福祉の専門職は「これからの社会の主役」 · 2017-11-17 ·...

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福祉の専門職は「これからの社会の主役」

山田先生は長年福祉業界に関わられています。どのようなところに福祉の仕事のやりがいを感じておられますか?

山田 福祉の現場で働いていると、何らかの困難に直面している方 と々出会い、向き合います。もちろん、私たち誰もがいろいろな困難に直面することがありますが、福祉サービスを必要とする方たちの個人の頑張りや努力には限界があって、社会的な支えを必要としています。その方たちと一緒に考え悩むことによって、その方が生き生きと人生に立ち向かうようになり、人生そのものが豊かになっていく。職業としてそのような仕事ができることに、とてもやりがいを感じています。

京都府では「きょうと福祉人材育成認証制度」を構築しました。この制度について、先生が期待されていることをお聞かせください。

山田 人が困難に直面した時に登場する職業で代表的なのは弁護士、医師などの専門職です。社会的あるいは身体的に困難な状況に直面した時に登場し、解決したり完治すると縁が切れて普通の暮らしに戻っていく。これとは異なり、長期にわたり継続し、おそらく完治しない様々な障害や慢性疾患をもちながらも豊かに暮らして生きていくことを支えるのが福祉です。 医療の分野では長年にわたる努力によって人材づくりが成功してきたと思いますが、

社会福祉士や介護福祉士の資格制度ができたのは1987年のことです。急性期医療とは異なる価値を実現する、人々の「暮らしを支える新たな専門職」が必要とされ、国を挙げての取り組みがなされています。 「きょうと福祉人材育成認証制度」は、人材育成に積極的に取り組む福祉事業所を京都府が認証し、求職者に向けて公表する制度で、京都府が全国に先駆けてモデルとなり、国を挙げて取り組みが進められています。この制度の条件をクリアした法人は、おそらくは上場企業並みの雇用環境をもち、安定した職場の確立を目指すもので、特に「上位認証」法人はその条件を満たしているものと考えています。この制度が、福祉の仕事はやりがいがあること、同時に給与面やライフイベント支援の面でも、他の職業に比べて遜色のない働き方ができることを社会にアピールするきっかけになればと期待しています。

「きょうと福祉人材認証制度」は全国の行政機関や福祉事業所からも注目されています。次のステージに向けての課題や展望など、先生がお考えになっていることをお聞かせください。

山田 福祉の専門職に求められる専門性は、医療に匹敵すると私は確信しています。今後、社会福祉の専門職の必要性はますます高まっていく中で、社会的に高い評価を受けるに相応しい仕事だという価値観をしっかりとつくり

上げていかなければならないと思います。 そして「雇用環境や給与面」と「専門職の質」を車の両輪にしていかないと、福祉の人材育成は最終的なゴールに達しないと思っています。その為には、京都府が取り組んでいる「きょうと福祉人材育成認証制度」のように求職者が安心して、長く働ける職場であるかどうかを「見える化」する仕組みを継続し、より発展させていくことが重要です。 また、専門職を育てるための教育養成課程や研究、指導者育成方法の深化を目指して、福祉が「学」として確立されることも今後の課題であると思います。

最後に、学生や第二新卒のみなさんをはじめ、福祉業界で働こうと考えている方へ、メッセージをお願いします。

山田 これからの成熟社会では、障害や慢性疾患のためにハンディキャップを負っていても、誰もが生きがいを感じ豊かな人生を送ることができる社会的な仕組みとネットワーク、そのための専門職が必要とされます。福祉の専門職は「これからの社会の主役」です。まさにこれからつくり上げていく創造的な分野ですので、ぜひ、夢をもって飛び込んできてください。

ありがとうございました。

山田尋志 やまだ ひろし社会福祉法人グループ「リガーレ」代表、社会福祉法人リガーレ暮らしの架け橋理事長、NPO法人介護人材キャリア開発機構理事長、京都府福祉人材育成認証事業推進会議委員(座長)、厚生労働省「今後の福祉人材養成の在り方に関する検討会」委員

| M E S S A G E |

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嵐山寮

きょうとの

上位認証

緻密な事業計画と広報戦略を行う“マネジメント力”

世界的観光地である京都嵐山を中心拠点に置く嵐山寮。観光のまち嵐山の特性を活かした事業の

運営や地域福祉の発展を目指し、多様な“人財”の育成に力を注ぐ。緻密な事業計画、広報戦略

において、質の高いPDCAサイクルが確立されている。採用活動においても情報の価値を見極め、

収集、集積、共有が組織として徹底されている。

社会福祉法人

みねやま福祉会

大樹会

上位認証MAP

奈良県

嵐山寮

京都駅

同和園

南山城学園

大阪府

兵庫県

福井県

京都府

滋賀県

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嵐山寮

嵐山寮

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まず、新卒者の採用について伺いますが、この7年間で約140名の職員を定期採用されています。すごい数字だと思いますが、法人としてどのように採用活動を展開されていますか。

田中 採用活動については、新卒者というターゲットを明確にしたら、しっかりとマーケティングを行い、どのような情報をどのツールで提供すると効果的かを分析し、戦略を練ります。その上で、就職フェアや実習生など、当法人と関わりを持った学生の情報を組織として共有化し、戦略的に取り組んでいます。また採用活動のノウハウを理解して仕事をしてくれる、採用担当者を置けていることも大きな強みです。就職活動をする学生の目線に立って、選ばれる業界、選ばれる法人になろうと努力しています。

採用活動のツールや内定辞退者を出さない仕組みなど、組織として、情報の収集や集積などの取り扱い方がとても緻密です。また数字や実態を把握した後も、スピード感を出して改善されている印象があります。

そこからまた新たな企画やツールが生まれていくというサイクルで、取り組まれているのですね。

田中 そうです。当然、採用活動に掛かった費用を算出し、費用対効果の検証も見ながら法人の予算規模に合ったプランを模索しています。

田中 やはりひらめきで企画を行うことも大切ですが、定期的な新卒者の採用には計画的な行動が必要です。情報は常に変化していることを前提に収集し、プランニングに活かしています。例えば、SNSを使った採用活動でも「やろうと思っている」ではなく「やってみる」という意思決定のスピードも重要です。  採 用内定 者とのやり取りもメールからLINEに変えたことで、学生たちが普段使用しているコミュニケーションツールでやり取りするからこそ出てくる悩みや疑問が必ずあります。

田中裕介さん(嵐山拠点…総務部…副施設長)

I N T E R V I E W

次に、ガバナンス(企業統治)の強化の一環として作成され、職員の方たち全員に配付している「職員手帳」についてお聞かせください。

田中 「職員手帳」は「嵐山寮の職員である」という帰属意識を高める為に配布しています。中身は年間事業計画や職務を行う上での意義が書いてあります。介護の現場にいると、法人全体としての事業計画との距離を感じてしまう面もあるので、いま自分が行っている仕事が法人のどの部分に位置づけられ、それが今後どうなっていくのかを文字として、メッセージとして伝えています。

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嵐山寮

嵐山寮

「この法人で働きたい!」内定者の確実な採用のために

 嵐山寮では採用担当者を置き、学生の傾向を情報として的確に把握した広報戦略を行っている。内定した学生を確実に採用するための取り組みや支援も、安心して働くことが待ち遠しくなるよう整備されている。 内定後の連絡手段は基本的に学生たちのより身近なコミュニケーションアプリであるLINEで行っている。従来よりも連絡が円滑になり、採用担当者とのリアルタイムでのやり取りや内定者同士のコミュニケーションの促進に効果が表れているという。法人オリジナルのLINEスタンプも職員が作成し、楽しみながら関係性を築いている。“いま”の学生が望んでいるアプローチにすぐに対応できる組織風土は採用において大きなアドバンテージとなっている。

法人内部における情報発信として、実際に手帳として現物を渡されることに大きな意味を感じます。定着率を高めている仕組みとして、キャリアパスを運用されています。

田中 当法人に限らず福祉業界は「女性が活躍している業界」です。介護サービスを利用されている高齢者の性別割合は、男性 2:女性8と圧倒的に女性の方が多いです。その為、必然的に職員も女性が多くなりますが、女性は結婚・妊娠・出産・育児・介護といったライフスタイルの変化を求められることが多くあります。一昔前は結婚や妊娠を機に退職、もしくは正規職員からパートになる方も多くいました。 そのような状況を改善すべく当法人ではキャリアパスとして平成25 年度から「複線型人材マネジメント制度」を導入しました。正規職員を3つのコース制として、職員のスキルとライフスタイルの変化に合わせて、あるいは異動の有無、どこまでキャリアアップしたいか、家庭の事情等で短時間で働く必要があるなど、働き方を選べることが最大の特徴です。

I N T E R V I E W

木村悦子さん(嵐山拠点…施設長)

キャリアパスだけではなく、育休取得率や有給休暇取得率も高く、職員のライフスタイルの変化に合わせた仕組みが、継続的に働くためには重要です。この4月から、施設長となる木村さんも、現場の介護職からキャリアをスタートし、管理職、経営職としてステップアップされています。

田中 女性が活躍する職場であることはもちろん、若い職員が自ら主体的に仕事に取り組み、様々な企画を立て、実行できる嵐山寮の文化を伸ばしていきたいと思います。2010 年に新卒採用を強化していく方針に切り替え、いま7年前に入職した職員たちが現場でリーダーとして、育ってきています。研修制度やキャリアパスなどの仕組みを上司・先輩から学ぶ機会を法人として更に充実させ、“人財 ”を育成しながら、地域を活性化できる法人に成長していきたいと思います。

嵐山寮オリジナルのLINEスタンプ

 その他にも内定辞退防止を目的として、式典・懇親会・研修、入職までの期間に月に1回程度の個人面談を実施し、仕事に対する疑問や不安を少しでも解消できるよう支援している。内定通知時には、これから福祉の専門職として働く意欲を高めてくれる『サポートブック』も配付している。 また内定者の家族に対しても、法人が安心して長く働ける職場であることを『採用通信』

(10月から入職まで月1回発行)の送付や内定者家族施設見学会(法人事業や人事労務なども説明)で、丁寧に伝えている。

C o l u m n

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 嵐山寮では、この7年間で約140 名の新卒者が入職し、その内、60 名強は福祉系の学部以外から採用されている。それまで福祉業界に関心を持っていなかった学生を福祉の仕事に振り向かせる情報発信力は採用活動において大きな武器となっている。 ある介護職員は「私は〇〇学部から嵐山寮に入職しました。就職フェアでたまたま話を聞いて私がしたい仕事って本当は福祉かもって思って。いまはご利用者の生活がどうしたらもっと豊かになるか考える介護の仕事に出会えて幸せです」と話す。 入職時に資格を所持していなくても、新人教育や具体的にキャリアパスを提示しながら、資格取得や福祉の専門職としてどのように成長できるのかを学生に明示できている証である。更に職員が目標や能力、ライフステージに応じてコースを選ぶことができる複線型の人材マネジメント制度の存在も大きい。 また「観光情報誌に掲載される福祉施設を目指して」いるという。介護だけにとどまらない総合的な地域に密着したサービスを提供していく法人としてのビジョンが「自分の得意分野を嵐山寮で活かしたい」という気持ちを高め、様々な人材を惹きつけている。 職員の定着率が高い理由を計る物差しとして、平成28 年度の『京都府福祉職場 組織活性化プログラム』の職員意識調査(20 歳〜 24 歳)では、「上司や同僚に気軽に相談できる」4.38(府平均 3.73)

「上司は目標や手順をはっきり示してくれる」3.81(府平均 3.75)

「上司はよい仕事をすれば認めてくれる」4.12(府平均 4.06) といずれも府の平均を上回っており、組織としての風通しの良さがうかがえる。

多様な“人材 ”の確保と多様な“人財 ”の定着

C o l u m n

大竹…拓さんは大学院では理系を専攻していた。

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■法人本部所在地〒616-8374 京都府京都市右京区嵯峨天竜寺北造路町17TEL:075-871-0032

■設立理念感謝の心と相互敬愛を表す合掌の生活の中で、ご利用者一人ひとりが、自らの長寿生活を楽しみながら暮らすための環境づくりをモットーとします。

■設立1955年4月1日

■運営事業養護老人ホーム特別養護老人ホーム 3施設短期入所生活介護事業 3施設デイサービスホームヘルプサービス居宅介護支援事業所 3施設小規模多機能施設 2施設地域包括支援センターサービス付き高齢者向け住宅診療所

■従業員335人(2017年9月現在)

社会福祉法人 嵐山寮

大樹会

きょうとの

上位認証

地域に学び“ニーズを発見する力”

京都・舞鶴で地域に根差した社会福祉事業を総合的に展開している大樹会。地域の中で法人とし

て取り組むべきニーズを汲み取り、事業化し、社会の中で福祉が機能していくまちづくりに貢献して

いる。当然、地域に貢献できる人材育成にも力を入れており、職員が成長を実感できるキャリアパ

スや研修制度など、意欲を持って学び、志を持って働くための仕組みが整備されている。

社会福祉法人

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大樹会

大樹会

まず職員の方が自分の成長や自己実現を実感できるためにどのような職場環境を整えているのでしょうか。

五嶋 キャリアパスでいえば、法人の幹部職員自ら7つの行動指針を作成し、7つの階級別に行動評価の視点(①尊厳第一主義、②明確な目標、③正確な業務、④広い視野、⑤責任ある行動、⑥活気のある職場づくり、⑦チームの尊重)を作成し、キャリアパスの昇格要件を明確に定めました。その基準を柱として、年2 回の人事考課を実施し、客観的で本人が納得のいく評価を得ることが可能となりました。 また人事考課の際にも、職員の声を聞く機会を増やし、業務改善や人事異動の仕組みの中に反映しています。職員の声には事業のヒントがあることも多く、経営者側も貴重な機会として捉えています。

それは、大きな力となりますね。長期的な視点に立って、地域に貢献できる人材を法人として育成する文化があるのですね。

時岡 何よりうれしかったのは、現場を離れている期間でも、職場の情報を逐一いただけたことです。そういった配慮をしてもらえる職場なので、何としても資格を取得し、復帰した際には恩返ししたいという気持ちになりました。

学びながら働くことの良さについて、柴田さんはどのように考えていますか。

柴田 やはり先輩や上司が資格を取得して、その立場でどのような仕事をしているのかを直接見られるので、受験する職員の学ぶ意欲は高くなると思います。「社会福祉士の資格があればこういうスタンスで仕事ができるのか」など、自分の将来のイメージがすごく具体的に見えます。資格を取得することだけが目的化されるのではなく、生きたロールモデルが目の前にいることの強みはそこにあると思います。

職員が自分の成長を実感することはやはりキャリアパスの運用が重要ですね。同時に学ぶ機会の提供という面でも、法人では丁寧な人材育成をされています。時岡さんは、大樹会に入職されてから、働きながら介護福祉士や社会福祉士の資格を取得されました。

時岡 大学は経営学部で就職活動も行い、銀行に内定をいただいていました。しかし、大学 4 回生の時に祖父が体調を崩したことがきっかけで福祉の仕事と出会いました。入職後に特養で働きながら、法人の支援(試験前の対策講座や無利子での経済的な支援など)を受けて資格を取得することができました。資格取得のためには、働きながら実習に行く必要がある資格もあり、その期間中は現場を抜けるのですが、現場単位でもそうですし、法人としても快く「がんばって勉強してこい」と送り出してくれました。

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写真上 時岡享平さん(地域包括支援センター長)写真下 柴田崇晴さん(やすらぎ在宅センター長)

五嶋…仁さん(理事・経営企画室長)

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大樹会

大樹会

「学び」というキーワードでいえば、法人として、社会福祉士の資格を目指す学生への実習やインターンシップをはじめ、行政、医療機関、小・中学校などと連携し、地域を巻き込んだフィールドワークも実施されています。

五嶋 社会福祉法人のあり方をずっと私たちは自分たちに問うています。それは社会福祉法人が福祉の教育機能も持っているということです。当法人はこの地域のことも知っていますし、福祉のサービスについても知っています。そこで地域全体を学びの場と捉え、福祉の専門職としてフィールドワークを行うようになりました。

柴田 社会福祉士の実習を終えた受講生は「福祉が実は生活に密着していると実感できました」と体験を通して、地域福祉の本質に触れて感動してくれます。地域と連携しながら福祉の教育機能としての役割を果たすことで、地域が活性化され、福祉のまちづくりが進みます。「学ぶ」こと以上に「学び続ける」ことは難しいですが、これからも法人として

「地域の方が望むことなら何でもする」という姿勢で発展してきたいと思います。

五嶋 やはり社会福祉法人は地域の資源ですから、地域の方々に活用してもらうことで、その存在価値が高まります。法人としてできることを常に発信し、地域のみなさんと一緒につくっていく姿勢を大切にしています。そして、必要な時にセーフティーネットとしても機能できる法人を目指していきたいと思います。

I N T E R V I E W

キャリアに合わせた、充実した学びの機会の提供

 大樹会では、働きながら学び、地域に貢献できる福祉人材を育成するために、職員のキャリアに応じて、学びの機会を設けている(外部研修会への参加は年間延べ 400 名ほど)。 キャリアパスの中で、行動指針をもとに階級別に受講の求められる研修が決められており、毎年度受講対象者を会議にて決定し、年間計画を立案している。またキャリアアップに必要な介護福祉士・ケアマネジャーの受験対策講座を法人内にて開催している(資格取得に関わる講座や授業料も法人が無利子で融資している)。 日頃の OJT(On-the-Job Training:職場で実務をさせることで行う従業員の職業教育)を担当する職員については、個々に研修が受講でき、受講履歴も個人別に管理されている(今後は更にシステム化も進めていく)。

 このようなキャリアパスに沿った人材を育成する仕組みと体制は、同じ研修を受講し、職員同士がご利用者のケアについて共通の言語で語れる為、業務を進める上で、大きな強みが生まれている。入職時に福祉の専門職としての資格を取得していなくても、より専門性を高めたい、キャリアアップしたいと希望する職員にも対応できるよう支援体制を整えている。

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大樹会

大樹会

働きながら、安心して出産、子育てできる

 長く継続して働くためには、職員が安心して出産、子育てができる支援メニューの整備が重要である。大樹会では現在も10 名以上が産休や育児休業中で、休業を終えた職員の復帰率は100%。このことは職員同士も出産や子育てを応援する雰囲気があり、互いに支え合いながら、これからの地域を担う子どもたちを大切にしていこうという法人の姿勢が表れている。 職員限定で休日保育が無料で利用でき、デイサービスなどでは、小学生以上であれば職場に連れてきて、親が勤務している間は「ボランティア」の一員として、ご利用者と交流を担ってもらうこともできる。更に2010年から「やまもも保育園」を法人が運営開始するなど、子育てしながら働き続ける環境の整備を次 と々行っている。この点は職員がどのような子育ての支援を欲しているかを自ら

の経験も踏まえ気を配っている大橋裕子苑長の存在も大きい。 「法人が子育てをしながら働くことに対して肯定的で『楽しみながら子育てを』というメッセージをいろいろな制度や仕組みから感じます。このことは女性だけではなく、男性職員にとってもメリットです。この職場に出会えて安心して働き、子育てができています」とある職員は笑顔で語る。 また出産、子育てだけではなく、労働時間の縮減にも配慮しており、通所事業所や保育所の職員については、ノー残業デイが設定され、それぞれの事業所において運用しやすい日を設定して実践している。職種や職場に偏りなく休暇が取得できるよう配慮されるとともに、労働時間についても特定の職員や職種・職場に超過勤務がみられることのないよう仕組みがつくられている。

C o l u m n

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同和園

きょうとの

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■法人本部所在地〒625-0021 京都府舞鶴市字安岡小字中山1076番地TEL:0773-64-6060

■理念一人一人の人生を大切にし、…健やかでやすらぎのある生活を…送っていただくことを目指します。

■設立1983年1月10日

■運営事業特別養護老人ホームグループホーム短期入所生活介護事業所デイサービスセンター 2施設ヘルパーステーション在宅介護支援センター地域包括支援センター 2施設グループデイ小規模多機能型居宅介護 3施設保育園相談支援事業所・放課後等デイサービス放課後児童クラブ

■従業員221名(2017年9月現在)

社会福祉法人 大樹会

先駆的に“挑戦する力”

2021年で設立100周年を迎える京都・伏見醍醐の地にある同和園。地域の中で、総合老人福祉

施設として、また社会福祉法人としての役割を果たし続けている。ご利用者への「ケアの質」を高

める為に、職員の人材育成や働きやすい環境づくりを整備し、最近ではICTを使った職員間の情

報共有や園内保育園などにも、先駆的に取り組んでいる。

社会福祉法人

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同和園

同和園

向き合うことですが、そこと向き合い、本質的な改善に取り組まなければ組織は変わりませんし、成長できません。

その為にご法人の組織図も哲学を持って設計されているのですね。

佐賀 そうですね。当園では、いわゆる逆ピラミッド型の組織図になっています。ご利用者が一番上で次に現場の介護職員、そして、リーダー、主任、課長、部長、園長、理事長となり、管理職、経営職が土台として下支えをする組織です。下に行けば行くほど、支える役割も責任も大きくなります。ご利用者を最上位にする理由は、職員の処遇も、業務改善も全ては「ご利用者に質の高いケアを行う」ということが出発点になっているからです。だから、ご利用者と直接関わる職員がより質の高いケアを継続してできるよう、働きやすく、働きがいのある職場環境を整備しています。いわゆる組織でバックアップをしていくという考え方です。

プロジェクトチームでの検証やデータを重視されている。

佐賀 やりっぱなしにしない、効果検証が重要なことは大前提です。当園では総合調査研究企画室を設置し、数字に法人としてこだわっています。数字を掴むことは本当に手間と労力がかかります。しかし、業務改善を行う際には、やはり想いだけではなく、数字でも検証し、理路整然と業務改善の必要性や効果を周知していることは当園の強みです。だから、社会福祉法人としての役割や責任は当然として、高齢者福祉や介護のケアに関するシンクタンクのような役割も同時に果たしていきたいと思っています。 また、スピードも重要だと考えています。職員アンケートを用いて職員の職場や仕事に対する思いを見える化し、それぞれの事業者でその結果を組織活性化につなげる『京都府福祉職場 組織活性化プログラム』も、アンケートから見えてきた課題に対して、すでに業務改善の検討が始まっています。具体的な課題が表に出てくることは、現実の課題と

まず、人材育成について、法人で大切にされていることからお聞かせください。

佐賀 まず、当園では、常にご利用者の目線で何をすれば良いかを考え、新しいケア、新しいサービスを創造することを大切にしています。その為の福祉人材の育成は法人のみではできません。良いケアとは何か、その為に必要なことは何かを職員たちに問いかけるご利用者の存在がまずあります。次に様々な事業を運営する中では、必ず地域の方々の支援があります。そして最後に、良いケアを提供するためにご利用者と日々接し、そこから学んでいる現場の職員です。このようにご利用者、地域の方々、職員が三位一体となってはじめて当園の求める「和を大切にする人材」が育成されると考えています。

I N T E R V I E W

次に職員が働きやすい環境を整備するにあたり、どのように取り組まれているか具体的にお聞かせください。

佐賀 いまどの業界でも労働時間の管理が大きな課題となっていますが、当園では業務改善を通じて残業を減らすという取り組みを行っています。単に残業時間を減らそうとして

「残業はするな!」と命令しても、本質的な解決にはなりません。どのような業務にどれぐらいの時間がかかっているのかについて、委員会やプロジェクトチームでの検証、業務改善のためのデータ分析などを行いながら、解決策を導き出しています。 例えば現在、介護の現場で進めている業務のICТ化です。インカムやタブレットを導入し、業務改善を行っています。タブレットの場合でいえば、以前はパソコン(以下、PC)でご利用者の介護記録を取っていましたが、PCの場合はどうしても記録を打つためにPCの前まで行き業務を行うので、時間がかかっていました。それをタブレットにすることで、少しの空き時間でも業務が行えるようになりました。 昨年から導入したインカムは、ご利用者の側から離れなくても報告や連絡が行えますし、職員の数が日中よりも減る夜勤時にも職員の不安解消に役立っています。何より、複数に同時に伝えることができるということは、いい意味で大きな変化をもたらしています。現場の職員からは職員間の情報収集や共有が円滑になり、以前よりも更に働きやすくなっていると好評です。

佐賀隆司さん(人事・総務部部長) 組織活性化プログラムの報告会

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同和園

同和園

 同和園では2016 年 6月から、より円滑な情報共有と業務の効率化を目指し、インカムを導入した。当初は一部の職員のみに持たせることから検討がはじまったが、試験的な導入の際に職員からは「職員同士の情報共有が促進された」「個室でのケアの際にもその場にいながらアドバイスをもらえる」などの声が上がり、現場の介護職員全てに持たせることにした。一部ではなく「全員」という徹底した判断が法人としての(特徴であり、)強みである。 インカムにより、現場から離れていても効果的な指示の伝達ができ、インカムを通じて複数名が同時に情報を共有することで効果的なサポートが行えるようになり、効果検証のアンケートでは「移乗介助や入浴介助の際に、ご利用者をお待たせする時間が激減した」「デイサービスでは、離れた職員に大きな声で呼び掛けないと伝達できなかったのに、インカムが入って本当に意思の疎通がスムーズになった」、なども報告されている。また、遠慮や気遣いから先輩職員に相談しづらい新人職員が呟くことで気軽に相談ができ、分からないことがあってもその時に確認をすることができるため、不安解消にも貢献している。  更に 2017年1月からは、 タブレット端末を導入し、ご利用者の介護記録をデータとして残し、アーカイブ化を進めている。ICT(Information and Communication Technology)で、介護の現場は「より働きやすく」進化していく。

介護の現場×ICT

I N T E R V I E W

今回、取り上げさせていただいた介護現場でのインカムやタブレットなどの業務のICT化や園内保育園以外に、『介護男子スタディーズプロジェクト』にも参加されています。

佐賀 介護職のイメージを「かっこいい仕事=介護職」となるよう、メディアやイベントなどを通じて情報発信するプロジェクトにも参加しています。プロジェクトメンバーの松田直也さんは、現在は介護職として若手職員をまとめる役割を担いつつ、福祉の養成校での講演や「同和園ブログ」などをはじめとしたSNSで、日々情報を発信してくれています。このプロジェクトでも、ICTで進化する業務でも、

組織として徹底して改善していく姿勢でも、介護や福祉にネガティブなイメージがある方は、当園に是非、見学に来てほしいです。

ご法人の設立から今年で96年目ですが、ご利用者へのケアの質を高めるために、常に先駆的に挑戦されています。

佐賀 先駆的な挑戦をしているかどうかよりも、ご利用者に最善のケアサポートを提供するために常に360度アンテナを張って、積極的に業務改善を行っていきたいです。社会福祉法人としての誇りと使命をもって、社会に貢献できればと思います。

C o l u m n

松田直也さん

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同和園

同和園

同じ敷地内で働き、親子が共に成長する職員の為の「園内保育園」

 同和園では、子育て中の職員を支える取り組みの一つとして、同じ敷地に「園内保育園ちくりん」を開設し、夜勤の職員をはじめ、土日祝日、年末年始も利用しやすいよう、24時間 365日稼働型で運営されている。全国で事業所内・病院内保育所の実績を持つ企業に委託し、質の高い保育を行っている。 利用する選択肢も幅広く、月極保育だけでなく、普段は自宅の近くの保育園に子どもを預けてから出勤している職員も日曜日やお盆休み、お正月などの際には一時保育での利用もでき、職員からは「園内保育園があって、本当に助かっています」という声を多く聞く。 同じ敷地内に保育園があることの最大のメリットは「子どもが体調を崩した際などの、いざという時にも内線一つですぐに駆けつけられて、様子を見ることができること」と利用する職員。また「乳幼児期の子どもの体調管理は難しく、心配で仕事に集中できないという経験もあったので、園内保育園の心強さは身に染みています」と別の職員も話す。現在

も10 名以上の職員が利用しており「子どもは保育園で、親は福祉の専門職として職場で」それぞれ成長できる。 職員の出産や子育てと仕事の両立をサポートする体制が整っているかどうかは、女性職員が多く勤務する福祉職場であれば、働きやすさを計る大きな物差しとなるが、ここ8 年間で出産を経て、産休後に職場復帰した職員は30名を数える。 その他にも法定より手厚い「産前休暇」「出産御祝い金制度」「スクールイベント休暇」なども整備され、最近では社会的にも大きな関心事として取り上げられる「男性の育児休暇」や「介護休暇」等についても取得されはじめた。 掛け声だけの「ワークライフバランス」ではなく、仕事とライフイベントのどちらも豊かにしていくための仕組みを整備することで、職員が「働きやすく、働きがいのある職場」がつくられている。

C o l u m n

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■法人本部所在地〒601-1371…京都府京都市伏見区醍醐上ノ山町11番地TEL:075-571-0010

■ケアサポート理念一、一人ひとりが輝く「人生」を最後まで送れるケアサポートをめざします。一、「あなたらしい生活」を大切にし、寄り添うケアをめざします。一、あなたと共に生きる「場」をめざします。一、ケアが必要になった時、安心して地域で「あなたらしい生活」ができるようサポートします。

■設立1921年12月11日

■運営事業特別養護老人ホーム(従来型・ユニット型)養護老人ホーム短期入所事業通所介護 3施設居宅介護 2施設訪問介護定期巡回・随時対応型訪問介護看護訪問看護地域包括支援センター認知症対応型通所介護コミュニティカフェ 2店舗配食サービス

■従業員524名(2017年9月現在)

社会福祉法人 同和園

社会福祉法人

みねやま福祉会

きょうとの

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組織を活性化させる“発信する力”

京都・京丹後地域で乳児院からはじまった、みねやま福祉会。現在では総合的な事業を行う社会

福祉法人として、地域の方々が安心・安全に暮らすための役割を担い、地元の一流企業として知れ

渡っている。人財採用戦略として、法人内の各分野(高齢、児童、障害)よりメンバーが集結して

リクルーティングチーム「SKIPPA(スキッパ)」を結成し、法人全体を活性化させるためのチームと

して機能している。

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みねやま福祉会

みねやま福祉会

リクルーティングチーム「SKIPPA(スキッパ)」が誕生した経緯をお教えください。

中村 以前は私が主軸として就職説明会などの採用活動を行っていましたが、櫛田匠理事長から「若い職員の活躍の場として、採用の場を活かしてはどうか」というお話があり、取り組みをはじめました。「SKIPPA」の前身となる取り組みとして、就職説明会などに入職 5 年目ぐらいまでの若手職員が参加し、学生に近いところで、法人の魅力を説明していました。そして昨年の夏頃から正式に

「SKIPPA」という名前を決めて採用活動を組織的にはじめました。

櫛田 若手職員主体で採用活動をはじめたころは、採用チームを3つ作り、就職説明会などにローテーション制で参加してもらっていました。就職フェアのために採用ツールをつくり、いろいろな準備をしたので、手応えとしては「前年度よりも人が増えた」という喜びはありましたが、本質的なところに至っていないということをすごく感じていました。

に依頼があり、施設の職員に「SKIPPA」メンバーが講師としてワークショップを行いながら作成しました。研修講師も職員が務めることで、様々な学びも生まれています。

中村 「SKIPPA」の活動で法人全体を活性化させ、当法人の強みである体系的な研修で人財を育成し、地域の方々への「信頼」と「期待」を更に高めていきたいと思います。

法人としての職能的な研修以外にも現場の職員の方たちには、「SKIPPA」の活動がありますが、どのように勤務を調整されているのでしょうか。

中村 リクルーティングチーム「SKIPPA」の活動に法人全体で取り組もうという方針のもと、現場の管理職が本当に協力的に調整をしてくれています。それは「SKIPPA」メンバーが得た経験や情報を法人全体の共有の財産と捉えているからです。地域に貢献する事業を行っていくためには、職員の採用と人財育成が特に重要になってきます。「SKIPPA」を法人の情報収集の貴重なチャンネルにして機能させ、法人経営に活かしていきたいと思います。

メンバーも含めて、法人内部の変化は見られますか。

櫛田 まず「SKIPPA」のメンバー自身が変わってきました。はじめは、レールに乗ったところの意見やアイデアでした。しかし、いまは一人ひとりの幸福感も違い、地域性で変わっていく福祉の仕事は、とてもクリエイティブな仕事だという考え方が出てきています。会議の中でも一般的な福祉の枠を超えた、大きな発想が生まれました。このことは一番大きな成果だと思います。 現在、「SKIPPA」が行っているプロジェクトに当法人の高齢者福祉事業である介護施設「はごろも苑」の介護ヘルパーを募集するチラシづくりがあります。施設から「SKIPPA」

採用ツールを作成し、若手職員を就職フェアに参加させることが、実質的な採用にどうつながっていくのかという道筋がはっきりとは見えてこないという意味でしょうか。

櫛田 結局、就職フェアに来てもらって、施設に見学に来てもらう。そして「この法人の職員は、すごく楽しそうに仕事している」とか

「自分もあの人みたいに働きたい」と共感した人でないとなかなか採用につながらない。だから見せ方などのレベルではなく、もっと本質的な組織の活性化や人財育成なども含めたトータル的な採用活動を行っていくことが必要だと思いました。例えば、学生たちに渡す採用ツールや映像も、職員たちが自分たちの法人をプレゼンテーションする重要なコミュニケーションツールです。だから「SKIPPA」のメンバーが自信を持って、胸を張って手渡せるものにしていきたいと思います。その際に学生たちにデザインが響くことも重要ですが、そのデザインが当法人の何を表し、何を伝えようとしているのかを語れることはもっと重要です。

中村治之さん(法人本部事務局長)

櫛田…啓さん(児童養護施設…峰山乳児院付設幼児寮・施設長)

I N T E R V I E W

S = satisfy(満足)K = kind(思いやり)I = interest(おもしろさ)P = passion(情熱)P = powerful(力強さ)A = airy(風通しの良さ・陽気)

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みねやま福祉会

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 小規模多機能施設で働く介護職の後藤さんは『SKIPPA』の活動を通して、「法人内の他の事業や施設、また他法人を就職フェアなどで見る機会も増え、視野が広がりました。たくさん見て、自分の中で座標軸ができた結果、いま働いているこの施設で、こんなことをやってみたい、こんな役割を自分が果たさなければいけないという使命感を強く持つようになりました」と話す。 「採用における企画ツールを制作する際に気をつけていることは紙媒体やWEB 媒体などのコンテンツづくりにおいても、自分たちの生の声を届けることです。どこに魅力を感じ

リクルーティングチーム「SKIPPA(スキッパ)」

 リクルーティングチーム「SKIPPA(スキッパ)」の一員としての役割を与えられた職員たちは実際にどのような想いを持ち、採用活動に取り組んでいるのだろうか。楽しいだけの活動で終わらせることなく、腹を据えて、法人として組織として「SKIPPA」の採用活動を徹底して支援し、出てきた課題を引き受けることは簡単ではない。メンバー 3名から、

「SKIPPA」の活動に対する想いを聞いた。 保育士の松田さんは入職して4月で3年目。

「就職フェアでは学生の方たちに幸せな人生とは何かをまず問いかけています。私は仕事とプライベートの両方を充実させてこそ、豊

かな暮らしは成立すると考えています。でも、どうすれば充実できるのかはイメージが湧かない学生さんは当然、多いと思います。だから自分を通して具体的に伝えています」と話す。また「学生のみなさんが持っているそれぞれの得意なことや経験を福祉の仕事では、こんな風に活かせるし、こういう視点で見ると人を喜ばせる武器になるということを伝えています」とも。自分を活かしてくれる職場であることは求職者にとって大きな魅力である。 就職フェアではトークセッション形式で「福祉の仕事×ライフスタイル」をテーマにしてアピールをしている。情報で大切なのは質と説得力だが、学生が聞きたいことに的確に真っすぐに返答しているので、学生の心に染み込むメッセージが届けられている。 「『SKIPPA』のメンバーは多職種なので、自分自身刺激を受けることが多いです。採用活動を行う役割や責任は大きいですが、徹底してサポートしてくれる管理職の方たちの気持ちに応えるべく、仲間と一緒に楽しみながら徹底して挑戦していきたいと思います」

て福祉の仕事を続けているのか、働く中でしか味わえない感動を自分たちの言葉で直接伝えることができるのが『SKIPPA』の魅力だと思います」。現在、その他にも高齢者施設の「はごろも苑」の介護ヘルパーを募集するチラシを施設の職員と「SKIPPA」のメンバーで進めている。「企画編集を行うプロセスでは、施設の職員の方たちと一緒になって本当に伝えたいメッセージは何かを考えています。中身づくりは時間がかかりますが、自信と責任を持ってメッセージを発信し、求職者の方に響くチラシができるよう、がんばります!」

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松田桃佳さん

後藤実那美さん

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みねやま福祉会

みねやま福祉会

 みねやま福祉会では1950 年の創立から、地域に根差した社会福祉法人として、地域の方々のニーズに応える事業の展開、コミュニティを活性化するための祭りやイベントにも積極的に関わり、協働を続け、地域の方々から「信頼」と「期待」を得てきた。初代理事長から、地域づくりを積み上げてきた時間が、様々な事業を展開していく際にも大きな推進力になっている。その意味では、この地域ではすでに「名門企業」となっている。 ある地区に高齢者福祉事業のグループケアの運営を開始する際、地域の方々から様々な声が上がったが、地域福祉でまちをどのように支えようとしているかを説明しに行くと「み

福祉の力で、地域活力を向上させる

 昨 年 4 月に入 職した相談 員の小 林さんは、大学までは地元である福井県で過ごし、就職をきっかけに京丹後市に移住してきたIターン組。現在は、就職フェアを中心に

「SKIPPA」の活動に関わっている。「自分が就職を決めたのが、いまの『SKIPPA』のメンバーも参加する就職フェアでした。みねやま福祉会のブースの雰囲気は、笑顔で溢れていました」と語る。笑顔の力を知った小林さんは、先日の就職フェアの法人アピールタイムの際に「笑顔と楽しさ」をキーワードにメッセージを送った。学生の共感を呼び、ブースは大にぎわいを見せた。 「就職先を決めることは大きな決断だと思いますが、福祉という専門性を使って、人の生活を支え、地域を一緒に盛り上げていこうと呼びかけています。私がみねやま福祉会で働こうと決めたのは笑顔を大切にしている法人だからです。だから、私も就職活動をする学生のみなさんに笑顔で接し、笑顔の背景にある仕事への想いやそれを実現できる環境を伝えていきたいと思います」と話す。

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 メンバーそれぞれ、採用活動をすればするほど、法人への愛が深まっていくと話す。そして活動を通して得た刺激が、それぞれのアンテナの感度を高め、仕事でも、プライベートでもやりたいことがどんどん見つかっているという。 なんとなく始まったことは、なんとなく終わってしまう。やりっぱなしにはせず、決めたことにはとことん責任を持って取り組む。このことを徹底して行っている、みねやま福祉会の

「SKIPPA」の活動は、法人内、そして地域を活性化させる大きな力として機能していく。

小林…益さん

ねやま福祉会がやるなら」と地域の協力を得られるようになった。 また別の地区で児童福祉事業により児童養護施設の運営を開始した際には、もともと子どもがいない地区だったこともあり「子どもたちの声が聞こえると元気が出る」「毎日登下校時に挨拶するのが楽しみだ」と、地域の方々が子どもたちの登下校の見守りなどに積極的に関わってくれている。子どもたちの笑顔が、地域の方々の関係性の輪を広げるきっかけとなっている。 まちづくりにおいて、福祉の力で人と人とのつながりを支えることで、地域活力の向上を図り、牽引する役割を果たしている。

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社会福祉法人

南山城学園

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職員一人ひとりの“よりそう力”

地域に開かれた福祉施設を目指し、京都・城陽市を中心に障害、高齢、保育の事業を行ってい

る南山城学園。地域のニーズにパイオニア精神で向き合い、公共的・公益的な多様な事業、取

り組みを行っている。地域貢献できる多様な人財を育成するため、職員一人ひとりが福祉職場で

どのように自らの力を活かし、貢献していくかを具体的に描くことのできる制度や仕組みが整備さ

れている。

■法人本部所在地〒627-0031 京都府京丹後市峰山町呉服10番地TEL:0772-69-5005

■法人理念創設の理念を尊重し より質の高い福祉サービスの提供地域の人々の こころ豊かで安心・安全な暮らしへの貢献誇りと夢を持ち 福祉の仕事にまい進できるよう職員の幸福追求

■設立1950年11月1日

■運営事業乳児院児童養護施設保育所 3施設幼保連携型認定こども園 2施設児童発達相談支援事業所児童発達支援センター障害者地域生活支援センター障害者・児通園施設(生活介護、就労継続支援B型、放課後等デイサービス)特別養護老人ホーム 3施設認知症対応型共同生活介護施設 2施設小規模多機能型居宅介護施設 3施設

■従業員519名(2017年9月現在)

社会福祉法人 みねやま福祉会

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南山城学園

南山城学園

まず「“人を支える人”を育てるため」をキーワードに取り組まれている「人財育成マスタープラン」についてお聞かせください。

岩田 「人財育成マスタープラン」は、法人理念の実現に欠かせない職員個人の成長を目指した人材育成強化のため、2012 年から3 ヵ年計画で取り組んできました。具体的には「新研修体系」と「個別研修計画」の構築を2 本柱として、キャリアパスの見える化を実現しました。そこで完成したのが「7つの誓い」です(42頁のコラムを参照)。

辻 以前も1年目に必要な研修はこれで、2年目にはこれが…というような形でありましたが、法人の基本理念を職員が具現化していくために、南山城学園の人財育成の基礎となるものを研修として体系的につくり、それを基にいくつかの成長のステージに応じた研修を行うようになりました。

岩田 プロジェクトとして動き出したタイミングとしては、法人設立50周年と丁度重なっていて、これからの50 年を見据えた法人の発展には「人財育成マスタープラン」が欠かせないということでスタートしました。

岩田 リクルートチームの編成をはじめてみたら、副産物がたくさんありました。職員が自分の感じている事、考えを自分の言葉で語るためには、勉強する必要があります。また

「福祉の仕事の魅力って何だろう?」と聞きに来ている学生を惹きつけるには、魅力ある実践も必要です。自分達の仕事の魅力をしっかりと理解してもらうことは、シンプルなようで難しいことです。

辻 メンバーは2ヵ月に1度のペースでプレゼン力の向上や「何で伝えるのか」など、その時必要な研修メニューを準備し、広報としてのスキルも磨いてもらっています。

そこで、職員のみなさんが目標を持って働けて、日々の業務の問題解決をできるように体系化されました。恐らく、人財育成に関するマスタープランは一流企業や上場企業でも10%あるかないかです。

辻 人を支える福祉の仕事だからこそ、一流企業と肩を並べる人財育成制度が求められていると思います。「人財育成マスタープラン」によって、育成された人財が地域福祉の質を高めていく担い手となります。

育成という意味では、南山城学園にはGAKUEN魅力発信チーム(通称「GKN」)という広報活動などの際に中心となる職員チームがあります。

岩田 若手職員を中心にリクルートチームを作ろうという話からスタートした組織で、就職フェアなどで学生向けに福祉の仕事や法人としての魅力を伝えています。就職フェアの際にはチームのメンバーが参加していますが、学生の反応はとてもいいです。

辻 職員側からしても、自分達の仕事の魅力をわかりやすく説明することや日常の仕事の中で、魅力を発見し、それをチームで議論しながら発信するプロセスは職業人としても成長の一つとなっています。

基本理念を職員のみなさんが具現化するために体系的に構築したことは、大きな意味を持ちますね。

岩田 法人が設立された50 年前と今では、社会的に福祉に求められていることも大きく変化しています。そして、これから先は、世の中の変化のスピードは更に速くなっていくので、職員の育成も体系化して目標を明確に見せていく必要があります。例えば「1年目では何となくこれとこれ、2 年目は何となくこれを伝えよう」だと、結局、柱がないからある日何となく変わってしまいます。

岩田貞昭さん(法人本部事務局企画広報課…課長)

辻 雄介さん(法人本部事務局総務課…課長…)

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 南山城学園では、職員が未来を描けるキャリアパス・研修体系の整備に力を注いでおり、その核を担っているのが 2013 年に策定された「7つの誓い」である。 「7つの誓い」は法人理念を具体的に行動基準に定め、階層別に応じた模範的な行動を7つに分類している。このことで、法人理念を一人ひとりの職員が日々の業務の中でどのように活かし、どのような行動が求められているのかが明らかになり、法人の組織力が高まっている。 実際に研修を体系化する際には職員を

「ジュニア(採用1年目〜 2 年目)」「ミドル(採用3 年目〜 5 年目)」「シニア(採用6 年目以降)」の階層別に定義し、「7つの誓い」を各階層の行動レベルに合わせて示している(採用6 年目以降は、より専門的な研修として「シニア研修」や「エキスパート研修」なども定期的に開催している)。

I N T E R V I E W

岩田 人前で話すことはある程度のテクニックでできるようになります。大事なことは、それをどれだけ自分のもの、自分の言葉で実感を込めて伝えられることだと思います。だから福祉教育の一環として小学校で講演をした際にも、講師を務めた職員は自分が経験したことを伝えるので話の中身が大きく変わってきます。そのことを積み重ねていくと何年か経つと仕事での喜怒哀楽など全てがリアリティをもって語れるようになります。だから自分たちが実践して失敗したことやうまくいかなかったこと、そして成功例も、すごく重みがある。そのことを伝えることって、人を惹きつけますよね。

やはり、現場の職員の方からリアリティのある仕事の話を聞けることは、聞く方にとって、その業界や法人の真実の姿を知るうえで、大きな収穫になります。今後、ご法人としてどのように事業を進められていくのでしょうか。

岩田 この時代で、社会福祉法人がするべきことを見極めながら、法人の基本理念の通り、ご利用者の尊厳を守り、幸福を追求し、必要な福祉サービスを創造していきたいと思います。

辻 法人が設立されて50 年以上ですが、時代と共に社会福祉法人に求められることや役割は変化していきます。だからこそ、これから何が求められていくのかを常に先取りして事業を展開していきたいと考えています。

岩田 その為に先を見て動くことのできる人材を育成しています。福祉の仕事は地域づくり、人づくりができる仕事です。このことは、地に足をつけて働きたいという人にはとても夢のある仕事だと思います。先見性をキーワードにこれからも、ご利用者、そして地域の中で必要とされる法人でありたいと思います。

「7つの誓い」で職員が未来を描く

体系化された研修で人財を育てている

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 更に2015 年には職員が「7つの誓い」をいつでも確認できるように名刺サイズのハンドブックの形式にし、常に行動基準を意識できるようにし、より効果的な浸透を進めている。 また、成長支援ツールとして「キャリアアップシート」を導入し、「7つの誓い」に沿って自らの行動レベルをチェックし、半年間の目標を立て、育成担当者と目標に向けた行動計画を具体的に決めている。

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南山城学園

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(1)質の向上に向けた意欲と実践私は、利用者様の幸福のため、利用者ニーズに即応して、結果を出せるよう自らが行動を起こします。

(3)利用者理解と個別サービスの追求私は、利用者様の尊厳を守り、利用者様の理解に努め、質の高い個別サービスを追求します。

(5)職員の支援と育成私は、職員として、ともに学び、成長することを、互いの喜び・楽しみとします。

(7)専門性の向上と活用私は、職務に必要な専門的、組織的能力を身につけ、発展させ、活用します。

(2)ルールと正確性の重視私は、利用者様、職員など関わるすべての人々の安心・安全のため、ルールを守り正確性を重視します。

(4)セルフイメージの向上と影響力私は、社会福祉の一端を担う者としての自覚と自信を持ち、人々に前向きな影響をもたらします。

(6)チームワークとリーダーシップ私は、チームの和を大切にしつつ、立場や状況にふさわしいリーダーシップを発揮します。

「7つの誓い」

 南山城学園では地域に向けた福祉教育の一環として、城陽市の公立小学校で児童向けに障害者への理解を深める出前講座を行っている。講師は現場の職員が担当し、子どもたちが興味を持って話を聞けるようクイズなどを盛り込んだり、現場のリアリティのある話を自分たちの言葉で伝えている。未来を担う地域の子どもたちに、障害のある人たちについての理解を深めてもらい、地域で障害のある人が暮らしていく際の暮らしやすさにつなげるための啓蒙・啓発活動を行っている。 講座を中心となって担当するのは、現場の若手職員で構成される「GAKUEN魅力発信チーム」(通称「GKN」)のメンバーで、

“ 理解を深め、意欲を高める”福祉教育の推進

人材育成の場としても機能している。職員の企画力やプレゼンテーション能力の向上にもつながり、自らの仕事の価値を問い直す、貴重な経験を積む場となっている。 その他にも「働いているからこそわかる、仕事のやりがいや魅力」について、大学の講義にゲスト講師として招かれたり、複数の大学と連携して進めるガイドヘルパー講座(知的・精神障害者移動支援従事者養成講座)、地域の方に向けた発達障害の啓発セミナーなど、子どもたちや地域の方々に向けた“ 理解を深め、意欲を高める” 福祉教育の推進を行っている。

 このような丁寧な人財育成計画は、職員の働くモチベーションを高め、各現場での支援、実践の質を高めている(職員の取り組みは毎年、実践レポート集にまとめられ、法人内外に発信)。また南山城学園が取り組んでいる、カフェの運営、週末農業体験ができる自家農園ぷちぽんとファーム、フェスや様々なイベントなど、地域を面白くする多様な取り組みを担う人材としても活躍している。 職員が福祉職場のプロフェッショナルとしての自覚を持ち、地域福祉の発展と自分の未来を重ねることのできる仕組みとして機能している。

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