再処理施設の火災時条件におけるRu及びEuの 有機溶媒への分配 ... ·...

30
JAEA-Technology 2016-012 DOI:10.11484/jaea-technology-2016-012 再処理施設の火災時条件における Ru 及び Eu の 有機溶媒への分配挙動と有機溶媒燃焼時の 放出挙動(受託研究) Solvent Extraction and Release Behavior of Ruthenium and Europium in Fire Accident Conditions in Reprocessing Plants (Contract Research) 安全研究・防災支援部門 安全研究センター 燃料サイクル安全研究ディビジョン Fuel Cycle Safety Research Division Nuclear Safety Research Center Sector of Nuclear Safety Research and Emergency Preparedness 日本原子力研究開発機構 June 2016 Japan Atomic Energy Agency 天野 祐希 渡邊 浩二 真崎 智郎 田代 信介 阿部 仁 Yuki AMANO, Koji WATANABE, Tomoo MASAKI, Shinsuke TASHIRO and Hitoshi ABE

Transcript of 再処理施設の火災時条件におけるRu及びEuの 有機溶媒への分配 ... ·...

  • JAEA-Technology

    2016-012

    DOI:10.11484/jaea-technology-2016-012

    再処理施設の火災時条件におけるRu及び Euの有機溶媒への分配挙動と有機溶媒燃焼時の

    放出挙動(受託研究)Solvent Extraction and Release Behavior of Ruthenium and Europium in

    Fire Accident Conditions in Reprocessing Plants (Contract Research)

    安全研究・防災支援部門安全研究センター

    燃料サイクル安全研究ディビジョン

    Fuel Cycle Safety Research DivisionNuclear Safety Research Center

    Sector of Nuclear Safety Research and Emergency Preparedness

    日本原子力研究開発機構

    June 2016

    Japan Atomic Energy Agency

    天野 祐希 渡邊 浩二 真崎 智郎 田代 信介

    阿部 仁

    Yuki AMANO, Koji WATANABE, Tomoo MASAKI, Shinsuke TASHIRO

    and Hitoshi ABE

  • 本レポートは国立研究開発法人日本原子力研究開発機構が不定期に発行する成果報告書です。

    本レポートの入手並びに著作権利用に関するお問い合わせは、下記あてにお問い合わせ下さい。

    なお、本レポートの全文は日本原子力研究開発機構ホームページ(http://www.jaea.go.jp)より発信されています。

    This report is issued irregularly by Japan Atomic Energy Agency.Inquiries about availability and/or copyright of this report should be addressed toInstitutional Repository Section,Intellectual Resources Management and R&D Collaboration Department,Japan Atomic Energy Agency.2-4 Shirakata, Tokai-mura, Naka-gun, Ibaraki-ken 319-1195 JapanTel +81-29-282-6387, Fax +81-29-282-5920, E-mail:[email protected]

    © Japan Atomic Energy Agency, 2016

    国立研究開発法人日本原子力研究開発機構 研究連携成果展開部 研究成果管理課

    〒319-1195 茨城県那珂郡東海村大字白方 2 番地4電話 029-282-6387, Fax 029-282-5920, E-mail:[email protected]

  • i

    JAEA-Technology 2016-012

    再処理施設の火災時条件におけるRu 及びEu の有機溶媒への分配挙動と有機溶媒燃焼時の

    放出挙動(受託研究)

    日本原子力研究開発機構 安全研究・防災支援部門 安全研究センター

    燃料サイクル安全研究ディビジョン

    天野 祐希、渡邊 浩二※、真崎 智郎※、田代 信介、阿部 仁

    (2016 年 3 月 29 日受理)

    再処理施設における有機溶媒の火災事故時の安全性評価に資するため、共除染工程に存在する

    放射性元素のなかで比較的揮発性が高い化学形をとる可能性がある Ru の可燃性有機溶媒への分

    配挙動、並びに溶媒燃焼に伴う Ru と Eu の放出挙動を調査した。Ru についてドデカン中の

    30 %リン酸トリブチル(TBP)や TBP 劣化物の濃度及び抽出温度をパラメータとして硝酸水溶

    液からの Ru 分配試験を行い、TBP 濃度の上昇及び温度の低下により有機溶媒への Ru の分配比

    が低下するなどの分配挙動データを取得した。また、火災事故時の有機溶媒燃焼に伴う Ru、Eu

    の有機溶媒から放出挙動を把握するための燃焼試験を行い、溶媒の燃焼に伴う Ru の放出割合は

    非揮発性FP 元素の指標であるEu の放出割合より 1 桁以上大きくなるという結果を得た。

    本報告書は、日本原子力研究開発機構が原子力規制庁から委託されて実施した「平成 26 年度原子力施設等防災対策等委託費(再処理施設における火災事故時影響評価試験)事業」の研究成果の

    一部を取りまとめたものである。 原子力科学研究所:〒319-1195 茨城県那珂郡東海村大字白方 2-4 ※技術開発協力員

    i

  • ii

    JAEA-Technology 2016-012

    Solvent Extraction and Release Behavior of Ruthenium and Europium in

    Fire Accident Conditions in Reprocessing Plants (Contract Research)

    Yuki AMANO, Koji WATANABE※, Tomoo MASAKI※, Shinsuke TASHIRO and

    Hitoshi ABE

    Fuel Cycle Safety Research Division

    Nuclear Safety Research Center

    Sector of Nuclear Safety Research and Emergency Preparedness

    Japan Atomic Energy Agency

    Tokai-mura, Naka-gun, Ibaraki-ken

    (Received March 29, 2016)

    To contribute to safety evaluation of fire accident in fuel reprocessing plants, solvent

    extraction behavior of ruthenium, which could form volatile species, was investigated.

    Distribution ratios of ruthenium at fire accident conditions were obtained by distribution

    experiments with several solvent compositions at different temperature as parameters. In

    order to investigate release behavior of ruthenium and europium at fire accident, release

    ratios of ruthenium and europium were also obtained by solvent combustion experiments. It

    was found that the release ratio of ruthenium was more than that of europium as non-volatile

    fission product element by a factor of 10.

    Keywords: Nuclear Fuel Cycle Facility, Safety, HALW, Fire Accident, Ruthenium, Europium,

    Release, TBP, DBP

    ※Collaborating Engineer

    ii

  • JAEA-Technology 2016-012

    iii

    目 次

    1. 緒言 ··················································································································· 1

    2. 分配挙動把握試験 ································································································· 2

    2.1 試験条件及び方法 ····························································································· 2

    2.2 試験結果及び考察 ····························································································· 3

    3. 有機溶媒燃焼試験 ································································································· 7

    3.1 試験条件及び方法 ····························································································· 7

    3.2 試験結果及び考察 ····························································································· 9

    4. 結言 ··················································································································· 15

    謝辞 ······················································································································· 16

    参考文献 ················································································································· 16

    付録 ······················································································································· 17

    Contents

    1. Introduction ········································································································ 1

    2. Distribution experiment ······················································································· 2

    2.1 Experimental condition and method ··································································· 2

    2.2 Results and discussion ······················································································ 3

    3. Solvent combustion experiment ············································································· 7

    3.1 Experimental condition and method ··································································· 7

    3.2 Results and discussion ······················································································ 9

    4. Conclusion ·········································································································· 15

    Acknowledgment ····································································································· 16

    References ·············································································································· 16

    Appendix ················································································································ 17

    iii

    JAEA-Technology 2016-012

  • This is a blank page.

  • JAEA-Technology 2016-012

    - 1 -

    1.緒 言

    日本原燃株式会社が青森県六カ所で整備を進めている商業用再処理工場の核燃料再処理プロセ

    スでは、PUREX法が採用されている。これは、使用済燃料を硝酸水溶液で溶解し、有機溶媒

    (30 %リン酸トリブチル(以下、TBPという。)/ドデカン)を用いて核燃料物質を核分裂生成物

    (以下、FPという。)から分離・精製するものである。東京電力福島第一原子力発電所事故を受

    け、「使用済燃料の再処理の事業に関する規則」が改正され、再処理施設に対しても「設計上定

    める条件より厳しい条件の下において発生する事故」として新たに重大事故の概念が導入され、

    セル内有機溶媒火災が重大事故の1つとして挙げられている。従来の設計基準事故としては、Pu

    精製工程での有機溶媒火災が考慮されており、有機相中に存在し燃焼により放出されたPuの公衆

    への影響のみが評価されている。しかしながら、核燃料物質とFPの分離・精製が行われる共除染

    工程での有機溶媒火災を想定した場合には、燃焼した有機溶媒からはFPも気相へ放出される。特

    にFPのうちRuは揮発性を有する化学形を取ることが知られており、ガス状のまま換気系や建屋

    内を移行する場合には、建屋外への移行量が多くなり、公衆への影響も大きくなる可能性がある。

    したがって、より広い条件の下での有機溶媒火災に伴う公衆への影響を評価するためには、Pu等

    の核燃料物質に加えてRu等FPの放出挙動データを取得・整備することが必要となると考えられ

    る。

    以上の背景のもと、原子力規制庁の原子力施設等防災対策等委託費による事業「再処理施設に

    おける火災事故時影響評価試験」を開始した。その目的は、有機溶媒燃焼に伴う放射性物質の放

    出・移行挙動や煤煙の目詰まりによるHEPAフィルタの差圧上昇などの閉じ込め機能評価に係る

    データを取得するとともに、これらのデータを相互に関連付けることで火災事故時の放射性物質

    移行挙動評価モデルの構築を図ることにある。平成26年度においては、まず、有機溶媒中に分配

    されたRuが燃焼に伴って気相に放出されるか否かについての基本的な確認を行うことを目的とし

    た予備的な燃焼試験を行った。本報は、その成果の一部をとりまとめたものである。

    ここでは、Ru及び非揮発性であるFPの代替物質をあらかじめ抽出させた30%TBP/ドデカンを

    燃焼させ、それに伴う元素の気相への放出挙動を観察した。非揮発性FPの指標物質として、有機

    溶媒燃焼に伴う酸化によって安定な非揮発性の酸化物を形成するEuを用いた。本報では、この試

    験を「有機溶媒燃焼試験」ということにする。

    ドデカンの引火点は74℃と報告されている。一方、TBPの引火点は147℃と相対的に高い。し

    たがって、有機溶媒の燃焼が進行すると、相対的に低い引火点を有するドデカンの燃焼が進行し、

    JAEA-Technology 2016-012

    - 1 -

  • JAEA-Technology 2016-012

    - 2 -

    有機溶媒中でTBPが濃縮していく。また、TBPの熱分解によるDBP(リン酸ジブチル)等のTBP

    劣化物の生成も予想される。これらの有機溶媒の組成変化は、Ruの分配挙動に影響を与える可能

    性がある。そのため、燃焼する有機溶媒中のRuの存在量を評価するためには、分配挙動に対する

    有機溶媒の組成変化の影響を把握することが重要となる。そこで有機溶媒燃焼試験に先立ち、有

    機溶媒中でのTBP及びDBP濃度と有機溶媒の温度をパラメータとして、硝酸水溶液とTBP/ドデカ

    ン間のRuの分配比を測定した。本報では、Ruの分配比を測定するための試験を「分配挙動把握

    試験」ということにする。なお、Euは30%TBP/ドデカンには分配されにくいことに加え、非揮

    発性であることから有機溶媒燃焼試験において放出されるEu量は非常に少量となり、放出量の定

    量が困難となることが予想された。そこで本試験では、硝酸リチウム(LiNO3)の塩析効果を利

    用することで、Euの分配比を向上させる可能性についても検討した。この検討結果については、

    付録に記載した。

    2.分配挙動把握試験

    2.1 試験条件及び方法

    試験には、すべて特級試薬を用いた(以下、3 章で述べる有機溶媒燃焼試験を含め同じ)。

    有機溶媒中の TBP 及び TBP 劣化物を代表させた DBP の濃度と有機溶媒の温度を変えること

    で、Ru の有機溶媒への分配比がどのように変化するか調べた。

    同体積の有機溶媒と硝酸水溶液を 200 mL ガラス製容器に入れ、恒温振とう機で一定温度に保

    ち一定時間の振とうを行うことで抽出を行った。抽出後、静置してから水相を採取し、ICP-MS

    (パーキンエルマー(株)製 DRC-e、以下同じ。)で Ru の濃度を定量した。残った有機相を採取し、

    同体積の硝酸溶液と同一容器に入れ、恒温振とう機で温度を 20℃に保ち一定時間の振とうを行う

    ことで逆抽出を行った。抽出時と同様に静置してから水相を採取し、ICP-MS で Ru の濃度を定

    量した。

    水相から有機相へのRu の抽出

    液相比:有機相 20 mL-水相 20 mL

    有機相:30、50、70 %TBP-ドデカン、30 % TBP- 0.03 mol/L DBP ドデカン

    水相:3 mol/L 硝酸および 3×10-3 mol/L 硝酸ニトロシルルテニウム

    振とう条件:20℃、40℃、60℃、8 時間

    JAEA-Technology 2016-012

    - 2 -

  • JAEA-Technology 2016-012

    - 3 -

    有機相から水相へのRu の逆抽出

    液相比:有機相 15 mL-水相 15 mL

    有機相:抽出後有機相溶液

    水相:3 mol/L 硝酸

    振とう条件:20℃、8 時間

    水相中の硝酸濃度は、核燃料再処理プロセス中の共除染工程における硝酸濃度である 3 mol/L

    とした。なお、水相中のRu の初期濃度は 3×10-3 mol/L とした。この濃度は、逆抽出後の水相中

    Ru 濃度が ICP-MS の定量下限 1.5×10-10 mol/L を上回る濃度である。TBP 濃度は燃焼前の溶媒

    中の濃度である 30 %を基準とし、燃焼に伴う有機溶媒中の濃縮の進行を模擬して、50 及び 70%

    の条件とすることとした。DBP については、通常の TBP 中の存在量は非常に少ない 1)ことから、

    基本の濃度条件としては 0 mol/L とした。有機溶媒燃焼に伴う DBP の生成量に関する情報はな

    いため、本報では、30%TBP/ドデカンに対する DBP 濃度を 1%(=0.03 mol/L)とすることにし

    た。

    また、分配挙動把握試験に先立ち、文献情報 2)も参考にしながら、Ru の抽出が平衡に達するの

    に必要な時間を検討した。その結果を踏まえて、振とう時間については、安全側の条件として 8

    時間とすることとした。Ru の抽出に時間を要する原因は、Ru のニトラト錯体の中で分配比の大

    きいトリニトラトニトロシルルテニウム(RuNO(NO3)3)錯体の生成速度が TBP による

    RuNO(NO3)3の抽出速度よりも遅いためであると考えられる 2, 3)。

    2.2 試験結果及び考察

    図 2-1 に、20℃の条件で測定した、TBP 濃度に対するRu の分配比の変化を示す。TBP 濃度が

    50 %の場合に分配比は 0.19、また、70 %の場合に分配比は 0.15 であった。図 2-2 に、TBP 濃度

    が 30 %の条件で測定した、温度に対する Ru の分配比の変化を示す。温度の上昇に伴い Ru の分

    配比は 20℃での 0.12 から、60℃での 0.04 まで低下した。TBP 濃度 30 %、50 %及び 70 %のそ

    れぞれの条件で測定した Ru の分配比の温度依存性に及ぼす DBP 添加量の影響を図 2-2、2-3 及

    び 2-4 に示す。TBP 濃度が 30 %の条件では、有機相のDBP 濃度の分配比への影響は見られなか

    った。TBP 濃度 50 及び 70 %の条件では、20℃及び 40℃で DBP 濃度が 0.03 mol/L の場合に分

    配比が若干低下する傾向が見られた。図 2-5 は、横軸を TBP 濃度としてそれぞれの温度で測定し

    た分配比(DBP 濃度 0.03 mol/L)をプロットして、パラメータの相関性を解りやすく示したもの

    JAEA-Technology 2016-012

    - 3 -

  • JAEA-Technology 2016-012

    - 4 -

    0.1

    1

    10

    0 20 40 60 80 100

    D Ru[‐]

    TBP濃度 [vol%]

    20℃, DBP 0 mol/L

    硝酸濃度:3 mol/L

    TBP 濃度 [%]

    である。例えば、TBP 濃度が 30 %で 20℃の場合とTBP 濃度が 70 %で 60℃の場合を比較すると、

    分配比は両方とも 0.1 であり、TBP 濃度上昇による分配比の上昇と温度上昇による分配比の低下

    が起こり、その結果として同程度の分配比となったことが読み取れる。

    Pruett は、DBP を加えた 30%TBP/ドデカンの有機相と硝酸ニトロシルルテニウム-硝酸水溶液

    相の間の Ru の分配比を測定している 2)。そのなかで、DBP を加えていない系で Ru の分配比の

    硝酸濃度依存性に関する検討も行っており、TBP 濃度 30 %、硝酸濃度 3 mol/L の場合で分配比

    0.17 との結果を報告している。この値は、図 2-1 のTBP 濃度 30 %の分配比 0.12 と同程度の結果

    である。一方で、Pruett は、DBP 濃度が高くなるにつれて、Ru の分配比は上昇することを示し

    ており、この点は図 2-3 と異なる。具体的には、DBP を加えない場合で分配比 0.35、DBP 濃度

    0.200 mol/L の場合で分配比 0.95 を報告している。ただ、Pruett の DBP 濃度をパラメータとし

    た試験での水相中硝酸濃度は 2 mol/L である。硝酸濃度を 3 mol/L に上昇させた場合において、

    DBP による分配比の向上効果がどの程度みられるかは報告されていない。

    図 2-1 Ru の分配比に対するTBP 濃度の変化

    JAEA-Technology 2016-012

    - 4 -

  • JAEA-Technology 2016-012

    - 5 -

    図 2-2 Ru の分配比に及ぼすDBP 濃度の影響(TBP 濃度:30%)

    図 2-3 Ru の分配比に及ぼすDBP 濃度の影響(TBP 濃度:50%)

    0.01

    0.1

    1

    0 20 40 60 80 100

    D Ru[‐]

    温度 [℃]

    TBP 30 vol%, DBP 0 mol/L

    TBP 30 vol%, DBP 0.03 mol/L

    硝酸濃度:3 mol/L

    TBP 30%, DBP 0 mol/L

    TBP 30%, DBP 0.03 mol/L

    0.01

    0.1

    1

    0 20 40 60 80 100

    D Ru[‐]

    温度 [℃]

    TBP 50 vol%, DBP 0 mol/L

    TBP 50 vol%, DBP 0.03 mol/L

    硝酸濃度:3 mol/L

    TBP 50%, DBP 0 mol/L

    TBP 50%, DBP 0.03 mol/L

    JAEA-Technology 2016-012

    - 5 -

  • JAEA-Technology 2016-012

    - 6 -

    図 2-4 Ru の分配比に及ぼすDBP 濃度の影響(TBP 濃度:70%)

    図 2-5 Ru の分配比に及ぼす温度とTBP 濃度の影響

    0.01

    0.1

    1

    0 20 40 60 80 100

    D Ru[‐]

    温度 [℃]

    TBP 70 vol%, DBP 0 mo/L

    TBP 70 vol%, DBP 0.03 mo/L

    硝酸濃度:3 mol/L

    TBP 70%, DBP 0.03 mol/L

    TBP 70%, DBP 0 mol/L

    0.01

    0.1

    1

    0 20 40 60 80 100

    D Ru[‐]

    TBP濃度 [vol%]

    20℃, DBP 0.03mol/L

    40℃, DBP 0.03mol/L

    60℃, DBP 0.03mol/L

    硝酸濃度:3 mol/L

    TBP 濃度 [%]

    JAEA-Technology 2016-012

    - 6 -

  • JAEA-Technology 2016-012

    - 6 -

    図 2-4 Ru の分配比に及ぼすDBP 濃度の影響(TBP 濃度:70%)

    図 2-5 Ru の分配比に及ぼす温度とTBP 濃度の影響

    0.01

    0.1

    1

    0 20 40 60 80 100

    D Ru[‐]

    温度 [℃]

    TBP 70 vol%, DBP 0 mo/L

    TBP 70 vol%, DBP 0.03 mo/L

    硝酸濃度:3 mol/L

    TBP 70%, DBP 0.03 mo/L

    TBP 70%, DBP 0 mo/L

    0.01

    0.1

    1

    0 20 40 60 80 100

    D Ru[‐]

    TBP濃度 [vol%]

    20℃, DBP 0.03mol/L

    40℃, DBP 0.03mol/L

    60℃, DBP 0.03mol/L

    硝酸濃度:3 mol/L

    TBP 濃度 [%]

    JAEA-Technology 2016-012

    - 7 -

    3.有機溶媒燃焼試験

    3.1 試験条件及び方法

    2 章では、TBP/ドデカン溶媒の燃焼に伴う温度上昇や TBP 濃縮及び DBP の生成等の現象が、

    有機溶媒への Ru の分配挙動に対して与える影響の傾向を把握した。一方で、Ru を分配させた有

    機溶媒の燃焼に伴う Ru の放出割合を精度良く測定するためには、できるだけ有機溶媒中の Ru

    の存在量を多くすることが肝要である。硝酸溶液中の Ru の 30%TBP/ドデカンへの分配比は、硝

    酸濃度が 1 mol/L 付近で最大となるとの報告がある 2)。そこで、本試験では、水相中の硝酸濃度

    を 1 mol/L として Ru を分配させた 30%TBP/ドデカンを燃焼試験の対象試料とした。また、Eu

    については、付録に述べた LiNO3 の塩析効果を用いた分配比の測定結果を踏まえて、LiNO3 及

    び硝酸の濃度をそれぞれ 6 mol/L 及び 1 mol/L とした条件のもとでEu を分配させた 30%TBP/ド

    デカンを試料とした。

    火災時ソースターム実験装置(FSEEA)を用いて燃焼試験を実施した。図 3-1 に FSEEA の概

    略を示す。石英ガラス製の筒状(約 300 mmφ×700 mmH)の形状を有する燃焼セル内で試料

    を燃焼させた。燃焼セルの上流側にマスフローコントローラを介して窒素(N2)ガスボンベ及び

    既設圧空ラインを接続させた。マスフローコントローラで空気と N2ガスを混合して燃焼セルに供

    給することで、燃焼セル内雰囲気の酸素濃度を制御した。

    試験は以下の条件で実施した。

    ・FSEEA の防煙ガラスへの給気流量:0.2 m3/min

    ・HEPA フィルタの通過流量(FSEEA の排気流量):0.6 m3/min(定格流量に相当)

    ・供給ガス:空気(酸素濃度 21%)、窒素/空気混合ガス(酸素濃度 18%)

    ・試料:30%TBP/ドデカン 70 mL(約 54 g)

    ・燃焼室内試料容器:67 mm(断面積:約 3.5×10-3 m2)のSUS 製ビーカー

    実施設におけるセル内での代表流速は、セル形状や換気条件によって異なるため具体的な値と

    して設定することは難しい。そこで、防煙ガラスへの給気流量は、原子力機構が過去に実施した

    燃焼試験条件(0.085~0.42 m3/min)を参考に 0.2 m3/min に設定した 4)。また、火災事故時には

    燃焼による酸素濃度の低下が考えられるため、酸素濃度をパラメータとした予備試験を実施した

    結果、酸素濃度が 17 %以下では試料燃焼が安定せず短時間で鎮火したため、安定に燃焼する限界

    JAEA-Technology 2016-012

    - 7 -

  • JAEA-Technology 2016-012

    - 8 -

    酸素濃度条件を酸素濃度 18%とし、空気(酸素濃度 21%)および窒素/空気混合ガス(酸素濃度

    18%)の条件で試験を行った。

    燃焼した有機溶媒から放出されたガスに含まれる Ru あるいは Eu は、煤煙とともに防煙ガラ

    スの下流側に接続したダクト部より等速吸引し、フィルタフォルダ(ガラス繊維フィルタを装着)

    にて捕集した。ガラス繊維フィルタに捕集された Ru あるいは Eu の量は、以下の方法で分析し

    た。

    Ru の定量

    ガラス繊維フィルタに捕集された Ru は、RuO2の化学形をとる可能性があることを考慮し、溶

    出液としてペルオキソ二硫酸カリウム 5 g/L+1 mol/L 水酸化カリウム水溶液(以下、ペルオキソ

    溶液という。)を用いる、以下の方法で定量した。

    ・煤煙付着面を下にしたガラス繊維フィルタを 200 mL ビーカーに入れた。・ペルオキソ溶液 10

    mL を添加し、室温で 48 時間漬け置きした後、孔径 0.10 μm メンブランフィルタで溶出液をろ

    過した。このペルオキソ溶液のRu を分析した結果、Ru が検出された。

    ・さらに、浸漬後のガラス繊維フィルタは、水 20 mL、硝酸 5mL、塩酸 5 mL を添加し、時計皿

    をして、ヒーター(約 280℃)上で 60 分間加熱溶出を行い、室温まで冷却した。

    ・酸溶出後のガラス繊維フィルタへ濃硝酸を 5 倍希釈した硝酸 5 mL を添加し、ヒーター上で約

    5 分間加熱し、室温まで冷却した。両方の手順にて得られた酸溶出液を NO.5B ろ紙でろ過して混

    合した。この酸溶出液のRu を分析した結果、Ru が検出された。

    ・なお、2 回の酸溶出後のガラス繊維フィルタは、再度ペルオキソ溶液 20 mL を添加し、ヒータ

    ー(約 280℃)上で 30 分間加熱溶出し、溶出液の Ru を分析した結果、Ru は検出されず、ペル

    オキソ溶液及び酸溶出液を用いた 4 回の溶出操作でガラス繊維フィルタに捕集された Ru のほぼ

    全量が溶出されたことを確認した。

    ・ペルオキソ溶出液、酸溶出液のRu を ICP-MS で定量した 5)。

    Eu の定量

    原子力機構で実施した(独)原子力安全基盤機構からの受託研究「平成 21 年度火災時エアロゾル

    評価試験」で採用した以下の方法を用いた 6)。

    ・煤煙付着面を下にしたガラス繊維フィルタを 200 mL ビーカーに入れた。

    JAEA-Technology 2016-012

    - 8 -

  • JAEA-Technology 2016-012

    - 9 -

    ・水 20 mL、硝酸 5mL、塩酸 5 mL を添加した。

    ・時計皿をして、ヒーター(約 280℃)上で 60 分間加熱溶出を行い、室温まで冷却した。

    ・さらに、ガラス繊維フィルタの入ったビーカーへ濃硝酸を 5 倍希釈した硝酸 5 mL を添加し、

    ヒーター上で約 5 分間加熱溶出し、室温まで冷却した。

    ・両方の手順にて得られた溶出液を NO.5B ろ紙でろ過して混合し、ICP-MS によって Eu を定量

    した。

    図 3-1 火災時ソースターム実験装置(FSEEA)の概略図

    3.2 試験結果及び考察

    図 3-2、図 3-3 及び図 3-4 に、酸素濃度 21%条件下での燃焼に伴う Eu 及び Ru の放出割合、

    放出速度及び燃焼物重量減少あたりの放出量の経時変化をそれぞれ示す。図中の各測定点の幅は、

    各ガラス繊維フィルタにおける捕集時間を意味している。各元素の放出割合は、それぞれのフィ

    ルタで捕集された Eu あるいは Ru の元素量を燃焼前試料中の元素量で除することで計算した。

    各元素の放出速度は、それぞれのフィルタで捕集された元素の量を捕集時間で除することで計算

    した。放出速度と燃焼物重量減少あたりの放出量は、燃焼の仕方に依存するため、本試験では燃

    焼セル内試料容器の断面積(約 3.5×10-3 m2)で除することで規格化した。

    試料を全量燃焼するためには約 50 分を要した。図 3-2 における Eu と Ru(模擬放射性物質)

    の放出率は、燃焼後期(燃焼開始 30~40 分以降)よりも燃焼の初期(燃焼開始から 30~40 分頃

    まで)の方が大きいことがわかる(図 3-3 における放出速度及び図 3-4 における燃焼物重量減少

    あたりの放出量の傾向も同様)。燃焼後期には、有機溶媒中の TBP 濃縮が進行し、HEPA フィル

    防煙ガラス

    燃焼セル

    JAEA-Technology 2016-012

    - 9 -

  • JAEA-Technology 2016-012

    - 10 -

    タの目詰まりに起因する差圧上昇を引き起こす有機ミストの放出が予想されるが 7)、模擬放射性

    物質の放出は、有機ミストの放出する前(HEPA フィルタの目詰まりを起こさず燃焼が定常的に

    進行すると想定される時間域)の方が高いことが分かった。図 3-5 及び図 3-6 にRu 及びEu 抽出

    溶媒燃焼時の試料重量の経時変化を示す。両図における重量の経時変化を直線でフィッティング

    することで、直線の傾きから重量減少速度を算出した。抽出溶媒である 30%TBP/ドデカンの燃焼

    時には、TBP(引火点:146℃)より低い引火点を有するドデカン(引火点:87℃)の燃焼が進

    行することが予想される。そこで、30%TBP/ドデカン中のすべてドデカンが先に燃焼すると仮定

    すると、ドデカン(試験に使用したドデカン重量は約 36 g である。)が全て燃焼するまでに要す

    る時間は約 40 分と見積もることができる。この時間は、図 3-2、図 3-3 及び図 3-4 において Ru

    及び Eu の放出が低下する時間(燃焼開始から 30~40 分)とほぼ一致する。このことから、Ru

    及びEu の放出は、有機溶媒中のドデカンの燃焼に誘発されたものと推定される。

    また、図 3-2 から、Ru は Eu より約一ケタ多く放出したことがわかる。これは、Ru が揮発性

    の化合物 RuO4を形成したためと考えられる。Fujine らは、30%TBP/ドデカンの有機相と硝酸水

    溶液相の間での抽出操作において、相当量の硝酸と水が有機相へ以降することを示している 8)。

    水相中の硝酸濃度を 3 mol/L とした本試験結果では、有機相中の硝酸濃度は 0.6 mol/L 程度、水

    の濃度は 0.3 mol/L 程度であった(図からの読取値)。30%TBP/ドデカン中の TBP 濃度は約 1

    mol/L であるため、抽出平衡後の有機相中には、TBP と同程度の硝酸及び水が共存していること

    になる。したがって、試験試料の燃焼に伴って硝酸を含有した水蒸気の放出が想定される。ガス

    状の RuO4は、硝酸蒸気が共存する場合、壁面への沈着や熱分解による Ru の還元で生じる Ru の

    エアロゾル化(RuO2 の生成)を起こさず、RuO4 はガス状のまま気相中を移行することが報告さ

    れている 5)。本試験でも相当量のガス状 RuO4 が発生、移行したものと推察されるが、ガス吸収

    瓶を設置していなかったため、ガス状 Ru の放出量は不明である。また、有機溶媒ミスト及び煤

    煙がガラス繊維フィルタまでの配管経路に存在していることを確認しており、放出されたガス状

    Ru の一部は、このような有機溶媒ミスト及び煤煙に同伴し、ガラス繊維フィルタまで到達せず、

    途中経路に沈着している可能性も考えられるが、その量は不明である。本試験では、有機溶媒の

    燃焼に伴って放出された Ru の一部をガラス繊維フィルタで採取し、フィルタでの回収量と流量

    比から、Ru 放出量を計算しているが、今後はフィルタに捕獲されない可能性があるガス状 RuO4

    のが発生これらの課題を踏まえ、実験系内の物質収支を明確にした Ru の放出移行挙動を調べる

    試験を行う必要がある。

    JAEA-Technology 2016-012

    - 10 -

  • JAEA-Technology 2016-012

    - 11 -

    0.00

    0.01

    0.02

    0.03

    0.04

    0.05

    0.06

    0.0

    0.1

    0.2

    0.3

    0.4

    0.5

    0.6

    0 10 20 30 40 50 60

    Eu

    Ru

    Eu放

    出割

    (%)

    Ru放

    出割

    (%)

    時間 (min)

    0

    1x10-7

    2x10-7

    3x10-7

    4x10-7

    0

    1x10-6

    2x10-6

    3x10-6

    4x10-6

    0 10 20 30 40 50 60

    Eu

    Ru

    Eu放

    出速

    (mol/

    m2s)

    Ru放

    出速

    (mol/

    m2s)

    時間 (min)

    図 3-2 燃焼に伴うEu 及びRu の放出割合(酸素濃度 21%条件)

    図 3-3 燃焼に伴うEu 及びRu の放出速度(酸素濃度 21%条件)

    JAEA-Technology 2016-012

    - 11 -

  • JAEA-Technology 2016-012

    - 12 -

    0.00

    0.01

    0.02

    0.03

    0.0

    0.1

    0.2

    0.3

    0 15 30 45 60

    Eu

    Ru燃

    焼物

    重量

    減少

    あた

    りの

    Eu放

    出量

    (m

    ol/m

    2kg

    )

    燃焼

    物重

    量減

    少あ

    たり

    のR

    u放

    出量

    (m

    ol/

    m2kg

    )

    時間 (min)

    図 3-4 燃焼物重量減少あたりのEu 及びRu の放出量(酸素濃度 21%条件)

    図 3-5 Ru 抽出溶媒燃焼時の試料重量の経時変化

    -5x10-2

    -4x10-2

    -3x10-2

    -2x10-2

    -1x10-2

    0

    0 15 30 45 60

    重量

    (kg

    )

    時間 (min)

    重量減少速度 0.94 g/min

    JAEA-Technology 2016-012

    - 12 -

  • JAEA-Technology 2016-012

    - 13 -

    図 3-6 Eu 抽出溶媒燃焼時の試料重量の経時変化

    図 3-7 にEu の放出割合に及ぼす酸素濃度の影響を示す。酸素濃度 18%では、燃焼が不安定と

    なり、21%条件よりも短い約 10 分程度で自然鎮火した。酸素濃度が低下することで燃焼は不安定

    となったが、自然鎮火するまでのEu の放出割合は、酸素濃度によらず、最大値が約 0.02 %と、

    ほぼ同じ値となった。なお、Ru については酸素濃度 18%の条件下での燃焼試験では、有意な放

    出量は観測されなかった。

    今後、燃焼後期における放出が見られなかったこと、酸素濃度 18 %条件でRu の放出が見られ

    なかったことの原因について調査する必要があると考えられる。

    -5x10-2

    -4x10-2

    -3x10-2

    -2x10-2

    -1x10-2

    0

    0 15 30 45 60

    重量

    (kg

    )

    時間 (min)

    重量減少速度 0.90 g/min

    JAEA-Technology 2016-012

    - 13 -

  • JAEA-Technology 2016-012

    - 14 -

    0

    0.01

    0.02

    0.03

    0.04

    0.05

    0.06

    0 10 20 30 40 50 60

    酸素濃度:21%(Air)

    酸素濃度:18%

    Eu放

    出割

    (%)

    時間 (min)

    図 3-7 Eu の放出割合に及ぼす酸素濃度の影響

    このように模擬放射性物質を含有させた 30%TBP/ドデカンを調製し燃焼試験に供することで、

    火災事故時における模擬放射性物質の放出挙動を把握することができた。Ru は非揮発性のEu よ

    りも放出割合が 1 桁以上大きく、その原因はガス状化合物の生成と考えられる。Ru がエアロゾ

    ル状ではなくガス状の化学形で移行する場合、HEPA フィルタでの捕集による閉じ込めの効果が

    低減し、施設外部への漏えい量が増す。また、公衆被ばく評価を行う上では、環境中に放出され

    る放射性物質の化学形が重要となる。一方、施設内における放射性物質の移行挙動の評価におい

    ては、Eu やRu が煤煙に付着して移行する場合には、煤煙の移行挙動(壁面への沈着、HEPA フ

    ィルタでの捕集)と同様に評価すればいいことになるが、例えばRu が揮発性の化合物を形成し

    て移行している場合には、煤煙とは別のモデルを考慮して移行を評価する必要がある。SEM-

    EDX のような表面分析を行い、模擬放射性物質が煤煙に付着しているか否かを観察する必要があ

    るものと考えられる。

    また、ガラス繊維フィルタに付着したRu は、第1段のペルオキソ二硫酸カリウム溶液への漬

    け置き、その後の酸煮沸のいずれでも検出された。粒子状のRu 化合物であるRuO2は、酸には

    不溶であるため、酸煮沸によってRu が溶出したことは、Ru はRuO2以外の化学形で燃焼物から

    JAEA-Technology 2016-012

    - 14 -

  • JAEA-Technology 2016-012

    - 15 -

    放出されている可能性を示唆するものである。なお、酸煮沸後のペルオキソ溶液での煮沸では、

    Ru はほぼ検出されなかった。RuO2は難溶解性化合物として知られており、今後の試験における

    定量方法の確立が重要な課題である。SEM-EDX や蛍光X 線装置等の表面分析によってRu の存

    在を把握することも有効であると考えられる。

    4.結 言

    従来の設計基準事故での想定を含む、より広い条件の下での再処理施設における有機溶媒火災

    に伴う公衆への影響評価に資するため、火災事故時の放射性物質の放出移行挙動を把握するため

    の予備的な試験を行った。揮発性を有する化合物を形成することが知られている Ru と FP の指

    標物質としての Eu を用いて、有機溶媒燃焼に伴うこれら元素の放出挙動データを取得した。ま

    た、再処理施設での有機溶媒火災時における有機溶媒中及び硝酸水溶液中の放射性物質の量を把

    握するため、30%TBP/ドデカンに抽出される Ru の分配挙動を調査した。Ru は揮発性化合物を

    形成する可能性があり、かつ燃焼によって比較的高い放出割合を示す可能性があるため、対象と

    した。Ru について溶媒中の TBP や TBP 劣化物の濃度等の有機溶媒の組成や分配温度をパラメ

    ータとした分配試験を行い、火災事故時の分配挙動データを取得した。分配試験の結果、Ru は温

    度上昇により分配比が低下すること、TBP 濃度上昇により分配比が増大すること、DBP を添加

    しても分配比に対する影響が小さいことが明らかになった。この結果を踏まえ、模擬放射性物質

    を含有させた 30%TBP/ドデカンを調製し燃焼試験に供することで、模擬放射性物質の放出挙動を

    調べたところ、30%TBP/ドデカンの燃焼において、Ru の放出割合は約 0.5 %と、Eu の放出割合

    である約 0.03 %より 1 桁大きいことが明らかになった。

    本報での検討結果は、平成27年度以降の規制庁委託事業「再処理施設における火災事故時影響

    評価試験」において今後実施していく詳細な計画立案やパラメータ設定のために活用されるもの

    である。あわせて、溶媒燃焼時のRuの放出移行挙動を明らかにするため、物質収支を明確にした

    試験及び煤煙の表面分析を行う必要があることを示した。そのためには、ガス状Ruの放出の有無

    についても検討することが重要である。さらに、燃焼後期におけるRu及びEuの放出が見られな

    かったこと、酸素濃度18 %条件でRuの放出が見られなかったことの原因について調査する必要が

    あることを示した。

    JAEA-Technology 2016-012

    - 15 -

  • JAEA-Technology 2016-012

    - 16 -

    謝 辞

    本研究の実施に際し、ご協力頂いた (株)千代田テクノル 堀田 隆様、綿引 剛様に感謝いたしま

    す。

    参考文献

    1) 志賀周二郎,永田英雄,“TBP 製品に含まれる微量不純物成分に関する調査”,PNC-TJ899

    85-04,1985, 120p.

    2) Pruett, D. J. , The Solvent Extraction Behavior of Ruthenium I – The Nitric Acid-Tri-n-

    Butyl Phosphate System, Radiochimica Acta 27, pp. 115-120 (1980).

    3) Brown, P. G. M. et al, Nitrato Nitrosylruthenium Complexes and Their Extraction from

    Nitric Acid Systems by Tributyl Phosphate, A. E. R. E. C/R 2260, 1957.

    4) 阿部 仁,田代 信介,渡邊 浩二,内山 軍蔵,“核燃料サイクル施設における可燃性物質の

    燃焼時の閉じ込め効果評価試験(受託研究)”,JAEA-Research 2012-035,2013, 26p.

    5) 「再処理施設における放射性物質移行挙動に係る研究」運営管理グループ,再処理施設にお

    ける放射性物質移行挙動に係る研究報告書,2014.

    6) 日本原子力研究開発機構,平成 21 年度火災時エアロゾル評価試験調査報告書,2010.

    7) 日本原子力研究開発機構,平成 22 年度火災時エアロゾル評価試験調査報告書,2011.

    8) Fujine, S. et al.,Tritium Distribution Ratios between the 30% Tributyl Phosphate(TBP)-

    Normal Dodecane(nDD) Organic Phase and Uranyl Nitrate-Nitric Acid Aqueous Phase,

    JAERI-M 89-152,1989, 14p.

    JAEA-Technology 2016-012

    - 16 -

  • JAEA-Technology 2016-012

    - 16 -

    謝 辞

    本研究の実施に際し、ご協力頂いた (株)千代田テクノル 堀田 隆様、綿引 剛様に感謝いたしま

    す。

    参考文献

    1) 志賀周二郎,永田英雄,“TBP 製品に含まれる微量不純物成分に関する調査”,PNC-TJ899

    85-04,1985, 120p.

    2) Pruett, D. J. , The Solvent Extraction Behavior of Ruthenium I – The Nitric Acid-Tri-n-

    Butyl Phosphate System, Radiochimica Acta 27, pp. 115-120 (1980).

    3) Brown, P. G. M. et al, Nitrato Nitrosylruthenium Complexes and Their Extraction from

    Nitric Acid Systems by Tributyl Phosphate, A. E. R. E. C/R 2260, 1957.

    4) 阿部 仁,田代 信介,渡邊 浩二,内山 軍蔵,“核燃料サイクル施設における可燃性物質の

    燃焼時の閉じ込め効果評価試験(受託研究)”,JAEA-Research 2012-035,2013, 26p

    5) 「再処理施設における放射性物質移行挙動に係る研究」運営管理グループ,再処理施設にお

    ける放射性物質移行挙動に係る研究報告書,2014.

    6) 日本原子力研究開発機構,平成 21 年度火災時エアロゾル評価試験調査報告書,2010.

    7) 日本原子力研究開発機構,平成 22 年度火災時エアロゾル評価試験調査報告書,2011.

    8) Fujine, S. et al.,Tritium Distirbution Ratios between the 30% Tributyl Phosphate(TBP)-

    Normal Dodecane(nDD) Organic Phase and Uranil Nitrate-Nitric Acid Aqueous Phase,

    JAERI-M 89-152,1989, 14p.

    JAEA-Technology 2016-012

    - 17 -

    付録 Eu の分配挙動把握

    1. 試験条件及び方法

    燃焼試験で放出された Eu を定量するには、放出物の定量分析の際に分析結果が定

    量下限値を超えている必要があるため、有機溶媒中の Eu の濃度を高くする必要があ

    る。Eu は 30%TBP/ドデカンには抽出されにくいことが報告されている A-1)が、Eu は

    硝酸濃度を高めることで分配比を高められることが知られている A-2)。また、硝酸塩を

    追加することにより自由な硝酸根濃度が上がり、分配比が高められる塩析剤効果も知

    られている A-3)。そこで、水溶液中の硝酸濃度または LiNO3 濃度を変えることで硝酸

    根濃度を変え、Eu の有機溶媒への分配比を高められるか調べた。

    同体積の有機溶媒と硝酸水溶液を 200 mL ガラス製容器に入れ、恒温振とう機で温

    度を 20℃に保ち一定時間の振とうを行うことで抽出を行った。抽出後、静置してから

    水相を採取し、ICP-MS で Eu の濃度を定量した。残った有機相を採取し、同体積の

    硝酸溶液と同一容器に入れ、逆抽出を行った。抽出時と同様に静置してから水相を採

    取し、Eu の濃度を定量した。残った有機相を採取して再度逆抽出を行った。静置して

    から水相を採取し、Eu の濃度を定量した。試験条件の一覧を以下に示す。

    水相から有機相への Eu の抽出

    液相比:有機相 20 mL-水相 20 mL

    有機相:30 %TBP-ドデカン

    水相:硝酸および LiNO3、硝酸 Eu

    振とう条件:20℃、30 min

    有機相から水相への Eu の逆抽出 1 回目

    液相比:有機相 15 mL-水相 15 mL

    有機相:抽出後有機相溶液

    水相:0.1 mol/L 硝酸

    振とう条件:20℃、60 min

    JAEA-Technology 2016-012

    - 17 -

  • JAEA-Technology 2016-012

    - 18 -

    有機相から水相への Eu の逆抽出 2 回目

    液相比:有機相 10 mL-水相 10 mL

    有機相:逆抽出後有機相溶液

    水相:0.1 mol/L 硝酸

    振とう条件:20℃、60 min

    なお、Eu の初期濃度を変化させる試験以外での水相中の硝酸 Eu の初期濃度は 3.6×

    10-5 mol/L とした。この濃度は、逆抽出 2 回目後の水相中 Eu 濃度が ICP-MS の定量

    下限 2.8×10-11 mol/L を上回る濃度である。

    2. 試験結果及び考察

    図 A-1 に、Eu の分配比に及ぼす水相中の硝酸濃度の影響を示す。Eu の分配比は、

    硝酸濃度が 3 mol/L の条件で最大値 0.07 を示した。次に、水相の硝酸濃度を図 A-1 で

    Eu の分配比が最大値を示した 3 mol/L とした上で LiNO3 の濃度を変え Eu の分配比

    を測定した。試験結果を図 A-2 に示す。この条件では、LiNO3 濃度が高くなるにつれ

    て Eu の分配比が 0.36 まで上昇した。また、水相の硝酸濃度を 1 mol/L として LiNO3

    の濃度を変えた場合の試験結果を図 A-3 に示す。この条件では LiNO3濃度が高くなる

    につれて Eu の分配比が 8.0 まで上昇した。図 A-1、図 A-2 及び図 A-3 に示した結果

    について、初期全硝酸根濃度を横軸としてまとめたものを図 A-4 に示す。全硝酸根濃

    度が等しい場合においては、全硝酸根濃度に占める LiNO3 の寄与が大きいほど Eu の

    分配比は高まることがわかった。

    このように、LiNO3の塩析効果を利用することで、本来 30%TBP/ドデカンに対して

    低い分配比を示す Eu の分配比を 8 程度まで増大させることができた。この結果を踏

    まえ、有機溶媒燃焼試験において用いる Eu 抽出有機溶媒を調製した。

    JAEA-Technology 2016-012

    - 18 -

  • JAEA-Technology 2016-012

    - 19 -

    0.01

    0.1

    1

    10

    0 2 4 6 8 10

    D Eu[‐]

    硝酸根濃度 [mol/L]硝酸濃度[mol/L]

    図 A-1 Eu の分配比に及ぼす硝酸濃度の影響

    0.01

    0.1

    1

    10

    0 2 4 6 8 10

    D Eu[‐]

    LiNO3濃度 [mol/L]

    図 A-2 Eu の分配比に及ぼす LiNO3濃度の影響(硝酸濃度:3 mol/L)

    JAEA-Technology 2016-012

    - 19 -

  • JAEA-Technology 2016-012

    - 20 -

    0.01

    0.1

    1

    10

    0 2 4 6 8 10

    D Eu[‐]

    全硝酸根濃度 [mol/L]

    HNO3 のみ

    3 mol/L HNO3

    1 mol/L HNO3

    HNO3のみ

    3 mol/L HNO31 mol/L HNO3

    0.01

    0.1

    1

    10

    0 2 4 6 8 10

    D Eu[‐]

    LiNO3濃度 [mol/L]

    図 A-3 Eu の分配比に及ぼす LiNO3濃度の影響(硝酸濃度:1 mol/L)

    図 A-4 Eu の分配比に及ぼす全硝酸根濃度の影響

    JAEA-Technology 2016-012

    - 20 -

  • JAEA-Technology 2016-012

    - 21 -

    参考文献

    A-1) 湿式分離プロセス化学研究グループ,再処理プロセス・化学ハンドブック 第 2

    版,JAEA-Review 2008-037,2008, 702p.

    A-2) Svantesson, I. , Hagstrom, I. , Persson, G. , Distribution Ratios and Empirical

    Equations for the Extraction of Elements in PUREX High Level Waste

    Solution I : TBP, J. Inorng. Nucl. Chem. 41, pp. 383-389 (1979).

    A-3) 原子力ハンドブック編集委員会,原子力ハンドブック,オーム社,2007,667p.

    JAEA-Technology 2016-012

    - 21 -

  • This is a blank page.

  • 国際単位系(SI)

    1024 ヨ タ Y 10-1 デ シ d1021 ゼ タ Z 10-2 セ ン チ c1018 エ ク サ E 10-3 ミ リ m1015 ペ タ P 10-6 マイクロ µ1012 テ ラ T 10-9 ナ ノ n109 ギ ガ G 10-12 ピ コ p106 メ ガ M 10-15 フェムト f103 キ ロ k 10-18 ア ト a102 ヘ ク ト h 10-21 ゼ プ ト z101 デ カ da 10-24 ヨ ク ト y

    表5.SI 接頭語

    名称 記号 SI 単位による値分 min 1 min=60 s時 h 1 h =60 min=3600 s日 d 1 d=24 h=86 400 s度 ° 1°=(π/180) rad分 ’ 1’=(1/60)°=(π/10 800) rad秒 ” 1”=(1/60)’=(π/648 000) rad

    ヘクタール ha 1 ha=1 hm2=104m2

    リットル L,l 1 L=1 l=1 dm3=103cm3=10-3m3

    トン t 1 t=103 kg

    表6.SIに属さないが、SIと併用される単位

    名称 記号 SI 単位で表される数値電 子 ボ ル ト eV 1 eV=1.602 176 53(14)×10-19Jダ ル ト ン Da 1 Da=1.660 538 86(28)×10-27kg統一原子質量単位 u 1 u=1 Da天 文 単 位 ua 1 ua=1.495 978 706 91(6)×1011m

    表7.SIに属さないが、SIと併用される単位で、SI単位で表される数値が実験的に得られるもの

    名称 記号 SI 単位で表される数値キ ュ リ ー Ci 1 Ci=3.7×1010Bqレ ン ト ゲ ン R 1 R = 2.58×10-4C/kgラ ド rad 1 rad=1cGy=10-2Gyレ ム rem 1 rem=1 cSv=10-2Svガ ン マ γ 1γ=1 nT=10-9Tフ ェ ル ミ 1フェルミ=1 fm=10-15mメートル系カラット 1 メートル系カラット = 0.2 g = 2×10-4kgト ル Torr 1 Torr = (101 325/760) Pa標 準 大 気 圧 atm 1 atm = 101 325 Pa

    1 cal=4.1858J(「15℃」カロリー),4.1868J(「IT」カロリー),4.184J (「熱化学」カロリー)

    ミ ク ロ ン µ 1 µ =1µm=10-6m

    表10.SIに属さないその他の単位の例

    カ ロ リ ー cal

    (a)SI接頭語は固有の名称と記号を持つ組立単位と組み合わせても使用できる。しかし接頭語を付した単位はもはや コヒーレントではない。(b)ラジアンとステラジアンは数字の1に対する単位の特別な名称で、量についての情報をつたえるために使われる。 実際には、使用する時には記号rad及びsrが用いられるが、習慣として組立単位としての記号である数字の1は明 示されない。(c)測光学ではステラジアンという名称と記号srを単位の表し方の中に、そのまま維持している。(d)ヘルツは周期現象についてのみ、ベクレルは放射性核種の統計的過程についてのみ使用される。(e)セルシウス度はケルビンの特別な名称で、セルシウス温度を表すために使用される。セルシウス度とケルビンの  単位の大きさは同一である。したがって、温度差や温度間隔を表す数値はどちらの単位で表しても同じである。

    (f)放射性核種の放射能(activity referred to a radionuclide)は、しばしば誤った用語で”radioactivity”と記される。(g)単位シーベルト(PV,2002,70,205)についてはCIPM勧告2(CI-2002)を参照。

    (a)量濃度(amount concentration)は臨床化学の分野では物質濃度  (substance concentration)ともよばれる。(b)これらは無次元量あるいは次元1をもつ量であるが、そのこと   を表す単位記号である数字の1は通常は表記しない。

    名称 記号SI 基本単位による

    表し方

    秒ルカスパ度粘 Pa s m-1 kg s-1

    力 の モ ー メ ン ト ニュートンメートル N m m2 kg s-2

    表 面 張 力 ニュートン毎メートル N/m kg s-2角 速 度 ラジアン毎秒 rad/s m m-1 s-1=s-1角 加 速 度 ラジアン毎秒毎秒 rad/s2 m m-1 s-2=s-2熱 流 密 度 , 放 射 照 度 ワット毎平方メートル W/m2 kg s-3

    熱 容 量 , エ ン ト ロ ピ ー ジュール毎ケルビン J/K m2 kg s-2 K-1比熱容量,比エントロピー ジュール毎キログラム毎ケルビン J/(kg K) m2 s-2 K-1比 エ ネ ル ギ ー ジュール毎キログラム J/kg m2 s-2熱 伝 導 率 ワット毎メートル毎ケルビン W/(m K) m kg s-3 K-1

    体 積 エ ネ ル ギ ー ジュール毎立方メートル J/m3 m-1 kg s-2

    電 界 の 強 さ ボルト毎メートル V/m m kg s-3 A-1電 荷 密 度 クーロン毎立方メートル C/m3 m-3 s A表 面 電 荷 クーロン毎平方メートル C/m2 m-2 s A電 束 密 度 , 電 気 変 位 クーロン毎平方メートル C/m2 m-2 s A誘 電 率 ファラド毎メートル F/m m-3 kg-1 s4 A2

    透 磁 率 ヘンリー毎メートル H/m m kg s-2 A-2

    モ ル エ ネ ル ギ ー ジュール毎モル J/mol m2 kg s-2 mol-1

    モルエントロピー, モル熱容量ジュール毎モル毎ケルビン J/(mol K) m2 kg s-2 K-1 mol-1

    照射線量(X線及びγ線) クーロン毎キログラム C/kg kg-1 s A吸 収 線 量 率 グレイ毎秒 Gy/s m2 s-3放 射 強 度 ワット毎ステラジアン W/sr m4 m-2 kg s-3=m2 kg s-3

    放 射 輝 度 ワット毎平方メートル毎ステラジアン W/(m2 sr) m2 m-2 kg s-3=kg s-3酵 素 活 性 濃 度 カタール毎立方メートル kat/m3 m-3 s-1 mol

    表4.単位の中に固有の名称と記号を含むSI組立単位の例

    組立量SI 組立単位

    名称 記号

    面 積 平方メートル m2体 積 立方メートル m3速 さ , 速 度 メートル毎秒 m/s加 速 度 メートル毎秒毎秒 m/s2波 数 毎メートル m-1密 度 , 質 量 密 度 キログラム毎立方メートル kg/m3

    面 積 密 度 キログラム毎平方メートル kg/m2

    比 体 積 立方メートル毎キログラム m3/kg電 流 密 度 アンペア毎平方メートル A/m2磁 界 の 強 さ アンペア毎メートル A/m量 濃 度 (a) , 濃 度 モル毎立方メートル mol/m3質 量 濃 度 キログラム毎立方メートル kg/m3輝 度 カンデラ毎平方メートル cd/m2屈 折 率 (b) (数字の) 1 1比 透 磁 率 (b) (数字の) 1 1

    組立量SI 組立単位

    表2.基本単位を用いて表されるSI組立単位の例

    名称 記号他のSI単位による

    表し方SI基本単位による

    表し方平 面 角 ラジアン(b) rad 1(b) m/m立 体 角 ステラジアン(b) sr(c) 1(b) m2/m2周 波 数 ヘルツ(d) Hz s-1

    ントーュニ力 N m kg s-2圧 力 , 応 力 パスカル Pa N/m2 m-1 kg s-2エ ネ ル ギ ー , 仕 事 , 熱 量 ジュール J N m m2 kg s-2仕 事 率 , 工 率 , 放 射 束 ワット W J/s m2 kg s-3電 荷 , 電 気 量 クーロン A sC電 位 差 ( 電 圧 ) , 起 電 力 ボルト V W/A m2 kg s-3 A-1静 電 容 量 ファラド F C/V m-2 kg-1 s4 A2電 気 抵 抗 オーム Ω V/A m2 kg s-3 A-2コ ン ダ ク タ ン ス ジーメンス S A/V m-2 kg-1 s3 A2

    バーエウ束磁 Wb Vs m2 kg s-2 A-1磁 束 密 度 テスラ T Wb/m2 kg s-2 A-1イ ン ダ ク タ ン ス ヘンリー H Wb/A m2 kg s-2 A-2セ ル シ ウ ス 温 度 セルシウス度(e) ℃ K

    ンメール束光 lm cd sr(c) cdスクル度照 lx lm/m2 m-2 cd

    放射性核種の放射能( f ) ベクレル(d) Bq s-1吸収線量, 比エネルギー分与,カーマ

    グレイ Gy J/kg m2 s-2

    線量当量, 周辺線量当量,方向性線量当量, 個人線量当量 シーベルト

    (g) Sv J/kg m2 s-2

    酸 素 活 性 カタール kat s-1 mol

    表3.固有の名称と記号で表されるSI組立単位SI 組立単位

    組立量

    名称 記号 SI 単位で表される数値バ ー ル bar 1bar=0.1MPa=100 kPa=105Pa水銀柱ミリメートル mmHg 1mmHg≈133.322Paオングストローム Å 1Å=0.1nm=100pm=10-10m海 里 M 1M=1852mバ ー ン b 1b=100fm2=(10-12cm) =10-28m22

    ノ ッ ト kn 1kn=(1852/3600)m/sネ ー パ Npベ ル B

    デ シ ベ ル dB

    表8.SIに属さないが、SIと併用されるその他の単位

    SI単位との数値的な関係は、    対数量の定義に依存。

    名称 記号

    長 さ メ ー ト ル m質 量 キログラム kg時 間 秒 s電 流 ア ン ペ ア A熱力学温度 ケ ル ビ ン K物 質 量 モ ル mol光 度 カ ン デ ラ cd

    基本量SI 基本単位

    表1.SI 基本単位

    名称 記号 SI 単位で表される数値エ ル グ erg 1 erg=10-7 Jダ イ ン dyn 1 dyn=10-5Nポ ア ズ P 1 P=1 dyn s cm-2=0.1Pa sス ト ー ク ス St 1 St =1cm2 s-1=10-4m2 s-1

    ス チ ル ブ sb 1 sb =1cd cm-2=104cd m-2

    フ ォ ト ph 1 ph=1cd sr cm-2 =104lxガ ル Gal 1 Gal =1cm s-2=10-2ms-2

    マ ク ス ウ エ ル Mx 1 Mx = 1G cm2=10-8Wbガ ウ ス G 1 G =1Mx cm-2 =10-4Tエルステッド( a ) Oe 1 Oe  (103/4π)A m-1

    表9.固有の名称をもつCGS組立単位

    (a)3元系のCGS単位系とSIでは直接比較できないため、等号「   」   は対応関係を示すものである。

    (第8版,2006年)

    乗数 名称 名称記号 記号乗数

  • 国際単位系(SI)

    1024 ヨ タ Y 10-1 デ シ d1021 ゼ タ Z 10-2 セ ン チ c1018 エ ク サ E 10-3 ミ リ m1015 ペ タ P 10-6 マイクロ µ1012 テ ラ T 10-9 ナ ノ n109 ギ ガ G 10-12 ピ コ p106 メ ガ M 10-15 フェムト f103 キ ロ k 10-18 ア ト a102 ヘ ク ト h 10-21 ゼ プ ト z101 デ カ da 10-24 ヨ ク ト y

    表5.SI 接頭語

    名称 記号 SI 単位による値分 min 1 min=60 s時 h 1 h =60 min=3600 s日 d 1 d=24 h=86 400 s度 ° 1°=(π/180) rad分 ’ 1’=(1/60)°=(π/10 800) rad秒 ” 1”=(1/60)’=(π/648 000) rad

    ヘクタール ha 1 ha=1 hm2=104m2

    リットル L,l 1 L=1 l=1 dm3=103cm3=10-3m3

    トン t 1 t=103 kg

    表6.SIに属さないが、SIと併用される単位

    名称 記号 SI 単位で表される数値電 子 ボ ル ト eV 1 eV=1.602 176 53(14)×10-19Jダ ル ト ン Da 1 Da=1.660 538 86(28)×10-27kg統一原子質量単位 u 1 u=1 Da天 文 単 位 ua 1 ua=1.495 978 706 91(6)×1011m

    表7.SIに属さないが、SIと併用される単位で、SI単位で表される数値が実験的に得られるもの

    名称 記号 SI 単位で表される数値キ ュ リ ー Ci 1 Ci=3.7×1010Bqレ ン ト ゲ ン R 1 R = 2.58×10-4C/kgラ ド rad 1 rad=1cGy=10-2Gyレ ム rem 1 rem=1 cSv=10-2Svガ ン マ γ 1γ=1 nT=10-9Tフ ェ ル ミ 1フェルミ=1 fm=10-15mメートル系カラット 1 メートル系カラット = 0.2 g = 2×10-4kgト ル Torr 1 Torr = (101 325/760) Pa標 準 大 気 圧 atm 1 atm = 101 325 Pa

    1 cal=4.1858J(「15℃」カロリー),4.1868J(「IT」カロリー),4.184J (「熱化学」カロリー)

    ミ ク ロ ン µ 1 µ =1µm=10-6m

    表10.SIに属さないその他の単位の例

    カ ロ リ ー cal

    (a)SI接頭語は固有の名称と記号を持つ組立単位と組み合わせても使用できる。しかし接頭語を付した単位はもはや コヒーレントではない。(b)ラジアンとステラジアンは数字の1に対する単位の特別な名称で、量についての情報をつたえるために使われる。 実際には、使用する時には記号rad及びsrが用いられるが、習慣として組立単位としての記号である数字の1は明 示されない。(c)測光学ではステラジアンという名称と記号srを単位の表し方の中に、そのまま維持している。(d)ヘルツは周期現象についてのみ、ベクレルは放射性核種の統計的過程についてのみ使用される。(e)セルシウス度はケルビンの特別な名称で、セルシウス温度を表すために使用される。セルシウス度とケルビンの  単位の大きさは同一である。したがって、温度差や温度間隔を表す数値はどちらの単位で表しても同じである。

    (f)放射性核種の放射能(activity referred to a radionuclide)は、しばしば誤った用語で”radioactivity”と記される。(g)単位シーベルト(PV,2002,70,205)についてはCIPM勧告2(CI-2002)を参照。

    (a)量濃度(amount concentration)は臨床化学の分野では物質濃度  (substance concentration)ともよばれる。(b)これらは無次元量あるいは次元1をもつ量であるが、そのこと   を表す単位記号である数字の1は通常は表記しない。

    名称 記号SI 基本単位による

    表し方

    秒ルカスパ度粘 Pa s m-1 kg s-1

    力 の モ ー メ ン ト ニュートンメートル N m m2 kg s-2

    表 面 張 力 ニュートン毎メートル N/m kg s-2角 速 度 ラジアン毎秒 rad/s m m-1 s-1=s-1角 加 速 度 ラジアン毎秒毎秒 rad/s2 m m-1 s-2=s-2熱 流 密 度 , 放 射 照 度 ワット毎平方メートル W/m2 kg s-3

    熱 容 量 , エ ン ト ロ ピ ー ジュール毎ケルビン J/K m2 kg s-2 K-1比熱容量,比エントロピー ジュール毎キログラム毎ケルビン J/(kg K) m2 s-2 K-1比 エ ネ ル ギ ー ジュール毎キログラム J/kg m2 s-2熱 伝 導 率 ワット毎メートル毎ケルビン W/(m K) m kg s-3 K-1

    体 積 エ ネ ル ギ ー ジュール毎立方メートル J/m3 m-1 kg s-2

    電 界 の 強 さ ボルト毎メートル V/m m kg s-3 A-1電 荷 密 度 クーロン毎立方メートル C/m3 m-3 s A表 面 電 荷 クーロン毎平方メートル C/m2 m-2 s A電 束 密 度 , 電 気 変 位 クーロン毎平方メートル C/m2 m-2 s A誘 電 率 ファラド毎メートル F/m m-3 kg-1 s4 A2

    透 磁 率 ヘンリー毎メートル H/m m kg s-2 A-2

    モ ル エ ネ ル ギ ー ジュール毎モル J/mol m2 kg s-2 mol-1

    モルエントロピー, モル熱容量ジュール毎モル毎ケルビン J/(mol K) m2 kg s-2 K-1 mol-1

    照射線量(X線及びγ線) クーロン毎キログラム C/kg kg-1 s A吸 収 線 量 率 グレイ毎秒 Gy/s m2 s-3放 射 強 度 ワット毎ステラジアン W/sr m4 m-2 kg s-3=m2 kg s-3

    放 射 輝 度 ワット毎平方メートル毎ステラジアン W/(m2 sr) m2 m-2 kg s-3=kg s-3酵 素 活 性 濃 度 カタール毎立方メートル kat/m3 m-3 s-1 mol

    表4.単位の中に固有の名称と記号を含むSI組立単位の例

    組立量SI 組立単位

    名称 記号

    面 積 平方メートル m2体 積 立方メートル m3速 さ , 速 度 メートル毎秒 m/s加 速 度 メートル毎秒毎秒 m/s2波 数 毎メートル m-1密 度 , 質 量 密 度 キログラム毎立方メートル kg/m3

    面 積 密 度 キログラム毎平方メートル kg/m2

    比 体 積 立方メートル毎キログラム m3/kg電 流 密 度 アンペア毎平方メートル A/m2磁 界 の 強 さ アンペア毎メートル A/m量 濃 度 (a) , 濃 度 モル毎立方メートル mol/m3質 量 濃 度 キログラム毎立方メートル kg/m3輝 度 カンデラ毎平方メートル cd/m2屈 折 率 (b) (数字の) 1 1比 透 磁 率 (b) (数字の) 1 1

    組立量SI 組立単位

    表2.基本単位を用いて表されるSI組立単位の例

    名称 記号他のSI単位による

    表し方SI基本単位による

    表し方平 面 角 ラジアン(b) rad 1(b) m/m立 体 角 ステラジアン(b) sr(c) 1(b) m2/m2周 波 数 ヘルツ(d) Hz s-1

    ントーュニ力 N m kg s-2圧 力 , 応 力 パスカル Pa N/m2 m-1 kg s-2エ ネ ル ギ ー , 仕 事 , 熱 量 ジュール J N m m2 kg s-2仕 事 率 , 工 率 , 放 射 束 ワット W J/s m2 kg s-3電 荷 , 電 気 量 クーロン A sC電 位 差 ( 電 圧 ) , 起 電 力 ボルト V W/A m2 kg s-3 A-1静 電 容 量 ファラド F C/V m-2 kg-1 s4 A2電 気 抵 抗 オーム Ω V/A m2 kg s-3 A-2コ ン ダ ク タ ン ス ジーメンス S A/V m-2 kg-1 s3 A2

    バーエウ束磁 Wb Vs m2 kg s-2 A-1磁 束 密 度 テスラ T Wb/m2 kg s-2 A-1イ ン ダ ク タ ン ス ヘンリー H Wb/A m2 kg s-2 A-2セ ル シ ウ ス 温 度 セルシウス度(e) ℃ K

    ンメール束光 lm cd sr(c) cdスクル度照 lx lm/m2 m-2 cd

    放射性核種の放射能( f ) ベクレル(d) Bq s-1吸収線量, 比エネルギー分与,カーマ

    グレイ Gy J/kg m2 s-2

    線量当量, 周辺線量当量,方向性線量当量, 個人線量当量 シーベルト

    (g) Sv J/kg m2 s-2

    酸 素 活 性 カタール kat s-1 mol

    表3.固有の名称と記号で表されるSI組立単位SI 組立単位

    組立量

    名称 記号 SI 単位で表される数値バ ー ル bar 1bar=0.1MPa=100 kPa=105Pa水銀柱ミリメートル mmHg 1mmHg≈133.322Paオングストローム Å 1Å=0.1nm=100pm=10-10m海 里 M 1M=1852mバ ー ン b 1b=100fm2=(10-12cm) =10-28m22

    ノ ッ ト kn 1kn=(1852/3600)m/sネ ー パ Npベ ル B

    デ シ ベ ル dB

    表8.SIに属さないが、SIと併用されるその他の単位

    SI単位との数値的な関係は、    対数量の定義に依存。

    名称 記号

    長 さ メ ー ト ル m質 量 キログラム kg時 間 秒 s電 流 ア ン ペ ア A熱力学温度 ケ ル ビ ン K物 質 量 モ ル mol光 度 カ ン デ ラ cd

    基本量SI 基本単位

    表1.SI 基本単位

    名称 記号 SI 単位で表される数値エ ル グ erg 1 erg=10-7 Jダ イ ン dyn 1 dyn=10-5Nポ ア ズ P 1 P=1 dyn s cm-2=0.1Pa sス ト ー ク ス St 1 St =1cm2 s-1=10-4m2 s-1

    ス チ ル ブ sb 1 sb =1cd cm-2=104cd m-2

    フ ォ ト ph 1 ph=1cd sr cm-2 =104lxガ ル Gal 1 Gal =1cm s-2=10-2ms-2

    マ ク ス ウ エ ル Mx 1 Mx = 1G cm2=10-8Wbガ ウ ス G 1 G =1Mx cm-2 =10-4Tエルステッド( a ) Oe 1 Oe  (103/4π)A m-1

    表9.固有の名称をもつCGS組立単位

    (a)3元系のCGS単位系とSIでは直接比較できないため、等号「   」   は対応関係を示すものである。

    (第8版,2006年)

    乗数 名称 名称記号 記号乗数