対称形断面曲げ梁のせん断応力分布とせん断剛性に逆比例す...

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  • 対称形断面曲げ梁のせん断応力分布とせん断剛性に逆比例するせん断変形

    SHEAR DEFORMATION IN INVERSE PROPORTION TO SHEAR RIGIDITY AND SHEAR STRESS DISTRIBUTION OF BENDING BEAMS WITH SYMMETRIC CROSS SECTIONS

    日置 興一郎∗,村田 賢∗∗

    Koichiro HEKI and Masaru MURATA

    The purpose of this paper is to describe the theoretical analysis for the shear stress distribution and the shear deformation with warping of orthotropic elastic beams of symmetrical cross sections. Especially, the shear deformations proportional to the shear force and inverse proportional to the shear modulus without minor terms in relation to bending stress in a Poisson's ratio is analyzed in this paper. For this purpose, introducing in-plane rigidity of the cross section with infinity, a number of degree of freedom of analytical models decrease considerably, and as a result the analysis is became easy. Thus, the general analysis technique about the symmetrical cross section of beams was able to be proposed by using this method. Furthermore, it is proved that assumption of the shear stress uniformly distributed along the horizontal direction of the cross section is equivalent to deal with the beam of = ∞zxG , the upper and lower bound of the shear deformations are obtained by applying to this model. As the example, the solutions of circular and square rhombic cross sections of beams, which are the shear stress distribution, the warping deformation and coefficients of Timoshenko’s berm, are shown.

    Keywords : shear deformation on beam, shear stress distribution of beam section, symmetrical cross sections, in-plane rigidity of the cross section with infinity, orthotropic elasticity, circular cross section

    梁のせん断変形,梁断面でのせん断応力分布,対称断面梁、横断面内剛、直交異方性弾性、円形断面

    1.はじめに 現在、曲げ梁断面上のせん断応力分布について、「せん断力作用

    方向に直交する線上で、せん断応力が一様である」と仮定した釣合

    条件より誘導した式を載せている図書が多い 1),2)。しかし、せん断

    応力の水平成分には触れておらず、等方性弾性の長方形断面梁以外

    の一般断面形では、ひずみ適合にも疑問がある。また、上記一様仮

    定から導かれたせん断変形の係数も検討を要する。 梁のせん断変形には、せん断力に比例し、せん断剛性に反比例す

    る主要項の他に、断面方向と軸方向との相関ポアソン比が関係し、

    軸方向伸び剛性に反比例する項が存在する 3)。Timoshenko は断面内応力が零であると仮定してポアソン比の効果を入れているが 4)、

    本論文では、上記の相関ポアソン比に関係するせん断変形項は、そ

    の割合が小さいとして省略し、せん断力に比例し、せん断弾性係数

    に反比例するせん断変形の主要項に集中して論じる。具体的には、

    対称形断面の直交異方性弾性梁に、論文 3)の第 2 段階で示された横断面内剛モデルを適用し、梁内の変形自由度を低減させて、反り変

    形に関する方程式を求める。また、この方程式に対する解析手法に

    ついても述べる。 断面上のせん断弾性係数が、直交異方性の場合と幅方向の弾性が

    無限大の場合の解法を示した後、幅方向にせん断応力一様仮定の物

    理的意味と問題点を検討する。最後に、一般対称断面に対する解析

    手法の適用例として、円形断面と正方形菱形断面の場合の解を求め、

    幅方向に剛のモデルの解とを定量的に比較する。 2.記号・技術用語の定義 本論文で使用する主な記号を示す。特定方向の関数であることを

    強調する際には、記号にその座標 ( )x を付ける。座標系 , ,( )x y z :原

    点を梁横断面の図心に置き(図 1)、軸方向に x 、せい方向に y 、幅方向に z を採る直交座標系とする。 , , , , , , , ,( ) ( ) ( )u x y z v x y z w x y z :各々

    , ,x y z 方向変位、 , ,, , ,x y zx y z¶ = ¶ ¶ ¶ = ¶ ¶ ¶ = ¶ ¶ :偏微分演算

    子、 2b y g y( ) ( )= :梁幅、 = ± ( )z g y で断面外周の形状を示す。また

    A:断面積、I :断面二次モーメント、 ( )S y :断面 1 次モーメント、

    0u : x 方向平均変位、j : z- 軸周りの断面の平均回転角を示す。

    ここで、 x 方向平均変位 0u と平均回転角 j は次式で表される。

    断面の反り変形 u を、式(3)と(4)を満足する式(2)で定義する。この u は断面上の軸方向変位 u から剛体変位を除いた変形である。

    (1)

    ∗ 工博 Dr. Eng.

    ∗∗名城大学理工学部建築学科・教授・工博 Prof., Dept. of Architecture, Faculty of Science and Technology, Meijo Univ., Dr. Eng.

    0 2,

    udA uydAu

    dA y dAj= =∫ ∫

    ∫ ∫

  • 梁のせん断ひずみ bg は次式で与えられる。

    また、 ,( ) ( )Q x M x は、それぞれ梁のせん断力と曲げモーメントを、

    ,yx zxG G はせん断弾性係数、 ,yx zxt t は断面上のせん断応力、 xs は

    軸方向応力を示す。 梁のせん断変形とせん断力との弾性関係は、せん断弾性係数が断

    面上で等方性の場合には、Timoshenko 梁のせん断変形の係数 kを用い、次式で示される。

    3.解析仮定 解析対象の梁は、図 1 の材軸方向に一様で、断面形を ( )z g y= ± で

    示す y 軸に対称な形状とする。材料は横断面内剛性無限大と仮定し、

    図心原点の材軸・せい方向を座標系とする直交異方性弾性とする。

    また、荷重は 0z = 面内に、 y 方向にのみ作用するものとする。 上記の仮定より、せん断力が y 方向にのみ生じ、断面が対称形で

    あることから、せん断応力分布は式(7)の対称性を有する。断面内剛の仮定より z 方向変位 w は生じず、 y 方向の変位 v は式(8)のように断面上で一様となる。また、梁のせん断ひずみ bg は式(5)となる。

    以上のように、梁微小長さdx における梁要素の変形自由度は、伸

    びと曲げひずみの他、せん断ひずみと断面の反り変形とに縮小され

    る。また、せん断応力分布は後者の二つから導くことができる。

    4.支配方程式と境界条件

    4.1 材料の弾性性質と力学則

    直交異方性弾性則では、直応力-伸びひずみ関係とせん断応力-

    せん断ひずみ関係は分離され、次式となる。

    横断面内剛では、弾性係数 , ,y z yzE E G とひずみ , ,y z yze e g が式

    (11)となり、また、ポアソン比 , ,( )yx zxn n ×× は零となる。結果、有限値の弾性係数は , ,x yx zxE G G のみとなる。

    弾性則(9)と(10)は、上記の横断面内剛では次式に縮小され、

    さらに、断面上で等方性の場合、せん断弾性係数は次式となる。

    ひずみ‐変位関係は零ひずみに関する項を除くと

    また、式(12)と(14)より、変位で応力を表すと次式が得られる。

    微小要素の軸方向の釣合は、物体力を零とすると次式となる。

    4.2 荷重と境界条件

    解析仮定から、荷重は図心を通る y 方向の力のみである。釣合条

    件は次式で与えられ、軸方向応力 xs は式(18)となる。

    断面力であるせん断力Q は、y 方向せん断応力 yxt を断面全体で積

    分して式(19)で、また微小長さ dx で y より外の部分における x 方向釣合条件は式(20)で与えられる。

    次に、梁断面周辺の境界条件を求める。断面内応力 , ,y z yzs s t は、

    対応するひずみが式(11)のように零であることから、せん断応力分布と反り変形には関与しない。従って、境界面法線が y 軸となす角

    を q とすると、応力境界条件は、x 方向表面せん断応力 xt が零であ

    る、次式のみとなる。

    上式を書き換えると次式が得られ、同式よりせん断応力ベクトル

    は断面境界の接線方向にあることが分かる。

    4.3 支配方程式

    軸方向の力の釣合から、反り変形に関する微分方程式を誘導する。

    梁の軸方向応力は曲げモーメントで決まり、その軸方向増分はせん

    断力Q と y に比例する。釣合式(16)に、式(17)と(18)を考慮すると

    次式を得る。 上式に式(2)と(15)を代入すると、反り変形を支配する微分方程式が次のように得られる。

    せん断応力は、式(15)に式(2)と(5)を代入すると、次式となる。

    境界条件として、式(22)に上式を代入すると次式が得られる。また、反り変形 u から剛体回転を除くという条件(4)も同時に考慮し、下式と連立となる。

    後は、上記 2 つの条件を考慮して支配方程式(24)を解き、未知関

    xdM M

    Q ydx I

    s= =

    1 1 0 0

    1 10 0

    11 0 0

    xy xz

    x y z yxyxx x

    yx yzy y yz

    x y z yzz z zx

    zyzxzxx y z

    E E E G

    E E E G

    GE E E

    n n

    ge sn ne s g

    e s gnn

    - - = - - = - -

    yx

    yz

    zx

    t

    t

    t

    (4)(3)

    (2)

    (6)

    (7)

    (8)

    (9) (10)

    (11)

    (12)

    (13)

    (14)

    (15)

    (16)

    (17)

    (19)

    (18)

    (20)

    (21)

    (22)

    (24)

    (23)

    (25)

    (26)

    (5)

    , ,x x x yx yx yx zx zx zxE G Gs e t g t g= = =

    yx zxG G G= =

    図1 梁の形状と座標、変位

    x

    z

    y

    uv

    w

    j z

    y

    ( )g y

    q

    座標 変形 断面形

    bQGA

    g k=

    , , , , ,, , , , , , ,

    yx yx zx zxy z y z y z y z

    w y z u y z u y z v x y z v x

    t t t t( ) ( ) ( ) ( )( ) 0 ( ) ( ) ( ) ( )

    = - = - -

    = = - =

    0y z yz y z yzE E G e e g= = = = = =

    , ,x x yx y x zx zu u v ue g g= ¶ = ¶ ¶ = ¶

    , ,( )x x x yx yx y x zx zx zE u G u v G us t t= ¶ = ¶ ¶ = ¶

    0x x y yx z zxs t t¶ ¶ ¶ =

    yxdA Qt = ,( )

    ( )( ) ( )

    z g y

    yxz g y

    Qy z dz S y

    It

    =

    =-=

    sin cos 0x zx yxt t q t q= =

    cos ( )sin

    zx

    yx

    dg ydy

    t qt q

    = - =

    x x y yx z zxd M Q

    y ydx I I

    s t t¶ = = = -¶ -¶

    2 2yx y zx z

    QG u G u y

    I¶ ¶ = -

    ( )yx yx y bG ut g= ¶

    zx zx zG ut = ¶

    ( )( ) 0zx z yx y b

    dg yG u G u

    dyg¶ - ¶ =

    ( ) ( )b xx v xg j= ¶

    0

    0 0

    u u u y

    udA uydA

    j=

    = =

  • 数 u と未知変数 bg を求める。この u と bg を式(25)に代入することで、せん断応力分布が定まることになる。 4.4 せん断応力分布と梁のせん断変形

    せん断ひずみ bg は、エネルギー法を用いることで、次式より求め

    られる 1)。

    さらに、上式を少し変更すると ここで、 a を式(30)とすると、 yx zxG G¹ の場合、Timoshenko 梁のせん断変形の係数 ,( )y zk k が得られ、次式のようにふたつとなる。 また、せん断弾性係数が等方性の場合には、等方性の条件(13)を考慮すると、支配方程式(24)と境界条件(26)は次式となる。

    梁のせん断変形の係数は、式(33)と式(27)より式(34)となる。

    4.5 支配方程式の解析手法

    4.5.1 一般論と非同次解

    反り変形を支配する微分方程式(24)の完全解は、一つの非同次特解、例えば式(35)の pu に、同次方程式(36)の解 hu を加えた一般解で、境界条件を用いて、未定定数などを定めて得られる。

    4.5.2 同次方程式の多項式による解 5)

    同次方程式の解 hu を次の多項式で表す。

    上式を同次方程式(36)に代入すると、

    となり、後は境界条件によって係数 ,m na を求めることになる。ここで、式(38)右辺の{ }中の 2 項は変数 ,y z の同次式となり、式(38)を常に満たすために係数の和は零となる。結果、 2, 2p m q n= − = + の

    係数 ,p qa と ,m na には、式(40)の従属関係が生じる。

    上記の関係を式(37)に代入すると、 m n+ が偶数の項と奇数の項とに分離し、上記の従属関係より、式(37)の係数 ,0ma と ,1ma を独立変数として、同次方程式の解が次式で表される。

    ここで、 / 2l m= で、 l は整数を採り、 ,βr m j は次式となる。

    式(41)の同次解の低次項を次に示す。断面形が左右対称の時、z は

    偶数べき項のみ、上下対称の時、 y は奇数べき項のみとなる。

    4.5.3 境界条件を満たす一般解の近似(point matching 法) 同次方程式の解を求めるために、係数 ,0 ,1,m ma a 及びせん断変形の

    係数 kを決定する必要がある。最初に、境界上に採用した独立係数

    の数と同一数の点を選択し、その点で境界条件式(26)を求める。次に、式(4)を加えた連立代数方程式を解いて未知係数を求め、境界条件を満たす反り変形を決定する。具体的な手法は例題で示す。 5.幅方向のせん断弾性係数が無限大の場合 ( )= ∞zxG

    梁幅方向のせん断弾性係数 zxG が無限大のとき、式(14) 及び(15)より次式が成立し、幅方向に軸方向変位 u は一様となる。

    上式より u が y のみの関数になり、結果、せん断応力 yxt も幅方向

    に一様となり、式(20)から式(45)が成立する。せん断変形の係数も ykのみとなり、式(46)となる。以後、本節の解には添え字 c を付ける。

    せん断応力 ,zx ct は、釣合式(23)に式(45)を代入すると、

    となり、ここで、式(7)と次の関係を考慮し、

    式(47)を積分することで得られる。

    次に、反り変形 cu は、式(25)に式(45)を代入することで、

    となり、積分すると次式として求められる。

    ここで、上式の積分定数C は、上下対称断面形では零となる。

    , ,

    2

    2

    ( ) ( )( )

    ( ) ( )yx c y cQ S y A S y

    y dAI b y b yI

    t k = =

    (28)

    (29)

    (31)

    (30)

    (32)

    (33)

    (34)

    27( )

    (44)

    (45)

    (35)

    2 21( ) 0∂ + ∂ =y z hua(36)

    (37)

    (38)

    ,= ∑∑ m nh m nu a y z

    (39)2 2, ,( 1)( 1) m n p qm n p q

    q qm m a y z a y z− −

    −− +

    α

    2, 2 ,( 1)

    ( 1)( 2)α

    − +−

    = −+ +m n m nm m

    a an n (40)

    ,0 0 , ,1 1 ,0 1 1

    ( ) ( )l l

    m mh m m j m m j

    m j j

    u a y a y z = = =

    =

    2 2,

    1

    ( 2 2)( 2 1)( 2 )( 2 1)

    αβ − +=

    − − + − +=

    + + − ∏j

    m j r jr m j

    k

    m k m ky z

    r k r k

    (41)

    (42)

    2 2 2 30,0 0,1 1,0 1,1 2,0 2,1

    3 2 3 3 4 2 2 2 43,0 3,1 4,0

    24 2 3 5 5 3 2 2 4

    4,1 5,0

    33 6

    2 10 55

    ( ) ( )

    ( ) ( ) ( )

    ( ) ( )

    hu a a z a y a yz a y z a y z z

    a y yz a y z yz a y y z z

    a y z y z z a y y z yz

    aa

    a a a a

    aa a a

    = - -

    - - -

    - - × ×(43)

    ,( )( )z zx c y yx y

    Q Q S yy y

    I I b yt t

    ∂ = − − ∂ = − + ∂

    (46)

    (47)

    0( ) ( ( ) ) ( )y

    y y yS y b y ydy b y y∂ = ∂ = −∫

    , 2 20( ) ( )( ) ( )

    ( ) ( )z

    zx c y yQ S y Q S y

    b y dz b y zI Ib y b y

    t = ∂ = ∂

    (48)

    (49)

    , ( ) ( )( ) ( )

    ∂ = − = − = −

    yx cy c b

    yx yx yx yx

    Q S y Q Q A S yu

    G G I b y G A G A I b y

    tg k k

    0( )( )( )

    = − +

    ∫y

    cyx

    Q A S yu y dy C

    G A I b yk (50)

    3 2( )8

    = − +pyx

    Qu y yz

    G Ia

    2 2,

    1( 1) ( 1) 0− − = − + − =

    ∑∑ m n m nm na m m y z n n y za

    0zxz zxzx

    uG

    tg¶ = = =

    2 21y z hua

    ∂ + ∂

    2 22 212 2 2

    yx yxb zx zxb

    yx zx yx zx

    QdA dA

    G G Q G G

    t tg t tg

    = =

    2 2

    ( )yx yx zxb y zyx zx yx

    GQ QdA dA

    G Q G Q G A

    t tg k k

    = =

    ,2 2

    yx zxy zA dA A dAQ Q

    t tk k a

    = = yx

    zx

    G

    Ga =

    2 2y z

    Qu u y

    GI¶ ¶ = -

    ( )zx z

    yx y b

    u dg yu dy

    t

    t g

    ¶= =

    b bQ GAGA Q

    g k k g= =

    2 2 2 221

    yx zx yx zxGA A

    dA dAQ QG Q

    k t t t t= × =

    2( ) ( ) ( )( ) ( )y y

    S y S yy b y

    b y b y

    ∂ = − − ∂

  • 境界 ( ) ( ) / 2z g y b y= ± = ± で、せん断応力(45)及び(49)を境界条件式(32)に代入すると、次のように境界条件を常に満足していることが分かる。

    6.幅方向にせん断応力 yxt の分布が一様とする仮定の検討 6.1 幅方向にせん断応力一様仮定成立の条件

    ここでは、一般に良く用いられる「せん断応力 yxt の分布が幅方

    向に一様となる仮定」の成立条件を求める。上記の仮定に基づく zxt

    は、前節の解析過程より、 zxG = として求めたせん断応力に一致

    する。そこでまず、式(49)の ,zx ct から式(8)を考慮して、式(15)で反り変形を算出すると次式となる。

    せん断力 yxt が z 方向に一様である条件は、式(25)に式(52)を代入し、 z 方向に微分して零と置くことで得られる。

    上式を満足する条件は、 zxG = である場合と、以下のように括弧

    内が定数となる場合とがある。

    上式中の 2( ) / ( )S y b y は常に正であり、y の関数となる。また、 ( )∂yb y

    は梁幅の極値で零となるが、他の位置では y の関数となる。従って、

    式(54)が常に成立するには 0C = でなければならず、結果、式(54)の条件は ( ) 0∂ =yb y となる。

    「 = ∞zxG と、 ( )b y が y 方向に一定」、この二つの条件の片方あるいは両方が成立する場合に限って、 yxt の応力分布が幅方向に一様

    となる。後者の条件は長方形断面と H 型のウェブ部分などで成立する。しかし、一般断面では後者は成立せず、幅方向にせん断応力

    yxt 一様の仮定は、 = ∞zxG のモデルを扱うことに相当する。 6.2 zxG が有限値の場合での = ∞zxG モデル使用の問題点

    せん断弾性係数 = ∞zxG モデルのせん断応力と反り変形は、式(45)、(49)と(50)として求められている。せん断応力成分は yxt のほか zxtが存在する。そのため最大値としては 2 2yx zxt t+ を検討すべきで

    あり、式(45)のせん断応力は yxt の下界で過小となっている。 梁のせん断変形についても、正解より剛のモデルであり、そのた

    め式(45)から求めた変形は下界を与える。しかし、応力状態は境界条件を含めて釣合条件を満足しており、梁のせん断ひずみを応力仕

    事から算出すると正しい値の上界を得る。従って、式(45)と(55)を用いて、せん断変形の正解を上下界で挟み込める 6)。せん断ひずみ

    に占める各応力成分の寄与率を示す係数間の関係は、 ,κz c を式(55)とすると、式(56)となる。

    長方形断面では、 ,0,= =zx yx yx ct t t であることから、半不等号 ≤ は全て等号となる。

    7.特定断面を用いた解析手法の展開と解析解の具体例 本節では、特定の断面形状を例として、解析手法を具体的に示す。

    先ず =yx zxG G と = ∞zxG の場合の解を各々求め、次に、幅方向にせ

    ん断応力を一様と仮定した場合の問題点を検討する。

    以下では、解析は領域 0y ³ で行われており、他の領域 y 0< に

    おける式は、断面の対称性から yxt は対称となり、また zxt と u は

    逆対称となる。

    7.1 正方形菱形断面

    ここでは、横幅及びせい共に、 2c の正方形菱形断面を扱う。断面の対

    称性を考え、図 2 に示される第一象限で解析を行う。以下に断面形状のパラ

    メータと断面特性を示す。断面形状は、

    補助変数 h により表される。

    7.1.1 多項式展開法での解の誘導( yx zxG G= の場合: 1=α ) 反り変形の解として式(35)と、多項式表現の式(43)で以下のように、 y

    は奇数べきで、 z は偶数べきである 1,0 3,0,a a 項を採用する。

    境界条件式(26)に、 ( ) / 1dg y dy = − を代入して、次式を得る。

    ここで、 bg を次式で表し、

    上式を式(59)に代入して、具体的な境界条件式を得る。

    次に、断面境界上に、2 点 ( / 2, / 2), ( / 4,3 / 4)c c c c を選び、上式にその座標値を代入すると、

    さらに、式(4)は、反り変形(58)を代入し、積分を実施すると次式となる。

    式(62)と(63)を連立にして解くと、未知係数 1,0 3,0, ,a a k が、

    として求められ、この値を式(58)に代入すると、反り変形が得られる。

    せん断応力分布は、式(64)、(65)と(60)を用いると、式(25)から式(66)となる。上の解は断面周辺の特定 2 点の境界条件で求められたものであり、その解が全ての断面周辺で境界条件を満たしているか検証を要する。

    そこで、境界条件式(61)に断面周辺の座標 ( , ( ))y g y と解(64)を代入すると、 0 y c< < の領域で恒等的に成立する。また、式(66)から勾配の定まら

    (51)2( ) ( ) ( ) ( )( ) 02 ( ) 2( ) y y

    b y Q S y Q S y b yb y

    I I b yb y

    ∂ − ∂ =

    2

    2( )( , ) ( ) ( ) ( )

    2( )

    = + ∂ +

    c yzx

    Q S y zu y z u y b y C y

    G I b y(52)

    (53)

    (54)2

    ( ) ( )( )

    ∂ =yS y

    b y Cb y

    (55)

    2 2( ) ( )( ) 0 ( ) 0

    ( ) ( )

    ∂ ∂ = → ∂ ∂ =

    yxyx y y y y

    zx zx

    GQ S y S yG b y z b y

    G I Gb y b y

    (56)

    2,

    ,zx c

    z c A dAQ

    τκ α

    =

    , , , , ,, 1 , , 0κ κ κ κ κ κ κ κ κ κ κ= + < ≤ ≤ + ≤ ≤ ≤y z y c y c z c y c y z z c

    2 4

    , ( ) (1 ),1 0,

    2 , / 3

    y c g c

    A c I c

    h h h h= = − ≥ ≥

    = =(57)

    { }3 2 3 21,0 3,0( 3 )8= − + + + −yxQ

    u y yz a y a y yzG I

    (58)

    ( ) ( ) 0 0z y b z y bdg y

    u u u udy

    g g∂ − ∂ + = → ∂ + ∂ + = (59)

    28 48 8 3b yx yx yx

    Q Q I Q cG A G I A G I

    k kg k

    − = = − = − −

    22 2

    1,0 3,0 3,0 3,042(1 3 ) 3(1 ) (1 3 ) 03

    + − + + + − − =c

    a a yz a y a z k

    (60)

    (61)

    1,03,02

    1,03,02

    3 4 3 02 3 221 4 9 08 3 8

    − − + =

    − − + =

    aa

    ca

    ac

    k

    k

    (62)

    { }3 2 3 21,0 3,0( 3 ) 0+ + + − =∫ ∫ y yz a y a y yz ydzdy(63)

    3 2

    2 23 310 2 2

    = − −

    yx

    Q y y yzu

    G A c c

    (64)

    (65)

    y

    z

    2c

    2c

    図2 正方形菱形断面の座標

    2 21,0 3,015 3 7 0→ + + =a c a c

    2

    1,0 3,02 1 6, ,5 3 5c

    a a k−

    = = − =

  • ない頂点では、せん断応力が零であり、全ての境界で条件を満たしてい

    る。従って、式(64)と(65)は、この問題に対する完全な解であるといえる。

    最大せん断応力は座標原点にあり、次式で与えられる。

    以上は、文献 7)による方法で荷重を 2 個の 45°方向に分割して、各々既存の矩形断面の解を求め、それらを合成した結果と一致する。

    次に、せん断変形の係数k に占める ,yx zxt t の割合を調べるため、

    式(66)を式(29)に代入し、 1=α とすると次の結果を得る。ここで求めた k は、式(64)の値と一致する。

    7.1.2 zxG = の場合 梁幅方向でせん断応力一様の仮定を用いて求めたせん断応力分布

    は既に文献 8)にある。式(70)で必要となる正方形菱形断面の断面一次モーメント ( )S y は式(69)である。

    式(45)と(49)及び(69)を用いてせん断応力分布 , ( )yx c yt とその最

    大せん断応力、断面中央の値及び , ( , )zx c y zt を以下に示す。

    せん断応力ベクトルの最大値は、 y 一定では両端の境界で生じ、

    式(71)となる。その最大値は ( / 4,3 / 4)c c で式(72)となる。

    梁のせん断変形の係数は、式(46)より次式(73)となり、反り変形は式(50)より式(74)となる。

    7.1.3 =zx yxG G の場合、横方向に yxt 一定仮定を用いることの検討 横方向に yxt 一定仮定での結果は、 = ∞zxG の場合と同じである。

    これを、 =zx yxG G の場合の正解と比較する。最大せん断応力を /Q A

    の係数で比較すると、外周上の ,( , 4 3 , 4)c c で 1.59 となり、正解の図心での 1.5 よりも大きいが、図心では 1 である。 = ∞zxG の場合のせん断応力 zxt による梁のせん断変形の係数は式(75)である。

    =zx yxG G の場合の正しいせん断変形の係数を、 yxt 一定仮定から得

    られる上下界で挟むと次式となり、挟み込みの幅は 3 割程度である。

    7.2 円形断面

    本節の解析対象断面は半径a の円形断面とし、補助変数 q は y 方

    向から反時計方向回転を正とする。

    円形断面の断面性能を次に示す。 断面の対称性を考え、図 4 に示す第一象限で解析を行う。

    7.2.1 面内せん断弾性係数等方性 yx zxG G= の場合 反り変形の解として、次式を用いる。ここで、多項式表現の式(43)で未

    知係数 1,0 3,0,a a の項までを採用する。

    境界条件は、式(26)より、

    上式に ( ) / cos / sindg y dy q q= − を代入し、さらに、 bg を次式とし、

    式(78)と(80)を式(79)に代入すると、具体的に次式となる。

    ここで、境界上の点として / 4, / 6q p q p= = の 2 点を採ると、条件式(81)から次式を得る。

    さらに、式(4)に反り変形(78)を代入し、積分を実施すると次式を得る。 式(82)と(83)の連立方程式を解くと、解が次のように求められる。

    反り変形は、式(78)に上の値を代入し、次式となる。

    断面外周の反り変形は、上式に cos , siny a z a= =θ θ を代入すると、

    となる。外周円の反り変形は平面を保った回転 /u y であり、外面

    11 1 6, ,10 10 5

    = = = + =y z y zk k k k k

    2 2

    2 23 3 21 ,2 2yx zxQ y z Q yzA Ac c

    t t = - = - ×

    (66)

    (67)

    (68)

    (69)3

    2 3( ) ( ) ( ) (1 3 2 )3

    cy

    cS y yb y dy S h h h= = -

    , 2( )( , ) ( ) (1 2 )

    ( )zx cQ S y Q y z

    y z b y zI A c cb y

    t = ∂ = − +

    (70)

    2 2, , ,( , ) 2 ( )+ − =yx c zx c yx cy c y yt t t

    ( )2 2, , ,max

    92 ( ) 2 1.594 8yx c zx c yx cc Q Q

    A At t t+ = = ≈

    ,3130y c

    k =2 32

    30 2 3

    = − + −

    cyx

    Qcu

    G Ah h h

    h( )

    (71)

    (72)

    (73)

    2,

    ,3190

    = =

    ∫ zx cz c A dAQ

    tk

    ( ) ( ), , , 31 6 62 0.86 1 1.1530 5 45 ≤ ≤ + = < < = <

  • での見かけ上の梁のせん断変形は、上式を考慮すると次式となる。

    せん断応力分布及び最大せん断応力が次のように得られる。

    用いた境界条件は 2 点での適合であり、境界全域での検討を要する。境界条件(32)にせん断応力(88)を代入し、求めた式(89)に座標値

    cos , sin= =y a z aq q を与えると零となる。結果、境界全域で境界条

    件が成立しており、求めた解は完全解であるといえる。

    弾性エネルギーを計算して、せん断変形の係数 kを、式(34)の yxt

    による項と、 zxt による項とに分離すると、次式を得る。

    上記の例では、同次解(43)の低次項で断面周辺の境界条件を満足する解が得られた。しかし、断面形状によっては、このような低次

    項では常に周辺境界条件を満足する解が得られるとは限らず、さら

    なる高次項を用いる必要がある。また、断面周辺の境界条件も近似

    的に満たすことになる場合もある。 7.2.2 zxG = の場合 せん断応力分布は、式(45)と(49)より次式で与えられる。

    最大せん断応力 ,maxct は、上式より、

    梁のせん断変形の係数は式(46)より式(93)に、反り変形は式(50)より式(94)となる。

    7.2.3 =zx yxG G の場合、横方向に yxt 一定仮定を用いることの検討 横方向に yxt 一定仮定での結果は zxG = ∞ の場合と同じである。

    これを、 =zx yxG G の場合の正解と比較する。最大せん断応力を /Q A

    の係数で比較すると、 0y = で 4/3 となり、正解の図心での 1.5 よりも小さい。 ,yx ct による反り変形は、 = ∞zxG の場合と同じとなる。

    = ∞zxG の場合のせん断応力 zxt による梁のせん断変形の係数は式

    (95)である。

    =zx yxG G の場合の正しいせん断変形の係数を、 yxt 一定仮定から得

    られる上下界で挟むと次式となり、挟み込みの幅は 1 割程度となる。

    8.終わりに

    本論では、梁のせん断応力解析に、横断面内剛の直交異方性モデ

    ルを導入して梁要素の変形自由度を低減し、反り変形に関する 2 次元偏微分方程式を求めた。この一般対称断面の支配方程式に対し、

    多項式展開による解析手法を示した。例題として、正方形菱形と円

    形断面に関する解法と結果を示し、定量的に比較した。 主な結論を以下にまとめる。

    1) 梁理論に関する理論的に矛盾のない構造モデル 9)を考え、解析の物理的意味を明確にした。

    2) 提案手法を用いることで、一般対称形断面のせん断応力分布、せん断変形が求められることを示した。

    3) = ∞zxG の梁モデルでは、 yxt は幅方向に一様で、 zxt と共に釣合式より誘導でき、周辺自由の応力境界条件を満たしている。

    4) 一般対称断面では、せん断応力 yxt が幅方向に一様とする仮定は、

    zxG = を解くことと同等である。この仮定でのせん断変形は、

    ≠ ∞zxG では下界である。他方、釣合を満たす応力状態から仕事

    式で上界が算出可能であり、せん断変形の係数 kの値の挟み込み

    ができる。ただし、せん断応力では、上下界法はない。 参考文献 1) 日置興一郎:構造力学 I、朝倉書店、pp.60-64、1970.6

    4.7 の表 4.3 で、長方形と薄肉パイプでは仮定が成立して正しいが、他は仮定が成立せず本論の理論に合わない。

    2) 中村恒善(編著)、野中泰二郎、須賀好富、南宏一、柴田道生(共著):構造力学 図解・演習Ⅰ、丸善、1982.7 pp.124-129、pp.162、163、に梁のせん断を論じ、p.125 には円断面のせん断応力式が「平均的な値」と注記あり

    3) 日置興一郎、村田賢:等分布荷重を受ける異方性弾性長方形断面梁の平面応力状態解の古典理論解からの誘導、日本建築学会構造系論文集、第 656号、pp.1837-1845、2010.10

    4) Timoshenko and Goodier:THEORY OF ELASTICITY、 2nd Ed.、1951 5)日置興一郎:構造力学Ⅱ、朝倉書店、1977.11

    例えば、pp.13-20 6)日置興一郎:モデル化による弾性構造物の変形の上下界法、日本建築学会

    論文報告集、第 150 号、pp.1-6、1968.8 7) 建築学会編:第 2 版 建築学便覧Ⅱ 構造 7 編力学

    2・3・3 せん断 pp.38-39 8) 日置興一郎:構造力学 I、朝倉書店、1970.6

    p.61 式(4.49)、p.132 式(7.64) 9) 日置興一郎:構造設計の問題点、建築雑誌、86 巻、1036 号、pp.251-255、

    1971.4

    (88)

    2 2

    2 2 2( ) cos 3 3 0

    sin 2 2zx yxdg y Q y z y zdy a a a

    qt t

    qp

    + − = − − − =

    (87)

    9 1 27 1 7, ,8 24 24 24 6

    = = = + = + =y z y zk k k k k (90)

    22

    ,( ) 4 4( ) sin 1( ) 3 3

    = = = −

    yx cQ S y Q Q y

    yI b y A A a

    t q

    ( ) ( )2 2,max , , maxmax4 4sin3 3c yx c zx c

    Q QA A

    t t t q= + = ⋅ = ⋅

    (91)

    3

    20( ) 2 4( )( ) 9 9

    = − = − ∫y

    cyx yx

    Q A S y Q y yu y dy

    G A I b y G A ak

    (92)

    (93)

    (95)

    図5 円形断面のせん断応力分布(上)と反り変形(下)

    (94)

    ( ) ( ), , , 10 7 32 0.95 1 1.029 6 27 ≤ ≤ + = < < = < /JPEG2000ColorACSImageDict > /JPEG2000ColorImageDict > /AntiAliasGrayImages false /CropGrayImages true /GrayImageMinResolution 300 /GrayImageMinResolutionPolicy /OK /DownsampleGrayImages true /GrayImageDownsampleType /Bicubic /GrayImageResolution 300 /GrayImageDepth -1 /GrayImageMinDownsampleDepth 2 /GrayImageDownsampleThreshold 1.50000 /EncodeGrayImages true /GrayImageFilter /DCTEncode /AutoFilterGrayImages true /GrayImageAutoFilterStrategy /JPEG /GrayACSImageDict > /GrayImageDict > /JPEG2000GrayACSImageDict > /JPEG2000GrayImageDict > /AntiAliasMonoImages false /CropMonoImages true /MonoImageMinResolution 1200 /MonoImageMinResolutionPolicy /OK /DownsampleMonoImages true /MonoImageDownsampleType /Bicubic /MonoImageResolution 1200 /MonoImageDepth -1 /MonoImageDownsampleThreshold 1.50000 /EncodeMonoImages true /MonoImageFilter /CCITTFaxEncode /MonoImageDict > /AllowPSXObjects false /CheckCompliance [ /None ] /PDFX1aCheck false /PDFX3Check false /PDFXCompliantPDFOnly false /PDFXNoTrimBoxError true /PDFXTrimBoxToMediaBoxOffset [ 0.00000 0.00000 0.00000 0.00000 ] /PDFXSetBleedBoxToMediaBox true /PDFXBleedBoxToTrimBoxOffset [ 0.00000 0.00000 0.00000 0.00000 ] /PDFXOutputIntentProfile () /PDFXOutputConditionIdentifier () /PDFXOutputCondition () /PDFXRegistryName () /PDFXTrapped /False

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