出版物のデジタル化、ネットワーク流通及び アーカイブ構築の推 … ·...

9
1 出版物のデジタル化、ネットワーク流通及び アーカイブ構築の推進について デジの推進 1回公共図書館におけるデジタルアーカイブ推進会議 デジの推進 2010年2月18日 総務省 情報流通振興課統括補佐 松田 昇剛 出版物のデジタル化に関する総務省の取組 2.ユビキタス・ライブラリ・プラットフォームの構築・検証 1.デジタル文明開化プロジェクト Contents ①デジタルアーカイブ構築・連携技術の確立・標準化 ②出版物のデジタル流通に関する技術の確立・標準化 デジタルアーカイブ構築に活用可能な総務省の施策 3.雑誌コンテンツのデジタル配信プラットフォームの構築 4.放送による新聞・雑誌等のデジタル配信 5.ハイブリッド型デジタル出版流通の基盤技術開発 出版のデジタル化を巡る動向 2 Googleブックサーチ訴訟の動向等を踏まえ、国内に眠っている知的資産の総デジタル化を進め、インターネット上で電子情報として共有・利用できる仕組みの構 築へ向けて、①デジタルデータの作成やアーカイブの設計等に関する技術基盤を確立し、多様な主体により構築されるデジタルアーカイブの相互連携を推進 するとともに 技術的課題解決等により出版物のデジタル推進・ネットワーク流通拡大 (1)「デジタル文明開化プロジェクト」 ● 出版物のデジタル化は、日本社会の過去の知的資産を次代に継承 し、新たな創造の基盤 となるものであり、極めて重要。 ● しかし、我が国における出版物のデジタルアーカイブ構築は、国立国会図書館等の一部の機関 に限られており、予算規模も十分とは言えないところ。 ● また、電子出版ビジネスも、コミックス中心 に偏っており、携帯電話のアプリケーションの一つ の位置づけに限られているところ。 ● 多くの図書館等の機関によるデジタルアーカイブ構築の促進、図書館サービスから電子出版ビジネスまで総合的な出版物のデジタル流通の促進のためには、資金の確保、 著作権問題と並んで、デジタル原版の作成から検索、認証・課金、流通、閲覧までの全過程を含む技術標準化問題 への取組が必要。 出版物のデジタル化に関する総務省の取組 情報通信技術環境を整備するための総務省の取組 総務省における具体的施策 出版物のデジタル化を巡る技術的課題 するとともに技術的課題解決等により出版物のデジタル推進・ネットワーク流通拡大 地域の公立図書館において、ネットワーク技術・セキュリティ技術などを活用し、国会図書館のデジタルアーカイブのデータを、著作権を保護しつつネットワーク を通じて閲覧できるサービスを構築することで国民共有の財産である国会図書館の蔵書を地域住民が身近に活用できるようにし、地域における生涯学習環境 の向上・我が国の将来を担う人材の育成に寄与。 デジタル出版物の流通の形として、SDメモリカードに収納して書店などで販売するパッケージ販売と、オンラインコンテンツ販売の2通りを併せ持った流通サービスを構築す ることで、デジタル出版流通の市場の拡大、サービス基盤の整備により市場の相乗的な広がりに寄与。また、国会図書館の蔵書を電子化して利用者の認証と閲覧期間の制 限を施したオンライン貸出しサービスの可能性を実験。 (2)「ユビキタス・ライブラリ・プラットフォームの構築・検証」 (5)「ハイブリッド型デジタル出版流通の基盤技術開発」 (4)「放送による新聞・雑誌等のデジタル配信」 雑誌や新聞などの紙メディアを、デジタル放送を使ってデジタル配信することにより、通信を介したサーバアクセスを原則不要とし、定期刊行物が所定の日時ま でに手元に届いている(蓄積される)サービスを構築。また、受信チューナーの搭載された各受信機に対して、蓄積受信制御機能を有したモジュールを搭載する ことにより、デジタル配信された各情報をパソコンや各種ゲーム機器、あるいはiPod touchや各種スマートフォンなどにより、閲覧可能なサービスを構築。 (3)「雑誌コンテンツのデジタル配信プラットフォームの構築」 雑誌コンテンツの配信形態や配信デバイス等の検証、記事単位の少額決済および著作者への著作権料配分のための効率的な手法を検討することにより、雑誌メディア産 業の新たな市場を創造し、雑誌メディアの属性に即した新たなコンテンツ制作・配信・著作権配分等の新たな方針を策定するとともに、海外在住者を対象とした市場の創造 等の海外展開に寄与。 3 出版物のデジタル化に関する総務省の取組 2.ユビキタス・ライブラリ・プラットフォームの構築・検証 1.デジタル文明開化プロジェクト Contents ①デジタルアーカイブ構築・連携技術の確立・標準化 ②出版物のデジタル流通に関する技術の確立・標準化 デジタルアーカイブ構築に活用可能な総務省の施策 3.雑誌コンテンツのデジタル配信プラットフォームの構築 4.放送による新聞・雑誌等のデジタル配信 5.ハイブリッド型デジタル出版流通の基盤技術開発 出版のデジタル化を巡る動向 4 総務省「デジタル文明開化プロジェクト」 Googleブックサーチ訴訟の動向等を踏まえ、国内に眠っている知的資産の総デジタル化を進め、インター ネット上で電子情報として共有・利用できる仕組みの構築へ向けて、①デジタルデータの作成やアーカイブの 設計等に関する技術基盤を確立し、多様な主体により構築されるデジタルアーカイブの相互連携を推進 する とともに、②技術的な課題の解決等による出版物のデジタル化の推進・ネットワーク流通の拡大 を図る。 アナログ時代の日本の知識・文化をデジタル資産化し、有効活用・海外発信 図書・出版物 公文書 美術品・博物品 歴史資料 5 国立国会 図書館 国立 公文書館 国立 博物館 米国 議会図書館が米国の歴史・政治・文化・社会 に関する資料を1500万点以上アーカ イブ化済 • Google社はGoogleブックサーチにより、7 00万冊の出版物をデジタル化済 情報の民間開放を促進し、 新たなビジネスを創出 アジア 中国国家図書館が約100万冊をアーカ イブ化済。韓国も国立デジタル図書館を 構築し、38万冊(1億ページ以上)を アーカイブ化し、ウェブ提供中 欧州 ヨーロピアナ(EU版オンライン図書館) の蔵書を2010年までに 1000 万点アーカイブ化することを計画(現在 460万点をウェブ公開済) デジタル文明開化プロジェクト具体的な実施内容 デジタルアーカイブ構築・連携技術の確立・標準化 出版物等のデジタルアーカイブの構築を促進するため、①国立国会図書館等の関係機関が開発してきた関連技術をベース にした技術標準化 、②ネット利用に重点 を置いた新たなデジタルアーカイブ関連技術の開発・実証 を行い、デジタルアーカイブ 間の相互連携が可能となる技術の標準化を推進。 出版物のデジタル流通に関する技術の確立・標準化 出版・流通・販売に関わる多数・多様なプレイヤーが共存・競争可能な環境を実現するため、技術的課題(①コンテンツ フォーマット、②メタデータ等)について、標準化に向けた検討を行う。 1.具体的な実施内容 年度 年度 年度 2.スケジュール 項目 21年度 22年度 23年度 デジタルアーカ イブ構築・連携技術 の確立・標準化 出版物のデジタ ル流通に関する技 術の確立・標準化 複数のデジタルアーカイブの連携に関する技術のガイドライン化 個々のデジタルアーカイブの構 築に関する技術のガイドライン化 6 デジタルアーカイブの多目的な利活 用に関する技術のガイドライン化 ①コンテンツ フォーマット ②メタデータ ③DRM ⑥端末仕様 ④認証 ⑤配信経路 ⑦アーカイブ ⑧その他(ネット上 での出版物アクセ ス一般) 第1回公共図書館におけるデジタルアーカイブ推進会議(平成22年2月18日) 配布資料

Transcript of 出版物のデジタル化、ネットワーク流通及び アーカイブ構築の推 … ·...

Page 1: 出版物のデジタル化、ネットワーク流通及び アーカイブ構築の推 … · 出版物のデジタル化、ネットワーク流通及び アーカイブ構築の推進について

1

出版物のデジタル化、ネットワーク流通及びアーカイブ構築の推進について

~ 書デジの推進 ~

第1回公共図書館におけるデジタルアーカイブ推進会議

書デジの推進

2010年2月18日総務省

情報流通振興課統括補佐松田 昇剛

Ⅰ 出版物のデジタル化に関する総務省の取組

2.ユビキタス・ライブラリ・プラットフォームの構築・検証

1.デジタル文明開化プロジェクト

✔Contents

①デジタルアーカイブ構築・連携技術の確立・標準化

②出版物のデジタル流通に関する技術の確立・標準化

Ⅱ デジタルアーカイブ構築に活用可能な総務省の施策

3.雑誌コンテンツのデジタル配信プラットフォームの構築

4.放送による新聞・雑誌等のデジタル配信

5.ハイブリッド型デジタル出版流通の基盤技術開発

Ⅲ 出版のデジタル化を巡る動向2

Googleブックサーチ訴訟の動向等を踏まえ、国内に眠っている知的資産の総デジタル化を進め、インターネット上で電子情報として共有・利用できる仕組みの構築へ向けて、①デジタルデータの作成やアーカイブの設計等に関する技術基盤を確立し、多様な主体により構築されるデジタルアーカイブの相互連携を推進するとともに ②技術的な課題の解決等により出版物のデジタル化の推進・ネットワーク流通を拡大

(1)「デジタル文明開化プロジェクト」

● 出版物のデジタル化は、日本社会の過去の知的資産を次代に継承し、新たな創造の基盤となるものであり、極めて重要。

● しかし、我が国における出版物のデジタルアーカイブ構築は、国立国会図書館等の一部の機関に限られており、予算規模も十分とは言えないところ。

● また、電子出版ビジネスも、コミックス中心に偏っており、携帯電話のアプリケーションの一つの位置づけに限られているところ。

● 多くの図書館等の機関によるデジタルアーカイブ構築の促進、図書館サービスから電子出版ビジネスまで総合的な出版物のデジタル流通の促進のためには、資金の確保、著作権問題と並んで、デジタル原版の作成から検索、認証・課金、流通、閲覧までの全過程を含む技術標準化問題への取組が必要。

出版物のデジタル化に関する総務省の取組

情報通信技術環境を整備するための総務省の取組

総務省における具体的施策

出版物のデジタル化を巡る技術的課題

するとともに、②技術的な課題の解決等により出版物のデジタル化の推進・ネットワーク流通を拡大

地域の公立図書館において、ネットワーク技術・セキュリティ技術などを活用し、国会図書館のデジタルアーカイブのデータを、著作権を保護しつつネットワークを通じて閲覧できるサービスを構築することで国民共有の財産である国会図書館の蔵書を地域住民が身近に活用できるようにし、地域における生涯学習環境の向上・我が国の将来を担う人材の育成に寄与。

デジタル出版物の流通の形として、SDメモリカードに収納して書店などで販売するパッケージ販売と、オンラインコンテンツ販売の2通りを併せ持った流通サービスを構築することで、デジタル出版流通の市場の拡大、サービス基盤の整備により市場の相乗的な広がりに寄与。また、国会図書館の蔵書を電子化して利用者の認証と閲覧期間の制限を施したオンライン貸出しサービスの可能性を実験。

(2)「ユビキタス・ライブラリ・プラットフォームの構築・検証」

(5)「ハイブリッド型デジタル出版流通の基盤技術開発」

(4)「放送による新聞・雑誌等のデジタル配信」

雑誌や新聞などの紙メディアを、デジタル放送を使ってデジタル配信することにより、通信を介したサーバアクセスを原則不要とし、定期刊行物が所定の日時までに手元に届いている(蓄積される)サービスを構築。また、受信チューナーの搭載された各受信機に対して、蓄積受信制御機能を有したモジュールを搭載することにより、デジタル配信された各情報をパソコンや各種ゲーム機器、あるいはiPod touchや各種スマートフォンなどにより、閲覧可能なサービスを構築。

(3)「雑誌コンテンツのデジタル配信プラットフォームの構築」

雑誌コンテンツの配信形態や配信デバイス等の検証、記事単位の少額決済および著作者への著作権料配分のための効率的な手法を検討することにより、雑誌メディア産業の新たな市場を創造し、雑誌メディアの属性に即した新たなコンテンツ制作・配信・著作権配分等の新たな方針を策定するとともに、海外在住者を対象とした市場の創造等の海外展開に寄与。

3

Ⅰ 出版物のデジタル化に関する総務省の取組

2.ユビキタス・ライブラリ・プラットフォームの構築・検証

1.デジタル文明開化プロジェクト✔

Contents

①デジタルアーカイブ構築・連携技術の確立・標準化

②出版物のデジタル流通に関する技術の確立・標準化

Ⅱ デジタルアーカイブ構築に活用可能な総務省の施策

3.雑誌コンテンツのデジタル配信プラットフォームの構築

4.放送による新聞・雑誌等のデジタル配信

5.ハイブリッド型デジタル出版流通の基盤技術開発

Ⅲ 出版のデジタル化を巡る動向4

総務省「デジタル文明開化プロジェクト」

Googleブックサーチ訴訟の動向等を踏まえ、国内に眠っている知的資産の総デジタル化を進め、インターネット上で電子情報として共有・利用できる仕組みの構築へ向けて、①デジタルデータの作成やアーカイブの設計等に関する技術基盤を確立し、多様な主体により構築されるデジタルアーカイブの相互連携を推進するとともに、②技術的な課題の解決等による出版物のデジタル化の推進・ネットワーク流通の拡大を図る。

アナログ時代の日本の知識・文化をデジタル資産化し、有効活用・海外発信

図書・出版物 公文書 美術品・博物品 歴史資料

5

国立国会図書館

国立公文書館

国立博物館

米国• 議会図書館が米国の歴史・政治・文化・社会

に関する資料を1500万点以上アーカイブ化済

• Google社はGoogleブックサーチにより、7

00万冊の出版物をデジタル化済

情報の民間開放を促進し、新たなビジネスを創出

アジア

• 中国国家図書館が約100万冊をアーカイブ化済。韓国も国立デジタル図書館を構築し、38万冊(1億ページ以上)をアーカイブ化し、ウェブ提供中

欧州• ヨーロピアナ(EU版オンライン図書館)

の蔵書を2010年までに 1000万点アーカイブ化することを計画(現在460万点をウェブ公開済)

デジタル文明開化プロジェクト具体的な実施内容

① デジタルアーカイブ構築・連携技術の確立・標準化出版物等のデジタルアーカイブの構築を促進するため、①国立国会図書館等の関係機関が開発してきた関連技術をベース

にした技術標準化、②ネット利用に重点を置いた新たなデジタルアーカイブ関連技術の開発・実証を行い、デジタルアーカイブ間の相互連携が可能となる技術の標準化を推進。

② 出版物のデジタル流通に関する技術の確立・標準化出版・流通・販売に関わる多数・多様なプレイヤーが共存・競争可能な環境を実現するため、技術的課題(①コンテンツ

フォーマット、②メタデータ等)について、標準化に向けた検討を行う。

1.具体的な実施内容

成 年度 成 年度 成 年度

2.スケジュール

項目 平成21年度 平成22年度 平成23年度

① デジタルアーカイブ構築・連携技術の確立・標準化

② 出版物のデジタル流通に関する技術の確立・標準化

複数のデジタルアーカイブの連携に関する技術のガイドライン化個々のデジタルアーカイブの構

築に関する技術のガイドライン化

6

デジタルアーカイブの多目的な利活用に関する技術のガイドライン化

①コンテンツフォーマット

②メタデータ ③DRM

⑥端末仕様

④認証

⑤配信経路 ⑦アーカイブ

⑧その他(ネット上での出版物アクセ

ス一般)

第1回公共図書館におけるデジタルアーカイブ推進会議(平成22年2月18日) 配布資料

Page 2: 出版物のデジタル化、ネットワーク流通及び アーカイブ構築の推 … · 出版物のデジタル化、ネットワーク流通及び アーカイブ構築の推進について

2

Ⅰ 出版物のデジタル化に関する総務省の取組

2.ユビキタス・ライブラリ・プラットフォームの構築・検証

1.デジタル文明開化プロジェクト

Contents

①デジタルアーカイブ構築・連携技術の確立・標準化

②出版物のデジタル流通に関する技術の確立・標準化

Ⅱ デジタルアーカイブ構築に活用可能な総務省の施策

3.雑誌コンテンツのデジタル配信プラットフォームの構築

4.放送による新聞・雑誌等のデジタル配信

5.ハイブリッド型デジタル出版流通の基盤技術開発

Ⅲ 出版のデジタル化を巡る動向7

1.デジタルアーカイブ構築に関する技術の標準化

画像フォーマット(解像度・圧縮率・階調)、メタデータ(書誌情報)、検索方法等の技術について

現状は以下のとおりであり、標準化が必要。

①画像フォーマットに関する技術

・PDF/AやJPEG2000などのファイルフォーマット自体の標準化は進みつつあるが、どのようなコン

テンツについて、どのフォーマットをどのような解像度や、圧縮率で適用すべきか、といった点に

ついては、標準化はまったく進んでない状況。

デジタルアーカイブ間の相互連携技術の例①

②メタデータ、検索方法に関する技術

・メタデータの標準化や、その記述ルールの統一、また、検索プロトコルの統一などが必要である

が、こうした分野は未だ立ち遅れている。

③本文テキスト作成技術

・OCRなどで作成したテキストデータをどのように保存し、ネット上で活用するのかについては、①

PDFに埋め込む、②プレーンテキストとして別に保存する、③XMLでタグ付けしてより高度な検索

を可能にする等様々な選択肢があるが、標準は存在しない。

8

2.複数のデジタルアーカイブ間におけるメタデータの相互運用に関する技術の実証・標準化

・国会図書館(DC-NDL)、国立公文書館(EAD)、国立情報学研究所(junii2)、地方の公共図書館等のデジタルアーカイブでは、それぞれ独自の記述要素、記述規則によりメタデータを作成。このため、Title(タイトル)、Creator(著者)、Description(内容要約・目次)等、共通の項目として扱えそうな項目についても、記述の仕方が違うために機械的に同じものであると認識することが困難。

・また、アーカイブ間検索(メタデータの収集)について、各デジタルアーカイブでは、それぞれ異なる検索プロトコルを実装(地方の図書館ではベンダ依存で独自プロトコルが実装)しており、館種の異なるアーカイブ間検索(横断的検索)が行えない。

・このため、各デジタルアーカイブが採用しているメタデータ・スキーマを登録管理(メタデータ・スキーマ・レジストリ)し、それぞれの仕様の違いを認識してメタデータの相互交換を可能とする基盤構築に関する技術、各デジタルアーカイブのデータの横断的な検索を可能とする検索プロトコルに関する技術について実証

デジタルアーカイブ間の相互連携技術の例②

・異なるメタデータ・スキーマを標準的なメタデータ・スキーマに変換する技術の実装・複数の検索プロトコルの実装

9

統合的利用

デジタルアーカイブ

デジタルアーカイブ

複数のデジタルアーカイブ間におけるメタデータの相互運用に関する技術

利用者

OAI-PMH

標準メタデータへの変換

コンテンツ

業務担当者

インターネット

メタデータ蓄積

相互運用

メタデータ(DC-NDL)

デジタルアーカイブ

コンテンツ

メタデータ(Junii2)

デジタルアーカイブ

コンテンツ

メタデータ(EAD)

メタデータ(DC-NDL)

メタデータ(Junii2)

メタデータ(EAD)

検索

・クラウド型デジタルアーカイブシステムの共同利用・郷土史料向けメタデータ・スキーマの開発・実装

市町村

コンテンツ(古書 等) (ア)アーカイブデータ入力システム

テキスト 静止画関連(スキ ナ等)

アーカイブデータ入力モデル

3.分散型デジタルアーカイブを共同構築・運用する技術の実証・標準化

県域の図書館等が共同利用型デジタルアーカイブ拠点となり、各市町村がデジタル化した郷土史料

等を収集、保存し、一般に検索・閲覧サービスを提供する、「分散型デジタルアーカイブ」の共同構築・

運用のために必要な技術について実証

デジタルアーカイブ間の相互連携技術の例③

10

県域デジタルアーカイブ

利用者

インターネット

メタデータ蓄積

メタデータ

市町村

コンテンツ(襖絵、古地図等)

メタデータ市町村

コンテンツ(方言 等)

メタデータ

検索

・テキスト・静止画関連(スキャナ等)・書籍 等

(イ)高解像度映像解析システム

・高機能ワークステーション等・画像(襖絵、古地図 等)

(ウ)アーカイブデータベース・マルチメディア情報配信装置等

・音声,動画(方言 等)

画像をアーカイブする際のモデル

音声等をアーカイブする際のモデル

郷土史料等の分散型デジタルアーカイブを共同構築・運用する技術

担当者

コンテンツ(郷土史料)

メタデータコンテンツ

メタデータ

担当者

担当者

○デジタルアーカイブの構築・利用技術には、以下のような技術がある。①(コンテンツをデジタル化する際の)画像ファイル等フォーマット(解像度・圧縮率等)②(デジタル化されたコンテンツを検索するための)メタデータ(書誌情報)③(デジタル化されたコンテンツの)検索方法④(同じく)長期保管・利用 等

○これらの技術を標準化することで、利用者にとっては統一したアクセス方法による利便性向上、構築・運営主体にとっては汎用品による構築・運営コストの低減、双方にとって世代を超えたサービス利用・提供の継続等、デジタルアーカイブの構築・利用を促進するために本質的なメリットが生じる(下表参照)。

技術標準化のメリット

(A)デジタルアーカイブ毎にバラバラの技術で構築が進んだ

場合のデメリット

(B)各デジタルアーカイブが標準化された技術で構築する場

合のメリット

利用者 ・アーカイブ毎に統一した方法やパソコン環境でアクセスが出

来なければ利便性が低下

・統一した方法やパソコン環境でアクセスが出来れば利便性

が向上

11

来なければ利便性が低下

・互換性のあるメタデータが整備されていなければ、複数アー

カイブにわたる横断的な検索ができず、求めるコンテンツを

見つけることが困難

が向上。

・複数アーカイブ間の横断的な検索も可能に。求めるコンテン

ツを容易に見つけ利用することが可能に。

構築・運営主体 ・汎用品が使えず、ベンダー独自の技術を採用し、カスタマイ

ズを行えば、構築・運営コストがかさむ。ベンダー依存の状況

から脱却できなくなれば、高コストが恒常化する。

・他のアーカイブと利用方法が異なり、連携ができなれば、保

有するコンテンツの利用者が限定される

・そもそも、どのような技術で構築すれば、他のアーカイブと連

携でき、利便性が向上するのか分からない。

・汎用品が使えるため、構築・運営コストが低減。

・他のアーカイブと連携することで、複数アーカイブ間の横断

的検索、障害発生時のリスク分散等、サービスとしての価

値が向上。

・構築の指針となり、アーカイブ化が促進。

利用者、構築・運

営主体双方

パソコン環境の違い、ソフトウェア(基本ソフト、応用ソフト)や

ハードウェア(ハードディスク、外部記憶媒体等)のバージョン

アップ・更改、世代交代により、利用・サービス提供が継続でき

なくなる。

パソコン環境の違いや、世代を超えたサービスの利用・提供

が継続可能。

Ⅰ 出版物のデジタル化に関する総務省の取組

2.ユビキタス・ライブラリ・プラットフォームの構築・検証

1.デジタル文明開化プロジェクト

Contents

①デジタルアーカイブ構築・連携技術の確立・標準化

②出版物のデジタル流通に関する技術の確立・標準化✔

Ⅱ デジタルアーカイブ構築に活用可能な総務省の施策

3.雑誌コンテンツのデジタル配信プラットフォームの構築

4.放送による新聞・雑誌等のデジタル配信

5.ハイブリッド型デジタル出版流通の基盤技術開発

Ⅲ 出版のデジタル化を巡る動向12

第1回公共図書館におけるデジタルアーカイブ推進会議(平成22年2月18日) 配布資料

Page 3: 出版物のデジタル化、ネットワーク流通及び アーカイブ構築の推 … · 出版物のデジタル化、ネットワーク流通及び アーカイブ構築の推進について

3

ポータルの構築・運営

配信マスター作成

デジタル出版の流通過程と課題項目(案)

出版社

検索

国会

図書館

プレイヤー(想定)

著作権の処理

・権利者との調整 ・著作権料の支払い

デジタルマスター作成・出版物のスキャン ・デジタル編集・ボーンデジタル

・書誌情報の付加 ・表示解像度毎の最適化・暗号化・ライセンスキー発行、データ圧縮

流通過程 課題

②メタデータ(デジタル出版物管理情報)

①コンテンツフォーマット

cf. 垂直統合モデル

印刷会社

電子出版取次

電子

認証・課金(料金回収)の提供

検索ポータ

端末の提供

通信サービスの提供

・ポータルの設計/運営 ・検索、レコメンド

・認証/課金システムの構築/運営

・コンテンツの伝送 ・料金設定 ・インフラの安定的提供

・端末の開発・提供 ・ビューアの開発・提供

④認証

⑥端末仕様

EC

事業者

MVNO事業者等

③DRM(デジタル著作権管理)

⑤配信経路

⑦デジタルアーカイブ ⑧その他総合的な利用者環境の構築と提供

・マルチメディア ・アクセシビリティ ・図書館

端末・ソフトメーカー等

携帯キャリア等

電子書店サイト

(例)キンドル

13

①コンテンツフォーマット

デジタル出版基盤技術に関する現状と課題(案)①

現状現状

出版物の多様性に応じたデジタルマスターのフォーマットが定まっていない上、デジタル配信向けフォーマットが配信サービス毎に存在するため、出版物から個々のフォーマットへデータを変換・編集する作業の負担が大。

このため、出版社・配信事業者の配信準備のコスト増・配信タイミングの遅延となり、コンテンツ数の伸び悩みの原因のひとつとなっている。

フォーマットの特殊性に応じて、利用者が、コンテンツ毎にビューワのダウンロード/デバイスの変更を行う必要がある。

検討課題例検討課題例

出版物の多様性に応じたデジタルマスターのフォーマットの確立と互換性の確保(雑誌/コミック/書籍の3種類を対象)

業界実態に即した配信マスターの推奨要件の明確化

デジタルマスターから配信マスターへの変換を容易とする技術環境の形成

②メタデータ(デジタル出版物管理情報)

現状現状

デジタル出版物の基本情報(著者、出版者、権利処理情報等)、流通管理情報(配信経路、販売単位、再生端末等)に関する統一的なメタデータ付与方法が確立されておらず、配信サービスごとに、汎用性の乏しいシステム開発にコストをかける必要がある。

また、コンテンツの管理が複雑になり、広告を効果的に行えないなど販売促進の障壁となっているとともに、読者にとっても目的のデジタル出版物にたどり着きにくくなっている。

配信後のコンテンツの利用・流通状況の把握が困難であるため、再生端末間でのコピー等を制限せざるを得ない。

検討課題例検討課題例

多様な流通経路(通信型流通、放送型流通、パッケージ流通等)で配信されることを前提としたデジタル出版物の基本情報や再生端末の種別といった流通管理情報等に関するメタデータの標準化

配信後のコンテンツの利用・流通状況等の情報管理を可能にするための動的流通情報に関するメタデータの検討と標準化

標準メタデータの効率的・安定的な付与・提供のための仕組み 14

デジタル出版基盤技術に関する現状と課題(案) ②

③DRM(デジタル著作権管理)

配信事業者ごとに個別のDRM(デジタル著作権管

理)が採用されているため、特定の事業者から購入し

たコンテンツについて、再生可能な端末が限定されて

いる。

また、デバイスを交換する場合等に、再生端末間で

のコピー(移動)閲覧ができない(コンテンツポータビリ

ティがない。 )。

推奨されるDRM(デジタル著作権管理)の要件の明確化

多様な再生端末間におけるDRM(デジタル著作権管理)の相互運用性向上のための要件の整理

現状現状 検討課題例検討課題例

④認証

携帯キャリア提供の端末と異なり、今後、普及が見込まれるスマートフォン端末や読書専用端末については、端末単位で利用者を特定する方法が確立されておらず、課金システム成立の妨げとなっている。

また、利用者を特定できなければ、少数グループによる垂直統合型モデルに加え、出版・流通・販売に関わる多数・多様なプレーヤーが共存・競争できる水平分業型モデルを構築することが、妨げられる。

認証システムの標準化(デジタル著作権管理の要件に対応した認証方式、他のオープンな認証システムとの連携、通信事業者の認証システムとの連携の確立)

推奨される個体識別認証の要件( 認 証 基 盤 連 携 フ ォ ー ラ ム と の 連携)の明確化

現状現状 検討課題例検討課題例

15

デジタル出版基盤技術に関する現状と課題(案) ③

⑤配信経路

配信経路ごとに著作権処理ルールが異なるなか、

配信技術に応じてデータ編集の方法等が異なってく

るた めに、 同 一 コ ン テン ツ に つい て、 通 信 型 流 通 、

放送 型 流 通、 パ ッケー ジ 流 通等 の 多 様な 配 信 経路

をコストやサ ービス内容 に応じて使い 分け、選 択す

ることができていない。

多様な配信経路を使い分け、選択

し、連携させることを可能とする配信

の仕組みやコンテンツの管理方法の

在り方の確立

⑥端末仕様

現状現状 検討課題例検討課題例

端末の独自仕様が乱立し、端末毎に閲覧できるコンテ

ンツが限定されるため、利用者は端末やサービスの選択

の幅を狭められ、コンテンツに応じて端末を取りそろえな

ければならない。

また、端末の独自仕様が乱立しているため、少数グ

ループによる垂直統合型モデルに加え、出版・流通・販

売に関わる多数・多様なプレーヤーが共存・競争できる

水平分業型モデルを構築することが、妨げられている。

推 奨 さ れ る ハ ー ド ウ ェ ア / ソ フ ト

ウェア要件(推奨デジタル著作権管

理方式に関する要件、標準メタデー

タに関する要件、対応する媒体形

式(SD、3G等)に関する要件等)

の明確化

操作性の汎用化、コンテンツポー

タビリティを前提とした機種依存の

低減などオープン化やユー ザビリ

ティの向上

現状現状 検討課題例検討課題例

16

デジタル出版基盤技術に関する現状と課題(案)④

⑦アーカイブ

全国の図書館等が貴重な歴史的出版物を所蔵しているにもかかわらず、それらのデジタルアーカイブ化が進められていない。

国立国会図書館等で構築されているデジタルアーカイブの全国の図書館内での利用が行われていない。

古いもの、新しいが絶版で入手困難なもの、雑誌のバックナンバー等のアーカイブコンテンツと新しいデジタル出版物とがシームレスにアクセスできない。

歴史的資料の効率的スキャン技術等の要素技術の開発

館内閲覧利用、登録利用者への貸出、図書館間での相互貸借等、従来図書館で行われてきたサービスを提供するための管理技術の標準化

アーカイブコンテンツや図書館サービス等も包括した出版流通基盤を支えるメタデータの標準化

現状現状 検討課題例検討課題例

⑧その他(ネット上での出版物アクセス一般)

デジタル出版物の無料閲覧を一時的に許すサービス(立ち読みサービス・図書館サービス)が普及していない。

チャレンジド等の利用者の特性、地域等の利用環境の特性による情報アクセス格差がある。

動画や外部サイトとのリンク等マルチメディア対応した新しいデジタル出版物が豊富に提供/利用されていない。

デジタル出版物同士を結んだり、マンガやアニメのキャラクタ等とデジタル出版物と結び付けたりすることのできる閲覧環境がない。

安全な立ち読み・図書館閲覧環境技術の標準化

チャレンジド等利用者特性に対応したフォーマット技術等の標準化とデジタル出版物のためのガイドライン作り

マルチメディアサービスに対応したフォーマット技術等の標準化

本やキャラクタ等の対象の違いを越えて、利用者が希望するコンテンツに効率よくたどりつくためのメタデータ標準化

現状現状 検討課題例検討課題例

17

(参考)米国における出版物の登録等の制度について

出版物について、米国では以下の2種類の登録等の仕組みが存在する。

①出版物の著作権者等は議会図書館に著作権登録することができる。②出版社は、出版前(ゲラ・見本刷り段階)のプレ情報(近刊情報)により議会図書館に申請することで、書誌

マーク(CIP)を付与される(書誌マークは出版時に標題紙裏に印刷され、流通することが通常)。

登録等の仕組み

出版社等が、議会図書館に納本する際、著作権登録を行う。

これにより、①法律上の推定効(著作権が侵害された場合に、著作権の有効性および著作権の保有について法律上の推定を受けることができる(著作権法410条(c)))、②法定賠償請求権と弁護士費用賠償請求権(著作権登録後に生じた著作権侵害については、著作権者に法定賠償請求権と弁護士費用賠償請求権が与えられる

著作権登録について

申請により、議会図書館から書誌マークが付与される。

書誌マークは、出版後の商業流通の基礎データとなり、これをもとに販売・流通の管理や広告宣伝が行われる。また、書誌マークは、図書館での蔵書検索の基本情報になる。これにより、個別に目録を作成する必要がなく、

複数図書館が所蔵情報を付与することで、公共図書館や大学図書館の総合目録(どの図書館に所蔵があるのかを一度で検索可能な目録)を構築できるようになる。

書誌マーク付与について

権登録後に生じた著作権侵害については、著作権者に法定賠償請求権と弁護士費用賠償請求権が与えられる(著作権法412条等))が発生する。

ただし、米国も、著作物を作成しただけで、著作権を取得可能であり、著作権登録をしなくても、著作権が発生しないわけではない(無方式主義)。

※米国はもともと登録によって著作権が発生する方式主義を採用していたが、1989年にベルヌ条約に加盟する際に権利発生要件としての登録制度は廃止した。しかし、上記のような任意登録を認め、登録に訴訟法上のメリットを与えるなどの登録のインセンティブを残している点で、他のベルヌ条約加盟国とは異なる。

18

第1回公共図書館におけるデジタルアーカイブ推進会議(平成22年2月18日) 配布資料

Page 4: 出版物のデジタル化、ネットワーク流通及び アーカイブ構築の推 … · 出版物のデジタル化、ネットワーク流通及び アーカイブ構築の推進について

4

Ⅰ 出版物のデジタル化に関する総務省の取組

2.ユビキタス・ライブラリ・プラットフォームの構築・検証

1.デジタル文明開化プロジェクト

Contents

①デジタルアーカイブ構築・連携技術の確立・標準化

②出版物のデジタル流通に関する技術の確立・標準化

Ⅱ デジタルアーカイブ構築に活用可能な総務省の施策

3.雑誌コンテンツのデジタル配信プラットフォームの構築

4.放送による新聞・雑誌等のデジタル配信

5.ハイブリッド型デジタル出版流通の基盤技術開発

Ⅲ 出版のデジタル化を巡る動向19

国会図書館

○地域の公立図書館において、ネットワーク技術・セキュリティ技術などを活用し、国会図書館のデジタルアーカイブのデータを、著作権を保護しつつネットワークを通じて閲覧できるサービスを構築する。

○国民共有の財産である国会図書館の蔵書を地域住民がより一層身近に活用できるようにし、地域における生涯学習環境の向上・我が国の将来を担う人材の育成に寄与する。

公立図書館

遠隔利用者

安全なネットワークを通じ国会図書館の蔵書を地域の図書館から身近に活用可能に

国会図書館の公共性をICTを活用してより一層高めるサービスの開発・実証

デジタルアーカイブデジタルアーカイブ

総務省 「ユビキタス・ライブラリ・プラットフォームの構築・検証」(委託先:国立国会図書館、株式会社マウス、京都高度技術研究所 実証場所:京都市等(未定))

著作権保護のため、•場所(国会図書館、公立図書館)•人(司書,登録ユーザ,一般ユーザなど)•時間(取得から1週間以内など)などにより、厳密なアクセスコントロールを実現

著作権保護のため、•場所(国会図書館、公立図書館)•人(司書,登録ユーザ,一般ユーザなど)•時間(取得から1週間以内など)などにより、厳密なアクセスコントロールを実現

通常は館内でしか公開されていない国会図書館の資料をデジタル化、データベース化し、開架図書のように遠隔の公立図書館内から一覧して自由に参照可能

通常は館内でしか公開されていない国会図書館の資料をデジタル化、データベース化し、開架図書のように遠隔の公立図書館内から一覧して自由に参照可能

デジタル開架図書

VPN

コンテンツ提供サーバ

コンテンツデータ管理サーバ

アクセス権限管理サーバ

公立図書館司書用端末国会図書館

司書用端末

利用者用端末

20

ユビキタス・ライブラリ・プラットフォームの構築・検証②

閲覧期間や印刷の権限のアクセスポリシーを設定したデジタル書籍(PDF)・音源(ストリーミング)を配信し、公開で実証実験を行う(2

月から実施中)。一般利用者及び公共図書館司書へのアンケートと、実験期間中のシステムログの解析により、①著作権保護のためのアクセス権限モデル、②デジタル書籍の図書館間貸出の取扱手順案、③デジタル書籍の図書館間貸出システムのセキュリティ指針について、標準指針をまとめる。

実証実験の概要

国立国会図書館情報漏洩を防止

(HTTPS閲覧認証など)

③ デジタル書籍の図書館貸出システムのセキュリティ指針

秋田県立図書館、大阪府立図書館、岡山県立図書館、京都市中央図書館、京都府立図書館、奈良県立図書情報館(計6図書館)

実証実験の実施箇所

システム構成図

国会図書館司書用端末

コンテンツデータ提供サーバ

公立図書館利用者端末

LiveCycleRights Management

アクセス権限管理サーバ

アクセス権限情報

貸出コンテンツフォルダ

デジタルコンテンツフォルダ

書籍 画像

公立図書館司書用端末

ユーザ認証

閲覧

貸出

アップロード

暗号化

公共図書館

OS:CentOS

OS:CentOS

OS:WindowsAdobe Flash Player視聴クライアント

OS:WindowsAdobe Reader視聴クライアント

音盤

ストリーミングコンテンツフォルダ

OS:CentOS

コンテンツデータ管理サーバ

コンテンツデータストリーミングサーバ

貸出

ストリーミング

OS:CentOS

視聴制限

Flash MediaStreaming Server

② デジタル書籍の

図書館間貸出の取扱手順案

① 著作権保護のためのアクセス権限モデル

21

Ⅰ 出版物のデジタル化に関する総務省の取組

2.ユビキタス・ライブラリ・プラットフォームの構築・検証

1.デジタル文明開化プロジェクト

Contents

①デジタルアーカイブ構築・連携技術の確立・標準化

②出版物のデジタル流通に関する技術の確立・標準化

Ⅱ デジタルアーカイブ構築に活用可能な総務省の施策

3.雑誌コンテンツのデジタル配信プラットフォームの構築

4.放送による新聞・雑誌等のデジタル配信

5.ハイブリッド型デジタル出版流通の基盤技術開発

Ⅲ 出版のデジタル化を巡る動向

22

総務省 「雑誌コンテンツのデジタル配信プラットフォームの構築」(請負先:日本雑誌協会 実施場所:全国)

コンテンツデータベース

デジタル著作権管理システム

コンテンツ配信 新サービス「magazine Next(仮)」

記事閲覧の標準フォーマット

各出版社雑誌編集部

各印刷会社

(5)雑誌コンテンツ配信専用デバイスのあり方

実証実験の概要「雑誌デジタルコンテンツ書店」の可能性検証出版業界のとりまとめを行いながら、雑誌コンテンツの配信形態、配信デバイス等の検証著作者への効率的な著作権料配分手法の検証ポイントシステム等を構築し、記事単位の少額決済および著作権料配分のための効率的な手法を検討

※ 検討内容

課金・決済プラットフォーム

個人認証・顧客情報管理

閲覧マーケティング分析ツール

広告配信・管理・効果測定ツール

各執筆者各著作権者

(1)従来とは異なる革新的な閲覧形態の実現

(2)雑誌専門のポータルサイトの設置

(3)記事単位の少額決済への対応

(4)著作権者への著作権配分ルールの確立

期待される成果雑誌メディア産業の新たな市場創造 共通のコンテンツ有料課金プラットフォーム化、及び新たな広告提供の機会創造、及び読者の利便性向上雑誌コンテンツ利活用のための新たなルール整備 雑誌メディアの属性に即した新たなコンテンツ制作・配信・著作権配分等の方針策定が可能海外展開への期待 海外在住者を対象とした市場の創造、並びに自動翻訳技術等と連携した多言語展開を行うことによる文化・産業の飛躍的成長

23

Ⅰ 出版物のデジタル化に関する総務省の取組

2.ユビキタス・ライブラリ・プラットフォームの構築・検証

1.デジタル文明開化プロジェクト

Contents

①デジタルアーカイブ構築・連携技術の確立・標準化

②出版物のデジタル流通に関する技術の確立・標準化

Ⅱ デジタルアーカイブ構築に活用可能な総務省の施策

3.雑誌コンテンツのデジタル配信プラットフォームの構築

4.放送による新聞・雑誌等のデジタル配信

5.ハイブリッド型デジタル出版流通の基盤技術開発

Ⅲ 出版のデジタル化を巡る動向

24

第1回公共図書館におけるデジタルアーカイブ推進会議(平成22年2月18日) 配布資料

Page 5: 出版物のデジタル化、ネットワーク流通及び アーカイブ構築の推 … · 出版物のデジタル化、ネットワーク流通及び アーカイブ構築の推進について

5

■雑誌や新聞などの紙メディアを、デジタル放送を使ってデジタル配信するサービス。通信を介したサーバアクセスは原則不要、いつの間にか定期刊行物が所定の日時までに手元に届いている(蓄積される)という形を実現します。

■受信チューナーの搭載された各受信機に対して、蓄積受信制御機能を有したモジュールを搭載、デジタル配信された各情報はこのモジュールを介してパソコンや家庭内に既に普及している各種ゲーム機器、あるいはiPod touchや各種スマートフォンなどに対して、WiFi経由等により、閲覧可能な状況を実現します。

■出版社、新聞社コンテンツを登録

移動中にファッション情報を楽しむ♪

■放送局配信管理システム

総務省 「放送による新聞・雑誌等のデジタル配信」(委託先:株式会社ネクストウェーブ 実施場所:東京都港区)

暇なときに新聞、雑誌をサクっと読む!

お店や自宅で受信

WiFiWiFi

WiFiWiFi

WiFiWiFi

■送出設備

地域のお店やイベント情報をチェック!

既存のモバイル端末やゲーム機に入れて

持ち歩く!

忙しい現代人のライフスタイルに合致

無駄に紙を持ち歩くことなく

情報を携帯できる

蓄積受信制御機能を具備した受信機

モジュール内蔵 モジュール内蔵

放送を限定受信しキャッシュする TV、セットトップボックス

サイネージなど

25

Ⅰ 出版物のデジタル化に関する総務省の取組

2.ユビキタス・ライブラリ・プラットフォームの構築・検証

1.デジタル文明開化プロジェクト

Contents

①デジタルアーカイブ構築・連携技術の確立・標準化

②出版物のデジタル流通に関する技術の確立・標準化

Ⅱ デジタルアーカイブ構築に活用可能な総務省の施策

3.雑誌コンテンツのデジタル配信プラットフォームの構築

4.放送による新聞・雑誌等のデジタル配信

5.ハイブリッド型デジタル出版流通の基盤技術開発

Ⅲ 出版のデジタル化を巡る動向

26

総務省 「ハイブリッド型デジタル出版流通の基盤技術開発」(委託先:株式会社インフォシティ、Hybrid e-bookコンソーシアム 実証場所:東京都渋谷)

○デジタル出版物の流通の形として、SDメモリカードに収納して書店などで販売するパッケージ販売と、オンラインコンテンツ販売の2通りを併せ持った新しい流通サービスを実現することで、利用者は作品の所有感やネットワーク環境による利用の制限からの解放などの利便性を享受できる。このような環境変化によってデジタル出版流通の市場が拡大することと、サービス基盤が整備されることで、コンテンツを提供する側としてもこれまでよりも参入し易くなり市場の相乗的な広がりが期待される。

○また、この仕組みの一部を公的サービスに活用する試みとして、国会図書館の蔵書を電子化して利用者の認証と閲覧期間の制限を施したオンライン貸出しサービスの可能性を実験する。

サービス提供者

制作業者( マスタリング )

コンテンツ提供者

出版社 出版社 出版社

原本( 紙面媒体 )を提供

電子書籍データを提供

国会図書館電子書籍

データ

貸出図書データ

貸出用電子書籍のオーサリング スキャンフォーマットの検証と

貸出期間制御データ管理

利用者( 自宅PC )

ISPネット販売業者

ポータル事業者

( インターネット販売 )

書店 書店家電

量販店

サービス提供者( 小売販売 )

電子書籍データ

電子書籍データ

電子書籍データ

フラッシュメモリ型電子書籍パッケージを提供

書店や量販店等の店頭でフラッシュメモリ型電子書籍パッケージを提供

対応携帯端末で購入した書籍を読む

通勤電車

会社

公共施設商業

施設日常の生活シーンに応じた場所・場面でつづきの読書を楽しむ

つづきや関連書籍コンテンツをインターネットで提供

SDカードへのダウンロードによる貸出期間内のセキュアな閲覧

27

Ⅰ 出版物のデジタル化に関する総務省の取組

2.ユビキタス・ライブラリ・プラットフォームの構築・検証

1.デジタル文明開化プロジェクト

Contents

①デジタルアーカイブ構築・連携技術の確立・標準化

②出版物のデジタル流通に関する技術の確立・標準化

Ⅱ デジタルアーカイブ構築に活用可能な総務省の施策

3.雑誌コンテンツのデジタル配信プラットフォームの構築

4.放送による新聞・雑誌等のデジタル配信

5.ハイブリッド型デジタル出版流通の基盤技術開発

Ⅲ 出版のデジタル化を巡る動向

✔28

新ICT利活用サービス創出支援事業について

ポイント:国が提示する課題に応じて、希望する民間法人等に委託し 、解決に資するプロジェクトを行う点。

これまでのユビキタス特区では、国際競争力強化、地域再生・産業再生等、テーマが広く様々なプロジェクトを実施。

新ICT利活用サービス創出支援事業のイメージ

交通サービス

診療所

健康サービス

企 業

家 庭

定期健康診断人間ドック特定健診

企業内診療所

バイタル情報

家庭用健康機器

医療機関(診療所)

診療情報

医事会計

患者情報

カルテ

生活指導運動指導

連携

産業保健指導支援サービス

診療所向け業務支援サービス

健康情報連携サービス

SaaS型サービス

医療・健康情報

実施モデル

企業向け実施モデル 医療機関向け実施モデル

家庭向け実施モデル

ヘルスケア情報

医療サービスICTの利活用 新規サービスの創出

29

新ICT利活用サービス創出支援事業においては、医療・健康、エネルギー利用、物流・交通、農業、産業、出版等、課題を絞る事により、その時々の行政的課題に資する。 特に、総務大臣主催の「グローバル時代におけるICT政策に関するタスクフォース」での「地球的課題検討部会」での検討に関わるもの等。

アクティブタグ

データセンタ(NTTビル)

拡大

自動転送

保健師

公民館等

リーダ

被指導者宅

健康DB

セキュアNW

保健指導用TV会議端末

保健指導用TV会議端末

被指導者

アクティブタグ付き歩数計

所要経費平成22年度予算予定額: 16億円

■ 効 果:全国各地域において、地域に根差したNPO等が「ICT人材」として、地方公共団体を補完する公共サービスの新たな担い手として活用される(地域雇用の創出・拡大)とともに、地域公共サービスの維持・向上を即効的に実現。

■平成21年度第2次補正予算予定額: 65億円

今後、地方公共団体を補完する役割が見込まれるNPO等を、ICTを利活用して地域の諸課題解決を図る「ICT

人材」として育成・活用するとともに、これらNPO等「ICT人材」が主体となって、ICTを導入して地域の公

共的サービスの維持・向上を図る取組を支援することにより、地域雇用の創出、地域人材の有効活用とともに、少子

高齢化への対応や災害対策、チャレンジドや育児期の親等の在宅勤務など地域の喫緊課題の解決を実現する。

ICTふるさと元気事業(平成21年度2次補正予算案)

交付対象地方公共団体、第3セクター、地方公共団体の推薦を受けたNPO法人

普及促進

全国各地域

支援

成果報告

NPO等によるICT利活用地域

NPO等

公共分野のICT利活用

ネッ トワーク =地域雇用の創出・拡大

★新たな公共サービスの担い手

=公共サービスの維持・向上

★ICT利活用の地域への定着

NPO等=ICT人材の育成・活用

対象分野・要件○公共分野(医療、介護、福祉、防災、防犯など)

○NPO等地域人材の育成・活用、雇用創出が前提

交付対象経費【定額補助(3億円[自治体連携のみ]、 1億円)/件】等

公募期間

平成22年2月4日(木)~2月25日(木)

① ICT人材招聘・育成(人材研修、専門家の招聘等)

② ICT関連システム設計・構築(プログラム設計・開発、ソフトウェア等)

③ ICT機器・設備(サーバ、ネットワーク機器、端末等)

30

第1回公共図書館におけるデジタルアーカイブ推進会議(平成22年2月18日) 配布資料

Page 6: 出版物のデジタル化、ネットワーク流通及び アーカイブ構築の推 … · 出版物のデジタル化、ネットワーク流通及び アーカイブ構築の推進について

6

複数の地方公共団体が広域連携して、NPO等をはじめとする地域ICT人材の効果的・有効的な育成・活用により、公共分野における効率的なICT利活用に資する取り組みを委託事業として実施し、全国各地域における公共サービスの向上とともに、公共分野におけるICT利活用(※)の促進を図る。

※公共分野におけるICT利活用の例:遠隔医療、児童・高齢者見守り、テレワーク、防災情報提供など

委託対象 総 務 省

■ 効 果:自治体間の広域連携した場合における地域ICT人材育成・活用手法及びICTシステム標準仕様を策定し、連携によるスケールメリット、技術的な面を含めたICTの導入手法を提示することにより、ICTの円滑かつ効率的な導入を促進とともに、国・地方を含めた行政コスト全体の削減を実現

■平成22年度予算予定額: 82億円

地域ICT利活用広域連携事業(平成22年度予算案)

委託対象地方公共団体、第3セクター、地方公共団体の推薦を受けたNPO法人

委託対象経費【委託費(2億円/事業)】※機器・設備等の購入は不可(リース・レンタルが原則)

① ICT人材招聘・育成(人材研修、専門家の招聘等)

② ICT関連システム設計・構築(プログラム設計・開発、ソフトウェア等)

③ ICT機器・設備(サーバ、ネットワーク機器、端末等)

全国地域

委託

複数主体の連携による公共分野のICT利活用

公共分野における

効率的・効果的なICTの導入・利

活用の実現(公共サービスの充実)

ICT人材=NPO等ICT関連システム

地方公共団体A

地方公共団体D地方公共団体B

地方公共団体C・ ICT人材の有効的育成・ 活用・ ICTシステム機能連携・ 集約化

広域連携

総 務 省

報告

成果

展開

普及

児童支援

高齢者支援

災害

対策

就労

支援

対象分野・要件○公共分野(医療、介護、福祉、防災、防犯など)

○複数の自治体による広域連携及びICT人材の育成

・活用が前提

公募開始時期平成22年度予算成立後速やかに(4月頃)

31

対象事業

地域の美術館・博物館・図書館・公文書館等に収蔵されている、有形の文化財や地域の祭礼等

の無形の文化財等をデジタルデータ化する経費について地方交付税措置を講じる。

デジタルコンテンツ制作に対する地方交付税措置

財政支援措置(ソフト)

広く地域文化 般をデジタル化する事業

都道府県 → 普通交付税で措置市 町 村 → 特別交付税で措置(事業費の1/2)

・地域の美術館・博物館・図書館・公文書館・伝統工芸館・郷土資料館等に所蔵されている文化財等。

・地方公共団体が有する文化財、地域文化に関する資料等。(例) 美術品、出版物、公文書、埋蔵文化財、祭り、伝統舞踊、郷土史など

広く地域文化一般をデジタル化する事業

措置内容

32

平成12年度より、ハード事業であるデジタル・ミュージアム・システム(コンテンツは含まず)の整備に対して、地域情報通信基盤整備事業により財政支援措置を講じている。

財政支援措置(ハード)

(参考)地域情報通信基盤整備事業

・情報通信技術を最大限に活かし、社会の変化に対応した地域の活性化、住民サービスの向上及び地域間

格差の是正を図るため、高速・超高速ネットワークインフラ等の整備を推進する事業。

地域活性化事業債

75%

一般財源

10%

元利償還分30%

〔デジタル・ミュージアム・システムの財政措置スキーム〕

50%

財源対策債

15%

地方交付税措置

元利償還分

地方交付税措置

33

Ⅰ 出版物のデジタル化に関する総務省の取組

2.ユビキタス・ライブラリ・プラットフォームの構築・検証

1.デジタル文明開化プロジェクト

Contents

①デジタルアーカイブ構築・連携技術の確立・標準化

②出版物のデジタル流通に関する技術の確立・標準化

Ⅱ デジタルアーカイブ構築に活用可能な総務省の施策

3.雑誌コンテンツのデジタル配信プラットフォームの構築

4.放送による新聞・雑誌等のデジタル配信

5.ハイブリッド型デジタル出版流通の基盤技術開発

Ⅲ 出版のデジタル化を巡る動向✔34

我が国における音楽-出版業界の市場規模について

2001年 2002年 2003年 2004年 2005年 2006年 2007年 2008年

インターネット/携帯電話配信 CD・DVDセル等売上げ

5,000

4,000

3,000

2,000

1,000

6,000

7,000

8,000

(億円)CD・DVDセル等の売上は減少傾向にあるが、インターネット・携帯電話による音楽配信は増加傾向にあり、音楽ソフト市場の約27%を占めている。

・2 0 0 8年のオーディオレコード(CD、レコード、カセット)総生産金額は2,961億円と、最盛期(1998年)の半分以下に下落している(日本レコード協会調べ)。

・一方、インターネット・携帯電話による音楽配信は、2001年の752億円から2,033億円へと増加している(デジタルコンテンツ白書2009)。

注 「 等売上げ グデ ク タ 売上げを含む

音楽ソフト市場

27%

2001年 2002年 2003年 2004年 2005年 2006年 2007年 2008年

電子出版物 書籍/雑誌販売

10,000

5,000

15,000

20,000

(億円)書籍/雑誌の推定販売金額は96年をピークに縮小傾向にある一方で、電子出版市場は携帯電話を中心に急成長し、注目を浴びているものの、出版市場の2%程度にしか過ぎない。

・2009年の書籍/雑誌の推定販売額は1兆9,356億円に落ち込み、最盛期(1996年)の2兆6,564億円から27%減少している(出版科学研究所調べ)。

・一方、電子出版市場は2001年の4億円から2 0 0 8年の 4 5 7億円へと急成長している (デジタルコンテンツ白書2009)。

(出典)デジタルコンテンツ白書2009

注:「CD・DVDセル等売上げ」にはアナログディスク・CDレンタルの売上げを含む。

出版市場

2%

35

【当初の和解案内容】

① Google社は「絶版」と認定した出版物をデジタル化し、商業利用が可能。

Googleブックサーチ訴訟 ~概要~

【Googleブックサーチとは】米国のインターネット企業Googleが、ポータルサイトGoogle内で提供している出版物の全文検索サービス。出

版物内の全文を対象に検索を行なうことができ、検索結果として表示された出版物の内容の一部(著作権切れの出版物であれば全ページ)が無料で表示される。検索・表示されるデータはGoogle社が紙製の出版物からス

キャンしたもの

【経緯】

Google社は、04年に

米国の大学図書館などと提携し 著作権の

【和解案の修正】

米国司法省や独・仏政府、著作権団体等からの異論を

【修正和解案】

09年11月13日(日本時間14日午後)グーグル等和解当事者は、新和解案を裁判所に提出

② 著作権者に対しては、デジタル化出版物1作品につき補償金60ドル以上、データ利用収益(アクセス権料、広告費)の63%を支払う。

③ 収入分配のための第三者機関(Books Rights Registry)を設置し、Google社はその費用を負担する。

どと提携し、著作権の所有者に許諾を得ないまま、所蔵する出版物のデジタル化を進めた。すでに1000万冊に及び、日本では慶応大が参加している。

これに対して、05年、

米国の作家協会や出版協会が著作権侵害として提訴したが、08年10月に当事者間で和解案成立。

※ 本和解案は「集団訴訟」であり、著作権の国際条約「ベルヌ条約」などにより、和解の影響は世界中に及び、 09年9月4日までに意思を表明しなければ、自動的に和解に参加することになっていた。

受けて、米国裁判所は和解案の修正を指示。

我が国としても、09年11月6日、米国政府に対し、外交ルートを通じて、日本の著作権者等への十分な情報提供が望ましい等、我が国の考えを伝達したところ。

新和解案を裁判所に提出。

修正和解案は、和解案の対象を「米国著作権局に登録済みの出版物又は米、英、オーストラリア、カナダの4カ国で出版された出版物」に限定し、それ以外の出版物を除外した。

今後、提出された修正和解案について、ニューヨーク連邦地裁が可否を決定するが、10年2月4日、米国司法省は、「著作権と市場独占の懸念が残る」との意見書をまとめ、連邦地裁に提出した。

36

第1回公共図書館におけるデジタルアーカイブ推進会議(平成22年2月18日) 配布資料

Page 7: 出版物のデジタル化、ネットワーク流通及び アーカイブ構築の推 … · 出版物のデジタル化、ネットワーク流通及び アーカイブ構築の推進について

7

欧州連合(EU)の欧州委員会(EC)は、09年9月7日米国での和解案に関する一連のワークショップや会合を開催。欧州の出版社、図書館、権利保有者、Eコマース関連事業を代表する組織が、現在提起されているままの和解案は、成長するデジタル書籍市場において「事実上の独占」につながるものだと非難。ECは、欧州において官民共同で書籍のデジタル化を推進することが重要だとする声明を発表。その後、独・仏は政府としてNY連邦地裁に反対の立場で意見提出をしている。これらの動きに対して G l 社はB k Ri ht R i t の理事8人のうち2人を欧州の代表者枠(著者 出版者)にす

09年8月にはマイクロソフト、ヤフー、アマゾンの大手3社が、一部の作家や図書館団体とともに、和解反対団体「オープン・ブック・アライアンス」を設立。CCIA(米コンピュータ通信産業協会)は和解案を支持。司法省は和解案の見直しを勧告。国内外からの異論を受け、Google社や全米作家協会と全米出版社協会は、10月7日の連邦地裁の公聴会の延期を

求め、和解案の大幅修正を図り、11月13日新和解案を裁判所に提出。

欧州の動向

米国の動向

Googleブックサーチ訴訟 ~各国の動向~

これらの動きに対して、 Google社はBooks Rights Registryの理事8人のうち2人を欧州の代表者枠(著者、出版者)にするとこととした。また欧州の書籍のデジタル化について、米国で絶版であったとしても、「権利者の事前の同意を得ない限り」Google Booksに掲載しない意思を明らかにした。

(社)日本文藝家協会:会員等の和解案への参加、不参加等の意思確認を行った上で、意思表示の手続きを代行。当初は、「和解に参加し、データの削除を要求」する意思表示を推奨していたが、「和解に参加し、データを残したまま、表示は拒否」することを推奨、に転向。(回答者の80%が「和解に参加し、データの削除を要求」を選択。)

(社)日本書籍出版協会:和解案への対応については会員出版各社の判断に委ねているが、「和解へ参加した上で、書籍をデータベースから削除するか否か、使用を認めるならばどこまでの使用を認めるかを判断することが妥当」という見解。(社)日本ペンクラブ:和解に参加するかしないかは、会員の自由としつつ、会長を含む22名の有志が、和解案の拒否と日本と海外を含んだクラスの認定の拒否を求める「異議申し立て」を実施。10年1月26日、Google社が保有する日本の書籍データの破棄などを求める意見書を連邦地裁に提出すると発表

日本の動向

37

09年12月2日、連邦政府は、デジタル図書館(DDB)開設に係るプロジェクトを閣議決定。書籍や絵画、資料、彫刻などのデータにオンラインで市民がアクセスできるように、2011年から3万以上の文化・学術関連施設と接続予定。デジタル図書館には、最先端の検索・閲覧技術を採用する計画。『Europeana』と連携し、ドイツ関連データの提供を促進。経費は連邦と州が折半。なお、DDBは「Googleに対する回答」として、事前に著作権者から許諾を受けることを基本とする予定。

出版物のデジタル化を巡る欧州各国の動向

○09年8月、欧州委員会は、多言語によるデジタル図書館「Europeana」に460万件のデジタルコンテンツを登録したと発表。2010年までに1000万件に増加させることを目標。

○09年11月27日、 EU文化相理事会は「賢人評議会」を設置することを決定。1月から3ヵ月間程度審議し、来春初めまでに文化財デジタル化の資金調達に関する官民協力の条件について取りまとめる予定。

○09年11月27日、欧州委員会のレディング委員(情報社会担当)は、グーグルの修正和解案が直接的に欧州に移植された場合、デジタル化の基準が米国方式になってしまうと懸念を表明。

ドイツ

EU

○09年11月19日、ミッテラン仏文化相は、7億5000万ユーロの予算を文化財のデジタル化予算として計上するよう政府に要求したことに言及。米グーグルと提携して、国立図書館の所蔵書籍をデジタル化することの是非について、拒否するつもりはなく、官民協力は歓迎するが、国が主導権を握り、適切な規制を定めることができるようにすることが重要であると表明。特に著作者の自由及び収入の保護について配慮する考えを強調。

○09年12月8日、サルコジ大統領は、米国の大企業の利益のためにフランスの文学的な遺産を奪われるようなことはさせないと述べ、フランス独自の書籍電子化プロジェクトを立ち上げることを表明。

○09年12月18日、仏大手出版社などが米グーグルに対して提起した裁判で、パリ裁判所はグーグルに対して、著者の合意がない電子化の禁止と30万ユーロ(約3900万円)の支払いを命じた。グーグルはこの判決に応じて、数百の書籍の抜粋をネットから引き上げ、残りの書籍についても検索対象から外したと述べ、判決内容を同社ポータルに記載するようにとの大審院の命令の保留を申し立てている。2010年1月末、グーグルは判決を不服として控訴。

フランス

09年11月20日、ビジネス・イノベーション・技能省及び文化・メディア・スポーツ省は、デジタル経済法案を公表。これは、デジタル素材が図書館で貸与された場合、その製作者に報酬が支払われるように、公共貸与権をオーディオや電子書籍などのデジタル素材にも拡張する内容を含むもの。

イギリス

38

各国の出版物のデジタル化の状況

• 米 国 議 会 図 書 館 において 、 所 蔵 資 料 ( 総 計 1 億4 , 0 0 0 万 点 ) の う ち 、米国の「歴史資料」をデジ タ ル 化 ・ ウ ェ ブ 公 開 。文 書 、 写 真 、 動 画 、 音声 録 音 等 、 1 5 0 0 万

• 中国国家図書館において、デジタル化資料72万冊をウェブ公開し、約100万冊をLANで提供。

• デジタル化対象資料は、現代の中国語図書、中華民国期の資料等の他、甲骨文献、石刻拓片、音声データ、学術講座、展示なども含まれる。

• ヨーロピアナ(EU版オンライン図書館)において、EU加盟各国の図書館、博物館、文書館等100以上の機関が参加し、各機関でデジタル化した資料460万点をウェブ公開。2010年までに1,000万点の公開を目指している。

フランス国立図書館において 79

EU

フランス

中国

アメリカ

・ 国立国会図書館において、デジタル化した明治・大正期の国内刊行図

日本

声 録 音 等 、 1 , 5 0 0 万点をデジタル化済み。

• Goog l e 社 は Goog leブ ッ ク サ ー チ に よ り 、 70 0 万 冊 の 出 版 物 を デジタル化済み。

・ フランス国立図書館において、79万件のデジタル化データをウェブ公開(うち28万件はテキスト化)。

• ドイツ国立図書館において、著作権切れの資料を中心にデジタル化。

• 著作権保護期間中の資料のデジタル化について調査。

• 2010年にドイツデジタル図書館のプロトタイプを公開予定。

• 韓国国立中央図書館において、所蔵資料38万冊、1億ページをデジタル化し、ウェブ提供している。(うち、17万冊、5,300万ページについては著作権保護期間内にあるため、図書館の専用端末でのみ提供)。

ドイツ韓国

化した明治・大正期の国内刊行図書15万冊をウェブ公開。

・ 21年度補正予算127億円によって、約90万冊のデジタル化を予定。

39

長尾館長構想のイメージ

40

日本書籍検索制度提言協議会の概要

日本の書籍情報を管理し、これを検索しうる社会システムを構築するため、国会図書館、日本文

藝家協会、日本書籍出版協会等により、09年11月4日設立。

2010年4月を目途に国会図書館を中心とした日本書籍検索制度を提言予定。

概要

構成員構成員

○ 坂上 弘(社団法人日本文藝家協会理事長)

○ 三田 誠広(同副理事長)

○ 小峰 紀雄(社団法人日本書籍出版協会理事長)

○ 金原 優(同副理事長)

○ 松田 政行(森・濱田松本法律事務所弁護士)

○ 齋藤 浩貴(同弁護士)

○ 長尾 真(国立国会図書館 館長 )【相談役】

41

電子出版配信端末について

米国 日本 韓国提供会社 アマゾン ソニー バーンズ&ノーブル アップル KDDI サムスン

専用端末 キンドル国際版(09年10月19日、日本を含め100ヶ国超で発売。)

リーダー・デイリー・エディション(09年12月18日発売。日本国内での発売は未定)

Nook(ヌック)(09年11月30日発売。日本国内での発売は未定)

iPad(WiFiモデルを10年3月下旬に発売。3Gモデルは米国で4月以降発売見込み。)

ビブリオ(09年6月下旬発売)

SNE-50K(09年7月29日発

売。日本国内での発売は未定)

端末のイメージ

○我が国においては、携帯小説やコミックの配信が先行しており、書籍の配信は米国に比べて普及しているとは言えず、携帯電話によって電子出版物が購読されている状況がある(08年度の電子書籍市場の86%は携帯電話向け(インプレスR&Dインターネットメディア総合研究所調べ))。

○米国においては、アマゾンのキンドル等の電子出版配信端末の利用が拡大している。

○本年3月には、アップルのiPadの発売が予定されており、電子出版サービス間のコンテンツの獲得競争が予想される。10年1月31日、米アマゾンは出版大手のマクミランの要求に応じ、同社がキンドルストアで販売する電子書籍の価格を自由に設定し、売上額の70%を受け取れるようにした。

普及台数 普及台数300万台以上。米国でのシュアは6割以上。

累計販売台数40万台 ― ― 非公表 非公表

コンテンツ規模 40万冊以上 グーグル提供の無料書籍を含め110万冊以上

グーグル提供の無料書籍を含め100万冊

電子書籍のオンラインショップ「iBookストア」を米英仏の大手出版社5社以上と開設予定。

― 2500冊

端末価格 259ドル(約2万3千円)489fドル(約4万3千円)【キンドルDX】

399ドル(約3万6千円)

259ドル(約2万3千円)

499ドル~699ドル(4万5千~6万3千円)

5万円 33万9千ウォン(約2万5千円)

通信機能及びDL方法

有(専用サイトより直接DL)。通信費はアマゾンが負担。

有(専用サイトより直接DL)通信費は不要。

有 有(専用ストアより直接DL)。WiFi機能を標準搭載。3G機能付モデルも発売予定。

有(専用サイト「EZブック」より直接DL)

無(パソコンを経由してDL)

備考 日本語での配信開始は未定。2010年1月19日に日本を含む世界100カ国・地域を対象に上位機種KindleDXを発売。

米国最大の書店。チェーン。同社書店内であれば、全ての電子書籍を無料で読める。

9.7型の液晶画面、タッチパネル方式。

新聞も購読可能で表示はフルカラー。

文芸や、コミック、アニメ、写真集を配信。

同国最大書店の教保文庫と提携して、韓国内で展開。10年3月に米Googleと提携して新端末を米国で発売予定。

※グーグル社が、10年からインター ネットで電子書籍をダウンロー ド販売する「グーグル・エディション」を開始予定。当初は50万冊を対象とし、専用端末を使用する予定はない。 42

第1回公共図書館におけるデジタルアーカイブ推進会議(平成22年2月18日) 配布資料

Page 8: 出版物のデジタル化、ネットワーク流通及び アーカイブ構築の推 … · 出版物のデジタル化、ネットワーク流通及び アーカイブ構築の推進について

8

日本国内における主なデジタル出版サービスの概要

端末等

サービス名 サービスの概要 コンテンツ規模

一般向け

携帯電話 数百サイトが存在 各書店サイトが携帯キャリアごとにサイトを作成する必要があるため、すべての携帯キャリアに対応していない場合もある。書誌情報と見本画像のみを持ち、配信等は取次に任せている書店も多い。課金は各携帯キャリアが行う。KDDIでは電子出版物専用のアプリを入れた携帯端末ビブリオを発売。

数百~7万タイトル以上文芸系書籍からコミック、写真集まで様々

スマートフォン

eBookJapan等数サイトが存在

iPhone/iPod Touch向けに電子出版物を販売。eBookJapanでは専用アプリebi Readerの利用が必要。

22,000点(コミック16,000点含む)

般向けNintendo DS

DS vision(DNP/am3)

Nintendo DS向けの電子出版物販売。PCで購入して専用microSDに転送して閲覧する。購入したコンテンツはPCに保存することができる。

マンガ91点、書籍219点等

PSP PlayStationStore PSP向けの電子出版物。PSPもしくはPCで購入できる。 コミックのみ数十タイトル

PC 数十サイトが存在 ダウンロードしたコンテンツをPCに入れた専用リーダーで閲覧する。決済はクレジットカードやWebmoneyが利用される。一部サイトでは貸本形式も行われている。

数千~10万タイトル以上文芸系書籍からコミック、写真集まで様々

業務向け

図書館 NetLibrary(紀伊国屋/凸版印刷)

OCLC(Online Computer Library Center ,INC.:米国を中心として世界各国の大学や研究機関で構成された非営利・メンバー制のライブラリーサービス機関)が提供する図書館向けの電子出版物配信サービス。利用者は図書館蔵書をいつでもパソコンから閲覧できる。和書については、凸版印刷が電子データ制作、紀伊国屋書店が電子出版物販売を担当している。

学術系eBookが21万タイトル以上(和書は約1,300点)

43

海外における主な電子書籍サービスの概要

サービス名提供会社

フォーマット サービスの概要コンテンツ

規模日本からの利用可否

Kindle Amazon Kindle (AZW)形式(Amazon社独自フォーマット)

Kindle端末は無線通信機能を備え、携帯電話網に無料で接続でき、PCを介さず同社が運営するKindle Storeの電子書籍や新聞・雑誌の定期購読サービスが利用可能。Amazonで購入したコンテンツは、オンライン上のアカウントを通じて、Kindleに限らず、PC、Mac、iPhone、Blackberry等のユーザが所有する複数のデバイスで閲覧可能。

Kindle Storeでは40万冊以上の書籍、約50誌の新聞・雑誌を提供。

日本国内で利用可能な国際版端末が発売されているが、日本語コンテンツの配信開始は未定。

Kindle DX 2009年5月に米国で発売済みのKindle上位機種。英語以外にも日独仏スペインの4カ国語に対応したPDFデータを取り込める。

2010年1月19日に日本を含む世界100カ国・地域を対象に発売。

iPad Apple EPUB形式(業界標準方式)

無線通信機能を備え、4月以降(米国)には携帯電話網に接続可能なモデルも発売予定。ニューズ・コーポレーション傘下の大手出版社5社以上がコンテンツ配信をする「iBookストア」より電子書籍、新聞、雑誌を直接DL可能。iPhone、iPod touch用に提供されているアプリケー

ションをそのまま利用可能。書籍閲覧のほか、ウェブ閲覧、電子メール、写真観賞、音楽・ビデオ視聴、ゲーム等携帯端末が持つ機能を備えて

「iBookストア」を米英仏の大手出版社5社以上と開設予定。

Wi-Fiモデルは3月下旬に日米欧同時発売。3Gモデルは日本では6月発売見込み(米国では4月以降)。

いる。

Reader 米Sony BBeB形式(ソ

ニー独自形式)からEPUB形式へ移行

携帯電話網への接続が可能。同社の運営するeBook Storeから書籍・

新聞・雑誌コンテンツの購入が可能。また、米国内各地の図書館の電子書籍をPCにダウンロードし、端末に転送し一定期間読むことができる。貸出期限を過ぎると自動的に読めなくなる機能を備えている。

グーグル提供の無料書籍100万冊を含め、110万冊の書籍を提供。

日本国内での端末およびコンテンツの提供は未定。

Nook Barnes & Noble(米

国最大の書店チェーン)

EPUB形式 携帯電話網へ接続し、同社の配信サービスB&N eBookstoreから書籍や新聞、雑誌を購入可能。また、同社書店内であれば、無線LANを通じ電子本の試し読みや各種情報サービスを無料で利用可能。購入した書籍コンテンツはNook端末に限らず、携帯電話やPC等でも購読できる。さらに購入したコンテンツをNook端末同士の他、iPhone・Blackberry等の携帯電話端末やPCにも最大2週間貸し出すことが可能。

B&N eBookstoreでは

グーグル提供の無料書籍を含め100万冊以上の書籍、20紙以上の新聞・雑誌を提供。

2009年12月に米国で発売され

たばかりであり、日本向けの端末およびコンテンツの提供は未定。

SNE-50K(韓国)

サムスン EPUB形式 韓国内最大書店の教保文庫と提携して韓国内で書籍配信サービスを展開。無線通信機能を備えておらず、PCを経由してコンテンツをダウンロードする。

2500冊 2009年7月29日発売。日本国内での発売は未定。

米グーグルと提携し、3月に米国で発売予定。当面英語データに限り対応予定。同社専用の電磁誘導方式のスタイラスペンを使用し、画面に直接書き込むことも可能。

グーグル提供の無料書籍を含め100万冊以上の書籍を提供予定。

日本国内での発売は未定。

E6E101(米国)

44

米アップルが2010年1月27日に新型情報端末「iPad」を発表。3月下旬に全世界でほぼ同時発売予定。iPadの発売に合わせ、電子書籍を扱うオンラインショップ「iBookストア」を米英仏の大手出版社5社以上と開設予定。

iPadについて

発売時期Wi-Fiモデル: 2010年3月下旬Wi-Fi+3Gモデル:2010年4月以降(米)

2010年6月見込み(日)

発売地域 日本を含む全世界

発売価格499ドルから699ドル(日本:約4万5千円~6万5千円)

ビジネスモデル

端末販売のみならず、コンテンツ、アプリケーションの販売プラットフォームを独占提供する垂直統合モデル(アップルは端末の提供者であり、かつ、コンテンツプラットフォーム提供事業者)

iTunes、App Storeのほか、電子書籍を扱うオンラインショップ「iBookストア」を米英仏の大手出版社(日本:約4万5千円 6万5千円)

サイズ

画面:242.8×189.7mm(9.7インチ)厚さ:13.4mm重量:0.68kg(Wi-Fiモデル)

0.73kg(Wi-Fi+3Gモデル)

通信機能Wi-FiモデルWi-Fi+3Gモデル

操作方法 タッチパネル式

電池性能 最長10時間

主な機能

・電子書籍の閲覧のほか、ウェブ閲覧、電子メール、写真観賞、音楽・ビデオ視聴、ゲーム等が使用可能

・iPhone用の約14万のアプリケーションのほぼすべてを利用可能

プラットフォーム

イ シ ッ ア」を米英仏 大手出版社5 社 ( HarperCoolins 、 Hachette 、 Macmillan 、Penguin、Simon&Schuster)以上と開設予定。新聞・雑誌系としてNewyork Times、McGraw-Hill)の名前があがっている。

※iPadの日本版の製品紹介ページには、iBooksの情報はない

コンテンツフォーマット

汎用フォーマットとしてはEPUBを採用

※EPUB形式の電子書籍にDRMをかけるため、他社の電子書籍リーダーでは、アップルのEPUB書籍は読めない可能性。

※IPhone同様、App Store経由であれば、アプリケーションが自由に取り込めるため、コンテンツプロバイダーが独自のフォーマットを提供することは可能。

45

iPadに関するICT関係者からのコメント

• 個人の自宅における映像、音楽、ゲームショッピングまで全部もっていかれる可能性も。ただ、iBookStoreは、iTunesStoreやApp Storeよりも一段レベルが低いのでは。iTunesは、音源提供だけでデジタルコンテンツ化から販売まで全てApple(AmazonのKindleもこれと同様)。一方、iBookStoreはアップルがアプリを独占提供することにはならないだろう。Appleが本気なら書籍のデジタル化、制作工程も全部Appleがやるかと思っていたが、日本勢は若干の猶予が与えられたという印象。ただ、ストアが大きくなるとわからない。猶予期間は次のバージョンまでのせいぜい一年間くらいか

• すぐには国内の電子書籍市場も iBookStore で寡占化されてしまうということにはならず、しばらくの間は「異国のガジェット」として受け取られるのではないか

• 市場はさらに活性化することが期待されるが、携帯事業者等特定のプレーヤによる垂直統合モデルが横行する危険性もあり、事前ルール化を検討して欲しい。関連業界のプレーヤーが水平分業型で市場に参入し、競争が行われる市場環境(著作権処理などの法制度含む)を構築することが重要

• マルチメディア出版への広がりが大いに期待されるが、日本メーカーの遅れを絶対にさせないような、既存業界の慣習にとらわれないドラスチックな検討が必要。スポーツイラストレイティッド等の雑誌コンテンツ等を矢継ぎ早に投入してくることが予想されるため ゆっくりしていられない

ICTICT

ICT企業A

ICT企業B

め、ゆっくりしていられない

• The New York Times の例にもあるとおり、出版社がiBookStoreと直接契約してデジタル書籍の流通を加速させるのでは。本はインターネットで買いやすい商品でもあることから、CD の販売がiTunes に変わったように、商流が大きく変わるかと思われる。先行して「教科書」、「辞書」、「論文」等での広がりがあるのではないか

• 電子書籍を購入後、保存し、検索し、コンテンツ流通の互換性を保つには、メタデータの重要性が増すのでは。今後、個人が既に所有している本をデジタル化して利用することや個人が出版物を作成することも考えられるので、様々な技術要件が生まれてくるのではないか

• 日本の新聞・雑誌などコンテンツがどれだけ揃うか課題だが、海外のメディアがプレミアム無しで購読できれば、日本の新聞・雑誌の読者が流れることもあるのでは

• 個人出版が容易になるのでは。iPhoneのアプリのように、電子書籍においても、自主制作ライターが容易に世界中に情報を配信できるようになるのではないか

• 既存の出版業界が扱っている書籍の流通については、各国々で出版業界の事情に差異があると思われるので、個々の国々の出版業界と個別の交渉が必要

関係者関係者

(注)いずれも個人の意見・コメントであって、法人・団体を代表したものではない。

ICT企業C

ICT企業D

46

iPadに関する出版関係者からのコメント

• いずれのプレーヤーもAppStoreでガジェットを供給することでしか、iPadには関与しようが無く、アップルにとって都合の悪いものを排除することは理論的には簡単。あらゆるものを自身のコントロール下に置きたがるアップルらしい商品。iBookStoreが、iTunesStoreのような垂直統合を実現し、大量の良質な出版物が確保できれば、それなりの成功が望めるかもしれないが、①圧倒的に先行するライバル企業が存在し、②ネット上の違法流通が少なく、③電源を投入して読書をする習慣がないというハードルが挙げられる

• 出版社が積極的かつ継続的、安定的にリッチ・コンテンツを提供したがるような条件を提示できるかが重要だが、難しい。日本の出版界と外資系IT企業では、カルチャーが異なるため、信頼感を醸成して協力的な話し合いができるようになるまでに、それなりの時間を要する場合もありえる。金銭的な事項などは瑣末な問題。アップルがしっかりとしたリサーチと根回しの上で、画期的な契約書案を持ってくる可能性も無いとは言えないが、期待しないほうがいいだろう。出版社としてはじっくりと事態を見極めながら判断する

• 著者・出版社が満足できる水準の日本語版ビューワーが必要だが、なかなか難しいだろう

• キンドルに代表される電子ブック端末はケータイと異なり、文芸でもそのまま再編集せずに読めるが、日本ではコンテンツが不足しているため、展開が難しい。アマゾンジャパンの渡辺氏も日本市場には1、2年は参入しないと言っている。その背景には、キンドルが採用している電子書籍フォーマットのEPUBが、2バイト文字(日本語等)には対応していないという事情もあるのではないか。一方、出版出版

出版社B

出版社A

用している電子書籍フォ マットのEPUBが、2バイト文字(日本語等)には対応していないという事情もあるのではないか。 方、iPadはキンドルと異なり、電子書籍以外の用途が用意されているため、活字コンテンツの普及と無関係にデバイスが普及する可能性がある。iPadのリーダーもEPUBを採用しているようだが、個別のアプリで代用できるのではないか

• 3月の発売以降、年内にそれなりの電子出版市場が形成される可能性は非常に大きいのではないか

• 1バイト言語圏ではアマゾンキンドル、NOOK、iBookと次々にデジタル端末が登場しシェア争いを始めており、焦燥感をあたえるのは事実だが、言語の問題、再販価格維持制度などビジネス上のルールの問題、著作権の問題等、米国とは異なる部分が多い日本の出版業界の中で、国産ITメーカーの頑張りも期待しつつルールの整備等を着実に進めていく

• iPadの登場により、電子書籍における機器の問題は基本的に解決したと認識。残された課題はタイトルの数と質、買いやすさ。新刊始め書店に並んでいる書籍が、電子書籍で販売されるようにならなければ、 大きなインパクトは与えられない。日本語の本(広い意味でのコンテンツ)を全文検索できて、その一部を表示できるようなGoogleブックサーチの日本語版のようなサービスに取り組むのがいいのではないか。こうした領域で政府・行政に果たしてもらいたいことはいろいろあるので、今後の奮闘に期待

関係者関係者

(注)いずれも個人の意見・コメントであって、法人・団体を代表したものではない。

出版社C

出版社D

47

日本電子書籍出版社協会の概要

電子書籍市場を取り巻く環境の変化による新たな問題の発生に対応するため、一般書を扱う出

版社21社により、2010年2月1日に一般社団法人として設立(2月1日に設立登記を申請し、3月中

旬に設立総会を開催予定)。電子書籍販売サイト「電子文庫パブリ」運営していた任意団体「電子

文庫出版社会」を発展的に解散し、新たに設立されるものであり、「電子文庫パブリ」を継承。

概要

朝日新聞出版、NHK出版、学研ホールディングス、角川書店、河出書房新社、講談社、

光文社、実業之日本社、集英社、主婦の友社、小学館、祥伝社、新潮社、ダイヤモンド社、

筑摩書房、中央公論新社、徳間書店、日経BP社、PHP研究所、双葉社、文芸春秋(21社)

参加出版社

48

第1回公共図書館におけるデジタルアーカイブ推進会議(平成22年2月18日) 配布資料

Page 9: 出版物のデジタル化、ネットワーク流通及び アーカイブ構築の推 … · 出版物のデジタル化、ネットワーク流通及び アーカイブ構築の推進について

9

Question?

49

e-mail: [email protected]

第1回公共図書館におけるデジタルアーカイブ推進会議(平成22年2月18日) 配布資料