炭素繊維強化プラスチック(CFRP)部品の量産化に向けた 樹脂...

20
炭素繊維強化プラスチック(CFRP)部品の量産化に向けた 樹脂含浸シミュレーション技術の開発 日産自動車株式会社 生産技術研究開発センター エキスパートリーダー 水谷 2020年9月3日

Transcript of 炭素繊維強化プラスチック(CFRP)部品の量産化に向けた 樹脂...

Page 1: 炭素繊維強化プラスチック(CFRP)部品の量産化に向けた 樹脂 ......炭素繊維強化プラスチック(CFRP)部品の量産化に向けた 樹脂含浸シミュレーション技術の開発

炭素繊維強化プラスチック(CFRP)部品の量産化に向けた

樹脂含浸シミュレーション技術の開発

日産自動車株式会社

生産技術研究開発センター

エキスパートリーダー

水谷 篤2020年9月3日

Page 2: 炭素繊維強化プラスチック(CFRP)部品の量産化に向けた 樹脂 ......炭素繊維強化プラスチック(CFRP)部品の量産化に向けた 樹脂含浸シミュレーション技術の開発

技術開発の背景

Page 3: 炭素繊維強化プラスチック(CFRP)部品の量産化に向けた 樹脂 ......炭素繊維強化プラスチック(CFRP)部品の量産化に向けた 樹脂含浸シミュレーション技術の開発

技術開発の背景 ニッサングリーンプログラムの目標は、CO2排出量を2022年までに40%削減、2050年までに90%削減すること

達成のためには、電動化に加えて車両の軽量化技術が必要

Page 4: 炭素繊維強化プラスチック(CFRP)部品の量産化に向けた 樹脂 ......炭素繊維強化プラスチック(CFRP)部品の量産化に向けた 樹脂含浸シミュレーション技術の開発

各国の 規制 2022年以降、規制はより厳しくなり、2025年以降はEUが最も厳しい

Page 5: 炭素繊維強化プラスチック(CFRP)部品の量産化に向けた 樹脂 ......炭素繊維強化プラスチック(CFRP)部品の量産化に向けた 樹脂含浸シミュレーション技術の開発

電動化と車両重量

5

現行モデル 次世代モデル

エンジン車 EV

車両

質量

(kg

)

スチール高強度化・構造改善

アルミ化

EV固有部品

アルミ化

性能向上規制対応

エンジンT/Metc.

①衝突試験強化対応

②車外騒音規制強化等

サスペンションブレーキ etc

EV化による増加バッテリー

インバーターモーター

マルチマテリアルCFRP化

エンジン車の燃費向上、電動化によりバッテリー、インバーター、モーターの重量が増加することに対応するため、さらなる軽量化が必要

Page 6: 炭素繊維強化プラスチック(CFRP)部品の量産化に向けた 樹脂 ......炭素繊維強化プラスチック(CFRP)部品の量産化に向けた 樹脂含浸シミュレーション技術の開発

軽量化と車体マルチマテリアル化

0%

スチール

アルミ

2015 2020 2025

軽量

化率

ー30%

ー50%

ー10%

マルチマテリアル化

高強度スチールやアルミ、CFRPなど、材料の特性に合わせて、複数の材料を車体に適用することで更なる軽量化が可能

Page 7: 炭素繊維強化プラスチック(CFRP)部品の量産化に向けた 樹脂 ......炭素繊維強化プラスチック(CFRP)部品の量産化に向けた 樹脂含浸シミュレーション技術の開発

の現状課題

Page 8: 炭素繊維強化プラスチック(CFRP)部品の量産化に向けた 樹脂 ......炭素繊維強化プラスチック(CFRP)部品の量産化に向けた 樹脂含浸シミュレーション技術の開発

軽くて強い炭素繊維強化プラスチック(CFRP※)

直径

髪の毛よりも細い炭素繊維。強度や剛性に優れ、鉄に比べ約50%の軽量化

炭素繊維強化プラスチックCFRPは、炭素繊維を樹脂で固めたもの

出典:炭素繊維協会HP

<炭素繊維強化プラスチック><炭素繊維>

炭素繊維の断面写真 炭素繊維のロール樹脂

炭素繊維シート

※CFRP:Carbon fiber reinforced plastic

断面拡大写真

硬化材

CFRP

材料 比重強度

(MPa)比強度

(104m)剛性

(GPa)比剛性

(106m)

スチール 7.8 780 1.0 210 2.7

アルミ 2.7 370 1.4 72 2.7

CFRP 1.5 600-1,600 4.0-10.7 60-120 4.0-8.0

Page 9: 炭素繊維強化プラスチック(CFRP)部品の量産化に向けた 樹脂 ......炭素繊維強化プラスチック(CFRP)部品の量産化に向けた 樹脂含浸シミュレーション技術の開発

日産におけるCFRP部品の採用例

フロントバンパー

フード

ルーフスポイラー

トランクリッド

リアバンパー

フェンダーシルカバー

GT-R NISMO 2020年モデル

現在は、GT-R NISMOを中心に限定的に採用

Page 10: 炭素繊維強化プラスチック(CFRP)部品の量産化に向けた 樹脂 ......炭素繊維強化プラスチック(CFRP)部品の量産化に向けた 樹脂含浸シミュレーション技術の開発

CFRP自動車部品への適用の難しさ 課題はコストと生産性。コストは、鉄部品の約10倍

材料の特性上、製造プロセスが複雑で、成形時間が長い

炭素繊維

炭素繊維シート(図はプリプレグ※1)

繊維方向繊維と垂直方向

<材料の特性> <製造プロセス>

炭素繊維

シート

シート

カット

積層

(腑形)成形

※1 プリプレグ:炭素繊維に樹脂を含浸させたシート

積層設計

樹脂

0度方向+

45度方向+

-45度方向

Page 11: 炭素繊維強化プラスチック(CFRP)部品の量産化に向けた 樹脂 ......炭素繊維強化プラスチック(CFRP)部品の量産化に向けた 樹脂含浸シミュレーション技術の開発

直近の約10年で大幅に生産スピードは向上

更なるスピード向上を目指して、成形方法は革新中

成形における生産スピードの革新

RTM工法(Resin Transfer Molding)

約10分 約2分約180-240分

AC工法

(Autoclave)

C-RTM工法(Compression-Resin Transfer Molding)加圧

真空

成形型成形型 成形型

真空 樹脂注入

樹脂炭素繊維

(積層品)

上型

下型

樹脂炭素繊維

(積層品)

上型

下型

隙間

炭素繊維積層品

炭素繊維積層品

Page 12: 炭素繊維強化プラスチック(CFRP)部品の量産化に向けた 樹脂 ......炭素繊維強化プラスチック(CFRP)部品の量産化に向けた 樹脂含浸シミュレーション技術の開発

成形における技術課題 炭素繊維シートをプレスすると皺や折れ曲がりが発生⇒成形不良の原因

樹脂が固まる前に、製品の末端まで流すことが必要

樹脂が炭素繊維の中を流れながら硬化!平面の炭素繊維織物を、立体的で複雑な部品形状に!

炭素繊維織物

試験形状(センターピラー)

繊維が乱れる

樹脂

の硬

さ(

粘度

液体

CFRP製品断面

プレス 固体

時間

樹脂が末端まで流れずに硬化

上側(樹脂注入側)

下側

樹脂の硬化が進む

Page 13: 炭素繊維強化プラスチック(CFRP)部品の量産化に向けた 樹脂 ......炭素繊維強化プラスチック(CFRP)部品の量産化に向けた 樹脂含浸シミュレーション技術の開発

による成形方法

成形の模式図

炭素繊維織物

Page 14: 炭素繊維強化プラスチック(CFRP)部品の量産化に向けた 樹脂 ......炭素繊維強化プラスチック(CFRP)部品の量産化に向けた 樹脂含浸シミュレーション技術の開発

における日産独自のシミュレーション開発

Page 15: 炭素繊維強化プラスチック(CFRP)部品の量産化に向けた 樹脂 ......炭素繊維強化プラスチック(CFRP)部品の量産化に向けた 樹脂含浸シミュレーション技術の開発

C-RTMの成形方法の技術課題 設計要件や材料の種類にあわせ、生産の目標を満足する部品及び金型を製作するためには、

トライアル&エラーで大幅な開発期間と製作費が必要

従来

開発後

設計

製作成形

修正

設計

製作成形

製品

評価

シミュレー

ション

<開発期間の短縮>

樹脂注入口

真空引きポート

<部品及び金型設計>

成形型

材料

・炭素繊維シート種類・樹脂の種類

設計

・炭素繊維シート積層設計

・製品形状,厚み

生産

・成形サイクル・品質

樹脂ビード

成形型

修正成形

製品

評価

修正成形

-50%

Page 16: 炭素繊維強化プラスチック(CFRP)部品の量産化に向けた 樹脂 ......炭素繊維強化プラスチック(CFRP)部品の量産化に向けた 樹脂含浸シミュレーション技術の開発

C-RTMシミュレーションの技術課題 既存のシミュレーションでは、最終充填時の実験結果とシミュレーション結果がアンマチッチ 樹脂が流れない部位(未含浸)の予測が困難

実験結果

シミュレーション結果

樹脂

未含浸

樹脂

未含浸

未含浸

樹脂注入

右図は製品の裏側からみた樹脂の流れの状態

成形型

炭素繊維積層品

Page 17: 炭素繊維強化プラスチック(CFRP)部品の量産化に向けた 樹脂 ......炭素繊維強化プラスチック(CFRP)部品の量産化に向けた 樹脂含浸シミュレーション技術の開発

樹脂含浸シミュレーション開発 ~摩擦力と樹脂の流れ~ 炭素繊維の上を流れる樹脂の摩擦抵抗を計算条件として考慮

透明金型により、炭素繊維と樹脂の流れの関係を明確化

金属表面の流れ

樹脂注入口

透明金型

炭素繊維上の流れ

成形型

樹脂炭素繊維

(積層品)

上型

下型

隙間

※真上から撮影

樹脂と接する金型内と炭素繊維積層品の流れに注目

Page 18: 炭素繊維強化プラスチック(CFRP)部品の量産化に向けた 樹脂 ......炭素繊維強化プラスチック(CFRP)部品の量産化に向けた 樹脂含浸シミュレーション技術の開発

120

122

124

126

128

130

0 5 10 15 20 25 30 35

型内

セン

サー

温度

(℃

成形時間(sec)

樹脂含浸シミュレーション開発(樹脂の温度変化に着目)

樹脂含浸係数繊維の中を進む樹脂の流れ易さの係数

流れ易い

流れ難い

炭素繊維(積層品)

樹脂の流れにともなう温度変化を測定し、金型内の見えない樹脂の流れを可視化

繊維の厚みに応じた含浸係数ロジックを算出

樹脂

温度変化による樹脂の流れ時間を計測

金型温度 120℃樹脂温度 80℃

温度センサー実験金型

温度センサー

従来のVf※1のみ

板厚を追加

Z方向

X-Y方向

※1 Vf繊維密度:部品重量あたりの炭素繊維の含有率

Page 19: 炭素繊維強化プラスチック(CFRP)部品の量産化に向けた 樹脂 ......炭素繊維強化プラスチック(CFRP)部品の量産化に向けた 樹脂含浸シミュレーション技術の開発

樹脂含浸シミュレーションの成果 シミュレーション精度が向上

本シミュレーションにより、ゲートや樹脂ビードの形状を見直し、性能を満足する部品を開発

実験結果

シミュレーション結果

<実験とシミュレーションの結果> <本シミュレーションによる部品開発>

実部品

樹脂ビード形状変更

樹脂ビード

製品コーナR形状変更

センター ピラーレインフォース

上側

下側

開発前 開発後

A’

A

断面A-A'

未含浸部位

Page 20: 炭素繊維強化プラスチック(CFRP)部品の量産化に向けた 樹脂 ......炭素繊維強化プラスチック(CFRP)部品の量産化に向けた 樹脂含浸シミュレーション技術の開発

Thank you