第5章 物流・インフラ - JBIC...59 図表1-51 東シベリア鉄道管区の路線図...

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58 第5章 物流・インフラ ロシアの輸送インフラは全体的に老朽化が著しく、その整備が緊急の課題である。 2004 年時点のロシア国内の輸送は、貨物部門(トンベース)では鉄道輸送が圧倒的に多く (全体に占める比率は 66%)、自動車輸送は全体の 27%程度である。但し、長距離輸送に占 める鉄道の比率(トンキロベース)は、全体の 93%と圧倒的に大きい。この背景には、ロシ アは国土が広く(またシベリアもあるため)道路整備が一部の地域に集中し、網羅的に発達 しなかったことがある。旅客部門(輸送人ベース)では、 1990 年代は鉄道輸送と自動車輸送 がほぼ均衡していたが、近年は自動車輸送が減少してきている。 図表 1-49 輸送手段別輸送量の構成の変化 2004 年(トンベース) 2004 年(トンキロベース) 1995 2004 (出所)ロシア連邦国家統計局『ロシアの運輸』(2005 年、モスクワ) 貨物 旅客 海運 1% 自動車 27% 鉄道 66% 内陸水運 6% 航空 0.05% 水運 0.1% 鉄道 4% 航空 0.1% 自動車 48% 都市電車 48% 自動車 1% 海運 4% 内陸水運 2% 航空 0.2% 鉄道 93% 鉄道 4% 都市 電車 45% 自動車 51% 航空 0.1% 水運 0.1%

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第5章 物流・インフラ

ロシアの輸送インフラは全体的に老朽化が著しく、その整備が緊急の課題である。 2004年時点のロシア国内の輸送は、貨物部門(トンベース)では鉄道輸送が圧倒的に多く(全体に占める比率は 66%)、自動車輸送は全体の 27%程度である。但し、長距離輸送に占める鉄道の比率(トンキロベース)は、全体の 93%と圧倒的に大きい。この背景には、ロシアは国土が広く(またシベリアもあるため)道路整備が一部の地域に集中し、網羅的に発達

しなかったことがある。旅客部門(輸送人ベース)では、1990年代は鉄道輸送と自動車輸送がほぼ均衡していたが、近年は自動車輸送が減少してきている。

図表 1-49 輸送手段別輸送量の構成の変化

2004年(トンベース) 2004年(トンキロベース)

1995年 2004年

(出所)ロシア連邦国家統計局『ロシアの運輸』(2005年、モスクワ)

貨物

旅客

海運1%

自動車27%

鉄道66%

内陸水運6%

航空0.05%

水運0.1%鉄道

4%

航空0.1%

自動車48%

都市電車48%

自動車1%

海運4%

内陸水運2%

航空0.2%

鉄道93%

鉄道4%

都市電車45%

自動車51%

航空0.1%

水運0.1%

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図表 1-51 東シベリア鉄道管区の路線図

1.鉄道 (1) 概況

鉄道の総延長は 8.5万 km、そのうち 4.45万 kmが電化されている(2005年)。ロシアの鉄道は、国営の株式会社「ロシア鉄道」(ОАО "Российские железные дороги";略称 РЖД)によって運営されており、広大な地域を管理するために、地域ごとに鉄道総局が設けられて

いる(モスクワが統括)。 ロシアの鉄道は一般的に、老朽化が進んでおり、1992 年に 36%であった鉄道資産の老朽化率は 2000年には 55%に達し、設備の半分以上が耐用年数を過ぎているという深刻な事態に陥っている。設備老朽化の背景には、ソ連解体後に国家からの資金提供が停止したため、

設備投資資金の大半を自己資金から捻出する必要に迫られていたが、折からの輸送量の減少

から自己資金不足に陥っており、投資額は大きく減少したことがある。

(2) 主要路線

①東シベリア鉄道管区

営業距離は 3,848.1kmで、路線はイルクーツク州、チタ州、ブリ

ヤート共和国、サハ共和国(ヤク

ーチャ)に通じている。輸送貨物

は、鉱物資源(鉄鉱石、石炭)採

掘、木材加工、エネルギー、化学

品、非鉄金属が中心である。 東シベリア鉄道の北方線区は

バイカル‐アムール鉄道で、2003

図表 1-49 ロシアの鉄道網

(出所)OAOロシア鉄道(以下すべて同じ)

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図表 1-52 ゴーリキー鉄道管区の路線図

図表 1-53 極東鉄道管区の主要路線図

年 12 月には、ロシア最大のセヴェロ・ムィスキートンネルが開通した。管理局はイルクーツク市にある。

②ゴーリキー鉄道管区

総延長距離は 1.21万 km、営業距離は 5,734km。路線は 6共和国(モルドビア、チュワシ、

ウドムルト、タタールスタン、

マリ‐エル、バシキール)と 9州(モスクワ、ウラジーミル、

ニジェゴロド、キーロフ、ペル

ミ、スヴェルドロフスク、ヴォ

ログダ、リャザン、ウリヤノフ

スク)に通じている。モスクワ

~ニジニノヴゴロド~キーロ

フ線とモスクワ~カザン~エ

カテリンブルグ線が並行して

運行しており、その間は連絡道路で結ばれ

ている。同鉄道は、ロシアの中央部、北西

部、北部と沿ヴォルガ、ウラル、シベリア

を結んでいる。管理局はニジニノヴゴロド

市にある。 ③ 極東鉄道管区

営業距離は 5,986.2kmで、路線は沿海地方、ハバロフスク地方、アムール州、エヴ

ェンキ自治州に通じている。同鉄道によっ

てロシアの輸出入品の 30%以上、およびトランジット輸送の 25%以上が輸送されている。太平洋側の港湾であるワニノ、ナホ

トカ、ヴォストーチヌィ、ウラジオストク、

ポシェットと直結している。管理局はハバ

ロフスク市にある。

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図表 1-55 モスクワ鉄道管区の路線図

④西シベリア鉄道管区

総延長距離は 8,985.6kmで、営業距離は 5,602.4km。オムスク州、ノヴォシビルスク州、ケメロヴォ州、アルタイ地方とカザフスタン領の一部に通じている。主要な取り扱い物資は、

石炭(70.8%)、建材(5.5%)、石油貨物(4.5%)、鉄鋼(3.8%)である。管理局はノヴォシビルスクにある。

図表 1-54 西シベリア鉄道管区の路線図

⑤モスクワ鉄道管区

営業距離は 1.3万 kmで、10の構成主体の輸送を担当し、7 つの管区(モスクワ~クルスク、モスクワ~リャザン、モ

スクワ~スモレンスク、ツーラ、オルロ

フ~クルスク、スモレンスク、ブリャン

スク)。国民のほぼ 3 分の 1 がこの鉄道を利用している。 管理局はモスクワにある。

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交通渋滞のモスクワ

⑥オクチャーブリ鉄道管区

営業距離は 1.01万㎞で、レニングラード、プスコフ、ノヴゴロド、ヴォログダ、ムルマンスク、トヴェリ、モスクワ、ヤロスラヴリの各州、モスクワ市、サンクトペテルブルグ市と

カレリヤ共和国を通過している。北西連邦管区に占めるオクチャーブリ鉄道の比率は、貨物

輸送の 75%、旅客輸送の 40%を占める。 ヴィボルグ~サンクトペテルブルグ~モスクワ線は、「クリツキー国際輸送回廊」の第 10環節であり、オクチャーブリ鉄道は「北-南」「欧州‐アジア」の各国際輸送回廊と結ばれて

いる。管理局はサンクトペテルブルグにある。 図表 1-56 オクチャーブリ鉄道管区の路線図

2.道路

道路の総延長距離は 87万 1,000km、うち60万 1,000kmが一般利用道路である。一般利用道路の舗装率は68.5%である(2004年)。 ロシアでは、全国的な道路網は余り発達し

ておらず、人口が集中するウラル以西の中央、

北西、南、沿ヴォルガの4連邦管区を中心に

展開しており、この4連邦管区だけで全体の

約7割を占める(p1の地図参照)。 モスクワなど大都市では、都市計画により

整然とした広い大通りが確保されているものの、最近は富裕中間層の増大もあり、自動車普

及率が急速に高まっていることから、都市内交通事情はかなり悪化している(モスクワ、サ

ンクトペテルブルグ市周辺の道路事情については、各地域編参照)。

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3.港湾

ロシアの港湾を地域別に分けると、北西部、南部、極東部の3つに分類される。広大な国

土の中で海洋に接するのは西端と東端だけであり、北辺の海は氷結しており、南辺ではわず

かに一部が黒海に向けて開いているのみである。

図表 1-57 ロシア諸港の地域別貨物取扱構成 (単位 1,000t)

貨物取扱量 2005/2004 内訳 2004 2005 前年=100 液体 ドライ

ロシア全体 北西部 南部 極東部

364,023.8 151,384.6 142,356.6 70,282.6

406,971.6 178,450.6 159,022.7 69,498.3

111.8 117.9 111.7 98.9

233,744.3 106,706.5 112,083.8 14,954.0

173,227.3 71,744.1 46,938.9 54,544.3

(注)北西部の主要港は、サンクトペテルブルグ港、ムルマンスク港、カリーニングラード港など、南部は、ノヴォロシースク港やトゥアプセ港など。

(出所)『ロシアの海洋港』誌(2006、No.1)。

(1) 北西部

サンクトペテルブルグ港は、バルト海のフィンランド湾東部のネフスキー河口にある、ネ

ヴァ川の三角州の諸島に位置しており、ロシア北西部における最大の輸送拠点である。11月末から4月初めまでは、港地区にあるネフスキー河口は氷結するため、この時期、船舶の動

きは、砕氷船によって確保される。同港は大都市を後背圏としているため、輸入貨物の割合

が高く、全体の約4割程度を占める。なお、同港は、オクチャーブリ鉄道管区内の路線に連

結している。 北西部には、その他、バルトパイプライン・システムの出口として建設されたプリモルス

ク港がある。近年開発されたウスト・ルーガ港では、ターミナルなど商業用港湾施設の建設

が進められている。

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最北西部に位置するムルマンスク港は、バレンツ海沿岸のコラ半島に位置する。非常に厳

しい冬季にのみ、港のあるコラ湾は完全に氷結する。この場合、船舶の水先案内は砕氷船と

タグボートが行う。

(2) 南部

ロシア領内の黒海沿岸には、石油パイプライン・システムに繋がった 2ターミナル(ノヴォロシースクとトゥアプセ)がある。 ノヴォロシースク港はクラスノダル州の黒海沿岸に位置し、石油関連が約 75%を占め、ロシア最大の石油積み出し港であり、またロシアで最大の不凍港である。ノヴォロシースクと

保養地として有名なソチの間には穀物積み出し港のトゥワプセがある。

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(3) 極東諸港

ロシアの港湾の貨物取扱量全体に占める極東諸港のシェアは約 17.1%、ドライカーゴに限れば約 31.5%である。貨物は主に輸出向けであり、全体の 70%を占める。極東地域には貨物取扱量が年間 100万トンを超える港が 6つある。ヴォストーチヌィ港、ナホトカ港、ウラジオストク港(沿海地方)、ワニノ港(ハバロフスク地方)、ホルムスク港(サハリン州)、ポ

シェット港(沿海地方)である。2005年の貨物取扱量でみると、ヴォストーチヌィ海港が約1,984 万トンと突出しており、次いで、ナホトカ商業海港、ウラジオストク商業海港、ワニノ港の3港が 600万トンで続いている。1~2月はウランゲリ湾が氷結する。 極東諸港には、シベリア鉄道を利用したアジア太平洋諸国と欧州諸国を結ぶトランジット

コンテナ輸送のアジア側の中継基地としての役割があり、主にヴォストーチヌィ海港がその

役割を担っており、毎年 10万 TEU以上のトランジットコンテナが同港の専用ターミナルを通じて発送されている。コンテナターミナルは VICSが運営している。シベリア鉄道によるヨーロッパへのトランジット輸送に要する日数は 12日で海上輸送(日数は 40日)より格段に短いが、運賃が高いため、利用度は低い。

図表 1-58 ハバロフスク地方の主要海港

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図表 1-59 沿海地方の主要海港

4.空港

(1) 概況

2004年の航空貨物輸送量は 30億トンキロと全体の 0.03%にすぎない。一方、旅客輸送は830億人キロで総旅客輸送量の 17.7%を占める。ソ連解体後、航空事業を独占してきたアエロフロートは分割され、現在は約 216社のエアーラインが存在する。主要な航空会社としては、アエロフロート(拠点:モスクワ、シェレメチェヴォ)、プルコヴォ航空(同サンクトペ

テルブルグ)、S7(同ノヴォシビルスク)、クラスエアー(同クラスノヤルスク)等がある。 主要空港別の乗客数は図表 1-60のとおりで、モスクワのシェレメチェボおよびドモジェド

ボが国際便の離発着の主要空港であることから、多くなっている(各空港の位置図は、p1参照)。

図表 1-60 ロシアの主要空港

空港名 乗客数(2004) シェレメチェヴォ(モスクワ) ドモジェドボ(モスクワ) プルコヴォ(モスクワ) ブヌコヴォ(モスクワ) トルマチェヴォ(ノヴォシビルスク) コリツオヴォ(エカテリンブルグ) エメリャノヴォ(クラスノヤルスク)

636万人 604万人 218万人 121万人 72万人 73万人 58万人

(出所)国土交通省総合政策局国際企画室『主要国運輸事情調査報告書 ロシア』

ウラジオストックの港

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(2) 航空便数と所要時間

成田~モスクワには全部で5社のエアーラインが乗り入れているが、直行便はアエロフロ

ートと日本航空のみである(いずれも、シェレメチェヴォ空港を使用)。

日本海側の地方都市とロシア極東部には、4社が就航している。

図表 1-61 日本=ロシア間の便数

目的地 便数 成田=モスクワ間(約 10時間) 9 モスクワ=成田間(約8時間) 9 新潟=ハバロフスク間(1.5時間) 4 函館=ユジノサハリンスク(約1時間) 4 千歳=ユジノサハリンスク(約 1.5時間) 2 新潟=ウラジオストトク(1時間) 4 富山=ウラジオストク(1時間) 6

(出所)各航空会社のHPに基づき作成

5.電力

(1) 概況

ロシアでは、経済の好調さを背景とした電力需要の急激な伸びに電力供給が追いつかない

状況が生じつつあり、特に2003年以降の伸びは政府の予想を大きく上回るものとなっている。2003年に作成された政府文書「2020年までのロシア連邦のエネルギー戦略」によれば、2005年時点の電力需要は最大で9,350億kWhと予測されているのに対し、同年の実際の電力需要量は9,438億kWhに達した。この状況からは、ロシア政府が2003年以降の電力需要の急激な伸びを全く予測しておらず、有効な対応策も準備出来ていなかったことが分かる。そのため、

2005年末から2006年にかけての冬には、モスクワ(モスクワ市およびモスクワ州)、サンクトペテルブルグ(及びレニングラード州)、ロシア最大の石油ガス産地であるチュメニ州(ハ

ンティ・マンシースク自治管区およびヤマロ・ネネツ自治管区を含む)で部分的ではあるが

給電制限が行なわれた。 このような状況に対し、ロシア最大の電力会社「統一電力システム(以下UES)」およびロシア政府は、停滞していた電力分野の改革の促進や、老朽化した設備の刷新および設備の

新規建設を可能とする具体的資金調達方法の立案等の現実的な危機打開策に、漸く取り組み

始めた。しかしながら、新しい発電所の建設期間を考慮すると、当面は電力不足の状況が続

く可能性が高く、ロシアで現地生産を実施中もしくは計画している日本企業にとって大きな

不安要因の一つであるといえる。

(2) 今後の見通し

2006~2007年の冬は、電力供給状況はさらに厳しくなると見込まれており、UESは2006年9月の時点で、今度の冬に給電制限が行なわれる可能性が存在する地域のリストを作成し

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ている。そのリストによれば、既述の3地域(モスクワ、サンクトペテルブルグ、チュメニ)

の他に、トゥワ(2006年1~8月期の電力消費量は前年同期比で1.1%増加した)、スヴェルドロフスク(3.6%)、ペルミ(2.9%)、チェリャビンスク(6.26%)、ウリヤノフスク(2.6%)、サラトフ(5.2%)、ヴォログダ(5.02%)、ニジェゴロド(2.8%)、クラスノダル(6.94%)、ダゲスタン(5.12%)、アルハンゲリスク(3%)、コミ(4%)、カレリヤ(7.04%)の13の地域が含まれている。電力需要の伸びがそれほど大きくない地域でも給電制限が予定され

ているのは、当該地域の発電設備や送電設備等に問題があるためである。例えば、トゥワや

コミでは、送配電システムが他の地域のシステムと連結していないため、他地域からの電力

供給を受けることが不可能であることが、電力不足への対応を困難にしている。また、ペル

ミ等の一部の地方では変電所の状態が悪く、他地域から電力供給を受けることが困難になっ

ているようである。先にも述べたとおり、電力設備への投資強化の努力は開始されたばかり

のため、少なくとも今後3~4年は、冬場および夏場のクーラー使用がピークになる時期に給電制限が行なわれる頻度が高まり、かつ地域的にも広がりを見せることはほぼ確実とみられ

ている。

図表1-62 ロシアの発電量の推移 (単位 10億kWh) 1990 1996 1997 1998 1999 2000 2001 2002 2003 2004 2005

ロシア全体 うち火力 水力 原子力

1,082 797 167 118

847 583 155 109

834 567 158 109

827 563 159 105

846 563 161 122

878 582 165 131

891 578 176 137

891 585 164 142

916 608 158 150

932 609 178 145

952 628 175 149

(出所)ロシア連邦国家統計局

図表1-63 電力消費の状況 (単位 10億kWh) 需要家内訳 1990 1995 1996 1997 1998 1999 2000 2001 2002 2003 2004 2005 工 業 農 業 運 輸 その他

625.9 96.4 103.8 247.7

440.2 88.6 65.2 246.4

424.9 85.9 64.9 252.0

421.4 78.1 63.5 251.4

412.0 75.0 60.0 262.1

430.3 72.0 60.6 269.2

455.9 68.1 60.9 278.8

462.8 63.0 63.1 286.5

462.5 60.1 67.8 288.0

479.0 57.8 75.2 290.9

490.7 56.4 80.3 296.9

… … … …

合 計 1,073.8 840.4 827.7 814.4 809.1 832.1 863.7 875.4 878.4 902.9 924.3 943.8

(出所)同上

(注)Kashirskaya Regional Power Plant (出所)http://www.ogk1.org/en/

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6.通信事情

ロシアの通信市場での広大な国土から電話線の敷設などの設備投資が求められる固定電話

の普及率(3,700台、4人に1人)は中進国平均水準をやや下回る水準であるが、他方で、携帯電話やパソコン、インターネットの普及率は比較的高く、BRICsの中では、パソコン、携帯電話でトップ、インターネットではブラジルに次いでいる(図表1-64)。特に、モスクワ、

サンクトペテルブルグなどの都市部での普及率は極めて高くなっている。 なお、ロシアのコンサルティング会社 AC&M調査よれば、2005年末現在で、ロシアの携帯電話普及率は 86.6%に達したといわれており、通信事情に関する問題点は、現地進出日系企業からも余り指摘されていない。

図表 1-64 BRICsにおける IT機器の普及率(2004年)

パソコン (100人当り普及台数)

携帯電話 (100人当り契約者数)

インターネット (100人当りユーザー数)

中国 インド ロシア ブラジル

4.1 1.2 13.2 10.7

25.8 4.4 51.6 36.3

7.2 3.2 11.1 12.2

(出所)『2006年版 ジェトロ貿易投資白書』(ジェトロ、2006年)

7.物流

(1) 日本からロシアへの輸出ルート

日本からロシアへ輸出する場合は、横浜港などからドイツ、フィンランド等の欧州港を経

由して、サンクトペテルブルグ港へ輸送する海上ルートとシベリア横断鉄道を利用する陸上

ルートの 2つのルートが通常利用される。 欧州港経由の海上ルートの場合には、図表 1-65のように、日本からはエジプトのスエズ運

河を通過して、地中海を周り、北のハンブルグ(ドイツ)等の主要港で荷物の積み替えを行

う。欧州港で小型フィーダー船に積み替えされた荷物は、サンクトペテルブルグ港に直接輸

送されるか、あるいはフィンランド、ラトビア、エストニアなどの港から、陸路トラックで

輸送されるケースが多く見られる12。ラトビア、エストニアは EU に既に加盟しており、ロシアまでの間に通過する国境が少ないことがメリットであり、欧州隣国との輸送では 9割がトラック輸送で、1割が鉄道の利用となっている。 日本からモスクワへ貨物を輸送する場合の所要日数は、海上ルートでは約1ヶ月、料金は

40フィートコンテナ当たり、海上ルートで 3,500ドルである(参考価格)。

12 ハンブルグで小型フィーダー船に乗り替えた荷物は、サンクトペテルブルグ港まで約 3日かかる。

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図表 1-65 欧州港経由ルート地図

(出所) 日新のユーラシア大陸一貫輸送サービス(ユーラシア・ランドブリッジ)、

日新社資料に加筆 シベリア鉄道を利用する場合には、極東のナホトカを出発し、陸路サンクトペテルブルグ

まで約 2週間程度で到着する(シベリア鉄道のルートは図表 1-67 参照)。 欧州経路の海上ルートに比較すると、所用期間が半分で済むことが大きな魅力であるが、

輸送料金は 40フィートコンテナ1個当たり、陸上ルートで 4,050ドルと海上ルートに比べてやや高めとなっている13(参考価格)。 また、鉄道利用に際しては、鉄道の車両は最低 54両、最高 75両まで引けるものの、全車両が一つの目的地で占めている場合には問題はないが、最低でも 54両を占有しない場合には、54両に満たない部分は他の地域向けの荷物と混載されることになる。荷物の目的地が異なる場合には、途中での荷物の積み下ろし、補充などが行われることから、スケジュールは

他の荷物の状況を勘案した上で管理する必要が発生し、タイミングの予測が容易ではなくな

る点には留意が必要である。

13 鉄道料金が上がっていることも問題点の一つであり、ロシア鉄道によれば「早いのだから、

高くしたい」という意向がある。

サンクトペテル ブルグ港

主要 船舶 ルート

スエズ

運河

ハンブ

ルグ

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図表 1-66 シベリア横断鉄道を利用した場合の輸送日数と費用

ルート 所要日数 輸送料金(㌦/個) 20Fコンテナ

輸送料金(㌦/個) 40Fコンテナ

上海~東ナホトカ~モスクワ 15.5 2,220 4,050 上海~東ナホトカ~クラースノエ 16 1,211 2,111 上海~東ナホトカ~ブスロフスカヤ 16.5 1,213 2,115 上海~東ナホトカ~ロコチ 12.5 1,365 2,120

(出所)OAOロシア鉄道

図表 1-67 シベリア横断鉄道のルート図

(出所)OAOロシア鉄道

(2) オフショア通関

ロシア北西部最大の港である、サンクトペテルブルグ港の処理能力の問題や、通関事情の

悪さ(手続きが複雑かつ変更が多い、運用が属人的、所要時間・コストなどが膨大となる、

グレー通関(次頁ボックス参照)など)もあり、フィンランドなどの周辺国の港に荷揚げさ

れたものを、陸路を用いて国境際にロシア側から荷物を引き取りにくる“オフショア通関”

によるケースが多く見られる。 フィンランドでは、ロシア・CIS(独立国家共同体)市場向けに輸送するトランジット物流が盛況であり14、ロシア国境に近いハミナ港、コトカ港および自動車専用ターミナルがあ

14 フィンランドの物流事情については、ジェトロセンサー2007年 1月号「森林資源と技術力求め日本企業が集積」より一部抜粋。

Page 15: 第5章 物流・インフラ - JBIC...59 図表1-51 東シベリア鉄道管区の路線図 1.鉄道 (1) 概況 鉄道の総延長は8.5 万km、そのうち4.45 万km が電化されている(2005

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るハンコ港の陸揚げ量は増加傾向がみられ

る。ロシアの玄関口となるフィンランドの

優位性として、①距離的な近さ(サンクト

ペテルブルグとハテナ・コトカ港までの距

離は 270~280km)、②港湾設備の充実とその信頼性などが上げられる。 フィンランドでの取引に際しては、決済

や在庫の保税手続き上のリスクがないこと

が魅力の一つであったが、最近ではロシア

の通関関連問題が徐々にではあるが改善し

つつあること、フィンランドルートのキャ

パシティーも限界に近いことなどから、ロ

シア国内通関を利用するケースも最近では、

増加しつつある。なお、フィンランド税関

からモスクワまでは 24時間で到着可能である。

フィンランド

サンクトペテルブルグ

エストニア

BOX: ロシア物流事情の問題点 ~グレー通関について~ ・ ロシアではグレー通関(通関の際、通関価格を過少申告し、関税、輸入. VATを実際よりも少なく払う。あるいは通関個数の過少申告、単価の安い品物と偽っての申告なども含む)が横行しており、通関手続き上の大きな問題となっている。

・ ロシア側の通関担当者は、正規関税との差額分を、物流業者から現金で受け取っているといわれており、不透明な資金要求の温床になっているほか、正規手続きを踏んで輸入された製品が、こうして安く輸入されたグレー通関の製品との価格競争にかなわないため、実質的に国内販売市場に参入できないことも問題点として指摘される。

・ 外資系の物流企業は、これまで、グレーな通関に携わることを避けるため、フィンランドなどで取引を行い、フィンランドでロシア業者に受け渡しを行い、ロシアの業者に任せるケースが多く見られてきた。

・ 現状では、一般的にサイズの大きな商品ほどグレーインポートが困難といわれており、白物家電、自動車はかなり正規での通関が拡大しているものの、依然として家電、携帯電話では 6 割から 9割がグレー通関で輸入されたものといわれている(2006年 12月時点の現地有識者からのヒアリングベースの数字。但し、2005 年夏以降は、携帯電話、AV 家電に関してはグレーインポートは減少傾向にあるため、数字はあくまでも参考)。

・ WTOの加盟により、こうした問題が徐々に改善されることが期待されるが、関税部分を引き下げても、グレー通関の問題点である手続き面について改善されなければ、根本的な問題解決にはならないと指摘される。