第7回商工会女性部全国大会 -...

6
Shokokai 2004.11 5 女性部特集 退 第7回 商工会女性部全国大会 〈in石川〉 女性部代表4,000名余が集う 調

Transcript of 第7回商工会女性部全国大会 -...

Shokokai ● 2004.115

女性部特集

■来賓祝辞

望月中小企業庁長官祝辞要旨

(野口経営支援部長代読)

地域経済発展の推進役とし

て大役を果たしている女性部

の皆様方に敬意を表します。

中小企業庁では、引き続き中小企業金融・再生支

援に万全を期すとともに、経済活性化・雇用拡大を

より確かなものとしてまいります。さらに、まちづ

くりと一体となった先進的取り組みを行う地域に対

して、総合的な支援を重点に行っていく所存です。

皆様方には、地域商工業の振興・発展のよき担い

手としてご尽力されることを期待します。

■挨拶

清家全国連会長挨拶要旨

開催にあたり、関係者の皆

様にはご苦労さまです。今年

は台風の上陸数が多く、各地

で中小企業者が被災されたと

聞いています。一日も早く事業を再開できるよう祈

念しています。

政府の「三位一体の改革」に伴い、県向け補助金

の削減と税源委譲が議論されています。万が一、商

工会関係補助金が廃止された場合は、地域経済に深

刻な影響が出ることを懸念しています。国の関与が

後退しないよう働きを行ってまいりますので、皆様

のご支援をお願いします。

下出石川県連会長挨拶要旨

全国の女性部の皆様には、石川の地においでいた

だき、歓迎します。中小企業

は厳しい状況にあります。地

域経済の発展には、女性部の

きめ細かい斬新なアイデア、

実行力が不可欠です。この大

会を機に部員同士のネットワークを広め、団結力と

行動力を高められるよう期待しています。

及川全女性連会長挨拶要旨

開催地をはじめ、ご尽力い

ただいた関係者に感謝申し上

げます。全国からさまざまな

業種の方々が集まり、情報交

換や意見交換などを積極的に行い、石川での出会い

をきっかけとして、本大会が組織の活性化と自己研

鑽に役立つ大会でありますよう祈念しています。

■主張発表要旨

最優秀賞

東北新幹線のくりこま高原駅ができてから町は一

変し、商店が廃業に追い込まれ、部員の減少が続き

ました。元気な町づくりをと、女性部員は平成十二

年に「よさこい踊り」を通した町の活性化を考え、

婦人会や農協女性部に声をかけ、三者が一体となり、

「姫っこおどり」の創作を始めました。作詞作曲を

町出身者のみなみらんぼう氏に依頼し、ハッピは自

第7回 商工会女性部全国大会〈in石川〉女性部代表4,000名余が集う

■大会主旨

平成十六年十月七日〜八

日、「出会いの瞬間

!輝く

未来、今、わたしたちの手

で」をスローガンに、第七

回商工会女性部全国大会

〈in石川〉が金沢市にお

いて開催され、全国から女

性部代表四〇〇〇名余が参

加した。

大会は来賓多数の臨席の

もと、六ブロックの代表に

よる主張発表のほか、無名

塾の仲代達矢主宰と野上照

代映画プロデューサーが基

調講演を行い、盛会裏に終

了した。

●地域おこしは女性パワーで

成瀬たまゑ

東北・北海道ブロック代表

宮城県志波姫町商工会女性部

Shokokai ● 2004.11 6

前で作りました。テレビにも出演したおかげで、会

員も大幅に増えました。

町では、夏休み中に東京の中学生を受け入れて、

農村体験をしています。今年で十三年目になります

が、それが縁で交流ができ、三年前からは東京の子

供たちにも踊りを教えに通っています。踊りを始め

て五年ですが、いつか町中の人たちが「姫っこおど

り」を踊ることが私たちの夢です。今年も新曲を作

りました。現在、愛好者は、三歳から七十代と幅広

い年代層になっており、親子三代で踊る家族もあり

ます。町民一体となってのよさこい踊りの大きな輪

に、喜びを感じています。

優秀賞(発表順)

紅葉時には香嵐渓を訪れる観光客でにぎわいます

が、年々減少し、観光業者も商工業者も危機感を抱

いていました。四季を通じて観光客の来町をと、五

年前から二〜三月に旧街道沿いの家々が雛人形を飾

り、夏は行灯を町並みに飾るイベントを始めました。

女性部も町を花で飾る運動やゴミ拾いをしていま

すが、近年は清流の汚染が進み、大切な観光資源を

守ろうとEM菌の普及に取り組み、培養済みの「E

M菌活性液」を販売しています。小さな集落では、

EM菌を直接川に散布した結果、ホタルが自然発生

し始め、近隣の町村にも広がりつつあります。

ほかにも「買い物袋持参運動」があり、スタンプ

を押し、集まった台紙は商品券として使い、さらに

こと。あきらめずに活動することこそ、女性部活動

の基本だとあらためて思いました。

女性部は、寂しくなった街に何とか元気を取り戻

そうと、むらおこし事業に取り組みました。野菜を

使った三色うどんやプリン、アイスクリームの開発、

それに荻野吟子女史をテーマにしたマンガの作成な

どです。

本町で生まれた荻野吟子女史は、日本初の女医さ

んで、公許第一号として誕生した方です。

女性部もプロジェクトに加わり、苦心の末、マン

ガ版「荻野吟子抄」を発行しました。この本は、女

性部員に吟子さんの心「不屈の根性」「努力の精神」

を教えてくれました。今はマンガ本を通して縁が深

まり、若い世代に受け継がれようとしています。

四月には空き店舗を利用した店(一番館)をオー

プンさせ、店では駄菓子やマンガ本「荻野吟子抄」

も販売しています。

一冊の本を通して思いやりの心、人へのやさしさ、

そんな心が芽生えたら、どんなにすてきな世の中に

なるでしょう。吟子さんに学ぶ女性部は、町活性化

のために頑張っていきます。

二〇〇六年の兵庫国体に銃剣道の会場となる予定

ですが、町内には特産品がなく、お土産の地場産品

ゴミ袋に交換できます。このゴミ袋は町から提供さ

れています。この運動も女性部の先輩が実現させた

ものですが、来年四月には豊田市に編入合併される

ため終了します。それで女性部の活動内容は変わっ

ても、地域住民の生活に役立つような運動を進めて

いきます。

村の施設運営の募集があり、応募したところ、六

〇代の農業従事者二人と四〇代の私だけでしたの

で、グループで始めました。

施設は標高三八九mの山頂にあり、途中には人家

もなく、不安と心配が募る中で準備に奮闘しました。

でも私は、今までとは違う商売をしたいと地元の旬

の野菜を主役とした一品料理の店を提案しました。

ダジャレのメニューは聞かなければ注文できない

もので、一品で満腹になる安さで提供したところ、

食事中も笑いが絶えない時間と場所の提供となりま

した。村の特産品の販売や地元小・中学生の絵画展、

公民館活動の発表もしました。県や村からは評価さ

れましたが、収益は厳しく、健全な経営と地域との

関わり方を知る必要があると思い、商工会に加入し

ました。

転機は、そばの実入りの「そばパン」で、平成十

四年度の創業支援事業に選ばれ、助成を受けたこと

が固定収入の糧となりました。商業と農業の橋渡し

や高齢者の社会参加、女性の雇用促進と生きがいづ

くりにもつながりました。

地域づくりは、地元の人とともに経済活動をする

●住みよいまちづくりをめざす女性部活動

奥村ひろみ

中部ブロック代表

愛知県足助町商工会女性部

●ふるさと茶屋 奮闘物語

秦 千恵美

九州ブロック代表

大分県大田村商工会女性部

●荻野吟子に学ぶ

石田ヒサ子

関東ブロック代表

埼玉県妻沼町商工会女性部

●特産品開発について

久内廣子

近畿ブロック代表

兵庫県宍栗郡一宮町商工会女性部

Shokokai ● 2004.117

女性部特集

が見当たらな

い現状を踏ま

え、三年前に

「特産品委員

会」を発足さ

せました。町

に目を向ける

と、自然の題

材が豊富にあ

ることに気づ

きました。

女性部は、

体にいい、無

添加のおやつ

を作ることに

決定。試行錯誤の末、「おからチップス」を完成し

ました。祭りで「おからコロッケ」を販売したとこ

なっています。世間話をしながら商売の話をする、

会話の中からヒントを得ることができます。

女性部では業種の違う部員との交流ができ、さま

ざまなことを学び、吸収できます。

県女性連の環境問題の取り組みをきっかけに、当

女性部もマイバッグ運動を推進しようと、再生紙を

素材とした紙ひもで「エコバッグ作り」に取り組み

ました。女性部員が指導を受け、次に受講者が指導

員となり、町内外にその輪が広がりました。

女性部を知ってもらおうと、パネルを作製し、公

共施設にエコバッグとともに展示したほか、商工会

や町の広報にも掲載をお願いしました。

このような活動を通じて、女性部の認識が新たに

なり、あらゆる方面の交流も生まれました。

地域の人たちに認識してもらえる女性部活動をし

つつ、私自身も、もっと成長できればと思っていま

す。

ろ、好評で、自信をつけました。特産品にするなら、

農産物を入れ、高級感を出すことを考えるようアド

バイスを受け、今度はパウンドケーキに挑戦するこ

とになりました。

おから入り「黒豆パウンドケーキ」ができ、特産

品として認められました。週一回のペースで焼き、

販売していますが、町の特産品にするにはまだ時間

がかかるだろうと思います。

私はこの事業を通して、「やらなければ始まらな

い」ことを学び、仲間が集まれば大きな力になるこ

とを実感しました。

電気店を経営していますが、私の希望で、店舗と

住居部分が一緒になったお客様の交流サロンの場に

●仲間と一歩一歩

渡部智子

中国・四国ブロック代表

島根県玉湯町商工会女性部

左から:成瀬たまゑ、石田ヒサ子、奥村ひろみ、久内廣子、渡部智子、秦 千恵美 各氏

「女性の創業等支援助成金」制度は、平成

十三年度に実施した「商工会女性部全国組

織化三十五周年統一記念事業」の一つ、「愛

の一〇〇円玉募金」の一部を活用し、女性

の創業や経営革新等を支援し、商工会地域

および商工会女性部の活性化を図ることを

目的に創設された。

これまでに平成十四年度一〇事業と十五

年度一〇事業を対象に助成した。ここでは

平成十五年度対象事業の概要を報告すると

ともに、去る六月二十五日に開催された審

査会において決定した平成十六年度の七事

業の概要を紹介する。

●北海道椴法華村商工会女性部

「北のえびまる君」

外見はタコ焼きだ

が、中にタコではな

くエビを入れた「え

びまる君」を開発。

毎年、地元のイベン

トで二○○パックを

限定販売する。すぐ

に完売となり、「幻

のえびまる君」と呼ばれている。

助成金で電動ミートチョッパー、卓上型

電気フライヤーを購入。商品価値の「外側

はカリッと、中身はフンワリと仕上げる」

生産技術を習得し、新商品「えびまる男爵」

(コロッケ)も開発中。今後はえびまる君の

シリーズ化、商品ラインナップの充実、常

設の工房兼売店の設置、生産体制のNPO

法人化、第三セクター法人への移行を検討

したい。

●宮城県桃生町商工会女性部

「かんきょうネット桃生」

「かんきょうネット桃生」を設立し、女性

部独自で活動を開始。環境問題をテーマにE

平成十五年度「女性の創業等支援助成金」助成対象事業の報告

平成十五年度対象事業

チョッパー(左)、電気フライヤー(右)

Shokokai ● 2004.11 8

Mを通してゴミの減量

化、地域環境づくり、

地域への周知、広報活

動を実施している。

助成金で購入したミ

キサーにより「お試し

EMボカシ」の製造量

が増え、真空ポンプ脱

気機により虫の発生も防ぎ、品質向上を達成

した。

今後は、利用状況調査や講習会、研修会等

を通じ、地域と連携をとりながら、EMを家

庭へ、企業へと広めていきたい。

●東京都清瀬商工会女性部

「街おこしときよせにんじんジャム事業」

東京一の生産量を誇

るニンジンに着目し、

商工会女性部を中心に

農協女性部や一般市民

と商品開発に取り組

み、専門家のアドバイ

スを受けながらジャ

ム、ドレッシングを開

発しながら、企業、組合等の設立も研究中。

これまでに「にんじんと玉葱のドレッシ

ング」は委託生産体制が整い、「にんじんと

里芋のクリームスープ」は現在改良中であ

る。今後はドレッシングの命名や市民への

浸透、農業者との連携による地域振興に取

り組みたい。

●三重県阿山町商工会女性部

「工房 わかば」

平成十一年から特産品開発の事業化のめ

どが立ち、十五年十二月

の「道の駅あやま」開設

を機に特産品販売業とし

て起業。

地産地消の実践、利益

の地域内循環を目的に、

同駅の加工施設で、女性

部有志で手作りパンや草

餅を製造販売している。

助成金でオーブン二台、パン種発酵機二台、

パンこね機等を購入。パンや草餅は道の駅

利用者や地元の方々にも人気。

今後も新商品開発、店づくりに努め、地

場の原材料を利用して地産地消、地域活性

化のために尽くしたい。

●石川県辰口町商工会女性部

「手作りの会・まどか」

平成十一年十月の動

物園開業に合わせて、

女性部が特産品を販売

する「ふるさと市」の

開設を提案。開発に取

り組み、ゆずジュース、

ゆず醤油の商品化に成

功。こ

の事業により、辰口産ゆずの知名度の

向上だけでなく、農産物販売グループとの

情報交換、新商品開発を推進した。特にク

ールディスペンサーによる商品提供では、

その場で商品に対する消費者の評価を知る

ことができ、新商品開発にも寄与している。

今後は特産品ショップやサロンの開設

も、行政と手を取り合って推進したい。

●滋賀県安土町商工会女性部

「特産品グループ よしきりの会」

平成十三年度に「よ

しきりの会」が発足し、

ヨシの新芽を利用した

ちまきやだんご、おこ

わ等を開発した。現在

は新芽を抹茶状にして

新たな商品開発に取り

組んでいる。

助成金で購入した小型卓上ミキサーと大

型冷凍庫で葉や製品の冷凍保存が可能とな

ったほか、ミキサーによりスタッフの製造

工程も改善された。

今後はヨシの成分分析を進め、健康食品

への活用や他の食材への活用を検討したい。

●京都府宇治田原町商工会女性部

「宗円香」

本町は日本

緑茶発祥の地

であることか

ら、飲用、食

用以外で日常

的に使用され

る茶の「お香」作りに挑戦。部屋焚きのお

香「宗円香」が完成した。上品な残り香が

町内外の人々にも評判で、宗円香を通じ宇

治田原町をPRできた。

助成金では、新しいタイプの宗円香のデ

ザイン、版下作成にも取り組んでいるほか、

今後は番茶、焙じ茶のお香を商品化し、さ

らなるお茶の香りの魅力を多くの人々に知

ってもらいたいと意気込んでいる。

●高知県野市町商工会女性部

「有限会社ヘルスショップ恒石」

(取材:

次頁参照)

●福岡県豊津町商工会女性部

「ドレッシング部会」

本町商工会で実施し

たむらおこし事業に女

性部長が参画したこと

を機に、部長宅で作っ

ていた玉葱ドレッシン

グの特産品化に取り組

み、郵便局扱いの「ふ

るさとゆうパック」に

も採用され、商品化。

今後はドレッシング部会として継続して

取り組み、助成金で立ち上げたホームペー

ジのほか、物産展にも出品。地元から全国

へと販路を拡げたい。また、「ゆず」を使

った新製品の開発を考案中。

●宮崎県荘内商工会女性部

「庄内加工グループ」

本商工会で実施したむらおこし事業を機

に女性部有志でグループを結成し、特産品

「アヤムラサキ」を原材料として「紫芋せ

んべい」などの開発、製造、販売を行って

いる。現在は商工会のネットショップ、高

島屋の通信販売でも取り扱われている。

助成金で製造備品を購入し、設備の充実

と製造作業の効率化も図られ、メンバーの

事業意欲がさらに高まっている。

今後は、これまでに作成した試作品に改

良を重ね、既存品に見劣りしない商品に完

成させ、販売アイテムの充実を図る。

Shokokai ● 2004.119

女性部特集

▼岩手県金ヶ崎町商工会女性部

〈事業概要〉平成十五年に無料のおやすみ

処「かみしも」を開設。商店会や商工会主

催の受託事業を実施するとともに、郷土食

「ずるびき膳」を開発し、提供している。

▼千葉県栄町商工会女性部

〈事業概要〉栄町のシンボルキャラクター

「ドラム」を活用し、ミニタオル商品の企

画、制作、販売に取り組んでいる。千葉県

女性連の「地域自慢推奨品認定事業」にも

認定されている。

▼三重県明和町商工会女性部

〈事業概要〉伊勢神宮の斎宮の地にちなみ、

黒米(古代米)を使った菓子類を製造・販

売している。黒米の配合等の研究を重ねて

「黒米おはぎ」の販売に至り、平成十五年

には保健所の菓子製造業の営業許可も取得

した。

▼滋賀県五個荘町商工会女性部

〈事業概要〉近江商人発祥の地・五個荘に

は多くの観光客が訪れるが、お土産の購入

や食事ができるお店等が少ないため、地元

の雰囲気に合った特産品づくりに取り組ん

でいる。

▼京都府三和町商工会女性部

〈事業概要〉「町内にお菓子の製造販売工場

を立ち上げる事業」として京都府連の若手

後継者等育成事業(意欲ある青年部・女性

部への活動支援事業)としても認可され、

ケーキ・クッキーなどの商品開発を行い、

販路開拓を進めている。

▼愛媛県小田町商工会女性部

〈事業概要〉女性部特産品開発グループが

草木染めを七年前から行ってきた。平成十

四年度には柿渋染めに取り組み、空き店舗

を利用して作業場「夢ふうせん」を設置。

平成十五年度から地域の子供たちの草木染

め体験を行い、町外からの体験教室も受け

入れている。

▼福岡県立花町商工会女性部

〈事業概要〉おがくず、米ぬかをベースに

蜂蜜とドクダミ、ヨモギ、ハコベ等の野草

を混ぜた発酵素を利用した「健康風呂」を

運営し、健康促進事業を展開している。

大型店の出店の波は、人口一万八〇

〇〇人の高知県野市町にも押し寄せて

きた。荒波をまともに受け、シャッタ

ーを閉める商店も多い。野市町商工会

女性部長の恒石英子さんが夫と二人で

営んでいた電気店も大型店進出の影響

で、売上は急減した。連日、夫婦で今

後について話し合った。

そんなある日、恒石さんは高知県連

が主催した介護関連のセミナーに出か

けた。その中で、町の電気店が介護関

連商品の販売店に業態を変更して成功

した事例が紹介された。話が終わるか

終わらないうちに、恒石さんは思わず

叫んだ。「これだ。これしかない」。

恒石さん夫妻は、八七歳と八六歳に

なる夫の両親を抱えている。両親とも

身体が不自由なため介護が必要だ。そ

のため二人は、「介護をしながら、し

かも近所のお年寄りとふれあうことが

できる仕事」を考えていた。介護関連

商品の販売店は家にいる時間が長く、

両親の面倒がみられ、夫妻が考えてい

た仕事とも合致した。

方向は決まったものの、開店までの

道のりは決して平坦ではなかった。介

護関連の店を開くには、いろいろな資

格が必要だ。介護商品を販売するには、

二週間の講習を受け、修了証明書を取

得しないと店が開けない。そのため、

恒石さんは夫と大阪に二週間滞在して

講習会に通った。

講習会は朝八時から夜の九時まで、

びっしり授業がある。午前中は講義で、

午後は試験という日が続いた。冬の授

業にもかかわらず、教室には暖房はな

い。しかも、椅子は板だ。六〇歳を超

えた身体には寒さが身にしみた。カイ

ロを体中に張りながら頑張った。講義

は介護から医療、マーケティングまで

多岐にわたった。「学校を出て三〇年

以上経過しており、机に向かって一日

平成十六年度「女性の創業等支援事業」助成七事業先の概要

電気店から介護ショップに転業

創業等支援事業

創業等支援事業

恒石英子さん/有限会社ヘルスショップ恒石(高知県野市町)

Shokokai ● 2004.11 10

中勉強を続けるのは本当に厳しかっ

た」。恒石さん夫妻にとって辛い二週

間だった。

「二週間の授業が終わり、高知に帰

る船の中でビールを飲みながら、満足

感で涙を流したのが昨日のようです」

と苦しかった当時を振り返る。さらに、

レンタルショップを開店するための講

習や、住宅改修事業を行うための講習

を受け、その資格も取得した。

両親がみかねて開業資金提供

「これで、ようやく店が出せる」と

喜んだのもつかの間、介護商品の販売

店は、法人格を取らないと店を出せな

いことがわかった。有限会社でも三〇

〇万円の資本金が必要だ。しかも、三

〇〇万円から五〇〇万円の供託金を積

まないと許可がおりない。

恒石さんには、資金の工面のことま

で考える余裕がなかった。「なにも六

〇歳を超えて、今さら苦労しなくても」

と、夫の両親にも反対された。それで

もくじけなかった。お嫁さんの頑張る

姿を見て、反対していた両親の協力

もあり、供託金を用意することがで

きた。

「店をオープンして一年が経過し、

五〇人のお得意さんを確保でき、よう

やく商売も軌道に乗ってきました」。

恒石さんの顔が微ほ

笑え

む。

大型商品の配送や据え付け、修理は

夫が受け持ち、恒石さんはもっぱら営

業とお年寄りのいろいろな相談に応じ

ている。毎日、いろいろな人と話がで

きるのが非常に楽しそうだ。そして、

「『あの商品よかったよ。また、届けて

ね』というお年寄りの一言が嬉しい」

と目を細める。

電気店経営ではメーカーから表彰

恒石さんは六〇歳を超えて今なお、

新たな道に挑戦する気持ちを失ってい

ない。恒石さんは、三〇年前にも夫と

二人で電気店を創業している。大手電

気メーカーの事務員として働いていた

恒石さんは、「いつか電気店を自分で

経営してみたい」と思うようになった。

そして、結婚を機に野市町で夫と電気

店を始めた。二人とも電気に関しては

素人で、商売を始めるに当たってはメ

ーカーに毎日のように通って講習を受

けた。

当時はまだ女性経営者があまりいな

い時代だ。「女性が経営している電気

屋は聞いたことがない。女性では無理

ではないか」。メーカーは、女性の経

営する電気店には消極的だった。しか

し、恒石さんはなんとかメーカーを説

得、持ち前のバイタリティーで開店す

るやいなや、全国の代理店で五本の指

に入る売上を達成、メーカーから表彰

を受けるまでになった。

恒石さん夫婦にとって、介護商品の

出店は二回目の創業となる。電気店を

始めた時の経験が今回の介護商品の販

売にも生かされている。

「お客さんを訪問する時は、玄関か

らではなく台所から相手の名前を呼び

ながら顔を見せる。それがお客さんに

親しみを感じてもらえるからです」。

恒石さんの優しい心遣いが顧客の心を

つかむ。

全女性連が主催する「女性の創業等

支援助成金」の助成対象企業にも選定

された。

夢はレンタルの専門店を出店するこ

とと、住宅改修事業を手がけること。

「お年寄りの部屋は、日が当たらない

北側の暗い場所が多い。それはあまり

にもかわいそう。お年寄りがそこで楽

しく暮らせる部屋を作るお手伝いをし

たい」。

ここでも、恒石さんの優しさが顔を

のぞかせる。住宅改修を行うのに必要

な免許も取得した。

商工会女性部長としても活躍

毎日、忙しい日々を送る恒石さんだ

が、野市町商工会の女性部長として、

高知県連女性連の理事としても活躍し

ている。

野市町商工会女性部は、女性連が行

っている「黄色いハンカチ運動」でも

実績を上げている。名前、住所、電話

番号、緊急連絡先、血液型、指定病院

などを書き込んだ黄色いハンカチをお

年寄りや障害者に配って、万が一外で

倒れたり、迷った時に役立たせようと

いうもの。恒石さんの店にも黄色いハ

ンカチを置いて、店に来たお客さんに

配り喜ばれている。

最初は反対していた母親も、今では

全面的に応援してくれており、病院に

行った時は店の商品の宣伝もしてくれ

る。母親の話を聞いて、遠くから商品

を購入しに来てくれる人もいる。

店を始めて一年が経過して、ようや

く経営も軌道に乗ってきた。次の目標

に向かって、恒石さん夫妻の二人三脚

が続く。

商品の説明をする恒石英子氏