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(資料-1) 第6回 島地川ダム水質改善検討委員会 委員会資料 平成23年10月26日 国土交通省 中国地方整備局 山口河川国道事務所

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(資料-1)

第6回 島地川ダム水質改善検討委員会

委員会資料

平成23年10月26日

国土交通省 中国地方整備局 山口河川国道事務所

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目 次

第1章 島地川ダムの水質改善事業の進捗状況 ............................................... 1

1.1 前委員会での決定事項 ............................................................. 2

1.2 導入されたアオコ対策施設の諸元 ................................................... 4

1.3 本委員会の検討状況 ............................................................... 6

第2章 アオコ対策装置の効果と今後の計画(案) ........................................... 7

2.1 アオコ対策施設(プロペラ撹拌式水質改善装置)の運転状況............................ 7

2.2 アオコ対策施設の効果検討 ......................................................... 7

2.2.1 評価期間について ............................................................. 7

2.2.2 評価項目について ............................................................. 8

2.2.3 アオコの発生状況 ............................................................. 9

2.2.4 アオコ・植物プランクトン総細胞数の低減状況 .................................. 14

2.2.5 貯水池の水質状況 ............................................................ 19

2.2.6 気象状況等による要因 ........................................................ 29

2.2.7 アオコ対策施設の効果のまとめ ................................................ 34

第3章 今後のアオコ対策施設の運用方法 .................................................. 35

第4章 水質モニタリング調査(案) ...................................................... 36

第5章 重金属類対策の進捗報告 .......................................................... 41

5.1 高濃度酸素溶解装置の稼働状況 .................................................... 41

5.2 水質の改善状況 .................................................................. 43

5.2.1 金属の低減状況 .............................................................. 43

5.2.2 水温・DOの状況 .............................................................. 50

5.3 底質の変化 ...................................................................... 52

第6章 まとめ(事務局(案)) ........................................................... 54

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第1章 島地川ダムの水質改善事業の進捗状況

現在、第5回島地川ダム水質改善検討委員会(平成22年12月14日開催:以下本委員会と示す)の決

定事項に基づいて、重金属類に関する島地川ダム底層の水質改善を行っている。

今回の第6回委員会では一旦高濃度酸素溶解装置の議論を離れ、平成21年度より本格運用中のアオ

コ対策装置について提言をいただく。

アオコ対策装置(プロペラ式攪拌装置)については「島地川ダム湖水質改善対策検討委員会」(以下、

前委員会)において、導入が決定され、黒川橋(M-11)に1基が設置された(平成20年3月完成)。

この中で「M-11より上流側の水域を対象に先ず1基を導入し,その結果、装置能力が不足するよ

うであれば能力の増強を検討することとする。」とされており、来年度は水質改善事業(以下「事業」)

の最終年度に当たることから、本委員会で現施設の効果について最終的な判断を行うものとする。

平成21年度

平成22年度

平成23年度

図 1-1 これまでの委員会の開催状況

高濃度酸素溶解装置

詳細設計

管理用発電

導入検討 第4回委員会

平成21年12月

水質調査(毎月)

第3回委員会

平成21年3月

高濃度酸素溶解装置

設置工事

最適対策工法の決定 管理用発電の検討要望

高濃度酸素溶解装置

暫定運用開始

管理用発電

設計・施工

管理用発電

施工

第5回委員会

平成22年12月

第6回委員会

平成23年10月

高濃度酸素溶解装置

暫定運用中

水質改善総合評価

第7回委員会

平成24年1月(予定)

アオコ対策装置(プロペラ式攪拌装置)の総合評価、運用決定

適台数の確認

前委員会

平成18年3月(第6回)が 終

【本委員会】

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1.1 前委員会での決定事項

島地川ダムの貯水池(高瀬湖)の水質改善を目的として、本委員会の前に前委員会が開催されて

おり、民間開発技術の現地実証実験等を基にしてプロペラ式攪拌装置の導入が決定された。

表 1-1 前委員会の概要

項 目 内 容

名 称 島地川ダム湖水質改善対策検討委員会

目 的 島地川ダムの貯水池(高瀬湖)の水質改善を目的とし,水質の現状把握及びそ

れを踏まえた民間開発技術の現地実証実験等を含む技術を基に検討を行い,水

質改善計画の立案を行うものである。

構成委員

(役職は当

時のもの)

学識経験者 中 西 弘 山口大学 名誉教授

脇 坂 宣 尚 宇部短期大学 名誉教授

酒 井 治 己 水産大学校 生物生産学科 教授

朝 位 孝 二 山口大学 工学部 社会建設工学科 助教授

行 政 八 木 和 彦 周南市新南陽総合支所 産業振興課長

(島地川ダム周辺環境整備地区管理協議会 事務局長)

藤 原 武 夫 中国地方整備局 河川部 河川管理課長

谷 本 尚 威 中国地方整備局 中国技術事務所長

中 村 稔 中国地方整備局 山口河川国道事務所長

表 1-2 前委員会の開催実績

回 数 開催日 内 容

第1回 平成15年5月20日 ・フォローアップ委員会の「分科会」を解消し,新たに「島

地川ダム湖水質改善対策検討委員会」を設置

第6回

(最終回)

平成18年3月29日 ・アオコ対策総括

・ヒ素抜本対策の必要性

(表 1-3参照)

表 1-3 前委員会での決定事項

アオコ対策について、プロペラ式攪拌装置をM-11上流に設置する。

(台数は当面1基とする)

アオコ対策の能力が不足するようであれば、能力の増強を検討する。

ヒ素対策については、抜本対策の検討が必要である。(→本委員会の設立)

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なお、プロペラ式攪拌装置の実証実験は平成16年に実施されており、この時に効果が確認された

ことから、平成16年と同じ動水量の装置を導入することとした。

表 1-4 アオコ対策施設の計画動水量

対象区画 対象水域面積動水量

(m3/h) 台数 備 考

上流区画

(M-11~M-20) 90,000 m2 1,800 1 実証試験値

中流区画

(M-10~M-11) 30,000 m2 600 1

実証試験の単位面積

当たりの動水量より

算出

※中流区画は上流区画の1基では効果が不十分だった場合の想定

図 1-2 アオコ対策施設の設置箇所と対象区画

上流区画

中流区画

流入水制御フェンス設置位置

止水カーテン(フェンス)設置位置

アオコ対策施設

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1.2 導入されたアオコ対策施設の諸元

アオコ対策施設(プロペラ式攪拌装置)は平成19年度にM-11上流に1基が設置されている。

図 1-3 プロペラ撹拌式水質改善装置の概念図(左)/設置状況(右)

図 1-4 アオコ対策施設(プロペラ式攪拌装置)の設置箇所

アオコ対策施設

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表 1-5 プロペラ撹拌式水質改善装置の仕様

設置数 1基

送水能力 1,800m3/hr

循環方向 上から下(ただし、逆送も可能とする)

設備設置水位 SWL.297.1m以下

設備稼働時水位 SWL.297.1m以下

吹出口設置位置 EL.264.0m付近(吹出口上縁が湖底から約3m上方)

吸込口設置位置 水面

設置位置 黒川橋直上流

電 源 3相200V、60Hz(商用電源)

運転操作条件 黒川橋右岸下流に設ける操作盤にて運転操作を行う

図 1-5 プロペラ撹拌式水質改善装置の構造

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1.3 本委員会の検討状況

第5回委員会における提言とその対応は以下のとおりであり、結果については第7回委員会で報

告予定である。なお、本資料の第5章で水質改善状況を記載している。

表 1-6 第5回委員会における提言とその対応

第5回委員会における提言 提言の背景 提言に対する現在の対応

◆底層部(EL.250m以深)の鉄、

マンガンについては、懸濁態と

溶解性の分析を行うことを検討

する。

鉄・マンガンの酸化状況を

より詳細に把握し、装置の

運用に反映するため。

水質調査に溶解性マンガンを追加し

た。また、懸濁体マンガンとSSの関係

について検討を行っている。

◆pHについて可能であれば継

続測定項目とする。

マンガンの酸化速度はpH

が高いほど早く、装置の運

用に反映できる可能性があ

るため。

pHの観測を継続している。

◆底泥について沈降して蓄積さ

れる重金属類を確認するため、

測定項目及び頻度を検討する。

酸素供給により、溶解して

いた重金属類が底質に移動

すると考えられ、その実態

を把握するため。

平成23年11月に底質調査を追加で実施

する計画である(従来は5月に年1

回)。なお、調査項目は鉄・マンガン・

ヒ素に着目したものに絞っている(参

考資料に記載)。

底泥の堆積速度について、直接は観測

していないが、ダム貯水池へ移動した

鉄・マンガン・ヒ素の収支を検討中で

あり、底質に移動した鉄・マンガン・

ヒ素も算出する予定である。

◆流入ヒ素対策として、鉄、マ

ンガンについても物質収支を検

討するとともに、その他の流入

ヒ素対策についても検討する。

恒久的な重金属類対策及び

高濃度酸素溶解装置による

水質改善の位置づけを確認

するため。

出水時の水質調査を継続し、平成23年5

月の出水時に鉄・マンガンについて水

質調査を行った。この結果を基にダム

貯水池へ移動した鉄・マンガン・ヒ素

の収支を検討中である。

◆検討の結果追加された調査結

果については、委員に報告を行

い、運用に反映する。

次の委員会を年度末に1回

実施する場合、水質改善後

の事後報告になり、検討中

に困難があった場合に対応

できないため。

アオコ対策装置の効果検証に対して委

員会を追加することとなり、委員会が

年2回になったため、第6回委員会で

高濃度酸素溶解装置による水質改善の

状況報告を行う(本資料第5章で説明)。

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第2章 アオコ対策装置の効果と今後の計画(案)

2.1 アオコ対策施設(プロペラ撹拌式水質改善装置)の運転状況

導入されたアオコ対策施設(プロペラ式攪拌装置:平成20年3月完成)は、当初の計画としては流

入水制御フェンスで区切っておき、「発生したアオコを底層に封じ込め、増殖を防ぐ」ことを念頭に

運用されていた。

しかしながら、平成20年の大量発生を踏まえ、平成21年度以降は4月1日~10月31日の継続運転に

よる「発生抑制」で運転している。

注)大流量:0.5m3/sec(1,800 m3/h) 小流量:0.3m3/sec(1,080 m3/h)

2.2 アオコ対策施設の効果検討

2.2.1 評価期間について

評価期間は事業前のアオコが少なかった年も含めて平成15年~平成23年の9年間とした。平成20

年はアオコ対策施設の運用方法が平成21年度以降の本格運用と異なり、今後の運用としては使わな

いため、評価の対象外とする。

表 2-1 評価対象年の位置づけ

H15~H17 H18~H19 H20 H21~H23

位置づけ 事業前の水質 暫定運用時の水質

(評価対象とはしない)本格運用時の水質

(事業後の評価対象)

アオコの状況 アオコ少ない アオコ多い アオコ多い アオコ少ない

【平成20年】

目的:発生したアオコを底層に封じ込め、

増殖を防ぐ

平成20年8月11日~ 9月 9日(大流量)

9月26日~10月 6日(小流量)

【平成21年】~【平成23年】

目的:アオコが発生しにくい水温状況を形

成する。

平成21年4月1日~11月 6日 (大流量)

平成22年4月1日~10月31日 (大流量)

平成23年4月1日~運転継続中(大流量)

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2.2.2 評価項目について

アオコの定義は文献によって若干異なり、広義・狭義の違いもあるが、表 2-3を参考にして表 2-2

のとおり評価項目を設定した。また、水の華が植物プランクトンの異常現象一般を指して使われる

ことから、植物プランクトン総細胞数も評価項目として付け加えることとした。

表 2-2 評価項目の設定

項目 本資料での定義

1.アオコの発生 アナベナ属(Anabaena)、ミクロキスティス属(Microcystis)

※いずれも藍藻類

2.植物プランクトン総細胞数

表 2-3 文献によるアオコ・水の華の定義

項目 定義 出典

アオコ 藍藻類は特に浮上性を示す種類である場合が多く、水色は緑色

で時には水面にマット状に集積する。このような状態は一般に

“アオコ”と呼ばれている。

水辺の環境調査

広義には濃い緑色を呈する水の華現象一般を指すが、狭義には

その中でしばしば優占種となる藍藻類のミクロキスティス属

を指す。

水質調査の基礎知識

水の華 湖沼やダム湖において植物プランクトンが増殖して水面に集

中し、水色が著しく変色することを指す。

水辺の環境調査

本来は植物プランクトンが増殖して水面近くが緑色や褐色、桃

色などに着色する現象を指したが、現在では植物プランクトン

の異常現象一般を指して使われる。

水質調査の基礎知識

淡水における浮遊性藻類の大増殖現象は一般的に水の華と呼

ばれる。

水の華の発生機構と

その制御

出典:「水辺の環境調査」(1994,(財)ダム水源地環境整備センター 技報道堂出版) 「水質調査の基礎知識」(平成8年,建設省 近畿技術事務所) 「水の華の発生機構とその制御」(1987,東海大学出版会)

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2.2.3 アオコの発生状況

平成20年までは広範囲にアオコが広がったが、本格運用である平成21年以降アオコの発生は日

数・回数・範囲ともに低減している(図 2-1、図 2-3~図 2-11参照)。

図 2-1 アオコ発生日数(左)/アオコ発生回数(右)

図 2-2 アオコが広がった際の状況

186 5

73

118109

0 212

0

20

40

60

80

100

120

140

H15 H16 H17 H18 H19 H20 H21 H22 H23

アオ

コ発

生日

数(日

/年

アオコ発生日数

8

42

12

7

10

02 2

0

2

4

6

8

10

12

14

H15 H16 H17 H18 H19 H20 H21 H22 H23

アオ

コ発

生回

数(回

/年

アオコ発生回数

H20年8/1~9/4(M12付近)

本格運用後 本格運用後

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(1) 年別アオコの発生状況

島地川ダムにおける平成15年~平成22年のアオコの発生状況を平面分布図として以下に示す。

本格運用後の平成21年にはアオコの発生はなく、平成22年~平成23年も限られた範囲に数日出

現したのみであり、装置運用の効果が明確に現れていると考えられる。

図 2-3 アオコ発生分布図[平成 15 年]

図 2-4 アオコ発生分布図[平成 16 年]

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図 2-5 アオコ発生分布図[平成 17 年]

図 2-6 アオコ発生分布図[平成 18 年]

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図 2-7 アオコ発生分布図[平成 19 年]

図 2-8 アオコ発生分布図[平成 20 年]

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図 2-9 アオコ発生分布図[平成 21 年]

図 2-10 アオコ発生分布図[平成 22 年]

図 2-11 アオコ発生分布図[平成 23 年]

発生なし ・アオコらしき濁りを部分的に確認した程度

1回発生 2~3回発生 4回発生 5回以上発生

1回発生 2~3回発生 4回発生 5回以上発生

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2.2.4 アオコ・植物プランクトン総細胞数の低減状況

事業前後にアオコの発生状況や植物プランクトン総細胞数がどう変化したかを、事業前5年間

(平成15年~平成19年)と事業後の3年間(平成21年~平成23年)において比較した。

その結果、アオコ対策装置を運用した4月~10月において、アオコ(アナベナ属とミクロキステ

ィス属の和)の細胞数(7回の調査の合計値)はダム直上流で97%、黒川橋では100%の低減効果

がみられるとともに、運用期間外の1月~3月及び11月~12月(5回の調査の合計値)においても

いずれも100%と高い低減効果がみられた。これは水温勾配の解消効果が運転期間外にも及んだた

めであると考えられる。

植物プランクトン総細胞数では、ダム直上流で89%、黒川橋では93%の低減効果(4月~10月)

となっており、アオコに比べて効果が減少することから、とりわけアオコ(アナベナ属とミクロ

キスティス属)への効果が高いことが伺える。

表 2-4 アオコ(アナベナ属とミクロキスティス属の和)細胞数の比較(表層)

地点名

ダム直上流 黒川橋

4-10月 1-3,11-12月 年合計 4-10月 1-3,11-12月 年合計

H15-H19年平均 52,326 2,020 54,346 98,299 9,884 108,183

H21-H22 年平均 1,368 1 1,369 65 0 65

低減率 97% 100% 97% 100% 100% 100%

H23 年 4,095 0 4,095 2,076 0 2,076

※H23年は1月~9月のデータである。

表 2-5 植物プランクトン総細胞数の比較(表層)

地点名

ダム直上流 黒川橋

4-10月 1-3,11-12月 年合計 4-10月 1-3,11-12月 年合計

H15-H19年平均 95,719 46,149 141,868 196,692 39,623 236,315

H21-H22 年平均 10,396 4,862 15,257 13,926 1,989 15,915

低減率 89% 89% 89% 93% 95% 93%

H23 年 4,982 4,290 9,272 3,956 117 4,073

※H23年は1月~9月のデータである。 ここでいう総細胞数とは、図 2-12に示した毎月の優占種の細胞数の総和を示す。

表層の優占種及び植物プランクトンの経月変化を図 2-12、図 2-13に示す。アオコ対策装置

の本格運用前(平成15年~平成20年)には、7月から11月まで藍藻類が優占する傾向があり、かつ

平成18年からはアナベナ属に変わってミクロキスティス属が増える傾向にあった。しかし、アオ

コ対策装置の本格運用を行った平成21年(2009)以降、細胞数が減少するとともに、藍藻から珪

藻などに優占種が変わり、かつ優占種が月替わりで変化する傾向となっている。

[単位 cell/ml]

[単位 cell/ml]

本格運用後

本格運用後

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図 2-12 貯水池表層の優占種の経月変化

1月 2月 3月 4月 5月 6月 7月 8月 9月 10月 11月 12月

平成15年 ダム直上流 42 106 - 68,280 23,863 3,001 24 3,611 1,658 1,736 2,430 3,520

黒川橋 89 16 24 85,952 9,920 22,493 12,744 175,032 672 19,186 15,424 278

平成16年 ダム直上流 394 6,936 1,128 410 400 1,180 21,640 197,000 45,486 21,132 24,696 11,100

黒川橋 274 1,280 54 19,630 1,058 72,000 90,000 87,516 147,744 4,752 38,016 24,228

平成17年 ダム直上流 36,360 61,776 44,928 - 87 15 6,420 75 5,760 10,368 640 66

黒川橋 45,864 31,068 10,728 - 5,400 333 8,560 1,104 984 1,622 676 221

平成18年 ダム直上流 18 1,300 13,195 8,896 1,439 6 2,122 8,448 6,200 2,830 706 1,240

黒川橋 37 304 3,640 3,900 1,296 761 158 179 6,200 9,800 4,198 1,240

平成19年 ダム直上流 126 26 37 2,500 13 126 1,600 3,800 396 1,820 132 1,360

黒川橋 265 63 30 2,400 5,577 1,505 2,200 1,870 57,200 15,100 5,010 1,330

平成20年 ダム直上流 76 87 483 542 172 98 295 117 15,000 218 1,471 11

黒川橋 52 172 302 244 281 96 244 9,372 142,878 2,386 2,235 17

平成21年 ダム直上流 215 1302 343 34.4 33.6 206.8 153.6 1965.6 17.6 2556 1.2 1.4

黒川橋 139 88 5 93 196.2 2323.2 4.8 121.2 4.4 855.4 6.6 8.4

平成22年 ダム直上流 18.8 27.4 4224 3970 2085 1052 680 1519 321 191 1700 595

黒川橋 46.6 21.2 12.2 5200 1267 910 7334 3297 725 200 2270 580

平成23年 ダム直上流 340 28 4515 15.6 291.4 87.7 1.6 610 3485

黒川橋 226 3 14 21 48 24.75 50.8 1229 845

Asterionella

Fragilaria

Synedra

Cyclotella

Acanthoceros

Ceratium

Cocconeis

Cryptomonas

Nitzschia

Anabaena

Oscillatoria

Mycrocystis

藍藻

珪藻

Eudorina

Pandorina

Volvox

Kirchneriella

Staurastrum

Yamagishiella

Dinobryon

Uroglena

黄金色藻

緑藻

本格運用後

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16

図 2-13 植

物プ

ラン

クト

ンの

経年

変化

(黒

川橋

表層

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17

図 2-14 植

物プ

ラン

クト

ンの

経月

変化

01

10

100

1,0

00

10,0

00

100,0

00

1,0

00,0

00

13579

1113579

1113579

1113579

1113579

1113579

1113579

1113579

1113579

H15

H16

H17

H18

H19

H20

H21

H22

H23

ダム

直上

流M

-1

年月

総細胞数/ml

0.1 01

10

100

1,0

00

10,0

00

100,0

00

1,0

00,0

00

13579

1113579

1113579

1113579

1113579

1113579

1113579

1113579

1113579

H15

H16

H17

H18

H19

H20

H21

H22

H23

黒川

橋M

-1

総細胞数/ml

月 年

0.1

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18

次に、クロロフィルaの経年変化を図 2-15に示す。事業後も黒川橋表層で9月から10月にかけ

て高い月がある傾向は変わっていないが、黒川橋の平成21年10月の優占種はケラチウム(淡水赤

潮の原因の一つ)、平成22年9月の優占種はボルボックスになっている。

ケラチウムは細胞の大きさが60~200μmと大きく*1(ミクロキスティスは群体でも5μm前後

*1)、ボルボックスは数百~数万の細胞が群体を形成するため、細胞数の割にはクロロフィルa濃

度が上昇していると考えられる。

図 2-15 貯水池のクロロフィルa

【クロロフィルaが高くなっている時の優占種】

平成19年9月 藍藻網 ミクロキスティス属 (Microcystis spp.)

平成20年9月 藍藻網 ミクロキスティス属 (Microcystis aeruginosa f. aeruginosa)

平成21年10月 渦鞭毛藻網 ケラチウム属 (Ceratium sp.)

平成22年9月 緑藻綱 ボルボックス属 (Volvox aureus )

平成23年9月 藍藻綱 アナベナ属 (Anabaena smithii )

*1 「やさしい日本の淡水プランクトン図解ハンドブック」(2005,合同出版株式会社)

0

10

20

30

40

50

60

H15.1

H15.3

H15.5

H15.7

H15.9

H15.1

1

H16.1

H16.3

H16.5

H16.7

H16.9

H16.1

1

H17.1

H17.3

H17.5

H17.7

H17.9

H17.1

1

H18.1

H18.3

H18.5

H18.7

H18.9

H18.1

1

H19.1

H19.3

H19.5

H19.7

H19.9

H19.1

1

H20.1

H20.3

H20.5

H20.7

H20.9

H20.1

1

H21.1

H21.3

H21.5

H21.7

H21.9

H21.1

1

H22.1

H22.3

H22.5

H22.7

H22.9

H22.1

1

H23.1

H23.3

H23.5

H23.7

H23.9

クロロフィル

a[m

g/m

3]

ダム直上流表層 中層 下層 黒川橋表層 中層 下層

84 66 380 90 68

ダム直上流表層 中層 下層 黒川橋表層 中層 下層

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19

2.2.5 貯水池の水質状況

アオコ対策装置の設置前後の水質変化を確認するため、表層の水温成層の形成状況及び富栄養

化項目を整理した。

(1) 水温成層の低減状況

アオコ対策施設の運用は水温成層の低減を目的としていることから、水温成層の低減状況を

整理した。

黒川橋地点(M-11)の水温鉛直分布を図 2-16に示す。温められた表層水が底層に送られ

るため、水温勾配が緩くなっていることがわかる。また、ダムサイト(M-0)での水温観測

結果を図 2-17に示す。ダムサイトにおいても、黒川橋と同様水温勾配が緩くなる効果が発揮

されている。

なお、出水により水温成層が低減する場合があることから、日流入量及び回転率をp.30で整

理している。平成21年、平成22年の4月1日から10月31日の回転率は3.11(回/7ヶ月)、3.73(回

/7ヶ月)となっている。これは平成15年~平成22年の8年間でそれぞれ5位、4位と中程度である。

水温の鉛直分布(℃)

平成 20 年

平成 21 年

平成 22 年

平成 23 年

図 2-16 自動観測装置による水質の連続観測結果(M-11:黒川橋)

270

280

50 100 150 200 250 300 350

270

280

0 50 100 150 200 250

270

280

50 100 150 200 250 300 350

270

280

0567891011121314161820222426282930313233

2/1 1/1 3/1 4/1 5/1 6/1 7/1 8/1 9/1 10/1 11/1 12/1

出水

出水

アオコ対策装置

暫定運用

アオコ対策装置

本格運用開始

出水

出水

アオコ対策装置稼働期間

(℃)

標高(EL.m)

標高

(EL.m)

標高

(EL.m)

標高

(EL.m)

Page 22: 第6回 島地川ダム水質改善検討委員会 · 貯水池へ移動した鉄・マンガン・ヒ素 の収支を検討中である。 検討の結果追加された調査結

20

水温の鉛直分布(℃)

平成18年

平成 19 年

平成 20 年

平成 21 年

平成 22 年

平成 23 年

図 2-17 自動観測装置による水質の連続観測結果(M-0:ダムサイト)

250

260

270

280

50 100 150 200 250 300 350

250

260

270

280

吐き出し高さ

0 50 100 150 200 250 300 350

250

260

270

280

0567891011121314161820222426282930313233

243.00

288.00

1

0 50 100 150 200 250 300 350

250

260

270

280

243.00

288.00

1

0 50 100 150 200 250 300 350

250

260

270

280

243.00

288.00

1

50 100 150 200 250 300 350

250

260

270

280データ欠測

243

288

1

2/1 1/1 3/1 4/1 5/1 6/1 7/1 8/1 9/1 10/1 11/1 12/1

243

288

1

アオコ対策装置

暫定運用

高濃度酸素溶解

装置運転開始

出水

黒川橋のグラフ範囲

アオコ対策装置

本格運用開始

出水

出水

出水

出水

230

290

1

標高(EL.m)

標高(EL.m)

標高(EL.m)

標高(EL.m)

標高(EL.m)

標高(EL.m)

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21

表層の水温勾配に関して、「曝気循環施設及び選択取水設備の運用マニュアル(案)」(平成17

年10月版 国土交通省河川局河川環境課、以下曝気マニュアル)では曝気循環施設の運用管理指

標の参考として、表層の水温勾配(水深0.1mと水深3m~5mの差で算出)が指定されていること

から、ダムサイトおよび黒川橋地点、水温勾配の季節的変化を図 2-19に整理した。

なお、表層勾配の算出水深は、島地川ダムの自動観測装置は表層0.5m、表層1m以深1mピッ

チで観測されること、ミクロキスティスの鉛直移動特性(下記文献参照)を踏まえ、表層0.5m-

表層3m(高濃度になりうる範囲)、表層0.5m-表層5m(移動の最大範囲)の2とおりとした。

図 2-18 アオコの鉛直方向の移動習性(参考)

曝気マニュアルでは例として0.5℃/mが示されており、これを参考に表 2-6及び図 2-19・図 2

-20に示すとおり整理すると、0.5℃/m下回る日数は事業前後での大きな違いは生じていない。

一方、水温勾配が0.5℃/mを上回った連続日数で評価すると、アオコ対策装置は出水時に一旦水

温勾配を0.5℃/m以下にさせる効果があると考えられる。装置を稼動している黒川橋地点の状況を

表 2-7に示す。

表 2-6 黒川橋において水温勾配が0.5℃/mを下回った日数

表層3m 表層5m 備考

H20 84※1 68※1 アオコ対策装置暫定運用

H21 56※2 60※2 アオコ対策装置本格運用中

H22 75 81 アオコ対策装置本格運用中

H23 35※3 36※3 アオコ対策装置本格運用中 注)4/1~10/31のデータで算出

※1 8/1~8/7は欠測であったが、天候と前後の日の水温勾配を基に、0.5℃を上回っていたと判断した。

※2 6/6~6/8は欠測であったが、天候と前後の日の水温勾配を基に、0.5℃を上回っていたと判断した。

※3 9/30までのデータで算出。10月は例年0.5℃/mを下回る日数が多く、25日以上追加されると予想される。

高濃度になりうる範囲

移動の 大範囲

Page 24: 第6回 島地川ダム水質改善検討委員会 · 貯水池へ移動した鉄・マンガン・ヒ素 の収支を検討中である。 検討の結果追加された調査結

22

表 2-7 黒川橋において水温勾配が0.5℃/mを上回った連続日数

表層3m 表層5m 備考

H20 123※1 134※1 アオコ対策装置暫定運用

H21 59※2 39※2 アオコ対策装置本格運用中

H22 66 65 アオコ対策装置本格運用中

H23 71※3 43※3 アオコ対策装置本格運用中 注)4/1~10/31のデータで算出

※1 8/1~8/7は欠測であったが、天候と前後の日の水温勾配を基に、0.5℃を上回っていたと判断した。

※2 6/6~6/8は欠測であったが、天候と前後の日の水温勾配を基に、0.5℃を上回っていたと判断した。

※3 9/30までのデータで算出しているが9/28に0.5℃/mを下回っており、10/31までに値が変わる可能性はない。

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23

M-0(ダムサイト) M-11(黒川橋)

図 2-19 水温勾配(表層3m)の季節的変化

2006年

2007年

2008年 2008年(黒川橋:M-11)

2009年 2009年(黒川橋:M-11)

0.0

1.0

2.0

3.0

4.0

5.0

6.0

1月 3月 5月 7月 9月 11月

水温

勾配

(℃

/m

0.0

1.0

2.0

3.0

4.0

5.0

6.0

1月 3月 5月 7月 9月 11月

水温

勾配

(℃/m

0.0

1.0

2.0

3.0

4.0

5.0

6.0

1月 3月 5月 7月 9月 11月

水温

勾配

(℃

/m

0.0

1.0

2.0

3.0

4.0

5.0

6.0

1月 3月 5月 7月 9月 11月

水温

勾配

(℃

/m

0.0

1.0

2.0

3.0

4.0

5.0

6.0

1月 3月 5月 7月 9月 11月

水温

勾配

(℃

/m

0.0

1.0

2.0

3.0

4.0

5.0

6.0

1月 3月 5月 7月 9月 11月

水温

勾配

(℃

/m

平成22年

平成21年

平成20年

平成19年

平成18年

平成23年

0.0

1.0

2.0

3.0

4.0

5.0

6.0

1月 3月 5月 7月 9月 11月

水温

勾配

(℃

/m

0.0

1.0

2.0

3.0

4.0

5.0

6.0

1月 3月 5月 7月 9月 11月

水温

勾配

(℃

/m

0.0

1.0

2.0

3.0

4.0

5.0

6.0

1月 3月 5月 7月 9月 11月

水温

勾配

(℃

/m

平成15年

平成16年

平成17年

アオコ対策装置

暫定運用

アオコ対策装置

本格運用開始

2010年 2010年(黒川橋:M-11)

2011年 2011年(黒川橋:M-11)

0.0

1.0

2.0

3.0

4.0

5.0

6.0

1月 3月 5月 7月 9月 11月

水温

勾配

(℃/m

0.0

1.0

2.0

3.0

4.0

5.0

6.0

1月 3月 5月 7月 9月 11月

水温

勾配

(℃/m

0.0

1.0

2.0

3.0

4.0

5.0

6.0

1月 3月 5月 7月 9月 11月

水温

勾配

(℃/m

0.0

1.0

2.0

3.0

4.0

5.0

6.0

1月 3月 5月 7月 9月 11月

水温

勾配

(℃/m

)平成15年~平成17年は右に記載

Page 26: 第6回 島地川ダム水質改善検討委員会 · 貯水池へ移動した鉄・マンガン・ヒ素 の収支を検討中である。 検討の結果追加された調査結

24

M-0(ダムサイト) M-11(黒川橋)

図 2-20 水温勾配(表層5m)の季節的変化

2003年

2004年

2005年

0.0

1.0

2.0

3.0

4.0

5.0

6.0

1月 3月 5月 7月 9月 11月

水温

勾配

(℃/m

0.0

1.0

2.0

3.0

4.0

5.0

6.0

1月 3月 5月 7月 9月 11月

水温

勾配

(℃/m

0.0

0.5

1.0

1.5

2.0

2.5

3.0

3.5

4.0

4.5

1月 3月 5月 7月 9月 11月

水温

勾配

(℃

/m)

平成22年

平成21年

平成20年

平成19年

平成18年

2006年

2007年

2008年 2008年(黒川橋:M-11)

2009年 2009年(黒川橋:M-11)

0.0

1.0

2.0

3.0

4.0

5.0

6.0

1月 3月 5月 7月 9月 11月

水温

勾配

(℃

/m

0.0

1.0

2.0

3.0

4.0

5.0

6.0

1月 3月 5月 7月 9月 11月

水温

勾配

(℃

/m

0.0

1.0

2.0

3.0

4.0

5.0

6.0

1月 3月 5月 7月 9月 11月

水温

勾配

(℃

/m

0.0

1.0

2.0

3.0

4.0

5.0

6.0

1月 3月 5月 7月 9月 11月

水温

勾配

(℃/m

0.0

1.0

2.0

3.0

4.0

5.0

6.0

1月 3月 5月 7月 9月 11月

水温

勾配

(℃

/m

0.0

1.0

2.0

3.0

4.0

5.0

6.0

1月 3月 5月 7月 9月 11月

水温

勾配

(℃

/m

平成23年

平成15年

平成16年

平成17年

アオコ対策装置

暫定運用

アオコ対策装置

本格運用開始

2010年 2010年(黒川橋:M-11)

2011年 2011年(黒川橋:M-11)

0.0

1.0

2.0

3.0

4.0

5.0

6.0

1月 3月 5月 7月 9月 11月

水温

勾配

(℃/m

0.0

1.0

2.0

3.0

4.0

5.0

6.0

1月 3月 5月 7月 9月 11月

水温

勾配

(℃/m

0.0

1.0

2.0

3.0

4.0

5.0

6.0

1月 3月 5月 7月 9月 11月

水温

勾配

(℃/m

0.0

1.0

2.0

3.0

4.0

5.0

6.0

1月 3月 5月 7月 9月 11月

水温

勾配

(℃/m

平成15年~平成17年は右に記載

Page 27: 第6回 島地川ダム水質改善検討委員会 · 貯水池へ移動した鉄・マンガン・ヒ素 の収支を検討中である。 検討の結果追加された調査結

25

(2) 表層の水温

ここでは、黒川橋における表層の水温を整理した。平成20年と平成21年以降を比較すると7

月から8月にかけて明らかな低減が確認でき、 大で4℃程度水温が低下していた(図 2-21)。

一方でダムサイトの気温を見ると、平成20年が暑いというわけではなく、むしろ平成23年の

方が暑い状況である(図 2-22)。気温と水温の関係を見ても、H20は気温の割に水温が高いこ

とがわかる(図 2-23)。

以上から、アオコ対策装置の効果により、次ページに示すアオコが好む水温(アナベナは27℃

程度が光合成の適温、ミクロキスティスはアナベナよりも高温を好む)よりも、低い表層水温

になったと考えられる。

※欠測の範囲はその前後を直線で結び、灰色で表示している。

図 2-21 黒川橋表層の水温変化

※22℃~には23℃以上も含んで表現している。

図 2-22 ダムサイトの気温と黒川橋の表層

平成20年 平成21年 平成22年 平成23年

0

10

20

30

40

50

60

70

80

H20年 H21年 H22年 H23年

超過

した

日数

黒川橋(M‐11)の表層水温

22℃~

23℃~

24℃~

25℃~

26℃~

0

10

20

30

40

50

60

70

80

90

100

H20年 H21年 H22年 H23年

超過

した

日数

ダムサイトの気温

22℃~

23℃~

24℃~

25℃~

26℃~

1012141618202224262830

4月 5月 6月 7月 8月 9月 10月

(℃

表層0.5mの水温(黒川橋)

平成20年 平成21年 平成22年 平成23年

1012141618202224262830

4月 5月 6月 7月 8月 9月 10月

(℃

表層3mの水温(黒川橋)

平成20年 平成21年 平成22年 平成23年

1012141618202224262830

4月 5月 6月 7月 8月 9月 10月

(℃

表層1mの水温(黒川橋)

平成20年 平成21年 平成22年 平成23年

1012141618202224262830

4月 5月 6月 7月 8月 9月 10月

(℃

表層2mの水温(黒川橋)

平成20年 平成21年 平成22年 平成23年

Page 28: 第6回 島地川ダム水質改善検討委員会 · 貯水池へ移動した鉄・マンガン・ヒ素 の収支を検討中である。 検討の結果追加された調査結

26

※平成20年は8月11日から装置を稼動していることから、7/11~8/11で比較を行った。水温の観測は毎日9時

に行っており、8/11は稼動前のデータである。

図 2-23 気温と黒川橋表層の関係

表 2-8 アオコに関する水温条件

項目 条 件 (文献資料) アナベナ ・一般的には夏~秋に増殖し,冬は一部が湖底に沈み越冬する。1)

・アオコは午前中に表層に多く夕方から夜間には表層集積がなくなり全層に分布する。4)

・アナベナは比較的気温が低い 6 月,9 月~10 月に発生しやすい傾向があり,ミクロキスティスは 7 月~8 月の盛夏に発生しやすい傾向がある。6)

・アナベナはミクロキスティスと比べて,低水温,低塩分で適合性が強い。3)

・アナベナの成長の至的範囲はミクロキスティスよりは低温側にずれている。4)

・アナベナは 27℃程度が光合成の適温。7)

・Anabaena affinis の増殖至適水温は 20℃以上で,15℃でも時間がかかるが増殖可能。5)

・アナベナは 15℃でも増殖するが,ミクロキスティスは 15℃では増殖できない。5)

・20℃以上ではアナベナ,ミクロキスティスともによく増殖するが,ミクロキスティスの比増殖速度はアナベナより優っている。5)

ミクロキスティス ・一般的には夏~秋に増殖し,冬は一部が湖底に沈み越冬する。1)

・5℃で増殖不能,20℃以上で増殖し,最適 30~35℃,40℃で増殖阻害。1)

・30℃を越す湖では,それのみで水の華(アオコ)を形成する傾向がある。2)

・Microcystis は 11℃以下の低水温では急速に光合成活性が落ちる。2)

・増殖最適水温 30~35℃,33~36℃,28℃付近,25~35℃ 7) [資料名]

1):水道水質ハンドブック(平成8年,日本水道新聞社)

2):ラン藻による水の華,特にMicrocystis属の生態学的研究の現状(1988,高村典子)

3):アオコ発生解明調査報告書 三方湖(福井県)(1995年3月,福井県環境保健センター)

4):アオコを作る藍藻とその毒素(渡辺真利代,渡辺真之)

5):アオコ(Anabaena affinis)の増殖特性(鳥取県衛生研究所 第34号,1994,南篠吉之他)

6):福井県三方湖で発生したアオコ(福井県環境センター年報第21巻,1991,青木啓子他)

7):曝気・循環施設マニュアル(案)(平成7年3月,財団法人ダム水源地環境整備センター)

15

20

25

30

15 20 25 30黒川

橋9時

の0.5

m水

温(℃

)

ダムサイト日平均気温(℃)

7/1~8/11の気温と水温

H20

H21

H22

H23

Page 29: 第6回 島地川ダム水質改善検討委員会 · 貯水池へ移動した鉄・マンガン・ヒ素 の収支を検討中である。 検討の結果追加された調査結

27

(3) 富栄養項目

貯水池の富栄養化状況を示す項目として、T-N、T-P、N/P比*2を図 2-24に示す。ダム直上流

底層のT-N、T-Pは平成21年まで増加傾向であったが、その後減少に転じている。

一方、表層のT-N、T-P濃度はこの9年間大きな変化はなく、N/P比も常時20を超えリン(P)制

限になっていることから、アオコの発生の低減はT-NやT-Pの濃度が変化したことによるもので

はないと考えられる。

なお、黒川橋表層においてT-N及びT-Pの平成21年10月の値が大きくなっているのは、水質調

査の4日前に出水があったため(日雨量79mmの降雨)であると考えられる。

図 2-24 貯水池のT-N、T-P、N/P比

*2 正常な生育を示している植物プランクトンが要求する N/P 比は、平均して 10:1~20:1 の範囲にある。従って N/P比が 20 以上の湖では P 制限、10 以下では N がより強く制限に働く。「淡水赤潮」(1987,恒星社厚生閣)

0.00

0.10

0.20

0.30

0.40

H15.1

H15.3

H15.5

H15.7

H15.9

H15.1

1H

16.1

H16.3

H16.5

H16.7

H16.9

H16.1

1H

17.1

H17.3

H17.5

H17.7

H17.9

H17.1

1H

18.1

H18.3

H18.5

H18.7

H18.9

H18.1

1H

19.1

H19.3

H19.5

H19.7

H19.9

H19.1

1H

20.1

H20.3

H20.5

H20.7

H20.9

H20.1

1H

21.1

H21.3

H21.5

H21.7

H21.9

H21.1

1H

22.1

H22.3

H22.5

H22.7

H22.9

H22.1

1H

23.1

H23.3

H23.5

H23.7

H23.9

T-P

[mg/

l]

0.0

1.0

2.0

3.0

4.0

5.0

6.0

7.0

H15.

1H

15.

3H

15.

5H

15.

7

H15.

9H

15.1

1H

16.

1H

16.

3H

16.

5H

16.

7

H16.

9H

16.1

1H

17.

1H

17.

3H

17.

5H

17.

7

H17.

9H

17.1

1H

18.

1H

18.

3H

18.

5H

18.

7

H18.

9H

18.1

1H

19.

1H

19.

3H

19.

5H

19.

7

H19.

9H

19.1

1H

20.

1H

20.

3H

20.

5H

20.

7

H20.

9H

20.1

1H

21.

1H

21.

3H

21.

5H

21.

7

H21.

9H

21.1

1H

22.

1H

22.

3H

22.

5H

22.

7

H22.

9H

22.1

1H

23.

1H

23.

3H

23.

5H

23.

7

H23.

9

T-N

[mg/

l]

0.43

0

100

200

300

H15

.1H

15.3

H15

.5H

15.7

H15

.9H

15.

11

H16

.1H

16.3

H16

.5H

16.7

H16

.9H

16.

11

H17

.1H

17.3

H17

.5H

17.7

H17

.9H

17.

11

H18

.1H

18.3

H18

.5H

18.7

H18

.9H

18.

11

H19

.1H

19.3

H19

.5H

19.7

H19

.9H

19.

11

H20

.1H

20.3

H20

.5H

20.7

H20

.9H

20.

11

H21

.1H

21.3

H21

.5H

21.7

H21

.9H

21.

11

H22

.1H

22.3

H22

.5H

22.7

H22

.9H

22.

11

H23

.1H

23.3

H23

.5H

23.7

H23

.9

N/P

1443 338

ダム直上流表層 中層 下層 黒川橋表層 中層 下層

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28

※N/P比はそれぞれの年平均値より算出

図 2-25 貯水池表層のT-N、T-P、N/P比(年平均)

表層

0.0

0.5

1.0

1.5

2.0

H15 H16 H17 H18 H19 H20 H21 H22T-N

(mg/

L)

表層

0.00

0.01

0.02

0.03

0.04

0.05

H15 H16 H17 H18 H19 H20 H21 H22

T-P(m

g/L)

最大値

最小値

平均値

凡例

表層

0

20

40

60

80

H15 H16 H17 H18 H19 H20 H21 H22

N/P比

P制限

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29

2.2.6 気象状況等による要因

これまでに示したアオコの低減状況がアオコ対策施設のものであるかどうかを確認するため、

気温、流入量、他ダムの状況を整理した。

(1) 日平均気温(ダムサイト)

島地川ダムの気温を以下に示す。アオコの発生しやすい春季~秋季(平成23年は9月30日まで

のデータである)に気温が高かったのは平成16年、平成17年、平成23年である。いずれもアオ

コが多かった年ではない。

アオコが多く発生した(図 2-1 p.9参照)平成18年~平成20年において、気温は平年程度

である。

※アオコが多かった年(H18,H19,H20)にマーキングをしている。

図 2-26 島地川ダムにおける月平均気温

14

16

18

20

22

24

26

28

4月 5月 6月 7月 8月 9月 10月

(℃)

島地川ダムにおける月平均気温

平成13年 平成14年 平成15年 平成16年

平成17年 平成18年 平成19年 平成20年

平成21年 平成22年 平成23年

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30

(2) 貯水池回転率

島地川ダムへの貯水池回転率(平常時最高貯水位における貯水池容量で算出)を以下に示す。

流入量が多く貯水池回転率が高いほど水温勾配が解消されやすいことから、一般的には回転率

が高いほどアオコは発生しにくいと考えられる。

実際、アオコが多く発生した平成19年~平成20年は回転率、年降水量が小さいが、平成18年

は年間回転率及び年降水量が最も多かったにも関わらずアオコが発生している。

平成23年も7月の回転率は平成19年より小さく、降水量は平成20年と同程度であり、前ページ

で示したとおり、気温は平年より高く非常に厳しい気象条件である。しかしながら、アオコの

発生は一部の期間・範囲に留まった。

表 2-9 島地川ダム貯水池回転率(回)

H15 H16 H17 H18 H19 H20 H21 H22 H23 H15-H22 平均

年間 5.19 5.33 4.07 6.20 2.64 3.59 4.53 5.01 4.00※ 4.57

7 月 1.61 0.23 1.18 1.15 0.87 0.30 1.52 1.43 0.75 1.04

4-10 月 4.29 4.71 3.02 5.28 2.22 2.52 3.11 3.73 3.44※ 3.61

年降水量[mm] 2,155 2,510 1,937 2,558 1,409 1,729 2,081 2,352 1,747※ 2,011

アオコ発生状況 中 小 小 大 大 大 無し 小 中 -

凡例)青字:H15~H22のうちで上位2位まで 赤字:H15~H22のうちで下位2位まで

アオコ発生状況:小:10日以下 中:10日~30日 大:30日以上

※H23は9月までの集計値で作成

Page 33: 第6回 島地川ダム水質改善検討委員会 · 貯水池へ移動した鉄・マンガン・ヒ素 の収支を検討中である。 検討の結果追加された調査結

31

図 2-27(1) 貯水位と流入量・放流量の経年変化(1/3)

0

10

20

30

40

50

265

270

275

280

285

290H

15.0

1

H15.0

2

H15.0

3

H15.0

4

H15.0

5

H15.0

6

H15.0

7

H15.0

8

H15.0

9

H15.1

0

H15.1

1

H15.1

2

流入

・放

流量

[m3/s

]

貯水

位[m

]

平成15年

アオコ中

0

50

100

150

200

250

降雨

量[m

m]

0

10

20

30

40

50

265

270

275

280

285

290

H16

.01

H16

.02

H16

.03

H16

.04

H16

.05

H16

.06

H16

.07

H16

.08

H16

.09

H16

.10

H16

.11

H16

.12

流入

・放

流量

[m3/s]

貯水

位[m

]

0

50

100

150

200

250

降雨

量[m

m]

平成16年

アオコ小

0

10

20

30

40

50

265

270

275

280

285

290

H17.0

1

H17.0

2

H17.0

3

H17.0

4

H17.0

5

H17.0

6

H17.0

7

H17.0

8

H17.0

9

H17.1

0

H17.1

1

H17.1

2

流入

・放流

量[m

3/s]

貯水

位[m

]

平成17年

アオコ小

0

50

100

150

200

250

降雨

量[m

m]

0

10

20

30

40

50

265

270

275

280

285

290

H18.0

1

H18.0

2

H18.0

3

H18.0

4

H18.0

5

H18.0

6

H18.0

7

H18.0

8

H18.0

9

H18.1

0

H18.1

1

H18.1

2

流入

・放流

量[m

3/s]

貯水

位[m

]

平成18年

アオコ大

0

50

100

150

200

250

降雨

量[m

m]

貯水位 流入量 放流量

降水量[mm]

降水量[mm]

降水量[mm]

降水量[mm]

降水量[mm]

Page 34: 第6回 島地川ダム水質改善検討委員会 · 貯水池へ移動した鉄・マンガン・ヒ素 の収支を検討中である。 検討の結果追加された調査結

32

図 2-28(2) 貯水位と流入量・放流量の経年変化(2/3)

0

10

20

30

40

50

265

270

275

280

285

290H

19.0

1

H19

.02

H19

.03

H19

.04

H19

.05

H19

.06

H19

.07

H19

.08

H19

.09

H19

.10

H19

.11

H19

.12

流入

・放

流量

[m3/s]

貯水

位[m

]

平成19年

アオコ大

0

50

100

150

200

250

4 0

降雨

量[m

m]

0

10

20

30

40

50

265

270

275

280

285

290

H20.

01

H20.

02

H20.

03

H20.

04

H20.

05

H20.

06

H20.

07

H20.

08

H20.

09

H20.

10

H20.

11

H20.

12

流入

・放

流量

[m3/s]

貯水

位[m

]

平成20年

アオコ大

0

50

100

150

200

250

降雨

量[m

m]

0

10

20

30

40

50

265

270

275

280

285

290

H21.

01

H21.

02

H21.

03

H21.

04

H21.

05

H21.

06

H21.

07

H21.

08

H21.

09

H21.

10

H21.

11

H21.

12

流入

・放

流量

[m3/s]

貯水

位[m

]

0

50

100

150

200

250

降雨

量[m

m]

平成21年

アオコ無

0

10

20

30

40

50

265

270

275

280

285

290

H22.

01

H22.

02

H22.

03

H22.

04

H22.

05

H22.

06

H22.

07

H22.

08

H22.

09

H22.

10

H22.

11

H22.

12

流入

・放

流量

[m3/s]

貯水

位[m

]

平成22年

アオコ小

0

50

100

150

200

250

降雨

量[m

m]

貯水位 流入量 放流量

降水量[mm]

降水量[mm]

降水量[mm]

降水量[mm]

Page 35: 第6回 島地川ダム水質改善検討委員会 · 貯水池へ移動した鉄・マンガン・ヒ素 の収支を検討中である。 検討の結果追加された調査結

33

図 2-27(3) 貯水位と流入量・放流量の経年変化(3/3)

0

10

20

30

40

50

265

270

275

280

285

290

H23

.01

H23

.02

H23

.03

H23

.04

H23

.05

H23

.06

H23

.07

H23

.08

H23

.09

H23

.10

H23

.11

H23

.12

流入

・放流

量[m

3/s]

貯水

位[m

]平成23年

アオコ中

0

50

100

150

200

250

降雨

量[m

m]

貯水位 流入量 放流量

降水量[mm]

Page 36: 第6回 島地川ダム水質改善検討委員会 · 貯水池へ移動した鉄・マンガン・ヒ素 の収支を検討中である。 検討の結果追加された調査結

34

(3) 中国地整内他ダムの状況

中国地方整備局管内のダムにアオコの発生状況の聞き取りを行った。

中国地方整備局管内で近年アオコが発生しているダム(島地川ダムを除く)において、平成

21年~平成23年の3年ともアオコが発生しているダムが存在する。

以上より、島地川ダムでのアオコの増減は気温との関係は小さく、降水量や貯水池回転率には

関係があると考えられる。一番の要因はアオコ対策装置の運用効果であると考えられる。

貯水池の状況として、以下が想定される。

1)アオコ対策装置により、表層の温かい水を底層に送ることで、表層水温の上昇が抑制され、

アオコ増殖の最適水温より下回る状況を形成している。

2)出水により水温勾配が一時的に解消されると、循環によりアオコが日光の届かない底部に

引き込まれやすい状況がさらに形成される。

2.2.7 アオコ対策施設の効果のまとめ

装置の本格運用(平成21年)以降、アオコ(アナベナ属、ミクロキスティス属)の発生

は目視観測の結果として、大きく減少した。

装置を運用した4月~10月において、アオコ(アナベナ属、ミクロキスティス属)の細

胞数はダム直上流で97%、黒川橋では100%の低減効果がみられた。植物プランクトン総

細胞数でも、ダム直上流で89%、黒川橋では93%と高い低減効果があった。

気温が上昇する年でも、表層の水温上昇が抑制されており、アオコの最適水温よりも低

い水温に保つことができた。

表層の水温勾配が0.5℃/mを下回る日数は大きくは変化しないが、0.5℃/mが連続して

上回る日数は大きな低減がみられた。

T-N、T-Pなどの富栄養化項目は大きな変化がなく、アオコの低減効果は水質の変化では

なく、表層の水温条件の変化であると考えられる。

気象条件や貯水池回転率(流入量)、他ダムのアオコ発生状況を踏まえると、アオコの増

減と気温には関連性が小さく、貯水池回転率(流入量)には関連があると考えられる。

アオコの低減は主にアオコ対策施設の効果によるものであり、次に貯水池回転率(流入

量)と要因としてあげられる。

Page 37: 第6回 島地川ダム水質改善検討委員会 · 貯水池へ移動した鉄・マンガン・ヒ素 の収支を検討中である。 検討の結果追加された調査結

35

第3章 今後のアオコ対策施設の運用方法

本格運用を行った平成21年以降、アオコの発生が大幅に解消している。また、アオコ対策装

置の設置後に発生した湖面の呈色現象は珪藻(シクロテラやアステリオネラ)、渦鞭毛藻(ケラ

チウム属)、緑藻(ボルボックス属)であり、アオコ(藍藻類:アナベナ属やミクロキスティス

属)対策としてのプロペラ撹拌式水質改善装置は十分に効果を発揮している。

このため、アオコ対策装置の基数については現況どおり1基のままとし、増強は行わないも

のとする。

また、現在の運用でアオコ対策効果が見られることから、今後も以下の運用を継続するもの

とする。

【アオコ対策施設(プロペラ撹拌式水質改善装置)の運用方法】

・運用方針 :アオコの「発生抑制」を目標とする。

・運用期間 :4月1日~10月31日(黒川橋の水深0.5mと3mの水温差によって前後する※)

・運用条件 :連続運転とする。

※4月1日以前にM-11の自動観測値において0.5m-3mの水温差が1.25℃を越えた場合には、

稼動を開始する。また、10月31日にM-11の自動観測値において0.5m-3mの水温差が1.25℃

を越えている場合、1.25℃を下回るまで、運転を継続するものとする。

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36

第4章 水質モニタリング調査(案)

来年以降、アオコが発生した場合には、「改訂 ダム貯水池水質調査要領」(平成8年 ダム水源

地環境整備センター)に基づき、以下の調査を行う計画である。

表 4-1 アオコ発生時の対策調査

調査項目 調査地点 調査深さ 調査頻度 実施者

A 目視確認 貯水池全域 - 原則毎日 管理支所

B 植物プランクトン M-1

M-11

生物異常発生

箇所

表層(0.3m) 発生時 水質調査業務

C pH、COD、SS、

T-N、無機態窒素

T-P、無機態リン

クロロフィルa、フィオフ

ェチン

水温、DO(計器測定)

M-1

M-11

生物異常発生

箇所の流心

表層(0.3m)

中層(1/2水深)

底層(底から1m)

D 水温、濁度、EC、pH、

DO、クロロフィルa

【自動水質観測装置】

M-1

M-11

水深1mごと 毎日9時

管理支所

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37

表 4-2 参考:現在実施中の水質モニタリング調査(重金属対策)

モニタリン

グ目的

モニタリング項

形式

モニタリング手法

地点

深度

頻度

モニタリング時期

備考

施工後

運転管

ダム管理上

必要な基礎

データ入手

【自動水質観測

装置】

水温、濁度、EC、

pH、DO、クロロフ

ィルa

常時

(既設

)

センサーによる水深方

向の自動計測(表層~

243EL.m)

M0

1m毎

連続監視

毎日

・継続的な維持

管理を適切に実

運用検

証調査

①施設整備

後の水質改

善状況を詳

細に把握

②施設効果

の評価

運用ルール

見直し検討

【簡易水質調査】

水温

、pH、

DO、

EC

小型船

舶利用

多項目水質センサーを

湖内に投入、深度方向に

計測

M1、M

2、M3、

M6

表 4-3

~表

4-5参照

月2回のう

ち1回は定

期水質調査

時に併せて

実施

月2回

・H23年

(24回

)

H24以降は月1回

の予定

【採水分析】

鉄、マンガン、ヒ

素、蒸発残留物

小型船

舶利用

・所定の深度から採水

し、室内試験を行う。・

採水時に透明度、色度、

を計測し、試験水の水

温、pHを計測

M1、M

表 4-3

、表

4-5参照

月1回

の定

期水

質調

時に

併せ

実施

毎月

・H23年

(12回

)

H24以降は

1mピ

ッチではなく、

数量を削減予定

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38

表 4-3 M-1において実施中の水質モニタリング調査(重金属対策)

地 点 M-1(計器測定) M-1(分析項目)

測定水深 水温 DO 導電率 pH ヒ素 鉄 マンガン溶解性 マンガン

溶解性鉄

蒸発残留物

EL(m) 水深(m) ℃ mg/L mS/m - mg/L mg/L mg/L mg/L mg/L mg/L

286.5 表層 ● ● ● ● ● ● ● ● ● ●

285.0 ● ● ● ● ●

280.0 ● ● ● ● ●

275.0 ● ● ● ● ●

270.0 ● ● ● ● ●

265.0 ● ● ● ● ●

260.0 ● ● ● ● ●

256.5 ● ● ● ● ●

255.0 ● ● ● ● ●

250.0 ● ● ● ● ● ● ● ● ● ●

249.0 ● ● ● ●

248.0 ● ● ● ● ●

247.0 ● ● ● ●

246.0 ● ● ● ● ●

245.0 ● ● ● ● ● ● ● ● ● ●

244.0 ● ● ● ● ●

243.0 ● ● ● ● ●

242.0 ● ● ● ● ●

241.0 ● ● ● ● ●

240.0 ● ● ● ● ● ● ● ● ● ●

239.0 ● ● ● ● ● ● ● ●

238.0 ● ● ● ● ● ● ● ●

237.0 ● ● ● ● ● ● ● ●

236.0 ● ● ● ● ● ● ● ●

235.0 ● ● ● ● ● ● ● ● ● ●

234.0 ● ● ● ● ● ● ● ●

233.0 ● ● ● ● ● ● ● ●

232.0 ● ● ● ● ● ● ● ●

231.0 ● ● ● ● ● ● ● ●

230.0 ● ● ● ● ● ● ● ● ● ●

229.0 ● ● ● ● ● ● ● ● ● ●

228.0 ● ● ● ● ● ● ● ● ● ●

227.0 最深部 ● ● ● ● ● ● ● ● ● ●

↑2週間に1回 ↑1ヶ月に1回

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39

表 4-4 M-2,M-3において実施中の水質モニタリング調査(重金属対策)

地 点 M-2 及び M-3(計器測定)

測定水深 水温 DO 導電率 pH

EL(m) 水深(m) ℃ mg/L mS/m -

286.5 表層 ● ● ● ●

285.0 ● ● ● ●

280.0 ● ● ● ●

275.0 ● ● ● ●

270.0 ● ● ● ●

265.0 ● ● ● ●

260.0 ● ● ● ●

255.0 ● ● ● ●

250.0 ● ● ● ●

249.0 ● ● ● ●

248.0 ● ● ● ●

247.0 ● ● ● ●

246.0 ● ● ● ●

245.0 ● ● ● ●

244.0 ● ● ● ●

243.0 ● ● ● ●

242.0 ● ● ● ●

241.0 ● ● ● ●

240.0 ● ● ● ●

239.0 ● ● ● ●

238.0 ● ● ● ●

237.0 ● ● ● ●

236.0 ● ● ● ●

235.0 ● ● ● ●

234.0 ● ● ● ●

233.0 ● ● ● ●

232.0 ● ● ● ●

231.5 最深部 ● ● ● ●

↑2週間に1回

←M-3ではこの辺りまで

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40

表 4-5 M-6において実施中の水質モニタリング調査(重金属対策)

地 点 M-6(計器測定) M-6(分析項目)

測定水深 水温 DO 導電率 pH ヒ素 鉄 マンガン溶解性 マンガン

蒸発 残留物

EL(m) 備考 ℃ mg/L mS/m - mg/L mg/L mg/L mg/L mg/L

286.5 表層 ● ● ● ● ● ● ● ● ●

285.0 ● ● ● ● ● ● ● ●

280.0 ● ● ● ● ● ● ● ●

275.0 ● ● ● ● ● ● ● ●

270.0 ● ● ● ● ● ● ● ●

265.0 ● ● ● ● ● ● ● ●

260.0 ● ● ● ● ● ● ● ●

255.0 ● ● ● ● ● ● ● ● ●

254.0 ● ● ● ● ● ● ●

253.0 ● ● ● ● ● ● ● ●

252.0 ● ● ● ● ● ● ●

251.0 ● ● ● ● ● ● ● ● ●

250.0 ● ● ● ● ● ● ●

249.0 ● ● ● ● ● ● ● ●

248.0 ● ● ● ● ● ● ●

247.0 ● ● ● ● ● ● ● ● ●

246.4 最深部 ● ● ● ● ● ● ● ● ●

↑2週間に1回 ↑1ヶ月に1回

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41

第5章 重金属類対策の進捗報告

現在、高濃度酸素溶解装置によってM-1付近の底層に含まれる重金属類(ヒ素、鉄、マンガ

ン)の対策を行っている。その中間報告を行う。なお、運用に関する詳細な検討は第7回委員会で

報告する予定である。

5.1 高濃度酸素溶解装置の稼働状況

高濃度酸素溶解装置は平成22年4月に酸素供給を開始した。

図 5-1 高濃度酸素溶解装置の設置状況

運転は24h連続稼動である。装置の吐き出し高さは図 5-2に示すとおりである。

図 5-2 高濃度酸素溶解装置の吐き出し高さ

300.0

300.2

400320.6

350

流木止め

369.5300.3

M-1

325

376.7

300.2

351.0 3325

301.1

299.8

島 地 川 ダ ム

W C

300.1

気体供給設備

係留ワイヤーウィンチ設備

ケーブル・エアー管

酸素溶解装置

最低水位247.5

220

230

240

250

260

270

280

4/1 5/1 6/1 7/1 8/1 9/1 10/1 11/1 12/1 1/1 2/1 3/1 4/1 5/1 6/1 7/1 8/1 9/1

EL.m

酸素消費速度の確認

底層部の酸化を開始

248

242

248

246

253

245

H22 H23

271

258

243

231 235

239

243

239

250

231

表層のマンガン対策

循環期の停止

243

239

246

標高(EL.m)

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42

図 5-3 改善対象範囲(縦断図)

※青線で示すEL.250m以深を対象とする。

図 5-4 改善対象範囲(平面図)

▽平常時 高貯水位 EL.286.5m

最低水位247.5

250

230

270

290

改善対象範囲 EL.250m以深

標高(EL.m)

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5.2 水質の改善状況

5.2.1 金属の低減状況

(1) 経年変化

M-1底層(EL.227m付近)におけるヒ素及び鉄・マンガンの低減は下記のとおりであ

る。平成23年4月から底層部に高濃度酸素溶解装置を運用したため、鉄の酸化及びヒ素の

水酸化鉄への吸着が生じている。

マンガンについても酸化は進んでいるものの、最深部のデータで表現しているため、濃

度は低減していないが、鉛直分布を見ると(図 5-10参照)、次第に濃度が低減しているこ

とがわかる。

図 5-5 ヒ素の経年変化

図 5-6 鉄の経年変化

0

5

10

15

20

25

30

35

40

45

50

55

60

H5

H7

H9

H11

H13

H15

H17

H19

H20

.4H

20.6

H20

.8H

20.1

0H

20.1

2H

21.2

H21

.4H

21.6

H21

.8H

21.1

0H

21.1

2H

22.2

H22

.4H

22.6

H22

.8H

22.1

0H

22.1

2H

23.2

H23

.4H

23.6

H23

.8

(mg/L)

鉄・表層(mg/L)鉄・中層(mg/L)鉄・底層(mg/L)鉄(三層)平均(mg/L)参考値

0.00

0.02

0.04

0.06

0.08

0.10

0.12

0.14

0.16

H5

H7

H9

H11

H13

H15

H17

H19

H20.4

H20.6

H20.8

H20.

10

H20.

12

H21.2

H21.4

H21.6

H21.8

H21.

10

H21.

12

H22.2

H22.4

H22.6

H22.8

H22.

10

H22.

12

H23.2

H23.4

H23.6

H23.8

(mg/L)表層中層底層年(三層)平均環境基準

※平成19年12月までは定期調査の値(年1回)、平成20年1月以降は臨時調査(年12回)、平成23年4月~9月は臨時調査の速報値

改善の参考値

ヒ素=0.01mg/L

(環境基準)

酸素供給開始(中層) 底層への酸素供給開始

※平成19年12月までは定期調査の値(年1回)、平成20年1月以降は臨時調査(年12回)、平成23年4月~9月は臨時調査の速報値

改善目標

鉄=0.3mg/L

酸素供給開始(中層)

底層への酸素供給開始

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44

図 5-7 マンガンの経年変化

0

5

10

15

20

25

H5

H7

H9

H11

H13

H15

H17

H19

H20.4

H20.6

H20.8

H20.1

0

H20.1

2

H21.2

H21.4

H21.6

H21.8

H21.1

0

H21.1

2H

22.2

H22.4

H22.6

H22.8

H22.1

0H

22.1

2

H23.2

H23.4

H23.6

H23.8

(mg/L)

マンガン・表層(mg/L)マンガン・中層(mg/L)マンガン・底層(mg/L)マンガン・(三層)平均(mg/L)参考値

※平成19年12月までは定期調査の値(年1回)、平成20年1月以降は臨時調査(年12回)、平成23年4月~9月は臨時調査の速報値

改善目標

マンガン=0.05mg/L

酸素供給開始(中層)

底層への酸素供給開始

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45

(2) ヒ素の低減状況

鉛直方向のヒ素の低減状況を示す。底層部への酸素供給を受け、M-1のヒ素はほとん

どなくなっている。一方、酸素の届いていないM-6(供給対象外)では変化はみられな

い。

M-1

M-6

図 5-8 ヒ素の鉛直分布

中層への酸素供給開始(H22年度) 底層への酸素供給開始(H23年度)事業前(H21年度)

225230235240245250255260265270275280285290

0 5 10 15 20 25 30

水位

(EL.m

)

水温(℃)平成22年4月30日

平成22年5月31日

平成22年6月30日

平成22年7月27日

平成22年8月30日

平成22年9月30日

平成22年10月26日

平成22年11月29日

平成23年1月4日

平成23年1月31日

平成23年2月28日

225230235240245250255260265270275280285290

0 5 1015202530

水位

(EL.m

)

水温(℃)平成21年4月24日

平成21年5月12日

平成21年6月2日

平成21年7月7日

平成21年8月4日

平成21年9月2日

平成21年10月6日

平成21年11月5日

平成21年12月2日

平成22年1月6日

平成22年2月4日

平成22年3月3日

2252302352402452502552602652702752802852900 5 1015202530

水位

(EL.m

) 水温(℃)平成23年4月27日

平成23年5月31日

平成23年6月29日

平成23年7月27日

平成23年8月30日

平成23年9月28日

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46

(3) 鉄の低減状況

鉛直方向の低減状況を示す。底層部への酸素供給を受け、M-1の鉄もほとんどなくな

っている。一方、酸素の届いていないM-6(供給対象外)では変化はみられない。

M-1

M-6

図 5-9 鉄の鉛直分布

中層への酸素供給開始(H22年度) 底層への酸素供給開始(H23年度)事業前(H21年度)

225230235240245250255260265270275280285290

0 5 10 15 20 25 30

水位

(EL.m

)

水温(℃)平成22年4月30日

平成22年5月31日

平成22年6月30日

平成22年7月27日

平成22年8月30日

平成22年9月30日

平成22年10月26日

平成22年11月29日

平成23年1月4日

平成23年1月31日

平成23年2月28日225230235240245250255260265270275280285290

0 5 1015202530

水位

(EL.m

)

水温(℃)平成21年4月24日

平成21年5月12日

平成21年6月2日

平成21年7月7日

平成21年8月4日

平成21年9月2日

平成21年10月6日

平成21年11月5日

平成21年12月2日

平成22年1月6日

平成22年2月4日

平成22年3月3日

2252302352402452502552602652702752802852900 5 1015202530

水位

(EL.m

) 水温(℃)平成23年4月27日

平成23年5月31日

平成23年6月29日

平成23年7月27日

平成23年8月30日

平成23年9月28日

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47

(4) マンガンの低減状況

マンガンについては、M-1においてまだ残っているものの、着実に低減しており、前

回の委員会で報告した予測値よりもやや早めに低減が生じている(ただし、最下層では中

層からの沈降成分によりマンガン濃度が高くなっている)。

M-1

M-6

図 5-10 マンガン鉛直分布

中層への酸素供給開始(H22年度) 底層への酸素供給開始(H23年度)事業前(H21年度)

1/4程度に減少

大幅に減少

225230235240245250255260265270275280285290

0 5 10 15 20 25 30

水位

(EL.m

)

水温(℃)平成22年4月30日

平成22年5月31日

平成22年6月30日

平成22年7月27日

平成22年8月30日

平成22年9月30日

平成22年10月26日

平成22年11月29日

平成23年1月4日

平成23年1月31日

平成23年2月28日225230235240245250255260265270275280285290

0 5 1015202530

水位

(EL.m

)

水温(℃)平成21年4月24日

平成21年5月12日

平成21年6月2日

平成21年7月7日

平成21年8月4日

平成21年9月2日

平成21年10月6日

平成21年11月5日

平成21年12月2日

平成22年1月6日

平成22年2月4日

平成22年3月3日

2252302352402452502552602652702752802852900 5 1015202530

水位

(EL.m

) 水温(℃)平成23年4月27日

平成23年5月31日

平成23年6月29日

平成23年7月27日

平成23年8月30日

平成23年9月28日

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48

表 5-1 M-1のマンガン予測値(mg/L)(平成23年)[mg/L・日]

測定高さ

(EL.m) 3月上旬 4月上旬 5月上旬 6月上旬 7月上旬 8月上旬 9月上旬 10月上旬 11月上旬 12月上旬 1月上旬

260 0.53 0.53 0.53 0.025 0.025 0.025 0.025 0.025 0.025 0.025 0.025

255 0.74 0.74 0.74 0.025 0.025 0.025 0.025 0.025 0.025 0.025 0.025

250 0.85 0.85 0.85 0.025 0.025 0.025 0.025 0.025 0.025 0.025 0.025

248 2.1 2.1 2.1 0.66 0.025 0.025 0.025 0.025 0.025 0.025 0.025

245 3.3 3.3 3.3 0.83 0.025 0.025 0.025 0.025 0.025 0.025 0.025

244 5.8 5.8 5.8 5.6 5.6 1.15 0.025 0.025 0.025 0.025 0.025

242 8.2 8.2 8.2 7.7 7.7 2.26 0.025 0.025 0.025 0.025 0.025

240 9.7 9.7 9.7 10 10 3.59 0.22 0.025 0.025 0.025 0.025

238 12 12 12 12 12 12 12 4.81 0.76 0.025 0.025

236 11 11 11 11 11 11 11 4.19 0.48 0.025 0.025

234 11 11 11 11 11 11 11 4.19 0.48 0.025 0.025

232 11 11 11 11 11 11 11 11 11 4.19 0.48

230 11 11 11 11 11 11 11 11 11 4.19 0.48

228 10 10 10 10 10 10 10 10 10 3.59 0.22

凡例)赤字は酸化開始時

図 5-11 マンガン予測値と実績値の比較

概ね一致している

225

230

235

240

245

250

255

260

265

270

275

280

285

2900 3 6 9 12 15

水位

(EL.m

)

マンガン(mg/l)

5月上旬予測値

10月上旬予測値

平成23年4月27日

平成23年9月28日

最低水位247.5

250

230

270

290

標高

(m)

5月上旬予測値

10月上旬予測値

平成23年4月27日

平成23年9月28日

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49

(5) EC(導電率)の低減状況

ECについては昨年の同時期に比べて、EL.250m以深で半分程度の値になっている。また、

鉛直方向の傾きが緩くなっており、底層部における明確なマンガン等の境界はECからは推

定できない状況となった。

M-6についてはほとんど変化していない。

M-1

M-6

図 5-12 ECの鉛直分布

中層への酸素供給開始(H22年度) 底層への酸素供給開始(H23年度)事業前(H21年度)

225230235240245250255260265270275280285290

0 5 10 15 20 25 30

水位

(EL.m

)

水温(℃)平成22年4月30日

平成22年5月31日

平成22年6月30日

平成22年7月27日

平成22年8月30日

平成22年9月30日

平成22年10月26日

平成22年11月29日

平成23年1月4日

平成23年1月31日

平成23年2月28日225230235240245250255260265270275280285290

0 5 1015202530

水位

(EL.m

)

水温(℃)平成21年4月24日

平成21年5月12日

平成21年6月2日

平成21年7月7日

平成21年8月4日

平成21年9月2日

平成21年10月6日

平成21年11月5日

平成21年12月2日

平成22年1月6日

平成22年2月4日

平成22年3月3日

2252302352402452502552602652702752802852900 5 1015202530

水位

(EL.m

) 水温(℃)平成23年4月27日

平成23年5月31日

平成23年6月29日

平成23年7月27日

平成23年8月30日

平成23年9月28日

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50

5.2.2水温・DO の状況

(1) 水温の鉛直分布

水温の鉛直分布を以下に示す。大きな変化はないものの、最下層の水温が以前よりも低

くなっており、水温逆勾配が解消されつつあることがわかる。

M-1

M-6

図 5-13 水温の鉛直分布

中層への酸素供給開始(H22年度) 底層への酸素供給開始(H23年度)事業前(H21年度)

225230235240245250255260265270275280285290

0 5 10 15 20 25 30

水位

(EL.m

)

水温(℃)平成22年4月30日

平成22年5月31日

平成22年6月30日

平成22年7月27日

平成22年8月30日

平成22年9月30日

平成22年10月26日

平成22年11月29日

平成23年1月4日

平成23年1月31日

平成23年2月28日225230235240245250255260265270275280285290

0 5 1015202530

水位

(EL.m

)

水温(℃)平成21年4月24日

平成21年5月12日

平成21年6月2日

平成21年7月7日

平成21年8月4日

平成21年9月2日

平成21年10月6日

平成21年11月5日

平成21年12月2日

平成22年1月6日

平成22年2月4日

平成22年3月3日

2252302352402452502552602652702752802852900 5 1015202530

水位

(EL.m

) 水温(℃)平成23年4月27日

平成23年5月31日

平成23年6月29日

平成23年7月27日

平成23年8月30日

平成23年9月28日

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51

(2) DO の鉛直分布

DOについては、M-1は平成23年9月28日現在で、最下層を除き全ての水深で5mg/Lを越

えている。

一方、M-6に変化はみられない。

M-1

M-6

※H22年度はDO計は測定範囲が20mg/L以下であり、H23年度は測定範囲が50mg/L以下であることからこれらを上回る値については参考値として扱った。

図 5-14 DOの鉛直分布

中層への酸素供給開始(H22年度) 底層への酸素供給開始(H23年度)事業前(H21年度)

225230235240245250255260265270275280285290

0 5 10 15 20 25 30

水位

(EL.m

)

水温(℃)平成22年4月30日

平成22年5月31日

平成22年6月30日

平成22年7月27日

平成22年8月30日

平成22年9月30日

平成22年10月26日

平成22年11月29日

平成23年1月4日

平成23年1月31日

平成23年2月28日225230235240245250255260265270275280285290

0 5 1015202530

水位

(EL.m

)

水温(℃)平成21年4月24日

平成21年5月12日

平成21年6月2日

平成21年7月7日

平成21年8月4日

平成21年9月2日

平成21年10月6日

平成21年11月5日

平成21年12月2日

平成22年1月6日

平成22年2月4日

平成22年3月3日

2252302352402452502552602652702752802852900 5 1015202530

水位

(EL.m

) 水温(℃)平成23年4月27日

平成23年5月31日

平成23年6月29日

平成23年7月27日

平成23年8月30日

平成23年9月28日

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52

5.3 底質の変化

底質について、酸素供給前(平成21年)、酸素供給2ヶ月後(平成22年)、酸素供給14ヶ月

後(平成23年)の調査結果を以下に示す。酸素供給前(平成21年)と比較して酸素供給14ヶ

月後(平成23年)に3割以上変化があったものは、ダム直上流において、ヒ素(-43%)、鉄

(+42%)、マンガン(+50%)、総硫化物(+91%)、黒川橋で総硫化物(-41%)であった。

図 5-15(1) 底質調査結果(M-1:ダム直上流、M-11:黒川橋)

ダム直上流

0

10

20

30

40

50

60

70

CODsed

(mgO

/g)

黒川橋

0

10

20

30

40

50

60

70

CODsed

(mgO

/g)

ダム直上流

0.0

0.5

1.0

1.5

2.0

2.5

3.0

3.5

4.0

総窒素

(mgN

/g)

黒川橋

0.0

0.5

1.0

1.5

2.0

2.5

3.0

3.5

4.0

総窒素

(mgN

/g)

ダム直上流

0.000

0.005

0.010

0.015

0.020

ヒ素

(mg/

L)

黒川橋

0.000

0.005

0.010

0.015

0.020

ヒ素

(mg/

L)

ダム直上流

0.000

0.001

0.002

0.003

0.004

チオベンカルブ

(mg/

L)

黒川橋

0.000

0.001

0.002

0.003

0.004

チオベンカルブ

(mg/

L)

ダム直上流

0.00

0.20

0.40

0.60

0.80

1.00

総リン

(mgP

/g)

黒川橋

0.00

0.20

0.40

0.60

0.80

1.00

総リン

(mgP

/g)

ダム直上流

0.000

0.002

0.004

0.006

0.008

0.010

(mg/

L)

黒川橋

0.000

0.002

0.004

0.006

0.008

0.010

(mg/

L)

ダム直上流

0

2

4

6

8

10

12

14

強熱減量

(%)

黒川橋

0

2

4

6

8

10

12

14

強熱減量

(%)

ダム直上流

0

10,000

20,000

30,000

40,000

50,000

(mgF

e/kg

)

黒川橋

0

10,000

20,000

30,000

40,000

50,000

(mgF

e/kg

)

平成21年5月12日平成22年5月28日

平成23年5月31日

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図 5-15(2) 底質調査結果(M-1:ダム直上流、M-11:黒川橋)

平成21年5月 平成22年5月

平成23年5月

図 5-16 底質の状況(M-1:ダム直上流)

外観:灰色 弱硫化水素臭 外観:灰色 弱硫化水素臭

外観:黒褐色 弱硫化水素臭

0

500

1,000

1,500

2,000

2,500

マンガン

(mgM

n/kg

)

ダム直上流

0

500

1,000

1,500

2,000

2,500

マンガン

(mgM

n/kg

)

黒川橋

0.11

0.35

0.21

0.0

0.5

1.0

1.5

総硫化物

(mg/

g)

ダム直上流

0.0

0.5

1.0

1.5

総硫化物

(mg/

g)

黒川橋

平成21年5月12日平成22年5月28日

平成23年5月31日

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第6章 まとめ(事務局(案))

アオコ対策装置について

・ 平成21年の本格運用後、アオコが大幅に減少した。優占する植物プラ

ンクトンは藍藻から珪藻や渦鞭毛藻などに変化しつつある。

・ アオコ対策としてプロペラ撹拌式水質改善装置1基が設置されてお

り、十分な効果が確認されている。

・ 今後も装置は4月1日~10月31日に連続運転を行う。水深0.5mと水深3

mの水温差が1.25℃を上回る場合、期間を前後に拡大することとし、

水温勾配の状況は黒川橋に設置した自動観測装置を用いて監視する。

平成23年の高濃度酸素溶解装置の効果

・ ダムサイト底層部に溶出していた鉄とヒ素はそのほとんどが酸化・沈

降した。

・ マンガンもほぼ予測どおり低減し、供用後約30年で底層部に溶出・蓄

積したマンガンは平成23年度にほぼ低減完了予定である。

・ 水質モニタリング結果を継続し、冬季の循環期までの結果を基に、平

成24年度以降の運用を決定する予定である。

・ 第7回委員会で平成24年度以降の運用についてご審議いただく予定で

ある。