『熱脱着‐GC/MS法による臭素系難燃剤と フタル …...JEOL環境セミナー2008...
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JEOL環境セミナー2008
『熱脱着‐GC/MS法による臭素系難燃剤と フタル酸エステル類のスクリーニング分析』
-同一薄膜カラムによる分析と留意点-
日本電子(株)
2008年10月3日(名古屋))
JEOL環境セミナー2008
はじめに
• EU(欧州連合)をはじめとして、世界的に環境汚染を事前に防ぎ、かつ資
源の有効活用を目的とした画期的な法整備が進められている。
-RoHS/WEEE指令
材料中の鉛、水銀、カドミウム、六価クロム、PBB、そしてPBDE
の6種類が規制対象(含有制限:0.1wt%=1000ppm)。
-EU玩具指令
流通する全ての玩具・育児用品及び口に入れる可能性のある
玩具・育児用品に対して、6種類のフタル酸エステル類の使用を規制。
(上限基準値:0.1wt%=1000ppm)。
・ 分析方法
-現在IECが中心となって、分析法を検討中。
-溶媒抽出による前処理の後、GC/MS法による測定方法が有力。
-熱脱着-GC/MS法(PBB/PBDE=スクリーニング、フタル酸類=定量全般?)
も有用!
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PBDE・PBB分析を例とした構図
蛍光X線分析による
1次スクリーニング(全臭素濃度の確認)
溶媒抽出-GC/(HR)MSによる
精密定量分析<高精度だが分析時間(ソックスレーの 場合8~20時間程度)が長い>
一定濃度以上のPBDE及びPBBが確認された試料に限定
PBDE・PBBであるか
否かの定性確認とある程度の定量確認をハイスループットで行うことが重要!
2次スクリーニングの必要性・IAMS法(精密分析の可能)
・熱脱着-GC/MS法
PBB/PBDE含有
試料は極僅か…
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定量対象化合物
Br
O
Br Br
Br
B rBr
Br
Br Br
Br<臭素系難燃剤> ・PBDE(ポリ臭素化ジフェニルエーテル)
C12 H10-x Brx O(x=1~10)
・PBB(ポリ臭素化ビフェニル)
C12 H10-x Brx(x=1~10)
<フタル酸エステル類>
・DBP(フタル酸ジブチル)
・BBP(フタル酸ブチルベンジル)
・DEHP(フタル酸ジ‐2‐エチルヘキシル)
・DNOP(フタル酸ジ‐n‐オクチル)
・DINP(フタル酸ジイソノニル)
・DIDP(フタル酸ジイソデシル)
PBDEの例(DecaBDE)
O O
O
O
フタル酸エステル類の例(フタル酸ジ‐2‐エチルヘキシル)
JEOL環境セミナー2008
分析システムと概要
Jms-Q1000GC
JEOL
GC
•ダブルショットパイロライザー
試料の昇温加熱により、試料中の
PBDEやフタル酸エステル類を熱脱着
によって取り出し、GCへ導入する。
•オートショットサンプラー
自動による連続測定が可能
で、スループット性が向上。
•Q1000GCーガスクロマトグラフ
質量分析計
PBDEやフタル酸エステル
類を分離カラムによりクロマ
ト分離させ、MSによって検出
する。
正確な定性確認と簡易定
量解析が可能
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サンプリング
Jms-Q1000GC
K9
JEOL
GC
試料の小片化0.2~1.5mg程度
試料カップ(デイスポーザブルエコカップ)へ
試料量の秤量~0.01mg精度の天秤要
オートサンプラーへセット
ものの5分程度!
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試 料
:ABS樹脂 (DeBDE1000ppm含有)
熱脱着温度:150℃→毎分10℃→600℃
熱分解生成物
TIC
m/z960の DeBDE マスクロマトグラム
EGA-Direct MSによるTICクロマトグラムとDeBDEのマスクロマトグラム
熱脱着
He
試料カップ
プランジャ
マイクロ加熱炉〔40~800°C, 〕
冷却ガス
GCカラム
インターフェース
ニードル
マイクロジェットクライオシステムは不要!
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測定条件
• Py (熱脱着時間:20分程度)
熱脱着温度 :150℃ → 毎分10℃ → 350℃
インタフェイス温度 :250℃ → 400℃(Auto)
• GC (測定時間:20分程度)
注入口温度 :340℃
注入モード
:スプリット (スプリット比=50:1)
分離カラム
:DB-1HT(長さ15m、内径0.25mm、膜厚0.1μm)
カラム温度
:50℃→毎分40℃→130℃ →毎分20℃→ 350℃(3分)
• MS インターフェイス温度
:300℃
イオン源温度 :280℃
測定モード
:スキャンモード(マスレンジ:m/z70~980)
1サイクル:45分程度
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フタル酸エステル類とDeBDEのクロマトグラム
• 標準試料:各1000ng
02:00 04:00 06:00 08:00 10:00 12:00 14:00 16:00
TIC
149
279
293
307
799
DBBB
DEH DNO
DeBD
DIN
DID
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フタル酸エステル類とDeBDEのクロマトグラム
• 実試料:ABS樹脂(DeBDE1000ppm含有)
DB BB
DEH
DNO
DeBD
02:00 04:00 06:00 08:00 10:00 12:00 14:00
TIC
149
279
293
307
799
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PBDEsのクロマトグラム
• 標準試料:各100ng
02:00 04:00 06:00 08:00 10:00 12:00 14:00 16:00R.T-->
DiBDE
TriBDE
TetraBDE
PentaBDE HexaBDE HeptaBDE
OctaBDE
NonaBDE
DecaBDE
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検量線(フタル酸エステル類)DBP
R2 = 0.9994
0
4000000
8000000
12000000
16000000
20000000
0 200 400 600 800 1000
濃度
ピー
ク面
積
BBP
R2 = 0.9998
0
1500000
3000000
4500000
6000000
7500000
0 200 400 600 800 1000
濃度
ピー
ク面
積
DEHP
R2 = 0.9993
0
2500000
5000000
7500000
10000000
0 200 400 600 800 1000
濃度
ピー
ク面
積
DNOP
R2 = 0.9999
0
4500000
9000000
13500000
18000000
0 200 400 600 800 1000
濃度
ピー
ク面
積
DINP
R2 = 0.9999
0
120000
240000
360000
480000
600000
0 200 400 600 800 1000
濃度
ピー
ク面
積
DIDP
R2 = 0.9998
0
200000
400000
600000
800000
1000000
0 200 400 600 800 1000
濃度ピ
ーク
面積
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検量線(DecaBDE)
DecaBDE
R2 = 0.9999
0
150000
300000
450000
600000
750000
0 200 400 600 800 1000
化合物量
ピー
ク面
積
DecaBDEに関しては、やや2次曲線となるが、検量線の範囲内では、十分な定量性を有する。 (7m程度の短いカラムの使用により、直線性の向上が確認されている。)
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フタル酸エステル類の再現性
• 標準試料:100ng
DBP BBP DEHP DNOP DINP DIDP
1 6321701 842460 1529815 2415074 51977 48331
2 7103191 819573 2004072 2416911 48676 57461
3 8199084 859441 1607441 2367769 57808 45383
標準偏差 943069.0 20006.8 254382.1 27857.0 4624.0 6297.2
平均値 7207992 840491 1713776 2399918 52820 50392
C.V.(%) 13.1 2.4 14.8 1.2 8.8 12.5
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分析フローと留意点• MSのチューニング及びキャリブレーション
⇒ トリアジン化合物の使用
• 試料のサンプリング
⇒ 留意点1:試料カップについて
留意点2:試料の飛散対策
• 熱脱着-GC/MSの測定条件の設定
⇒ 留意点3:スプリット比
留意点4:メモリー対策
留意点5:分離カラム選択
• 標準試料と実試料の連続測定
• 定性解析及び簡易定量解析
⇒ 各試料のクロマトグラム及
びスペクトルデータの取得
• MSのチューニング及びキャリブレーション
⇒ トリアジン化合物の使用
• 試料のサンプリング
⇒ 留意点1:試料カップについて
留意点2:試料の飛散対策
• 熱脱着-GC/MSの測定条件の設定
⇒ 留意点3:スプリット比
留意点4:メモリー対策
留意点5:分離カラム選択
• 標準試料と実試料の連続測定
• 定性解析及び簡易定量解析
⇒ 各試料のクロマトグラム及
びスペクトルデータの取得
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分析上の留意点1:試料カップについて
• ディスポーザブルエコカップの使用の徹底!
試料カップの洗浄による
再利用は、データの再現性
・定量性を悪化させる可能性大。
ディスポーザブルエコカップLディスポカップ使用時の再現性(DeBDE100ng)
面積値の再現性:RSD=3.4%
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分析上の留意点2 :試料の飛散対策
• サンプリング時は、試料の小片化のみで粉砕はしない!
• 適量の石英ウール(ファイングレード)
を詰める(オートショットサンプラー使用時)!
試料カップ中の試料がまれに飛散してトラブルを引き起こす可能性あり
(特にオートショットサンプラー使用時)。
トラブル時の加熱気化管例
適量(約0.5mg程度)
の石英ウールを詰める
熱抽出の加熱気化管内壁に試料粉が残留
試料カップの回収を妨害する
JEOL環境セミナー2008
分析上の留意点3:スプリット比
• 高沸点成分であるため、Pyからカラムへの効率の良い導入が必要。
Py
注入口
GC
Pyインターフェイス
320℃以上必
試料カップ
スプリッ
スプリット比
DeBDE
試料 :ABS樹脂(DeBDE1000ppm含有)
メモリーとしての
ブランク(高濃度試料測定直後)
スプリット比
試料 :ABS樹脂(DeBDE1000ppm含有)
DeBDE
ブランク(高濃度試料測定直後)
数百分の1程度のメモリー
JEOL環境セミナー2008
分析上の留意点4:メモリー対策
・ 数百分の1レベルでのメモリー(キャリーオバー)の存在。
高濃度試料測定の次の試料のデータへ悪影響を及ぼす。
-対策- (1) 1次スクリーニングによる全臭素濃度を参考にし、
低い濃度から順に試料測定を実施する。 (2) 高濃度試料に関しては、極力試料量を少なめにする。 (3) 数1000ppm以上の臭素濃度試料の後にはブランク
サンプルを追加する。
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DeBDE
30mx0.25μmカラ
30mx0.10μmカラ
15mx0.10μmカラ
分析上の留意点5:分離カラム選択
• 高沸点且つ熱分解性が高いため、
分離カラムの選択が重要。
ポイント
☆膜厚:0.1μm以下
☆長さ:15m以内
☆無極性・高耐熱用
DeBDE1ppmデータの比
JEOL環境セミナー2008
まとめ 熱脱着-GC/MS法による臭素系難燃剤とフタル酸エステル類の分析
(1) 簡便な操作とハイスループット
・ サンプリングが容易。
・ 溶媒抽出法よりも極端に短時間での測定が可能。
(サンプリング:5分+測定:40分→サイクル:45分/検体)
(2) 定性と定量解析
・ マススペクトルによる定性解析。
・
2次スクリーニングレベルとして十分な定量精度。
(3) 作業の効率化
・
臭素系難燃剤とフタル酸エステル類を同一の分離カラムで測定。
・ オートサンプラーにより、無人での多検体の連続測定が可能。
・ GC/MSとして、溶媒抽出法での測定にも利用可能。
(4) 測定時の留意点
・ ディスポカップの使用、飛散防止及びメモリー対策に注意。