当病棟で発生した褥瘡と褥瘡リスク評価スケールと …G-1-1...

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G-1-1 当病棟で発生した褥瘡と褥瘡リスク評価スケールとの関連性 山田温泉病院 療養病棟 たじま ゆういち ○田島 佑一 (看護師) どれだけ褥瘡発生率を抑えていくことができるかということは、看護師の抱える重要な課題のひとつである。当 院では、褥瘡発生率の低下を図るため、平成 26 年度の療養型病棟入院患者 45 名を対象に、ブレーデンスケール OH スケールの各評価項目が、褥瘡発生とどのように関係していたかを調査した。その結果、総合点数では明 確な差が無かったものの、「病的骨突出がある」と判定された患者と、「自力体位変換」ができる、あるいはどち らでもないと判定された患者に多く褥瘡が発生していた。この結果もとに、スケールの使用について、総合点数 と併用、あるいは代替で、個別指標を組み合わせた危険度判定ができないか検討を行った。

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G-1-1 当病棟で発生した褥瘡と褥瘡リスク評価スケールとの関連性

山田温泉病院 療養病棟

たじま ゆういち

○田島 佑一 (看護師)

どれだけ褥瘡発生率を抑えていくことができるかということは、看護師の抱える重要な課題のひとつである。当

院では、褥瘡発生率の低下を図るため、平成 26 年度の療養型病棟入院患者 45 名を対象に、ブレーデンスケール

と OH スケールの各評価項目が、褥瘡発生とどのように関係していたかを調査した。その結果、総合点数では明

確な差が無かったものの、「病的骨突出がある」と判定された患者と、「自力体位変換」ができる、あるいはどち

らでもないと判定された患者に多く褥瘡が発生していた。この結果もとに、スケールの使用について、総合点数

と併用、あるいは代替で、個別指標を組み合わせた危険度判定ができないか検討を行った。

G-1-2 褥瘡発生0を目指して - 褥瘡対策委員会の取り組み -

初富保健病院 看護部

ひろせ みゆき

○広瀬 みゆき (看護師), 渡部 操子, 室井 美代子, 小島 英子

1.はじめに

褥瘡対策委員会では平成 19 年度から「褥瘡発生0」を目指して活動している。それまでは「褥瘡治癒」の視点

でケアする傾向にあったが「患者に苦痛を与えてはならない。褥瘡は作らない」という精神で委員会活動を行っ

てきた。要因分析を行い次年度の活動へと結びつけた。

その結果 19 年度の褥瘡推定発生率は 2.82%だったが、26 年度には 0.99%まで低下することが出来た。すべて

の職員に「褥瘡は作らない」という精神と考え方が根付いてきた結果だと考える。

ここに委員会の特徴的な取り組みを発表する。

2.活動経過(平成 23 年度~26 年度まで)と次年度への課題 平成 23 年度の取り組み ①介護職を対象とした研修1)褥瘡のメカニズムの講義2)体圧分散の実技

②看護職者、リハビリ療法士を対象の上記1)2)の実施

課題:中途入職者への指導が不足している

平成 24 年度 ①中途入職者を対象とし 23 年度研修1)2)の実施

②23 年度研修終了者の希望者に対して再教育

課題:重症患者に発生する傾向があることがわかった

平成 25 年度 ①院内研究発表会において 24 年度褥瘡推定発生率と委員会活動を報告<u>②担当師長が重症患者をラウンドしケアの実際を直接指導

課題:予防プランの不足(ケアのアルゴリズムの活用不足)

平成 26 年度 ①委員が当該病棟において強いリーダーシップを発揮

②委員が担当師長とタイムリーに相談

③担当師長が追認を繰り返した

④院外講師による研修開催

課題:予防ケアプランの不足

3.褥瘡発生率の推移

平成 23 年度 2.27%、24 年度 1.25%、25 年度 1.14%、26 年度 0.99% 4.考察及びまとめ

褥瘡を作らない為には、スタッフひとり一人に褥瘡予防の知識と技術の徹底を図ることが不可欠と考え、意図的

に研修指導を実施したことは成果があったといえる。推定発生率の低下は職員にとって大きな喜びとなり「発生

0」を達成できるという情熱にも変化してきている。

その為には「予防ケア」の徹底が必要であることが明確となった。

G-1-3 患者の安眠を目指した夜間体位交換回数減少の取り組みとその評価 医療法人社団浅ノ川 千木病院 看護部

やまなか ともこ

○山中 知子 (看護師), 中野 祐子, 金丸 茜, 糸野 英恵, 奥村 里果, 田端 恵子 目的:当院は療養型病院で、寝たきり患者が約 8 割を占める。これらの患者に対し、褥瘡発生予防のために 2~3 時間毎の体位変換を行ってきた。しかし一方で、夜間の体位交換が患者の安眠を妨げている可能性があると考

えたため、夜間(22~4時)において、体位交換の回数を 2 回減らす取り組みを開始し、取り組み前後 6 カ月間

の褥瘡発生率、発生部位等について比較、評価した。 方法:対象者は褥瘡を保有しない、ターミナル期でない、強度の拘縮がない、かつ体圧分散寝具を使用している

日常生活自立度 C2 ランクの 350 名。取り組み前後 6 カ月間の褥瘡発生率、発生部位、深達度の割合を算出した。 結果:取り組み前 6 カ月間の褥瘡発生率は 4.1%、発生部位は仙骨 23%、肩・足部が 13%、大転子が 8%、深さ

では d2、48%、D3、43%、D4、8%であった。取り組み後 6 カ月間の発生率は 3.5%、発生部位は肩 22%、仙

骨・腸骨 17%、大転子 15%であった。深さでは d1 が 10%、d2 が 62%、D3 が 27%であった。 考察:取り組みの前後で大きな差はないが、褥瘡発生率は低下した。発生部位では取り組み後には、腸骨、肩の

発生が多く、これには夜間の体位が側臥位であったことが影響していると考える。深さでは取り組み後において

d2 の割合が増加し、D3 の割合が低下しており、これは仙骨部の褥瘡発生が減少したためと考える。まとめ:患

者の安眠を目的に夜間体位交換の回数を減らす取り組みを行ったが、開始後も褥瘡発生率は増加しなかった。安

眠の評価に関しては今後の課題である。

G-1-4 160 円で作る簡易(使い捨て)褥瘡ポケットライトのレシピ 洞爺温泉病院

たいら ゆずり

○平 木由里 (看護師), 西村 知恵, 佐藤 絹子, 岡本 明子, 南 翔, 本間 友香, 森岡 まゆみ, 中谷 玲二 【はじめに】 褥瘡のピンホール開口部のポケットを測定するためには、従来、綿棒や鑷子・紙スケールが使用

されてきた。これらの方法は、盲目的操作から褥瘡ポケット内部の組織を損傷させる危険がある。その為、褥瘡

のピンホール開口部ポケット計測には、真田・宮崎(2004)が開発した P ライト®が有効である。しかし、経済的

問題や可及的対応の必要性から P ライト®を購入できない、もしくは購入まで待てない等々の理由が各家庭や施

設・病院には存在する。そこで今回、安価で簡易褥瘡ポケットライト(以下、ポケットライト)の作成を試みた

ため、そのレシピを紹介する。 【倫理的配慮】 今回作成したポケットライトは、2004 年に真田弘美氏とメディカル越谷の宮崎氏が共同開発し、

既に製品化されている P ライト®を参考にした。そして、両氏と下記 3 点の約束を交わした上で研究と発表の許

可を得た。①作成したポケットライトは、決して販売や業にすることはない。②作成したポケットライトは、個

人または、施設・病院内での使用とし、その使用責任は個人または、施設・病院責任者が負う。③作成したポケ

ットライトの使用に関しては、患者・家族へ説明し、同意を得た上で使用する。 【作り方】①LED 電球のアソードとカソードを見分け、その上でどちらかに抵抗をつけ配線する。②配線は接

続部が露出しないように熱収縮チューブで保護する。③配線がついた LED 電球をスパイラルチューブに通す。

④LED 電球先端から 0.5 ㎝の部分ごとにマジックで印をつける。⑤ビニールテープでスパイラルチューブを覆う。

⑥配線付電池ケースに繋げでき上り。 【結果】市販されている物を使用し 160 円で簡単にポケットライトを作成することができた。このポケットライ

トを使用することで、開口部がピンホールのポケット褥瘡の測定が容易になり、各所で速やかにケア・処置が行

うことが可能になる。

G-1-5 仙骨部褥瘡治癒が遷延した症例 ―除圧動作の視覚的フィードバックを実施して― 1 札幌西円山病院 リハビリテーション部理学療法科, 2 札幌西円山病院 リハビリテーション部

えんそう あきこ

○圓増 亜希子 1 (理学療法士), 竹林 康弘 1, 三谷 有司 1, 伊藤 隆 2 【はじめに】 仙骨部の褥瘡治癒が遷延している症例に対し,車椅子上の除圧動作における視覚的動作フィードバックを行なっ

たことで,褥瘡の改善と社会意欲が向上した症例について報告する. 【症例】 70 代男性.診断名は脊髄梗塞(T11).BMI 17.4.ALB2.9 .ASIA 上肢筋力(25/25)下肢筋力(4/2) 痛覚(45/45) 触覚(45/45). FIM 60/120 点(運動 28,認知 32)生活自立度ランク C.回復期病棟入院後,車椅子乗車・ギャッ

ジアップ機会の増加に伴い当院入院前から発生していた褥瘡が悪化した.モチベーションは低く臥床傾向であっ

た. 【方法】 ロホクッションを敷いた車椅子上で除圧動作を測定.プレディアセンサーを使用し,仙骨突出部(褥瘡部)の縦

方向の体表面ずれ力(以下,剪断力)を測定した.動作方法は動作修正前と修正後に評価.褥瘡部写真・Design-R で経過をみた.さらに,剪断力の数値と修正した動作を撮影して症例へ視覚的なフィードバックを行った. 【結果】 初期の除圧動作は剪断力が 13N であった,その後,動作の修正には除圧動作を前上方に臀部を挙上させる回転

型に変更し,着座時は着座位置を深めに決め,位置がぶれないよう臀部を降ろすことを指導した結果,剪断力が

13→7N へ減少した.さらに動画と剪断力の数値による本人へのフィードバックを行った結果,三か月後には,

Design-R が 17→4 点へ減少し,全身状態・離床時間・車椅子乗車頻度が向上した. 【考察】 除圧動作に関する着座後のずれを測定で明らかにし,本人に視覚的なフィードバックをすることとした.結果と

して,患者自身のイメージと実際の動きの相違を実感することができ,加えてチームによる環境設定・処置方法

の変更を続けたことで褥瘡の改善が得られた.それによりモチベーション向上し,長時間の外出や離床活動に取

り組むことができ,社会参加意欲の向上につながったと考えた.本症例を通じて,視覚的なフィードバック効果

の重要性が示された.

G-1-6 座位圧迫によるトラブル防止に取り組むためのリスク要因を把握し看護を考える 石川県能美市緑が丘 11-71 看護局

さかた みのり

○坂田 美紀 (看護師), 中田 君子, 藤元 かおる

Ⅰはじめに 医療療養病棟では、患者の褥瘡新規発生率が 2~3%と高く、特に車椅子乗車の患者に集中した。そのため車椅

子乗車でリスク要因となる因子は何かについて調査し、分析する事で、特定の観察ポイントを見出し、予防的介

入につなげることが出来たので報告する。 Ⅱ研究方法 調査期間:平成 26 年 11 月~2 月 調査方法:車椅子乗車またはリクライニングチェアーに乗車している 21 名の患者に体圧測定器にて座面の接触

圧を測定。褥瘡危険因子評価表に当てはめ褥瘡リスクの有無を確認。疾患も踏まえ、座位保持する時に危険な因

子を特定し分析する。 Ⅲ結果 1.褥瘡リスク要因が多いほど褥瘡になりやすい事が明らかであった。 2.褥瘡のリスク要因が重なる主な疾患としては、脊髄損傷や神経難病といった痛みの知覚が乏しい患者に起こ

りやすく、また男性に多かった。 3.褥瘡なしの群についてもリスクは高く、何らかの対策は必要であることがわかった。 Ⅳまとめ 今回のリスク要因を調査・分析し、当病棟では、神経難病や脊髄損傷の患者が 4 割を占め褥瘡リスクが高い事

は明らかであり、その他の患者においても褥瘡リスクが高い事が改めて理解できた。疾患による内的要因や体圧

などは、外見ではアセスメントに限界がある。今後は、体圧、BMI、筋緊張不均衡の 3 項目と、痛みの認知機能

などを観察ポイントとし、スタッフへ見える化し、注意を呼びかける必要がある。具体的には定期的に、ブレー

デンスケールで評価し、車椅子に接触圧を測定とブレーデン評価の危険度を数値化したものを明記して、見える

化する事で、その場で素早い対応が、誰でも同じようにできる予防対策として、徹底できると考えている。

G-2-1 体位交換の見直し ~体圧分散式マットレスを導入して~ 医療法人 慈孝会 福角病院

やまさき しほ

○山崎 志保 (介護福祉士), 山田 希望 はじめに 褥瘡予防において 2 時間毎体位交換が必須とされてきた。同一体位での支持面に圧力が加わり組織の損傷が現れ

ることで発赤が出現すると言われている。今回体圧分散式マットレスを導入し 4 時間の間隔で体位交換を実施し

ても体圧が上昇せず、患者の安眠と職員の介護負担軽減を図れた事を報告する。 方法 期間平成 27 年 4 月 1 日から 2 ヶ月間 対象 拘縮、褥瘡、骨突出がある患者 5 名 ① 体圧分散式マットレス「NEXUS R」を使用し、体位交換表は 3~4 時間毎で作成した。 ② 褥瘡チェック・発赤の有無・皮膚状態観察ノートを作成し、褥瘡は処置時にチェック、発赤の有無・皮膚

観察はオムツ交換、入浴時に行った。 ③ 携帯型接触圧力測定器(パームQ)で、仰臥位時は仙骨部、側臥位時は大転子部で測定した。以前の低反

発マットレスは 2 時間で側定し、体圧式分散式マットレスは 4 時間で測定した。 ④ 職員アンケートを行い感想を集めた。 結果・考察 以前の低反発マットレスでは2時間毎体位交換で体圧値が仰臥位では平均 34.0mmHg、側臥位平均 40.0mmHgで褥瘡発生危険値の 32mmHgを超えていた。 体圧分散式マットレスでは体圧値が4時間で側臥位平均 29.9mmHg、仰臥位平均 30.9mmHgであった。使用

始めた 7 日目、1 名の患者に仙骨部に発赤が見られた為に体位交換表を見直し、仰臥位禁の体位交換表作成する

ことで発赤はなくなった。また褥瘡の悪化も無かった。それ以後全員が発赤見られておらず 4 時間の体位交換で

も褥瘡発生を予防する事が出来たと思われる。また職員のアンケート結果から介護の負担を軽減でき、患者と接

する時間が増えたことが分かった。 まとめ 私達の病棟ではエアマットの使用者は8割を超えている。体位交換の実施に時間をとられていたが体圧分散式マ

ット導入により夜間の体位交換が減り患者さんの安眠を促すと共に職員の介護負担の軽減にも繋げる事が出来

た。

G-2-2 仙骨部の重度褥創がチームアプローチにて改善した1症例 あいちリハビリテーション病院 リハケア部

やつづか りえこ

○八塚 理恵子 (作業療法士), 渡辺 浩司, 奥谷 弓子, 相川 晃司, 今井 磨美, 中澤 信 【はじめに】今回、基本的動作能力の低下、病的骨突出、関節拘縮、栄養状態が低下しており、仙骨部に重度褥

創がある 92 歳の症例に対し、医師、管理栄養士に加え、理学療法士、作業療法士、看護師、介護士(以下、病

棟スタッフ)の間で情報共有を行い、統一した対応をとることで、活動性を維持しつつ、褥瘡の改善を図ること

ができたため報告する。 【症例】92 歳女性、平成 11 年に左 TKA 施行後、活動性が徐々に低下。平成 17 年に尋常性乾癬で入院中に褥瘡

が発生し、それ以来褥瘡の寛解と増悪を繰り返していた。 入院時 Design-R:47 点 潰瘍サイズ:46.75 ㎠ 【方法】週に一度計測している Design-R・潰瘍サイズと症例への介入内容を照らし合わせ、褥創の改善に関与

したと思われる介入内容を検討した。 【結果】潰瘍サイズが大きく改善された時期に行っていた介入内容として、塗布する軟膏の変更、病棟スタッフ

間での移乗方法・除圧方法の統一が行われていた。 入院時 Design-R:47 点 潰瘍サイズ:46.75 ㎠ 3 ヵ月後:Design-R:31 点 潰瘍サイズ:18 ㎠ 【考察】今回、本症例の褥瘡に対し適切な褥創処置と管理、病棟スタッフ間での情報共有、褥創の状態に合わせ

た移乗方法・除圧方法の検討と介助方法の統一を実施できたことが、本症例の活動性を維持しつつ、褥瘡の改善

に大きく関与したのではないかと考えられる。

G-2-3 円背患者に疼痛緩和シートを使用した事例について

~シートを使えば『なぁ~ん、痛ないちゃ‼』~

島田病院 リハビリ科

いせろ まさえ

○伊勢呂 正恵 (作業療法士), 城戸 雅子, 木村 庸子, 酒井 春行

【はじめに】

当院では、標準型の車椅子を使用している患者がほとんどである。体に合っていない車椅子に、長時間乗車する

ことは苦痛ではないかと考えた。そこで、長時間乗車している円背患者に対し疼痛緩和シート(以下シート)を使

用したので報告する。

【研究方法】

期間:平成 26 年 9 月~平成 27 年 3 月 対象:1回の乗車時間が平均 1 時間以上の円背患者 2 名(A氏:86 歳女性 B氏:83 歳女性) 方法:市販のバスマット 2 種類(ソフト・ハード)を使い基本形のシートを作成。対象者の背部と座り方に合わせ、

形状と角度を調整。聴取にて座り心地・疼痛の有無、写真撮影・目視にて背部の発赤・状態を確認。

【結果】

症例A:乗車中は読書・TV鑑賞・雑談などで過ごし、最長で 2 時間以上になることもある。胸椎部の発赤が悪

化し、痛み・滲出液あり。そのため、乗車時は苦痛の表情が多くなり、乗車時間が短縮する。シート使用開始直

後より、痛みが軽減し乗車時間が延長し始める。10 日後には滲出液・発赤軽減、痛みの訴え無くなる。1 か月後、

滲出液・発赤が消失する。

症例B:乗車中はTV鑑賞・雑談・軽作業などで過ごし、最長で 3 時間以上になることもある。胸腰椎部に発赤

と疼痛がありシート使用開始。形状と設置条件を数回変更。乗車時間に変化なし。胸椎部は改善するも、座位姿

勢の変化と共に腰椎部の発赤位置が変化する。その都度調整し、7 か月後、疼痛・発赤が消失する。 【考察】

シートの形状がバックレストと脊柱の突起部の間に空間を作ることで除圧し、シート全体が背部全体を支持した

ことで体圧を分散した。このことが、褥瘡・発赤・疼痛の改善につながったと考える。シートは誰にでも作成・

設定が簡単で、同じ状態を保持・継続出来たことが短期間での改善につながった。また、普段の座位姿勢に近い

状態にしたことで、楽に長時間乗車でき疼痛前の生活スタイルを維持できた。

G-2-4 褥瘡周囲皮膚の弱酸性洗浄剤による褥瘡治癒への効果の検証

青森敬仁会病院 看護部

おがさわら じゅん

○小笠原 潤 (看護師), 西塚 香織, 山口 瞳, 大下内 敏子

【目的】褥瘡予防・管理ガイドラインには、褥瘡治癒促進のために、褥瘡周囲皮膚は弱酸性洗浄剤で洗浄を行っ

てもよいとあり、褥瘡周囲の弱酸性洗浄剤での洗浄を行うことにより、褥瘡治癒への影響を検証する。

【方法】対象:仙骨部に褥瘡があり、患者家族から同意を得られた患者。調査方法:褥瘡周囲の皮膚を、弱酸性

洗浄剤で洗浄し軟膏処置を行った。弱酸性洗浄剤は泡立てネットを用い泡立て、褥瘡周囲の皮膚へ塗布後、微温

湯で洗い流した。その際、創部に洗浄剤成分が残らないよう留意した。褥瘡部位の撮影及びDESIGN-Rの結

果を比較した。倫理的配慮:調査施設の病院長はじめ倫理委員会の承認を得て実施。患者家族には、文書、口頭

による研究内容、途中辞退できることの説明をし同意を得た。

【結果】対象は仙骨部位に褥瘡がある 40 代から 80 代の患者 4 名。平成 26 年 3 月と平成 26 年 6 月のDESI

GN-Rの結果、A氏は、大きさ、肉芽形成、壊死組織で改善がみられた。B氏は、滲出液、炎症、肉芽形成で改

善がみられた。C氏は、大きさ、ポケットで改善がみられた。D氏は、肉芽形成で改善がみられたがポケットで

は悪化していた。

【考察】A氏は、4月より栄養剤をアルギニン入りの栄養剤へ変更した事も改善に繋がったと思われる。C氏は、

食事摂取量にむらがあったが、食形態を変更した結果、喫食状況が良くなり改善に繋がったと思われる。B氏は、

糖尿病により血糖コントロール不良であったが、洗浄効果により改善されたと思われる。D氏は、全身状態の悪

化により食事量低下や離床時間の減少などが影響したと考えられる。いずれも、栄養状態や全身状態により改善

の度合いに違いはあるが、弱酸性洗浄剤での洗浄により創周囲の清潔が保持され、創治癒促進に繋がったのでは

ないかと考える。

G-2-5 難治性褥瘡に対する栄養補助飲料の効果

1 公益社団法人 出水郡医師会立第二病院 看護部, 2 公益社団法人 出水郡医師会立第二病院 診療部,

3 公益社団法人 出水郡医師会立第二病院 診療技術部

しまや さおり

○島屋 さおり 1 (看護師), 辻口 聡美 1, 牧尾 直子 3, 堀口 真美子 1, 野上 貴美子 2, 田辺 元 1

<はじめに>

基礎疾患や低栄養による褥瘡の中には、栄養療法、徐圧、局所療法などを行っても治癒困難な事例が存在する。

今回、治癒の遷延した糖尿病を有する難治性褥瘡に対し、従来の対応に加えコラーゲンペプチドを含有した栄養

補助飲料を使用し、治癒に至った症例を経験したので報告する。

<事例紹介>

K 氏 50 歳 男性 診断)Ⅰ型糖尿病(インシュリン使用)、低酸素脳症(気管切開)

仙骨部褥瘡(ステージⅣ:d2.e3.s3.i0.g0.n0 計 6) 褥瘡対策)経管栄養(アイソカル2K 1400Kcal+ペムノン) プライム DX マット使用し、2 時間毎の体位変換実施 2 回/週:入浴後の保湿や毎日の創部洗浄後ゲーベン処置 褥瘡経過)入院後1ヶ月でポケット形成し、2ヶ月目に褥瘡部ポケット切開施行。その後、ステージⅣの状態が

6ヶ月まで続いた。入院後7ヶ月目にコラーゲンペプチド 10g を含有する栄養補助飲料(CP10)を投与。投与

開始後 1 ヶ月で仙骨部褥瘡は治癒した。 <結果・考察>

褥瘡治療には高エネルギーが必要であり、必要栄養量は基礎エネルギー(BEE)の 1.5 倍以上の補給が勧められ

ている。しかし、糖尿病患者では高エネルギー投与が糖尿病悪化やインスリン療法の困難性に繋がりかねない。

K 氏の場合は、Ⅰ型糖尿病で血糖コントロールに難渋していたため高エネルギー食の投与は躊躇された。 そのため従来の褥瘡対応処置に加え、新規の栄養補助飲料を使用したところ治療期間の短縮につながった。糖尿

病を有するステージⅣ重症褥瘡患者に対し、コラーゲンペプチドの豊富な栄養補助飲料の投与が、有効であるこ

とが示唆された。ただし、極僅かのカロリー上昇であるものの、血糖の上昇はみられている。

G-2-6 早期からのアルギニン含有濃厚流動食の使用により褥瘡の改善が図れた症例

熱川温泉病院 栄養科

たかはら ともこ

○高原 智子 (管理栄養士), 山田 優子, 水野 真佑

【はじめに】今回、ステージⅣの褥瘡を持って入院した患者さんに対して、早期に改善を図る為、アルギニン含

有濃厚流動食(以下アイソカル・プラスEX)を選定し、状態に応じて調整対応することで栄養状態が向上、褥

瘡完治に至った症例を報告する。

【対象患者】84 歳 男性。入院時の診断名は肺炎後廃用症候群で、臀部にステージⅣの褥瘡があった。

【経過及び結果】 入院時の栄養状態はAlb2.0、BMI16.7 と栄養状態不良。前施設で褥瘡が発生し、当院

入院時には 13×13cmのステージⅣの褥瘡であった。栄養科で主に使用している栄養剤にて 900Kcal から投与

を開始。それと並行して病棟での処置(2回/日の保清・軟膏)、毎週専任医の褥瘡回診、デブリードマンを実

施した。その後、月 1 回の褥瘡委員会により栄養状態改善を図る目的でアイソカル・プラスEXの使用を検討、

担当医師に相談し 1200Kcal から投与開始となった。入院から2か月後の採血では、Alb3.2、創部 10×7cm

へ改善を示した。翌月にはリハビリテーションが開始され、離床やベッド上でのポジショニング評価、直接嚥下

練習が始まった。さらに栄養投与量を 1350Kcal まで増やし創部面積が 8×7cmまで減少した。入院より7か月

後の褥瘡回診において完治。栄養状態はAlb3.7、BMI20.0 まで向上することが出来た。

【考察】当院では、褥瘡治療を目的とする栄養剤の導入を行っていなかったが、今回、使用・調整する事によ

り良質なたんぱく質・アルギニン・微量栄養素が確保され早期から褥瘡の改善効果が現れたと考えられる。

【今後の課題】褥瘡を有する患者さんだけでなく、予防に重点を置いた栄養管理により、褥瘡発生のリスクを

減らせるような取り組みを、管理栄養士はチーム医療の一員として積極的にアプローチをしていきたいと思いま

す。

G-3-1 よもぎのチカラ 新所沢清和病院 看護部

いわぶち まこと

○岩渕 誠 (介護職員), 櫻井 みどり, 斎藤 洋子, 松瀬 育代 【はじめに】 当院は内科220床、精神科240床、計460床の長期療養型病院であり、当病棟は内科病棟のため、寝たき

りの患者様が多い。また、布おむつ使用であり、肌トラブルや臀部の発赤は多い。それらに対し、様々な薬物療

法を行ってきたが一時的な改善にとどまっている。そこで、今研究では近年、目が向けられてきているよもぎに

焦点を当て、臀部の発赤に対し、どのような効果が得られるのか検証していく。 【内容】 対象者は10名。よもぎを煮出したものをジェル状にし、臀部に塗布する。 【方法】 以下のように各パターンに分ける 1)よもぎのみ 2)よもぎ 4 倍希釈 3)よもぎ 4 倍希釈+ワセリン 各パターンを 2 週間ごとに評価し、4 週間を一区切りとする。評価の方法として、オリジナルのスケールを作り、

施行前に、写真を撮り軽度、中度、重度の三段階に分け、評価の基準とした。 【結果】 各パターンとも、差異はあるものの、改善が見られている。特に3)では 4 週間毎の評価において全員の発赤が

消失している。 【考察】 1)では、改善傾向が見られることから有効性は証明できたが、持続性があまりなかったのではないかと考えら

れる。2)では、回数多く塗布していくことで効果の持続が見られ、消失改善につながったのではないかと考え

る。3)については、薬物療法と掛け合わせることにより、臀部にとどまる時間を長くすることに成功し、効果

を最大限臀部に届けることができたと考える。また、よもぎ使用終了後の現在においても、患者様の肌トラブル、

もなく、肌質の変化も見られるため、よもぎのチカラの継続性があるのではないかと考える。 薬物療法は慢性的な発赤や湿潤状態だと効果を得るのが難しいとされる。その中で、薬物療法と非薬物療法の効

果を最大限発揮できたのではないかと考える。

G-3-2 リンゴ酢を用いたハーフビネガー療法の検証 ~オムツ着用患者のスキンケア~ 村瀬病院 看護部

きまた ゆか

○木全 祐香 (看護師), 笹尾 鈴夏, 並木 彩加, 森 和歌子 【はじめに】 高齢化社会の進展に伴い、介護療養型医療施設の患者の年齢、要介護度も高くなりオムツを着用することが多

くなってきている。現場ではオムツ着用によるスキントラブルが問題となっている。しかし、現在のケアでは治

癒に至らない場合がほとんどである。そこで、わたしたちはこれらの患者に対して先行研究をもとにしたスキン

ケアの効果を検証した。 【目的】 オムツ着用によるスキントラブルのある高齢患者に対してリンゴ酢を用いたハーフビネガー療法の有効性を検

証すること。 【方法】 ・対象者はオムツ着用によるスキントラブルがある高齢患者 4 名とした。 ・研究期間は平成 26 年 10 月~11 月とした。 ・ケア方法は 1 日 2 回患部を洗浄した後、1 対 1 の水で薄めたリンゴ酢を患部に塗布した。 ・評価方法は研究者で作成した「炎症評価スケール」を用いた。 ・倫理的配慮は研究の目的・方法を対象患者や家族に口頭で説明し、同意を得た。 【結果】 対象者全てのスキントラブルは 4 週目頃から改善し、6~7 週間で治癒に至った。 【考察】 今回、高齢者の皮膚の状態や生理機能に視点をおき、リンゴ酢を用いたハーフビネガー療法の検証をおこなっ

た。その結果、対象者全てのスキントラブルが治癒した。中本ら(2004)は、「リンゴ酢は質の良い自然酢で酸

を多く含み、抗炎症作用、皮膚代謝促進作用をもつ」(p.1219)と述べている。このことからも、リンゴ酢は殺

菌効果だけではなく、排泄物などの刺激で損なわれた高齢患者の皮膚を正常な機能に戻し、細菌感染の予防に有

効なはたらきをするのではないかと考えられる。 【結論】 オムツ着用によるスキントラブルがある高齢患者に対してリンゴ酢を用いたハーフビネガー療法は有効であっ

た。

G-3-3 高齢者のスキンケアについて ~抗菌作用のある洗浄剤を使用した効果~ 医療法人社団永生会 永生病院 看護部

たかはた しろう

○高畑 司郎 (介護福祉士) 【はじめに】 臀部に皮膚トラブルがある患者の多くは、症状が長期に渡って繰り返される。スキンケアの方法を変更し症状の

改善に取り組んだので報告する。 【目的】 尿便汚染による臀部の発赤・ただれなどの皮膚トラブルを改善する。 【方法】 長期間臀部に皮膚トラブルのある患者 3 名を選出。1 日 1 回入浴または陰部洗浄時に、薬用抗菌石鹸コラージュ

フルフルを使用して 1 か月半スキンケアを実施した。 【結果】 患者 1:尋常性乾癬の症状を繰り返しており、開始時は発赤が著明だったが発赤・皮膚の落屑が改善された。患

者 2:仙骨・右坐骨に褥瘡があり2か月で治癒したが、オムツかぶれ・ただれが続き軟膏処置を継続していた。

皮膚の発赤・乾燥が悪化し白色化した。開始後、徐々に発赤の範囲が縮小し改善された。患者 3:褥瘡・皮膚ト

ラブルを繰り返し仙骨部の広範囲な色素沈着があった。開始時から比較すると発赤と色素沈着は薄くなったが、

明らかな改善にはならなかった。 【考察】 高齢者は新陳代謝が低下し保湿機能が衰え乾燥し、汗や排泄物の刺激を受けやすくなる。細菌やカビの増殖を抑

制する成分を含む洗浄剤を試みた結果、明らかに症状が改善した。このことから洗浄剤を変更したことによる効

果があったといえる。しかし色素沈着を起こした皮膚を改善するには至らなかった。 ケアを行うスタッフ自身がスキンケアの目的を理解し、患者個々の皮膚状態を観察、評価しながら積極的により

良いスキンケアを考え実践することで、皮膚トラブルを軽減し症状を改善させることに繋がったと考える。 【総括】 今回の事例から現状のケアに疑問を持ち改善する重要性や努力していくことを学んだ。治療や処置は行えないが、

清潔・排泄ケアに関わっているからこそ気付けることも多く、介護職として出来ることはある。今後も問題意識

を持ち、積極的に意見を提案し、患者の不快感を軽減でき、落ち着いた生活を送れるようケアを行っていきたい。

G-3-4 酢的なスキンケア ~酢と重曹を使ったスキンケアを試みて~ 東樹会病院 看護部

はぎた みどり

○萩田 みどり (准看護師) Ⅰ.はじめに 加齢に伴う皮膚の乾燥は皮脂膜や角層の働きが衰えることによるもので、乾燥を放置すると皮脂欠乏性湿疹や老

人性皮膚掻痒症を起こしやすく、掻くことで掻皮性湿疹や皮膚炎を起こすことが多く見られる。今回、酢と重曹

を使ったケアを試みたので報告する。 Ⅱ.期間 平成 26 年 10 月 15 日~12 月 19 日 Ⅲ.対象 ⓐ頭皮に湿疹のある患者様 4 名 ⓑ特に皮膚の乾燥が目立つ患者様 5 名 (主として上下肢全体) Ⅳ.方法 ⓐ1000ml のお湯に 6%(60ml)の酢を混合し、週 2 回の入浴時にシャンプーで洗髪後、頭皮に混合液を浸透さ

せる為に全体にかけ、マッサージを行う。 ⓑ200ml の水に 4%(8g)の重曹と 2%(4ml)の酢を混合し、1 日 1~2 回乾燥部に軽くタッピングしながら塗

布する。 Ⅴ.結果 評価日(10/31) ⓐ2 週間後には 4 名の内 2 名の方は湿疹もフケも殆ど出なくなった。他 2 名の方の湿疹は部分的には良くなった

が、櫛で髪をとくフケと痂皮が出た。11/4 から過度の刺激を避ける為、シャンプーを中止してお湯のみで良く洗

った後、混合液で洗うことによって 2 週間後には他 2 名の方の頭皮もきれいになり、正常に近い頭皮となった。 ⓑ4 名の方は 2 週間後にはスタッフも驚くほど乾燥が改善された。他 1 名の方はひび割れのような著しい乾燥だ

ったが、1 ヶ月後にはきれいになった。 Ⅵ.考察 対象者となるのは高齢者であり、負担が少なく、薬品とは違い身近にある酢と重曹に着目した。酢と重曹を組み

合わせることにより中和反応を起こし、汚れを浮き上がらせ、皮脂を簡単に拭き取ることができた。 さらに、脂漏性湿疹の原因とされる常在菌の一種であるマラセチア菌と、白癬菌を増やさないようにする静菌作

用、そして、浸透、保湿、剥離作用の効果を活かし良い結果をもたらすことができた。 Ⅶ.終わりに 毎日コミュニケーションを取りながら、直接肌に触れ、スキンシップができたことも、良い成果へ繋がったの

ではないか。今後も介護・看護に活かしていきたい。

G-3-5 高齢に伴う皮膚の乾燥・脆弱・落屑・皮膚剥離へ試験的にワセリンを試みて

医療法人 広川病院 看護部

たかはし りょうこ

○高橋 良子 (看護師), 樋口 美江子

【はじめに】当院は医療型の療養病棟(4 単位・211 床)で医療区分Ⅱ・Ⅲの患者が半数以上を占め多くの患者

が寝たきりの療養生活を送っている。平均年齢も高齢化が進み 84 歳である。年齢を重ねるにつれて皮膚の老化

も進み保湿力がない皮膚はドライスキンに傾き乾燥からくる掻痒感・掻破や皮膚の滑落、皮膚剥離のトラブルも

多いのが問題である。

今回、上記の現状を回避すべき策として各学会でも発表されているワセリンを当院でも実施した結果より良い効

果をもたらしたのでここに報告する。

【方法】皮膚乾燥著明で落屑が多い患者 10 名を選抜し、塗布する部位を両下肢のみと限定 1 回/日毎朝塗布しその効果を評価する。 期間平成 27 年 1 月~5 月までの5ヶ月間 【経過及び結果】10 名の患者様全員に視覚的に見て皮膚の落屑減少及び皮膚剥離の減少が認められた。ワセリ

ンの保湿効果にて対象患者全員の皮膚の乾燥も改善を認めた。この 10 名に限らず皮膚の乾燥による掻痒感・掻

破は老化に伴う変化としてトラブルも多い。患者様へ看護ケアを提供する時も高齢者の皮脂は年齢と共に減少す

るため入浴や清拭時に皮脂を取りすぎないように職員間でも周知して施行してった。

【考察】今回ワセリン塗布した患者は明らかに皮膚の保湿力が上がり乾燥の改善滑落の減少が認められた。この

援助を始めてから皮膚の滑落によるベットシーツ汚染が無くなり患者様にも快適な生活を提供することができ

かつ、環境整備を整えるうえでの看護師側の仕事の減少へもつなげることが出来た。今回の症例を通して今後は

乾燥が著明な患者様には積極的に援助していくべきだといえる。

G-3-6 水虫の改善に対するアロマの効果~手足の湿潤および不快臭の改善への取り組み~ 公益財団法人日産厚生会佐倉厚生園病院 看護部

こみや ちか

○小宮 知佳 (介護福祉士), 齊藤 美智子 【はじめに】手足の拘縮によりただれや不快臭を持つ患者で培養すると白癬菌がみられた。毎日手足浴のケアを

行っていても一時的に改善されるが再発を繰り返している。そのような中でアロマオイル(以下精油)が水虫に

効果のあることを専門誌で知り精油の効果を毎日のケアに取り入れ研究に取り組んだ結果を報告する。 【目的】 アロマの効能で水虫、手足の湿潤、不快臭を改善する。 【研究期間】 平成 26 年 8 月~9 月末迄 【対象】 ・拘縮ありただれ、不快臭の症状を繰りかえす対象患者 5 名 【方法】 ・パッチテスト実施 ・手足浴後に乾燥、精油を擦り込む ・拘縮の強い患者はフルーツキャップを握らせる ・臭いと皮膚の状態を観察し毎週写真に残す ・皮膚のただれ部分の培養を隔週で検査 ・9 月末、職員へ研究前後の皮膚の状態についてアンケート実施 【倫理的配慮】 プライバシーの保護、データを研究以外に使用しないことを患者様・ご家族に説明し、同意を得る。 【結果】 改善患者4名、改善が乏しい患者1名。改善患者4名は、臭いは8週間で消失。皮膚の状態は、個人差もあるが

白くなった爪の部分が縮小、ただれ症状も改善された。 改善の乏しい1名は開始前、臭いも皮膚の剥けと湿潤が強かった。培養結果6週間目で、4名に真菌出現。精油

の滴数を増やし、全員に噴霧。改善の乏しい1名も終了時、臭いも皮膚の剥け、湿潤、赤みが軽減された。 職員アンケートで、臭い、皮膚の状態が以前よりも改善されたと評価。 【考察・終わりに】 臭い=水虫の固定概念があったが臭いの原因は細菌であることを文献で知り、精油で臭いが消失しても白癬菌は、

陰性にならなかった。しかし、皮膚の状態は改善できた。これは、精油の効能である細胞修復作用により改善へ

繋がったと考える。 今後、更に精油を活用し、水虫の改善に努める。

G-4-1 皮膚剥離減少を目指して

長田病院 医療療養病棟

まつふじ えみこ

○松藤 恵美子 (看護師)

【はじめに】

A 病棟は、皮膚脆弱な患者が多く、皮膚剥離のリスクが高い。H24 年よりスキンケアの取組みを行ってきたが、

H26 年より皮膚剥離発生率上昇を認めた。スタッフへスキンケアに関する意識調査を行った結果、現行の皮膚

アセスメント表では不十分であり、カンファレンスについても統一できていなかった。そこで、アセスメント

表・カンファレンス方法を検討し、スキンケアの統一を行った。

【目的】

患者に合ったスキンケアを実施し皮膚剥離の減少を図る

【研究方法】

期間 H26 年9月~H27 年 5 月 対象 看護師 14 名 看護補助者 14 名 患者 43 名 方法 1.意識調査

2.アセスメント表、カンファレンス方法の見直し、活用 3.皮膚剥離件数

【結果】

1.意識調査結果 ① 「皮膚の観察を行なっている」

取組み前 19% 取組み後 48% ②「皮膚剥離に対する意識が変わった」

変わった 48% 少し変わった 52% ③ 意見

取組み前 ・カンファレンスで皮膚アセスメントできていない

・カンファレンス時、看護補助者のみで評価しておりアセスメントできていない、ケアの

内容まで話されていない

取組み後 ・受持ち看護師、看護補助者がアセスメント表を用いて評価することで、情報共有しやす

くなった

・カンファレンスで検討出来るため、ケアに繋ぐことができた

2.皮膚剥離件数 H26 年 8 月~12 月 15 件 H27 年1月~5 月 6 件 【考察】

皮膚アセスメント表を 4 項目から移乗能力や栄養、薬剤などのリスクを含めた 20 項目にした事で、アセス

メント能力の向上に繋がったと考える。また、カンファレンスを変更しアセスメント表をもとに危険因子を

導き出し患者に添ったケアを検討したことで、情報の共有が図れ,患者に添ったケアの統一ができたと考える。 【結論】

1.アセスメント表・カンファレンス内容を変更したことで、アセスメント能力が向上した。 2.患者に添ったケアを計画立案し、実践したことで皮膚剥離の減少に繋がった。

G-4-2 体位変換用マットの置き方を換えてみました

医療法人(社団)佐藤病院 長島中央病院

やまなか けいた

○山中 敬太 (介護職員), 伊藤 たづ子

<はじめに>当病院は 3 病棟あり、研究を行った病棟は全 66 床の療養型医療病棟で車椅子利用の患者様が大半

である。両膝屈曲のある患者様の尾骨部に亀裂が見られたが克服したため報告する。

<対象者>

A 氏 70 歳男性くも膜下出血、糖尿病 研究開始時亀裂の大きさ 縦約 1.5cm 横約 0.5cm B 氏 79 歳男性脳梗塞糖尿病 研究開始時の亀裂の大きさ 縦約 4cm 横約 1cm C 氏 93 歳女性 廃用症候群 研究開始時の亀裂の大きさ縦約 2cm 横約 1cm <方法>

1、職員の車椅子移乗体験と体験時の座位の安楽さについてのアンケートを実施。 2、亀裂の有無大きさ除圧についての記録を毎日行う。 3、車椅子やリクライニング移乗時に体位変換用マット(以下、マットとする)の配置を指差し呼称し確認する。 <結果>職員の移乗体験を通して、いかに患者様の尾骨部や仙骨部に負担をかけていたのかを知った。亀裂の大

きさや程度の記録をしたことにより改善に向かった時はマットの配置方法の重要性を認識し移乗前に配置が間

違っていた時には直すなど職員の意識も高まった。

<考察>研究を始めたばかりの頃はマットの配置間違い除圧の施行忘れが見られた。しかし記録をした事で職員

の意識が高まり、改善に向かったのではないかと思われる。亀裂改善後もマットの配置は研究中と同じようにし

患者様に移乗していただいたところ、新たな亀裂の発生は見られなかった。車椅子やリクライニング移乗時臀部

にかかる圧を軽減分散し、座面の通気を確保することによって亀裂が徐々に小さくなり改善に至った。

<結論>座面に置くマットの配置や座った際、臀部にかかる圧が分散され、除圧効果を最大限に導き出し亀裂や

発赤が治癒した。

今後は新人職員にも車椅子の移乗体験を実施し、介護従事者として患者様の立場に立ち介護を提供できるように

努めていきたい。

G-4-3 皮膚状態を健やかに保つために 愛媛県松山市南高井町 333 看護部

かいのう まさる

○戒能 勝 (介護福祉士) <はじめに> 長時間臥床の患者や、オムツ着用患者は、掻痒感や炎症などの皮膚疾患がしばしばみられる。その為、理想的

な肌に近づける為の個々に応じたケアの必要性を感じていた。 ケアを行うにあたり、皮膚状態を評価する一定の基準が無かった為、新たにスコア表を作成することで、職員全

員が統一した観察ができるのではないかと考えた。今回スコア表を作成し、個別性に応じたケアを工夫、提供す

ることにより、皮膚疾患の改善が見られたので報告する。 <活動期間> 2014 年 6 月 1 日~11 月 30 日 <活動方法> ・スコア表、発赤スケール、スキンケアシートの作成、活用 ・患者抽出 ・週 1 回の評価

<結果・考察> スコア表・発赤スケールを作成し、評価の基準ができたことで、簡便な方法でスタッフ全員が統一した観察が

できた。また、スキンケアシートの活用で、継続した評価ができるようになった。 その結果、その人に合った回数のオムツ交換やケアの方法が実践でき、皮膚を清潔な状態に保つことができた。

また、栄養状態が改善されたことや、車椅子座位が可能となったことで離床時間が増え、患部が除圧されたこと

も皮膚疾患の治癒に繋がったと考えられる。 <まとめ> 個別性に応じたケアを提供し、皮膚疾患の改善が見られたことで、患者や家族より喜びの言葉を聞くことがで

きた。また、成果がみられたことで達成感を得ることができた。 今回の取り組みから、患者の小さな変化に対しても報告、連絡、相談し、コミュニケーションを取ることの大切

さを再認識すると共に、それがチームワークを高めた。 今後も皮膚疾患を予防し、理想的な肌に近づける為に、異常の早期発見に努め原因を追究し個別性のあるケアを

提供していきたい。

G-4-4 洗浄・こよりを使用した瘻孔周囲の処置と観察の重要性

北摂中央病院 看護部

ふじしろ ゆか

○藤城 有香 (看護師), 上月 満代, 松原 ゆみ, 土井 千秋

胃瘻は、脳血管障害や認知症等で自発的に食事が摂取できない場合や、誤嚥性肺炎を繰り返す経口摂取困難な患

者に対する栄養法として広く用いられている。しかし、胃瘻造設後の患者の中には瘻孔周囲にスキントラブルが

起きやすく毎日の観察が必要となる。

当病棟では、Yガーゼを使用した処置を行うことが多いがスキントラブルの改善に時間を要することが多い。先

行研究では、遠藤2)らは「瘻孔周囲を微温湯で洗浄・こよりを1日3回交換し乾燥することで、全員の浸出液

の減少・発赤範囲の縮小が見られた。」と報告している。

今回入院患者様を対象に①瘻孔周囲を洗浄し、こよりを巻く。②汚染時適宜交換する。③日々観察し、項目に沿

って表に記入する。このような処置を行うことでスキントラブルが改善するのか研究を行った。その中で、発赤

や浸出液の減少が見られた一方で最終悪化してしまうケースがあった。その原因を3ヵ月間の経過を比較し参考

文献などを元に考察した。また、看護職・介護職が参加し、観察の重要性を再認識することが出来た為、その結

果を報告する。

G-4-5 屈曲拘縮手の手掌内環境の改善

ヴィラ光陽

とだ きみえ

○戸田 公恵 (作業療法士), 白井 圭祐, 古川 達也, 仲田 徳行, 元川 智利世, 土井 光徳

[はじめに]

高齢化により重度の利用者が増えており、手指関節の屈曲拘縮が徐々に進行している方がおられる。爪

での手掌面損傷や多湿な環境による白癬の発生等がある為、それらの改善を目的として誰でも容易に準

備できる材料を用い、素材や形状を検討しハンドクッションを作製した。検討と試作を繰り返し、使用

した結果について検証したので報告する。

[方法]

対象は麻痺及び廃用にて屈曲拘縮がある当施設入所者、男女 12 名(80.5±8.67 歳)とした。 綿手袋に直径 0.5mm と 3.0mm の発泡ビーズを入れ 2 種作製した。対象者を無作為に 6 名ずつ、A 群

(0.5mm)、B 群(3.0mm)の 2 群に分類した。 期間を H26 年 11 月 11 日~H26 年 11 月 21 日とし、使用開始時と最終日に 1)から 3)を実施した。 1)白癬、裂傷等を評価:医師が診察し、薬剤による治療を実施した。

2)湿潤評価:ブレーデンスケールにて測定し、A 群・B 群ごとにウィルコクソンの符号付順位和検定で

検証した。

3)手指関節可動域測定:遠位手根線から 4 指各指尖までを距離で測定し、t検定で検証した。

[結果]

1)白癬を含む異常所見: 実施前は全対象者の半数(6 名)に異常所見が見られたが、実施後は治癒 1 名、

軽快 2 名、その他は乾燥となった。 2)湿潤:A 群・B 群のほぼ全員が維持改善した。

3)各指関節可動域:A 群は変化なく B 群は中指・小指が拡大した。

[考察]

湿潤はほぼ全員に維持改善がみられ、ハンドクッションは手掌内環境を改善させる効果があると考えら

れた。その効果により白癬治療への有効性も示唆され、薬剤を併用した結果白癬でも軽快傾向が認めら

れた。関節可動域は B 群に改善がみられ、予想と反する結果になった。本検証以前の試作品では素材

不良により擦過傷が生じた事もあり、試行錯誤した結果、適切な素材に至り、今回の結果を得る事がで

きた。今後も引き続き実施し検証を継続していきたい。

G-4-6 腋窩の皮膚トラブル軽減を目指して ~マイクロファイバ一タオルを使用した個別の皮膚管理~ 特定医療法人 新仁会 新仁会病院 看護部

ふるさわ ともこ

○古澤 智子 (介護福祉士), 瀧澤 志保, 三成 里美 <はじめに> 慢性期の高齢者専門病院に多い脳血管疾患患者は、後遺症として四肢の麻痺・関節拘縮・嚥下障害等様々

な機能障害がある。その中で、上肢の麻痺・関節拘縮の二次障害として、上肢と体感が密着することに

よる腋窩の発赤・ただれ等の皮膚トラブルが起こっている。 今回、個別の腋窩の形状に合わせたマイクロファイバ一タオルを使用することで、皮膚トラブルの改善

につなげたいと考え、試みたのでここに報告する。 <目的> 個別の腋窩の形状に合わせたマイクロファイバ一タオルが効果的に除湿を行い、皮膚トラブルを改善す

ることで、快適な環境を提供する。 <研究方法> 関節拘縮があり、毎年春先より発赤・ただれのひどくなる患者3名を対象に、個別の腋窩の形状に合わ

せて作製したマイクロファイバ一タオルを2カ月間使用し、毎日の交換、腋窩チェック表を用いて皮膚

状態の観察、撮影をし、その結果を考察する。 <結果・考察> 腋窩のくぼみの形状の合わせたことで密着し外れることが少なく、マイクロファイバ一タオルの吸水

性・速乾性がいかされ、腋窩の湿潤がなくなり、皮膚トラブルの改善につながったと考える。上肢の関

節拘縮が強く、挿入困難な患者に対し、統一した実施方法が行われておらず、完治まで至らなかったた

め見直しが必要であり、今後の課題として検討していきたい。 安価で耐久性に優れ、洗濯・乾燥も容易で、繰り返し使用できる利点もあるマイクロファイバ一タオル

は、髪の毛の太さの百分の一以下の極細繊維で、毛細管現象により優れた吸水量・吸水力をもっている

ことを学習し、知識の向上と個別の皮膚管理をする中で、皮膚トラブルへの意識の向上につながった。

今後も、個別性を重視したケアの提供に努めていきたい。

G-4-7 高齢者の足の巻き爪にV字カットを試みて

緑水会病院

たなか ひろし

○田中 浩 (介護職員), 辻 みどり

Ⅰ はじめに

今回、足に巻き爪がある患者様に対し、足の爪の中央部にV字カットを入れた結果、巻き爪の

湾曲の緩和には至らなかったが、皮膚を傷つける事無く爪切りができたので報告する。

Ⅱ 研究方法

1.対象者

A氏 91歳 女性 両足第一趾の巻き爪

B氏 89歳 女性 両足第一趾の巻き爪

2.研究期間

平成26年8月1日から11月30日

3.方法

①爪切り後、足の爪の中央部にV字カットを入れ、爪が伸びるまで放置する。 ②爪が伸びれば写真撮影を行い爪切りを実施する。この方法を繰り返す。

③爪切り実施者にアンケートを実施する。

④写真の比較、アンケートの結果を評価・考察する。

Ⅲ 結果

A氏・B氏とも

1.巻き爪の湾曲の緩和には至らなかった。

2・切り易さについても変化はなかった。

3.V字カットを入れる事で皮膚を傷つける事無く爪切りができた。

Ⅳ考察

巻き爪の湾曲に変化が見られなかったのは、A氏・B氏の足の巻き爪の湾曲が強くなかった

のではないか、また研究期間が短かったのではないかと考える。A氏・B氏とも、巻き爪の切

り易さについて変化が見られなかったのは、巻き爪の湾曲が緩和しなかった事によるものと

考える。しかしV字に切り込みを入れる事でニッパーの刃先が爪に入り易くなり、皮膚を傷つ

ける事無く爪切りが出来た事は良かったと考える。

V字カットは容易に入れる事が出来る。

G-5-1 次亜塩素酸ナトリウム消毒法の統一と使用量削減を目指して

湯田内科病院 看護部介護課

ありま きよこ

○有馬 貴世子 (介護福祉士), 堂園 美之, 中間 好美

≪はじめに≫

当病棟ではナースステーション、食堂、汚物室等、さまざまな場所で次亜塩素酸ナトリウム(以降、ハ

イターと記載)による消毒を行っているが、中でも汚物室での使用は感染に関する物が多く使用量も多

い。

ハイターに侵漬する時間、量もばらつきがあり、必要以上に使われているのではないか?という疑問も

あった。

ハイターの適切な使用法と使用量の削減を目指した取り組みをここに報告する。

≪方法≫

・病棟ではハイター消毒液を何に使用しているのかを調査

・病院用ハイターとキッチンハイターの違いを調査

・蓄尿器、陰洗ボトル、吸引器、手浴、足浴用洗面器の消毒方法を調査

・ハイターの消毒効果を調査

・コストを意識するため、スタッフ全員に資料を回覧

・計量及び作業をしやすくするために物品を整備

・それぞれに消毒マニュアルを作成し、掲示・実践する

≪結果≫

・年間 23%コスト削減に成功。 ・洗面器や蓄尿器など、ハイター消毒液に漬けたまま床に放置することがなくなった。

・台車やホースなど物品を整備することで、消毒の作業が効率的になった。

・マニュアル化したことで、正しい消毒方法を確立することができた。

・スタッフ全員がコスト意識を持つようになった。

・適正なハイター消毒が、有効であると再認識できた。

≪考察≫

取り組む前は、ハイターの使用量とコストに視点をおいたが、今回現状を調査したことによって無駄が

多いことに気づくことができた。

また、正しい消毒のあり方を確立させ、マニュアル化したことにより感染に対する意識も高まり統一で

きたと考えられる。

≪まとめ≫

・今後、今回作成したマニュアルに基づく消毒を実践する。

・マニュアルを遵守し、コスト意識と感染対策の意識向上を図っていく。

・今回の活動から更に感染対策の学習、汚物室の環境整備へとつなげていきたい。

G-5-2 入浴体験を実施して

~患者の立場になってみえてきたもの~

ほたか病院

はやし まさき

○林 正貴 (介護福祉士), 河合 薫, 田口 敏治, 阿部 奈津子, 関 妙子

【目的】擬似的に入浴体験をする事で、患者の思いを感じる

【方法】

〇期間 11 月下旬~1 月上旬(評価を含む) 〇入浴体験実施 2 回(1 回目現在患者に提供しているケア方法で実施、2 回目体験者本人の希望を聞

きながら実施)

〇体験実施職員人数:9 名 〇アンケート実施(1 回目体験後アンケート、2 回目体験後アンケート) 〇全体の評価

【結果】アンケートの結果より

①介助中の不安感

②移動時や体動時の恐怖心

③肌の露出に対しての羞恥心

以上の事がみえてきた

【考察】アンケートの評価項目は入浴介助の一連動作の中で患者がどう感じているか気になったこと

をポイントに設定した。今回、擬似的に入浴体験した結果、「痛い」「寒い」という肌で感じる(身体的)

苦痛と、「恐い」「不安」「恥ずかしい」という心で 感じる(精神的)苦痛が明らかになった。身体的苦

痛に対しては、体を保温する、シャワーのあて方を工夫するといった技術面で軽減または改善できると

考える。精神的苦痛に対しては、技術面だけではなく、これから行う動作をその都度伝える、体動時に

は体を密着させる、常に視界から消えないようにするなどの心配りのある行動をとることが不安軽減に

繋がっていくと考える。また、浴室は裸になるのは当たり前という思い込みもあり、羞恥心への配慮に

かけていたことに改めて気づくことができた。入浴時、患者は私達に体を見られ、触れられる事に恥ず

かしいと思っても発言できず、自分で入浴をする事もできない。ただ羞恥心の中で私達に身を委ねざる

をえない状況であったと捉えることができた。今後、介助者は肌の露出、陰部の露出などに十分配慮す

る必要がある。

また、相手を気遣った声掛けを行い、それに対する患者の目の動き、首や口の小さな動きといったサイ

ンを見逃さないよう観察力を高めていく事が重要であると考える。

G-5-3 医療法人社団緑水会緑水会病院介護福祉士青井栄子看護師井上豊子

足冷改善への足浴の効果

医療法人社団緑水会 緑水会病院

あおい えいこ

○青井 栄子 (介護福祉士), 井上 豊子

はじめに

足冷の患者様の保温対策として、毛布、靴下、湯たんぽを使用しているが足冷の改善には至らなかった。

そこで、足浴の効果に着目し実施した結果、足冷改善の効果が得られたので報告する。

研究方法

1.事例紹介98才・女性

2.研究期間平成26年8月1日~10月31日

3.方法

①足浴を入浴日と発熱時を除き1日1回実施する。

②足浴前に室温、足冷の有無、足元の布団内温度を記録する

③38℃~40℃のお湯の温度を一定に保ち、足底から外踝の上2㎝までを10分間足浴する。

④足浴後、クリームで足趾から膝までを2分間マッサージする。

⑤足浴・マッサージ後、足冷の有無と足元の布団内温度を1時間毎に、3時間測定し記録する。

⑥②・⑤の結果を評価、考察する。

結果

足冷のある日数が 8 月は 10 日、9 月は 4 日、10 月は 2 日と減少し、足浴後足の暖かさが 3 時間後も

持続した。足元の布団内温度は 1.7℃~5.3℃上昇し、3 時間後が最も高かった。老人性乾燥肌だった足

趾から膝までが、柔らかくきめ細やかで弾力のある肌になった。

考察

足浴には皮膚温の上昇・皮膚血流の増加・創傷治癒の促進などの効果が確認されている。足浴後 3 時

間足の暖かさが持続し、足冷のある日が月を追うごとに減少した。これは、足冷後にマッサージをする

事で足浴の効果が上がり又、お湯の温度を 38℃~40℃に保ち 1 日 1 回 10 分間足浴した事で、皮膚温

の上昇と皮膚血流の増加により保温状態が持続したと考える。足元の布団内温度の上昇から足浴後直ぐ

に保温対策をしなくても足の暖かさが持続する事がわかった。老人性乾燥肌の改善は、足浴・マッサー

ジの皮膚血流の増加及びクリームによる保湿効果と考える。

G-5-4 良質な入浴ケア実施への取り組み

~マンパワー確保と入浴業務の見直しを行って~

医療法人財団利定会 大久野病院

かわくぼ つばさ

○川久保 翼 (介護福祉士), 和田 多美子, 池田 知枝美, 須嵜 由起子, 荒井 潤子, 滝島 恵津子,森松 靜, 進藤 晃

【目的】

療養病床では一人ひとりに合った良質なケアと療養環境の提供が求められている。

入浴は血液の循環改善や身体の清潔保持に効果的であるとともに、心身の緊張をほぐしリラックスを得

られる効果があるとされている。しかし、限られたマンパワー下における入浴は時間の限界があり、当

院では一人あたりの入浴時間を 5 分前後しか確保できない状況にあった。また、安全の観点から入浴

を中止せざるを得ない場合や、入浴ケアに付随する超過勤務の発生もあった。この度、入浴ケアの質を

改善するために、マンパワー確保と業務の見直しを行ったので、その経過を報告する。

【方法】

1)日中のマンパワー確保の為、介護者の夜勤と日勤の配置数を見直し 2)入浴の業務量調査 3)入浴実施時間(方法)の見直し 4)入浴に関する業務工程の見直し 【結果】

1)夜勤体制変更により介護者のマンパワーを日中に移行できた。 2)入浴ケアを中止することはなくなった。 3)効率的かつゆとりある入浴ケアの提供が可能になった。 4)入浴ケアに付随する超過勤務は減少した。 【考察】

入浴は清潔保持効果だけではなく、心身のリラックスや楽しみを感じられる内容であることが望まれる。

そのようなケアを実践するためには、実施可能な環境を整えることが必要である。この度の業務見直し

の結果から、限られたマンパワーの中でゆとりある良質な入浴ケアを提供するためには、入浴介助の業

務の見直しと効率化が有効と考える。今後も、患者にとって良質な入浴であるかを振り返りケアの改善

に取り込みたい。

【参考文献】

1)社会福祉法人サンライフ編著:介護教育 基本テキスト 第1版,日総研出版,2005.

G-5-5 施設・病院間の個浴判定基準の違い

~個浴対応困難となってしまう理由~

介護老人福祉施設ヴィラ横浜

かめい えみ

○亀井 恵未 (作業療法士), 髙野 光星

[はじめに]

当施設の入浴の実態を発信する事で、利用者様の身体機能を活かし、安全にスムーズに入浴できる体

制作りを包括的に進める事を目的に調査したので報告する。

[方法]

介護職員 59 名(集計総数 38 枚)に対しアンケート調査を実施。①現在機械浴を使用し、個浴未評

価の実例 2 名*について個浴可能と判断するか、②意識調査(個浴可能な利用者様の条件、入浴介助時

の重要事項)、③福祉用具について、3 項目に分け聞き取りを実施した。

*A 様:右脳梗塞・BRS Ⅲ-Ⅱ-Ⅲ・左金属支柱付き短下肢装具使用し平行棒内歩行見守り、B 様:

認知症・MMSE 困難・平行棒内歩行見守り

[結果]

①の結果、A 様は立ち跨ぎ動作が困難、B 様は指示入力が困難である為、個浴に移行出来ないと考え

ている職員が多かった。②では、立ち上がり・立ち跨ぎ動作が困難だと個浴を利用することが難しいと

多くの介護職員が考えており、安全・利用者様の満足感・時間短縮の順に優先し入浴介助に当たってい

る事が分かった。③は必要性を感じているが、時間や手間が掛る為、福祉用具が使用できていない結果

となった。

[考察]

今回の研究を通し、施設・病院間で個浴の判定基準・入浴環境に差異が生じ、病院で個浴が可能であ

っても施設では困難な場合が多いと分かった。病院では ADL を最大限に生かし、足りない所は福祉用

具で調整し個浴可能とみなしている。一方、施設では能力よりも安全や時間を重視している為、病院で

の個浴可能な達成基準を満たしていない。更に福祉用具の必要性は感じているが、時間や手間が掛る為、

使用できず、最大限の能力を生かせない為、過介助となっている。病院から発信した動作レベルを施設

で実施するに当たり、動作の安全性とスピードが求められる為、病院ではそれらの状況を考慮したリハ

プログラムの提供と、施設では退院時の最終 ADL が実施できる環境作りが必要となる。