微生物の共存・共生と伝統的発酵微生物の共存・共生と伝統的発酵 誌名...

12
微生物の共存・共生と伝統的発酵 誌名 誌名 日本醸造協会誌 = Journal of the Brewing Society of Japan ISSN ISSN 09147314 巻/号 巻/号 1094 掲載ページ 掲載ページ p. 228-238 発行年月 発行年月 2014年4月 農林水産省 農林水産技術会議事務局筑波産学連携支援センター Tsukuba Business-Academia Cooperation Support Center, Agriculture, Forestry and Fisheries Research Council Secretariat

Transcript of 微生物の共存・共生と伝統的発酵微生物の共存・共生と伝統的発酵 誌名...

Page 1: 微生物の共存・共生と伝統的発酵微生物の共存・共生と伝統的発酵 誌名 日本醸造協会誌 = Journal of the Brewing Society of Japan ISSN 09147314 巻/号

微生物の共存・共生と伝統的発酵

誌名誌名 日本醸造協会誌 = Journal of the Brewing Society of Japan

ISSNISSN 09147314

巻/号巻/号 1094

掲載ページ掲載ページ p. 228-238

発行年月発行年月 2014年4月

農林水産省 農林水産技術会議事務局筑波産学連携支援センターTsukuba Business-Academia Cooperation Support Center, Agriculture, Forestry and Fisheries Research CouncilSecretariat

Page 2: 微生物の共存・共生と伝統的発酵微生物の共存・共生と伝統的発酵 誌名 日本醸造協会誌 = Journal of the Brewing Society of Japan ISSN 09147314 巻/号

微生物の共存・共生と伝統的発酵日本の伝統的発酵食品に関与する微生物は,麹菌,乳酸菌,酵母,酢酸菌などであり,これらの微生物は

古くから生育環境が類似しているため共に協力しながら 共存・共生する環境で利用されてきました。こう

した微生物内の相互作用が,発酵プロセスの安定化に重要な役割を果たしてきたと思われます。

ここでは伝統的発酵食品として 清酒・ワイン・ビール・蒸留酒・酢・醤油・味噌・乳製品などに関わる

微生物の共存と共生の意義について解説して頂きました。

古川壮一・平山悟・森永康

はじめに

生物の共生は,古くから生物の生存戦略を考える上

で重要な研究テーマであり,特に,微生物と動物や植

物との共生については多くの研究がある。一方,近年,

ポストゲノム技術などの研究手法の開発によって,従

来解析困難であった微生物叢の解析が可能になり,微

生物聞の共生についても興味深い研究成果が多くみら

れるようになった。

我が国の伝統的発酵における,酵母菌,乳酸菌,酢

酸菌,そして麹菌の共存については,古くから知られ

ていた。しかしながら,これらの微生物は同じような

栄養環境や pH環境を生息域としていて単に「相性」

が良く共存していると言うだけではなく,共存するこ

とのメリットを享受しているものと考えられる。そし

て,これらの微生物はその進化過程において,互いに

助け合いながら相利共生的な関係を利用して生き延び

てきた可能性がある。ここでは,伝統的発酵において

共存している微生物,特に酵母と乳酸菌を中心に,そ

れらの生態やその相互作用を通して,微生物にとって

の共存・共生の意味や意義について考えてみたい。

1.伝統的発酵と微生物の共培養研究

伝統的発酵における酵母菌と乳酸菌,そして,それ

らとの酢酸菌や麹菌の共存については古くから知られ

ており 1-10) それら微生物問の相互作用が,安定した

Microbial symbiotic coexistence and traditional f,巴rm巴ntation

発酵の推移に重要な役割を果たしてきたものと推察さ

れる。清酒や醤油などのもろみに乳酸菌と酵母菌が共

存することは,江田らの 1908年の報告をはじめとし

て多くの研究報告がある 11-20)。それらの中では,清

酒酵母の生育と乳酸菌や乳酸の関係などについて,先

駆的な研究がなされている 11-20)。また,火落菌に関

する報告はさらに古く,高橋らにより 1906年に報告

されている 2九火落菌は麹菌の生産する火落酸を生

育因子にすることから,麹菌と片利共生関係にあると

もいえよう。その後の田村らによる火落酸に関する研

究の詳細は後に述べる 22-28)。なお. 1906年は明治 39

年であり,これらの研究からも,開国後に急速に西洋

の学問を取り入れて発展した我が国の微生物学・発酵

学の水準の高さを窺い知ることができる。

一方,微生物の複合培養研究に関しては. 1953年

にWoodsがその重要性を指摘している。そこでは,

微生物代謝 (WoodsはChemicalMicrobiologyという

言葉を用いている)の研究において. iPure culture

in chemically defined mediaJから iMixedculture in

compl巴x'natural' mediaJへ研究対象を広げてゆくこ

との重要性が述べられている却)。なお. 1953年は,

1937年にクエン酸回路を発見した HansKrebsがノ

ーベル生理学・医学賞を受賞年である。当時は活発に

微生物の代謝について研究がなされていたのであろう。

ちなみに,同年は James WatsonとFrancisCrickに

よって DNAの二重らせん構造モデルが提唱された年

Soichi FURUKAWA. Satoru HIRAYAMA and Yasushi MORINAGA (Department 01 Food Bioscience and Biotechnology, College 01

Bioresource Sciences, Nihon University, 1866 Kameino, Fujisaωa, Kanagawa 252-088αJapan)

228 醸協 (2014)

Page 3: 微生物の共存・共生と伝統的発酵微生物の共存・共生と伝統的発酵 誌名 日本醸造協会誌 = Journal of the Brewing Society of Japan ISSN 09147314 巻/号

でもあり,生物学が生化学から分子生物学へ拡大発展

してゆく中で,微生物学も大きな躍進を遂げていた時

代であったと思われる。

その後, Woodsの指摘を受けて, 1954年には Challi-

norらが,ある種のビタミン,核酸またはアミノ酸を

欠く培地では生育できない乳酸菌 (Lactobacillussp.)

が,酵母 (5accharomycescerevisiae) との共培養で生

育できるようになると報告している却)。それに続いて

我が固では, 1957年に伊藤らにより清酒腐造もろみ由

来の乳酸菌と清酒酵母(協会6号)の共培養に関する

研究がなされ 31,32) 清酒酵母が清酒乳酸菌の要求する

ニコチン酸を分泌することなどが明らかにされている。

この研究では,セロファン膜を用いて酵母と乳酸菌を

隔離して培養する方法がとられていた。なお,伊藤の

論文には, Woodsの指摘以来共培養実験が興味を集め

ていること及びChallinorらの実験結果が興味深いもの

であることが冒頭に書かれている 31)。そして伊藤らは,

これらの報告に先駆けて清酒酵母同土の混合培養実験

についても報告しているお)。また,欧米での研究であ

るが, 1961年には Nakamuraらが,乳酸菌 (Lb.plan-

tarum) と酵母菌 (5.carlsbergensis)の共培養では,

その培養条件により,乳酸菌や酵母の生育が有意に変

化することを明らかにしている担)。

その後,百瀬や角野らにより,清酒腐造もろみ由来

の乳酸菌 (Lb.ρlantarumB-74) と清酒酵母(協会 7

号)を共培養すると,清酒酵母の生育や呼吸能が低下

することなどが報告されている 35-41)。彼らは乳酸菌

が存在すると酵母のアミノ酸摂取が阻害されるが,そ

の阻害は乳酸菌による競合的なアミノ酸摂取によるも

のではないこと,そして,発酵性糖類の存在により清

酒酵母の死滅が緩和されることなどを明らかにしてい

る35-41)。また百瀬らはこうした研究の過程で,Lb.

ρlantarum B-74と野生型の清酒酵母(協会 6,7, 8

号など)を共培養すると共凝集するが,泡無し変異株

は共凝集しないことを見出している 42-46)。

2.伝統的発酵食品における微生物の共存と共生

清酒や醤油などの我が固における伝統的発酵食品は,

一般に撒麹(パラコウジ)と呼ばれ,加熱処理した穀

物に麹菌を生育させるところから始まるものが多い。

東アジアの大陸における伝統発酵食品の場合,餅麹

(モチコウジまたはへイキク)と呼ばれ,モチ状に加

第 1日g巻 第 4号

工したものにカピ付けをする点や,カピの種類が異な

っているが,穀物にカピ付けする点においては我が国

のものと類似している 47 問。麹造りは基本的に開放

系で行われるので,伝統的発酵は多様な微生物の共存

の下に進行することになる 47-53)。この過程で,結果

的に乳酸菌や酵母菌そして酢酸菌が優占化して発酵の

主役になる場合が多いわけで、あるが,そこには何がし

かの必然性があるに相違ない。また,優占化して共存

する菌株聞にも,何がしかの「相性」のような関係性

が存在するであろうことは推察される。まずここでは,

個々の伝統的発酵における微生物共生について,特に,

酵母と乳酸菌を中心に概観することから始めたい。

2.1 清酒

清酒の伝統的な生配造りの過程で存在する様々な微

生物については,古くから多くの研究がなされてき

た7,20,54-国)。生翫造りでは,硝酸還元菌が生育して亜

硝酸を生成し,次いで¥乳酸球菌 (Leuconostocmes-

enteroides)や乳酸梓菌 (Lb.sakei)が優占化して乳

酸を生産する 7,20,54-58)。その後,それら亜硝酸と乳酸

の作用で雑菌が減少し結果的に清酒酵母が優占化す

るようになる 7,20,54-58)。ここでは,乳酸菌が清酒酵母

の生育を助けている。一方,現代の清酒醸造は,乳酸

の添加により清酒酵母の生育を促す速醸翫により,酒

母の発酵期間を短縮している場合が多い 7,20,日 58)。

生翫造りの菌叢変遷と菌叢を構成する微生物の役割

についてはよく知られているが,実はその原型とされ

るものに菩提配と称される酒母がある印刷。菩提翫は

室町時代中期に,奈良郊外の菩提山正暦寺で造られて

いた酒母であり,冬ではなく温暖な時期に製造され,

また,原料に生米と少量の飯米を使用するなど,現代

の一般的な酒母造りとは異なる 59,60)。実際には,水に

生米と少量の飯米を加えて乳酸発酵させたものを「そ

やし水」と呼び,この水を仕込み水として用いる印刷。

「そやし水」の発酵過程では,その初期に乳酸菌(主

として Lactococcuslactis)が 107CFU/ml程度まで増

加し, pHが4程度まで低下することにより一般細菌

が大きく減少する 5附)。それに伴い乳酸菌叢も変化し

て • Leu, citreumが増加する。その後,酒母工程に

なると Lc.lactisが減少し Leu.citreumが優占化して,

その菌数は 108CFU/mlを超えるレベルに達する印刷)。

この過程において,酵母は優占的ではないものの,存

在しているものと推察される。その後のもろみ工程で

229

Page 4: 微生物の共存・共生と伝統的発酵微生物の共存・共生と伝統的発酵 誌名 日本醸造協会誌 = Journal of the Brewing Society of Japan ISSN 09147314 巻/号

はさらに酵母菌数が増加すると考えられる。ともあれ,

このように温暖な環境で酒造りを行うために,乳酸菌

を利用した酒母造りが,古くから行われていたことは

興味深い。しかし,菩提翫は混入するf微殻生物次第で酒

質が大きく変化するという問題点があり~,明治以降に

生翫造りを基礎とする酒造技争符術p育rrが発展したことにより

衰退した 5臼9且鮒,6刷6

さて,ここで先に少し触れた火落菌の研究について

述べたい。 1906年,高橋らは火落菌の中には合成培

地をどのように改良しでも生育できないが,合成培地

に清酒を 10%添加すると生育できるものがあること

を報告している 21,28)。それらは真正火落菌といわれ,

後に Lb,heterohiochiiとLb,homohiochiiであること

が分かつた。その後,山崎らにより火落菌の生育必須

因子に関する研究が進められ,当該成分はエーテルに

転溶されるということが 1929年に明らかにされたが,

その本体は不明であった 61)0 1956年になり田村らに

よってその生育因子の構造が提示され,火落酸 (Hio

chic acid) と命名された 22)。そして翌年の 1957年に,

その構造はβhydroxy-s-methyl-d-valerolactoneであ

ることが田村らにより決定されるに至ったお-27)。なお,

田村らは,真正火落菌の生育因子を探索する際に,バ

イオアッセイの手法を用い,当該生育因子は清酒や麹

菌 (Astergillusoryzae)の培養液中にあることを明

らかにし大量培養した麹菌の培養鴻液から必須生育

因子を精製した 22,28)。真正火落菌は麹菌の生産する火

落酸を生育必須因子にすることから,麹菌と一種の片

利共生的関係にあるともいえよう。

ところで,火落酸がその後メバロン酸 (mevalonic

acid) と呼ばれるようになった経緯についても記載し

ておきたい。火落酸発見の当時,米国メルク社の

Folkersらは,ビタミン研究の一環として Lb,aci-

doρhilusの生育必須因子である酢酸の代替因子を探索

しており,その過程で,その代替因子がウイスキーの

蒸留廃液中の水溶性画分 (distiller'ssoluble (DS))

中にあることを見出していた。 Folkersらも Lb.aci-

doρhilusを用いたバイオアッセイにより当該因子を精

製し結果的に 1956年にその構造を決定し,その構

造より mevalonicacidと命名した 62-66)。その後,

mevalonic acidが火落酸と同じ物質であることは,両

者が試料を交換することにより確認された 22,67)。さら

にmevalonicacidの発見を契機に, BlochとLynen

23日

によるコレステロール合成経路の解明が飛躍的に進み,

彼らは 1964年にノーベル生理学・医学賞を受賞した。

その後,このような重要な中間体の発見者にもノーベ

ル賞が与えられて然るべきだ、ったのではないかとの意

見も多かったようであるが,著者らもやはりそのよう

に思う。

話を清酒醸造に戻す。清酒もろみでは高泡と呼ばれ

る多量の泡が発生するため,昔は泡を消すための不寝

番までつけていた 68ー70)0 1916年高橋らにより,高泡

のないもろみについて初めて報告がなされたが 71)

その後 1963年に秋山らにより,高泡を作らない酵母

菌株が,島根県の醸造所から分離された 68-70)。しかし

これらの株は実際の酒造りには用いられることはなか

った。一方,先に述べたように,百瀬らは清酒腐造も

ろみ由来の乳酸菌 (Lb.ρlantarumB-74)が清酒酵母

(協会6,7, 8号など)とは共凝集するが,泡無し酵

母とは共凝集しないという現象を見出していた 42-46)。

そこで,Lb.ρlantarum B-74と共凝集沈降しない協会

7号酵母細胞を選択することにより,泡無し自然変異

株を分離することが可能となった 42-46)。その後さらに,

清酒酵母の気泡への親和性やセライトなどとの凝集性

を利用した泡無し変異株の分離法が開発されたことに

より,数種の協会酵母から泡無し変異株が分離され,

今に至っている 69,72,73)。

2.2 ワインとビーJレ

ワイン醸造も開放系でなされることから,酵母菌の

みならず乳酸菌も生育している。しかし一般には健

全なブドウ果実における細菌数は少なく,むしろ糸状

菌や S.cerevlszae以外の酵母が多い。これらの中で,

糸状菌は嫌気的な発酵には関与せず,また S.cerevi-

siae以外の酵母はアルコール耐性が弱いので,結果的

にS.cerevisiaeが優占化する 7)。また,発酵初期には

アルコールや添加された亜硫酸の影響により,乳酸菌

は減少する 3)。そして,アルコール発酵終了後,溶菌

した酵母から出てきた栄養素により乳酸菌が再び増加

してマロラクティック発酵が起こる。マロラクティッ

ク発酵では,乳酸菌がワイン中のリンゴ酸を乳酸に変

換することにより,その酸味が和らげられ,風味がま

ろやかなものになる 3,7)。なお,Oenococcus, Lacto-

bαcillus及び、Leuconostoc属などの乳酸菌が,マロラ

クティック発酵に関与している 3.7,55,74)。

ビールでは,ベルギーのランピックなど,乳酸菌が

醸協 (2014)

Page 5: 微生物の共存・共生と伝統的発酵微生物の共存・共生と伝統的発酵 誌名 日本醸造協会誌 = Journal of the Brewing Society of Japan ISSN 09147314 巻/号

関与するものも知られており,古くは乳酸菌が共存し

た状態でアルコール発酵がなされるのが一般的であっ

たと思われる。しかしながら,現在は一般のビール醸

造においては,乳酸菌は雑菌とされている 7,55)。ビー

ル変敗乳酸菌としては,LactobacillusやPediococcus

属の幾つかの乳酸菌が知られているが,興味深いこと

に共通してホップ耐性などに関連する遺伝子カセット

を有しており,遺伝子の水平伝播を経てビールを生息

地として選んで進化してきたのではないかと考えられ

ている 75 問。ビー jレ中には酵母由来の栄養成分が多

く存在していることから,これらのビール変敗乳酸菌

は,酵母由来の栄養成分をベースに生育しながら,ホ

ップに耐えつつビール中で生きてきたものと考えられ

る。そのような意味で,ビール変敗乳酸菌も酵母と共

生しているとみなすこともできる。

なお, Whiteらはビール醸造の雑菌汚染の調査過程

で,酵母 (5,cerevisiae) と共凝集する乳酸菌 (Lb.

brevis)を見出し,その性質に関して詳細な報告を行

っている 78)。このようにビール変敗乳酸菌の中に,

酵母と共凝集するものがあることは,以前より知られ

ていたようである。また, Whiteらはこの報告の中で,

先に述べた百瀬らによる清酒腐造もろみ由来の乳酸菌

とi青酒酵母との共凝集に関する報告について触れてい

る。

2.3 蒸留酒

焼酎の製造工程で造られるもろみ中にも ,Lactoba

cillus及び、Leuconostoc属などの乳酸菌が存在するこ

とが知られている 57,79-82)。

泡盛に関しでも, もろみ中の乳酸菌に関する報告が

あり 74,印刷,Lactobacillus, Leuconostoc及びPedio-

coccus属などの乳酸菌が共存していることが示され

ている幻)。また最近,乳酸菌が泡盛の特徴的な香り

成分であるパニリン前駆体である 4ーピニルグアヤコ

ール (4-VG)の生合成に関わっていることが報告さ

れた 74,84一回)0 4-VGは,黒麹菌由来のフェルラ酸エス

テラーゼによりもろみ中に遊離されたフェルラ酸から,

フェルラ酸脱炭酸酵素により生成されるが,当該酵素

はもろみ中に生育している Lc, lactis由来のものであ

ることが指摘されている 74,剖 86)。なお, 4-VGは蒸留

により泡盛に移行し,その後貯蔵中にパニリンに変換

され,古酒(クース・長期保存熟成泡盛)の風味向上

に寄与していると考えられている。

第 109巻 第 4号

ところで,泡盛醸造ではシー汁浸漬法と称される原

料の前処理が古くから行われている。「シー」とは,

「酸っぱい」ことを意味している脚5)。この方法では,

原料のタイ米をあらかじめ水に浸漬して乳酸発酵させ,

その液の一部をスターターとして次の浸漬に用い

る82.濁)。発酵過程では,主に LactobacillusやLeuco

nosωc属の乳酸菌が増加し乳酸に加えて多様な酵素

が生産され,酒質に良い影響を及ぼすものと考えられ

ていた 82,85)。しかし衛生面の問題が指摘され,昭和

40年代前半以降シー汁浸漬法は廃止されていた。と

ころが,近年その効果が見直され,本法を用いた製品

も市販されている印刷。本法は前述した清酒の菩提翫

に類似している。このように,各地で古くから乳酸菌

を利用した酒造りが行われてきたことは興味深い。

なお,玉城らは,腐造乳酸菌と泡盛酵母の混合培養

を試みた結果,腐造乳酸菌が共存すると,泡盛の発酵

や成分に種々の悪影響が及ぼされることを明らかにし

ている 87)。

一方,モルトウイスキー製造において,乳酸菌はア

ルコール収率の低下や,アクロレインやジアセチルな

どのオフフレーパ一生成の原因になる場合もあること

などから一般に嫌われている邸)。従って,乳酸菌の

過剰な増殖を抑えるために,発酵初期に大量の酵母が

添加される場合が多い。ところが一方で、'アルコール

発酵後期に乳酸菌数が増加した場合には,酒質に良い

影響を及ぼすことも知られてきた槌)。鰐川らは,モ

ルトウイスキーの発酵工程で,乳酸菌が原料中のオレ

イン酸やパルミトオレイン酸をそれぞれ 10ーヒドロキ

システアリン酸と 10-ヒドロキシパルミチン酸に変換

しそれらを酵母がウイスキー特有の香気成分である

y-ドデカラクトンとyーデカラクトンに変換すること

を明らかにした 88-91)。これらは,乳酸菌と酵母の共

同作業よりなる重要なプロセスである。先の泡盛にお

けるパニリンの製造も黒麹菌と乳酸菌の共同作業であ

り,このような例は,蒸留酒のみならず多くみられる

のではないかと思われる。特に,香気成分などについ

ては,多様な微生物由来の酵素が作用することにより

つくられているものも多いのかもしれない。

2.4酢

一般に酢の多くは,酢酸菌によるエタノールの酸化

発酵により製造される 7)。鹿児島県福山町で約 200年

前から製造されている福山酢は,特殊な製法により製

231

Page 6: 微生物の共存・共生と伝統的発酵微生物の共存・共生と伝統的発酵 誌名 日本醸造協会誌 = Journal of the Brewing Society of Japan ISSN 09147314 巻/号

造される。まず,水と蒸米と米麹を査の中に入れ,さ

らに乾燥させた振り麹(出麹後にしばらく放置したも

の)をその上に撤き,その後数カ月間静置することに

より製造される 7,92)。この間,特に人工的な管理を行

うことはなく,その過程で,糖化,アルコール発酵及

び酢酸発酵が一部並行しながら進行するため, トリプ

ル発酵と称される 7,92)。ここで興味深いのは,嫌気的

なアルコール発酵と好気的な酢酸発酵が自然に逐次的

に進行するところにあり,この発酵転換に振り麹が重

要な役割を果たしていることが明らかにされてい

る93一拍)。すなわち,発酵当初は振り麹が蓋の役割を

果たして,嫌気的にアルコール発酵が進行し,一月半

位すると端から振り麹が沈み,そこに酢酸菌膜が張り,

好気的な酢酸発酵に移行してゆく 71-74)。福山酢製造

におけるアルコール発酵までの工程は,清酒の山廃翫

(生翫造りから「山卸(やまおろし)Jを除いた造り)

に近い。なお,このような製法は他に類を見ず,アジ

ア地域における最も原始的な米利用発酵食品のひとつ

と考えられる。

ところで,福山酢もろみからは Lbρlantarum.5,

cerevisiae及び、Acetobacterρasteurzanusをはじめとす

る様々な乳酸菌,酵母菌及び酢酸菌が同時に単離され

る93-96)。古川らは,これらの中に,共培養すると乳

酸菌と酵母菌の細胞集合体である複合バイオフィルム

を固液界面に顕著に形成する組み合わせ (Lbρlanta

rum MLll-llと丘 cerevisiaeYll-43) を見出した

ト 101)。その後の検討で.Lb,ρlantarum ML11-11は

実験室株を含む出芽酵母と複合バイオフィルムを形成

でき,同時に出芽酵母の細胞に接着して高い共凝集活

性を示すことを見出した。この複合バイオフィルムの

基底部には乳酸菌が存在し その上に酵母菌と乳酸菌

が接着・共凝集しながら巨大な細胞集合体を形成して

いることが明らかになった 97-101)。また,共凝集は乳

酸菌表層のレクチン様タンパク質と酵母表層のマンナ

ン糖鎖を介して行われることが明らかになり 97-101)

このレクチン様タンパク質は酵母表層のマンナン糖鎖

の側鎖部分を認識して結合することが示されている 102)。

なお • Lactobacillus表層のマンノース結合因子に関

しては既に報告例もみられる I回一l田)。これらのことか

ら,上記の酵母菌と乳酸菌は細胞表層の分子同士で相

手を認識しながら凝集・増殖し,その結果として分厚

く強固な複合バイオフィルムを形成しているものと考

232

えられる。

次に,当該複合バイオフィルムの固定化菌体として

の利用を検討した。当該複合バイオフィルムは洗浄耐

性が高く,セルロースビーズなどに形成させたものは,

一ヶ月以上の連続的な発酵に用いることができ,ロバ

スト(堅牢)性に優れていることが明らかになっ

たほ107ー110)。当該複合バイオフィルムのロバスト性は,

自己複製により再生産可能なこと,ならびに,共存乳

酸菌による乳酸などの抗菌物質の産生や培養pHの低

下によりコンタミネーション耐性を有することに起因

していると考えられる。なお,乳酸発酵が並行して起

こるため,アルコールの発酵効率の低下が懸念された

が,酵母の単独系に比較して発酵効率の低下はわずか

であった。このことから, コンタミネーション岡村生の

利点を考えると,本系は開放系でのバイオマスリファ

イナリーなどに適した軽装備の発酵システムとして優

れた特徴をもっているものと考えられる 10,107-111)。

一方,福山酢より分離した酢酸菌 (A.ρasteurianus

All-I0) と乳酸菌 Lb, plantarum MLll-llとの複合

培養についても検討したところ,グルコースを炭素源

として共培養すると,酢酸菌の菌膜(ペリクル,気i夜

界面のバイオフィルム)形成が顕著に促進されるとい

う新規な現象を見出すことができた 10,107-110)。さらに,

酵母菌と乳酸菌の共培養系に酢酸菌を添加した 3菌種

複合系では,酵母菌と酢酸菌の 2菌種複合系に比べて

効率的に酢酸発酵が進行することを見出し,その原因

は,乳酸菌が生成する乳酸によって酢酸菌の生育が促

進され,その結果として酢酸菌膜が旺盛に形成される

ことによるものであることが明らかにすることができナ_10.107ー110)

~。以上のように,酵母菌,乳酸菌,酢酸菌の相互作用

によって生み出されるバイオフィルムを介した巧みな

共役系が,福山酢の簡易でありながら安定かっ効率的

な発酵システムを支えていることを明らかにすること

ができた。第 1図に,発酵の初期から中期にかけての

福山酢の発酵モデルを示している。ここで,特に乳酸

菌と酵母菌の複合バイオフィルムは,実際には米の表

面などにも形成されていると思われる。なお,酵母菌

と乳酸菌の共培養バイオフィルム形成に関しては,先

行する Kawaraiらの先駆的な報告がある 112)。

2.5 醤油と味噌

醤油は麹菌と乳酸菌及び酵母菌の共存の下,その発

醸協 (2014)

Page 7: 微生物の共存・共生と伝統的発酵微生物の共存・共生と伝統的発酵 誌名 日本醸造協会誌 = Journal of the Brewing Society of Japan ISSN 09147314 巻/号

(A)糖化・アルコール発酵(発醇初期) (B)アルコール発酵・酢酸発酵(振り麹沈降後)

欄嶋 :振り麹 Cコ :酢酸菌 ~:乳酸菌 。 :酵母

第 1図 福山酢の発酵モデル(出典参考文献 10. 一部改変)。

酵が進行する。醤油もろみ中の乳酸菌の分離法やその

性質に関する研究は 20世紀初頭からなされ,古くか

ら研究が盛んに行われていたことが分かる 19.113)。醤

油もろみにおける細菌叢としては,耐塩性乳酸菌であ

る Tetragenococcushaloρhilusが優占して,他の細菌

はほぼ存在しないとされている 7.114.115)。醤油醸造では,

一般には,麹菌の糖化酵素によ って小麦や大豆から生

じた糖を利用して,まず• T. halophilusが先行して

生育し乳酸を生成する 7.1151。その後,耐塩性の酵母で

あるみ'gosaccharomycesrouxiiが生育してアルコー

ルを生産すると共に,醤油の主要な香気成分である

4-hydroxy-2 (or 5) ー巴thyl-5(or 2) -methyl-3 (2H)

-furanone (HEMF)を生産する。なお. HEMFの前

駆体の Dーキシリロース 5リン酸は麹菌酵素により生

産されることが知られている 7.115)。これも異種微生物

の共同作業により生産される香に関わる物質という点

で,泡盛のパニリンやモルトウイスキーのラクトン類

と同様のカテゴリーに入るものである。また,醤油も

ろみ中には Candida属の酵母も存在することが知ら

れている 71。一方,これらの乳酸菌と酵母菌の相互作

用は,微妙なバランスの上に成り立っており,例えば,

乳酸菌は乳酸を生成することで,もろみの pHを酵母

の好む範囲に調整することにより,アルコール発酵を

助ける場合もあれば,条件によっては基質を奪い合う

ことなどで,互いの生育を妨げる場合もあることが示

されている川一11810

味噌の醸造においても乳酸菌と酵母菌が共に関与す

第 109巻 第 4号

ることが知られており 7.119) それらの共培養における

挙動や相互作用などについても幾っか報告がなされて

し、る 120-1221F・ o

2.6 乳製品

世界各地の発酵乳には,乳酸菌と酵母菌が共に関与

している例は多く,そこには • S. cerevisiaeをはじめ

とする様々な酵母菌や Lactobacillus.Lactococcus属

をはじめとする多様な乳酸菌が関わっている 2-51。な

お,発酵乳から分離される酵母菌には,乳糖を資化で

きないものもあり,これは乳酸菌により乳糖が分解さ

れた際に生じるグルコースやガラクトースを資化する

ことによ り生育しているものと思われ 31 ここには一

種の共生関係が成立しているともいえる。ところで

酵母菌と乳酸菌が共に関わっている例ではケフイアが

有名であり ,その発酵過程では酵母菌と共存する乳酸

菌 Lb.keji.ranofasiensがケフイランと呼ばれる多糖を

生産し,酵母菌と乳酸菌の細胞を含むケフィアグレイ

ンと呼ばれる固形物を形成することが知られている

2.4.5.7.123 ) 。 片倉らの研究より • Lb. keji.ranofasiensは,

S. cerevisiaeと共培養した際にケフイラン生産が向上

すること,そしてその生産性の向上には,酵母菌によ

る乳酸の除去,及び乳酸菌の酵母菌との物理的な接触

が必要なことが明らかにされている 124)。乳酸菌と酵

母菌の細胞同士の接触がケフイランの生産増加を引き

起こすことは大変興味深い現象であるが,そのような

例は他には知られていなしミ。なお最近の片倉らの研究

で,別の乳酸菌 (Lc.lact;ω)はDnaK.GroEL. Gry-

233

Page 8: 微生物の共存・共生と伝統的発酵微生物の共存・共生と伝統的発酵 誌名 日本醸造協会誌 = Journal of the Brewing Society of Japan ISSN 09147314 巻/号

celaldehyde-3-phosphate d巴hydrogenas巴 (GAPDH)

など,本来は細胞質に局在するタンパク質の働きによ

って酵母菌に接着することが明らかにされている la12610

2.7 その他

パン種とは,主として原料穀物などに付着している

微生物を利用して自然発酵させたもので,パンの原料

に用いられる場合が多い。世界各国に多様な種類のパ

ン種が存在し,それらは酵母菌や乳酸菌などを中心と

した多様な微生物により構成されている 127)。サワ一

種を構成する乳酸菌としては,特に Lb, sanjヤanczs-

censisが有名であるが,他にも多様な乳酸菌の存在が

知られている 3,127,126)。また,酵母菌は 5.cerevisiaeを

中心に多様なものが分離されている 127,1お)。サワ一種

の製法は,伝統的に受け継がれたものをさらに植え継

いで用いたり,ライ麦粉や小麦粉を水と混ぜて発酵さ

せながら植え継いで用いたりするものなど,多様であ

る則。これらは,古くはパン酵母の供給源(種)と

して用いられてきたが,パン酵母が純粋培養で大量に

作られるようになった現代では,サワ一種は酵母の供

給源というより,むしろ風味付与や日持向上などの目

的で用いられるようになっている 127)。サワ一種を用

いる製パンにおいては,酵母菌による発酵促進のみな

らず,乳酸菌をはじめとする多様な微生物聞の相互作

用がパンの風味向上に寄与しているものと思われる。

一方,洋の東西を問わず多くの漬物において,乳酸

菌と酵母菌が共に関与しているものは多く知られてい

る5,7)。近年糠床の菌叢に関しては特に詳細に調べら

れており ,Lactobacillus属の乳酸菌を中心に多様な

乳酸菌や酵母菌が共存して糠床独特の風味の形成に寄

与していることが明らかにされている 129)。

これに加えて,カカオ豆の発酵過程や発酵ソーセー

ジの製造プロセスや馴れ鮮の発酵にも乳酸菌と酵母菌

が共に関与することが知られており,このような例か

らも乳酸菌が関与する発酵過程には,広く酵母菌も関

与していることが理解できる 7)。

3.微生物の共存,接着・共凝集と進化

以上のように,伝統的発酵において乳酸菌と酵母菌

が共存している例は多いが,その理由について考えて

みたい。先に述べたとおり,乳酸菌は栄養要求性が高

く,アミノ酸やビタミンなどを要求するため 3) 酵母

と共存すれば生育が可能となる場合がある 130)。また,

234

酵母菌 5, cerevisiaeは,多糖やタンパク質,それに脂

質などの分解酵素を菌体外に分泌しにくいが侃)乳

酸菌は菌体外に多様な酵素を分泌しうる 2,3,130)。この

ような両菌の生理的な特徴により,酵母菌は糖分の多

い果物をベースにした環境での生育には適しているも

のの,穀物をベースにした環境での生育には適さない

ことが分かる。また,乳酸菌はアミノ酸やビタミンの

乏しい環境での生育には適さない。こうした両菌が共

存すると,お互いの生理的な欠点を補い合うことがで

きると考えられる。加えて,カタラーゼを持っていな

い乳酸菌は酸化ストレスに弱いが,カタラーゼを持っ

ている酵母菌と共存することによって酸化ストレスを

回避することができる場合がある。これは,乳酸菌が

好気的な環境で生育するためには重要なことであ

る則。さらに,乳酸菌は自ら過剰生産した乳酸によ

る環境 pHの著しい低下によって死滅する場合がある

が,酵母菌が共存すると,酵母菌は酸素存在下で有機

酸を資化してくれるので酸の過剰生産による自滅を防

ぐことができ,この点においても酵母菌との共存は乳

酸菌にとって利点がある 130)。

ところで, 自然界で乳酸菌と酵母菌,それに酢酸菌

などが多く存在する環境は,熟して落ちた果実などの

糖分が多い環境であろう則。また,倒れた稲や麦な

どの穀類や腐敗しかけたイモ類なども,高い加水分解

活性を有する酵素を分泌できる糸状菌が存在すれば乳

酸菌と酵母菌にとっては生育しやすい環境になると思

われる則。このような場所で,酵母菌がエタノール

を生産し乳酸菌が乳酸を生産すれば,他の微生物の生

育は抑制されるであろう 130)。さらに,グルコースよ

りもエタノールや乳酸を好む酢酸菌が菌膜を形成すれ

ば,嫌気的な環境の形成により糸状菌の生育が抑制され,

乳酸菌と酵母菌が炭素源を独占できることになる 130)。

このような糸状菌(麹菌),酵母菌,乳酸菌,そして

酢酸菌の相互作用関係が,福山酢の発酵に実際にみら

れることは先に示した通りである 10風 間 一110)。このよ

うに乳酸菌と酵母菌は,糸状菌や酢酸菌の助けを借り

つつ,植物由来の炭素源を利用して互いに協力しなが

ら進化してきたものと考えられる 130)。

ここで少し乳酸菌と酵母菌の接着や共凝集の意義

について考えてみたい。乳酸菌と酵母菌の共凝集につ

いては,既に 1926年に Hennebergにより報告されて

おり 13ll その後も,先に述べたものも含め幾つかの

醸協 (2014)

Page 9: 微生物の共存・共生と伝統的発酵微生物の共存・共生と伝統的発酵 誌名 日本醸造協会誌 = Journal of the Brewing Society of Japan ISSN 09147314 巻/号

報告がある 103,105,130,132-則。上記のように,乳酸菌と酵

母菌は互いの生育に必要な栄養分を依存し合ったり,

生育阻害因子を分解してもらったりして共生している

と考えられるが,その共生の効果は両菌の細胞同士が

接着している場合が最も高いと考えられる 130)。先に

述べた複合バイオフィルムやケフイアグレインなどは

その分かりやすい例であろう。

このように,乳酸菌と酵母菌は共存することで互い

に利益を得る相利共生関係にあか接着することでそ

の効果を高め,彼らにとって有利な環境を作り出して

いるのではないかと考えられる 130)。ひょっとすると,

両菌は接着するように進化することで,環境変化に耐

え,生息域を広げて生き延びてきたのかもしれない。

我々は,この接着機構の分子メカニズムや接着によっ

てもたらされる両菌の生理的変化を明らかにすること

が,酵母と乳酸菌の共生の生物史をひも解く重要なポ

イントであると考えている。

一方,微生物と植物の共生に白を転じてみると,菌

類と藻類の共生体である地衣類,糸状菌と植物の根の

共生体である菌根,根粒菌とマメ科植物の共生体であ

る根粒,Agrobacteriumによる植物への腫蕩状組織の

形成などについて,多くの研究がなされている 135)。

また,見虫の腸管における微生物の共生の例として,

シロアリの腸管に生息するセルロースやリグニン分解

菌の存在は広く知られるところである 135)。さらに

アブラムシやツェツェパエの細胞内に寄生する微生物

についてもよく研究されている 135)。またウシやヒツ

ジなどの反努動物は,セルロースなどを分解して消化

することができるが,その消化に消化管内のルーメン

細菌が寄与していることは古くから知られるところで

ある 135)。ヒトの場合,構成細胞が約 100兆個あるの

に対して,そこに住んでいる微生物は 1,000種, 1,000

兆個以上にのぼることが近年分かつてきた 135 問。人

体に常在する細菌数とその種類の多さは驚くべきこと

であるが,多くの多細胞生物では,このようなことは

一般的なことであると思われる。

ところで,真核細胞の誕生に関しては諸説あるもの

の,古細菌に真正細菌が取り込まれたことによるとす

る内部共生説が現在の一般的な認識であろう印刷。

実際現存する全てのミトコンドリアの由来が,真核生

物の起源に近い時期に起こった一回の共生にもとづい

ていることを示唆する結果が示されている 138-141)。真

第 109巻 第 4号

核細胞は一般にエンドサイトーシス能を持っており,

現在も真核微生物細胞がその内に他の原核微生物細胞

を取り込むことは案外に頻繁に起きているのかもしれ

ないが,内部共生が安定して維持されるのは容易なこ

とではないのであろう。一方,細胞内器官を持たない

真核細胞も発見されているが,これらは内部共生を確

立しなかったか,もしくは一度内部共生したものの,

その後それが失われたものかもしれない。興味深いこ

とに,細胞内器官を持たない真核細胞は系統樹の根元

に近い校に位置している 138-141)。

話は再び微生物同士の共生や接着,共凝集に戻るが,

細菌問の共凝集現象については,古くから多くの研究

報告があり 142-148) なかでも,共凝集が細胞聞の DNA

水平伝播を促進したり 149,150) 共凝集時の物理的接触に

より遺伝子発現が変化したりするとの報告がなされて

いる 151)。また,細菌の中には,高いコンピテンシー

(DNA受容能)を有するものも多く政附,接合などを

介した薬剤耐性遺伝子や病原性に関わる遺伝子カセッ

トの水平伝播についてもよく知られるところであ

る141胤 l問。このような遺伝因子の伝播には細胞同士が

近くにいる(共存する)ことが必要であり,当然接着

している方が起こりやすい。このようなことから微生

物細胞にとって,共存や接着とそれに伴う遺伝子伝播

は,一般的なことなのかもしれない。そして真核細胞

と原核細胞の聞でも,ときにはエンドサイトーシスを

含んだ形で遺伝子伝播が起こったとしても不思議では

ない。実際に大腸菌と出芽酵母問では,接合により遺

伝子伝達が起こることが報告されている酬。これは

Agrobacteriumと植物聞の遺伝子伝達が起こることと

類似した現象である 156,157)。また麹菌ゲノムの中には,

Agrobacteriumの遺伝子と非常に相向性が高く,かっ

他の真核生物でらは見つかっていない遺伝子が複数ある

ことが明らかにされており,これは恐らく Agrobacte-

n目umなどから遺伝子が伝播したものではないかと考

えられている 1弱)。このように見てくると,細菌と真核

生物聞の遺伝子伝播はある程度の頻度で起こっている

ことがうかがわれる。

以上のように,自然界では真核細胞や原核細胞を問

わず¥微生物は幅広く遺伝子をやり取りしかつ場合

によっては互いを細胞の中に取り込みながら進化して

きたのではないかと思われる。また,進化を起こす際

に共存や共生,そして細胞同士の接着が重要な要因に

235

Page 10: 微生物の共存・共生と伝統的発酵微生物の共存・共生と伝統的発酵 誌名 日本醸造協会誌 = Journal of the Brewing Society of Japan ISSN 09147314 巻/号

なっていたのであろう。実はこのようなことは,古く

から伝統的発酵の中でも起こってきたのではないかと

思われる。発酵もろみは栄養分に富み,また多くの固

形物が存在し,さらに多様な微生物が高密度で存在す

るため,接着や共凝集,それにバイオフィルム形成な

どが起きやすい環境である。そのような環境で,多様

な優良菌株がときには共凝集やバイオフィルム形成な

どを経て自然育種されてきた可能性は高いのではなか

ろうか。ただし,進化や育種は必ずしも人間にとって

好ましい方向ばかりには進まないため,時には発酵に

とって望ましくない微生物の出現や定着を引き起こし

てしまったこともあったであろう。実際,先に述べた

真正火落菌やビール変敗乳酸菌などは,その例と言っ

て良かろう。

おわりに

ここまで,伝統的発酵における微生物の共存や共生

の例とその意義について,基礎的な研究例も引用しな

がら考えてきた。この中で,共存や接着が微生物進化

のドライピングフォースになってきた可能↑生があるこ

とについて考察してきた。我々が見出した福山酢由来

の乳酸菌と酵母菌の細胞間接着による共凝集と複合バ

イオフィルム形成が,それら微生物の進化の場所にな

っているのか否かは,これからの研究を通して明らか

にしてゆかねばならない。ともあれ,伝統的発酵は産

業技術としては長い歴史があるが,微生物学や生命科

学の視点からはまだまだ未解明の部分が多い。ポスト

ゲノムテクノロジーの進歩に伴い,微生物複合系の新

しい解析手法が手に入りつつある現在,伝統的発酵に

おける微生物間相互作用は,生命科学のフロンティア

として,重要な研究対象になりつつあるのではなかろ

うか。

〈日本大学生物資源科学部 食品生命学科

食品微生物学研究室〉

文献

1) Wood, B. J. B.: The yeast/Lactobacillus inter-

action; A study in stability (In Mixed culture

fermentation), p. 137, Academic Press (1981).

2) 森地敏樹ら:乳酸菌の化学と技術,学会出版セ

ンター (1996).

3) 山本憲二ら・乳酸菌とピフィズス菌のサイエン

236

ス,京都大学学術出版会 (2010)

4) 岡田早百.酵母からのチャレンジ, p.66,技

報堂出版 (1997).

5) 小崎道雄:乳酸菌の新しい系譜, p.184,中央

法規 (2004).

6) 谷村和八郎:アジアの発酵食品事典,樹村房

(2001) • 7) 山崎真狩ら:発酵ハンドブック,共立出版

(2001) .

8) Wood, B. ]. B.: Microbiology of fermented

foods. Blackie Academic & Professional

(1998) .

9) 小崎道雄:日本醸造協会誌, 94, 261 (1999).

10) Furukawa, S. et al.:]. Biosci. Bioeng., 116, 533

(2013) .

11) 吉田義寧.醸造拳雑誌, 10, 1025 (1932)

12) 佐藤喜吉:醸造事雑誌, 11, 798 (1933).

13) 佐藤喜吉ら:醸造準雑誌, 16, 677 (1938)

14) 宮路憲二ら:醸造拳雑誌, 16, 975 (1938).

15) 江田鎌治郎・日本醸造協会誌, 3, 34 (1908).

16) 江田鎌治郎:日本醸造協会誌, 4, 20 (1909).

17) 高橋偵造.日本醸造協会誌, 17, 16 (1922).

18) 金井春吉ら・日本醸造協会誌, 27, 23 (1932).

19) 石丸義夫:日本農芸化学会誌, 9, 1143 (1933).

20) 片桐英郎ら 日本農芸化学会誌, 10, 942

(1934) .

21) 高橋偵造:醸試報, 12, 1 (1906)

22) Tamura, G.:]. Gen. Appl. Microbiol., 2, 431

(1956) .

23) Tamura, G.: Bull. Agric. Chem. Soc. ja.ραn, 21.

202 (1957).

24) 田村学造ら:日農化誌, 32, 701 (1958).

25) 田村学造ら:日農化誌, 32, 778 (1958).

26) 田村学造:日農化誌, 32, 707 (1958)

27) 田村学造:日農化誌 32,783 (1958).

28) 山崎虞狩:近代日本の創造史, 3, 12 (2007).

29) Woods D. D.:]. Gen. Microbiol, 9, 151 (1953).

30) Challinor, S. W. et al.: Nature, 174,877 (1954)

31) 伊藤雄太郎ら:日本農芸化学会誌, 31. 779

(1957)

32) 伊藤雄太郎ら:日本農芸化学会誌 31,783

(1957) .

33) 伊藤雄太郎ら・醗酵工拳雑誌, 34, 18 (1956).

34) Nakamura, L. K. et al.: ]. Bαcteriol., 81, 519

(1961) .

35) 百瀬洋夫ら:日本醸造協会誌 63,871 (1968)

醸協 (2014)

Page 11: 微生物の共存・共生と伝統的発酵微生物の共存・共生と伝統的発酵 誌名 日本醸造協会誌 = Journal of the Brewing Society of Japan ISSN 09147314 巻/号

36) 百瀬洋夫ら:醗酵工皐雑誌, 46, 765 (1968).

37) 角野一成ら:醗酵工撃雑誌, 48, 587 (1970).

38) 角野一成ら:醗酵工挙雑誌, 48, 594 (1970).

39) 角野一成ら.醗酵工拳雑誌, 49, 319 (1971).

40) 角野一成ら・醗酵工撃雑誌, 49, 326 (1971)

41) 百瀬洋夫ら:日本醸造協会誌, 61, 1037 (1966).

42) 百瀬洋夫ら:酵母と乳酸菌の相互関係(微生物

の生態 2),p. 21,東京大学出版会 (1975).

43) Momose, H. et al.: J Gen. Appl. Microbiol., 15,

19 (1969).

44) 百瀬洋夫ら:日本醸造協会誌, 63, 682 (1969).

45) 百瀬洋夫ら:日本醸造協会誌, 63, 686 (1969).

46) 百瀬洋夫ら:日本農芸化学会誌, 43, 119

(1969) .

47) 坂口謹一郎:坂口謹一郎酒学集成 (1-5),岩

波書庖 (1997).

48) 小崎道雄ら:カピと酵母,八坂書房 (2007).

49) 上田誠之助:1青酒の起源,八坂書房 (1999)

50) ー島英治発酵食品への招待,裳華房 (1989).

51) 石毛直道ら:東アジアの食の文化,平凡社

(1981)

52) 谷村和八郎ら:アジアの発酵食品事典,樹村房

(2001) .

53) 吉沢淑ら.醸造・発酵食品の辞典,朝倉書庖

(2002) .

54) 秋山裕一:清酒,岩波書庖 (1994).

55) 吉沢淑:酒の科学,朝倉書庖 (1995)

56) 大林晃ら:日本農芸化学会誌, 10, 839

(1964) .

57) 北垣浩志ら:日本醸造協会誌, 99, 767 (2004).

58) 芹沢長:日本醸造協会誌, 60, 69 (1965).

59) 松淳一幸ら:日本醸造協会誌 97,734 (2002).

60) 松淳一幸ら:日本生物工学会誌, 89, 473

(2011) .

61) 山崎何恵:日農化誌, 5, 399 (1929).

62) Skegg, H. R. etal.:j. Bacteriol., 72, 519 (1956).

63) Wright, 1. D. et αl.: J Am. Chem. Soc., 78,

5273 (1956).

64) Wo!f, D. E. et al.: J Am. Chem. Soc., 78, 4499

(1956) .

65) Tavormina, P. A. et al.: j. Am. Chem. Soc., 78,

6210 (1956).

66) Wolf, D. E. et al.: J Am. Chem. Soc., 79, 1486

(1957) .

67) Tamura, G. et al.:]. Org. Chem., 23, 772

(1958) .

第 109巻 第 4号

68) 大内弘造.酒と酵母の話,技報堂出版 (1997).

69) 布川弥太郎ら:化学と生物, 11, 216 (1973).

70) 秋山裕一:日本醸造協会誌, 79, 190 (1984).

71) 高橋源治郎:日本醸造協会誌, 11, 15 (1916)

72) Ouchi, K. et al.: Agr. Biol. Chem., 7, 1024

(1971) .

73) 大内弘造ら.日本醸造協会誌, 67, 54 (1972).

74) 浅野忠男・日本生物工学会誌, 86, 123 (2008).

75) 鈴木康司:化学と生物, 49, 177 (2011)

76) Suzuki, K.: J Inst. Breω., 117, 131 (2011).

77) 鈴木康司:日本乳酸菌学会誌, 24, 181 (2013).

78) White, F. H.: Yeast-bact巴riainteraction in the

br巴wingindustry (In Mixed culture fermenta-

tion) , p. 121, Academic Press (1981).

79) 高宮義治:日本醸造協会誌, 77, 907 (1982).

80) 玉岡寿ら:日本醸造協会誌, 66, 810 (1971)

81) 遠藤明仁ら・乳酸菌学会誌, 14, 84 (2003).

82) 角田潔和ら:日本醸造協会誌, 93, 897 (1998).

83) 百瀬洋夫ら.日本醸造協会誌, 92, 452 (1997).

84) 塚原正俊ら:日本生物工学会大会講演要旨集,

p. 123 (2007).

85) 渡透泰祐ら:日本乳酸菌学会誌, 24, 179

(2013) .

86) 渡遺泰祐ら:日本生物工学会誌, 90, 311

(2012) .

87) 玉城武ら:醗酵工学会誌, 65, 9 (1987).

88) 鰐川 彰ら:日本醸造協会誌, 98, 241 (2003).

89) 辻謙次ら:日本醸造協会誌, 89, 530 (1994).

90) 前村久・日本生物工学会誌, 72, 325 (1994).

91) 鰐川 彰:日本生物工学会誌, 90, 324 (2012).

92) 柳田藤治.化学と生物, 28, 271 (1990).

93) 円谷悦造ら:日本醸造協会誌, 80, 200 (1985).

94) 小泉幸道ら:日本食品工業学会誌, 43, 347

(1987) .

95) Haruta, S. et al.: Int. J Food Microbiol., 109, 79

(2006)

96) Okazaki, S. et al.: J Gen. Ap.ρl. Microbiol., 56,

205 (2010).

97) 古川壮ーら:化学と生物, 48, 8 (2010).

98) 古川壮ーら:日本生物工学会誌 89,478

(2011) .

99) Furukawa, S. et αl.: Biosci. Biotechnol. Bio

chem., 74, 2316 (2010).

100) Furukawa, S. et al.: Biosci. Biotechnol. Bio-

chem., 75, 1430 (2011)

101) Furukawa, S. et al.: Biosci. Biotechnol. Bio-

237

Page 12: 微生物の共存・共生と伝統的発酵微生物の共存・共生と伝統的発酵 誌名 日本醸造協会誌 = Journal of the Brewing Society of Japan ISSN 09147314 巻/号

chem., 76, 326 (2012).

102) Hirayama, S. et al.: Biochem. BioPhys. Res.

Commun., 419, 652 (2012).

103) Adlerberth, 1. et al.: Aρρl. Environ. Microbiol.,

62, 2244 (1996).

104) Ahrne, S. et al.: ]. Appl. Microbiol., 85, 88

(1998) .

105) Pretzer, G. et al.:]. Bacteriol., 187, 6128 (2005).

106) Gross, G. et al.: FEMS Immunol. Med. Micro.

biol., 54, 215 (2008).

107) 古川壮ーら:日本生物工学会誌, 90, 197

(2012)

108) 古川壮ーら・日本醸造協会誌, 107, 292 (2012).

109) 古川壮ーら:化学工学会誌, 76, 695 (2012).

110) 古川壮ーら.日本生物工学会誌, 89, 487

(2011) .

111) Abe, A. et al., Ap.ρl. Biochem. Biotechnol., 171,

72 (2013)

112) Kawarai. T. et αl.: Aρρl. Environ. Microbiol.,

73, 4673 (2007).

113) 坂口健二:日本農芸化学会誌, 28, 758 (1954).

114) 田中昭光:日本生物工学会誌, 90, 320 (2012).

115) 田中昭光:日本生物工学会誌, 85, 196 (2007).

116) 稲森和夫ら:日本農芸化学会誌, 58, 771 (1984).

117) 長谷川要ら・日本醸造協会誌, 77, 157 (1982).

118) 長谷川要ら:日本醸造協会誌, 80, 707 (1985).

119) 好井久雄:日本醸造協会誌, 61. 776 (1966)

120) 松山正宣ら:醗酵工撃雑誌, 43, 807 (1965).

121) 小泉幸道ら:日本醸造協会誌, 76, 206 (1981).

122) 山本泰ら:日本醸造協会誌, 80, 411 (1985)

123) 緋野義己ら:日本醸造協会誌, 93, 176 (1998).

124) Cheirsilp, B. et al.: ]. Biotechnol., 100, 43

(2003) .

125) 片倉啓雄:日本生物工学会誌, 89, 465 (2011).

126) Katakura, Y. et al.: Aρρl. Microbiol. Biotech

nol., 86, 319 (2009).

127) 藤本章人ら:日本生物工学会誌, 90, 329 (2012).

128) Ercolini, D. et al.: Apρl. Environ. Microbiol.,

AEM.02955-13.

129) 阪本直茂ら:日本生物工学会誌, 89, 482 (2011).

130) 古川壮ーら:日本生物工学会誌, 90, 188 (2012)

131) Henneberg, W.: Handbuch der Garungsbakte-

riologie (1926).

132) Peng, X. et al.: Aρ,pl. Microbiol. Biotechnol., 55,

777 (2001).

133) Golowczyc, M. A. et al.:]. Dairy Res., 76, 111

238

(2009) .

134) Gusils, C. et al.: Biol. Pharm. Bull., 22, 11 (1999)

135) 大嶋泰治ら :IFO微生物学概論,培風館 (2010).

136) Ackerman,].:日経サイエンス (2012年 10月

号), 38 (2012).

137) 服部正平:細胞工学, 32, 1109 (2013)

138) 井上勲:藻類 30億年の自然史,東海大学出

版 (2006).

139) 井出利憲:生物の多様性と進化の驚異,羊土社

(2010) .

140) Barton, N. et al.:進化一分子・個体・生態系,

メデイカルサイエンスインターナショナル

(2009) .

141) Madigan, M. et al.: Brock微生物学,オーム社

(2003) .

142) Gibbons, R. ]. et αl.: Arch. Oral Biol., 15, 1397

(1970) .

143) Ell巴n,R. P. et al.:]. Periodontal Res., 12, 11

(1977) .

144) Kolenbramler, P. E.: Annu. Rev. Microbiol., 54,

413 (2000).

145) Reid, G. et al.: Can. ]. Microbiol., 34, 344

(1988).

146) Vandevoorde, L. et al.: ]. Aρρl. Bacteriol., 72,

214 (1992).

147) Rickard, A. H. et al.: Apρl. Environ. Microbiol.,

66, 431 (2000)

148) Egland, P. G. et al.: Proc. Natl. Acad. Sci., 101,

16917 (2004)

149) Hannan, S. et al.: FEMS Immunol. Med. Mi-

crobiol., 59, 345 (2010).

150) Perry, J.A. et al.: FEMS Microbiol. Lett., 299,

261 (2009).

151) Inagaki, S. et al.: FEMS Microbiol. Lett., 249,

291 (2005)

152) Johnsborg, O. et al.: Res. Microbiol., 158, 767

(2007)

153) Martin, B. et al.: Trends Microbiol., 14, 339

(2006)

154) Black,]. et al.:ブラック微生物学,丸善株式会

社 (2007).

155) Stanier, R. et al.:微生物学(上・下),培風館

(1978) .

156) 大嶺悠太ら.日本乳酸菌学会誌, 24, 39 (2013)

157) 山本真司ら日本乳酸菌学会誌, 24, 38 (2013).

醸協 (2014)