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第4章 地域保健医療・健康危機管理 の取組を推進する

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第4章

地域保健医療・健康危機管理

の取組を推進する

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第Ⅱ部各論 第4章 地域保健医療・健康危機管理の取組を推進する

第1節 取組方針

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第Ⅱ部

各論

第2章

第3章

第4章

第1章

第5章

地域保健医療・健康危機管理の取組を推進する

資料編

第Ⅰ部

総論

第2章

第3章

第1章

第4章 地域保健医療・健康危機管理の取組を推進する 第1節 取組方針

1 安心して暮らせる保健医療対策の整備について

団塊の世代が後期高齢者(75歳以上)となる2025年に向け、「住民が、住み慣れた地域

で生活しながら、状態に応じた適切で必要な医療を受けられる」地域医療の提供体制(=

地域完結型医療)が必要とされ、これらの構築を目指し、兵庫県において地域医療構想が

策定(平成28年10月)されています。

また、高齢者ができる限り住み慣れた地域で必要な医療・介護サービスを受けつつ、安

心して自分らしい暮らしを続けるための(高齢者保健福祉計画・介護保険事業計画)、ま

た、精神障害者を含めた障害者が地域の一員として安心して自分らしい暮らしを続けるた

めの(障害者計画・障害福祉計画)地域包括ケアシステムの構築を目指す必要があります。

これらを踏まえ、特に本市が取り組む地域保健医療対策として、次の事項を掲げ推進し

ていきます。

1 救急医療体制の確保※

2 医療・介護連携の推進※

3 精神保健対策

4 歯科口腔保健医療対策(歯科口腔保健の推進に関する基本的事項の一部)※

5 災害救急医療対策

上記の5つの事項のうち※印のある事項は「在宅医療の推進の取組」を含みます。

地域医療構想を進めるためにも、本市として「退院支援」「日常の療養支援」「歯科医療」

「急変時の対応」「看取り」を踏まえた在宅医療体制の普及に努める必要があります。

「看取り」については、単身高齢者割合が全国・兵庫県よりも多く(県下2位)、最期に

過ごしたい場所「自宅等67.5%(平成28年度高齢者意向調査)」であるのに対し、実際の65

歳以上の在宅看取り率は26%(平成28年)となっています。これらの状況を踏まえ、最期

まで自分が過ごした場所で暮らし続けることができ、また、本人の望む治療を受けられる

ように、かかりつけ医を中心とした医療提供体制、急変時の医療機関確保(後方支援病院)

のあり方などの現状を把握し、よりよい在宅医療体制の構築を目指します。

地域医療構想と地域保健医療

平成28年10月に策定された兵庫県地域医療構想による医療体制を確保するためには、

国・県・市町が連携して施策を推進すること、県民が適正受診や在宅医療について理解を

深めることなどが必要であり、これらに加えて、最も重要で不可欠なことは、医療機関を

はじめとした医療関係者の自主的な取組だとしています。

そこで、①~③(154ページ)を重点項目として定め、全県或いは阪神南圏域での課題と

その具体的施策を示しています。地域医療構想に基づく施策として限られた医療・介護資

源を背景に、在宅医療の充実だけでなく救急医療や人材育成、精神保健のあり方等、多様

な対応が求められる中、本市の状況に合わせた取組を進めていきます。

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兵庫県・圏域での取組 本市の取組

重点項目 課題項目(抜粋)

具体的施策(抜粋)

第4章第1節

①病床の機能分化・連携の推進

病床機能の再編

・回復期病床の不足を見込んだ病床配分・連携体制の強化<圏域>

・慢性期機能病床における在宅復帰に向けたリハビリ、退院調整機能の充実<全県>

医療・介護連携の推進(158ページ) 在宅医療

の提供体制・介護保険施設の確保と連携

・慢性期患者の受皿となる在宅医療機関、施設、介護サービス等の充実<全県>

・病院間、病院・診療所の連携<全県> ・病院等の看護職と訪問看護ステーションの

看護職の看-看連携の推進<全県> ・医療・介護多職種連携<全県>

5疾病対策

・がん地域連携パスのさらなる普及<圏域> ・精神障害者における退院促進・地域移行の

推進<全県>

精神保健対策 (160ページ)

救急医療体制

・3次医療提供病院の機能充実と2次医療を担う病院との機能分担、連携促進<全県>

・2次救急医療体制の確保・充実<全県> ・1次救急医療体制の整備<全県> ・h-Anshinむこネットのさらなる運用を図

り効率的な2次救急医療体制を目指す <圏域>

救急医療体制の確 保 ( 156 ペ ージ)

普及啓発

・病床機能の分化・連携に関する住民理解の促進<全県>

・不要不急な受診(救急)を減らすため、住民に適正受診を啓発<全県>

高齢者保健福祉計画・介護保険事業計画

②在宅医療の充実

在宅医療提供体制の充実

・在宅看取り、終末期医療の啓発<圏域> ・ICTによる医療・介護連携体制の推進

<圏域>

医療・介護連携の推進

・「病院在宅連携ルール」「退院調整ルール」の整備と利用促進<全県>

医療・介護連携の推進(158ページ)

在宅療養患者への支援

・医療介護連携による在宅での緩和ケア体制の強化<全県>

・精神障害者への退院促進・地域移行 <全県>

精神保健対策 (160ページ)

普及啓発

・かかりつけ医・歯科医・薬剤師・薬局の普及・定着促進<全県>

・適切な在宅医療を選択するための医療情報の提供と相談体制の推進<全県>

医療・介護連携の推進(158ページ)

③医療従事者の確保

・在宅医療が重要となることから多職種における人材確保及び育成のために職種ごとの研修会や連携会議等の開催に尽力する <圏域>

歯科保健医療対策(163ページ)

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2 健康危機管理体制の整備等

健康危機管理とは、「医薬品、食中毒、感染症、飲料水その他何らかの原因により生じる

国民の生命、健康の安全を脅かす事態に対して行われる健康被害の発生予防、拡大防止、

治療等に関する業務であって、厚生労働省の所管に属するもの」と、厚生労働省健康危機

管理基本指針(平成13年)で定められています。

近年、健康危機事例が多発する中で、地域における健康危機管理の拠点となる保健所と

して、大流行(パンデミック)すると大きな健康被害と社会的影響をもたらすことが懸念

される新型インフルエンザ等、全国・兵庫県に比べ罹患率の高い「結核」、市民の食の安全

を確保し、食品に起因する危害を防止する食品衛生対策について推進していきます。

また、大気汚染による健康被害者の健康回復や、難病患者への療養支援、精神疾患にか

かる支援を推進し、石綿ばく露の可能性のある方への健康管理等について取り組みます。

1 感染症対策(結核対策、新型インフルエンザ等医療対策)

2 食品衛生対策

3 健康回復や療養のための支援等

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第2節 安心して暮らせる保健医療体制の整備

1 救急医療体制の確保(1次・2次救急)

【現状と課題】

尼崎市健康づくりアンケート(平成28年度実施)における「保健所や保健センター

の事業等において、今後、充実してほしいこと」という質問に対し、男女とも「休

日・夜間の救急医療等適切な医療体制」が5割台で最も多くなっています。

(1)1次救急医療

・公益財団法人尼崎健康医療財団が開設する休日夜間急病診療所において内科・小児

科・耳鼻咽喉科・眼科の4診療科目、尼崎市医師会における在宅当番医制で産婦人

科の対応をしています。休日夜間急病診療所は昭和49年度竣工であり、老朽化が著

しいとともに、待合室が狭隘で、感染症対策を考慮したレイアウトとなっておらず、

施設更新が急がれます。

・小児救急については、保護者の育児不安を解消し、医療機関の適正な受診を促進す

るため、阪神南圏域においては「小児救急医療電話相談」を、本市独自の制度とし

ては「あまがさき小児救急相談ダイヤル」を設置しています。また、深夜帯につい

ては、「あまがさき小児救急相談ダイヤル」において受診が必要な場合は、医療機関

を案内する体制をとっています。

・歯科については、公益財団法人尼崎口腔衛生センターの休日歯科診療で対応してい

ます。同センターは、平成29年6月に尼崎市歯科医師会館との合築施設に移転し、

新しい施設での運営を開始しています。

【あまがさき小児救急相談ダイヤル件数】

平成27年度

(7月16日~)

平成28年度 平成29年度

(9月末現在)

件数 1,311 1,750 946

うち医療機関案内件数(%) 737(56.2%) 920(52.3%) 473(50.0%)

(2)2次救急医療

・本市では、市内民間医療機関における365日診療科目別の輪番制を構築しています。

また、小児科の2次救急医療についても阪神南圏域の病院で輪番制を整備し、阪神

北圏域とも連携した体制をとっています。

・阪神医療福祉情報ネットワーク「h-Anshinむこねっと」の導入等により、救急搬送

時の患者受入照会回数4回以上の割合が飛躍的に減少しています。

・高齢化の進展に伴い、医療需要(骨折、肺炎、脳卒中)が増大する中で、地域医療

構想の本旨である「地域完結型医療」の実現に向け、在宅患者の急変時対応や病院

の機能分担(3次医療と2次医療)の連携促進が必要です。

背景

救急医療は医療機関、消防機関、行政機関が協力し、救急告示制度や1次救急医

療(軽症)・2次救急医療(重症)・3次救急医療(重篤)の体制構築と連携により

運営されています。

平成28年10月策定された兵庫県地域医療構想では、病床の機能区分毎に将来

(2025年)の必要量が示されています。

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・同構想によると、回復期機能病床が不足すると推測されており、兵庫県において急

性期及び慢性期病床の回復期病床への転換推進が図る施策が進められています。こ

れを受け、救急医療を担う2次救急対応病院の機能・役割にも影響が見込まれます。

【救急搬送時の医療機関患者受入照会4回以上割合】

資料:尼崎市消防局

【2次輪番民間病院の時間外救急搬送件数(月平均)】

資料:2次救急搬送件数

(3)3次救急医療

阪神南圏域で兵庫医科大学病院、県立西宮病院、県立尼崎総合医療センターの3か

所の対応医療機関があります。なお、県立尼崎総合医療センターはER型救命救急セン

ターを設置し、包括的な救急体制を整備しています。

【取組の方向性】

(1)1次救急医療

できるだけ早期の休日夜間急病診療所の施設更新を目指します。新施設については、

安定的な運営体制の導入や持たせるべき機能、将来のあり方も含めて、市内部及び関

係機関と協議・検討をしていきます。

小児救急をはじめ、かかりつけ医への早めの受診などの適切な受診について、リー

フレット作成や市政出前講座を通じ啓発を進めるとともに、引き続き、小児救急医療

電話相談の普及に努めます。

(2)2次救急医療・地域医療構想

地域医療構想を踏まえた市内病院の機能分担や連携が円滑に進むよう、尼崎市医師

会と連携して会議を開催するなどの調整に努めます。

【評価指標(目標値)】小児救急医療電話相談の認知度(増加)

平成28年度 54.7%

0.0%

1.0%

2.0%

3.0%

4.0%

5.0%

6.0%

7.0%

8.0%

9.0%

1月 3月 5月 7月 9月 11月 1月 3月 5月 7月 9月 11月 1月 3月 5月 7月

平成27年 平成28年 平成29年

169

2340

95

38

103

156

17

36

80

33

78

169

19

43

82

27

99

0

20

40

60

80

100

120

140

160

180

内科 循環器科 消化器科 脳神経外科 一般外科 整形外科

平成26年7月~11月月平均 平成27年7月~11月月平均 平成28年7月~11月月平均

(件)

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2 医療・介護連携の推進(入退院調整の取組)

背景

団塊世代が後期高齢者(75歳以上)となる2025年に向け、できる限り、住み慣れ

た地域で必要な医療・介護サービスを受けつつ、安心して自分らしい生活を実現で

きる社会、地域包括ケアシステムの構築を段階的に構築することが必要とされてい

ます。

平成30年度には、県の保健医療計画、市の介護保険事業計画等が同時改定され、

計画間の整合性を図りながら、さらなる取組を推進していきます。

【現状と課題】

・第6期高齢者保健福祉計画・介護保険事業計画(平成27~29年度)において、地域

の実情に応じた地域包括ケアシステム構築を目指す中、「在宅医療・介護の連携の推

進」の取組の1つとして、入退院調整の取組を推進してきました。

・本市の医療・介護連携の推進を図るため、尼崎市社会保障審議会高齢者保健福祉専

門分科会に、在宅医療・介護連携推進部会を設置するとともに、関連団体の代表者

で構成する「尼崎市医療・介護連携協議会」を設置し、協議を進めています。

■取組状況

平成25年度に、市内25病院(医療)と地域包括支援センター及び居宅介護支援事業

所(介護)の連携の実態把握を行い、医療と介護の連携における課題の抽出、解決策

を模索するため、関係団体との意見交換会を重ね、平成26年度に入退院時の連携ルー

ルを示す「尼崎市における退院調整(病院=在宅連携)の標準的な取扱い」を作成し

ています。平成27年度以降は、入退院時の連携ルールの周知、運用状況の把握、運用

上の課題の共有や解決策の模索を行うため、関係団体との意見交換会を行っています。

また、将来的に、統一的な取組を見据え、阪神南圏域(芦屋市・西宮市・尼崎市)で

の情報交換を行っています。

■課題

(1)「尼崎市における退院調整(病院=在宅連携)の標準的な取扱い」運用前後の入

退院時連携率を比較すると、病院側からとケアマネジャーからみた連携率(アン

ケート結果)で認識の相違が見られることから、運用の趣旨等の周知が徹底され

ていないと考えられます。

【退院連携率の推移】

平成28年度 平成25年度

病院側からみた退院時連携率 88% 69%

ケアマネジャーからみた退院時連携率 60% 64%

ケアマネジャーからみた入院時連携率 61% 55%

(2)急性期病床から地域包括ケア病床への転院などの際の医療情報・看護情報・栄

養情報などを含んだ病院間連携の推進も必要不可欠です。

(3)関連機関での実態を把握する中で、切れ目のない支援の継続や本人の望む治療

(延命処置・蘇生措置の拒否等)を行うためには、単身高齢者の救急搬送時の情

報共有・伝達が課題となっています。

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【取組の方向性】

第7期高齢者保健福祉計画・介護保険事業計画(平成30~32年度)においては、最

期まで自分の意思が尊重され自分らしく過ごせるよう、医療・介護の関係機関が連携

し、病気を治す・癒す視点だけではなく、「生活を支える」視点での包括的かつ継続的

な連携支援を重要視し、医療・介護連携を実践する人材を育成する「人づくり」、連携

を促す仕組みや共通帳票などを整備する「ものづくり」、今後の過ごし方や人生最期を

考える大切さを伝える「市民の意識づくり」に取り組むこととしています。

「ものづくり」の1つとして、高齢者等が入退院を経ても、切れ目なくサービスを

利用できるように、市内病院、かかりつけ医、地域包括支援センター、居宅介護支援

事業所、訪問看護ステーション等が、入退院時の連携(病院=在宅)を深め、顔と役

割の見える関係性を紡いでいきます。

・関連団体との意見交換や各団体の会合や研修の場での入退院時ルールの周知を継続

していきます。関連団体との意見交換の場は、現状の共有を通した「顔と役割の見

える関係」のきっかけづくりの場となるため、定期的に開催していく必要がありま

す。

・病院の地域医療連携室のみならず、病棟看護部や訪問看護ステーションの看護師間

の情報共有や連携を深めることで、入院時から在宅での生活を見通した療養支援を

目指します。

・市内の給食施設間での情報共有・連絡会での食を通した連携の推進の取組ともつな

がり、対象者のQOL(生活の質)の維持を目指します。

・尼崎市医療・介護連携協議会と尼崎市医療・介護連携支援センター(平成30年1月開

設)と連携し、医療・介護連携に必要なツールの作成や運用を進めていきます。

【評価指標(目標値)】入退院時連携率(増加)

保健・医療・福祉の連携

かかりつけ医 病院間連携

病院・在宅間連携

維持期ネットワーク 病院間連携

入退院調整の取組は、

この部分の連携を

強化するもの

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3 精神保健対策

背景

精神疾患患者は近年増加しており、平成20年の厚生労働省の「患者調査」で323

万人であった精神疾患を有する総患者数は平成26年には392万人を超える状況で、

平成23年に厚生労働省は4大疾病に精神疾患を加え5大疾病として、平成25年度か

ら医療計画にも位置づけられるようになりました。

精神保健医療においては、精神科長期入院患者の地域移行が喫緊の課題となって

おり、「入院医療中心から地域生活中心へ」という方向に向かわねばなりません。

さらに、措置入院患者に対して入院中から支援を提供することを法に位置づけるこ

となどを盛り込んだ精神保健福祉法改正も予定されており、精神疾患患者に対して

入院中から切れ目のない支援を提供する体制づくりが求められています。

地域生活においては、市町村障害福祉計画に関する国の方針の中で、成果目標と

して「精神障害にも対応した地域包括ケアシステムの構築」が挙げられており、保

健・医療・福祉の連携により安定して地域生活を送ることができる仕組みを作る方

向性です。

また、平成25年に「アルコール健康障害対策基本法」が成立、IR推進法の成立

に伴いギャンブル依存症への対策が検討され、平成29年4月には都道府県等を実施

主体とする「依存症対策総合支援事業実施要綱」も定められるなど、依存症に関す

る取組も大きく前進しようとしています。

一方、平成10年に3万人を超えた自殺者は平成24年から減少傾向ではあるもの

の、依然として高い水準であり、平成28年に自殺対策基本法が改正され、こころの

健康の支援や適切な精神保健医療福祉サービスの提供、若年層対策などを含めた各

自治体における自殺対策計画の策定が求められています。(第Ⅱ部第3章参照)

【現状と課題】

本市では、平成26年度から27年度にかけて地域保健問題審議会専門部会(精神保健

検討部会)にて現状と課題を分析し、「これからの尼崎市が目指す精神保健のあり方」

と題した今後の方向性を示す報告書をまとめました。

(1)尼崎市の現状

・尼崎市民の精神疾患患者の実数を把握することはできませんが、平成29年3月末現在

で自立支援医療(精神通院)受給者は7,379人、精神障害者保健福祉手帳所持者は

4,339人となっており、いずれも毎年200~300人増加し続けています。

・一方、精神科病床入院患者については、平成28年6月30日現在兵庫県下精神科病床に

入院する尼崎市民は590人であり、うち1年を超える者は348人でした。

・兵庫県・大阪府の精神科病床を有する病院に対して平成24年12月に行った調査では、

推計約850人の市民が各地の精神科病床に入院している実態が明らかになりました。

(2)精神障害者を支える本市の社会資源の状況

・医療体制としては、精神科診療所は17か所ありますが、精神科病院はなく、精神科

病床も身体疾患との合併症患者を受け入れる病床が県立尼崎総合医療センターに8

床あるのみで、精神症状の悪化に伴う入院を必要とする場合には、他市の精神科病

院に頼らざるを得ません。

・一方、自立支援医療指定訪問看護ステーションは40か所以上あり、在宅を支える大

きな資源となっています。障害者総合支援法においては、精神障害者を対象とする

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居宅介護事業所、日中活動事業所とも数多く存在していますが、精神障害者を受け

入れるグループホームは少なく、退院時の住居確保も含め居住系のサービスの充実

が課題となっています。

(3)本市精神保健活動の課題

・地域保健課では、保健師・精神保健福祉相談員が協力して多くの精神障害者の支援

にあたっていますが、未治療や治療中断して症状が悪化したまま経過し、潜在化し

ている患者の存在が、近隣トラブルや生活破たん等で危機介入が必要となってから

表面化することが多くあります。

・一旦入院すると、退院し地域に帰ってくるための支援の仕組みが不十分であるため、

長期入院につながってしまったり、連絡がないまま退院してしまったことで支援が

届かず治療中断し、病状が再燃してまた入院が必要となってしまうケースも少なく

ありません。

・危機介入に追われる結果、日常の支援に時間を割くことが困難となり、次の危機介

入まで対象者の病状悪化や治療・支援の中断に気づくことができないという悪循環

もあります。

・本来は、発症後重症化する前に早期に気づき、治療や支援に結びつくことが重要で

すが、現状では精神疾患に関する一般市民への知識の普及が不十分で、本人も周囲

も早期に気づきにくく、気づいたときにもどこに相談すればいいかが周知されてい

ないこともあり、受診機会が得られないまま経過して重症化し、入院が必要な状況

となって初めて受診となることも珍しくない状況があります。

■取組状況

(1)市民啓発事業

市民に精神疾患に関する正しい知識を普及するための啓発活動は極めて重要であ

り、毎年講演会「こころの健康のつどい」を1回実施するとともに、市政出前講座

(平成28年度 22回)も含めた地域、学校、職域への啓発を実施しており、今後も継

続していきます。

(2)相談事業

身近なところでこころの不調が相談できるよう、地域保健課において月3回実施し

ている医師による精神保健相談、保健所で実施している「思春期・若者こころの相

談」(年12回)、「依存症相談」(年6回)を継続し、さらに周知を図り、相談者を早期

に適切な治療・支援につなげていきます。

(3)精神障害者グループ活動、家族教室

現在、北部・南部保健福祉センター地域保健課においてサテライトで実施してい

る「精神障害者グループ活動」(6地区ごと週1回)、「精神障害者家族教室」(6地区ご

とに1~2か月に1回)を継続して実施し、本人や家族の交流を確保するとともに、疾

病に対する正しい知識や障害者総合支援法・訪問看護等の社会資源の情報などを周

知し、利用を促進していきます。

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第Ⅱ部各論 第4章 地域保健医療・健康危機管理の取組を推進する

第2節 安心して暮らせる保健医療体制の整備

- 162 -

第Ⅱ部

各論

第2章

第3章

第4章

第1章

第5章

地域保健医療・健康危機管理の取組を推進する

資料編

第Ⅰ部

総論

第2章

第3章

第1章

(4)精神障害者等訪問支援事業

未受診・受療中断している精神障害者を対象として地域保健課及び保健所におい

て月4回実施している医師を同行した訪問支援事業の利用を促進し、危機介入が必要

となる前に医療・支援に結び付けていきます。

(5)新規入院患者への切れ目のない支援の提供

医療保護入院、措置入院等、医療上の必要はあるが本人の同意を得られない形で

入院した方に対し、従来から病院への訪問や退院時の支援調整等を行ってきました

が、今後はより組織的に入院時から退院後の地域生活も含めた切れ目のない支援を

提供していく体制を構築します。

(6)地域移行・地域定着事業

保健所、北部・南部保健福祉センター地域保健課職員による精神科入院患者への

訪問調査を継続して、実態把握に努めるとともに、市内相談支援事業所に委託して

実施している入院患者の退院意欲促進の取組・地域移行に関する市民啓発・ピアサ

ポーターの育成と活用等の事業を継続し、必要な対象者には障害者総合支援法にお

ける地域移行支援・地域定着支援を提供することで、新規入院患者を長期化させず、

長期入院患者は退院して地域で生活できるよう支援します。

(7)連携組織の整備

上記を実現するためには、医療・保健・福祉・地域住民の連携が必要であるため、

精神保健福祉に関する連携組織の整備を今後検討します。

【取組の方向性】

・学校・職域・地域とともに取り組む啓発により、精神疾患に関する知識の普及に努

めます。

・早期受診・支援につなげるための適切な相談窓口を周知します。

・受療中断を防ぎ、地域生活を維持できる適切な支援を提供します。

・未治療・受診中断者に支援を届ける仕組みを作ります。

・長期入院患者の地域移行・地域定着を推進します。

・精神保健に関する連携組織整備を検討します。

【評価指標(目標値)】精神病床における1年以上長期入院患者数(減少)

平成28年度 348人

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第2節 安心して暮らせる保健医療体制の整備

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第Ⅱ部

各論

第2章

第3章

第4章

第1章

第5章

地域保健医療・健康危機管理の取組を推進する

資料編

第Ⅰ部

総論

第2章

第3章

第1章

4 歯科保健医療対策

背景

歯科疾患の予防等による口腔の健康の保持の推進に関する施策を総合的に推進す

ることを目的に、平成23年に「歯科口腔保健の推進に関する法律」が制定されまし

た。

この法律に基づき、乳幼児からの生涯を通じた歯科疾患の予防、口腔機能の獲

得・保持等により、すべての国民が心身ともに健やかで心豊かな生活ができる社会

を実現することを目的に、「歯科口腔保健の推進に関する基本的事項」(平成24年)

が策定され、次の事項に関して行動目標が示されています。

『口腔の健康の保持・増進に関する健康格差の縮小』を目指し

① 歯科疾患(う蝕、歯周病等)の予防

② 生活の質の向上に向けた口腔機能の維持・向上

③ 定期的に歯科検診または歯科医療を受けることが困難な者

に対する歯科口腔保健

④ 歯科口腔保健を総合的に推進するために必要な社会環境整備

(上記①~③の実現のために)

上記、①②については、第Ⅱ部第1・2章参照

③の「定期的に歯科検診または歯科医療を受けることが困難な者に対する歯科口

腔保健」では、障害者(児)、要介護者等で、定期的に歯科検診または歯科医療を

受けることが困難な者に対しては、その状況に応じた支援をした上で、歯科疾患の

予防等による口腔の健康の保持・増進を図っていく必要があるとし、定期的な歯科

検診、歯科医療の推進を目標としています。

【現状と課題】

・要介護者に対する口腔衛生の普及啓発のために、平成19年度から尼崎市歯科医師会

に委託し、介護に関わる施設の職員に対し、口腔ケアに関する研修を行っています。

・在宅医療の推進とともに、在宅歯科診療に携わる歯科診療所の裾野を広げていくこ

とが必要です。

・尼崎口腔衛生センターにおいて障害者(児)歯科診療を行っています。受診機会の

増という患者のニーズに応えるため、平成29年度から診察日を週3日から週4.5日に

拡充しましたが、1日に治療できる件数には限りがあります。特に、全身麻酔を必

要とする患者は、他の医療機関を案内しています。

・障害者(児)等の歯科診療には、特別な知識・技術や経験が必要とされており、今

後、尼崎口腔衛生センターで障害者(児)診療に関わる歯科医師の確保や、地域の

歯科診療所における障害者(児)の受け皿拡大が望まれます。

【尼崎口腔衛生センター心身障害者(児)歯科診療件数】

(単位:件)

平成

20年度

平成

21年度

平成

22年度

平成

23年度

平成

24年度

平成

25年度

平成

26年度

平成

27年度

平成

28年度

件数 2,703 2,787 2,922 3,023 3,071 3,271 3,093 2,771 2,682

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資料編

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第2章

第3章

第1章

■取組状況

・尼崎口腔衛生センターの事業運営委員会や市・尼崎市歯科医師会・尼崎口腔衛生セ

ンターによる協議体において、障害者(児)歯科診療を含めた今後の尼崎口腔衛生

センターのあり方・役割を協議しています。

・要望に応じて、介護にかかる職員を対象とした研修を実施しています。

【取組の方向性】

・口腔機能の低下を予防するために、市民一人ひとりが、かかりつけ歯科医を持つこ

とを啓発するとともに、要介護者等に対する口腔ケアの必要性の普及について、尼

崎市歯科医師会と協議していきます。

・尼崎口腔衛生センターにおける障害者(児)歯科診療の受診体制の充実(全身麻酔

の導入など)について、尼崎市歯科医師会など関係機関と検討していきます。

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資料編

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総論

第2章

第3章

第1章

5 災害救急医療対策

背景

今後30年以内に70%の高い確率で発生するとされている南海トラフ巨大地震で

は、大きな被害が起こると想定されています。また、東日本大震災では、医療機関

の機能停止や長期の避難生活等に起因する「災害関連死」が課題となり、このよう

な「防ぎ得た死」をなくすための医療提供体制を整備する必要があります。

そのため、「尼崎市地域防災計画」、「地域災害救急医療に係るマニュアル指針

(平成25年4月 兵庫県医務課作成)」及び「地域災害救急医療マニュアル(阪神南

圏域版)」に基づき、関係機関が実施すべき医療救護活動を定めた「尼崎市地域災

害救急医療マニュアル」を平成27年6月に策定しました。

【現状と課題】

「尼崎市地域災害救急医療マニュアル」は、市内で自然災害や大地震などの広域災

害が発生した場合を想定し、地域医療情報センター(芦屋健康福祉事務所)及び災害

医療コーディネーターと連携し、保健所、消防局、医療機関、医師会などの医療関係

団体等が迅速に行動するため、平素から連携体制の構築に取り組むとともに、発災時

の災害医療を推進することを目的とし、平成27年度から尼崎市地域災害救急医療対策

会議を開催し、関係機関の連携を強化し、また、情報伝達訓練を実施しています。

しかしながら、現時点では、関係機関の連携については、その初動体制のイメージ

の共有等に努めているところです。また、ソフト防災対策(関係機関との連携体制の

構築、情報伝達体制の整備等)は、その効果が明確になりづらく、評価が行いにくい

状況です。

■取組状況

「尼崎市地域災害救急医療マニュアル」に基づき、市・関係機関とともに、次の取

組を行っています。

(1)体制の整備

① 尼崎市地域災害救急医療対策会議

保健所(保健援護部医療対策班)が事務局となり、定期的に会議を開催しています。

【尼崎市地域災害救急医療対策会議】

設置

目的

【平 時】市内における災害救急医療の確保に関する業務について、市内関係機関

と連絡調整・協議を行う組織として位置づける。

【災害時】被災状況や医療機関の患者受入状況、救護所・救護センターの設置・運

営状況等を把握し、医療救護チームの配置や患者搬送等の情報共有を行う。

構成 災害医療コーディネーター、医師会、市内災害拠点病院・災害対応病院、民間病院

協会、歯科医師会、薬剤師会、看護協会、警察関係者、尼崎市

② 医療体制の整備

阪神圏域内には、災害拠点病院として「県立尼崎総合医療センター」「県立西宮病

院」「兵庫医科大学病院」の3病院があります。また、本市として「関西労災病院」

を災害対応病院に指定し、災害時に重症患者の受入れ等を中心となって担ってもら

うこととしています。

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第2節 安心して暮らせる保健医療体制の整備

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第1章

第5章

地域保健医療・健康危機管理の取組を推進する

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第2章

第3章

第1章

(2)医療情報の収集・発信

① 情報通信体制の整備

市内医療機関等は、平時から災害医療に関する情報を迅速に収集・共有するた

め、広域災害・救急医療情報システム(EMIS)の導入に努めるなど、緊急連絡網

を整えます。

② 情報伝達訓練の実施

市及び関係機関(災害拠点病院・災害対応病院・尼崎市医師会・尼崎市歯科医

師会・尼崎市薬剤師会)は、発災時に的確な行動を迅速に行うため、情報伝達訓

練を年1回定期的に実施しています。

【取組の方向性】

・尼崎市地域災害救急医療対策会議を定期的に開催し、連携体制の構築を図ります。

・情報伝達訓練を定期的に実施(情報通信体制の確立・通信機器の複線化)します。

・各関係団体における初動体制のイメージの共有を図ります。

【評価指標(目標値)】情報伝達訓練参加医療機関数(増加)

平成29年度 224機関

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第3節 健康危機管理体制の整備

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地域保健医療・健康危機管理の取組を推進する

資料編

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第2章

第3章

第1章

第3節 健康危機管理体制の整備

1 感染症対策

[1]結核対策

背景

我が国における結核を取り巻く状況については、昭和26年の「結核予防法」制定

以来、生活環境の変化や、新たな抗結核薬の開発などによる治療の進歩により、結

核患者は大幅に減少し、飛躍的に改善してきました。

しかしながら、昨年も約18,000人の新登録結核患者が発生しており、人口10万人

対罹患率(以下「結核罹患率」という。)も13.9と世界保健機関の定義する「中蔓

延」の状態となっています。

また、平成19年に「結核予防法」が廃止され、「結核」は平成11年に施行された

「感染症の予防及び感染症の患者に対する医療に関する法律」(以下「感染症法」

という。)に基づく二類感染症に位置づけられました。

それに伴い、我が国における結核予防の取組の方向性を示した「結核に関する特

定感染症予防指針」が、平成19年度に策定(平成23年度、平成28年度に一部改正)

され、国、地方公共団体、医療関係者及び関係団体等は相互に連携して、総合的な

取組を推進しています。

【現状と課題】

・本市の結核罹患率は、近年、減少率が鈍化しているものの、この10年で3割以上減

少しています。しかしながら、平成28年の結核罹患率は23.2となっており、全国

13.9と比較して9.3ポイント高い状況となっています。また、兵庫県内においても本市

の結核罹患率は上位に位置しています。

【結核罹患率の推移】 (人口10万対) 昭和

50年

昭和

60年

平成

10年

平成

18年

平成

24年

平成

25年

平成

26年

平成

27年

平成

28年

全 国 96.6 48.4 32.4 20.6 16.7 16.1 15.4 14.4 13.9

兵庫県 129.7 68.4 46.5 25.7 19.7 19.8 18.7 17.1 15.3

尼崎市

(患者数)

149.5

(816人)

91.7

(467人)

67.9

(325人)

34.0

(157人)

26.2

(118人)

24.7

(111人)

24.8

(111人)

23.8

(106人)

23.2

(105人)

・喀痰塗抹陽性肺結核罹患率※は10.2と全国5.2の約2倍の高さとなっており、また、

新登録結核患者に占める喀痰塗抹陽性肺結核患者の割合も44.8%と、全国平均の

37.7%の約1.2倍の高さとなっていることから、結核患者の受診の遅れが懸念されま

す。

※喀痰塗抹陽性肺結核罹患率とは、肺結核患者のうち、患者の喀痰による塗抹検査により抗酸菌

が確認された患者数を人口10万人あたりの率で表したもの。

【喀痰塗抹陽性肺結核罹患率】 (人口10万対)

平成24年 平成25年 平成26年 平成27年 平成28年

全 国 6.5 6.4 6.0 5.6 5.2

兵庫県 7.8 8.2 7.5 7.0 6.0

尼崎市 10.4 10.2 10.5 10.1 10.2

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第3節 健康危機管理体制の整備

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第2章

第3章

第4章

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地域保健医療・健康危機管理の取組を推進する

資料編

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総論

第2章

第3章

第1章

・平成28年の新登録結核患者における70歳以上の割合は61.9%となっており、全国

59.0%と比較して2.9ポイント高い状況となっています。また、10年前と比較しても

21.8ポイント高い状態となっており、新登録結核患者の高齢化が進んでいます。

・新登録結核患者の年齢階級を男女別でみると、男性は女性に比べて40歳代と50歳代

の割合が顕著に高くなっています。

・結核医療に専門的に従事する医療関係者が減少する中、患者発見に遅れが生じない

よう、年に一度、市内医療機関を対象とした研修会を継続して実施しています。

【新登録結核患者の年齢階級別割合】

0~29歳 30~59歳 60~69歳 70歳以上

平成18年 5.7% 38.9% 15.3% 40.1%

平成24年 7.6% 24.6% 20.3% 47.5%

平成25年 6.3% 32.4% 18.9% 42.3%

平成26年 2.7% 21.6% 18.0% 57.7%

平成27年 4.7% 17.9% 21.7 55.7%

平成28年 2.9% 17.1% 18.1% 61.9%

全国 平成28年 8.4% 20.0% 12.6% 59.0%

■取組状況

(1)発症を早期に発見するための取組

① 住民結核定期健康診断の実施

65歳以上の市民(感染症法第53条の2第1項の対象者(就学者、就労者及び施

設入所者)を除く。)を対象に、胸部X線検査を実施しています。

② ハイリスク者健康診断の実施

ホームレスや生活保護受給者などのハイリスク者を対象に、胸部X線検査を実

施しています。

③ 結核定期健康診断補助金の交付

感染症法第60条第1項に基づき、結核定期健康診断の受診促進を図るため、学

校及び施設(国、県及び市が設置するものを除く。)の設置者に対して、経費の一

部を補助しています。

(2)蔓延を防止するための取組

① 結核患者の接触者に対する健康診断の実施

感染症法第15条に基づく疫学調査により、保健所長が必要と認める者に対して

同法第17条に基づく結核接触者健康診断(胸部X線検査・ツベルクリン反応検

査・QFT検査等)を保健所で実施しています。

【接触者健診の実施状況】

平成26年度 平成27年度 平成28年度

胸部XP検査 70件 68件 92件

QFT検査 233件 213件 225件

T-SPOT検査 2件 2件 0件

ツベルクリン反応検査 4件 14件 9件

喀痰検査 10件 0件 1件

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資料編

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総論

第2章

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第1章

② DOTS事業の促進

結核患者に対し、治療終了まで継続的なDOTS(以下「服薬支援」という。)

を行うことで、治療からの脱落を防止し、確実に治癒に導くとともに、多剤耐性

結核菌の出現を予防します。

③ 結核管理検診の実施

感染症法第53条の13に基づき、結核医療を必要としないと認められてから2年

以内の人に対して、管理検診を実施し、直近6か月以内の病状に関する診断結果

の把握を行っています。

④ 結核医療費(入院医療費)の公費負担

「感染症の診査に関する協議会」が適正であると認めた結核患者に対して、感

染症法第37条の2に基づき、結核医療に要する費用の一部を公費負担しています。

また、感染症法第19条、第20条(第26条で読み替え)に基づき入院勧告又は入院

措置を実施した場合に、同法37条に基づき、結核入院医療に要する費用を公費負

担しています。

【公費負担状況】

件数 平成26年度 平成27年度 平成28年度

結 核 医 療 費 1,147件 1,079件 1,157件

結核入院医療費 199件 186件 191件

(3)結核対策を推進するための取組

① 結核菌遺伝子型別検査の実施(VNTR検査)

感染経路の究明や拡散規模の把握等、疫学調査機能の強化を図るため、結核菌

の遺伝子型別検査を兵庫県に依頼して実施しています。

【実施状況】平成28年度 検査件数 19件(平成28年度事業開始)

② 結核研究所等での職員研修

結核対策事業に従事する職員が(公財)結核予防会結核研究所等での研修に参加

し、新たな知見の習得を図っています。

(4)正しい知識の普及啓発のための取組

啓発ポスターやパンフレット、ホームページ等を通じて、結核に対する正しい

知識の普及を図り、市民の結核に対する関心を高め、早期受診・早期発見につな

げています。

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【取組の方向性】

本市総合計画後期まちづくり基本計画【施策10健康支援】において目標を掲げ、平

成28年11月に改正された「結核に関する特定感染症予防指針」を踏まえた、以下の4

つを重点項目とした取組を推進します。

(1) 結核の発症を早期に発見するための取組

・結核患者の早期発見を図るため、高齢者やハイリスク者に対し胸部X線検査の受

診を積極的に働きかけることに努めます。

(2)結核の蔓延を防止するための取組

・結核の蔓延を防止するため、結核患者と接触があり感染が疑われる者に対し、健

康診断の確実な実施に努めます。

・結核患者を確実に治癒に導くため、服薬中断リスクに応じた服薬支援に努めま

す。

・医療関係者等が、結核に関する幅広い知識や標準治療法を含む最新の知識を共有

することができるよう研修会を実施し、結核の早期の確実な診断及び結核治療の

成功率向上を目指します。

(3)結核対策を推進するための取組

・結核発生情報の把握及び処理、その他精度の向上を図るとともに、結核菌の遺伝

子型別検査(VNTR検査)を活用した病原体サーべイランスの構築に努めま

す。

(4)正しい知識の普及啓発のための取組

・市民が結核について正しい知識を持ち、定期健康診断の受診や有症状時の早期受診に

つながるよう、結核に関する情報の公表、正しい知識の普及啓発に努めます。

【評価指標(目標値)】 結核患者罹患率 平成34年度までに19.3(人口10万対)

<4つの重点目標>

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第3節 健康危機管理体制の整備

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[2]新型インフルエンザ等医療対策

背景

新型インフルエンザは、毎年流行を繰り返すインフルエンザウイルスとは大きく異なる新型のウイルスが出現することにより、およそ10年から40年の周期で発生しています。平成21年にパンデミックとなった新型インフルエンザ(A/H1N1)は、我が国において2000万人が罹患しましたが、病原性は低かったため、死亡者は198人・死亡率は0.16(人口10万対)にとどまりました。 現在、人へ感染が確認され、新型インフルエンザに移行するかもしれないと懸念

されている鳥インフルエンザがあります。A/H5N1は、東南アジアや中東・アフリカを中心に平成15年から累計で感染者860人・死亡数454人が報告(WHO平成29年9月27日発表)されています。A/H7N9は、平成25年以降、中国、香港、マカオ、台湾において、累計で感染者は1,564人、死亡者612人が報告(同発表)されており、平成28~29年の5度目のピークは過去最大の患者数が報告されました。 ほとんどの人が新型のウイルスに対する免疫を獲得していないため、世界的な大

流行(パンデミック)となり、大きな健康被害とこれに伴う社会的影響をもたらすことが懸念されます。 ■国の取組 平成17年、国では「新型インフルエンザ対策行動計画」を策定しましたが、平成

21年のA/H1N1のパンデミックの教訓を踏まえて、平成25年「新型インフルエンザ等対策政府行動計画(以下、政府行動計画)」を作成しました。政府行動計画では、病原性の高い新型インフルエンザ等への対応を念頭に置きつつ、病原性の低い場合にも対応できるよう対策の選択肢が示されており、とりわけ、病原性が高い新型インフルエンザ等を対象とした危機管理の法律として「新型インフルエンザ対策等対策特別措置法(以下、特措法)」を制定しました。新型インフルエンザ等が、国内で発生し、全国的かつ急速な蔓延により、国民生活および国民経済に甚大な影響を及ぼす恐れがある時は、「新型インフルエンザ等緊急事態宣言」がなされます。 ■兵庫県の取組 都道府県は、特措法及び感染症法に基づく措置の実施主体として、地域医療体制

の確保や感染拡大の抑制に関し、的確な判断と対応が求められています。兵庫県は、平成25年「兵庫県新型インフルエンザ等対策行動計画」を策定し、インフルエンザの病原性や感染性の程度に応じて、対策レベルを1から3に区分しました。また、地域の発生状況は様々であることから、地域における発生段階(①未発生期 ②海外発生期 ③国内発生早期 ④国内感染期 ⑤小康期)の決定は必要に応じて国との協議の上で兵庫県が判断します。

■市の取組 平成26年に政府行動計画、兵庫県対策行動計画を踏まえ、「尼崎市新型インフル

エンザ等対策行動計画」を作成しました。住民に最も近い行政として、住民のワクチン接種や生活支援、要保護者への支援など、的確に対策を実施します。 また、保健所設置市である本市は、感染症法において、地域医療体制の確保、蔓

延防止に関し、県に準した役割を果たすことが求められています。

【現状と課題】

(1)新型インフルエンザ等医療体制の整備

尼崎市医師会、尼崎民間病院協会との協議を行い、「尼崎市新型インフルエンザ等医

療対策マニュアル」を整備しているところです。定期的な新型インフルエンザ等医療

対策会議の開催や院内感染対策の検証等を行っていく必要があります。

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総論

第2章

第3章

第1章

(2)サーベイランスの徹底

平成28年の感染症法の改正に伴い、一年を通じて季節性インフルエンザ病原体検査

を実施することが定められ、尼崎市では兵庫県に検査を委託しています。また、学校

サーベイランスや入院サーベイランス、インフルエンザ定点医療機関の患者数の把握

等を実施し、インフルエンザウイルスの感染性、病原性の把握を行っています。すみ

やかに市内のインフルエンザウイルス、病原体の蔓延状況、異変を把握するためには、

平時から病原体検査を確実に実施し、尼崎市立衛生研究所で病原体検査が実施できる

よう体制を整えることが最優先です。

また、市ホームページにおいて、尼崎市の感染症発生動向報告やインフルエンザ定

点サーベイランスの報告をしています。今後は、病原体サーベイランス等の結果も含

め、感染症情報センターとして情報発信していく必要があります。

【インフルエンザ定点サーベイランス(定点医療機関における患者数)】

(3)訓練の実施

兵庫県における新型インフルエンザ等水際対策訓練への参加や、平成26・27年は、

本市消防局との合同訓練を行いました。

一方で、保健所職員の若年化が進み、平成21年の新型インフルエンザパンデミック

を経験していない職員が大半を占めているため、研修や防護服の脱着訓練を行い、経

験や知識を継承していく必要があります。

(4)市民とのリスクコミュニケーション

インフルエンザは、飛沫感染、接触感染です。平素から、感染防止対策を行うこと

で、新型インフルエンザの感染も防ぐことができます。

市政出前講座等において、手洗いの重要性について啓発を行っています。また、イ

ンフルエンザ流行時には、保育園や高齢者施設への啓発を行っています。

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平成25年

平成26年

平成27年

平成28年

平成29年

(週)

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第Ⅱ部各論 第4章 地域保健医療・健康危機管理の取組を推進する

第3節 健康危機管理体制の整備

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各論

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第1章

第5章

地域保健医療・健康危機管理の取組を推進する

資料編

第Ⅰ部

総論

第2章

第3章

第1章

新型インフルエンザ対策も季節性インフルエンザと同様と考えられています。

① 流行期のワクチン接種

② 咳エチケットを守る

③ 外出後の手洗い

④ 適度な湿度(50~60%)の保持

⑤ 十分な休養とバランスの取れた栄養摂取

⑥ 人混みや繁華街への外出を控える

インフルエンザにかかったら

・具合が悪ければ早めに受診する

・安静にして、休養をとる。特に十分な睡眠をとる

・水分を十分に補給する

・咳・くしゃみなどの症状がある場合、不織布製マスクを着用する

・無理をして学校や職場に行かない

また、多くの市民にインフルエンザの感染防止対策への理解を促すともに、強毒性

の新型インフルエンザの大流行が起こった時にも慌てず、対応してもらうために、市

民一人ひとりに、国内発生期の“相談から受診までの流れ”などの「尼崎市新型イン

フルエンザ等行動計画」の内容について周知を図る必要があります。

【取組の方向性】

(1) 新型インフルエンザ等医療対策について関係団体と協議等

・外来協力医療機関、入院協力医療機関、専門外来対応医療機関と机上訓練等を行い

ます。

新型インフルエ

ンザ発生国での

潜在歴のある、

又は患者の濃

厚接触者である

発熱・呼吸器症

その他新

型インフル

エンザが

疑われる

相談センター

コールセンター

専用外来

一般医療機関

新型イン

フルエン

ザ患者

感染症指定医療機関

家庭でできる感染防止対策

【国内発生期の相談から受診までの流れ(イメージ)】

市民からの相談は「コールセ

ンター」で受け、新型インフル

エンザの疑いのある場合は、「相

談センター」から専門外来を案

内します。

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第Ⅱ部各論 第4章 地域保健医療・健康危機管理の取組を推進する

第3節 健康危機管理体制の整備

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第5章

地域保健医療・健康危機管理の取組を推進する

資料編

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第2章

第3章

第1章

(2)病原体検査の実施および体制の充実化

・平時からの病原体検査の実施を徹底します。

・インフルエンザウイルスについての病原性・感染性の変異等を確実に把握する体制

を構築します。

・感染症情報センターとして、サーベイランスの結果を関係機関に提供していきます。

(3)職員の人材育成

・尼崎市新型インフルエンザ等医療対策マニュアルの職員への周知徹底を図り、イメ

ージを共有します。

・患者搬送、防護服の脱着等の訓練を実施します。

(4)市民とのリスクコミュニケーション

季節性インフルエンザにおける感染防止対策の周知に努めるとともに、新型インフ

ルエンザ等行動計画の内容についても理解を促します。

【評価指標(目標値)】

机上訓練等を行い、導線等の安全対策が確認できた割合(100%)

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第Ⅱ部各論 第4章 地域保健医療・健康危機管理の取組を推進する

第3節 健康危機管理体制の整備

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第1章

第5章

地域保健医療・健康危機管理の取組を推進する

資料編

第Ⅰ部

総論

第2章

第3章

第1章

2 食品衛生対策

背景

近年、経済の発展や国際化の進展に伴い、輸入食品を始め、様々な食品が広域的

に流通する等、食生活を取り巻く環境が変化しています。それに伴い、食品の生産

から消費までの過程(フードチェーン)は複雑化し、消費者にとって不透明なもの

となってきており、こうした中、国内外において、食品に関する事件や事故が頻発

しています。

また、ノロウイルスによる大規模食中毒や腸管出血性大腸菌による食中毒の死亡

事例の発生、毒キノコなどの誤食やアレルギー表示の欠落などを原因とする健康被

害などの食の安全に係る問題が後を絶たないことにより、食に対する不安は増大

し、食品の安全を確保するための対策がこれまで以上に必要とされています。

そこで、食中毒の防止や違反食品の製造防止につなげるため、厚生労働省は全て

の食品等事業者を対象に国際的に普及が進む衛生管理の手法であるHACCP※の

制度化を検討しており、食品衛生法の改正が予定されています。

なお、より安全でわかりやすい食品表示のため、消費者庁は、食品衛生法、農林

水産物資の規格化及び品質表示の適正化に関する法律(JAS法)および健康増進

法の食品表示に係る規定を統合した食品表示法を策定し、平成27年4月1日から施

行しています。

※HACCPとは、原材料の受入れから製品の出荷までの全ての工程において、危害の要因を

分析し、危害防止につながる特に重要な工程を連続的・継続的に監視し、記録することによ

り、製品の安全性を確保する衛生管理手法のことです。

【現状と課題】

・本市では、食の安全を確保し、食品に起因する危害を防止することにより、消費者

の健康を保護するため、効率的かつ効果的に食品等事業者の監視指導などを行う必

要があることから、食品衛生法第24条の規定に基づき、「尼崎市食品衛生監視指導計

画」(監視指導計画)を策定しています。

・監視指導計画に基づき、危害発生頻度の高い食品の製造施設や販売施設などに対し

重点的に立入検査や食品などの検査を実施するとともに、消費者に対して知識の普

及や意見の交換(リスクコミュニケーション)を実施することなどにより食品衛生

行政を推進しています。

・食中毒対策では、例えば、カンピロバクターを原因とする食中毒については、依然

として発生しており、大半が未加熱または加熱不十分な鶏肉を食べることに起因し

ていることから、未加熱または加熱不十分なものの提供の自粛を指導する等、それ

ぞれの原因物質に応じた指導を行っています。

・国は全ての食品事業者を対象にHACCPの制度化を検討しているため、国の動向

を注視しつつ、HACCPによる衛生管理を普及推進しています。

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第3章

第1章

【取組の方向性】

(1)食品等事業者に対する監視指導の徹底

・食品に起因する衛生上の危害が発生した場合の社会的影響や被害の大きさ、過去の

食中毒発生状況、流通の広域性や営業の特殊性などを踏まえ、重点的に監視する事

項を定め、効率的かつ効果的な監視指導を行います。

・不適切な食品などを排除し、食品の安全を確保するため、監視指導計画に基づき収

去検査などを実施し、検査の結果、違反を発見した場合には、必要に応じて回収・

廃棄命令などの行政措置を行います。

・未加熱または加熱不十分な食肉による食中毒防止対策として、生食用食肉を取扱う

飲食店や食肉販売業などの施設に対して、規格基準が遵守されるよう監視指導を行

うとともに、引き続き規格基準がない鶏肉などの未加熱または加熱不十分なものな

どについての提供の自粛などを指導します。

・食中毒が疑われる事例や食品による深刻な健康被害が懸念される事例を探知した場

合は、尼崎市食中毒対策要綱および尼崎市食中毒調査マニュアルに基づき、原因究

明のための措置を迅速に講ずるとともに、必要に応じて営業の停止などの行政処分

を行い、関連情報を公表し、調理従事者に教育することで被害の拡大および再発の

防止に努めます。

(2)HACCPによる衛生管理の普及推進

・食品製造業や給食施設などを中心に立入検査を実施し、適切な運用がなされていな

い施設には書類作成や危害分析方法などについて指導や助言を行います。

・食品等事業者を対象に、概論や自社製品の危害分析の実践など事業者の特性に応じ

た講習会を開催します。

・市ホームページなどによりHACCPに関する各種講習会などについて情報発信を

行うとともに、市政出前講座のテーマに「ハサップ(HACCP)による衛生管理

について」を追加し、対象者に応じた講習を行います。

・適切な指導や啓発を実施するために食品衛生監視員の技術向上を図る必要があるこ

とから、厚生労働省などが実施する研修会や会議などへ参加することにより最新の

情報収集に努めます。

(3)適正な食品表示に向けた対策の実施

・食品表示が消費者の食品選択における重要な情報源であることを踏まえ、食品表示

法に基づく適正な表示の徹底を図るため、施設への立入検査や収去検査を実施しま

す。

(4)わかりやすい情報の提供による食の安全安心の確保

・市報やホームページなどを活用するとともに、希望する方々に「『食』の安全・安心

情報メール便」を月に一度電子メールで配信することにより、食中毒予防などに関

する情報発信を行います。

・施設への立入検査や食品の検査結果など、監視指導計画の実施状況の概要を公表し

ます。

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第Ⅱ部各論 第4章 地域保健医療・健康危機管理の取組を推進する

第3節 健康危機管理体制の整備

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第5章

地域保健医療・健康危機管理の取組を推進する

資料編

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第2章

第3章

第1章

・食品イベント実施者に対して、食品衛生に関する基本的な知識の啓発を行い、要望

があれば講習会を実施します。

・消費者、食品等事業者に正確でわかりやすい情報の発信に努め、講演会を通してリ

スクコミュニケーションを行うことで相互理解と協力の推進を図ります。

(5)関係者間の連携確保

・大規模食中毒発生時や広域流通食品における違反食品発見時には、国や関係自治体

との緊密な連携のもと、健康被害などの拡大防止を図ります。

・庁内関係部局や国、関係自治体との緊密な情報交換や連絡調整、協議により、平常

時より連携を確保します。

【評価指標(目標値)】

監視指導計画のうち立入検査計画に基づく監視指導件数の達成率

現状(平成28年度) 73.9% → 100%(毎年度)

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第Ⅱ部各論 第4章 地域保健医療・健康危機管理の取組を推進する

第4節 健康回復や療養のための支援等

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資料編

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第1章

第4節 健康回復や療養のための支援等

1 難病・小児慢性特定疾病対策

【現状と課題】

・難病対策の個別支援としては、指定難病医療費申請時等の面接による相談、家庭訪

問、また、尼崎市難病団体連絡協議会に委託し講演会・医療相談会、患者交流会等

の実施、平成27年度から当事者による電話相談を実施しています。

・特定医療費(指定難病)受給者証数(県)及び小児慢性特定疾病医療費受給者証数は、

平成27年の法改正により対象疾病が増加したこともあり、給付人数は増加傾向にあ

ります。

・災害時対策として、在宅人工呼吸器装着患者(児)マニュアル作成の支援等に取り組

んでいます。

・小児慢性特定疾病児童等自立支援事業として、平成27年度から委託にて自立支援員

を配置して相談支援事業を実施しています。

【取組の方向性】

・療養生活の向上を図ることを目的として、支援関係機関と連携を図りながら在宅療

養生活を支援します。

・保健・医療・福祉にわたる情報やサービスの効果的な提供を行います。

・在宅で療養する小児慢性特定疾病児童等が自立に向けた生活を送ることができるよ

う支援します。

背景

難病対策は、56疾患を対象に「特定疾患治療研究事業」により患者の医療費の自

己負担分について公費負担が行われてきましたが、疾患間の不公平感や医療費助成

について都道府県の負担超過が続いている等の課題から、平成26年5月に持続可能

な社会保障制度の確立を図るための改革の推進に関する法律として「難病の患者に

対する医療費等に関する法律」(難病法)が成立し、平成27年1月1日に施行されまし

た。この制度での難病対策は、①「効果的な治療方法の開発と医療の質の向上」、

②「公平・安定的な医療費助成制度の仕組みの構築」、③「国民の理解の促進と社

会参加のための施策の充実」の3つを柱として総合的に取り組むこととされていま

す。

難病法による医療費助成の対象疾病は、平成27年1月には110疾病であったものが

平成27年7月には306疾病へと大幅に拡大され、平成29年4月には330疾病となってい

ます。一方、平成25年4月からは、「障害者の日常生活及び社会生活を総合的に支援

するための法律」(障害者総合支援法)において、「障害者」の定義に難病等が位置

づけられ、難病患者は障害者手帳を所持していない場合であっても障害福祉サービ

スの対象となりました。

小児慢性特定疾病対策については、平成17年度に児童福祉法改正により法制化さ

れ、平成27年1月には同法の一部が改正され、新たに「小児慢性特定疾病児童等自

立支援事業」を法律に位置付け、医療費助成の対象疾病は、これまでの11疾患群・

514疾病から14疾患群・704疾病に拡大されました。さらに、平成29年4月から14疾

患群・722疾病となっています。

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第Ⅱ部各論 第4章 地域保健医療・健康危機管理の取組を推進する

第4節 健康回復や療養のための支援等

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総論

第2章

第3章

第1章

2 肝炎対策

【現状と課題】

・本市の平成21年度と26年度の肝及び肝内胆管がんを死因とする年齢調整死亡率を比

較すると、男性は8.4ポイント(29.9→21.5)、女性は8.7ポイント(13.9→5.2)減少して

いますが、全国(平成26年度:男性15.0、女性5.1)と比べると高い状態となってい

ます。

・肝炎ウイルス検診では、平成23~27年度までの5年間の受診率は約14%でした。受診

率向上について検討していく必要があります。

・平成23~27年度までの5年間に肝炎ウイルス検診受診者のうち、感染している可能性

が高い人は、B型肝炎ウイルスで294人、C型肝炎ウイルスで278人と、全国と比べ

陽性者の発見率に大きな差はありません。

【取組の方向性】

・肝炎に関する正しい知識を普及啓発します。

・肝炎ウイルス検診の受診促進を図ります。

・肝炎ウイルス検査陽性者における精密検査の受検促進及び受療につなげます。

背景

肝炎とは、肝臓の細胞が破壊されている状態であり、その原因はウイルス性、ア

ルコール性、自己免疫性等に分類され、我が国ではB型又はC型肝炎ウイルス感染

に起因する肝炎患者が肝炎に罹患した者の多くを占めていることから、B型及びC

型肝炎に係る対策が喫緊の課題となっています。

我が国のB型及びC型肝炎に係る対策では、平成14年度からC型肝炎等緊急総合

対策を開始、平成19年度から都道府県の選定による肝疾患診療連携拠点病院の整備

等の取組を進めてきました。また、平成20年度以降、①肝炎の治療促進のための環

境整備、②肝炎ウイルス検査の促進、③肝炎に係る診療及び相談体制の整備、④国

民に対する肝炎に係る正しい知識の普及啓発、⑤肝炎に係る研究の推進の5本柱か

らなる肝炎総合対策を進めてきました。平成21年には、肝炎対策に係る施策につい

て、その基本理念を明らかにするとともに、これを総合的に推進するため「肝炎対

策基本法」が制定され、同法に基づき平成23年5月に「肝炎対策の推進に関する基

本的な指針」が策定され、平成28年6月に全面改正されています。

また、C型肝炎の治療が進展し患者支援が充実してきた一方で、肝炎ウイルスに

感染している自覚のない者が多数存在すると推定されることや、職域での検診等の

利便性に配慮した検査体制を整備すること、精密検査や肝炎医療を適切に受診して

いない肝炎ウイルス検査結果が陽性である者が多数に上ること等、肝炎医療を必要

とする者に適切に肝炎医療を提供していくには、解決すべき課題が多い状況です。

さらに、肝炎ウイルスの感染経路等について理解が十分でないことや、肝炎ウイ

ルス検査を受検する必要性に関する認識が十分でないことに加え、一部では肝炎ウ

イルスに持続感染している者に対する不当な差別が存在することが指摘されている

ことから、肝炎ウイルスの感染者及び肝炎患者の人権を尊重しつつ、良質かつ適切

な医療の提供を確保する等、肝炎の克服に向けた取組を一層進めていくことが求め

られています。

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第Ⅱ部各論 第4章 地域保健医療・健康危機管理の取組を推進する

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第1章

3 公害健康被害対策

【現状と課題】

・本市の認定患者数は、昭和45年11月に認定を開始して以来、平成28年度末現在で

11,208人で、このうち死亡4,168人等の異動があり、実認定患者数は1,759人となっ

ています。

・認定疾病別にみると、気管支ぜん息1,579人(89.8%)、慢性気管支炎173人(9.8%)、

肺気しゅ7人(0.4%)となっています。

・公害病認定患者の健康の回復の促進と福祉の増進を図るため、呼吸器教室事業等の

公害保健福祉事業を実施しています。また、公害病認定患者の救済に関する条例に

基づき、在宅酸素助成事業等の救済事業を実施することにより、認定患者の健康回

復と福祉の増進に努めていますが、認定患者の減少及び高齢化に伴い、参加者が

年々減少しています。

・地域住民を対象に大気汚染の影響による健康被害を予防するため、ぜん息児童水泳

訓練事業等の公害健康被害予防事業を実施しています。

【取組の方向性】

・公害健康被害の補償等に関する法律に基づき、認定患者の補償給付等を適正に実施

します。

・法に基づく公害保健福祉事業及び条例に基づく救済事業について、特に参加型事業

への参加者が高齢化等により減少している状況を踏まえ、限りある財源(公害病認

定患者救済事業基金)を有効活用するため、事業の転換を推進します。

・公害健康被害予防事業を引き続き実施し、地域住民の健康を確保します。

背景

公害による健康被害の救済は、昭和45年11月に施行した本市の「大気汚染に係る

健康被害の救済措置に関する要綱」により始まりましたが、同年12月に、市域の一

部が「公害に係る健康被害の救済に関する特別措置法」に基づく救済対象地域とな

り、その後、昭和48年10月に「公害健康被害補償法」(旧補償法)が公布され翌年

11月に、同法に基づく第1種指定地域に市域の3分の2が指定され、さまざまな事業

を実施してきました。

その後は、大気汚染防止対策が目覚ましく進展し、大気汚染をめぐる情勢が変化

したことなどにより補償制度が見直され、旧補償法の一部を改正した「公害健康被

害の補償等に関する法律」(新補償法)が昭和63年3月に施行されたことにより、第

1種指定地域が解除となり新規患者の認定ができなくなりました。また、同時に公

害健康被害予防事業が実施されることとなりました。

それ以降は、認定患者に対する認定更新、補償給付等を引き続き行っているほ

か、新補償法に基づく公害保健福祉事業、公害健康被害予防事業、これを補完する

「尼崎市公害病認定患者の救済に関する条例」に基づく健康被害の救済並びに予防

に係る事業(救済事業)を実施しています。

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第Ⅱ部各論 第4章 地域保健医療・健康危機管理の取組を推進する

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資料編

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総論

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第3章

第1章

4 アスベスト対策

背景

アスベスト(石綿)については、安価で、熱、摩擦等に強いという性質から、吹付

け材などの建材や自動車のブレーキライニングなどの摩擦材などの工業製品に利用

されてきましたが、その粉じんを吸入することにより、中皮腫などの深刻な健康被

害を引き起こす恐れがあり、その使用については平成16年12月に原則禁止とされま

した。しかしながら、建材などに利用されていることから、現在でも建物の解体時

での作業等において、アスベスト(石綿)が飛散する可能性が残っており、国は大気

汚染防止法や石綿障害予防規則により取扱いについて厳格な対処を求めています。

平成17年6月、本市にあった石綿取扱企業の従業員のみならず、かつてその周辺

地域に居住していた住民にもアスベスト(石綿)ばく露の影響で発病すると言われて

いる中皮腫の発病者のいることが公表され、アスベスト(石綿)の一般環境を経由

したばく露による健康被害の可能性が示唆されました。

その状況を踏まえ、国は平成17年12月に「1 隙間のない健康被害者の救済」、「2

今後の被害を未然に防止するための対応」、「3 国民の有する不安への対応」の3点

を柱とした「アスベスト問題に係る総合対策」をとりまとめました。

その対策方針に沿い、既存の法律で救済されない被害者を隙間なく救済するため

の法的措置として平成18年3月には「石綿による健康被害の救済に関する法律」が

施行され、平成28年3月末までに10,985人に対して認定を行い、医療費等の救済給

付を行っています。

また、石綿のばく露歴や石綿関連疾患の健康リスクに関する状況を把握するた

め、「石綿ばく露の疫学的解析調査」を行うとともに、平成18年度から平成26年度

において、調査への協力が得られた地方公共団体に居住していた住民等に対して、

問診、胸部X線検査、胸部CT検査等を実施することにより、石綿ばく露の医学的所

見である胸膜プラーク等の所見の有無と健康影響との関係に関する知見を収集する

「石綿の健康リスク調査」を実施してきました。

平成27年度以降は、石綿健康相談の実施を見据えたモデル事業である「石綿ばく

露者の健康管理に係る試行調査」を実施し、実施主体や肺がん検診等既存検診との

連携方法等の課題について調査検討を行っています。

本市においては、中皮腫死亡者でばく露歴が特定できない者が多く、また中皮腫

死亡割合が全国と比べても非常に高いこともあり、市民等の健康管理及び不安解消

に向けた取組として、平成17年8月から平成26年度まで問診や胸部X線検査等によ

るアスベスト健診を実施するとともに、平成18年度からは「石綿の健康リスク調

査」及び「石綿ばく露者の健康管理に係る試行調査」を受託しており、平成29年3

月末までに延5,013人の受診がありました。また、石綿による健康被害の救済制度

の申請受付窓口として平成29年3月末までに651件の申請受付を行っています。

それ以外にも、一般環境経由の石綿ばく露による健康被害の実態把握の一助とな

るよう、中皮腫による死亡者を対象に、職業歴や居住歴等に関する聞き取り調査を

継続的に実施するとともに、一般環境由来の石綿ばく露と中皮腫死亡との関連を検

討する「大規模石綿工場周辺住民における中皮腫死亡地理的集積に関するコホート

内症例対照研究」について平成27年度から大阪大学が取り組んでおり、本市として

も研究の基礎データの提供等について協力しています。

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第Ⅱ部各論 第4章 地域保健医療・健康危機管理の取組を推進する

第4節 健康回復や療養のための支援等

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資料編

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総論

第2章

第3章

第1章

【現状と課題】

・中皮腫死亡者が各年20~40人程度おり、全国と比べて5.0~9.7倍高くなっています。

・迅速な救済につなげるため石綿健康被害救済制度の申請受付を継続実施しています。

・兵庫県を通じた国の委託事業である石綿ばく露者の健康管理に係る試行調査事業に

ついては、中皮腫で死亡する方が多いという現状に加え、広報・周知に努めている

ことから、自治体単独としては、全国で一番の受診者数となっており、今後とも市

民の健康管理や不安解消の一助として試行調査の着実な実施に取り組みます。

【平成18~27年中皮腫死亡者数推移(本市・全国)】 (単位:人)

合計 平成

18年

平成

19年

平成

20年

平成

21年

平成

22年

平成

23年

平成

24年

平成

25年

平成

26年

平成

27年

尼崎市 308 24 28 28 21 26 43 31 33 33 41

全国 12,601 1,050 1,068 1,170 1,156 1,209 1,258 1,400 1,410 1,376 1,504

【中皮腫粗死亡率(人口対10万人)推移】

平成

18年

平成

19年

平成

20年

平成

21年

平成

22年

平成

23年

平成

24年

平成

25年

平成

26年

平成

27年

尼崎市 5.19 6.07 6.06 4.54 5.63 9.52 6.89 7.35 7.38 9.2

全国 0.82 0.83 0.91 0.9 0.94 0.98 1.1 1.11 1.08 1.18

本市/全国(倍) 6.3 7.3 6.6 5.0 6.0 9.7 6.3 6.6 6.8 7.8

※本市人口は各年12月1日、全国人口については各年10月1日を基に算定

【本市における石綿健康被害救済制度申請受付件数の推移】 (単位:件数)

【本市におけるリスク調査及び試行調査の受診者数の推移】 (単位:人)

リスク調査 第2期リスク調査 試行調査

延人数

平成

18年

平成

19年

平成

20年

平成

21年

平成

22年

平成

23年

平成

24年

平成

25年

平成

26年

平成

27年

平成

28年

受 診 者 数 ※ 1 5,013 107 269 379 578 308 596 491 514 638 561 572

胸部 CT受診者数※2 3,238 95 209 208 345 178 408 297 298 530 344 326

石綿関連有所見者数 1,421 53 134 139 180 67 131 131 132 203 127 124

※1 受診者数:石綿ばく露に関する問診及び胸部Ⅹ線検査を受診した人数

※2 胸部CT受診者数:※1受診者のうち、胸部CT検査も併せて受診した人数

【取組の方向性】

・アスベスト(石綿)ばく露の可能性がある方に対し、健康被害に至る前段階において、

「健康不安の解消」に努めるとともに、可能な限り「早期発見・早期治療」につな

ぐことを目指します。

・アスベスト(石綿)健康被害者に対し、国が行っている補償・救済等につなぎます。

・庁内外との連携を推進するとともに、関係自治体との共同要望を継続的に実施します。

受付件数 平成

17年

平成

18年

平成

19年

平成

20年

平成

21年

平成

22年

平成

23年

平成

24年

平成

25年

平成

26年

平成

27年

平成

28年

651 113 136 52 45 21 40 44 48 37 39 41 35