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産業組織論(企業経済論) 第11回 井上智弘 2010/6/23 1 産業組織論 第11回

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産業組織論(企業経済論)

第11回

井上智弘

2010/6/23 1産業組織論 第11回

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講義の資料は,授業終了後にホームページにアップしている.

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本日の内容

価格差別

» 第1種価格差別

» 第3種価格差別

» 第2種価格差別

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価格差別

企業が同一の財・サービスを異なる価格で販売することを価格差別という.

価格差別の分類

» 第1種価格差別(完全価格差別)

消費者を財・サービスに対する選好に応じて個人別に分け,それぞれに異なる価格を設定する.

» 第2種価格差別

消費量に応じて異なる価格を設定する.

» 第3種価格差別(グループ別価格差別)

消費者をグループに分け,それぞれに異なる価格を設定する.

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価格差別

価格差別を行うことで,企業は単一の独占価格をつけるよりも,高い利潤を得ることができる.

価格差別が成功するための条件

» 市場支配力があること

» 消費者間での財の転売がないこと

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第1種価格差別

各消費者の留保価格に応じて個別に販売することが可能であれば,個々の消費者に異なる価格をつける完全価格差別を行うことができる.

完全価格差別によって,消費者余剰をすべて利潤として吸い上げることができる.

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第1種価格差別

2010/6/23 産業組織論 第11回 7

MC

D

OQ

P1

生産者余剰(利潤)P2

P3

消費者1の留保価格

消費者3の留保価格

消費者2の留保価格

最後の消費者の留保価格 = 限界費用

1 2 3 QPD

P

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第1種価格差別

完全価格差別の結果,消費者の財に対する限界評価が企業の限界費用と一致する数量まで財が供給されるため,供給量は完全競争市場と同じで社会的に効率的な水準になる.

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第1種価格差別

現実には,企業は消費者の留保価格を完全に識別することは困難である.

したがって,現実に価格差別を行う方法としては,

» 消費者をいくつかのグループに分断する.

→ 第3種価格差別

» 消費者に対して同じ価格を提示するが,消費量によって価格を変更する.

→ 第2種価格差別

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需要の価格弾力性が異なる消費者グループに対して,異なる価格で販売する.

» 弾力性の高いグループには安く販売し,弾力性の低いグループには高く販売することで,すべての人に同じ価格で販売するよりも高い利潤を得ることができる.

独占企業は,各グループ市場 i において,MRi = MC が成立する価格を設定する.

» どの市場に財を供給する場合でもMCは変わらない.

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第3種価格差別

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第3種価格差別

ラーナー指数と需要の価格弾力性(εi)の関係から,各市場で が成立する.

より,需要の価格弾力性が高いグループほど,価格は低くなる.

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iii ε1PMC)(P =−

MC)ε1(1P ii =−

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第1グループ市場 第2グループ市場

M1P

M2P

M1Q M

2QO Q2Q1

P

MCMC

弾力性が相対的に高い

相対的に低い価格を設定

弾力性が相対的に低い

相対的に高い価格を設定

D1D2

MR1

MR2

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M1P

M2P

M1Q M

2QO Q2

P

MC

D2

MR1

MR2

Q1

MC

D1

MQ

MP

集計された需要曲線

集計された限界収入曲線

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問題

2つの市場(市場1,2)の逆需要関数が,

市場1: P = 100 - Q

市場2: P = 80 - (1/2)Q

で,独占企業の費用関数が C(Q) = 20Q のとき,

① 個別の市場ごとに価格を設定できるときの各市場の価格,企業の利潤,総余剰はどうなるか.

② 2つの市場で同じ価格を設定しなければならないときの価格,企業の利潤,総余剰はどうなるか.

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第2種価格差別

消費者を個人やグループで識別するのが困難な場合に,消費者の選択する購入量によって価格差別を行うという方法がある.

その1つの例として,二部料金制がある.

» 支払額=固定料金(基本料金)+従量料金(使用料金)

» 水道,ガス,電気,電話などの料金

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二部料金制

あるスポーツジムは,非会員は1日1,000円で施設が利用できるが,会員であれば1日500円で利用できる.ただし,会員になるには年会費60,000円を支払わなければならない.

年会費が固定料金,1日の使用料金が従量料金である.

消費者は,会員・非会員を選択する.

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二部料金制

このような料金システムの場合,ジムをたくさん利用する消費者は,会員になった方が得である.

では,どれだけ利用すると,得になるのか?

年間の利用日数を Q 日として,会員・非会員それぞれの場合の年間支払額を計算して比較する.

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二部料金制

会員の場合:

年間支払額(Tc)=60000+500Q

非会員の場合:

年間支払額(Tn)=1000Q

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二部料金制

年間120日より多く利用する消費者は,会員になった方が得である.

1日当たりの平均料金は,

» Tc/Q = 60000/Q + 500

» Tn/Q = 1000

» → Q = 120 のとき,Tc = Tn となる.

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二部料金制

会員になった場合,利用日数が増えれば増えるほど,平均料金は安くなる.

たくさん利用する消費者ほど,会員になろうとする.

スポーツジムは,需要の高い消費者に対しては,相対的に低い従量料金を課している.

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二部料金制

需要の高い消費者に低い従量料金を課すことで,企業にメリットはあるのか?

消費者は,留保価格が従量料金と等しくなる点まで消費するため,従量料金を低く設定すると,需要量が増え,消費者余剰が大きくなる.

この消費者余剰を固定料金によって吸い上げることで,高い利潤を得ることができる.

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逆需要関数が P(Q) = 2000 - 10Q,企業の費用関数が C(Q) = 500Q のとき(つまり,MC = 500),

① 独占企業が (a) 単一の独占価格を設定する場合の利潤と,(b) 従量料金500(= MC),固定料金60,000の場合の利潤を比べよ.

② ①の (a) と (b) それぞれの消費者余剰と総余剰を求めよ.

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問題

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二部料金制

単一の独占価格を設定する場合よりも総余剰が増加する.

» 従量料金が独占価格よりも低く設定されるため,限界費用との差が小さくなり,生産量が増加する.

» 消費者余剰が固定料金として企業に吸い上げられたとしても,総余剰は変わらないため,総余剰は増加する.

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