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1 石油・天然ガスレビュー アナリシス この連載も今回で最終回となる。今回も北米地域、特にアメリカ合衆国の石油鉱業に焦点を合わせる。 この章でも三つの油田の発見を里程標とする歴史区分に従う(図1)。第1章から第3章まで、いわゆる 在来型石油資源の探鉱開発を歴史の順序に従って記述した。この第 4 章では、その歴史的展開の最近段 階での技術革新による、非在来型の石油資源であるシェールガス・オイルの探鉱開発について記述する。 その後、歴史の順序を一旦捨象し、石油の探鉱開発の各段階を並列し比較しつつ、各段階の成立・推進 要因を抽出し、石油資源の将来展望を試みる。 第3章では、特に供給側(石油鉱床の探鉱・開発)における探鉱開発の基本的な考え方である背斜説を 中心軸にとって、近代石油鉱業の黎明期から 2 0 世紀最後期までの探鉱開発における背斜説の位置付け と発展の過程を辿 たど った。背斜説概念の発展のなかで、鍵となる油田の発見年を里程標に、四つの段階(準 備段階、早期確立段階、発展段階、震探イメージング段階)に分け、各段階での背斜説を基礎とした探 鉱開発の様相を見た。背斜説が探鉱開発の実践の場に置かれ、その実践の場が山地・丘陵地から平原・ 平野に移行し、さらに砂漠地帯・海上に及び、石油の生産量が順調に伸びた。また 1 9 7 0 年に現実化し たアメリカ合衆国でのピークオイルを越えてなお、地震探鉱技術と層序解釈の進歩によって、油ガス田 の発見・生産が継続した。背斜説は地震探鉱技術による地下イメージングの段階に至り、より広域の堆 積盆(basin)全体を見渡して石油探鉱開発を考える石油システム概念、あるいは、その石油システムの なかでリスクの所在と大小を考え、最小の投資で最大の評価結果を得るプレイ・プロスペクトの構成に 至った。 じめに 石油探鉱開発における技術革新 と石油鉱業(その4=最終章) 東京大学大学院 新領域創成科学研究科 本田 博巳 Preparatory Preparatory Period Period Early Early Period Period North North- -eastern states eastern states 1901 Spindletop Gusher 1859 Drake well 1859 Drake well 1948 Ghawar 1931 East Texas 1931 East Texas 1885 I.C. White “Geology of Natural Gas” 1885 I.C. White “Geology of Natural Gas” 1917 AAPG 1917 AAPG 1927 Schlumberger 1927 Schlumberger Development Development Period Period Seismic Seismic Imaging Period Imaging Period Shale Age Shale Age Onshore and Oshore Onshore and Oshore Mulchannel Mulchannel- -seismic imaging seismic imaging Inversion Cube Inversion Cube Fracture Fracture- - Monitoring Monitoring- - seismics seismics US Shale US Shale Gas/Oil Gas/Oil 1885 1885 E ö t v ö s t o r s i o n b a l a n c e Eötvös torsion balance DSDP DSDP- -IPOD IPOD-- --ODP ODP Direct Direct Surface Geological Observaon Surface Geological Observaon Subsurface Observaon Subsurface Observaon Local Observaon Local Observaon Regional Observaon Regional Observaon Global Observaon Global Observaon L o c a l H i g h Local High R e s o l u o n Resoluon 1861 T.S. Hunt “Rock Oil” 1861 T.S. Hunt “Rock Oil” 1858 H. Rogers 1858 H. Rogers “Geology of “Geology of Pennsylvania Pennsylvania1840 1840 W. Rogers “Rock Oil” W. Rogers “Rock Oil” Development of Anclinal Theory Development of Anclinal Theory Telaga Said Oil Field (Indonesia) Telaga Said Oil Field (Indonesia) Appalachian age Appalachian age Orton’s Worry Orton’s Worry M. K.Hubbert’s Peak Oil M. K.Hubbert’s Peak Oil Tight reservoir Boom Tight reservoir Boom T i g h t Tight R e s e r v o i r s Reservoirs Play Concept and Petroleum System Play Concept and Petroleum System 4 3.5 3 2.5 2 1.5 1 0.5 0 BBbl/ 年 1800 1805 1810 1815 1820 1825 1830 1835 1840 1845 1850 1855 1860 1865 1870 1875 1880 1885 1890 1895 1900 1905 1910 1915 1920 1925 1930 1935 1940 1945 1950 1955 1960 1965 1970 1980 1985 1990 1995 2000 2005 2010 2015 1975 図1 アメリカ合衆国の原油生産量推移と石油鉱業に関連する歴史的事件の関係 出所:生産量推移データは DOE/eia(米国エネルギー省エネルギー情報局)統計による

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1 石油・天然ガスレビュー

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アナリシス

 この連載も今回で最終回となる。今回も北米地域、特にアメリカ合衆国の石油鉱業に焦点を合わせる。この章でも三つの油田の発見を里程標とする歴史区分に従う(図1)。第1章から第3章まで、いわゆる在来型石油資源の探鉱開発を歴史の順序に従って記述した。この第4章では、その歴史的展開の最近段階での技術革新による、非在来型の石油資源であるシェールガス・オイルの探鉱開発について記述する。その後、歴史の順序を一旦捨象し、石油の探鉱開発の各段階を並列し比較しつつ、各段階の成立・推進要因を抽出し、石油資源の将来展望を試みる。 第3章では、特に供給側(石油鉱床の探鉱・開発)における探鉱開発の基本的な考え方である背斜説を中心軸にとって、近代石油鉱業の黎明期から20世紀最後期までの探鉱開発における背斜説の位置付けと発展の過程を辿

たど

った。背斜説概念の発展のなかで、鍵となる油田の発見年を里程標に、四つの段階(準備段階、早期確立段階、発展段階、震探イメージング段階)に分け、各段階での背斜説を基礎とした探鉱開発の様相を見た。背斜説が探鉱開発の実践の場に置かれ、その実践の場が山地・丘陵地から平原・平野に移行し、さらに砂漠地帯・海上に及び、石油の生産量が順調に伸びた。また1970年に現実化したアメリカ合衆国でのピークオイルを越えてなお、地震探鉱技術と層序解釈の進歩によって、油ガス田の発見・生産が継続した。背斜説は地震探鉱技術による地下イメージングの段階に至り、より広域の堆積盆(basin)全体を見渡して石油探鉱開発を考える石油システム概念、あるいは、その石油システムのなかでリスクの所在と大小を考え、最小の投資で最大の評価結果を得るプレイ・プロスペクトの構成に至った。

はじめに

石油探鉱開発における技術革新と石油鉱業(その4=最終章)

東京大学大学院新領域創成科学研究科 本田 博巳

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図1 アメリカ合衆国の原油生産量推移と石油鉱業に関連する歴史的事件の関係

出所:生産量推移データは DOE/eia(米国エネルギー省エネルギー情報局)統計による

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(1)シェールの時代前史

 19世紀半ばから現在まで、石油に対する需要は継続して増加してきた。19世紀後期から石油の新たな需要が出現し、その供給源も量的に増大し、地域的にも拡大してきた。20世紀半ばに、供給源の有限性と生産量のピークの到来が予測され、アメリカ合衆国での1970年に現実化した。その予測を1956年5月に、テキサス州サン・アントニオでの学会で提示したMarion King Hubbert

(1903 ~ 1989)に因ちな

みHubbert’s Peak(あるいはピークオイル)と呼ぶ(Hubbert, 1956)。1975年にHubbertは世界規模でのピークオイルの到来を1995年と予測し、その後、1998年に修正している。 1988 年 に Colin J. Campbellは“The Coming Oil Crisis”と題する本を出版し、世界規模で、石油が枯渇段階に入ることを警告した。これを契機として、20世紀末から21世紀初頭にかけて議論されたこの世界規模でのピークオイルの出現の正否とその議論の社会的影響の波及が恐れられた。すなわち、ピークが到来したと認めると、投資の見返りに対する期待感が薄れ、急激な石油投資の減退が起き、石油生産量が急減する(キャンベル・クラッシュ〈Campbell Crush〉という)。これは、代替の資源開発のめどが全く立っていない段階でピークオイルが到来し、キャンベル・クラッシュが発生したならば、世界恐慌以上の破滅的な状況が生じ得る、と。 すなわち、未開発石油資源量の限界と生産量の衰退傾向によって、将来の石油生産が投資に見合うことを保証できないと考える消極的な社会反応によって、石油探鉱

開発への投資がごく短期間で消滅し、石油の生産量が同様に急激に減退する。このような急激な石油生産量の衰退が起きることが危惧された。石油の代替資源が見付かっていない状況では、社会の既存インフラが固定されているために、キャンベル・クラッシュが発生すると、直ちに危機的な燃料資源不足、エネルギー不足を生じる。 現状では、代替エネルギーについてさまざまな努力がなされ、提案と試行がなされてきているが、石油の現在までの社会的地位を十全に代替できる資源がないという事実は動かし難い。20世紀半ばから20世紀後期にかけて期待され、世界各地で多数建設され稼働した原子力発電は、継続的な最高出力での稼働が達成できていないにもかかわらず、1986年のチェルノブイリ事故、2011年の福島事故は、深刻な原発事故の現実を示した。また代替資源候補とされてきている太陽光発電、風力発電、潮力発電はいずれも電力需要に対応する安定した供給力に不足が大きい。

(2)危機感とその解消の歴史

 19世紀半ばでのランプ灯油原料が、捕鯨の衰退から鯨油供給が限界に達し、鯨油⇒石油と置き換わったことと、現在の石油生産量の推移を比較してみよう。近代石油鉱業は、鯨油ランプ灯油の枯渇という資源供給の危機から生まれた。その最初期でも、事業化に当たって、企業の起業理念としてのビジネスモデルが設定されていたと推定できた(図2)。Drake井の掘削も、Standard Oilの起業・発展もこのモデルにおいて欠けている部分を創

1. 第4章:石油の燃料資源としての未来

 次の段階では、石油システム概念のなかで、移動・集積の概念の領域に限定し、キッチン領域内の、従前は根源岩と考えられてきた層を対象とした石油探鉱開発を試みるようになった。非在来型の探鉱の一つとされる、いわゆるシェールガス・オイルの探鉱開発が成功し、顕著な衰退段階にあったアメリカ合衆国の原油生産量を2007年頃から急反転増加させ、ピーク生産量近くまで回復させるほど大きな寄与をしてきた。この期間にはリーマンショックなどがあったが、その影響も認められないほどに、原油生産量は急増した。油価が約100US$/bblを超すような高水準にあったことが、その経済的推進力であり、シェールガス・オイルの技術的前提には、1970年代以降に準備された石油鉱業上流部門での低浸透性貯留層の開発技術の創始があり、1990年代のシェール探鉱開発において総合され、改良され、機能的に応用された成果であったと言えよう(Gold, 2013)。 この第4章では、第3章からの続きとして、まず、シェールの時代(Shale Age)がどのような段階にあるのか、記述する。シェール革命と呼ばれる、背斜説での探鉱開発を覆したとされる石油探鉱開発技術の歴史のなかでの位置付けを考えてみよう。さらに、石油鉱業の近未来を想像してみたい。

3 石油・天然ガスレビュー

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石油探鉱開発における技術革新と石油鉱業(その4=最終章)

設することで成立したと考えてよい。Drake井の事業では、市場の存在は確認されていたが、実際、どのように供給するかについて、その意識があったかどうか不明である。Drake自身はDrake井の成功の経済的な利益には浴さなかったことから、市場に対する意識は少なくとも弱かったと想像で き る。 他 方、Standard Oilの中心人物であったJ. D. Rockefeller. Sr.は事業リスクの小さい製油部門・輸送部門から事業を起こし、市場を寡占化する方向に向かい、その後、リスクの大きい探鉱開発部門へと拡大していった。明らかに、彼は事業リスクを意識して事業展開したと推定できる。事業が必要とするインフラストラクチャーを独占することで商品

(この場合は石油)の市場を制御し、商業的な大成功をもたらした。Standard Oilの成功は、鯨油の枯渇によって生じた供給力の隙

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を、需要を地域的に拡大することで広げ、需要の増加に伴い、商品供給量の確保のために生産過程に踏み込んだ点にある。 次の石油資源の枯渇の危機感は、石油需要が急速に増加した19世紀末期に、オハイオ州、インディアナ州などで生じた(Orton,1889)。すなわち、この地域での主要貯留層であるTrenton石灰岩層が油ガス田を形成する条件を見出し、その形成条件が妥当する地域は限定されていることから、石油生産の将来的な継続を危ぶんだものである。いわば、石油探鉱開発可能な地域の有限性から来る資源危機感であった。 この危機感に対する技術的対応は、石油探鉱開発地域の拡大であった。既開発地域の開発が飽和した時には、地形状況の似た地域への活動の拡大、山地・丘陵地域から平原・平野へと地域の移動が進んだ。さらに海洋へと活動の場は広がった。その拡大には、探鉱開発技術ばかりではなく、掘削技術、土木技術などの進歩が並行して進んだことが重要であった。拡大する探鉱開発の場での中心理念は背斜説であった。 陸域から海域に石油の探鉱の場が拡大していくと、地下地質を間接的に知る必要が生じた。このための技術として、地震探査法が導入された。探査の目標が背斜構造であったことが、地下の堆積層の形状を知ることにつながり、より直接的な幾何形状を描出する手段となった地

震探査法の優越性、進歩の促進につながった。

(3)背斜説の進歩と行き詰まり感の発生

 近代石油鉱業の探鉱技術の中心にある背斜説は、その準備段階では、地表露頭での直接観察に基づく推論によった理念であった。背斜軸部での石油徴候の高い頻度がその主要観察事実であった。背斜軸部の試掘が実行されると、背斜説に対する信頼は増大していった。局所的な背斜構造から、広域の地質構造に注目して、地域的な石油産状を観察する視点が、White(1892)によって示されたことは既に述べた(本論説第3章;本田,2016)。このWhiteの広域的な観点は多くの石油探鉱家に継承され、AAPG(American Association of Petroleum Geologists:石 油 地 質 家 協 会 ) の 特 集 号“Structure of Typical American Oil Fields”(Vo. 1・2;AAPG, 1929)では、当然のように背斜系列、断層系の広域的分布と油ガス田の分布の関係が述べられ、油ガス田形成が議論されている。 この観点は、石油の有機起源説に基づく石油の生成・移動・集積についての議論が優勢になるなかで、これと並行して進歩した堆積盆概念と融合し、統合されていった。堆積盆の発達史に、石油鉱床の形成史を重ねて読み解く方法が石油探鉱に一般化した。その結果、石油鉱床の形成史を堆積盆発達史として解読し、試掘位置の選定に応用されていった。その理念的な発展は、石油システム概念として整備された(Magoon and Dow, 1991, 1994)。石油システムに基づく石油の探鉱開発の場は、石油集積領域に必然的に集中することとなった。一つの堆積盆での石油集積領域の背斜探鉱が終結すると、その堆積盆は、石油探鉱開発の過熟成段階にまで達し、石油鉱業の対象としては、その地域は放棄されることになる。 以上のように、探鉱開発技術の発展は、自然観察事実

Oil pond Ladling oil much labor neededLimited amount of oil ladled

Subsurface oil pool

Drilling a well Large amount of oil sprung

High Business Risk; to need a large amount of investment

Risk still unknownat that time

All known; no risk

Supply of crude oilThe Drake well established the subsurface potential

Refinery Plants

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Transportation:Not yet well established

Low Business Risk

Demand is here!Size and sort to be increased

図2 The Oldest Oil Business Model

出所:筆者作成

42016.5 Vol.50 No.3

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の集積に基づいて背斜構造から作業仮説を、試掘によってその仮説を試す、また次の商業規模油ガス田の存否を試すということの繰り返しであった。自然観察は目で直接見る事実を超えて間接的な計測による事実を測定し、それらを基に推論し、仮説を立てるようになっていった。探鉱理念としての背斜説は、その構成要素の各論的研究

(例えば、根源岩の質の同定とその含有する有機物の量の計測、砂岩貯留層の物性の測定など)の進展に従って、堆積盆内での生成・移動・集積論にまとめられていく。石油地質学の知見の集積、アイデアの20世紀での到達点は石油システム概念ということになる。 石油システムとその実践的評価概念でプレイ、あるいはプロスペクト・リードに従った探鉱活動が1990年代初期から一般化する。1985年前後までは、石油システムの構成要素(生成・移動・集積)は、別個に評価されていたが、1990年頃には、一連の過程の流れ(システム)のなかの構成要素として、一体感をもって表現され評価されるようになった。システムという標語を使用しなくても、実質的にシステムを枠として各評価要素を扱った。1990年代中期に近づくと、システムという用語は一般的にも広く普及し、石油探鉱開発活動での標準的な考え方として浸透した。

(4)標準化概念としての石油システム

 ここで標準ということを強調しておきたい(橋本,2013)。多数の探鉱開発プロジェクトを上限額のある探鉱開発投資のなかで最良最適な対象に投資するためには、多くの地域から提案される多様な地質類型のプロスペクトを一列に整序し、その優劣を見返りの大きさ、成功率などの評価値から、選出することが必要である。このためには、一個人の優秀な探鉱家、開発家が全ての提案を評価すべきある。探鉱家、開発家は個性が強く、偏りが生じやすい半面、評価の比較が必要な場合、また一人では、処理できる提案の数に限界がある。メジャーと呼ばれる大規模企業では、1年に700 ~ 1,000件の提案があり、均質な評価基準で、プロジェクト相互の比較が有意であるための統一された評価方法を適用し、評価の質を統一することが前提条件となる。 例えば、ある会社では、地震探鉱記録の収録前の物理探査船について船舶、探査装置の整備状態、作動状態に関する事前検査をベテラン技術者が行い、収録される記録の質を一定以上に保つことが義務付けられている。また、その記録処理についても、その会社の標準処理方法を設定し、処理技術者の技量の良否が地質解釈段階での致命的な誤謬を生まないようにしている(例えば、

ExxonMobil)。いわば、地震探査の比較可能性の保証であり、ネジの規格が同じであれば、世界中、どこでも互換性があることと同様な制度である(Rybczynski, 2001)。このような標準化は、アメリカ合衆国の南北戦争時の兵器の部品に互換性がないことから生じた戦況を左右する問題が発端となって、工業製品の規格化が励行されるようになったことと並行関係にある。石油システム・プレイ・プロスペクトによって、探鉱評価の道筋をその集団内であれば誰もが理解でき、反復して同じ結果が出るようにする制度である。多年の統一された訓練と熟練者による教育によって制度維持がなされれば、時期の異なるプロジェクトであっても比較が可能になる。

(5)地震探査の進歩と探鉱成果

 1970年代以降、コンピューターの進歩に伴う、地震探査技術の進歩の効果はどのように現れたであろうか。コンピューターの発達による計算能力の向上によって、1950年代までに確立されていた数理物理学的方法が、現実のデータ処理で実現されるようになった。1930年代に確立したラドン変換によるX線-CT(Computed Tomography:コンピューター断層撮影法)はその一例であった。同様に、多くの信号処理理論が地震探査データに適用されるようになった。 地震探査記録の質の向上と並んで、解像度の向上した地震探査記録をより実態的に解釈する方法として震探層序学が開発された(Payton, 1977)。震探層序学の適用により、擬時間層序枠の設定が行われるようになり、堆積過程の解析、堆積盆解析が可能となった。これにより多くの堆積盆の実態が読み取れるようになった。地震探査記録(断面あるいはキューブで表示される)から読み取れる堆積体単元の累重関係、構造地質学的な形状に基づく堆積盆全体の地史的・石油地質学的解析ができるようになり、地震探査記録に基づく石油鉱床の形成論の進歩につながった。その様式化の一つが石油システム概念である。堆積盆全体を観察できる地震探査記録は、陸域では、一様な記録の質で収録することが難しいが、海域では、均質な長距離の2次元地震探査断面記録、3次元地震探査キューブ記録の収録は一般的に容易であり、地質学的なモデルを構築するために、その質も十分高い記録が収録可能である。 1960年代後半以降、海域での石油探査が進み始め、海上での地震探査を担う物理探査船が多数建造された。海域での試掘コストが高いことも影響し、試掘段階から、3次元地震探査を実施することが一般化している。さらに、同一地域の反射波の記録を、時を移して収録し比較

5 石油・天然ガスレビュー

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石油探鉱開発における技術革新と石油鉱業(その4=最終章)

することで、調査域の時間変化を追うことも行われる(時間差地震探査・4次元地震探査と呼ばれる)。地震波が弾性波であることを利用し、坑井で得られた岩石の物性データを基準にして、岩石としての記録に逆変換して、貯留層特性(孔隙率、浸透率、水飽和率など)をキューブデータとして表示することも行われている。今後さらに収録技術面、解釈技術面での進歩が期待されている(松岡・本田, 2014a, 2014b)。このような地質学的なデータを提示できるようになれば、背斜探鉱の水準を超えて、地 震 探 査 で 石 油 集 積 を 直 接 描 出 す る DHI(Direct Hydrocarbon Indication:炭化水素鉱床直接検知地震探査指標)を基に石油探査が行われることになろう。質感を表現することができれば、地質学が地震探査上で成立することになる。 地震探査法の収録から地質解釈までの進歩によって、一旦、枯渇したと見なされた堆積盆が、息を吹き返すことがある。地下に賦存する石油鉱床の場合、直接的な方法で探鉱開発される金属資源などの枯渇と異なり、地震探査などの間接探鉱法によるため、技術進歩があった場合には再評価をすべきことになる。例えば、アメリカ合衆国中央平原にあるDenver-Julesburg堆積盆がその事例である。 図3はその油ガス田の規模の頻度分布である。明緑色の棒は、1950年代までのデータ(Arps and Roberts, 1958)と1980年代のデータ(Davis, 1987; Davis and Cheng, 1989)である。図3左は両者を重ねて表示したものである。左は生データによる。図3右は、1950年

代までのデータの総数を1980年代のデータの総数に対して両方の総数が一致するように規格化し、両者を比較しやすくしたものである。両者の頻度分布は、同一の母集団から採集したサンプルであることは、検定するまでもなく、視覚的に判定できる。1950年代までは、初期の地震探査法、坑井対比による構造図、層序断面図によって実施された探鉱の結果である。また1980年代のデータは、ランプセッティングでの深海扇状地での砂層の堆積学の知見が適用され、層序の対比は単なる岩相対比ではなく、堆積相に注目し、時間面と認識できるマーカー

(火山灰層、不整合面)と仮説的に設定する層序対比マーカーによる地震層序学による成果であった。両者の頻度分布グラフが一致するのは、探鉱手法の差異は、発見埋蔵量に偏りを生じさせず、堆積盆固有の油ガス層の形成能力によることを示していると考えるべきである。 この事例では油ガス田開発においては、油層・ガス層の対比を数次にわたり改訂し、未開発油層を発見し得た例である。多数の坑井が掘削されてきたことを思うと、さらに坑井間に新たな油層が発見されていったことに不思議な気がしないでもない。探鉱技術における革新的技術進歩があっても、探鉱対象となる堆積盆の性格によって、発見される石油鉱床の規模と頻度は、投下した資金と作業量(坑井数)に比例した数量にしかならないということを示す事例とも言えよう。 石油の探鉱開発活動が、このような在来型の石油鉱床探鉱開発の過熟成段階に入った場合、その先は、石油探

図3 Denver-Julesburg 堆積盆の既発見油田規模分布

出所:Arps and Roberts, 1958; Davis and Cheng, 1989; Davis, 1987

■1950年代まで ■1980年代まで

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Denver-Julesburg Basin: Oilfield size distribution Re-scaled Early discoveries and Original Late ones

系列 1系列 2

62016.5 Vol.50 No.3

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鉱開発を諦めるのか? 油ガス田内部に探鉱余地を求めるのか? 各油ガス田の周辺を探鉱開発の場とするのか? その堆積盆の深部に可能性を求めるのか? その活動領域を他の地域に移動させるのか? さらに、従前は、石油鉱床が形成されているとは認められなかった地層を対象とする石油探鉱開発を試みるのか? という選択肢が残る。上記のDenver-Julesburg堆積盆での事例は、既存油ガス田の周辺と既存坑井の間を探鉱開発した例である。また、アメリカ合衆国での近年のシェールガス・オイル探鉱は正にこの最後の場合の事例と言える。

(6)シェール資源の後継は?

 ここで、地球のどこに石油鉱床があったか、を振り返ると、地殻上層部(深度6,000m程度)の堆積岩層の中に賦存することが確認されてきた。また、石油鉱床は、堆積盆の石油システムの集積領域の中にあった。石油の密度は、地層の孔隙の大部分を占める地層水より小さいために、石油集積構造を成す水理学的に上方に閉じた領域

(トラップ)に集中している。石油鉱床は連続性に優れ、広く連続的に分布する、泥質層に上部を閉じられた背斜構造にトラップを形成しやすい。そのような相対的に狭い領域に、他

よ そ

所で生成された石油が流動し、集まって形成されたと考えられてきた。そこで、石油鉱床のような石油の濃集する領域は、集積領域にしかないのか、と発想することが許されるであろうか?  実際に、根源岩を評価する場合、TOC(Total Organic Carbons)、炭化水素組成、熟成度、根源岩の全岩堆積、

孔隙径分布、孔隙率、浸透率などの評価要素により、どの程度の炭化水素が生成され、排出されたかを評価する

(例えば、Fuse, et al., 1996; Tsukada, et al., 1996)。従来は、層位トラップ探鉱を正当化する技術根拠を得るために行われることが多かった。その評価は概算評価で十分機能する。石油は根源岩層内で生成されて以後、そのごく少量しかその根源岩から排出されず、多くはその根源岩内にとどめられると考えられている。堆積盆に広く分布する石油の大半が実はキッチン領域に分布し、根源岩層内にとどまるのであれば、キッチン領域を対象として試掘が行われてもよいはずである。しかし、根源岩の多くを成す泥質岩はごく低浸透性であり、その含有する地層流体を流動させ、取り出すには長時間を要する。その対策として、①坑井の根源岩層との境界面積を拡大すること(水平掘り)、②水圧破砕法により、根源岩層にフラクチャー(割れ目)を生じさせ、人工のフラクチャー内で浸透率を改善すること(いわゆるフラクチャリング)が行われる。また、酸による坑井内、地層内の洗浄が実施される。 破断による人工地震が生じることを利用して、人工破断領域の形状、大小、フラクチャーの坑壁からの深さなどをモニターする。このような貯留層刺激法は、1970年代後半から1980年代に盛んになったいわゆるタイト油層(チョーク油層など)の生産性の改善のために用いられた(図4 ; Fritz, Horn, and Joshi, 1991)。既存の掘削技術、貯留層改質技術、地下イメージング技術と地震観測技術の改良と組み合わせによった方法である。

Naturally fractured zoneNaturally fractured zone

Austin Chalk: Eastern, Central TexasChalk: Eastern, Central Texas

Not compatible with each otherNot compatible with each other

+ artificial hydrofracturing+ artificial hydrofracturing

Eagle Ford Shale Gas Zone: Southern-most Texas

図4 Austin Chalk Oil Development: Late 1970’s through Early 1980’s

出所:Fritz, Horn, and Joshi, 1991

7 石油・天然ガスレビュー

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石油探鉱開発における技術革新と石油鉱業(その4=最終章)

 シェールガス・オイルの探鉱開発理念として用いられた考え方は、石油システム概念のなかで、キッチン領域を探鉱開発のターゲットとするものである(図5)。水平掘り坑井は、シェールの内部ではガスとして挙動し、地表に上がってから石油液相(原油として取引される)となることを期待される地下での原油帯・ガス帯の境界部に構造上部から下部に向かって掘削される。テキサス州南部、Eagle Ford層でのシェールガス・オイルの生産井がこのような掘削の仕方の典型と言える。

(7)シェール資源の将来への楽観論と悲観論

 これまで見てきたように現時点(2016年3月31日)までは、アメリカ合衆国のシェールガス・オイルの生産は2014年11月以来の油価の低迷にもかかわらず、生産量は維持されてきた。油価低迷の近時、坑井の掘削が減少するなかで、生産量は維持されていることから、1坑井あたりの生産量が以前より多くなっていることが推定できる(図6)。シェールガス・オイル層に対する坑井のデザイン(掘削深度、水平坑の長さ、スウィートスポット

Kitchen Area Accumulation Area

Hydrocarbons generation

水平掘り坑井による有効層厚の拡大人工破砕による浸透性の改善

シェールガス・オイル

+

=

在来型探鉱開発領域在来型探鉱開発領域シェール資源シェール資源探鉱開発領域探鉱開発領域

生成されたが移動しなかった、あるいは、結構(fabrics)粒子に吸着された炭化水素

図5 石油システムにおける石油の生成場と集積場

図6 Effects of OPEC’s maintaining their level of oil and gas production in 2015 and 2016

出所:Magoon and Dow(1991, 1994)

出所:Frantz, et al., 2005、DOE/eia, March 2016

No change between 2015 and 2016

82016.5 Vol.50 No.3

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の同定などのシェール層に対する生産最適化のための作業方法)が地域別に確立されてきたと考えてよい。では、シェールガス・オイルの生産は今後もこの傾向が維持されるであろうか? シェール資源開発は北米(アメリカ合衆国、カナダ)を越えて、全世界に拡散していくであろうか? 既にポーランドではシェールガスの試掘がなされた。 前者については、シェール資源開発生産技術は経験技術であり、観察によって芳しい結果は得られず、撤退した企業もある。他方、ドイツ南部アルプス北麓地域での試掘が始まっている。まだ、企業化できる商業生産は可能になっていない。北米地域と欧州地域の本質的な差異は、整備されたインフラストラクチャーが既にある場合、シェールガス・オイル開発での設備投資が小さくて済むという経済環境の差異にあろう。 2014年11月までの段階での北米地域では、シェールガス・オイルの生産井周辺の開発技術としては、完成に近づいたと言えよう。しかし、在来型油ガス田の開発での生産井1坑あたりのコストとシェールガスの水平掘り坑井のそれとでは、リグ稼働時間からして、後者が高コストであることは明白である。経済的な限界をどのような水準に設定できるか、が鍵となる。  し た が っ て、 油 価 が70US$/bblか50US$/bblか、ではなく、シェールガス・オイルの生産井の挙動が初期に累計生産量の大半を達成し、減退が速いことから

(図7;Frantz, et al., 2005)、初期コスト(掘削費、施設費など)の多寡、減退した生産量の水準とシェールガス・オイルの生産の経済的限界までの期間をいかに長くするかが、全体の経済性

に大きく影響することになる(図8;Banks, 2007)。 悲観論者は、局所的には、シェールガス・オイルの生産の減退の速い点を強調するだろう。それは初期コストと初期生産量、生産量のプラトー期間の長さの調整をいかに取れるかにかかる。できる限り、既往の諸施設の利用を優先し、諸物資も再利用を図ることとなる。また、大局的には、現在の在来型油ガス田と処理プラントや消費地への輸送経路(天然ガスはパイプラインあるいはLNGタンカーを要する。原油はパイプライン、鉄道、舗装された道路網)を要する。このようなインフラがない場合、特に天然ガスは、輸送面が障壁となり、商業化が難しい。

Mcf/ 日

1,000

900

800

700

600

500

400

300

200

100

00 200 400 600 800 1,000 1,200 1,400 1,600 1,800 2,000

Primarily Waterfracs

Large Cross-linked Fracs

Small Cross-linked or Foam Fracs

<1/1/91>1/1/91 and <1/1/98>1/1/98

Time

Production

Declit

Economic limit

F&D phase

PlateauBuild-up

Costs(Investment)

Additional investment(in e.g. refracturing or

図8 Cost and production structure of gas from shale field (brown) and conventional field (black)

図7 Barnett Shale Well Performance by Date

出所:Banks, 2007

出所:Frantz, et al., 2005

9 石油・天然ガスレビュー

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石油探鉱開発における技術革新と石油鉱業(その4=最終章)

 石炭と石油はともに燃料資源であり、競合し得る関係にある。この点をアメリカ合衆国での歴史事情に鑑み振り返っておく。

(1)石炭のランク

 図9に、単位重量熱量と燃焼炭素量を指標とした、石炭のランクに関しての名称の関係を示す。熟成の進行に従い、揮発成分が増加し、その後、減少する。高温・高圧条件下に揮発分が抜けるためであろう。

(2) アメリカ合衆国の石炭

資源の分布

 図10に、アメリカ合衆国の本土48州の石炭資源の分布と基盤構造を示した。左図は石炭堆積盆の分布、右図は地質基盤の構造単元の分布を示す。破線の長方形は左図の範囲を示す。アメリカ合衆国の無煙炭堆積盆は大半がプレ・カ

ンブリアン基盤と古生界地塊の分布域と重なる。亜褐炭-褐炭の堆積盆は白亜系中央海盆の分布域と重なる。 図11にアメリカ合衆国の無煙炭の生産量の推移を示す(McCabe, 1998)。1860年から1900年頃までは、炉燃料としての石油需要が主体であった時期であり、石炭との競合関係が認められて不思議はない。しかし、無煙炭も石油も順調な増産が進んでおり、競合していない。

2. 石炭と石油の棲み分け

図10 USA Coal Basin Map

出所:East, 2013(左)、Miall, 2013(右)

燃焼炭素量(乾燥・灰分は除去)%

単位重量熱量大 小

・低揮発分瀝青炭からメタ無煙炭に向かって、揮発分を失っていく。

・揮発分の行き先:熱分解?放出+移動?

・石炭ガス

・CTLの歴史•地下石炭火災での回収注入水中のメタン

図9 石炭の熟成と揮発分の相対量

出所:US Coal Montage から抜粋

102016.5 Vol.50 No.3

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これは、無煙炭が鉄鋼生産でも還元剤としての需要があり、必ずしも競合関係にはなかったということであろう。

また無煙炭の生産量には、1918 年と 1942 年にピークが認められ、それぞれ、第一次世大戦、第二次世界大戦と関連する鉄鋼生産の推進と関係すると思われる。 第二次世界大戦後は無煙炭の生産量は単調に減退傾向を示す。既存燃料資源であった石炭と石油は、燃焼による発熱の機能的な差異から、用途を棲

み分け、競合せずに探鉱開発が進んだ。この棲み分けは、大恐慌を経て、第二次世界大戦まで継続した。しかし、図12が、第二次世界大戦後の石炭(無煙炭、褐炭、亜褐炭、亜炭)の生産量を示すように、減退傾向が顕著な無煙炭の生産量に対して、褐炭の生産量の増加と緩いピークの出現、原油生産量のピークの出現以降の亜褐炭・亜炭の生産開始と増加傾向が顕著である。 第二次世界大戦後、石油生産量がまだ減退期に入る以前に、Hubbert(1956)による石油資源の限界説(ピークオイル説)が提唱され、1970年に現実にそのピークが出現すると、代替燃料資源として亜褐炭、亜炭の開発が開始し増産され、現在まで継続してい

る。石油の燃料としての需要を充足するために、代替したと考えてよいであろう。

3. 石油システムとシェールガス・オイルの探鉱開発におけるスウィートスポット

(1) 水平掘り坑井と人工水圧破砕法(ハイドロフラク

チャリング〈hydro-fracturing〉法)

 図13にシェールガス・オイルの探鉱開発の地質技術的な現象面を整理した(Magoon and Dow, 1994:松岡・

本田〈2014〉)。在来型石油鉱床の形成過程の一つである生成された炭化水素の1次移動との関係、低浸透性貯留層の刺激法の一つであるハイドロフラクチャリングは1次移動の経路は広い範囲の孔隙を連結していることが必要

Depr

essio

n

Drak

eDr

ake

Wel

lW

ell

WW

WW

--IIII

WW

WW

--II

石油と石炭の棲み分け

製鉄業の伸びる時期

褐炭生産量の伸びた時期

石油と石炭の分業

石油の役目を褐炭が一部代行?

100

80

60

40

20

01840 1860 1880 1900 1920 1940 1960 1980 年

Million Short Tons

石油と石炭の競合があり得べき期間だがない!石油と石炭の競合があり得べき期間だがない!

Spin

dlet

op D

iscov

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Cush

ing

Disc

over

y

East

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s Disc

over

y

US Peak Oil

AnthraciteAnthracite

BituminousBituminous

Sub-bituminousSub-bituminous

LigniteLignite

800

700

600

500

400

300

200

100

0

40

35

30

25

20

15

10

5

0

Bituminous, Sub-bituminous, LigniteMM short Tons

AnthraciteMM short Tons

1949 1959 1969 1979 1989 1999 2009 年

図12 アメリカ合衆国の石炭種別生産量推移

図11 USA Production of Anthracite(1830 ~ 1995)

出所:DOE/eia, 2016

(注)Short Ton(米トン)= 907.185kg出所:McCabe, 1998 に加筆

11 石油・天然ガスレビュー

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石油探鉱開発における技術革新と石油鉱業(その4=最終章)

で、炭化水素が流動するためにその連結経路を形成する。天然でも同様の現象が起きていると推定される。実際、1次移動の現場としか見えない低浸透性のシェールのコアも採集されている。現在のシェール資源開発は、自然が数万年~数百万年かけて生成している石油鉱床形成過程を数年~十数年で、人工的に行っているものであろう。 このような視点から、生成・移動・集積という過程の生成・移動の局面において自然状態で、いわばフェアウェイとなっている箇所を知ることは、より効率の高い水平掘り坑井の掘削位置、掘削方向、掘削長を設定する基準を得ることになろう。微妙な構造の比高の変化、自然破断系の認識、広域的な水理系を制御するシール層の同定などが鍵となる評価対象要素であろう。 図14(Fritz, et al., 1991)の水平掘りのモデル図は、テキサス州の中央部に発達するバルコーン断層帯に並行して発達するチョーク層

(Austin Chalk)の油層に関するものである。その探鉱が1970年代から始まった。チョーク層は低浸透性で、生産能力が期待できないとされていたが、人工破砕処理による浸透性の改善、さらに水平掘りによる坑井の油層との接触面の顕著な増加によって、商業生産が実施されるようになった。Eagle Ford層は直上部のチョーク層よりも粘土質で、石灰質泥岩である。 Eagle Ford層はシェールガス・オイルの生産層として、現在稼働中であり、Austin Chalkとは自然断裂により、水理学的に連結されている。この断裂が高頻度の場所では、Austin Chalkが油層として発達度が高く、頻度が低いとEagle Ford層のシェール資源ポテンシャルが高い傾向にある。このEagle Ford層を仕上げ、ハイドロフラクチャリングを実施する。これにより、天然ガスと液相の両方を比較的高いレート で 生 産 が 可 能 と な る。Austin Chalk-Eagle Ford層の成す石油システムでは、Eagle Ford層がAustin

Chalk油層の原油の根源岩であり、自身がシェールガス・オイル層となっているという、断裂を鉛直(重力方向に)移動経路とするタイプの石油システムである。したがって、Austin Chalk-Eagle Ford層を層理面に対し鉛直に切る断裂が発達する地域はAustin Chalk油層のスウィートスポットであり、断裂がないか、あるいは少ない場所はEagle Ford層のシェールガス・オイルのスウィートスポットであると考えられる。

図14 在来型の Austin Chalk 油田と非在来型の Eagle Ford Shale Gas/Oil の油田

図13 石油システムによるシェールガス・オイルの探鉱・開発場の意味付け

出所:Fritz, Horn, and Joshi(1991)に加筆引用

出所:Magoon and Dow(1994)と松岡・本田(2014)に加筆

キッチンで生成された炭化水素の多くはその生成場の近傍にとどまり、集積場へは移動しない。

キッチン内にとどまった炭化水素は、根源岩の孔隙の結構(fabrics)が変化することによって、短距離移動が可能である。孔隙結構の改変によって、移動可能となる炭化水素は坑井まで移動可能となる。

泥岩の卓越する領域であり、低浸透性の泥岩の浸透性の改善方法が課題。フラクチャリングがその解決方法の一つ。水平坑井により、坑井壁と対象層の接する面積を拡大する方法も寄与した。

在来型では生成場であるが、非在来型では探鉱開発場となる領域。

シェールオイル・ガスでは、キッチン領域に移動経路と集積領域が重複する地質状況にある。

Naturally fractured zoneNaturally fractured zone

Conventional tightAustin Chalk wellConventional tightAustin Chalk well Shale gas/oil well

for the Eagle FordShale gas/oil wellfor the Eagle Ford

Eagle Ford Shale Artificially hydrofracturedEagle Ford Shale Artificially hydrofractured

122016.5 Vol.50 No.3

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(2)アメリカ合衆国(本土48州)のシェール堆積盆

 北米地域の堆積盆(図15、図16)には、①北米大陸地塊の上に乗るものと②その辺縁部~周辺部にあるものとの2類型がある(Miall, 2008)。図15は、アメリカ合衆国本土48州とカナダの地質構造大単元の構成を示す。その大単元の分布と構成は、北米大陸塊(プレ・カンブリアン基盤)の分布と重なる(Miall, 2008)。図16は、アメリカ合衆国本土48州のシェールガス堆積盆の分布

と基盤分布である。そのシェールガス田堆積盆の分布は、プレ・カンブリアン基盤の分布と重なる(DOE/eia, 2015; Miall, 2008)。 シェールガス・オイルのプレイを成す堆積盆は多くが大陸地塊上に発達する古生界、下部中生界のものである。上述したEagle Ford層のシェールプレイは大陸地塊の辺縁部のプレイである。図15左は、北米大陸の地質大構造を示す。その核はプレ・カンブリアン基盤を持つ大

図16 アメリカ合衆国本土 48 州でのシェールガス・オイルの開発・生産堆積盆

図15 The Tectonic Elements for the Sedimentary Basins of the United States and Canada

出所:DOE/eia, 2015(左)、Miall, 2008(右)

出所:Miall, 2008

13 石油・天然ガスレビュー

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石油探鉱開発における技術革新と石油鉱業(その4=最終章)

陸地塊であり、多くの古生界・中生界の堆積盆を擁している。中央では、古第三系の塩湖堆積盆が分布する。大陸地塊の周辺には、古第三系、新第三系の堆積盆が現在の海岸線に並行して分布する。 堆積盆の形状に関して、類型①は構造変形の変形度が

緩く、堆積盆の元来の形状を残すものが多い。類型②は、類型①に比して、総じて若く、集中的な石炭層の発達する地層が少なく、Appalachia堆積盆といえども、変形度が相対的に高い。したがって、カリフォルニア州のロサンゼルス堆積盆などでは、褶

しゅうきょく

曲波長の高い反射構造が

The Barnet Shale Gas/Oil Producing WellsThe Barnet Shale Gas/Oil Producing WellsThe Mississippian Barnett Tectonic Elements The Mississippian Barnett Tectonic Elements

DEE

P

Burnett Shale Gas Producing Area Texas, U.S.A.Burnett Shale Gas Producing Area Texas, U.S.A. Subsurface structural Map of Top/Barnett ShaleSubsurface structural Map of Top/Barnett Shale

Barnett Shale Gas Reserves EstimateBarnett Shale Gas Reserves Estimate

図17 下部石炭系 Barnett Shale 層の構造単元分布図(左) Barnett Shale 層からの天然ガス・原油生産井の分布(青色破線での囲みの内部)(右):ガス井は赤点、油井は緑点

図18 テキサス州北部の Fort Worth 堆積盆でのシェールガス・オイル井の分布図(左)とシェールガス・オイル層である Barnett Shale 層の上限の構造図(右)

出所:Pollastro, et al., 2007

出所:Pollastro, et al., 2007(左、右)、Browning, et al., 2013b(中)

142016.5 Vol.50 No.3

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油田を形成する。類型①にシェールガス・オイルの開発地域が分布している。

(3)事例:Barnett Shale堆積盆

 シェールガス・オイルの探鉱開発の事例として、最もよく研究されたアメリカ合衆国テキサス州の Fort Worth堆積盆の下部石炭系(Mississippian)Barnett Shale層を示そう。Newark East 油田がこの堆積盆に1981年に発見・開発されて以後、顕著な発見はなかった。1990年代に入って、ターゲットをBarnett Shaleに絞り水平掘りとハイドロフラクチャリングで臨み、成功した。 図17は、テキサス州北部 Fort Worth堆積盆でのBarnett Shale層の構造単元構成図と油ガス田分布図で

ある。両者の比較から、石油(天然ガスとその液相)の分布が広域的な構造単元分布によって単純に規制されていることが示されている。すなわち、Barnett Shale中で生成された石油がBarnett Shale自身の中に滞留していることが推定される。また、図18右に示すBarnett Shale上限の地質構造図はさらに細かくこの構造規制を示す。 図18はBarnett Shale Gas層の上限の構造図(右)、埋蔵量分布図(中)、生産井分布図(左)の比較。埋蔵量分布図での分布は2012年基準であり、他の二つの図の示す分布より南東側に広がっているのは、経年に従った作業の進展を示す。天然ガスと原油の分布は盆央側に天然ガスが、浅部に向かって石油液相が分布することが示されている。彼らの2007年の論文では東部中央とその南

部が空白域だったが、その後の活動で埋蔵量図が示すように液相・天然ガスが開発されてきている。 Barnett Shale の開発に当たっては、事前の埋蔵量評価がまず評価方法から課題であった。在来型貯留層の埋蔵量の評価では、既存の評価法が確立されるなどし、物質均衡法によるシミュレーション、生産挙動のシミュレーションが行われ、SPE(Society of Petroleum Engineers:世界 石 油 工 学 者 協 会 )、 SEC

(Securities and Exchange Commission:米国証券取引委員会)などによって評価法

初期3カ月最大生産レートvs12カ月累計生産量 初期3カ月最大生産レートvs24カ月累計生産量 初期3カ月最大生産レートvs60カ月累計生産量

図20 垂直井と水平掘り井の場合での初期 3 カ月最大生産レート vs 累計生産量(12 カ月、24 カ月、60 カ月の 3 ケース)

(注)a: 1次相関係数、b: 1次相関での垂直切片(縦軸との交点)、R2: 1次相関でのデータの分散(1に近い値のほうが、1次相関性が強い)出所:Frantz, et al., 2005

• OGIP: 444Tcf as of 2010

GAS Liquid

GAS RESERVES

図19 The Barnett Gas Resourcesand Oil and Gas Productions

出所:www.eia.gov/oil_gas/rpd/shaleusa1.pdf

15 石油・天然ガスレビュー

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石油探鉱開発における技術革新と石油鉱業(その4=最終章)

と評価が規格化された。 図19(右上)はBarnett Shale Gasの埋蔵量評価値(緑色)と累計生産量(深紅色)の経年変化を示す。1992年から生産が試験的に始まり、順次増加、1998年から地域的な拡大が顕著に進み始め、2004年以降、堆積盆全体にわたって、探鉱開発が展開された。図20は、生産開始後3カ月での最大生産量(縦軸)と生産開始後12カ月、24カ月、60カ月までの累計生産量をそれぞれクロスプロットした三つのグラフを比較する目的で作成した。縦軸は短期の生産能力を示す。また、横軸は、累計生産量によって長期の生産能力示す。三つの累計生産期間でのこのクロスプロットを比較することで、初期生産能力と長期生産能力の時間変化と生産能力の経済評価の基礎データを得る。 図21は、ハイドロフラクチャリングの仕様をまとめたものである。シェールガス・オイルの生産は、方向・向きを揃えて平行に水平掘りされた坑井を数坑をまとめて生産単元を構成し、実施される。ハイドロフラク

チャリングはこの生産単元ごとに、実施しようとするゾーンを区分して、各坑井の区分を揃え、同時に実施する。図21では、ステージ1から11まで、順次段階的にフラクチャリングを実施した。その進行状況は、小地震波をモニターして解析し、小地震震源の震源位置を測量し、断裂の態様を図示する。 このような坑井グループを構成する理由は、ある領域全体の対象シェール層の流体流動特性を人工的に生じさせる断裂系により改質し、そのなかのシェール層に含まれる炭化水素(天然ガス)を坑井に流入させ、地表に回収する効率を向上させることにある。元来シェール層の浸透性は極めて低く、坑井のごく近傍の地層流体しか坑井に流入しないので、複数の坑井の間全体に可能な限り一様に断裂系を生じさせ、なおかつ隣り合う坑井同士が相互干渉しないようにハイドロフラクチャリングを実行するのが理想である。 坑井間の相互干渉は、1坑の生産量のピークからの生産量、貯留層圧力の早急な減退を生じさせる。

4. 資源量評価と資源探鉱・開発・技術の革新

 図22に、Gray(1977)の天然ガス資源の探鉱開発ピラミッドのMasters(1979)による図示一部を改訂し、

加筆したものを示す。三角形の上位の頂点は「資源が市場に流れ、商品化された段階の石油」を示す。技術的な

Hydrofracturing• Combined microseismic

monitoring result for Wells A to E horizontally drilled.

• The five wells make a unit of shale gas production.

• This hydrofracturing is performed in the stages 1 through 11.

4,000

3,500

3,000

2,500

2,000

1,500

1,000

500

0

feet

図21 ハイドロフラクチャリングでの破断発生位置の微小地震観測によるマッピング(色別で段階的フラクチャリングの破断状況を示す)

出所:Vermylen and Zoback, 2011

162016.5 Vol.50 No.3

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アナリシス

リスクは消滅し、商業リスクのみが付随する状態では三角形の底辺は、ある条件下での資源量の限界を示す。第一級のランクの資源は坑井により生産され、消費地まで輸送されるべき状態の原油などと同等と評価できる量を一般に、埋蔵量と呼ぶ。地下の第一級の良質な貯留層から地表に回収し商品化される。回収では技術リスクを伴うが、石油鉱業での他のリスクに比して小さい。浸透性が低いなどの問題で、僅少の生産レートしか期待できない貯留層は、第一級の貯留層と比べると、浸透性などで質的に低いランクとなるが、油価が一定以上の水準にあり、生産の経済性が保証できる場合は、地表への石油の回収に有意な寄与を期待できるものである。ここまで回収可能とすると、量的な規模が大きくなる。さらに低浸透性の貯留層の石油生産寄与を期待すると、三角形の底辺は下がり、その面積は大きくなり、期待される回収量が拡大する。また、ここまでが在来型の石油資源量を代表する。ここまでの資源の回収では油価がさらに高くなる必要がある。すなわち、より高度な技術を要し、回収のためのコストが大きくなっても採算が取れることが必要である。シェールガス・オイルの回収はこの在来型石油資源量の底辺を押し下げる効果に相当する。 シェールガス・オイルの領域まで底辺を押し下げるためには、大きなリスクを負う覚悟が必要となる。まず、1980年代まで回収量、回収可能量の評価方法が確立されていなかったことを挙げよう。これには、在来型の容積法のようにパラメーターを経験的に決めて計算によって、一応納得できる数値を算出することが難しい。一定

数以上の坑井での試行生産を実施し、水平坑井の生産挙動を見て生産推移を類型化し、フラクチャリングの方法、初期生産量、生産ゾーンの時間的移動方法(生産区間を改修する)などをパラメーターとした上でデータバンクを構成し、坑井のログパターン類型との比較により生産挙動を予想する。さらにそれに基づいて、期待可採鉱量評価を行う。埋蔵量の評価方法は多数提案されてきており、地域、層準によるシェール層の個性を反映させた方法が採られている。 数値的に資源可採鉱量、埋蔵量などの在来型の評価値の名称を流用して、シェールの資源量を確度と並行するように示すが、その拡大が、資源ピラミッド(三角形)の底辺を押し下げていくような評価になっているかどうかは未確定である。人工的に実施するハイドロフラクチャリングによるシェール層の破断系がマクロからミクロスケールまでどのような幾何学的形状に形成されているか、時間的に安定しているか、など未解明な要素が多い。 過去に開発・生産し得なかった既発見資源を開発・生産し、市場に提供し得るようにする技術革新は、大局的に見て必然的に資源ピラミッドの底辺を押し下げ、埋蔵量を増加させる。その技術革新は、探鉱作業での、どこにあるか分からない資源の存在を確認し、分布を確定するリスクよりもはるかに軽度のリスクと言える。図22に示した資源三角形の底辺を押し下げるリスクは技術リスクが大きい上に、見返りの大きさの保証が難しい点、一層リスクが高くなる。既存の技術モデルがない場合には、相当な覚悟が、経営的に見て必要となる。

図22 Resource Triangle

出所:Modified from Masters(1979)

NON-PRODUCTIVE TIGHT ROCKS

Stimulation: Hydrofracturing Large effective thickness: Horizontal DrillingShale Gas Shale Oil

Add

ition

alC

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FIRSTCLASS

LOWER GRADE RESERVOIRS

LOWEST GRADE RESERVOIRS

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Conventional Reservoirs

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石油探鉱開発における技術革新と石油鉱業(その4=最終章)

 ここまで、準備段階の背斜説から石油システムまでの概念の拡大、適用領域の拡大を軸に解説した。この節では、単なる背斜構造による重力・浮力との関係で成立する油ガス田という観点から、構造トラップに拡張された背斜説の持つ限界を考えたい。 背斜説による探鉱活動の対象の一つに微妙なトラップ

(subtle trap)のプレイがある。観察方法、探査方法の分解能とノイズの関係で、地下の地層の形状の把握がプロスペクトを認定するためのデータが量的にも質的にも不足する場合、プロスペクトの認定が難しい。量的に十分である場合でも、地震探査での往復走時を深度に変換する誤差によって、地質構造の形状が真の構造形態が解明できる最適な試掘位置の選択を誤るほど歪む場合がある。このような誤差による歪みが致命的になるのは、多くの場合、構造の比高(relief)が低いことによる。このような構造では、埋蔵量評価の精度が探掘井が増えても向上しない場合が多い。インドネシア中部スマトラ地域のカンパール地溝北部の盆央部での発見油田の埋蔵量評価が定まらず、開発に至らなかった事例もある。 背斜構造の軸部・頂部は、断裂が生じやすいために、そこから油ガスが漏出してしまう場合が多い。上部のシール層が粘土鉱物などの構成率が高い岩石の層である場合は、変形が流動による場合は、このような破断、断裂を生じず、シール層は断裂から逃れやすい。背斜構造のように見えるが、地層の褶曲原因が岩塩ドームの形成を主因とする場合、ドーム頂部の貯留層は、岩塩の動きによって薄化し、あるいは排除されてなくなり、翼部のみに油ガス層が発達する場合が多い。Spindletop油田はその典型事例である。 構造頂部が削剥され、貯留層に欠如する場合もある。また、砂層の堆積時に成長する背斜構造が海底に比高の低い高まりとなる。砂層がその高まりに向かってオン

ラップすることもあり、この場合も背斜頂部には貯留層を欠き、砂層は高まりの堆積物供給側のみに集中することになる。インドネシアの東カリマンタン・マハカムデルタ沖の深海ファンのプレイではこの類型が多い。その西セノ油ガス田発見は期待されたが、探掘が進むにつれ埋蔵量が萎

しぼ

み、オペレーターであったUnocal株の暴落に乗じてChevronがUnocalを買収した事件もあった。 White(1885)が挙げた「十分な規模の背斜」がその時々の経済状況に適合する規模を持ち、期待埋蔵量が開発・生産の商業性を保証するかどうか、現在も「閉塞構造」の規模として問われる。世界中の背斜構造が全て試掘された時、なお、探鉱投資が継続されるであろうか? 発見された油ガス田が必ずしも開発されるわけではない。事例として、水深400mを超える深海域での天然ガス田開発がある。深海でのガス生産坑井を制御する技術は未開発である。未

いま

だに深海域での天然ガス開発例がないのは、この点の障壁の解消ができていないからである。また、できたとしても、ガス生産を中断し、坑井を改修するような場合、海水の対深度の温度分布、水圧分布などの水界構造から、10 ~ 0℃の海水に触れているパイプ内の天然ガス(メタンガスが主体)が水和し、パイプ内でハイドレーション・ブロッキングを起こすことを防止する必要がある。電熱コイルヒーターをパイプに巻くこと、水温の高い地層水などを二重壁のパイプの外側を通すことなどが考えられるが、パイプ、施設維持のコストは尋常ではない。今後、さまざまな未解決の課題を克服する努力を要する。 遠隔地域での発見油ガス田の開発も坑井元でのガス処理、輸送方法が課題となる。さらに、商業的開発が可能かどうか、技術課題の他、商業課題(売り先の確保、輸送方法の確立など)があることを忘れてはならない。

6. 炭化水素資源開発の技術革新によるシェール資源開発の展開

 シェール資源の生産国であるアメリカ合衆国の原油生産量は、1970年にピークに達して以来、減退傾向を示してきたが、2007年以後、定常的に明瞭な増加傾向に転じている。このような状況を「シェール革命」と呼んで、

単純な技術革新以上の成果を誇っている。 1980年代後期からの原油資源の供給可能性の限界の顕在化が近いと警告されるようになったが、現実には2014年までの生産量は、高油価環境もあって依然プラ

5. 背斜探鉱の限界

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トー・上昇の傾向にある。1998年には、Campbell とLaherrère(1998)によって、油ガス田の究極埋蔵量の分布は対数放物分布をとること、従前からの生産方式での石油生産量がピークオイルを迎え、これまでの安価な石油を期待できなくなることが主張された。しかしそれも、2005年頃までで、「ピークオイル」説に対する賛否の議論は盛りを過ぎ、現時点では議論自体に意味がなくなったと考えられ、沈静化している。 かつての鯨油の枯渇における石油による灯油の代替が異種資源の同一機能物による代替であったことと異なり、1970年代からのピークオイル騒動とその解決策としてのシェールガス・オイルは、産状の異なる同一物による既存資源の延命であり、枯渇傾向にある生産物は、

同一の物質(例えば炭化水素)であっても、従来のその資源の生産現場・生産方式とは異なる生産現場・生産方式による生産物が出現すると、その資源種の生産量は回復し得る。Hubbert の好む理由付けで説明すると、ロジスティック方程式が制御する過程での内的成長率の増加が起きる場合、このような生産量の増加への反転増加が生じる。あるいは全く別の大規模なプールからの生産・供給が始まったと考え得る(本村・本田,2007)。かつての石油の資源としての台頭は、現在のシェール資源の台頭とは異なることを指摘しておきたい。鯨油⇒石油の代替過程での諸事情は、シェール資源開発の状況下では適用できない。

7. 「21世紀の背斜説」を構成する意義は何か

 石油鉱業の既存成立条件を形成する諸概念の再考と、再構築が必要な段階に既に入っている。既往の技術で対応できる資源開発環境が限定されることを自覚することによって、現在あるいは近い将来での継続性のある投資を、石油に振り向けることができる。 では、「21世紀の背斜説」とは何か? 具体性のない言葉以上のものでしかなければ、実効性がない。シェールガス・オイルまでの石油探鉱開発の目標は、炭化水素で

あった。またCTL(Coal to Liquid:石炭の液化)、GTL(Gas to Liquid:天然ガスを原料とする液化炭化水素の合成)は、いわば石油を製造するために、石炭(kerogenという石油の根源物質が石炭の類型の一つであることを考えると、石炭も石油同類型とし得る)、天然ガスを原料として使用するものである。また、地表での反応器プラントによる合成であるため、地下に賦存される資源を坑井によって地表に回収するという既存技術の応用もできない。

8. 将来

 では、「石油システム・シェールガス・オイルの次は?」を、いかに考えるか。石油システム、プレイ、プロスペクトを一組にして、試掘候補の選定に用いるには、まず評価技術の精度が問題である。多数プロスペクトの比較評価の点では技術的な均質性も重要である。しかし、日本企業の実態として、比較において統計的有意性を保証できる数のサンプルを採れるかは大いに疑問である。1年間に700 ~ 1,000のプロジェクトの提案があり、そのなかから、会社がその経営政策として設定する年間発見量を実現するために、各提案を過去を含めたプロスペクト集団のなかで順位付ける評価方法を年間100程度までの提案数の集団に合理的に選択し、整理し、運用するこ

とが可能であろうか。まず、この点を問う必要がある。年間たかだか10程度のプロジェクトを扱う会社であれば、むしろ個別的に評価し、投資の可否決定を行う能力が求められると考える。 独自の探鉱開発での価値観を持っているか。その価値観は実践の場でテスト済みか。この点は、人材教育と関わるであろう。またこのテスト自体に多額の投資と長期間の積み重ねが必要となることを知っておくべきであろう。石油鉱業での失敗の典型は何もしないことである。10の提案を10回否決すれば、9回は正解であろうが、まぐれ当たりすら起きない。 多数の候補案件から、「有望」と評価される新規探鉱開

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石油探鉱開発における技術革新と石油鉱業(その4=最終章)

発案件を発掘するためには、一定の規格化された方式を決めておく必要がある。石油システム、プレイ、プロスペクトの連携はその目的に沿うように、120年ほどかけて確立された仕組みである。会社設立後、一旦大規模油ガス田を発見し、経営的に安定期に入ると、新規の高いリスクの探鉱プロジェクトを嫌がる傾向が出てくる。しかし、油ガス田の寿命は長くて30年、例外的に75年程度であり、最盛期は10年以下と考えてよい。 新規案件における障壁は、①地質学的な背景情報の不足する地域、②政治的な障壁、③遠隔地・難地域(海域)、④掘削技術障害(例:異常高圧層の存在)、⑤生産技術障壁、などである。以下に筆者の知る事例をそれぞれ挙げる。例えば①地質学的な背景情報の不足する地域を調べ

る。政治的な障壁のある地域を調べる。遠隔地・難地域(海域)を調べる。②掘削技術障害(例:異常高圧層の存在)によって試掘が到達しない地域、深度帯を調べる。サンドトラブルなどの生産技術障壁のある地域を調べる。 異常高圧地域は、予測に関しては、地震探査記録の応用など進歩が見られるが、掘削技術としては、依然不可能に近い。石油地質学的課題としても、異常高圧領域で石油の集積が起きるか、という課題は未解決であり、そもそも異常高圧領域を試掘する価値があるのかどうかも判然としていない。掘削できないから石油地質学が進まず、また、異常高圧領域に石油が集積することを確立できないから、あえて試掘する決断もし難い、という消極的な悪循環が生じている。経営的決断が必要であろう。

9. 結語として

 人は未来に背中から入る、と言われる。石油探鉱開発企業は、まさに未来への視界はゼロ(真っ白)で、視界にある過去と今進みつつある現在の状況を見て、時の流れに乗って、未来に入っていく。過去と現在は、いわば未来のあるべき姿を想像するための参考モデルとして見ることになる。

(1)過去と現在

 データベースは過去の事例の集積であり、過去の人々の物の見方によるバイアスのかかった過去の情報である。したがって、未来を予想するためには、①「過去の人々の物の見方」と、②「過去の人々の挙動、および環境とその結果」の2面の情報を知ることが前提になる。 この最終章では、背斜説から発展した石油システム概念を再考したことから始まるシェール革命と、さらにその先の未来展望、またその展望の実現のために今なすべきことを考えた。石油鉱業の整理された形でのビジネスモデルの設定に既に、現時点で欠けるか不足する要素に対する投資という観点と、企業リスクの観点が入っていた点を強調しておきたい。 技術革新(Innovation)というと大跳躍のように聞こえるが、技術進歩に大きな跳躍はない。九つの既存技術が一つの新規技術を生かす。既存インフラストラクチャーの利用のない新技術はあり得ない。基礎知識と基本技術の習得・錬磨(九つの既存知識の習得)と一つの新規なアイデア(一つの新規技術)が技術革新を可能にする。自由

な、自然現象に即した新規アイデアをその基礎知識・技術の常識の枠から獲得する努力が必要となる。 新規技術には、その最終目的達成のための中間手段となり、その新規技術を支持する既存技術が必要であり、その既存技術の実効性の実現には、改良が必要となる。背斜説に対する掘削技術がこれに相当する。初期石油技術においては、探鉱掘削生産などの分野はなく、全体が一つであった。新規技術の成果が、社会に受け入れられるには、その成果としての商品の持つ需要充足目的だけではなく、経済性の実現が必要である。社会に対する貢献をどう実現するか。既存インフラストラクチャーとの整合性の維持は不必要な社会インフラの新たな建設を必要としないこと、さらに技術の規格化を実現して、社会全体でその技術成果を利用できることを要する。 新規技術は業界あるいは広く社会一般に流布している部品、あるいは概念の利用によるサポートが充実していなければ、特異な新案としてしか認識されない。南北戦争での武器部品の交換不可能性の問題、ねじの互換性の要請を通して標準・規格制度の制定が新規技術を支えることになる(橋本,2013;Rybczynski, 2000)。石油システムなどは石油探鉱開発での標準化、規格化の達成であったと言える。 1850年代、背斜説は、Edwin Drakeの勇敢なUS$500の自己投資によって、当時の経済的無理を押さえ込み、近代石油産業確立への道に踏み込むための呪術性を獲得したが、層位トラップは、現在でも経営者から忌避され

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ることが一般である。層位トラップと称するプロスペクトの試掘の失敗事例があまりに多いためであろう。 新規技術に結び付く新説を提示するには、提案者の既往技術との密接な関連が鍵となる。提案し、テストを経た背斜説でさえ、1910年頃まで反対意見が残ったことは、記憶しておく価値があろう。

(2)未来へ

 背斜説においては、事前の地表観察技術を利用でき、観察記録を理解する人のいることがその前提条件であった。これは、教育するということに対する要請を意味する。また、この教育の向こう側に進むために将来の具体的技術展開を読む能力の育成が必要である。 将来展望においては「無理」ということの把握、「必要」ということの把握を通して、「無理」を何が「無理」にしているのかを分析し、周辺技術を学び応用することが必要である。Drake井の例で言えば多様な分野の結合を図り、実現していったことは驚愕にすら値する。経済的な「無理」、物理学的、かつ原理的な「無理」はこの過程で峻別しなければならない。経済的な「無理」に対してのみ「嘘

うそ

の効用」は実効性を持つが、物理学的、かつ原理的な「無理」は押し通すと事故につながる。serendipity(偶然に発見する方法)ということは石油鉱業では、不可避な要素であるが、物理学的、原理的な「無理」には適用されない。また、石油探鉱開発では「無理」の多くが経済的な「無理」である。「見る前に跳べ」ではなく、一旦、場の選択をした後は「まず見よ、そして跳べ(跳ばない選択肢はない)」ということが、石油探鉱開発での鉄則であろう。 世界の石油業界では、詐欺罪はないと言われる。石油の探鉱開発では他の事業に比べて事業リスクが著しく高いからである。探鉱の専門家になるには、「無理」と思えることに突破口を見出す辛抱と「諦めの悪さ」が必要である、と多くの成功者は言う。踏み込まねば発見できず、さらに投資しなければ開発できず、設備と社会インフラストラクチャーの不備な場所では、そのためのコストは膨大である。現在、中東地域からの安価な天然ガスの供給が確約されている環境では、新たな地平線を越えるだけの踏み込みは躊

ちゅうちょ

躇される傾向にある。10年あるいは20年先、今の躊躇がいかなる結果を生むか、社会全体でシミュレーションをすべき時期であろう。 現在の技術進歩は物理学-化学系、生物-医学系が主体となっている。石油探鉱技術でも同様であるが、物理学-化学系、生物-医学系の進歩が新たな石油鉱床の発見、既発見未開発油ガス田の開発、生産終了油ガス田の再開発等にどれほど向けられているか。そしてまた、10年

あるいは20年後の社会への、どれほどの寄与に結び付け得るか。

 最後に、筆者が2013年までに考慮した、今後の石油探鉱の場になり得ると思う地域を挙げておきたい。「中るも八

はっ

卦け

、中らぬも八卦」であるが、リストアップし、調査することなしには前進はない。否定的な評価も、調査候補の空白を埋めることになる。既に活動が開始された地域は排除したつもりである。

①デルタ関連   ロシア(ⅰ)レナ川デルタ地帯の過去への追跡、(ⅱ)

レナ川の低海水準期のデルタ地帯とその延長部の深海扇状地、(ⅲ)エニセイ川の低海水準期のデルタ地帯、深海扇状地

   長大な河川系を背景にして、大型の現げんせい

世(地質時代としての現代)デルタは河口部に発達する。エニセイ川は河口部が内陸側に深く切れ込んでおり、デルタの形状が不明瞭であるが、堆積量が大きい。この点は南米のラプラタデルタと比較できる。両デルタは、カナダのMacKenzie川のデルタ地域での石油探鉱・開発の先行事例がある。特に開発方式が確立されている点が魅力になる。気象条件、夏季でのツンドラの障害、ツンドラからのCO2の排出問題など課題は多数ある。

②石油探鉱開発過熟成堆積盆   アルゼンチンのSan Jorge堆積盆(ゴンドワナ大陸

のジュラ紀からの内陸湖沼成堆積盆)。   アンデス山脈に沿った位置の、同様なNeuquén堆

積盆はシェールガス・オイルの探鉱・開発の場として再生した。在来型油田の開発が進み枯渇に至った堆積盆で、インフラストラクチャーが完備し、北米域と同様の条件にあった。では、もう一つの堆積盆はどうか。

③炭酸塩岩貯留層探鉱   テチス(Tethys)海(古地中海)の領域の分布内調査。   デボン系、二畳系、ジュラ系、白亜系の追跡と地下

分布の整理。隠れた炭酸塩岩体の分布を推定する。

④今後のシェールガス・オイル探鉱・開発場の選択条件 (ⅰ) 中部デボン系より若い地層が数千メートル以上の

層厚をもって、分布すること。 (ⅱ) プレ・カンブリアンの基盤のなか、あるいは辺縁

部にあること。 (ⅲ) 堆積盆全体の構造変形度が小さく、沈降が主体の

21 石油・天然ガスレビュー

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石油探鉱開発における技術革新と石油鉱業(その4=最終章)

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構造運動に支配されてきていること。 (ⅳ) 断裂系は、顕著な発達を示さないこと。   条件(ⅰ)は陸上植物の出現という条件と同値にな

る。石油層の発達と直接関連する。条件②と③は地質学的に(ⅱ)が(ⅲ)の前提になる。(ⅳ)は生成された石油の移動に関係する条件になる。

   これらの条件に関して、アメリカ合衆国カリフォル

ニア州のMonterey珪質頁岩の位置付けが問題となる。しばしば、比較され、似ているとされる日本の中新統女おんな

川がわ

層(秋田県)珪質岩のシェールガス・オイルの可能性に関連する。近時では女川層の研究・実践がMonterey層より先行する状況にあるが、両者ともシェールガス・オイルに関しては、まだ端緒に就いたところとも言える。

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6.(Appendix(p. 204-216):(p.204)The“ Anticlinal Theory” of Natural Gas(originally published as“ Natural Gas Supplement” in the American Manufacturer in April, 1886, p.11-13, and(p.205-216)“Enunciation of Anticlinal Theory” should be highlighted.)

23 石油・天然ガスレビュー

JOGMEC

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石油探鉱開発における技術革新と石油鉱業(その4=最終章)

執筆者紹介

本田 博巳(ほんだ ひろみ)1975~2012年、石油資源開発(株)、インドネシア石油(現・国際石油開発帝石〈株〉)で主にインドネシアの探鉱プロジェクトに従事。京都での2012年から3年半の修業の後、現在、さらに東京大学大学院新領域創成科学研究科で泥質岩に関連する地質諸現象について勉強中。泥岩内での破棄物の封入技術評価、シェール資源の探鉱法への応用を考えている。身体の経年“劣化”により、野外調査がつらくなりつつある。雪の降り出す直前、11月上旬に秋田で行う川沿いの地表調査など、還暦を疾

うに過ぎた年寄りの冷や水も地球温暖化に対する抵抗になろうかと思いつつ。趣味は将棋、読書など。博士(工学)。