東京大学大学院医学系研究科 医療コミュニケーショ …6 ご挨拶 東京大学大学院医学系研究科 医療コミュニケーション学教室 教授 木内
第8回日本医療マネジメント学会...
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第第88回日本医療マネジメント学会回日本医療マネジメント学会
愛知県支部学術集会愛知県支部学術集会20122012年年1111月月1717日(土)13:10~14:10日(土)13:10~14:10
ミッドランドホールミッドランドホール
近森病院の近森病院のNST10NST10年の歩み年の歩み
古いビジネスモデル 新しいビジネスモデル
急性期病院の医療の変遷急性期病院の医療の変遷
厨房で管理栄養士は「食事」という物を売っていた
病棟で管理栄養士は栄養サポートすることで「早く元気になって自宅へ帰ってもらう」という付加価値を売るようになった
業態が大きく変わったことで管理栄養士も商売変えせざるを得ない
厨房の食事管理から病棟の患者の栄養管理へ
厨房の賄いさんから病棟の医療専門職へ
出来高とDPCの発想によるチーム医療の変化
DPC時代のチーム医療
多くの医療専門職を雇い人件費を出すために多くの医療専門職を雇い人件費を出すために
医療専門職の医療専門職の専門性専門性を高めないと人件費が出ないを高めないと人件費が出ない
11)医療専門職の専門性を上げるためには)医療専門職の専門性を上げるためには
各専門職の各専門職のコア業務コア業務をを更に絞り込む更に絞り込む⇒管理栄養士の病棟常駐⇒管理栄養士の病棟常駐++
患者を診る患者を診ることで患者毎の個別対応が可能⇒栄養学的に診断、治療ことで患者毎の個別対応が可能⇒栄養学的に診断、治療
22)多くの医療専門職が関与するチーム医療のために)多くの医療専門職が関与するチーム医療のために
患者の情報を多職種が共有するための患者の情報を多職種が共有するための電子カルテ電子カルテ
多職種が同じ目的でチーム医療をするために多職種が同じ目的でチーム医療をするために理念、価値理念、価値観の共有、仲間意識観の共有、仲間意識
が大事が大事
チーム医療のマネジメントが有効に働くチーム医療のマネジメントが有効に働くDPCDPC一日包括払い一日包括払い
業務の標準化がなされて業務の標準化がなされてルーチン業務ルーチン業務になっているかになっているか
〈各職種の重なりでチーム医療を分類〉
〈もたれあい型〉
ME
重なりあったこの部分ですり合わせして情報を共有
Dr.
Ns
〈レゴ型〉
情報交換のみで情報の共有
(重なりの大きいタイプ) (重なりの小さいタイプ)
多職種がカンファレンスですり合わせして情報を
共有するため、チーム医療の質は高いが処理能
力には限りがある。
リスクの高い、数少ない患者に対する質の高い
チーム医療に適している。
電子カルテによる情報交換で情報を共有し、業務
の標準化で質を保ち、多くの患者を処理できる。
リスクの低い、数多くの患者に対する効率的な
チーム医療に適している。
膨大な業務を良質で効率的に処理するためのマネジメント
ER~手術室、心カテ室~ICUでの医師中心の
根本治療に対応するチーム医療が主体になる。
一般病棟での看護師、コメディカル中心の患者
の状態をよくするチーム医療が主体になる。
重なりが大きいので
カンファレンスの
必要性多い
情報の受け渡しと病棟業務の分担からみたチーム医療
〈もたれあい型〉
臨床放射線技師
Dr
Ns
〈レゴ型〉
権限の委譲少ない
中核業務+周辺業務が残る
(情報の受け渡し) ME
臨床検査
技師
(病棟業務の分担)
Dr、Ns
感染対策、医療安全
褥瘡、口のリハ
チーム
人工呼吸
サポート
チーム
NST 急性期リハ
チーム
権限の委譲大きい
中核業務のみ残る
Dr、Ns
リハスタッフ
管理栄養士
薬剤師
ME
医療事務
助手 MSW
医療の質の向上と
労働生産性の向上
薬剤師
重なりが小さい
のでカンファレンス
の必要性少ない
近森病院の栄養サポートチーム
病棟常駐型レゴ型チーム医療が主体(月~金、日勤帯)
多数精鋭の管理栄養士が病棟に常駐し、電子カルテで
情報共有して、多くの易しい低栄養患者に対応
専門部隊型もたれあい型のチーム医療
+
医師、看護師、薬剤師、リハスタッフ、臨床検査技師、
管理栄養士が集まってカンファレンス、ラウンドで擦り合わせ
して、少数の難しい低栄養患者に対応
入院患者の45%に栄養サポートが必要なので
病棟常駐型レゴ型チーム医療が主体
当院の若い医師当院の若い医師、、看護師看護師、、臨床工学技士臨床工学技士、、薬剤師薬剤師、、管理栄養士管理栄養士 etc.etc.病棟の医療専門職は、すべて作業着の色違いの制服となった病棟の医療専門職は、すべて作業着の色違いの制服となった
近森病院(DPC時代)の管理栄養士
栄養部の
秘書でーす
平成8年頃の近森病院の管理栄養士(出来高払いの時代)
歌って踊れる
薬剤師で~す
CCU師長
で-す
勘と度胸で
やっている
院長で~す
専門部隊型もたれあい型のNST
急性
期リ
ハの
エキ
スパ
ート
前田
PTで-
す 臨床栄養のエキスパート
管理栄養士の宮澤、
真壁、佐藤で~す
CCU NSTカンファレンス教育カンファレンスとして管理栄養士ばかりでなく、最近は6年制大学卒業の新人
薬剤師も参加し、医療専門職になるための医療人の常識を学んでいる。
PT
でーす長期研修生
でーす
新人管理栄養士
でーす新人薬剤師
でーす看護師でーす
短期研修生
でーす
薬学部学生
でーす
病棟常駐型レゴ型のNST
栄養評価中お腹の音
聴かせて下さいネ
電子カルテへの打ち込み中
詳しい栄養評価
と栄養プラン
入れてます
病棟配属型レゴ型のNST医師と相談中医師と相談中
お腹動き出したので
経腸栄養開始して
いいですか
ああ
お願いね
医療専門職としての管理栄養士は病棟で何やってるの?
1)栄養リスクのある患者から直接一次情報をとる:問診
2)お腹を触り、腸音を聴く:理学所見をとる
3)栄養評価を行なう:栄養学的に診断する
4)栄養プランを作る:栄養学的に治療プランを作る
5)1)~4)を電子カルテに記載し医師と相談、3)4)の承認を得て看護師と
共に栄養サポートを行なう:栄養学的に治療を行なう
管理栄養士が患者を診て栄養学的に診断、治療している
だけど、管理栄養士に対する医師の信頼が絶対に必要 !!
「アアお願いね」は医師の個別、具体的指示(医師業務の代替)
799
1694
14741694
20342141
29943431
3501
0
500
1000
1500
2000
2500
3000
3500
4000
NST介入症例数
NST稼働
DPC導入
多数精鋭の管理栄養士が病棟に常駐し、必要な患者すべてに必要な時に適切な栄養サポートが実践されることで、技術料が増加すると共に、病院全体の医療が変化し(輸液、抗生剤減少、食事の増加)黒字転換している。
0 20,000,000 40,000,000 60,000,000 80,000,000 100,000,000 120,000,000
平成14年
平成15年
平成16年
平成17年
平成18年
平成19年
平成20年
平成21年
平成22年
平成23年
(円)
NST導入の費用対効果
管理栄養士人件費 栄養指導料 栄養管理実施加算 NST加算 食事療養費(食材費除く)増加 輸液減少 抗生剤使用減(感染防止)
支出収入
NST稼働
平成23年
NST加算
食事療養費
改訂
DPC導入
栄養管理実施
加算導入
※食事療養費(食材費除く)増加および抗生剤使用減少は、平成14年を基準とする。
※輸液減少は、平成16年を基準とする。
※抗生剤のジェネリック変更分は補正あり
平成22年
平成21年
平成20年
平成19年
平成18年
平成17年
平成16年
平成15年
平成14年
当院の薬剤師
昔も多職種によるチーム医療をしていた昔も多職種によるチーム医療をしていた
昔はスタッフが少ないので、医療専門職は従来の部署で医師、看護師の二次情報をもとに対応していた。特に薬剤師、管理栄養士は物のサービスが主体だった
医師以外の治療部門は医師から「診断、治療の権限」を与えられていなかったし、
物のサービス主体の薬剤師、管理栄養士は患者を診る教育、研修も受けていな
かった
ああ
お願いね
だったら
研修すればいい
エキスパートナースを中心とした心臓血管外科周術期チーム(CCU)
手術直後~1日目
エキスパートナースが
業務分担を決定
術後2日目 術後3日目
病棟配属型レゴ型病棟配属型レゴ型 病棟配属型レゴ型病棟配属型レゴ型
専門部隊型専門部隊型
もたれあい型もたれあい型
Ns 薬剤師
管理栄養士
PTMSW
ME
病棟配属型レゴ型病棟配属型レゴ型
専門部隊型専門部隊型
もたれあい型もたれあい型
Ns 薬剤師
管理栄養士
PTMSW
ME
専門部隊型専門部隊型
もたれあい型もたれあい型
Ns、薬剤師、管理栄養士
PT、MSW、ME、etc.
Ns薬剤師
管理栄養士
PTMSW
ME
<モーニングカンファレンス風景>
看護師
主治医
理学療法士
薬剤師
管理栄養士
ソーシャルワーカー
臨床工学技士
歯科衛生士
術後 1日目 午前 リハ 歩行
術後術後11日目日目
• スワンガンツ抜去
• ドレーン抜去
• 動脈ライン抜去
• 膀胱バルーン抜去
• 末梢ヘパロック
• 点滴テーパリング
• 食事・立位・歩行
術後2日目 リハ 歩行フリーハンドで500m
術後2~3日目 一般病棟に転棟
抜管率 CABG待機手術 2000.7~2011年on-pump
57.14%
66.67%
76.67%
83.33% 82.05% 80.95%
93.94%
71.43%
80.95%
90.32%
96.30%
41.56%
29.63%
23.33%
16.67% 17.95% 19.05%
3.03%
28.57%
19.05%
9.68%
3.70%3.70%0.0% 0.0% 0.0% 0.0% 0.0% 0.0% 0.0% 0.0%
1.30%
3.03%
0%
10%
20%
30%
40%
50%
60%
70%
80%
90%
100%
00年01年 02年 03年 04年 05年 06年 07年 08年 09年 10年 11年
翌日以降
翌日抜管
OP室抜管
off-pump
41.03%
72.22%75.0%
89.47% 91.30%
82.35%80.0%
92.0%
100.0%96.43%
100.0%
58.97%
27.78% 22.22%
10.53% 8.70%
17.65%20.0%
8.0%
0.0%3.57%
0.0%0.0% 0.0% 0.0% 0.0% 0.0% 0.0% 0.0% 0.0% 0.0%2.78%0.0%
0%
10%
20%
30%
40%
50%
60%
70%
80%
90%
100%
00年01年 02年 03年 04年 05年 06年 07年 08年 09年 10年 11年
食事率 CABG待機手術 2000.7~2011年on-pump
96.10%
90.74%
96.67%91.67% 92.31%
95.24%100.0% 98.0% 100.0% 100.00% 100.0%
2.60%
3.70%
0.0% 8.33% 7.69% 2.38%
0.0% 0.0% 0.00% 0.0%3.33%
0.0% 0.0%2.38%
0.0% 0.0% 0.0% 0.0%2.0%5.56%1.30% 0.0%
0%
10%
20%
30%
40%
50%
60%
70%
80%
90%
100%
00年01年 02年 03年 04年 05年 06年 07年 08年 09年 10年 11年
2日目以降
2日目食事
翌日食事
off-pump
94.87%100.0%
97.22%94.74%
86.96%
94.12%
100.0%96.0%
100.0%96.43%
100.0%
2.56%
0.0%
0.0% 5.26%
13.04%
5.88%
0.0%4.0%
0.0%3.57%
0.0%0.0% 0.0% 0.0% 0.0% 0.0% 0.0% 0.0% 0.0%2.56%
0.0%
2.78%
0%
10%
20%
30%
40%
50%
60%
70%
80%
90%
100%
00年01年 02年 03年 04年 05年 06年 07年 08年 09年 10年 11年
立位率 CABG待機手術 2000.7~2011年on-pump
0.0% 0.0% 0.0% 0.0% 0.0% 0.0% 0.0% 0.0%
76.6%79.6%
73.3%77.8%
87.2%
78.6%
84.8%
73.5%78.6%
83.9%
96.30%
16.67%
13.89%
12.82%
16.67%
15.15%
20.41%14.29%
16.13%
0.0%6.49%
9.26%10.0%
8.33%
0.0%
4.76%
0.0%
6.1%7.1%
0.0%
3.70%
0.0% 0.0%0.0%
11.11%16.88%
0%
10%
20%
30%
40%
50%
60%
70%
80%
90%
100%
00年01年 02年 03年 04年 05年 06年 07年 08年 09年 10年 11年
2日目以降
2日目立位
翌日立位
当日立位
off-pump
0.0% 0.0% 0.0% 0.0% 0.0% 0.0% 0.0% 0.0% 0.0% 0.0%
13.64%
76.92%
100.0%
88.89%
94.74%
86.96%
100.0%
90.0% 88.0%
94.44%
82.14%
77.27%
8.33%
5.26%
8.70%
10.0%
8.0%
5.56%
10.71%
9.09%
10.26%
0.0% 0.0%
0%
10%
20%
30%
40%
50%
60%
70%
80%
90%
100%
00年01年 02年 03年 04年 05年 06年 07年 08年 09年 10年 11年
歩行率 CABG待機手術 2000.7~2011年on-pump
46.75%
70.37%
60.0%
75.00%
66.67%
59.52%
84.85%
67.35% 69.05%
80.65%85.19%
32.47%
11.11% 30.0%
11.11%
20.51%30.95%
15.15%
24.49%16.67%
12.90%
11.11%
10.0%13.89% 12.82%
9.52%
0.0%
8.2%
14.3%
6.45%3.70%
20.78%18.52%
0%
10%
20%
30%
40%
50%
60%
70%
80%
90%
100%
00年01年 03年 05年 07年 09年 11年
2日目以降
2日目歩行
翌日歩行
off-pump
56.41%
88.89%
77.78%
89.47%
78.26%82.35%
80.0%84.0% 83.33%
75.00%77.27%
23.08%
11.11%
13.89%
5.26%
13.04%
11.76%20.0% 12.0%
16.67%
17.86%
22.73%
8.33%5.26%
8.70%5.88%
0.0%4.0%
0.0%
7.14%
0.0%0.0%
20.51%
0%
10%
20%
30%
40%
50%
60%
70%
80%
90%
100%
00年01年 02年 03年 04年 05年 06年 07年 08年 09年 10年 11年
2003年まで医師は2名体制2003年より医師は3名体制
待機 待機 待機 緊急 緊急 緊急
手術件数 死亡数 死亡率(%) 手術件数 死亡数 死亡率(%)
2001 73 0.0% 5 0.0%
2002 73 1 1.4% 8 0.0%2003 67 2 3.0% 10 0.0%2004 55 0.0% 14 0.0%2005 61 0.0% 9 1 11.1%2006 59 0.0% 11 0.0%2007 44 1 2.3% 7 2 28.6%2008 76 0.0% 4 1 25.0%
2009 59 0.0% 10 1 10.0%2010 58 0.0% 11 0.0%
通算 625 4 0.6% 89 5 5.6%
単独CABG (手術死亡)
毎回、大盛況のイベントです。
2010~
近森会が医療法人から社会医療法人に変更となったことにあわせて塗り替えました。
MSWMSWの業務の変化の業務の変化
医師、看護師中心の少数精鋭の医療
出来高払い:物品販売業 DPCによる1日包括払い:医療サービス業
MSWは病棟に出て社会科学的に
患者に介入し、自立した人間として
その人らしく生きてもらうことを支援
することでアウトカムが出る
(物を売る)
MSWは相談室で「相談業務」という
物を売っていた
病棟に呼ばれて「転院サポート業務」
(転院先を決める割り振りをしていた)
多職種による多数精鋭のチーム医療
(付加価値を売る)
相談業務や転院先を売る時代から、患者に介入しその人らしい人生をサポートする時代へ
退院調整加算ではっきり目に見えるようになった
MSWもサポート部門から治療部門へ
MSWMSWの具体的な業務の変化の具体的な業務の変化
〈まとめ〉
1).診療報酬が出来高払いからDPC一日包括払いに変わったことで
急性期病院も「物を売る」物品販売業から「付加価値を売る」労働集約型医療サービス業に業態が大きく変わっている。
2).「早く元気になって早く自宅へ帰る」というアウトカムを出すためには膨大な業務を処理する必要があり、医師、看護師中心の少数精鋭の医療(医師だけが患者を診る医療)から多職種による多数精鋭のチーム医療(多くの医療専門職がそれぞれの視点で患者を診るチーム医療)に変わらざるを得ず、「もたれあい型」と「レゴ型」のチーム医療をうまくデザインし、良質で効率的な医療を実践することが求められている。
3).出来高のすり込みを脱し、DPCの発想でチーム医療を徹底的に実
践することで医療の質は向上し、労働生産性も高まり、地域一番のマグネットホスピタルになり得ると実感している。なにより、医師はじめ多くの医療専門職がコア業務に専念することで目を輝かせていきいきと働いていることが最大の喜びである。