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移住者を含む求人・求職に係るマッチングサイト の導入に関する報告書 2019 1 31 移住者向け求人の情報共有に係る技術検討のための技術検討委員会

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移住者を含む求人・求職に係るマッチングサイト

の導入に関する報告書

2019年 1月 31日

移住者向け求人の情報共有に係る技術検討のための技術検討委員会

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目次 目次 ................................................................ i 1 はじめに ......................................................... 1 1.1 背景と目的 .................................................. 1 1.2 技術検討委員会及び同委員会技術ワーキンググループの開催状況 .. 1 1) 構成員 ....................................................... 2 2) 開催 ......................................................... 2

2 移住につながる求人数の想定 ....................................... 3 3 マッチングの基本的な仕組み ....................................... 3 3.1 マッチング支援事業におけるマッチングの仕組み ................ 4 3.2 求職者のユーザ体験のイメージ ................................ 5

4 求人情報項目等の考え方 ........................................... 6 4.1 求人情報項目等の整備方針 .................................... 6 4.2 オープンデータの提供形式に係る方針 .......................... 8

5 マッチングサイトについて ........................................ 10 5.1 マッチングサイトの開設 ..................................... 10 1) 基本的考え方 ................................................ 10 2) マッチングサイトのシステム的な機能 .......................... 10 3) クローリング・スクレイピング対策 ............................ 13 4) クラウドサービスの利用 ...................................... 13 5) データベースの構造の基本的考え方 ............................ 14

5.2 マッチングサイトの運営・改善 ............................... 14 1) 求人活動のサポート .......................................... 14 2) データマネジメント .......................................... 14 3) マッチングサイトに係る広報及びアクセス状況の把握 ............ 15 4) SEO対策 .................................................. 15 5) データ通信の暗号化 .......................................... 15

6 運営体制の整備 .................................................. 16 7 全国のマッチングサイトの所在や掲載協力民間求人サイトの掲示等 .... 16 8 終わりに ........................................................ 16

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1 はじめに

1.1 背景と目的

地方創生推進交付金におけるマッチング支援事業は、地域における人材のミ

スマッチや人手不足の解消を目的として、地域経済への波及効果等の観点から

地方公共団体が選定した中小企業等による求人情報の作成と、マッチングサイ

トを用いた当該情報の提供を支援するものです。また、移住支援金についても、

対象法人への就業者だけでなく、多くの人が魅力ある求人を目にし、移住・定

住することにより、東京から地方への新しいひとの流れを作ることが目的とな

ります。

すでに多くの都道府県及び市区町村が、求人・求職に係るマッチングサイト

(以下「マッチングサイト」という。)を開設していることから、これでよい

と思われるかもしれません。

しかし、求職活動の実態を見ると、残念ながら地方の求人情報は東京圏の求

職者に届いていない状況にあります。求職者の大半がインターネットを介して

求職活動を行っていると言われますが、その多くは、グーグル検索等を経由し

て、民間求人サイトから情報を取得しているのが実情です。これは、情報の充

足性・信頼性、利用者視点を重視した使い勝手の良さ、トレンドへの迅速な対

応だけでなく、多額の広告宣伝によって誘客がされることで、民間求人サイト

の評価が上がり、検索順位が上がる等の相乗効果によるものと考えられます。

このような実情を踏まえ、求人情報が多くの方の目に止まるためには、費用

対効果も考えつつ、従来型のマッチングサイトに加え、多くの求職者の行動に

沿って、創意工夫をした事業としていく必要があります。

以上を踏まえ、民間求人サイト運営事業者と分業、協業し、多くの民間求人

サイトに地域の求人情報を掲載することにより地域の求人情報等を東京圏の求

職者に届けることを目指し、民間求人サイト運営事業者の方々とともに、有識

者と協力のための議論を重ねてきました。このたび、都道府県がマッチング支

援事業を開始するに当たり、取り組むことが必要と考えられる事項をまとめま

したので、報告します。

1.2 技術検討委員会及び同委員会技術ワーキンググループの開催状況

移住者向け求人の情報共有に係る技術検討のための技術検討委員会及び同委

員会技術ワーキンググループの開催状況等については以下のとおりです。

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1) 構成員

ア 技術検討委員会

委員長 関口 忠 内閣官房政府CIO補佐官

委員 嵩 和雄 NPO法人ふるさと回帰支援センター副事務局長

委員 村上 文洋 株式会社三菱総合研究所主席研究員

イ 技術ワーキンググループ

HRソリューションズ株式会社

株式会社カカクコム

グーグル合同会社

ディップ株式会社

パーソルキャリア株式会社

株式会社ビズリーチ

ヤフー株式会社

株式会社リクルートコミュニケーションズ

2) 開催

回数 開催日 議事

第 1回 2018年

11月14日

・委員長の選出

・マッチングの仕組みについて各社からの提案

・技術的側面におけるマッチングの仕組みの骨格に

ついて

・今後のイメージを固めるための主な論点について

・論点について意見交換

・その他

第 2回 2018年

11月27日

・マッチングサイトのデータ項目について

・調達の範囲について

・論点について意見交換

・その他

第 3回 2018年

12月11日

・マッチングサイトのデータ項目について

・調達の範囲について

・論点について意見交換

・その他

第 4回 2018年

12月25日

・中間とりまとめ

第 5回 2019年

1月 22日

・報告案について

・マッチングサイトから提供するデータ項目につい

・マッチング支援事業に係るモデル調達仕様書につ

いて

第 6回 2019年

1月 29日

・報告書とりまとめ

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2 移住につながる求人数の想定

求職活動は、その大多数がインターネットを介して行われています。かつて

は困難であった求職者の活動をつぶさに記録し、どのような行動を起こしてい

るのか、その傾向を把握することができるようになってきています。何をどの

程度実施すると実際の成果につながるのか、ある程度予測することも可能です。

過去のデータを基に、求人数に対応する、移住者数の見込みを考えてみます。

過去の傾向によると、1 件のマッチングの成功にはその約 6.7 倍の求人応募

件数が、1件の応募を得るには求人票にその 100倍のアクセス人数が、1件の求

人票の閲覧には 100 倍の求人タイトルが表示される必要があると推計できます。

この推計によれば、1人のマッチングをするためには、少なくとも、7万回

近い求人タイトルの表示が必要となります。

地域性などもあり、全ての都道府県、市町村において同様の傾向となるかは、

それぞれにおいて分析していく必要がありますが、日本全体の傾向からは、例

えば、200 人程度のマッチングを成功させるためには、約 1 千 3 百万回の求人

タイトルが表示される必要があります。

図 1 データ傾向から見る移住者数のシミュレーション

3 マッチングの基本的な仕組み

移住につながる求人数の想定から、マッチングを成立させるためには、多く

の求人を掘り起こし、求人を多くの方に実際に届けることが重要ですが、都道

府県が開設するマッチングサイトだけでこれを実現することは、社会環境を冷

マッチング率の仮定

約15%

応募率の仮定

約1%

アクセス率の仮定

約1%

約13,0 0 0 , 0 0 0回

約130 , 0 0 0人

約1 , 3 0 0人1 9 5人

求人タイトル表示

回数

求人票

アクセス人数応募数 マッチング数

※(株)HRソリューションズによる推計

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静に分析すると、不可能に近いと考えられます。

3.1 マッチング支援事業におけるマッチングの仕組み

民間求人サイトは、①利用者のニーズに対応したWebデザイン・ユーザ体

験の開発、②ビジネスモデルのトレンドへの適応、③情報の充実性・信頼性の

向上、④ブランド構築・維持のための多額の広告等を行って、機能の向上を図

り、顧客獲得・維持を図っています。

このような状況の中、サービス業一般の例にもれず、民間事業者による求人

情報提供事業についても、人口の多い都市部ほど収益率が高く、結果として地

方部での求人開拓、求人情報の掲載といったサービスは手薄になります。

以上を踏まえ、マッチング支援事業の目的を達成するため、本事業では次の

とおりサービスをデザインしています。

図 2 マッチングのデザイン

第 1 に、都道府県は、市町村、商工団体、地元金融機関などと協業して、

地域の法人・企業へ働きかけ、求人を募る。

第2に、都道府県は、自ら運営(委託)する求人サイトに求人情報等を掲

載しつつ、民間無料掲載求人サイトへ容易に掲載できるよう、当該情報をオ

ープンデータ注記)とする。

第3に、都道府県は、求職者が、市町村等の地域情報サイトにて地域の実

都道府県

求職者 求職経路

ふるさと回帰支援センター

移住フェア・相談会

移住・交流情報ガーデン

オンライン

オフライン

A

B

検索サイト 求人サイト

C

D

移住系サイト(暮らし、まちの情報)

求人系サイト(移住支援金対象求人を含む)

住居系サイト

求人者求人経路

都道府県、市町村、商工団体、金融機関等

働きかけ

求人情報

求人情報

求人検索

オープンデータ情報提供

誘導

誘導

誘導

求人応募

誘導市町村

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情を調べることが可能となるよう、自らのサイトから各サイトへ誘導する。

第4に、国は、求職者が民間求人サイトで全国の求人を検索でき、かつ各

都道府県のサイトに辿り着けるよう、民間求人サイト運営事業者に協力を要

請する。

第5に、国は、地方公共団体、移住支援団体らによる移住フェア・相談会

においても、マッチングサイト及び協力する民間求人サイトを活用した東京

圏から地方企業への求人・求職マッチングの広報等に努め、推進を支援す

る。

注記)オープンデータとは、オープンデータ基本指針(2017 年5月 30 日高度

情報通信ネットワーク社会推進戦略本部・官民データ活用推進戦略会議決定)

によれば、国、地方公共団体及び事業者が保有する官民データのうち、国民

誰もがインターネット等を通じて容易に利用(加工、編集、再配布等)でき

るよう、次のいずれの項目にも該当する形で公開されたデータです。

① 営利目的、非営利目的を問わず二次利用可能なルールが適用されたもの

② 機械判読に適したもの

③ 無償で利用できるもの

3.2 求職者のユーザ体験のイメージ

上記のような取組が関係者間において機能すれば、以下のような流れで、求

職者が都道府県運営サイトの存在を知らなくても、地方の魅力的な求人を容易

に検索し、求職活動に入ることが可能となります。移住支援金を含む助成金の

給付を伴う求人などを民間求人サイトに提供することで、事業者側が助成金を

条件とした検索機能を開発することもでき、検索結果として当該求人を上位に

表示することも可能となります。

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図 3 求職者のユーザ体験のイメージ

註)上記のイメージは、当該事業が具体化すればどのようなことが可能にな

るのか、その理解の促進のために既存のWebサイトからの情報を基に本

委員会において加工して作成しているものであり、実際のものとは異なり

ます。

4 求人情報項目等の考え方

4.1 求人情報項目等の整備方針

都道府県が収集した求人情報等を民間求人サイトに提供するに当たり、次の

ような課題が考えられます。

① 各都道府県の求人情報項目等が共通化・標準化されていない場合、各民間

求人サイト側は、各都道府県の求人情報項目等に合わせる必要があり、情報

システムの改修が発生する。

② 提供側の求人情報項目等の数を必要最低限に絞り込んだ場合、各民間求人

サイト運営事業者は、提供される求人情報の項目が荒いため、自社の求人情

報項目等に対応させることが困難となるおそれがあり、対応するためには情

報システムの改修が発生する。

例)課題が発生する具体的な事案

提供側の求人情報項目 民間側の求人情報項目 メリット/デメリット

就業時間 就業開始時間 提供側が粒度の荒いデ

♥ 移住助成金(~100万)⌂ 暮らし♥ 移住助成(~100万円)⌂ まちの暮らし

グーグルで検索 求人詳細情報を参照 マッチングサイトへ誘導 市町村情報へ誘導求人サイトで詳細検索

♥ 移住助成(~100万円)

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〔8:00-17:00〕

〔8時から 17時まで〕

〔午前8時~午後5時〕

〔原則 8:00-17:00。相

談可〕

〔8:00〕

就業終了時間

〔17:00〕

就業時間特記事項

〔8:00-17:00 が基本で

あるが相談可〕

ータで提供すれば、粒

度が細かいデータを扱

っている民間求人サイ

ト運営事業者では対応

することが難しい。

就業開始時間

〔8:00〕

就業終了時間

〔17:00〕

就業時間特記事項

〔8:00-17:00 が基本で

あるが相談可〕

就業時間

〔[就業開始時間]+[就

業終了時間]+[就業時

間特記事項]〕

提供側が粒度の細かい

データで提供すれば、

粒度が荒いデータを扱

っている民間求人サイ

ト運営事業者はそれら

のデータを組み合わせ

て、表示することがで

きる。

註)〔〕は記録されているデータの例。

③ 掲載されている求人情報が、法令を遵守していない場合はもちろんのこと、

民間求人事業者団体が作成したガイドラインを遵守していない場合も、民間

求人サイトに提供した情報が掲載されないおそれがある。

④ 中小企業を中心として、求人者側に魅力ある求人票を作成するノウハウが

不足しているとの調査結果もあるが、求人企業の負担を勘案して情報項目数

を制限すると、求人者にとってかえって書き込みにくいフォームとなるおそ

れがある。

⑤ 求人情報に加え、求人者の基本的な情報は求職者の知りたい要素であるこ

と。また、就業先周辺の住まいの情報に誘導しやすくすることで、求職と転

居を合わせて検討することができ、利用者の利便性の向上が期待できる。

⑥ グーグル検索等でも、データが求人情報等として、構造的に取り込まれ、

検索され、表示やすくするためには、構造化された形でデータ提供する必要

がある。

以上を踏まえ、求人情報項目等の整備方針は次のとおりとしました。この整

備方針を踏まえ、各都道府県が民間事業者へ提供すべき標準的な求人情報等及

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びその形式については、別添「民間事業者とのデータ連携標準仕様」のとおり

とします。

なお、このデータ連携標準仕様は、民間求人サイト運営事業者等が求人サイ

ト等にデータを取り込むに当たり、コンピュータ処理がしやすいように加工さ

れたデータ形式であるため、実際にマッチングサイトに掲載され表示されるも

のと一致する必要はありませんし、民間求人サイトにおいても一致するわけで

はありません(例えば、データ形式では雇用形態コード「100」として民間求

人サイト運営事業者に提供し、求人サイト側でそのまま「100」と表示しても、

求職者は理解できません。)。

また、求人者との連絡調整など、都道府県が業務を行うために必要となる求

人者の情報は、別途、取得し、管理されるものと想定しています。

第 1 に、情報の流れに関して上流(情報提供側)である都道府県サイトの

求人情報項目の粒度は、提供を受ける民間求人サイト運営事業者等が情報を

扱いやすくするため、細かな粒度とする。

第2に、求人情報項目は、求人票作成のノウハウが不十分な求人企業が記

述しやすいよう、細かな単位に分解する。

第3に、求人情報項目は、募集情報等提供事業の業務運営要領(厚生労働

省職業安定局)及び求人情報提供ガイドライン(求人情報適正化推進協議

会)に基づくものとする。

第4に、求人情報に加え、利用者の利便性の向上の観点から、企業情報

(求人者の基本情報)、住まいの情報も合わせて提供する(本報告書におい

て求人者の基本情報、求人情報、住まいの情報を合わせて「求人情報等」と

定義します。求人情報等の情報項目を「求人情報項目等」と定義します。)。

第5に、グーグル検索等の検索サイトに、求人情報等として取り込まれや

すくするため、指定された構造化データになるように、schema.org のスキー

マ構造に沿ってHTMLを作成するものとする。

4.2 オープンデータの提供形式に係る方針

都道府県が民間求人サイトに提供するデータ形式も課題となります。行政が

民間に情報提供する場合、よくPDF形式で提供されることが見受けられます。

特に、紙媒体をスキャンした画像データをPDF形式にしているものも散見さ

れます。これは、記述内容の改変が困難であることや、印刷時のイメージをそ

のまま相手に伝えることを重視したものと考えられますが、そのようなデータ

の取得や加工は容易でなく、民間求人サイトにとって二次利用しづらい形式と

なってしまいます。

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現在、主流となっているデータ形式は、JSON形式、XML形式、CSV

形式となっております。特に JSON形式はAPIなどでよく用いられますが、

現時点では都道府県側が情報提供用のAPIを整備することのハードルが高い

と予想されることから、JSON形式でのデータ整備については、国が指定す

る民間求人サイト運営事業者が提供する情報登録用のAPIでデータを管理す

る方式とします。また、要素名(タグ名)が都道府県で異なると、民間求人サ

イト側で都道府県ごとに要素名を変換する必要があり、効率が悪いことから、

要素名は「民間事業者とのデータ連携標準仕様」のDB名の列に記載された値

を用いることに統一する必要があります。また、CSV形式は表記法の自由度

が高いことから、都道府県で異なると、同様に効率が悪いことから、CSV形

式の表記法については統一する必要があります。詳細については、2018 年度内

を目途に、技術者向けに、「民間事業者とのデータ連携標準仕様」を深堀した、

連携仕様書を示します。

なお、データ連携においては、指定された形式とは異なるHTML形式のタ

グ記号、スタイル情報などが混在したデータが送付されることがしばしばみら

れますが、民間求人サイトにおいて意図したとおりに再現することが困難であ

ることから、このようなことのないように留意する必要があります

また、地方公共団体においては、氏名の表記も正確な表記でなければならな

いなど、懸念される可能性がありますが、戸籍簿に登録されたものを用いなけ

ればならないわけではないため、外字を用いる必要はなく、一般的に使用され

ているUTF8で足ります。

以上を踏まえ、オープンデータの提供形式の整備方針は次のとおりとしまし

た。

第1に、求人情報等のデータ提供形式は、JSON形式(民間求人サイト

運営事業者の情報登録用APIを利用)、XML形式及びCSV形式の全て

とする。要素名(タグ名)は「民間事業者とのデータ連携標準仕様」のDB

名の列に記載された値を用いる。CSV形式の表記法については必要な範囲

で記法を標準化する。

第2に、異なるデータ形式の記法を上記の形式に混在させない。

第3に、求人情報等の文字コードは、UTF8とし、外字は取り扱わな

い。

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5 マッチングサイトについて

5.1 マッチングサイトの開設

1) 基本的考え方

民間無料掲載求人事業者の多くが、自ら収集した求人以外にも求人情報を

様々なところから取得しているため、その情報リソース先、求人が掲載されて

いるWebサイトのURLを示すことが一般的です。求職者も、その情報のリ

ソースページを確認することによって安心感が得やすくなる上、リンク先の情

報まで参照する可能性を高めることができます。このため、マッチングサイト

については、民間求人サイトに情報提供するのであれば不要ではないかとも考

えられますが、現時点では都道府県がマッチングサイトを継続的に開設するこ

ととします。

マッチングサイトの開設に当たっては、次の選択肢が考えられますが、本事

業の目的はマッチングサイトの開設そのものではなく、民間サービス等を有効

に活用して、求人情報等を必要とする人に、的確なタイミングで、充実した内

容を提供することになります。従って、マッチングサイトの開設はできるだけ

費用や手間をかけないことが望ましいため、次の選択肢①又は③を推奨します。

① 本委員会が示す共通仕様に対応した求人サイトを構築することができる民

間のサービスを利用する。

② 本委員会が示す共通仕様に対応した求人サイトを、自前で新規に構築する。

③ 本委員会が示す共通仕様に対応するために、都道府県の既存の求人サイト

を改修する。

なお、類似のサイトが乱立している都道府県も存在しておりますが、運用面

では情報更新の煩雑さ、重複的な予算の計上などの課題がある上、利用者の視

点からは、アクセスの分散化によるアクセス数の減少が想定されるため、この

状態を改善し集中投資することを推奨します。

2) マッチングサイトのシステム的な機能

マッチング支援事業を円滑に行うため、必要と考えられるマッチングサイ

トのシステム的な機能は次のとおりです。ただし、開設済みの既存のマッチ

ングサイトや、活用しようとしている民間サービスに同様の機能がある場合

は、改善する場合を除き、新たに開発する必要はありません。

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ア 必須機能

マッチングサイトについて、少なくとも必須と考えられる機能は次のとお

りです。

a) 求人情報等提供機能(求職者向け)

求人情報等を求職者に提供する機能です。本機能としては、求人を統一

性・一覧性をもって検索する機能、求人情報等の詳細を表示する機能が必

須となります。なお、基本的にオープンな情報であり、閲覧してもらうこ

とが重要であることから、求職者にアカウント登録し、ユーザ認証を求め

る必要はありません。

b) 地域紹介・転居に関する情報提供機能(求職者向け)

地域の紹介、移住を含む転居・引っ越しに係る情報を提供する機能です。

また、これらの情報が外部サイトである場合には利用者が情報に接するこ

とが容易になるよう、外部へのリンク先を掲載し、誘導します。

c) 求人データ外部提供機能(民間求人サイト向け)

都道府県が収集した求人情報等を、「4 求人情報項目の考え方」に基づ

く全国統一の方式で、民間求人サイトを運営する事業者へ提供する機能で

す。

なお、民間求人サイトに提供する求人情報等は、マッチングサイト以外

のWebサイト(県庁Webサイトなど)からの提供でも差し支えありま

せんが、マッチングサイトからもリンク等で誘導できるようにする必要が

あります。

d) 求人情報等管理機能(運営者向け)

都道府県が収集した求人情報等を、マッチングサイトの運営者が、登録

し、更新し、削除するなど管理する機能です。本機能としては、移住支援

金対象企業・求人を管理する機能、求人を統一性・一覧性をもって検索す

る機能、求人情報等の詳細を参照する機能が必須となります。

e) アクセス解析情報提供機能(運営者向け)

マッチングサイトへどのような利用者からアクセスがあったのかを分析

サービスサイトへ提供する機能です。なお、全国統一的に分析するため、

グーグルアナリティクスによる分析を必須とします。それに加え、他の分

析ツールによる分析を行うことを拒むものではありません。

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f) アカウント管理・ユーザ認証・アクセス管理機能(運営者向け)

d)の機能を利用するため、求人者等情報掲載側利用者のアカウントを管

理し、マッチングサイトの利用者を特定して、不正アクセスを防止しつつ、

情報システム機能の利用権限を制御する機能です。本機能としては、I

D・パスワードなどの認証要素を登録・更新する機能、認証要素の突合に

よるマッチングサイトへのログイン認証機能、利用者の利用権限を制御す

る機能、ログインユーザーのアクセス状況を把握するためのログ管理機能

が必須となります。

イ 推奨機能

マッチングサイトについて、利用者の利便性及び運営者の管理の観点から、

あることが望ましい機能は次のとおりです。なお、機能の実現方法は複数あ

り得ますが、利用者の利用状況を見越しつつ、個人情報への配慮など情報セ

キュリティ対策や費用対効果を勘案しながら、選択することが望まれます。

a) 移住支援金対象求人申請機能(求人者向け)

求人者が、移住支援金の対象となる企業又は求人となるための申請をす

る機能です。本機能としては、申請機能、申請者が申請先地方公共団体と

コミュニケーションする機能などが考えられます。

b) 移住支援金対象企業・求人審査管理機能(地方公共団体向け)

地方公共団体が、申請のあった移住支援金対象企業又は求人について、

審査過程を管理する機能です。本機能としては、地方公共団体が申請者と

コミュニケーションするための機能、審査過程を記録する機能、未対応申

請をお知らせする機能などが考えられます。

c) 求人情報等管理機能(求人者向け)

求人者が、求人情報等を登録し、更新し、削除するなど情報を管理する

機能です。本機能としては、求人登録・更新フォーム機能、入力データ確

認助言機能、データ更新リマインド機能などが考えられます。

d) 応募機能(求職者向け)

求職者が、特定の求人票に対し、応募する機能です。本機能としては、

求職者履歴書登録・更新をする機能、応募フォームなど求職者が求人者と

コミュニケーションするための機能などが考えられます。

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e) 選考管理機能(求人者向け)

求人者が、求職者の応募について、選考過程を管理する機能です。本機

能としては、求人者が応募者とコミュニケーションするための機能、選考

過程を記録する機能、未対応応募をお知らせする機能などが考えられます。

f) SNS連携機能

マッチングサイトとSNSを連携する機能です。本機能としては、マッ

チングサイトに掲載された求人情報等をSNSに投稿する機能、マッチン

グサイト上にSNSを表示する機能です。

g) アカウント管理・ユーザ認証・アクセス管理機能(求人者・求職者向

け)

イ a)c)e)における求人者・求職者向けのア f)と同機能の機能です。

ウ その他

以上のほか、移住支援金に係る移住者からの申請情報の管理や、申請書の

審査管理に関する機能なども考えられます。

3) クローリング・スクレイピング対策

公的機関が運営するWebサイトでは、アクセス負荷を抑制し、性能を確

保するため、プログラムによるデータ自動収集を行うクローリング・スクレ

イピングを排除する対策をしている場合があります。

本事業においては、民間求人サイトにデータを広く活用していただくこと

が重要であることから、クローリング・スクレイピングの禁止は控える必要

があります。このような場合には、アクセス負荷を下げるために、

robots.txt等を用いて、適切にアクセス制限を行うことが重要となります。

4) クラウドサービスの利用

前述 1)基本的考え方における②③を選択する場合、システム環境について

は、民間求人サイト運営事業者の求人サイトより低廉で、機能・規模拡張に

優れ、十分な情報セキュリティ対策がなされているものが望ましいとの観点

から、クラウドサービスを利用することを推奨します。

具体的には「政府情報システムにおけるクラウドサービスの利用に係る基

本方針」(2018年(平成 30年)6月 7日各府省情報化統括責任者(CIO)

連絡会議決定)4.補足に記載されたサービスを用いることを推奨します。

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5) データベースの構造の基本的考え方

本事業で示しているデータの提供方式に基づき、データを正しくかつ効率

的に管理するためには、データベースの構造も考慮する必要があります。

求人情報等に同じ情報を都度記入するのは効率が悪いため、求人者側で入

力しづらいデータは分けて管理し、データを利用する際に情報システム上で

組み合わせて表示する方が効率的となります。一方、あまりに複雑なデータ

ベース構造になると人間が理解しにくくなるおそれがあります。

このため、マッチングサイトのデータベース構造は、次の図のとおり、企

業情報のテーブル(データのまとまり)、求人情報のテーブル、住まい情報の

テーブルの3つを基本として、それぞれが連携できるための法人番号といっ

た符号を用いることを推奨します。

図 4 データベースの基本構造

5.2 マッチングサイトの運営・改善

1)求人活動のサポート

本事業は、高額なフルサポート型の人材事業に依存することなく、企業に

よる主体的な求人活動をサポートすることで、地域の中小企業等による持続

可能かつ効果的な求人メカニズムを構築することを主眼としています。この

ため、企業の求人活動を継続的にサポート(求人魅力化セミナーや e-

learning、ヘルプデスクの設置など)することが重要です。

2)データマネジメント

民間求人サイトの多くは、求人情報等の充実性のみならず、その情報の信

頼性に重きを置いています。このため、求人情報等の誤記、求人情報等の不

更新といったことがあったり、データが適切・適宜に更新されていなかった

りすれば、求職者から不興を買うばかりか、民間求人サイトにデータを利用

企業情報TBL

法人番号

詳細情報01詳細情報02詳細情報03詳細情報04:

求人情報TBL

法人番号

詳細情報01:

住まい情報TBL

詳細情報01詳細情報02詳細情報03詳細情報04:

全国地方公共団体コード

全国地方公共団体コード

1:N1:1

求人管理番号

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されなくなるおそれがあります。一部の都道府県においては、求人情報等が

数年前から更新されないまま掲載されているなどが見られますが、求人掲載

期間を設ける、少なくとも半年ごとに確認し、情報の拡充を依頼するなどの

対策が必要です。

データマネジメントに係る業務を委託する場合には、求人情報等は適正に

取り扱われる必要があります。信頼できる求人情報等の提供がなされていれ

ば、民間求人サイトにも掲載されやすいと考えられることから、求人情報適

正化推進協議会が推進する「求人情報提供ガイドライン適合メディア」宣言

をする、又は求人サイトの直接運営をして相応の実績を上げていることを契

約条件とすることが推奨されます。

3) マッチングサイトに係る広報及びアクセス状況の把握

求職者の大多数が、インターネットを介して求職活動をしていることから、

民間求人サイト運営事業者への情報提供のみならず、他の都道府県と差別化

を図る観点からも、マッチングサイト自体への集客も重要になってきます。

このため、費用対効果に留意しながら、マッチングサイトへ誘導する広告

を掲載するなどの取組を行うほか、マッチングサイトへのアクセス状況など

の利用実態を常時把握し、マッチングサイトのみならず、マッチング支援事

業の改善を図っていく必要があります。

また、国においても、各都道府県のマッチングサイトへのアクセス状況な

どの利用実態を把握するほか、協力的な民間求人サイト運営事業者の求人サ

イトの利用状況について、利用実態の情報提供を求め、これを都道府県へ還

元することが望まれます。

4) SEO対策

民間求人サイトでは、グーグル検索等で上位に表示されるようにするSE

O対策を継続的に行っているものと考えられます。

同様にマッチングサイトにおいて、SEO対策を行う視点は大切ですが、

検索サイトへの広告入稿などに比べ対策と効果の因果関係がわかりにくい上、

競合する民間求人サイトは数多く存在し検索等で上位に表示させることは容

易ではないことから、民間求人サイトに掲載してもらえるよう、適正な求人

情報等を収集・更新し、提供することに優先的に取り組む必要があります。

5) データ通信の暗号化

政府機関等の情報セキュリティ対策のための統一基準(平成 30 年度版)を

踏まえ、マッチングサイトにおけるデータ通信は、危殆化(暗号が解読され

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た状態)されていない暗号通信の方式を用いることが必要です。また、HTTPS

での通信でない場合、広く利用されているブラウザで表示されなくなるおそ

れがあり、既存のWebサーバがHTTPのみで対応している場合には移行

を検討する必要があります。

6 運営体制の整備

以上のように、マッチング支援事業は、想定される関係者が多い上、誰が何

をどの程度までするといった仕組みを各都道府県で整備しなければ、成果を上

げることが難しい事業です。

このため、各都道府県のマッチング支援事業を担当する部局においては、①

求人者からの求人情報等を適切に管理するため、労働部局を中心に、②データ

をオープンデータとして適切に管理するため情報政策部局等、関係組織との体

制作りを進めていくことが求められます。

7 全国のマッチングサイトの所在や掲載協力民間求人サイトの掲示等

ここまで、各都道府県が収集した求人へのマッチングを促進するためのオー

プンデータ化の必要性とその手法について述べてきましたが、求人情報等の所

在を民間求人サイト運営事業者に示すため、国が地方創生サイト等にマッチン

グサイトの所在をまとめて掲載することも必要です。その際、求職者・求人者

の利便性の観点から、マッチングサイトを運営している都道府県の担当部局等

の問い合わせ先も併せて掲載する必要があります。地方の求人情報等の掲載に

積極的に協力する民間求人サイト運営事業者を国が顕彰する等によりオープン

データ化を推進することも考えられます。

都道府県においても、情報提供先の民間求人サイトを把握し、求人者等に開

示することが推奨されます。

8 終わりに

マッチングを成功させるための創意工夫として求職者の行動に着目し、求職

者が日常的に多くの接点を持つ検索サイトや求人サイトから都道府県が開設す

るマッチングサイトに誘導するための仕組みについて検討してきました。

しかしながら、都道府県が開設することになるマッチングサイトは、移住支

援のためだけでなく、地方の人手不足を解消するために有効となりえるものの、

マッチングサイトを開設しただけでは十分な効果は期待できません。

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マッチングサイトの利用状況を把握しつつ、日々改善していくことはもちろ

んのこと、官民で連携しつつ、様々な政策が就業、ひいては移住につながるよ

うに連鎖することが重要です。

本報告書は、都道府県や民間事業者がそのようになるための条件を包括的に

網羅したものではありませんが、現時点で執るべきと考えられる事項を整理し

たものです。マッチング支援事業構築上の指針となることを願います。