および種綿の処理)(36)企業式典サービス:オープニングセレモニー、祝賀会およびその他の主要行事(37)個人商業サービス:個人イメージデザインサービス、個人活動の組織サービスおよびその他の個人的商業サービス。

流通サービス

CEPAは、すでに開放が進んでいた中国本土の流通市場のさらなる参入障壁撤廃に大きく貢献した。WTOの公約に従い、本土政府は2006年12月に流通サービス分野の外資参入に対する制限を、1項目を除いて全廃した。廃止されなかった項目は、外国企業1社が中国で30店以上を経営し、それらの店舗で医薬品、農薬、マルチングフィルム、化学肥料、植物油、食用糖、木綿を取り扱う場合に、外国人株式持分比率を49%以下に制限する規制である。

これに対して香港企業の場合、CEPAに基づき、別のサプライヤーから仕入れた別ブランド製品である場合、独資会社を通じて上記品目を販売できる。またCEPA付属文書IXには、広東省で50店以上を経営し、複数の供給者から仕入れた異なる種類およびブランドの製品

(マルチングフィルム、化学肥料、植物油、食用糖を含む)を販売するHKSSに、広東省で独資小売店の経営を許可する広東省パイロット措置が含まれている。これらの措置は、香港の大手小売企業にさらに大きな柔軟性を与え、本土、特に広東省での積極的事業拡大を促すためのものであり、民間消費需要の拡大を重視した本土政府の第12次5カ年計画の経済戦略に沿っている。

専門職資格の相互認定および資格試験

CEPAによって香港企業が中国本土で従事できるサービス分野が拡大されただけでなく、専門職資格の相互認定や香港居住者による本土の資格試験の受験許可を通じて、本土のサービス市場に進出する香港の専門職や居民に対する許容範囲も拡大された。

CEPA付属文書IXで本土と香港は、本土の不動産鑑定人と香港の一般測量士の専門資格について、また、本土のコストエンジニアと香港の建築積算士の専門資格について、相互認定を継続することに合意した。

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CEPA第9次補充(Supplement IX)-香港サービスへの恩恵

また既存のCEPA規定に基づき、香港永久居民は、本土のさまざまな専門職および技術職の資格試験を受験することができる(医療、薬剤師、法律、保険、建設、不動産評価、経理分野など)18。

▪製品貿易

最新動向

本土政府は、2006年1月に施行されたCEPA付属文書IIに基づき、中古電気機器・医療器具、化学廃棄物、生活廃棄物、虎の骨、サイの角などの禁止品目を除くすべての香港原産製品にゼロ関税を適用した。ただし、対象品目がゼロ関税の適用を受けるにはCEPAの原産地規則を満たしていなければならない。CEPA原産地規則がまだ合意されていない品目に関しては、域内製造業者の要請を受け、香港政府が毎年2度、本土政府との協議を開始することになっている。

2012年4月以前は、特定の香港製品は、付加価値コンテンツ要件を満たさなければCEPAの原産地規則に基づいて香港原産と認められなかった。2012年4月からは、CEPA付属文書VIIIに基づいて付加価値コンテンツを算出する際に本土原産の原料および構成部品の価格を算入することが許可される。ただし、算入が認められるのは、付加価値コンテンツの半分(15%)までである。この新措置は、CEPAに基づく香港製品のゼロ関税待遇を利用する香港のメーカーの増大に貢献するものである。

2004年のCEPA施行から2012年6月末までの間に中国本土および香港政府は、計1,732品目の原産地規則に関して合意に達した。2012年7月から、CEPAに基づくゼロ関税適格品目リストに新たに7品目が追加された。これによりCEPA原産地規則の適用をうけ、ゼロ関税の適用を受ける品目が1,732品目から1,739品目に増大した。

追加されたのは一部の鮭、ソーセージ、パスタ、穀物製品、尿素、合成または模造の貴石または半貴石、そしてサファイアである。2011年の香港のこれら7品目の本土向け地場輸出額は約200万香港ドルであった。今後、ゼロ関税の適用によりこれら7品目の本土向け地場輸出はますます増大するであろう。ゼロ関税が適用されない場合、これら品目には0%から50%の関税が課される。

18 これにはほかに、以下の資格試験が含まれる。建築士、構造技師、土木技師(地質)、建築監督技師、積算技師、都市計画士、不動産取引士、安全技術者、原子力安全技術者、建築施工士、施設技師、化学技師、土木技師(港湾水路)、施設監督技師、環境アセスメント技師、不動産鑑定人、電気技師、会計簿記、会計士補、公認会計士、税理士、資産鑑定人、歯科技工士、採掘権評価人、コンサルティングエンジニア、国際ビジネス士、土地登記代理士、宝石鑑定人、翻訳者、コンピュータ技術およびソフトウェア。

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新たにゼロ関税が適用される香港原産の7品目

本土の2012関税コード

品目の説明 現行関税率(%) 2012年の香港からの本土向け地場輸出額(100万香港ドル)

0305 4110 大西洋産鮭の燻製製品(食用の内臓を除く)

14 0

1601 0020 その他のソーセージおよび類似製品

15 0

1902 3090 その他のパスタ 15 0

1904 9000 その他の穀物製品 30 0

3102 1000 尿素(水溶液または非水溶液)

4, 50 0

7104 2090 その他の合成または模造の貴石または半貴石

(未加工、単純カット、または研磨前)(ダイヤモンドを除く)

0 0

7104 9012 サファイア(工業用) 1, 6 2出典:中国税関、香港政府統計処

香港原産製品にとってのコスト削減

ゼロ関税の適用は、香港の中国本土向け地場輸出のコスト削減という直接的利益を即座にもたらす。2004年1月から2012年7月にかけてCEPAの各段階で総額430億香港ドル強の製品に相当する計85,750件の香港原産地証明書(CEPA)が発行された。最大の受益産業は食品・飲料であり、それに繊維・衣料が続く。他の主要受益産業には、プラスチック・プラスチック製品、医薬品、化学品、ベースメタル、着色剤、紙・印刷物などがある。

原産地証明を受けた香港原産品の内訳(2012年7月31日現在)

製品の種類 原産地証明書の発行件数食品・飲料 21,108織物・衣料 20,399プラスチック・プラスチック製品 16,270医薬品 9,842化学品 5,077ベースメタル製品 4,032着色剤 2,906

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CEPA第9次補充(Supplement IX)-香港サービスへの恩恵

紙・印刷物 2,686電機・電子製品 1,486時計・腕時計・時計部品 695宝飾品・貴金属 621光学・写真・映画機器および部品 397皮革、毛皮 305機械類・機械装置 253食品残渣・飼料 173化粧品 140測定検知装置および部品 50家具 1医療機器およびマッサージ機器 1玩具・ゲーム・スポーツ用品 1その他 5合計 85,750

注記: 複数品目に対して発行された原産地証明があるため、合計件数は各項目の合計数を下回る。出典: 香港工業貿易署

ゼロ関税が適用される品目が2004年の374から2012年7月現在の1,739と急激に拡大されたことから、香港の対中国本土国内輸出に占めるCEPA適用品目の比率が3パーセントから37パーセント超まで拡大した。

CEPA適用品目の輸出高および香港の対本土輸出に占める比率

年 輸出高(100万香港ドル) 対本土輸出高に占める比率

国内輸出に占める比率

2004 1,150 3.0 0.9

2005 2,366 5.3 1.9

2006 3,254 8.1 2.4

2007 4,430 10.9 4.1

2008 4,819 13.9 5.3

2009 5,447 20.4 9.4

2010 7,158 22.9 10.3

2011 8,870 28.9 13.5

2012(1月-7月)

5,490 37.2 16.6

出典: 香港工業貿易署、香港統計局

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▪CEPA付属文書IX措置 ― その意義と展望

CEPAは、両地域間の協力関係を多数の貿易および投資奨励措置を通じて強化しながら、香港が本土当局を香港・本土間の製品・サービス貿易の自由化に取り組ませるための有効なメカニズムであることが実証された。

これまでのCEPA付属文書と同じように、2012年6月に発表されたCEPA付属文書IXには、サービス貿易のさらなる自由化、参入障壁の軽減、またHKSSおよび香港の専門職、居民が、伝統的な4大支柱産業にしろ、あるいは6大新産業にしろ、本土市場により容易に参入できるようにするための建設的かつ柔軟な環境の創出を目的とする措置が盛り込まれている。その一例として、医療分野に参入するHKSSには、本土での医療施設の設立の際に地元企業と同等の要件が適用されるという内国民待遇が与えられる。

CEPAは、このような産業の持続的発展に貢献するだけでなく、香港と本土の経済・貿易統合や専門職の交流を加速する。特に付属文書IXには、すべてのCEPA自由化措置のほぼ半数にあたる17件もの広東省および前海地区の大規模パイロット措置が含まれる。広東省パイロット措置の実施は、香港サービスの直接的な市場として広東省を積極的にターゲットにすることを支援することによって、これまで香港経済に大きな利益をもたらしてきた。

広東省パイロット措置が重要であることは、第12次5カ年計画においてPRDのさらなる自由化と広東省と香港の協力拡大に丸1章が割かれていることを見れば明らかである。またこうした方針は、2011年8月に香港を訪れた際に李克強副首相が述べた、第12次5カ年計画の期間末までに本土・香港間のサービス貿易を基本的に自由化すべきだという発言にも表れている。広東省政府による2012年9月中旬の発表では、広東省は中国内の他地区に先駆けて、サービス分野における香港との自由貿易を2014年末までに達成するよう努力していくことを明らかにした。2013年から2014年には広東省パイロット措置の拡大が期待されており、最終的には香港との自由貿易協定につながるものと見られる。

CEPAは香港の中小企業と個人事業主に大きな期待を寄せている。2012年4月に実施された付属文書VIIIではHKSSの定義が改定され、本土での事業範囲と柔軟性が広がることになる。個人所有店(IOS)という事業形態に新規サービス分野が加えられたほかにも、付属文書IXでは、中国公民資格を持つ香港永久居民が、広東省でIOSを設立する際に必要とされていた身元証明要件が撤廃される。また、IOSの従業員数と事業所面積の制限も撤廃の対象となる。IOS経営条件の緩和によって、より多くの香港の起業家がCEPAの恩恵に与れるようになるだろう。

製品貿易に関しては、ゼロ輸入関税措置によってブランド、デザイン、品質、技術面で付加価値の高い製品や、知的所有権の価値比率の大きい製品に対する投資やそのような製品の生産施設が香港に誘致される可能性がある。また付加価値コンテンツ要件の改定や原産地規則に関する香港と本土の年2回の協議によって、現在まだ香港で生産されていない製

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CEPA第9次補充(Supplement IX)-香港サービスへの恩恵

品の製造を計画中の投資家にさらに大きな柔軟性が与えられることになるであろう。

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