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第35回北海道マルチメディア理科教育研究協議会実施報告 ·...
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第35回北海道マルチメディア理科教育研究協議会実施報告北理研マルチメディア研究委員会
代表 立命館慶祥高等学校 杉山剛英
1.はじめに
本研究会は、「わかる授業実現のため、新教材・素材を用いた実験・授業のあり方を実践研
究する」を研究主題としている。毎年2月にその成果を研修会の形で発表し、参加者にも実際
に体験してもらい、その普及を図っている。今回も全道各地から教員のみならず、大学教授、
教職を志す大学生の参加もあり熱気に溢れる1日となった。また学生時に参加し、教員となっ
て再び参加してこられた方もあり、つながり伝える事の重要さを改めて認識することとなった。
2.実施報告
(1)概要
主 管:北理研マルチメディア研究委員会
日 時:令和2年2月8日(土)9:20~16:10
場 所:立命館慶祥高等学校 参加者:125名
(2)参加者内訳
20代 33%,30代 24%,40代 26%,50代 9%,60代 3%
男性教員 71%,女性教員 29% 旅費支給 個人で 66%,学校から 34%
参加回数 初めて 31%,2回目 14%,3回目 13%,4回目 10% ,5回以上 28%
満足度 4.8(5点満点)
尾崎寿春校長 中村隆信 様 杉山剛英マイスター教諭 開会式 AL新棟Co-Tan
北理研会長 元道教委委員長 マルチ研代表
(3)研修内容
本研修会は、参加者の専門科目に関わりなく、全領域を研修することを旨としている。多く
の科目の知識が備わると、自分の専門科目につながり、より広い視野で学習指導が出来るよう
になるという共通認識の元に運営している。
①「クエン酸・VCの中和滴定」 五十嵐美野莉(静内)、松橋加奈(北海)
どんなに実験をしない化学の先生も、中和滴定だけはやらなければいけないと思っています。
食酢の滴定は当たり前です。思考力・応用力が問われる今、一歩進めてクエン酸の価数を調べ、
更にフェノールフタレインとメチルオレンジの違いも実験で確認してみます。また、ビタミンCの第一中和点と
第二中和点を計算で求め、フェノールフタレインはどこで変色するのかを予想し、実験検証します。
②「1100円の電子天秤を使った実験」 樫村美香(旭藤星)、山形 慶(函中部)
学校に1台しか無かった電子天秤(0.01g)が、1班1台いや 1 人 1 台でも揃えられる時代に
なりました。今回は、気体の重さを量り、生徒が想像していなかった空気からの浮力も検証し
ます。炭酸飲料に含まれる二酸化炭素濃度を調べ、アルミ線の質量と体積からからアボガドロ
定数を考察します。額面を信じていたガラス器具の精度も確かめます。革命的電子天秤をぜひ
入手して下さい。
③「熱機関いろいろ」~プロメテウスの火が近代にもたらしたもの~
石川昌司(立命)、花光隆太朗(松前)
18世紀末から19世紀前半にかけて起きた火力で動く動力の発明は、人力、畜力、風力、流水
力などによる動力を、より小型でハイパワーなマシンに置き換えることとなった。この驚愕の科学技術
を、現代の高校生にも感動を持って伝えたい。教科書に紹介されているビー玉スターリングエンジンは
スピードが遅くまた動きが上下運動に限られていることや、熱機関が動作するためには低温物
体(=低熱源)の存在が不可欠であることの説明が足りないので、より具体的に理解するため
に今回の講座では、①火力で高速動作する市販のスターリンク゚エンジン等の演示実験教材の紹介、②低
温度差型スターリングエンジンを用いて、高温物体から熱を取り込み低温物体へ熱を逃がす熱機関の原
理を発見する生徒実験の体験、③定番の「圧縮発火の実験」の体験 の3つを主な内容とした。
④「岩石の観察」 佐藤 誠(札西)、李家 健(中標津)
地学の基本である「火成岩」に焦点を当て、見た目の分類、浮力を使った密度測定、偏光板
を使った結晶観察、スマホを使った色指数の実習を行い、普段目にしている石に対する観察眼
を養います。
⑤「クロロフィル抽出と紫外線蛍光、薄層クロマト」
児玉紗也香(立命)、菊地貴広(釧湖陵)
クロレラ錠剤、粉末緑茶、乾燥ワカメ、海苔、ミドリムシ錠剤の光合成色素をアセトンで抽
出し、薄層クロマトグラフィーで短時間分離をします。光合成色素は光エネルギーを酸化還元
の原動力としていますが、細胞が死んだ後も機能は残ります。紫外線を当てると、変換された
エネルギーの使い所がないため、再び光として放射します。これは生きている細胞でも行われ
るため、放射光の量で植物活動量を探り、農作物の育成調査にも使われています。ほうれん草
にも紫外線を当ててみましょう。
⑥「耳と目の感覚実験」 大畑真人(旭丘)、市村由子(手稲)
人の耳はどうやって音源の位置を探っているのか。東レ理科教育賞に輝く音源定位実験器で
体験します。音の振動数の捉え方、色覚、補色、痛点についても簡単な実験でその仕組みを探
っていきます。
⑦「ちょっと危険な実験その2」 藤田啓太郎 (室栄) 、松原直紀(立命)
化学反応には激烈なものも多く、実験室で行うには躊躇するものも多くあります。しかし、
事前指導と理論学習で学習効果を倍増できるインパクトがあります。理解を伴わない実験は、
ただのショーであって学習ではありません。激烈な印象に、学習活動を載せましょう。ケイ化
マグネシウムの合成とシランガス、赤リン紙雷管、全班テルミット反応を実体験します。
⑧「世界経済と科学技術12」 杉山剛英(立命)
世界を支配するGAFA vs BAT,集中管理を分散管理にするブロックチェーン技術、そ
の技術を応用して登場した仮想国家エストニア、学歴分断社会、女性起業家のメッカはアフリ
カにあり、学術・技術・経済で後れを取る日本など、のんびり働き方改革などをしてる日本は
どんどん置いて行かれます。世界を知って、教室の生徒を教えましょう。生徒の学び合いだけ
では、教師が持つすごい知識と経験は伝わっていきません。
・閉会式
副代表 松原直紀(立命)
(4)参加者の感想 まとめ・畑 有希(琴似工)
①・生徒がうまくやれるように先生なりの自己流の工夫を教えて頂いて参考になりました。・モル濃度を求めることしかしたことがなかったので、価数というのは面白いと思いました
・メチルオレンジとPPの変色域の違いに改めて驚きました
・MOとPPの使い分けの理由を実験を持って理解できた。
②・気体の質量を測定することができることがわかり、きっと生徒も驚くと思いました
・ガラス器具の正確性を調べることが出来、面白かった。
・ドライアイスが気体になった時に浮力で秤の目盛りが小さくなるというのは、なるほど!
③・自作のスターリングエンジンとは違う迫力と歯車の動きを近くで見られワクワクしました
・初めての装置ばかりで大変勉強になりました。
・熱、目には見えないものであり、しかし確かに力を感じられました。
④・密度の実験は物理基礎で行える内容。岩石も揃っているため、扱ってみたいです
・色指数についてはくだかないと測定できないと思っていたので、スマホ画面上で簡単にでき
ると知って驚いた。
・浮力から体積を求めるのが面白い。考えさせる良い教材だと感じた。LED に紙コップを重
ねて光源にするアイディアがすごい。
⑤・海苔(あんなわずかで良いとはビックリしました。)を使ったり、各種の錠剤を利用した
りするなど、身近で簡単なというところに皆さんが工夫されていることがわかりました。
・紫外線を使い、違いを知ることができて良かった。
・展開液は何でしょう?・紫外線蛍光のアイディアは全く知らなかった。また、生の試料でな
くてもあそこまできれいな結果が出たのは驚きだった。
・クロマトの終わりの部分を先に線で示しておくのも失敗を防げる
⑥・五感を使う実験は生徒が楽しみながら理解できそうだった。
・物理的な視点で生物を考えるという他教科をつなげる良い教材で、とても勉強になった。
・あの装置は面白い。男女差とか、年齢差により定位が違うかが興味があるところです。
⑦・怖くてできない実験をやれてよかったです。
・テルミット反応は初めてだったので、目の前でできて、今後の説明がしやすくなった
・シラン合成をやったことがなく、ようやくできそうです。これを見るために参加しました。
⑧・世界と日本の違いを見せながら、どんな日本になったら良いだろう。面白いだろうと考え
させられる内容でした。
・幅広い知識から普段からお話しされているんだろうと思い、私自身もそんな風に生徒に理科
を通して、色々な話をしたいと思いました。
全体を通して
・初めての参加でしたが、盛りだくさんで全分野について学ぶことができ、充実できました
・密度濃く、素晴らしい研究会です。参加者数、リピーター数、素晴らしい
・一日日程で様々な実験を学ぶことが出来る研究会は数少ないので、積極的に参加したい
3.まとめ
講演でも説明したが、日本の技術・経済力は 2003 年から下降を続け、2005 年には中国に抜
かされた状態であり、現在、その差は論文数において 5 ~ 10 倍の開きになっている。2018 年
の統計では、論文引用数上位の研究者は、アメリカの 1814 人、中国 276人、ドイツ 229人、スペ
イン 76人、日本 65人、イタリア 65人である。もはや、技術立国復活不能の水準である。講演
でも、3年前から紹介できる日本の新技術がめっきり減ってきて困っている。しかし、企業の
売り上げはこの20年全く変わらないのに、空前の利益を上げ、次は働き方改革で怠け者の発
言力を強化しようとしている。かつてアメリカの大統領も日系人になるのではと真実味を持っ
て言われた時代があったが、この調子では日本の総理が外国人になってしまうのではないか。
産業界主導で教育現場の声に耳を貸さなかった大学入試改革は、右往左往の大混乱を示し、生
徒がその害を被る形になった。しかし、現に教壇に立ち、生徒を教育するのは我々である。腕
前無しに生徒に道を示すことは出来ない。すごいな と思われる先生でなければ、実のある教
育はできないのではないだろうか。研究会は、すごい先達のすごい経験と知識を半日で手に入
れられる場である。参加しないという選択肢は・・・ないやろ。
第36回北海道マルチメディア理科教育研究協議会は、令和3年2月6日(土)
に開催。案内は11月下旬に各校へ送付。会場は立命館慶祥高校。