生物学的情報をゲノムからプロテ オームへと伝える...

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生物学的情報をゲノムからプロテ オームへと伝える出来事の検証 Chapter 8 ゲノムへの接近 (p.243-260)926真核生物ゲノムの活性化 Chapter 9 転写開始複合体の構築 (p.263-298)103転写開始はどのように始まるのか? Chapter 10 mRNAの合成とプロセッシング (p.300-342)1010,17RNAの種類と機能 Chapter 11 プロテオームの合成とプロセッシング Chapter 12 ゲノム機能の調節

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生物学的情報をゲノムからプロテオームへと伝える出来事の検証Chapter 8 ゲノムへの接近 (p.243-260):9月26日

真核生物ゲノムの活性化

Chapter 9 転写開始複合体の構築 (p.263-298):10月3日

転写開始はどのように始まるのか?

Chapter 10 mRNAの合成とプロセッシング(p.300-342):10月10,17日

RNAの種類と機能

Chapter 11 プロテオームの合成とプロセッシング

Chapter 12 ゲノム機能の調節

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本スライドで使用した図のうち、細胞Fig. と書かれたものは、細胞の分子生物学 第4版(ニュートンプレス)の該当する番号の図です。

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この章のねらい

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9.1 DNA結合タンパク質の重要性

9.1.1 ゲノム上のタンパク質結合部位の決定

遺伝子の上流に結合する場合が多い

図9-1 DNA結合タンパク質の結合部位は遺伝子のすぐ上流にある

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ゲル遅延法(gel retardation)タンパク質に結合するDNA断片を同定できる

カハール小体

核小体

スプライシングに関わるタンパク質

図9-3

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保護アッセイと修飾干渉結合部位をより正確に絞り込む

保護修飾アッセイ

ヌクレアーゼ・フットプリント法

調べるDNAの一端を標識し、結合タンパク質との複合体をつくらせDNアーゼIで限定分解する。タンパク質の結合している部分はDNアーゼIが近づけないために、その部分を分解されるものが少ないために、“足跡”が残る。

硫酸ジメチル保護アッセイ法

基本的に、ヌクレアーゼフットプリント法と同じであるが、DNアーゼIではなくグアニン(G)ヌクレオチドにメチル化修飾をする硫酸ジメチルの限定反応後、修飾Gを切断するピペリジンで処理して“足跡”を調べる。

修飾干渉アッセイ

保護修飾アッセイと全く逆で、あらかじめDNAを硫酸ジメチルで限定反応し、タンパク質を結合させる。Gが修飾されるとタンパク質がDNAに結合できない場合、その部分が明らかとなる。

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DNアーゼIフットプリント法

限定分解

酵素反応を完全に行うのではなく、未反応のものが残るように途中で酵素反応を止めるような条件。温度を低くしたり、酵素量を減らしたり、反応時間を短くしたりして実現する。

図9.4

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DMS(硫酸ジメチル)修飾保護法

図9.5

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DMS(硫酸ジメチル)修飾干渉アッセイ

図9.6

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9.1.2 DNA結合タンパク質の精製

図9.7

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9.1.3 タンパク質とDNA-タンパク質構造の研究

図9.8

X線結晶解析(X-ray crystallography)

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X線結晶解析(補足)互いに弱め合う

互いに強め合う

タンパク質も条件が整えば結晶になる

アトキンス物理化学の基礎より

制限酵素HindIIの結晶(NEBカタログより)等間隔に並んだ酵素分子

すなわち 結晶 ができれば回折像が得られる

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核磁気共鳴分光解析(nuclear magnetic resonance spectroscopy; NMR)

外部静磁場に置かれた原子核が固有の周波数の電磁波と相互作用する現象である。この固有の周波数が分子内でのその原子の環境によってわずかに変化する事を利用し、物質の分析する方法(Wikipediaより)

核種 1H、13C、15Nについてタンパク質上に存在する化学的環境を調べることが可能。ただし、 1Hは数が多すぎるので使いにくい。通常の炭素原子(12C)や窒素原子(14N)の代わりに安定同位体13Cや、15Nをいれたタンパク質を人工的に作る必要がある。しかしX線結晶解析のように結晶は必要とせず、溶液上でも分析が出来る利点がある。

図9.9

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9.1.4 DNA結合タンパク質の特徴タンパク質構造中にDNA結合モチーフがある

取り上げたもの

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DNAには2種類の溝がある

小さい溝 副溝 Minor groove

大きい溝 主溝 Major groove

B型DNA

DNA結合タンパク質は主に大きい溝を認識する)

Fig.7-6

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ヘリックス・ターン・ヘリックス(HTH)・モチーフもともと原核生物より見出されたが真核生物にも存在していることが明らかとなったβターン

Fig.7-13

αヘリックス

αヘリックス

大きい溝に入る

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ヘリックス・ターン・ヘリックスモチーフは最も一般的なDNA結合モチーフ

すべてのタンパク質は2個の識別ヘリックス(赤の円筒)がちょうどDNAらせん1巻き分(3.4nm)だけ離れている2量体としてDNAと結合する

Fig. 7-14

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ホメオドメインモチーフ(真核生物のHTHタンパク質の1種)

動物の発生時に決定的役割をはたすホメオティックタンパク質によく見出されたため命名されたが、事実上すべての真核生物で見つかっている。

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ジンク(Zn)フィンガー

HTHに次ぐ第二の重要なDNA結合モチーフ群構成成分に1個以上の亜鉛原子(Zn)があり、亜鉛を仲介とした1対のαヘリックスとβシートからなる単純な構造をとっている。

図9-12図9-12 Cys2His2ジンクフィンガー

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Cys2His2ジンクフィンガーは基本単位を繰り返す

大きな溝に巻きつくように3つのジンクフィンガーモチーフが繰り返す

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リボン・ヘリックス・ヘリックス・モチーフ

左右逆図9-14とDNA結合部位がαヘリックスではない数少ないモチーフ2本のβシートが大きな溝に入って結合する。細菌の調節タンパク質のいくつかに見られる。

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ロイシンジッパー

図9-16

大きな溝に入っている大きな溝に入っている

αヘリックス上の片側に並んだロイシン残基(球状に書かれている部分)の疎水結合により2量化するし、Y字型になった先端がDNAの大きな溝に結合する

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9.1.5 DNAとその結合タンパク質との相互作用

全ての区別が付けられる

区別が付かない

区別が付かない

Fig.7-8

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9.1.5 DNAとその結合タンパク質との相互作用

Fig.7-12

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9.2 転写開始におけるDNA-タンパク質相互作用9.2.1 RNAポリメラーゼ

DNAからRNAの転写を行う酵素 DNA依存性RNAポリメラーゼ

3種類ある。それぞれ8~12個のサブユニットからなる真核生物

RNAポリメラーゼI リボソームRNA (28S、5.8S、18SrRNA)RNAポリメラーゼII タンパク質遺伝子(mRNA)RNAポリメラーゼIII 転移RNA (tRNA) 5SrRNA その他

1種類のみ。α2、β、β‘、σの5つのサブユニットから成る。原核生物

σ因子は数種類β’

βσ

αα

1種類 真核生物型古細菌

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9.2.2 転写開始における認識配列原核生物のプロモーター構造

プロモーター(promoter) RNAポリメラーゼが結合する標的配列

大腸菌プロモーターコンセンサス配列

-35ボックス 5’-TTGACA-3’ -10ボックス 5’-TATAAT-3’

図9.17 大腸菌ラクトースオペロンのプロモーター

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大腸菌における転写の開始

図9.20

σ(シグマ)因子がー35領域の認識に関与

閉鎖プロモーター複合体-35ボックスの上流~ー10ボックスの下流の約60bpに形成される

開鎖プロモーター複合体-10ボックスのところに形成(-10はA=T塩基対が多いため開鎖しやすい)

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真核生物のプロモーター構造

RNAポリメラーゼの違いによりプロモーター構造は異なる転写開始点

図9.18

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真核生物のプロモーター構造

真核生物では、“プロモーター”という言葉は、遺伝子の転写開始に重要なすべての配列をまとめて表す。

コアプロモーター(core promoter)転写開始複合体が形成される場所

上流プロモーター要素(upstream promoter element)

コアプロモーターの上流に位置する1個以上の転写活性化因子の結合部位転写複合体のコアプロモーター上への集合を手助けする

RNAポリメラーゼIIが認識するプロモーター

TATAボックス (-25ボックス) 5’-TATAWAW-3’ [WはAまたはT]

イニシエーター(Inr)配列 5’-YYCARR-3’ [YはCまたはT、RはAまたはG]

+さまざまな上流プロモーター要素

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9.2.3 開始複合体の集合

転写開始の様式はRNAポリメラーゼの種類によらず基本的に同じ

RNAポリメラーゼがコアプロモーターに結合

閉鎖プロモーター複合体が転写開始点近くを開き、開鎖プロモーター複合体へ変化

ポリメラーゼがプロモーターから離脱(プロモータークリアランス)

図9.19

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ヒトのGTF(基本転写因子)の機能

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RNAポリメラーゼII開始前複合体の集合

最終的にCTDがリン酸化されることで転写開始

試験管内での再構成の順序で細胞内とは異なる可能性あり

図9.21

原核生物のRNAポリメラーゼ複合体との違い

各基本転写因子(GTF)が順序だって集合することで複合体を形成する。

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9.2 転写開始におけるDNA-タンパク質相互作用転写レベルの制御は遺伝子発現制御の第1の調節

第1転写開始段階

第2転写開始以降翻訳レベル翻訳後修飾

図9.22

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9.3.1 細菌における転写開始の調節原核生物における転写開始制御機構

構成的(恒常的)制御(constitutive control) (シグマ因子の制御はこちら)

・プロモーター構造が転写開始基本量を決める

・転写開始の基本効率強いプロモーターと弱いプロモーターの間に1000倍もの差が存在

調節的制御(regulatory control)

・調節タンパク質に依存する機構

・誘導物質がDNA結合タンパク質と複合体を形成するとDNAに結合できなくなり、RNAポリメラーゼが転写できる

・補助抑制因子がDNA結合タンパク質と複合体を形成するとDNAに結合できるようになり、RNAポリメラーゼの転写を阻害する

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原核生物のσ(シグマ)サブユニット

σ因子が変わると認識するプロモーター配列が変わる

図9.23

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原核生物のσ(シグマ)サブユニット2

シグマ因子はプロモーター配列の認識に関わり、転写開始後数個のRNAを連結したのちにコア酵素から外れる

Dojin news N0.094より

プロモーター配列はシグマ因子ごとに異なる

ゲノムサイエンスと微生物分子遺伝学(培風館)より

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調節的制御の例 ラクトースオペロンの制御

図9.24

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調節的制御の例ー大腸菌のトリプトファンオペロンの調節

リプレッサーの中には、誘導物質ではなく補助抑制因子に結合するものがある

図9.25

図2.20

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シスとトランス(重要な概念)

シス同一分子DNA上になければならない配列の関係プロモーターに対するオペレーターなど

トランス別のDNA分子に離れていてもOKな配列の関係lacOオペレーターに対するlacIリプレッサーなど

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9.3.2 真核生物における転写開始の制御

Fig.7-41 代表的な真核生物の遺伝子調節領域プロモーターは、転写基本因子とポリメラーゼが集合するDNA塩基配列である。調節配列は、遺伝子調節タンパク質が結合する部位であり、この結合によって転写開始に影響を及ぼす。これらは、プロモーターの隣接部位に限らず、そのずっと上流、あるいはイントロン内または遺伝子の下流にも位置することがある。これらの位置のいづれかに結合した遺伝子調節タンパク質はDNAループ形成により、プロモーターに集合したタンパク質群と相互作用できると考えられる。RNAポリメラーゼIIに転写されるすべての遺伝子について、プロモーターで集合する転写基本因子は似ているが、遺伝子調節タンパク質とその結合部位のプロモーターに対する相対位置は遺伝子ごとに異なる。

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真核生物の転写開始に関与する活性化因子

プロモーターの近くのDNAに結合した転写活性化タンパク質(アクチベーター)が基本転写因子の集合を容易にする。

Fig.7-44

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真核生物の転写開始で働く転写活性化因子

エンハンサー インスレーター内を活性化

インスレーターによって区切られる

通常の転写活性化因子

遺伝子の上流にある調節モジュールに結合し、その遺伝子の転写開始だけに影響する

エンハンサー

転写活性化因子の一種複数の遺伝子の転写に影響これらの範囲はインスレーターによって規定される

図9.26

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真核生物のメディエーターの役割

メディエーター 転写活性化因子のシグナルを転写開始前複合体に媒介するタンパク質でRNAポリメラーゼII転写開始前複合体に必須の要素

C末端

図9.27

RNAポリメラーゼIIのC末端ドメインをリン酸化しプロモータークリアランスを促進する

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エンハンセオソーム(enhanceosome)

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真核生物 ヒストン修飾とクロマチン再構成も転写活性化に関与

Fig.7-48Fig.7-45

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真核生物の転写開始を抑制する因子様々なタイプが知られている

C末端

A 競合的DNA結合B 活性化表面の遮蔽C 転写基本因子との直接的相互作用

A

B

C

D

E

D 抑制的クロマチン再構成複合体の動員E ヒストンデアセチラーゼの動員

Fig.7-49

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真核生物 転写開始を活性化と制御の両方

プロラクチン遺伝子および成長ホルモン遺伝子の上流標的部位に結合しているPit-1転写活性化因子がもつPOUドメインの立体構造

Pit-1はDNA結合部位の配列によって転写開始を活性化することも制御することもできる

図9.29図9.28

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