第2章 中国における廃棄物処理・リサイクルに係る …...第2章...

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第 2 章 中国における廃棄物処理・リサイクルに係る法制度の現状

本章は、中国における廃棄物処理・リサイクルに係る法制度の現状を中心に、現地ヒア

リング(2003 年 12 月)及び文献調査からの情報をまとめたものである。

なお、現地ヒアリング先で撮影した写真と、2003 年 11 月 8 日に寧波市内のホテルで、

中国有色金属工業協会再生金属分会等が主催した「中国金属リサイクル産業発展のための

国際会議」での報告の主要部分を章末に添付する。後者は中国内のリサイクルに関する考

え方を知るうえで参考になるものと考える。

2.1 中国の廃棄物法制度

中国において固形廃棄物は、工業固形廃棄物、有害廃棄物1、一般廃棄物(生活ごみ)の

3 つに分類される。うち、工業固形廃棄物の発生量は 2000 年で 8.2 億トンである2。2000

年における中国の生活ごみ発生総量は 1.4 億トン3で、一人一日あたり発生量は 0.30kg(人

口を 12.7 億人と考えた場合)、都市住民に限定した場合は先進国並の 1.21kg である。

現在、生活ごみの年増加率は 8~10%と高く、特に北京、上海等の大都市では 15~20%

となっている。

廃棄物関連法としては、「固形廃棄物環境汚染防止法(1995 年制定、1996 年施行:通称

固体法)」があり、中国固形廃棄物の管理に関する基本法であり、定める内容は以下のとお

りである。

① 三化(減量化,資源化,無害化)の基本原則。

② 排出,収集,貯蔵,運搬,利用,処理処分の全過程を規制(全過程管理の原則)。

③ 少量の発生源は集中処理、大量の発生源は個別処理の原則。

④ 危険廃棄物と一般廃棄物の分類管理の原則。

⑤ 都市生活ごみ処理施設の建設、環境保護と環境衛生基準を満たすことを明確に

規定。

「固形廃棄物環境汚染防止法」に基づき、国務院の管轄下にある、「国家発展改革委員

会(旧国家経済貿易委員会)」、「国家環境保護総局(通称環保総局または SEPA)」、「建設部」、

「各省・直轄市政府」がそれぞれの職務権限内において、固形廃棄物による環境汚染の防

止及び管理に関する責任を負っている。第三条は、三化の原則(減量化、資源化、無害化)

を規定している。中国政府はこのほか、『都市ごみ処理とその汚染抑制技術に関する政策』

等の政策も打ち出しており、有害廃棄物の資源化も進めている。

生産時における環境対策という面から 2002 年に「清潔生産促進法(cleaner production

law)」が制定(2003 年施行)されている。

固体廃棄物汚染環境防治法は、2004 年末を目途に拡大生産者責任(EPR-Extended

1 中国では通常「危険廃棄物」とよばれている。 2 国家環境保護総局『中国環境統計年報 2000』 2001 年 3 建設部『中国都市統計年報』

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Producer Responsibility)制度の導入を図る改正が行われる予定である。

図 2.1 に、中国における廃棄物行政の組織図を示す。

図 2.1 中国における廃棄物行政の組織図

生活ごみ 工業廃棄物・輸入廃棄物国内リサイクル可能廃棄物

「固形廃棄物、

特に省および自

治体の固形廃棄

物の監督・管理」

登録・報告シス

テム

マニフェストシ

ステム等を担当

「国全体の都市

ごみの監督・管

理」

法、規制、政策

及び計画の制定

基準、ガイドラ

インの制定、

研究、教育等を

担当

「自治体の都市

ごみの監督・管

理」

都市ごみの清

掃、収集、管理、

輸送、処分都市

ごみの回収・リ

サイクル等を担

「固形廃棄物、

特に有害廃棄物

の監督・管理組

織」

法、規制、政策

及び計画の制定

基準、ガイドラ

インの制定等を

担当

「自治体の

総合的資源

汚 染 の 監

督・管理」

プロジェク

トの実施固

形廃棄物の

リサイクル、

回収等を担

「全国的な

資源の総合

利 用 の 監

督・管理」

法、規制、政

策及び基準

の制定

資源の総合

利用プロジェ

クト等を担当

自治体の環

境保護局

資源保護・総

合的利用課

資源保護・総

合的利用課

固形廃棄物・

有毒化学物質課

(固形廃棄物

管理処)

自治体の地

域委員会 資源保護・総

合的利用課

都市

建設司

各省

建設

委員会

各省

環境

保護局

汚染

規制司

各省

国家発改

委員会

総合的資源

利用司

建設部 国家環境保護総局 国家発展改革委員会

国務院

出典:馬鴻昌「中国における固形産業廃棄物のリサイクルと回収」(社団法人産業と環境の

会『平成 13 年度廃棄物問題国際シンポジウム報告書』2002 年)及び吉田綾『リサイクル可

能廃棄物の中国への越境移動』東京大学修士論文 2003 をもとに作成

2.1.1 廃棄物に関する基準

廃棄物に関する基準は、環境に係る基準と、汚染抑制に係る基準及びその関連基準があ

る。

「固形廃棄物情報 CSW」中国環境科学学会 2001(1)より抜粋した情報を、以下に示すが、

主な環境基準、その基準の番号、公布年月日、実施年月日は以下のとおりである。

① 都市生活ごみ衛生埋め立て技術基準

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番号 CJJ17-88、公布年月日 1989.2.15、実施年月日 1989.7.1

② 生活ごみ埋め立て汚染制御基準

GB16889-1997、1997.7.2、1998.1.1

③ 生活ごみ埋め立て場地環境観測技術基準

CJ/T3037-1995:GWKB3-2000、1995.7.14、1995.12.1

④ 生活ごみ焼却汚染制御基準

CJ/T3059-1996、2000.2.29、2000.6.1

⑤ 都市生活ごみコンポスト処理場技術評価指標

GB8172-87、1996.3.8、1996.7.1

⑥ 都市・郷鎮ごみ農用制御基準

GB7959-87、1987.10.5、1988.2.1

⑦ 糞便無害化衛生基準

GB8978-1996、1987.10.5、1988.4.1

⑧ 汚水総合排出基準

GB14554-93、1996.10.4、1998.1.1

⑨ 悪臭汚染物排出基準

1993.8.6、1994.1.15

汚染抑制に係る基準及びその関連基準は以下である。

① 土壌環境質基準(GB 15618-1995)

② 地表水環境質基準(GHZB1-1991)

③ 地面水環境質基準(GB 3838-1996)

④ 環境空気質基準(GB 3095-1996)

⑤ 汚水総合排出基準(GB 8978-1996)

⑥ 大気汚染物質総合排出基準(GB 16297-1996)

⑦ 地下水質基準(GB 14848-1993)

⑧ 飲用天然鉱泉水基準(GB 8537-1987)

⑨ 漁業水質基準(GB 1106-89)

⑩ 農地灌漑水質基準(GB 5084-1993)

⑪ 海水水質基準(GB 3797-82)

⑫ 都市汚水処理場汚水汚泥排出基準(CJ4 3025-1993)

⑬ 汚水排出都市地下水道水質基準(CJ 18-1986)

⑭ 生活雑用水水質基準(GB 25.1-1989)

⑮ 環境汚染類別コード(GB/T 16705-1996)

⑯ 環境汚染源類別コード(GB/T 16706-1996)

⑰ 悪臭汚染物排出基準(GB14554-1993)

⑱ 飲食業油煙排出基準(GBPB5-2000)

4 建設部の発行した中国都市建設事業基準コードは「CJ××××‐××××」で表記する。

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⑲ 汚水海洋処理工程汚染抑制基準(GWKB4-2000)

上記のほかに、輸入廃棄物環境保護抑制基準として以下がある。

① 骨くず(GB5 16487.1-1996)

② スラグ(GB 16487.2-1996)

③ 木、木製品くず(GB 16487.3-1996)

④ 古紙または紙板(GB 16487.4-1996)

⑤ 紡績品くず(GB 16487.5-1996)

⑥ 廃鋼鉄くず(GB 16487.6-1996)

⑦ 廃非鉄金属くず(GB 16487.7-1996)

⑧ 廃モーター(GB 16487.8-1996)

⑨ 廃電線・ケーブル(GB 16487.9-1996)

⑩ 廃ミックス・メタル(GB 16487.10-1996)

⑪ 船(GB 16487.11-1996)

⑫ 廃プラスティック(GB 16487.12-1996)

2.1.2 有害廃棄物の処理状況と取組

固体廃棄物に関しては、以下のような課題があり、固体法の改正が予定されている。

① 固体廃棄物汚染防止法を具体化する「実施細則」が不足。

-企業における目標責任制(生産量に対しての廃棄物の量)の推進及び環境影響評価と

三同時制度の徹底

② 輸入廃棄物,汚染排出費,危険廃棄物許可証等法に基づく規定等が未整備。

-企業の申告登記制度,汚染排出費制度の徹底(費用の徴収範囲が狭く、単価が安い)

③ 環境保護基準や処理技術の水準を高める必要がある。

-有害廃棄物の輸送許可制度

-集中処理処分の推進(費用効果及び総合利用が可能)

-期限付き処理制度(重点汚染源の解決)

④ 固体廃棄物の環境管理能力が極めて低い(省レベルでも専門の管理人員がいない)。

-許可証制度の推進(企業、個人に対する許可)

⑤ 知識の普及

廃棄物の主な処理方法としては、埋め立て,コンポスト,焼却があるが、工業廃棄物,

都市生活ごみともに、依然として埋め立てが中心的に行われている。しかし、埋め立て処

理場の確保やコンポスト化には限界があり、今後焼却処理が広まるものと思われる。

5 基準コードの説明:1999 年以前は国家基準を「GB××××‐××」、国家推薦基準を「GB/T××××

‐××」で表記。1999 年以降は細分化し、国家汚染抑制基準を「GWKB×‐××××」、国家汚染排出基準

を「GWPB×‐××××」、国家環境質基準を「GHZB×‐××××」としている。

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1.工業廃棄物

工業廃棄物の処理は各企業の責任である。そのため、大部分の企業が堆積、貯蔵場所

を所有している。毎年 1000 万トンが河川や湖沼に排出されており、管理、処理技術

が不十分といえる。

2.都市生活ごみ

現状

・一人当たりごみ排出量 450-500kg 前後。毎年 8-10(6-8?)%の割合で増加中。

・処理方式:衛生埋め立て 80%,高温コンポスト 19%,焼却 1%(1999)。

・無害化処理 6790.93 万トン(全体の 60%)(1998)。しかし、専門家によると国際

衛生基準を満たす処理量はごみ発生量全体の 10%前後である。

・全国 666 ヵ所の処理施設。平均ごみ排出量 0.85kg/日。(1997)

・ごみ処理場建設費用 86億元(1998),100 億元以上(1999)

・既存のごみ処理場の数と規模は、都市生活ごみの増加速度から必要な水準を満

たすにはほど遠い。大部分のごみは野外に放置されている。(放置されているご

みは 60 億トンで 5億平方メートルを占用。全国 200 都市(都市総数の 30%)が

ごみに包囲されている)。

・都市生活ごみ発生量の 60%が人口 50 万人以上の 52 の重点都市に集中している。

特に、北京,上海,沈陽の占める割合は大きい(それぞれ 4.12%,3.49%,2.18%

でこの 3都市のごみは全国の約 10%を占める)。

取組状況

① 焼却技術の普及

・1960 年代に放射性廃棄物処理のために焼却施設を導入したのが始まり。

・1985 年に深せんにおいて日本製の焼却炉(三菱重工,一日 150 トンの処理能

力2基)を導入したのが、中国で最初の近代化ごみ焼却施設。

広州,上海,北海,北京,珠海,沈陽等の都市では、ごみ焼却発電所は建設

中または建設済みとなっている。

② リサイクルの推進

建設部が、北京,上海,広州,深せん,杭州,南京,アモイ及び桂林の 8

都市に委託し、生活ごみの分別収集の試験的業務を行っている。

まず、紙と廃プラスティック、そして廃電池について分別収集を行い、生

活ごみの減量化と資源化を促進している。

③ 処理場の基準

全国 30省、代表的な施設 329 を調査した結果、そのほとんどは埋め立て施

設で、そのうち

16 ヶ所は基準を満たす(衛生型埋め立て:高いレベルの基準)

115 ヶ所(30%)は一定程度満たす(一応遮水処理はある)

150 ヶ所はまったく基準を満たしていない(遮水処理はない)

3.有害廃棄物

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近年中国は続々と大型のごみ総合利用施設を建設しており、大きな進歩であるとい

える。

深せんは最も早く工業廃棄物処理場を建設し、腐食廃液、乳化液等の廃棄物を処理

している。成都も危険廃棄物処理センターを建設し、年間処理能力 10 万トンを有す

る。4 つの処理ラインがあり、それぞれ使用済み有機溶剤処理ライン、使用済み鉱物

油処理ライン、電気メッキ廃液処理ラインと廃家電処理分類ラインがある。残渣は焼

却処理が行われる。

バッテリーについては海外からの技術導入で処理を行っているが、一次電池(乾電

池)のリサイクル(水銀等)は行われていない。北京市には廃電池のリサイクル企業

が昔あったが倒産したといわれている。よって、これらのリサイクル技術の市場化が

必要であると思われる。

国務院は、危険廃棄物・医療廃棄物の処理施設の建設計画を承認し、期間 3年間に

149 億 2 千万元を投資して、廃棄物貯蔵・処理における安全の確保をはかると発表し

た6。同計画に基づき、機能の充実した総合的危険廃棄物処理センターを全国 31 カ所

に建設し、年間の処理能力量を 282 万トン増やす。また、危険廃棄物等を排出する企

業に対しては、処理能力を年間 350 万トン引き上げ、今後は廃棄物を発生した年度内

に処理するよう義務づけるとともに、貯蔵されている危険廃棄物の処理も段階的に処

理するよう求めている。

医療廃棄物については、集中処理施設 300 カ所を設置し、一日当たり処理能力を

2,080 トン引き上げ、当面の需要に加え、向こう数年間の衛生関連事業進展や社会の

都市化に対応できるようにする。放射性廃棄物は、既存設備の増改築等を含め、省級

の貯蔵庫 31カ所を整備し、貯蔵量を 1万 5,300 立方メートル増加させるとしている。

以下は近年公表された法規制等である。

「有害廃棄物処理有料化制度の実施に関する、有害廃棄物処理の産業化促進に関

する通知」(国家発展改革委員会、国家環境保護総局、衛生部、財政部、建設部

による連名公布)

「医療廃棄物管理条例」

「広東省固体廃棄物汚染環境防止条例」(廃電子機器類廃棄物の回収利用、輸入

に対して規制)

「使用済み電池の汚染防止技術政策」(2003 年 10 月 9 日公布 国家環境保護総

局、国家発展改革委員会、建設部、科学技術部、商務部)(2003 年 7 月 21 日 環

境保護総局)

「廃自動車回収管理弁法」(国務院)

6 「人民網日本語版」2004 年 2月 5日

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2.2 中国のリサイクル法制度

中国には日本の家電リサイクル法に相当するようなリサイクル法はまだ整備されてい

ない。

国内リサイクルに関しては、国家発展改革委員会が、輸入廃棄物の管理等に関しては、

国家環境保護総局、商務部(旧対外貿易経済合作部)、国家質量監督検験検疫局及び税関が

協力して、管轄している。そのため、多くのリサイクル関連の政策は、これら部局の通知

等の形で規制が行われており、これは日本でいう省令や通達に近いものである。

『資源の総合利用の更なる展開に関する意見の通知』は、1996 年に旧経貿委等の中央官

庁が作成し、国務院が認可した、資源の総合利用(リサイクル)に関する中国政府最初の

包括的な政策文献である。リサイクルの範囲や企業の積極的なリサイクルへの取り組む支

援する優遇政策を規定している。各地域、各関係部門が企業のリサイクルプロジェクトの

立案、銀行による信用貸付政策を講じ、資金効率の向上を促すことを示した。

各地の地方政府においても、リサイクル強化の傾向が見られる。北京市政府は昨年末に、

生活ごみの無害化、資源化、産業化の実現を目指した「北京市生活ごみ処理白書」を発表

している。白書によると、北京市は 2008 年をめどに(1)ごみ分別化地区を年間 200~300

ヶ所新設し、ごみ収集ポイントでの分別率を現在の 15%から 50%に引き上げる、(2)ご

みの資源化利用率を現在の 10%から 30%に引き上げを目指す。これにより、年間排出量の

約 1/3 にあたる約 100 万トン以上がリサイクルされる見込みである7。

2.2.1 中国における廃棄物処理、リサイクルの現状

中国ではリサイクル率が低いと思われがちだが、民間による資源回収が発達しているた

め、必ずしも実態が統計に反映されていない。ガラス、紙、プラスティック、鉄・非鉄金

属等の多くは、基本的にリサイクルの出来る廃棄物として、家庭から中間処分場に運ばれ

る以前に「廃品回収公司」や個人により回収されている。彼らは自転車の後ろにリヤカー

を取り付けた三輪運搬車等で街々を次々と回っては、各町内の主婦たちから持ち出された

廃品を買い取る。中間処分場や埋め立て処分場においても、多くのスキャベンジャー(ご

み漁り人)が手で廃品を回収している。回収された廃棄物は物資回収所で集められたのち、

廃品交易市場に運ばれ売買される。そして数多くの産業業種別に、有用な原材料として再

利用されるべく各工場へ送り出されるのである。

中国において毎年回収されるのリサイクル可能な廃棄物の総量は、金属スクラップ約

4,000 万トン、廃ゴム、廃プラスティック、古紙、約 620 万トン、その他の生活廃品、あ

わせて 5000 万トンに達するといわれ、その総価格は 450 億元以上であるといわれている。

また、沿岸部は、リサイクル企業が多く、回収品目も多いため回収率が高いといわれてい

る。

固形廃棄物環境汚染防止法が廃棄物処理関連の法制度の中心であり、主な廃棄物処理方

7 人民日報 2003.12.25

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法として、オープンダンピング(埋め立て、焼却)を定めている。8

2.2.2 中国のリサイクルにおける問題点

中国のリサイクルにおける問題点としては以下の 4つが挙げられる9。

① 管理システムが不完全

改革開放以降、個人回収企業が急速に発展し規模を拡大している。国有企業(物

資再生業界)、集体企業(供銷社系統の廃旧物資回収企業)と個人経営者が相互競

争の局面にあるが、統一した管理体制の下にないため回収効率が低い等の問題が

ある。

② 企業構造の市場不適合

現在、80%が倒産等の危機にあり、原因として、市場経済のメカニズムに適応

した経営体制になっていないことが考えられる。

③ 政策・法規の未整備

まだ「リサイクル法」が整備されていないため、リサイクル可能廃棄物の回収

責任が不明確である。また、改革開放、市場経済への移行後、回収・リサイクル

に関して統一された基準がないため、市場の混乱等を招いている。例えば、中古

自動車市場は、農民が営業許可証無しでやっている場合があり、無秩序状態であ

る。

④ 技術・設備の老朽化

労働集約型の中小企業が多く、技術や設備が遅れている。

また、今後の課題としては、回収「価値」がなくなったものをどうするかが考えられる。

例えば、廃ガラスは利益が薄いため、あまりリサイクルをやりたがらない傾向がある10。

現在の日本のように、経済効率だけでは回収できなくなるということも視野に入れて、国

内リサイクル法規ないし制度の構築を進めていくべきであると思われる。

2.3 資源回収用のスクラップ輸入に関する制度

2.3.1 輸入ライセンスの取得とリサイクル可能廃棄物輸入状況

スクラップ輸入に係る資格の審査とライセンスの発給は、区・県レベルの環境保護局、

市・省レベルの環境保護局、国家環境保護総局の 3段階での認可が必要であり、国家環境

保護総局汚染控制処の権限下にある(輸入ライセンスの申請窓口は、日中友好環境保全セ

8吉田綾『リサイクル可能廃棄物の中国への越境移動』東京大学修士論文 2003 9 「再生資源事業はわが国の国民経済発展における重要産業に成る」(『中国資源総合利用』 2000.12) 10 国家発展改革委員会資源総合利用処ヒアリングより

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ンターの固体廃棄物管理中心)。いずれの輸入廃棄物についても、申請前に、リスク評価資

格のある機関に委託して輸入廃棄物リスク評価を受けなければならない。申請書及びリス

ク評価報告書は、省と市環境保護局の 2つのレベルにおいて厳格に審査され、合格後、国

家環境保護総局により発行される。

1996 年以降、輸入許可証が発行されるようになったが、1998 年 9 月末までに国家環境

保護総局が発行した許可証は約 5,000 件で、その主なものは、古紙、鋼鉄くず、銅くず、

アルミくず、プラスティックくずとなっている。

中国が輸入しているリサイクル可能廃棄物の輸入量を、図 2.2 に示す。中国が毎年認可

している廃棄物の中で最も多いものは鉄くずで、銅くずとプラスティックくずが 1996 年以

降増加し続けているのが分かる。

図 2.2 中国のリサイクル可能廃棄物輸入量

中国のリサイクル可能廃棄物輸入量

0

50

100

150

200

250

300

350

400

450

500

1989 1990 1991 1992 1993 1994 1995 1996 1997 1998 1999 2000 2001

万トン

プラスチック

アルミ

出典:中国税関統計

2.3.2 輸入可能廃棄物リスト・輸入禁止廃棄物

輸入制限の対象となるものは、輸入ライセンスを必要とするもののことである。表 2.1

は、1996 年の「廃棄物輸入の環境保全管理に関する暫定規程」で定められた、条件付きで

輸入を許可している廃棄物品目のリストである。この 10項目以外の廃棄物はいずれも中国

への輸入が禁止されている。

輸入禁止の対象となるものは、大きく分けて、人間の健康に有害な物質と生活ごみの 2

種類ある。リサイクルと関連する輸入禁止物としては、2001 年 12 月より、「輸入禁止貨物

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リスト」(第 3批)、(第 4批)、(第 5批)の 3つのリストが作成されている。

表 2.1 国家が輸入を制限する原料として利用可能な廃棄物リスト

OECDリストに

おける分類類別 税関コード 名称

第 1類 動物廃棄物 緑色

0506.9010 骨廃棄物

第 2 類 精錬(冶金)くず 黄色

2619.0000 精錬製鉄所で発生した溶解くず

浮遊廃棄物(パナジウムくず含む)

酸化ゴム及びその他の廃棄物

第 3 類 木及び木製品の廃棄物 緑色

4401.3000

おがくず、粘着性が強い木廃棄物及び破片、丸太

の一節、一塊、一欠片あるいは似たような形状の

もの

4501.9000 コルク廃棄物(破砕されたもの、粒状のもの、あ

るいは粉末状のもの)

第 4 類 回収した(廃棄くずの)紙あるいはボール紙 緑色

4707.1000 回収した(廃棄くずの)未漂白の牛皮紙、クラフ

ト紙、ボール紙、段ボール紙

4707.2000 回収した(廃棄くずの)染色されていないその他

紙及びボール紙の主な漂白された化学パルプ

4707.3000 回収した(廃棄くずの)主な機械パルプ紙及びボ

ール紙(新聞、雑誌及び類似の印刷物)

4707.9000 回収した(廃棄くずの)その他の紙及びボール紙、

未選別の紡績廃棄物を含む

第 5 類 繊維品廃棄物 緑色

5202.1000 木綿廃棄物(木綿糸廃棄物を含む)

5202.9900 その他木綿廃棄物

5505.1000 合成繊維廃棄くず

5505.2000 人工繊維廃棄くず

第 6 類 金属及びその製品の廃棄くず 緑色

7204.1000 生鉄廃棄くず

7204.2100 ステンレス廃棄くず

7204.2900 その他合金鋼廃棄物

7204.3000 すずメッキ鋼鉄廃棄物

- 44 -

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7204.4100

切削、鉋で削る、スライス削りをする、磨く、鈍

刀で切る、やすりをかける、鉄で切る、刃物で切

るといった工程で発生する鋼鉄廃棄物(束のもの

も含む)

7204.4900 上述以外の鋼鉄廃棄物

(廃鉄道レール等を含む)

7204.5000 再溶解するくず鉄の塊

(廃工作機械等を含む)

7404.0000 銅廃棄くず

7503.0000 ニッケル廃棄くず

7602.0000 アルミニウム廃棄くず

7902.0000 亜鉛廃棄くず

8002.0000 すず廃棄くず

8103.1000 タンタル廃棄くず

第 7 類 各種廃五金、電気機械、電気製品 該当せず

7404.0000 (銅)廃電線、ケーブル

7602.0000 (アルミ)廃五金電気機械

第 8 類 廃輸送設備 緑色

8908.0000 解体する船舶及びその他の不動構造物体

第 9 類 特殊な輸入廃棄物 該当せず

第 10類11 プラスティックのくず 緑色

3915.1000 エチレン重合体の廃棄くず及び工場ロス

3915.2000 スチレン重合体の廃棄くず及び工場ロス

3915.3000 塩化ビニール重合体の廃棄くず及び工場ロス

3915.9000 その他のプラスティック(PET フレークを含む)

出典:「廃棄物輸入環境保護管理暫定規定」附属書Ⅰ及び及び吉田綾『リサイクル可能廃棄

物の中国への越境移動』東京大学修士論文 2003 をもとに作成

2.3.3 中国への違法な廃棄物輸出問題と対策

廃棄物越境移動は、有害物質を含んだ廃棄物の無責任な海外輸出問題であるととらえら

れてきた。「安く遠く」を求め国境を越えて流れついた廃棄物の背景には、経済的に貧しい

発展途上国へと広がる“ごみの押し付け構造”があらわれている。

1993 年から 97年にかけて、香港を含め 24 件の不法な廃棄物輸入事件がおきている。う

11 1996 年の暫定規定における廃棄物リストは第九類まで、第十類のプラスティックのくずは 1996 年 10

月に SEPA 等の「国家が輸入を制限する原料として利用可能な廃棄物リストに関する補足の通知」で追加

された。

- 45 -

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ち 12 件がアメリカからで、96 年 5 月には、アメリカから中国に再生紙の原料として輸出

されたはずの古紙 639 トンが、実は医療廃棄物や生活ごみ、プラスティック類で、北京郊

外に野積みされ、異臭を放つ事件がおきた。中米間の外交問題まで発展する等、国際的な

廃棄物越境の移動問題へ発展した。

中国における廃棄物の違法な輸入事例を、表 2.2 に示す。

表 2.2 中国における廃棄物の違法な輸入事例

発生日 輸入元 輸入廃棄物種類 登録品名 輸入量

(トン)

発生地

1993.10.08 韓国 化学工業廃棄物 その他の燃料油 1,228 南京

1995.06.02 ドイツ 生活ごみ 廃プラスティック 670 南京

1995.07.03 日本 農業系廃棄物 廃プラスティック 46 上海

1995.07.04 不明 生活ごみ 廃プラスティック 148 広州

1995.07.27 USA 廃感光基材 廃プラスティック 184 上海

1995.07.28 USA→香港 プラスティック

等の工業廃棄物

プラスティック原

270 海口

(海南島)

1996.05 USA 医療廃棄物 古紙 639 青島

2002.2 日本 生活ごみ 廃鉄くず 800 海門

2002.4 韓国 バナジウムを含

む廃触媒

輸入許可証なし 760 寧波

(北侖)

2002.9 USA 中古電子製品 受取人あらわれず 406 杭州

2002.10 不明 廃棄エンジン

(日本製)

廃棄電気機械製品 171

天津

出典:「追跡洋ごみ」(『中国環境報』, 1995.10.26)、『中国環境年鑑』1995,1996 年

特に 1993 年から 1995 年において、違法輸入事件が頻発したため、1995 年 11 月、中国

国務院は「断固として国外廃棄物のわが国への移動を制御する事に関する緊急通知」(国務

院弁公庁)を発令した。以降「廃棄物輸入の環境保全管理に関する暫定規程」が公布され

た 1996 年 4 月まで、リサイクル可能廃棄物はすべて一次輸入禁止となった12。

1991 年、中国政府が公布した「国外有害廃棄物の中国への越境移動を厳しく規制する通

知」は、海外からの不法輸入廃棄物の越境移動を規制したはじめての法律文書である。

1996 年に固体廃棄物法が施行され、これにあわせて法規、基準が次々と制定、施行され

た。発布主体には税関や国家商検局等実際に輸入管理事務に関わる行政機関が加わるよう

になり、より完成度の高い輸入廃棄物環境保護法規体系が確立されたと考えられる。

1991 年の通達では特定の有害廃棄物に限定した輸入規制だったのが、「固体廃棄物処理

12 ただし、故繊維(第 3類)と廃プラ(第 10類)は 96年 10 月に輸入可能廃棄物リストに追加されるま

で禁止された。

- 46 -

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法」では、廃棄物の一般的な輸入禁止へと変更され、規制の対象が廃棄物一般へと広がっ

た。「固体廃棄物処理法」第 25条第 3項では、輸入して確実にリサイクルできる廃棄物の

みをリストアップし、それに掲げられていない廃棄物及び最終処分目的の廃棄物について

はその輸入が禁止されている。

1996 年の「固体廃棄物法」と同時に施行された「廃棄物輸入の環境保全管理に関する暫

定規程」では、以下のことが決められた。

① 国外の廃棄物を輸入し、国内で投棄、堆積等の処理処分を行うことを禁止。

② 原料として利用することができない固形廃棄物の輸入を禁止。原料として利用す

ることのできる廃棄物の輸入については、関係部門の許可を得なければならない。

③ 中国を経由して有害廃棄物を他国へ移動することを禁止。

「暫定規程」は第 7類廃棄物(廃モーター、廃ケーブル、廃ミックスメタル)の輸入加

工企業は必ず国家環境保護総局が査定した指定企業であることを規定している。現在、全

国の指定企業は全部で 480 社あり、第 7類廃棄物の輸入を行っている。

また「輸入廃棄物と環境保護の管理に関する暫定規程 付則」では、輸入者に対して船

積み前検査を受けることが新たに義務付けられ、具体的な手続き規程を定めるものとして

「輸入廃棄物船積み前検査管理規則」(以下、船積み前検査)が 1996 年 9 月 12 日に発布さ

れた。

バーゼル条約は 1989 年 3月に成立し、1991 年 9月に全人代常務委員会がバーゼル条約

を批准し、同年 11 月に「バーゼル条約」第 1 回締約国会議が、1994 年 3 月に第 2 回締約

国会議、1995 年 9 月に第 3回締約国会議が行われて現在に至っているが、これら以外の中

国における廃棄物輸入規制法制の整備過程を表 2.3 に示す。

- 47 -

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表 2.3 中国における廃棄物輸入規制法制の整備過程

1991 3 月 「国外有害廃棄物の中国への越境移動を厳しく規制する通知」国家環境保護総局、

税関

1994 11月 「欧州共同体(EC)からの輸入廃棄物への厳格な規制に関する暫定規程」国家環境

保護総局(赤色及び黄色の廃棄物の輸入が全面禁止に)

1995 10月 「固体廃棄物環境汚染防止法」制定

11月 「断固として国外廃棄物のわが国への移動を制御する事に関する緊急通知」(国務

院弁公庁)

1996 3 月 「廃棄物輸入の環境保全管理に関する暫定規程」(国家環境保護総局、対外経貿部、

税関、国家工商局、国家商検局)

7 月 「廃棄物輸入の環境保全管理に関する暫定規定の補足規程」(同上)

7 月 「廃棄物違法輸入刑事案件の審理における法律適用の若干の問題に関する最高人

民法院解釈」

9 月 「輸入廃棄物の船積み前検査管理規則」(国家商検局)公布

10月 「国家が輸入を制限する原料として利用可能な廃棄物リストの増補に関する通知」

(国家環境保護局、対外経貿部、税関、国家工商局、国家商検局)第 5 類と第 10

類(廃プラスティック)を追加

1997 2 月 「国務院の放射性汚染を受けた廃金属スクラップの輸入を厳しく禁ずる緊急通知」

(国務院弁公庁)

1999 11月 「輸入廃棄物原料の荷積み前検査機構の認可管理方法」13(国家出入国検験検疫局14)

2000 2 月 「輸入廃棄物の管理をさらに強化することに関する通知」(国家環境保護総局)

2000 1 月 「第 7 類廃棄物輸入に関する問題に対する通知」(対外経貿部,税関,国家環境保

護総局)2000 年 2月 1日より廃家電等を輸入禁止に

2001 1 月 「廃棄物輸入と環境保護管理に関する問題を調整する通知」(国家環境保護総局,

税関,国家質量監督検験検疫総局公布、環発[2002]7 号) 自動輸入許可

2001 5 月 「“五廃15”の輸入経営管理の問題に関する通知」(対外経貿部)

2001 11月 「第 7 類廃棄物加工利用企業の審査認定手順の調整に関する通知」(国家環境保護

総局、環発[2001]186 号)

2002 3 月 「廃棄物の輸入と環境保護問題に関する通知」(環発[2002]7 号)

廃プラスティックや廃車、廃船等輸入制限類に指定している 11 品目の廃棄物の、

原料としての輸入を許可。古紙、鋼鉄くず、銅くずやアルミくず(廃五金電器、廃

電線・ケーブル、廃モーターを含まない)は自動登記管理によって輸入を認める。

2002 7 月 部品輸入禁止措置(国家環境保護局、対外経貿部、税関) 2002 年 8月 15 日施行

2003 1 月 清潔生産促進法(クリーナープロダクション法)施行

2003 5 月 「日中友好環境保全センターへ輸入廃棄物審査の関連管理業務を委託することに

関する通知」(環函[2003]138 号) 2003 年 7月 1日より移転

2003 7 月 「輸入を制限する廃棄物の審査管理の問題に関する通知」(環辦[2003]61 号)

7 月 輸入廃プラ環境保護抑制基準を厳格に執行することに関する通知

8 月 廃棄電子電気設備環境管理的公告環発 143 号

2004 1 月 「電子情報機器の生産汚染防止に関する方法」(中国版 RoHS 法)施行

2004 1 月 「廃棄物原料国外供給企業の臨時登録に関する通知」(国家品質監督検査検疫総局

公告第 115 号)、2004 年 7 月 1日施行

13 国家出入国検験検疫局令第 2号、2000 年 1月 1日実施 14 現在の国家質量監督検験検疫局 15 “五廃”とは鋼鉄くず、銅くず、アルミくず、古紙、プラスティックくずをさす。

- 48 -

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2.3.4 廃家電の輸入禁止措置

中国政府は、2000 年 4 月 1 日より、廃家電 21品目の輸入を禁止している。禁止の理由

としては、自国の家電製品産業保護のためと、中古家電の再使用による事故等の防止のた

めである16。

輸入が禁止された品目は、テレビとブラウン管、冷蔵庫、エアコン、電子レンジ、コン

ピューター、コンピューター用モニター、コピー機、ビデオレコーダー、炊飯器、ビデオ

ゲーム機(ただし輸出向けに組み立てないし改造するための輸入を除く)、電話機等である。

廃棄物を主体とする 37 種類の製品の輸入禁止を盛り込んだ「輸入禁止貨物リスト(第

4批・第 5批)」が公布されている。環境に影響を与える工業廃棄物等の輸入を水際で阻止

する狙いで、2002 年 8月 15 日から適用となった。

第4批の16種類は、頭髪及びそのくず(HSコード0501.0000)や古着(HSコード6309.000)、

使用済み電池(HS コード 8548.1000)等が挙げられている。第 5批は廃棄された電気製品

がリストアップされており、エアコン、冷蔵庫、コンピューターとその設備等 21種類とな

っている。

2000 年の輸入禁止で、中小の金属回収企業、特に内陸部の企業の多くが倒産したとい

われている17。政府は既存の第 7 類企業に対して、さらに整理を行う予定であり、後述の

ように沿岸部 4箇所にリサイクル工業団地が計画されている。

中国国家品質検査検疫総局は、2003 年 12 月 15 日、中国向けに再生資源の輸出を手掛

けている外国企業に対し、書面審査等による登録を義務づける公告一一五号を告示した。

これによると、2004 年 7月 1 日以降、登録がされていない外国企業に対し、中国向け再生

資源の船積み前検査時に受付拒否の措置が取られることになるため、事実上、中国向けの

輸出事業継続が困難になるおそれがある。登録は中国国家品質検査検疫総局に直接書類を

提出することになるが、審査手続き、費用負担等に未だ不明な点もあるようである。18

1999年ごろから、第7類廃棄物の分解業界を規範的に発展させるため、管理制度を整え、

環境保全を強化し、加工企業に便宜を与えるべく、リサイクル工業団地の建設を進めてき

た。管理、加工、廃水処理、廃棄物処理を一体化させたリサイクル工業団地は、大量のリ

サイクル可能廃棄物を分解・回収できるだけでなく、環境を保全し、物流・商流・情報流

の現代化も促進させている。

リサイクル工業団地の整備は、鉄・非鉄スクラップや廃プラスティックを処理するリサ

イクル事業者が集積していた浙江省寧波市、江蘇省太倉市等中国沿岸部の 4ヶ所で進めら

れている。

上記 4ヶ所のリサイクル団地の概要を、表 2.4 に示す。

16広東の南海地域にある中古家電市場では、使用済みの家電製品が分解・修理され売られており、変圧の

問題等で爆発等の危険性が指摘されている。 17 中国有色金属工業協会の馬鴻昌氏インタビューより。旧国家有色金属工業局であり、現在は政府の外郭

団体。中国語で有色金属とは非鉄金属のこと。 18資源新報告 2004 年 2月 4日付け

49

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表 2.4 中国沿岸部で建設が進むリサイクル団地

名称 場所 総計画面積 取り扱い品目

天津市静海子牙環

保産業園区

天津市 196ha 非鉄金属

江蘇省太倉港再生

資源輸入加工区

江蘇省太倉市 第一期 440ha(長

期的には 1,000ha

まで拡大)

鉄、非鉄金属、廃プラスティック

寧波再生金属資源

加工園区

浙江省寧波市 200ha 非鉄金属、廃プラスティック

福建全通資源再生

資源再生工業園区

福建省漳州市 360ha 鉄、非鉄金属、廃プラスティック

(出典:日経エコロジー2004 年 2 月号 P35-37)

上記 4ヶ所のリサイクル工業団地は、国家環境保護総局の批准を受けたモデル団地とし

て認定されているが、中央政府からの助成金や補助金等はない。次期候補として、遼寧省

大連市、山東省青島市、浙江省台州市、広東省南海区等が挙げられている。

浙江省寧波市にあるリサイクル団地の一つは 2001 年 12 月の着工で、200ha の広大な敷

地に分別・解体のための作業場が立ち並んでいる。住宅ゾーンの建設等、地域経済の活性

化、街づくりが行われており、海外のリサイクル技術、汚染防止関連技術や設備を取り入

れる等、環境保護にも積極的に取り組んでいる。19

2.4 中国における最近の家電リサイクル政策

中国における TV、洗濯機、冷蔵庫、エアコン、パソコンの保有台数は 2002 年末で 7.6

億台に、携帯電話は 2.5 億台になるとの推計がある。

現在、中古品は発展途上の西部地域等へ運ばれ、リユースされている例も多いようであ

るが、廃棄された場合には有効なリサイクルは行われず、有毒有害物質による環境影響の

懸念が生じている。また、安全に使用できる期限を過ぎた中古家電が流通しており、使用

時の危険性が潜在化している。このため廃電子・電気製品に対する環境対策が喫緊の課題

となっている。

中国は急速に環境意識を高め、国家発展改革委員会を中心に、欧州を手本にした電気・

電子情報機器リサイクルの導入を検討している。鉄やアルミニウム等の資源確保だけでな

く、中国国内での資源の循環をどう確立すべきか、模索を始めている。リサイクル費用は

メーカーの負担になるとみられている。国家環境保護総局の副局長である潘岳氏は、電子

廃棄物による環境汚染を解決するため、国家各関係部門が現在、新しい環境保全制度であ

る拡大生産者責任制度について研究中であると述べている。

19日経エコロジー2004 年 2月号 P35-37

50

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現在、廃棄物のうち廃棄量の増大が見込まれる電子・電気製品については、拡大生産者

責任の考えを取り入れた「電子情報製品汚染防治管理方法」(中国版 RoHS)及び「廃旧家

庭用電気器具回収利用管理方法」(中国版 WEEE)の施行が検討されている。

これは EU における WEEE 指令、RoHS 指令(第1章参照)と類似の内容であり、これら

を意識したものと考えられるが、後者の「廃旧家庭用電気器具回収利用管理方法」につい

ては、日本の家電リサイクル法の対象である家電 4品目(TV、冷蔵庫、洗濯機、エアコン)

にパソコンを加えた 5品目を対象としており、この点で日本の廃電子・電気製品対策も参

考にしているものと考えられる。

2.4.1 中国版 RoHS、WEEE 規制

「電子情報製品汚染防治管理方法」と「廃旧家庭用電気器具回収利用管理方法」が、中

国版の RoHS、WEEE 規制である。

①「電子情報製品汚染防治管理方法」(中国版 RoHS)

同法は中国の情報産業部(日本の旧郵政省・現総務省にあたる)が主管となり検討

が進められ、2004 年 1月に制定された。

その内容としては EU の RoHS 指令と同じく広範な電子・電気製品を対象として、製

品中の鉛、水銀、カドミウム、六価クロム、臭素系難燃剤(PBB、PBDE)及びその他

の有毒物質の含量を国の定める期限内まで削減・全廃することとされている。また、

製品に有毒有害物質の名称、含量、回収利用の可否(完全可、部分可、完全不可)及

び安全使用期限を明示することとされている。特に安全使用期限については、かなり

古い中古家電が流通している中国の事情を反映しており、この点で日本の PL 法的な

性格も含有している。

さらに、同法では生産者が製品の回収、処理、再利用の責任を負うことも明記され

ているが、この点については次に述べる「廃旧家庭用電気器具回収利用管理方法」と

重複する可能性があり、両法案の関係については今後検討を行っていく模様である。

参考1として、2003 年 8月に国家環境保護総局が出した公告、参考 2として、本法の

日本語訳を掲載する。

51

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(参考1)

電子電気設備の廃棄における環境管理を強化する公告

2003 年 8月 26 日 国家環境保護総局

わが国の経済の急速な発展と社会消費水準の絶え間ない成長に伴い、電機電子機器の廃

棄量も非常に速いスピードで増加している。これによって無視できない環境汚染の原因と

なっている。近年、各地で簡易な施設を利用して遅れた技術によるリサイクルが、各地で

重大な環境汚染を引き起こしている。

よって、電子廃棄物の環境管理を強化させるため、環境汚染を防止し、電子廃棄物の無

害化方式のリサイクル及び処理を促進させる。廃棄物を宝に変え、害を利益に変換させる。

「固形廃棄物汚染環境防止法」をもとに、本公告を制定する。

① 電子廃棄物を排出する企業は、電子電気機器のメーカー、電子電気機器の修理サ

ービス企業及び大量に電子電気機器を使用する事業者等を含む。所在地の県レベ

ル以上の環境保護主管部門に電子廃棄物の発生量、行き先、貯蔵、処理等に関する

資料を提供しなければならない。

② 使用済み鉛蓄電池、ニッカド電池、鉛スイッチ、ブラウン管及びその容器は有

害廃棄物とする。上述の廃棄物を含むその他の危険な電子廃棄物を、有害廃棄物に

含める(以下、「電子類有害廃棄物」とする)。

電子類有害廃棄物を排出する企業は、排出した電子類有害廃棄物を有害廃棄物の

経営許可証を持つ企業に収集、貯蔵、処理を委託し、電子類有害廃棄物を移動させ

る際は、「有害廃棄物移動マニフェスト管理方法」を厳格に執行し、有害廃棄物移動

マニフェストに記載し、関係の環境保護部門に報告しなければならない。

③ 環境を汚染するような遅れた技術や電子廃棄物処理施設の使用の禁止

露天または簡易焼却炉での焼却、簡易な酸に浸たす方法で電子廃棄物から金属を

取り出すことを禁止した。

電子廃棄物を加工利用する過程中で発生する残渣や廃水処理の過程で発生する汚

泥は、有害廃棄物選別基準に照らして危険特性を判別しなければならない。また、

有害廃棄物に属するものは、有害廃棄物の関係規程に従い処理し、生活ごみと混入

させて埋め立てや焼却を行ってはならない。

④ 省級環境保護部門は関連規定に沿って、電子類有害廃棄物を収集、貯蔵、処理す

る経営活動企業に対し資格審査を行う。条件に合格した企業には、有害廃棄物の貯

蔵する経営許可証を与え、有害廃棄物経営許可証がない企業または有害廃棄物経営

許可証で規定された方法で、電子類有害廃棄物の収集、貯蔵、処理の経営活動を行

った企業には「固形廃棄物汚染環境防止法」の関係規定に沿って処罰し、違法行為

をやめさせるよう命令しなければならない。

各環境保護部門は、廃棄物排出者が電子廃棄物をリサイクル・処理する資格を持つ企業

に渡しやすくなるよう、社会に対し電子廃棄物リサイクル・処理企業の情報を開示しなけ

ればならない。

各環境保護部門は、電子電気機器の製造企業が、クリーナープロダクションを推進し、

電子情報機器中に含まれる鉛、水銀、カドミウム、六価クロム、ポリ臭化ビフェニル(PBB)、

52

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ポリ臭化ジフェニルエーテル(PBDE)等有害化学物質の使用に関する全廃計画を作成し、

リサイクルしやすい製品や包装の設計を行うことを奨励する。

本公告において、電子電気機器とは電流または電磁界で正常に稼動する機器、及びこれ

ら電流・電磁場を生産、転換、測定する機器を言う。電圧は交流の場合 1,000 ワット以下、

直流の場合は 1,500 ワット以下のものとする。具体的な製品としては、①冷蔵庫、洗濯機、

電子レンジ、エアコン等の大型家電製品、②掃除機、電気かみそり等の小型家電、③パソ

コン、プリンター、ファクシミリ、コピー機、電話機等の情報通信機器、④ラジオ、テレ

ビ、ビデオ、ステレオ等の音響機器、⑤ドリル、電動のこぎり等の電気工具、⑥電動おも

ちゃ、運動機器等、⑦放射線治療機器、心臓病治療機器、レントゲン等医療機器、⑧煙感

知器、自動湯沸かし器等の監視・管理機器、⑨各種自動販売機等を指す。

本公告は電子廃棄物を、廃棄された電子電気機器とその部品と定義している。生産中に

発生した不良の製品やその部品の不合格品、修理の過程で発生した廃棄製品やその部品、

消費者が廃棄した電子機器も含むこととする。

53

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(参考 2)

電子情報機器の生産・汚染防止管理に関する規則 「(中文)電子情報機器生産汚染防治管理弁法」

第一章 総則

第一条 電子情報機器の汚染防止管理を発生源から強化するため、電子情報機器の

廃棄後の環境に与える汚染やその他公害を削減するため、製品のクリーナー

プロダクション(清潔生産)と産業の持続的発展を実現させ、人類の健康及

び財産の安全を保障し、資源利用効率を高めるため、「中華人民共和国清潔生

産促進法」(以下「清潔生産促進法」とする。)、「中華人民共和国固体廃棄物

汚染環境防止法」(以下「固体廃棄物防止法」とする。)及びその他法律、法

規の関係規定に基づき、本法を制定する。

第二条 本法における電子情報機器は、電子レーダー機器、電子通信機器、テレビ

放送機器、パソコン製品、家庭用電気製品、電子測量器械機器、電子専用機

器、電子機器の部品、電子応用機器、電子材料製品を含む。

情報産業部は必要に応じて、商務部、国家質検総局、国家環保総局、国家

工商総局とともに調整し、本法の電子情報機器重点監督リストを発布する。

本法における電子情報機器生産者とは、中華人民共和国国内において、電

子情報機器の生産、販売及び輸入に関わる事業者または個人である。

第三条 本法は中華人民共和国国内における電子情報機器の生産、販売及び輸入の

行為に対して適用するものである。ただし、直接輸出目的に生産された電子

情報機器及び最初の生産者が明記された電子情報機器の販売は含まない。

第四条 情報産業部は「清潔生産促進法」「固体廃棄物防止法」等の法律、法規の規

定に基づき、電子情報機器の汚染防止に役立つ政策措置を制定し、電子情報

機器の汚染防止に関する科学研究、技術開発及び国際協力を奨励し、支持す

る。

電子情報機器の汚染防止に関する知識の普及啓発及び業界の環境保護につ

いての意識の向上を行い、電子情報機器の汚染防止技術、資源の総合利用、

環境の保護・改善を推進する。

第五条 各レベルの情報産業主管部門においては、電子情報機器の汚染防止管理業

務をその職責範囲に入れることとする。各レベルの商務、環境保護、工商行

政管理、質量監督検査検疫、税関等の関係主管部門においては、各自の職責

範囲を守り、電子情報機器の生産、輸出、販売に対する監督管理の責務を果

たさなければならない。

第六条 各レベルの情報産業主管部門は、電子情報機器の汚染防止業務及び関連す

る活動において、顕著な業績を挙げた事業者及び個人に対して表彰と奨励を

行う。

第七条 情報産業部は、積極的に新型環境保護電子情報機器の研究・開発を行う事

業者に対して、それ相当の生産発展資金を与え支持する。

54

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第二章 電子通信製品汚染防止

第八条 電子情報機器の設計は環境及び人類の健康に対する影響を考慮し、工学設

計の求める保障を行う前提で、無毒・無害または低毒性、低被害、易分解性

でリサイクルしやすい方法を選択しなければならない。

第九条 電子情報機器生産者(以下、生産者とする)は、生産過程において、資源

利用率が高く、リサイクル処理しやすい、環境保護のためになる材料、技術

及び工学設計を採用しなければならない。

第十条 電子情報機器の包装資材は、無毒、無害、易分解性でリサイクルしやすい

材料を採用し、包装資材に材料の成分を表記しなければならない。

第十一条 生産者は、電子情報機器中の鉛、水銀、カドミウム、六価クロム、ポリ臭

化ビフェニル(PBB)、ポリ臭化ジフェニルエーテル(PBDE)及びその他有毒

物質の含有量を徐々に削減し、廃止させる措置をとり、完全に廃止できない

有毒・有害物質については、含有量が国家標準の関連規定を超えないように

しなければならない。

情報産業部は、商務部、国家質検総局、国家環保総局、国家工商総局とと

もに、電子情報機器の淘汰期限を統一制定、調整し発布する。

第十二条 国家質検部門は、情報産業部と共同で、重点監督リスト中に列挙された電

子情報機器の測定基準を統一制定、発布及び執行する。

第十三条 市場に投入された電子情報機器は、有毒有害物質の名称、含有量及び製品

がリサイクル可能か否かの表示を必ず明記しなければならない。製品の体積

または機能の制限により、製品上に明記できないものについては、製品の包

装上または説明書中に明記することができる。

リサイクル可能の表記は、完全にリサイクル出来るもの、部分的にリサイ

クルできるもの、完全にリサイクルできないものに分類する。表示の様式や

方法は、情報産業部または同国家関連部門が統一して規定する。

第十四条 生産者は、生産したその電子情報機器上に安全使用期限を表記し、説明書

中に詳細な説明を記載しなければならない。

安全使用期限の表記様式と方法は情報産業部または同国家関連部門が統

一して規定する。

第十五条 生産者は、製品の定型が決まったら、ただちに生産した電子情報機器の安

全使用期限リストを情報産業部に報告しなければならない。

情報産業部は報告されたリストを統一し、一般に交付する。

第十六条 生産者は、製品廃棄後の回収、処理、リサイクルに関する義務を負わなけ

ればならない。

第十七条 組み立て生産のため電子情報機器を輸入した生産者は、供給業者に輸入し

た電子情報機器の原産地の表示を要求しなくてはならない。

第十八条 電子情報機器の販売に従事する生産者は、入荷制度を厳しく管理し、有毒

有害物質の含有量が国家の規定する基準に合わない電子情報機器は販売して

はならない。

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第三章 監督管理

第十九条 各レベルの情報産業主管部門は、環境保護、商工行政管理、質量監督検

査検疫等部門と協力し、本法執行の状況について、電子情報機器及び生産

者に対して確認を行う。

第二十条 いかなる事業者及び個人も、電子情報機器の汚染を行う事業者または個

人に対して検挙及び告訴を行う権利を有する。

第二十一条 各レベルの質量監督検査検疫、商工行政管理、情報産業主管部門は、各

自の職責範囲に基づいて、本法第十一、十三、十四、十八条の規定に違反

した生産者に対して処罰を行うことが出来る。

第二十二条 輸入申請の際に、本法第十一、十三、十四、十七条の規定に違反した電

子情報機器については、商務部は輸入を許可せず、税関は通関を認めない

ものとする。

第二十三条 本法第二章の規定に違反した場合、三年以内は関連する発展基金の申請

を受理しないものとする。

第二十四条 政府職員の職権乱用によって、重大な結果がおよんだ場合、私的利益の

ために不正を行った場合、本法の規定に違反した行為を放任、かばう行為、

または違反する当事者を補助し、操作を逃れさせる行為については、法に

基づき戒告を行い、過失を記録し、懲戒免職に至るまでの行政処分に処す

る。犯罪をなした場合は、法に基づき刑事責任を追及される。

第四章 附則

第二十五条 本法は情報産業部が解釈責任を持つ。

第二十六条 本法は 年 月 日から施行する

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②「廃旧家庭用電気器具回収利用管理方法」(中国版 WEEE)

同法は中国の国家発展改革委員会が主管となり検討が進められ、昨年秋には廃旧家

庭用電気器具の回収処理体系構築の初歩的構想が明らかにされた。主な内容は以下の

とおりである。

○ 廃家電品の現状

○ 廃家電品の存在する問題:リサイクルされていない、有害物質が適切に処理

されていない、廃棄されるべき家電品の使用上の安全問題。

○ 法的根拠:「中華人民共和国クリーナープロダクション法」「中華人民共和国

固体廃棄物汚染環境防止法」

○ 法の基本的考え方:リサイクル及び環境保全のため、廃家電品の回収システ

ムを構築する。「生産者責任」を実行し家電メーカーにリサイクルの義務を負わせ

る。回収処理企業は市場原理によって運営される。国はそれに必要な政策支持・

奨励を行う。まずはモデル事業から着手し徐々に拡大させる。

○ 廃家電品は主にテレビ、冷蔵庫、洗濯機、エアコン、パソコンを指し、同時

にその他の家電製品の回収も奨励する。

○ 処理システムの設立:集中処理システムを構築する(おそらく管理、環境保

護及び資源の有効利用の観点から有利な工業団地式の回収、集中処理方式を取り

入れると思われる)。廃家電品の回収・処理は規範化されるべきである(回収企業

は国家関連機関の認証を得るべき)。

○ 廃家電品回収処理における各関係者の責任

○ 社会的参加が不可欠。消費者、販売店、回収業者、処理業者、政府部門それ

ぞれに責任がある。

○ 意義と環境利益

○ 奨励政策:国は廃家電品処理企業に税収の優遇政策を与える。国は廃家電リ

サイクルの広報を行う。モデル拠点では、企業による新しい家電品原料の開発や

有毒物質の代替物質の開発研究を支持する。

○ 実施と監督管理

同法案は、中国版 EPR として生産者責任制を導入することで、材料選定時での有毒有害

物質の使用抑制・リサイクルが容易な設計の導入を図るとともに、生産企業の技術・人材・

販売・サービス網等を利用した資源回収・部品再利用を実現しようとしている。具体的に

は、テレビ、冷蔵庫、洗濯機、エアコン、パソコンを義務的な対象品目とし、その他の廃

電子・電気製品についても回収・処理を奨励する。処理は廃電子・電気製品処理企業にお

いて行うこととし、国は廃電子・電気製品処理企業の資格認証を行うとともに、認証企業

へは優遇税制措置を適用する。また、国は廃電子・電気製品回収・処理の広報、モデル事

業、有毒有害物質の代替材料と回収処理技術の研究開発を支援する。なお、本法の実施・

監督管理は関係省庁が共同して行い、各地方政府は各々の行政地域で廃電子・電気製品回

収・処理の実施と監督管理の責任を負うというものである。

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ここで一つの課題として本制度運営にあたって必要となる経費の問題がある。これにつ

いては、案 1としては生産企業が費用を政府へ上納し、廃電子・電気製品の回収と輸送費

用に補填するもの(賦課金方式)、案 2として生産企業は費用を政府へ上納せず、市場へ委

ねる(価格内部化方式)の 2案が検討されている。

本法案については初歩的構想の公表後、産業界等の意見を聴取し、現在、関係省庁によ

る調整グループを設立して検討を進めているところである。このような調整にどれだけの

時間を要するかは一概には言えないが、通常約 1年程度はかかるようである。

2.4.2 その他制定が予定されている法規

その他の制定が予定されている法規としては、以下がある。

① 「家電品安全使用年限及び再生利用通則」

家電品の使用上の安全を確保するため、また中古家電品の安全性能や廃棄基準の設定の

ため、中国家電研究院及び全国家電標準化委員会事務局は、現在、家電品の耐用年限・リ

サイクルに関する基準の制定を行っている。「家電品安全使用年限及び再生利用通則」は、

国家標準化委員会の正式なプロジェクトとして既に採用され、開始されている。当該基準

の制定が正式に完了し公布されれば、中国における家電品の耐用年限、中古家電品の再使

用、家電品の廃棄リサイクル等にそれを測る一つの“尺度”が提供されることになる。今

後の家電品の廃棄において一つの重要な参考・根拠となるであろう。

② 「有害物質の家電品中における使用制限基準」

家電品の生産過程において、使用される原料中には環境や人体に有害な物質も含まれて

いる。環境の保全と、消費者の健康と安全のため、中国(政府)は、家電品中の有害物質

の使用を減少・抑制させる措置を行う予定であり、中国家電基準委員会が現在「有害物質

の家電品中における使用制限基準」の制定に取り組んでいる。

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添付資料(中国金属リサイクル産業発展のための国際会議概要)

2003 年 11 月 8 日に寧波市内のホテルで、中国有色金属工業協会再生金属分会等が主催

した「中国金属リサイクル産業発展のための国際会議」での報告の主要部分を以下に添付

する。

中国内のリサイクルに関する有識者の考え方を知るうえで参考となろう。

「中国金属リサイクル産業発展のための国際会議」での報告

中国 寧波 2003 年 11 月 8 日

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第 7類指定企業の管理を強化し、企業の現代化へ向け邁進しよう

中国有色金属工業協会再生金属分会 馬鴻昌

国家環境保全総局廃棄物輸入登録センター 李治焜

要旨

本文では、1996 年中国が「廃棄物輸入環境保護管理暫定規定」を公布して以来、環境汚

染の防止、資源再生利用の促進に良い効果をもたらしていることについて詳細に記述した。

中国の廃棄物輸入を次第に法秩序化、科学的管理の軌道に乗せている。国務院の行政審

査許可制度の改革をやり遂げ、中国が WTO に加入する新しい情勢に適応する為に、2002 年

から国家環境保護総局等の機関は数年来、廃棄物輸入環境保全管理の実践に基づいて、国

際的に通用している管理慣例を参考に、廃棄物輸入の審査制度に重大な改革を行った。こ

れは必ず中国の輸入廃棄物の環境保全、資源回収利用と国民経済の発展を促進させるであ

ろう。第 7類廃棄物を輸入し、分解、リサイクルすることは、廃棄物の種類が複雑で環境

へのリスクも大きいため、近年来、国や協会、メディアは常に注目してきた。本文では、

2002 年の第 7類廃棄物輸入量、解体技術、資源再生利用やその効果と利益を詳細に分析し

た。第 7 類廃棄物の輸入解体は、中国の非鉄金属資源不足を補っただけでなく、地方経済

を繁栄発展と税収増加、雇用の機会を作り、すべてにおいて良好な役割を果たしているこ

とを示した。しかし、当然認めなければならないのは、幾つかの地方では環境汚染がまだ

相当ひどく、さらに第 7類廃棄物の環境管理を強化する必要があることである。まず企業

が先進技術と設備を取り入れるよう提唱し、業界が産業化の進行過程を早め、大型化、近

代化の企業に向け邁進する。その為、本文は分解企業に Aランク企業の審査基準とプロセ

スを創設することを提案した。この外に、工業団地の建設を促進させるため「再生資源リ

サイクル工業団地の環境管理指導意見」を制定することも提案した。これは第 7類輸入廃

棄物の環境保護の促進に有利であり、国と地方の関連部門の監督管理にも有利である。本

文はまた工業団地の建設の比較的早い寧波鎮海、江蘇太倉、福建章州と天津子牙、4 箇所

の工業団地を詳細に記述した。

はじめに

1996 年、国家環境保護総局等 5つの機関は「廃棄物輸入環境保護管理暫定規定」を公布

した。「暫定規定」は第 7類廃棄物(廃モーター、廃ケーブル、廃ミックスメタル)の輸入

加工企業は必ず国家環境保護総局が査定した指定企業であることを規定した。現在、全国

の指定企業は全部で 480 社あり、第 7 類廃棄物の輸入管理を行っている。6 年以来、環境

汚染の防止と資源再生利用の促進のため、良い実績を上げている。輸入される第 7類廃棄

物の種類は複雑なため、環境リスクは大きく、近年、国や協会、メディアは常に注目して

きた。リサイクル業界を健やかに発展させる為に、2002 年に全国の第 7類廃棄物の輸入と

加工状況を省みて、これからの業務に必要な提言を行う。

一、国務院の行政審査許可制度に関する改革を徹底し、確実に遂行する

「暫定規定」に基づいて、国が輸入を制限する原料としてリサイクル可能な廃棄物の輸入

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は、必ず国家環境保護総局の許可を得なければならない。廃棄物輸入の行政審査許可は、

廃棄物による汚染転嫁を防止し、中国の環境保護に良い結果をもたらした。しかし多くの

弊害もまだ残っている。たとえば審査許可手続きが複雑で、市場開放と公平競争が阻害さ

れる、企業の生産コストの増加等、市場経済の活気と活力の強化に不利な影響を及ぼして

いる。国務院の行政審査許可制度に関する改革を徹底して実施するには、手続きの簡素化

を着実に実行し、手順を減らし、利用しやすいサービスを強化しなければならない。WTO

加盟によって、政府の機能、調整、権力も変化した。2002 年以降は、国家環境保護総局等

5 つの部門が共同で、中国の輸入廃棄物の環境保護管理を実施し、国際的に通用している

管理慣例に照らし合わせ、輸入廃棄物の審査許可制度に重大な改革を行った。

1.輸入廃棄物は、輸入を制限する廃棄物、自動的に輸入許可管理される廃棄物、輸入禁止

廃棄物の 3種類に分けられる。

1)国家環境保護総局等 4 つの機関は 2001 年 12 月 30 日に第 41 号公告を公布した。

公告には輸入を制限する再利用可能な廃棄物リスト(第一群)計 11 種類、2003 年 4

月 30 日に公布された第 10 号公告では、輸入を制限する廃棄物のリスト(第二群)計 3

種類がある。これらの廃棄物の輸入には環境リスク評価を行うことが必要である。市

環境保護局、省環境保護局が第一審及び再審の後、国家環境保護総局が審査して許可

する。

2)国家環境保護総局等 4 つの機関は 2002 年 1 月 18 日に「輸入廃棄物の環境保全管

理問題の調整に関する通知」を公布した。この「通知」では、23 種類の自動的に輸入

許可管理される廃棄物原料リストを列挙していた。これら廃棄物の輸入は、直接、国

家環境保護総局の廃棄物輸入登録センターで「自動登録許可証」を受け取れ、再び許

可審査を得る必要はない。

3)国家環境保護総局等 4つの機関は、2001 年 12 月 23 日に第 36 号公告を公布した。

公告には 18 種類の国が輸入を禁止する廃棄物リスト(第三群)が記載されていた。2002

年 7 月 3 日には第 25 号公告を公布した。公告には 18 種類の国家が輸入を禁止するリ

スト(第四群)と 21 種類の輸入禁止する廃電気製品リスト(廃電気製品の部品、部品

くずを含む。ただし国が別途規定する物を除く)(第五群)が列挙されていた。国家環

境保護総局等機関は、さらに上述の輸入制限、輸入禁止と自動登録廃棄物リストを公

布する予定である。

2.第 7 類廃棄物の輸入指定企業の査定業務は省レベルの人民政府環境保護部門により査

定が行われ、国家環境保護総局に報告し登録する。各省の指定企業の総量は変わらない条

件において、毎年 1回調整でき、近年に輸入していないあるいは全く輸入していない企業

の指定を取り消し、新しい企業を指定する。

3.審査許可手続きの簡素化をさらに進め、審査許可権利の移譲を進める。2003 年 7 月 1日

から輸入が制限される廃棄物の審査許可権利を国家環境保護総局の廃棄物輸入登録センタ

ーに移譲した。上述の廃棄物輸入審査許可制度の改革を通じて、必ず資源のリサイクルを

促進し、わが国の環境保全を強化させる。

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二.2002 年の第 7類廃棄物輸入と加工利用状況

1.第 7類廃棄物の審査許可件数と輸入量

統計によると、2002 年に輸入した各種廃棄物の審査許可件数は合計 4,660 万トン、実際

の輸入量は 2,130 万トン、審査許可数の約 46%、そのうち第 7類廃棄物の審査許可数は 566

万トンである。浙江、広東両省は輸入・加工利用の大口であり、合計全国審査許可数の約

62%を占める。その次は天津、江蘇、河北三省が合計全国審査許可数の約 20%を占める。

広東省環境保護局は広東省の第 7類指定企業の整理を行った。全国のその他の省において

も第 7類指定企業の港も合理的に規制して、許可証の違法取引現象を止める効果をあげた。

税関の輸入統計上、第 7類廃棄物をそれぞれ銅くず、アルミくず、鉄くずの分類に総括さ

れているため、第 7類廃棄物だけの実際輸入量の統計はできなくなった。そのため、国家

環境保護総局は税関とも協力して、本年内にこの問題を解決しようと努力している。仮に

輸入量は審査許可量の 46%とすると、第 7類廃棄物の実際の輸入量は 260 万トンと推計さ

れる。

2.第 7 類廃棄物の解体プロセス

剥線機

廃電線・ケーブル 手 作 業 ( 剥 線 ) プラスティック、銅、アルミ

ナゲット機

アルミ、鉄、銅、

銅線、ケイ素鋼板

廃モーター――ガス切断、切断――回転子、スピンドル――手工取除く――

くず鉄、アルミキャビネット

廃ミックスメタル

→廃ミックスメタル設備、廃通信設備、廃機械設備、廃ミックスメタル道具

→機械、手作業・手解体

→プラスティック、鉄、アルミ、銅

3.解体後の再生資源量とその割合

平均的に言えば、第 7類廃棄物1トンを分解して取れる資源は表のとおり。

トン

銅(トン) アルミ(トン) 鋼鉄(トン) ケイ素鋼板(トン) プラ

% % % % %

廃モーター 0.078 0.028 0.64 0.136

7.8 2.8 64 13.6

廃電線・ケーブル 0.65 0.25

65 25

廃ミックスメタル 0.063 0.039 0.73 0.029

6.3 3.9 73 2.9

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廃モータと廃ミックスメタルを分解後、利用出来ない固形廃棄物の発生する割合はそれ

ぞれ 4%と 6%である。廃電線・ケーブルは割と少ないが、細い電線の分解は消耗の度合いが

比較的高い。分解して得られた銅くずは電線ケーブル、バルブ等に加工される。アルミく

ずは各種の電線、ミックスメタルに加工される。ケイ素鋼板はモーター芯に、鋼鉄くずは

製鋼工場の原料に、プラスティックくずは鉢や桶等の各種プラスティック製品に加工され

る。

4.コストベネフィット分析

2002 年の税関の統計データによると、銅くず(第 7類廃棄物を含む)の輸入量は 308 万

トン、商品価値は 10.68 億ドル、アルミくず(第 7類廃棄物を含む)の輸入量は 44.7 万ト

ン、商品価値 2.4 億ドル、亜鉛くず(第 7類廃棄物を含む)の輸入量は 5.1 万トン、商品

価値 0.17 億ドルであった。データから、国民経済の発展を促進させた貢献は非常に大きい

ことがわかる。更に1トン輸入第 7類廃棄物を分解して得た再生利用資源を売却すると、

大まかに見積って 4,050 元になる。すなわち全国で毎年の実際輸入量を 260 万トンで計算

すると、販売収入は 105 億元になる。仮に再生資源を更に二次加工(深加工)すると、平

価切上げで得たコストベネフィットは 26.5 億元になる。このほか、国は税収や管理費等で

10 億元を得ることができる。第 7類輸入廃棄物の分解業で数十万の労働者が就職のチャン

スを得る等、二次加工を加え就職のチャンスはさらに一層大きくなる。

以上から第 7類輸入廃棄物の分解加工産業は中国の有色金属資源の不足を補ったばかり

ではなく、地方経済の発展の促進にも、国の税収増加にも、労働力の就職チャンスの拡大

にも非常に大きな役割を果たしており、国民経済の発展に十分な現実意義がある。

三.第 7類指定企業の整理とその影響

2002 年 2 月 25 日、スイスに本部を設置したバーゼル条約ネットワークは「廃棄物の侵

入-アジアのハイテクゴミ」というタイトルの報告文を発表した。本報告書では、アメリ

カ政府が未だに、有害廃棄物の越境移動を規制するバーゼル条約を批准してないこと、(ア

メリカ)国内の企業が電子廃棄物をアジア途上国・地域に輸出することを放任しているこ

とを批判した。また中国広東省潮陽貴与鎮が銅を回収するためパソコン内部の細い電線を

野焼きし、化学薬品を使って基板中の貴金属を回収する等、地下水をひどく汚染した事件

を詳細に記述している。この報告書は中国のメディアにも取り上げられ、中国政府部門指

導者の関心を呼び、大変重要視された。

2003 年 3 月 23 日、北京のある新聞社は、浙江台州が違法に廃棄コンピューターと付属

品を輸入して深刻な汚染情況をもたらしたことを報道した。それため国家環保総局等の各

部門は連合の調査チームを組織して上述の両地域に向かい、現場調査を行った。5 月頃、

国の関係部門が第 7類輸入廃棄物に対して整理(整頓)を行なった結果、「特類商品登記証」

を暫定公布した。調査の情況から見ると、メディアの報道と実際の情況はある程度の食い

違いがあった。広東省貴与鎮では実際に電線を焼いたり、酸を使って貴金属を回収したり

する行為は行なわれていた。しかし、国が 2000 年 4 月からすでに明確な規定を公布し、11

類廃家電の輸入を禁止していたことから、これらの輸入廃家電の多数は闇取引で入ってき

たものである。貴与鎮の環境汚染は、主に都市化する過程において環境インフラ施設の建

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設がついて行っていないことによる、アンモニア窒素や生活ゴミ等の有機系の汚染であり、

解体による酸アルカリや重金属の汚染ではない。浙江省台州市の分解した廃棄電器はほと

んどが国内で淘汰した製品で、少数は上海のある指定企業で分解した廃ミックスメタル

で、”洋ゴミ”(舶来ゴミ)と称されるものではない。しかし、台州地域には確かに何の

許可証も持っていない家庭作業場式のおくれた分散した分解拠点がある。2002 年初めにメ

ディアが電子廃棄物を主とした”洋ゴミ”を報道したこともあり、波及範囲と影響は 1996

年以来一番大きい。

5 月に国の関係部門は第 7類廃棄物の輸入に整頓を行い、「特類商品登録証」の交付を一

時休止した。整頓は 2002 年 5 月から 7月約 3ヶ月にわたった。規模の大きさ、時間の長さ

ともこれまでにないものであった。長い目で見ると業界の整理は必要であり、それにより

業界を更に規範化することができる。しかし、第 7類廃棄物の輸入を暫らく停止したこと

により、一部の企業は海外企業との契約を履行できず、貨物は港に滞留し、多数の企業が

損失を被った。幾つかの企業は業界の発展に悲観し、失望し、前途に自信を失った。

業界が大きな困難に遭った時、中国有色金属工業協会再生金属分会は冷静に問題を分析

して、解決の筋道を決め、それを協会の一番重大の仕事として取りくんだ。協会はまず、

メディアに企業視察の調査に行かせ、真実を知ってもらうことにした。またこれ以外に協

会はたびたび国の関係部門を訪問し、積極的に業務報告を行い、問題をはっきりさせ、協

会の考えと意見をのべ、各部門が業界を広く知り、理解と支持を得た。問題を円満に解決

したことにより、協会の信望が一層高まり、協会の掛け橋の役割を十分示した。

しかし、第 7類輸入廃棄物による環境汚染は一部の地方では相当ひどいこともはっきり

認識すべきである。闇取引が時々発生し、第 7類輸入廃棄物に対する環境管理の強化はす

でに目の前に迫っている問題である。これに対して、一方では企業が先進技術と設備を取

り入れるよう激励し、汚染処理施設を建設して現代化企業へ邁進するため解体業界Aラン

ク企業を創設する。もう一方では再生資源加工団地の建設を速め、再生資源の加工利用の

集中化、科学化と現代化を促進する。

四.分解業界の Aランク企業を創設する

国家環保総局が査定した 480 社の第 7類輸入廃棄物指定企業の中で、その多数はやはり

手工業の仕事場、設備が古く、粗末で、工場の建物がなく、露天で分解するので環境汚染

をもたらしながら、分解労働者の負担が大きく、労働環境の保全が劣悪である。これらの

「三無」(工場建物なし、環境保全施設なし、労働保護なし)企業は次第に淘汰しなければ

ならない。進歩を激励し、落後を阻止する、業界の産業化速度を速め、規範に合う発展を

促進するために再生金属分会は国家環保総局等関連部門の支持のもとで、現在、ある第 7

類指定企業を調査検討する上で、数十軒規模の大きい、信用の高い、環境保全汚染処理施

設の整った企業を A ランク企業とする。A ランク企業の査定は企業が先進生産工程技術の

採用を促進させるのに有利であり、現代化企業に向かって邁進し、汚染防止施設の建設、

環境汚染の防止、規範市場経済と競争メカニズムに有利である。A ランクに評定された企

業は、輸入廃棄物原料の審査許可数量、商品検査、通関等、多方面において便宜を計られ

る。

A ランク企業の認証作業は一つ重要かつ複雑な業務である。マイナスの影響が出ないよ

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うに真剣に実施し、健全的な発展の道に進ませなければならない。まず、全国の主な指定

企業を調査して内情を探り、企業の規模、性質、汚染防除施設、従業員の労働保全と健康

情況をはっきりさせ、調査報告をまとめる。調査検討の上に Aランク企業の判定基準を作

成する。関係部門と専門家からなる評価審査委員会(査定委員会)と Aランク企業基準を

協会理事会で承認する。評審委員会で企業の申請を審議して公表する。基準の達した企業

が出るごとに評議を行う。A ランク企業の評価審査と認証を通して、中国の分解業界が大

型化、現代化に向かって進むよう方向付けを行う。

五.リサイクル工業団地

2001 年 11 月 6~7 日、国家環保総局汚染規制局は浙江省寧波市で開いた輸入廃棄物“団

地管理”座談会を召集し、対外経済貿易部、税関総署、国家質検総局、福建省、山東省、

江蘇省、浙江省、寧波市等の省市環保局及び一部の企業と中国有色金属工業協会再生金属

分会の代表が会議に参加した。会議では、いかにして規範化と“団地管理”業務を徹底さ

せるかについて詳しく討議された。会議では、再生資源加工工業団地の建設が第 7類廃棄

物環境管理を強化する必然的方向性であることが認識された。また、分解業界を規範的に

発展させるため、管理制度の整え、環境保全の強化し、加工企業に便宜を与えるために健

全な道を示した。管理、加工、廃水処理、廃棄物処理を一体化させた団地は、大量の資源

を節約できるのみならず、環境を保全し、物流・商流・情報流の現代化も促進させる。会

議後、各地における再生資源リサイクル工業団地建設の進展の速度が早まった。

団地建設の指導を強化し、健全的秩序よく発展させるため、近年、我が協会は国家環保

総局汚染規制局の指導のもとで、「再生資源リサイクル工業団地の環境管理指導意見」を起

草し、かつ団地建設が比較的早い寧波市鎮海、江蘇太倉、福建章州、天津子牙の再生加工

団地の情況について調査・検討を行い、団地建設の最新進展情況を把握した。

1.江蘇省太倉再生資源リサイクル工業団地

1999 年 10 月に設立し、長江経済地帯と沿海開放地帯との交差地域に位置する。その地

域は経済が発達して工業原材料の需求量が大きい、また団地は港の埠頭に近い、輸出入に

便利な運輸条件があり、よい環境に恵まれている。団地は江蘇省太倉開発区重工業企画区

内に建設され、初期計画面積は 4.4 平方キロで、計画総面積 10平方キロである。

団地は鋼鉄くず、非鉄金属くず、その他の希少貴金属及び廃プラスティック再生資源の

輸入加工業を主に、この団地プロジェクトは江蘇省計画委員会が全省 30 の重点プロジェク

トの一つに組み入れられた。

団地の開発建設は迅速な進展を見せている。

①団地の全体計画が完成した。

②団地は環境保全影響評価を受け承認された。

③インフラ建設はすでに全面的に始動している。道路及び給排水パイプ系統はすでに完

了した。路肩緑地帯も全面的に配置した。処理能力 1,500 トンの汚水処理場はまもなく稼

動を開始し、固形廃棄物は柯林固廃センターで処理することができる。

④投資と入団企業を募集する業務が全面的に展開されている。

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2.寧波市鎮海再生資源リサイクル工業団地

2001 年 7 月に設立し、浙江省寧波市鎮海区、長江三角州経済区域に位置する。団地周辺

の道路が四方八方に通って、鎮海港の埠頭と繋がっていて、良好な交通条件がある。団地

は海岸の浅瀬を埋め立てた田畑で、農地を占用していない。住宅地域から遠く離れており、

地理条件は十分優れている。団地の初期企画面積は 400 ムー、総企画面積 3,000 ムー、二次加

工精錬区はサブ団地とし、蟹浦化工区内に位し、企画面積は 300 ムーである。

団地は第 7類廃棄物の廃モータ、廃電線ケーブル、廃ミックスメタルを主とし、すでに寧波市鎮

海区国民経済と社会発展の第 10 次 5 ヵ年計画綱要の中に入れている。

団地の開発建設は進展が早い。

①管理委員会と団地開発有限会社を成立した。開発会社は工場の建物、道路、緑化地帯、

地面の硬化、汚水処理場を統一的に建設し、入団企業に賃貸する。団地には生産加工区、

管理区,監管区、従業員生活区に分かれ、すでに全面的に建設している。

②団地の西側に汚水処理場が建設中で、一日 3万トンの廃水を処理できる。発生した固

形廃棄物は 10キロ以外にある楓林ゴミ焼却工場に送り処理する。

③1,000 万元の投資で国際先進的なコンピューターシステムを導入して税関、国検との

ネットワークを構築し、検査記録の電子化を実現した。

3.天津静海子牙再生資源リサイクル工業団地

2001 年 7 月設立し、天津市静海区子牙鎮に位置し、天津港にも近い。計画面積 3,400 ムー、

総計画面積は 5,000 ムーである。一期建設投資1億元で、総投資額 2.05 億元である。団地は

第 7 類廃棄物の解体リサイクルを主に、ニ期は精錬二次加工を展開する。

団地の建築は主に以下のような進展がある。

①団地の建設はすでに天津市計画委員会に承認され、また天津市環境保全局、天津市土

地局から団地内に輸入第 7類廃棄物の分解用地の設置を許可するとの回答を得た。静海県

人民政府は団地に経済開発区待遇を与えた。

②団地内の道路網、電気網、給排水網、通信帯網、サービス網、環境緑化帯等の建設は

全面的に展開された。合理的な構成、相互の協調が保たれた。すでに 7万平方メートルの

ネットワークが完成され、200 万平方メートルが平らに整地され、7,000 余りメートルの道

端囲み塀が建設された。

③管理委員会と本社を設立し、「団地企業建設基準」等ワンセットの管理方法の作成が完

了した。

④入団企業のほとんどが天津市の第 7類廃棄物指定企業である。

4.福建省全通再生資源リサイクル工業団地

1999 年 10 月に設立し、福建省招商局章州開発区内に位置する。商業登記資本金 6,600

万ドル、投資総額 21,780 万ドル、計画用地面積は 5,000 ムー、専用埠頭面積 400 ムーである。

一期は廃金属、廃ミックスメタル、廃プラスティックの加工、分解と精錬をメインに、二期は金属

の精錬処理工場や環境保全設備工場を展開する。

団地内では以下の施設の建設が完成している。

①、2 万トン級専用埠頭にバース四つ、廃棄物輸入後は埠頭から直接廃棄物原料集中選

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別場へ運ばれる。

②、セメント床、封鎖的な廃棄物原料集中式選別場を建設した

③、廃銅、廃鉄、廃アルミ、廃機械設備、廃プラスティックの分解選別加工工場は建設

中である。

④、第一期 800 立方メートル/トンの汚水処理場はすでに建設完了し、生産の拡大に伴い

第二期、第三期汚水処理場の企画もある。

⑤、解体作業による固形廃棄物は福建省固廃センターで処理する。緑地工程は全面的に

始動し、緑地面積は 30%以上を占める。

おわりに

リサイクル工業団地の建設についての我々の考え:

1.現在、一定の規模が備わったリサイクル工業団地は上述の 4箇所以外に、山東青島、

浙江省台州、舟山、広東省等においても申請中または建設中である。ふって湧いたような

盲目な建設ラッシュを防止するため、政府管轄部門はリサイクル工業団地の管理方法や指

導意見を制作し、団地建設を健全な発展の道へ導こうと努力している。国家環境保護総局

汚染規制処の委託を受け、我が協会はすでに草案を完成し、広く意見を求めてなるべく早

く公布することを期待している。

2.現在、各団地はすでに数千万から億元におよぶ大量な資金を投入し建設している。各

団地の建設は、おおいに世論を盛り上げて行われている。より一層、海外の資本を引き付

け国内資本企業の入団と集結して分解加工を激励するため、国の安定な政策を切望してい

る。

3.工業団地の建設発展は国が幾つかの激励政策で助成する必要がある。一部リサイクル価

値が高い、汚染程度も軽い輸入種目は団地外で行うことができないものは団地内で行う。

また輸入数量及び審査許可の手続き等に便宜を与え、簡素化を計る。

著者紹介

馬鴻昌 研究員

1965 年南京大学物理学部卒。

1995 年~1989 年中国原子能科学研究院にてニュートロン物理と標準計量の研究に従事

し、20 余篇の論文を発表、国家科学技術進歩二等賞を二度受賞する。

在職期間に訪問学者として1982年イギリス国家物理実験室、1986年アメリカ国家標準局、

1989 年~2001 年国家環境保護総局に勤務し、固形廃棄物管理と研究に従事する。

バーゼル条約の中国での履行を担当し、何度もバーゼル条約技術作業グループと法律作

業グループに加わり締約国大会にも参加した。

著書:

『危険廃棄物環境管理と安全処置-バーゼル条約全書』

『固形廃棄物管理と法規-各国廃棄物管理と法規』の編集長

2001 年から現在に至るまで、中国有色金属工業協会再生金属分会の副事務局長を務める。

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中国再生銅工業の現状及び発展傾向

再生金属研究所 張希忠

要約

中国の再生銅工業は、ここ十年間、急速な発展を遂げて来た。2002 年に銅の廃棄くずか

ら生産された電解銅、銅材と銅の合金は 100~120 万トン、純銅生産量の約 63%、消費量の

36%を占めていた。その内枠は国内の廃棄銅くずから回収されたのが約 56 トン、輸入廃棄

銅くず 300 万トンから回収されたのが 60~70 万トンであった。

中国の再生銅工業はすでに計画経済時期の単一な国営経済体系から多様化投資体制に変

わってきて、今は国営、民営、独資、合資等がある。多種多様体系が共存している局面が、

我が国の再生銅工業の成長を促進した。しかし、例えば、工程技術が比較的に遅れている、

あるいくつかの企業の製品品質が心配される、“深加工”技術の改善が急務である等、たく

さんの問題にも悩まされ更なる発展に影響をきたしている。環境問題も比較的深刻である。

中国の銅鉱資源、エネルギー源、環境、銅の潜在消費量等の多方面から分析すると、再

生銅工業を発展させることは我が国の銅工業を発展させる上で近道といえる。中国国内の

銅の社会貯蓄量は比較的少ないため、国内の廃棄銅くずだけは需要を満たせない。今後、

ある程度長い期間大量な輸入に頼らなければならない。2013 年までの国内の廃棄銅くずの

発生量は約 200~240 万トンまで達すると推計される。その時には輸入量は減少傾向になる

であろう。

今後 10年間、中国では再生銅生産の技術市場が活気を呈し、伝統的な溶解設備は改良さ

れ、準備処理技術と直接利用技術も一層向上するであろう。環境整備の成果も顕著になり、

再生銅技術分野にコンピューターを応用することにより産業成長は加速されると思われる。

再生銅工業の発展は中国の資源保護、環境保全に有利であり、クリーン産業である。国

家の持続な発展戦略に相応しい産業である。再生業界の成長は全社会からの理解、応援が

必要であると同時に政府の長期安定な政策も必要である。より良い成長環境を創っていく

ことが、この業界の健全な発展を促すことにつながる。

一、我が国の再生銅工業の現状

1.再生銅工業の構成

我が国の再生銅工業は業務性質から、廃棄有色金属くずの回収、輸入廃棄有色金属くず

の分解加工と廃棄銅の再生l利用の三分野に分かれている。また企業性質からと主に国営、

民営、独資企業と合資企業がある。

70 年代後半、再生銅生産の郷鎮企業は発展してきたが、生産量は少なく、国営企業と比

較にならなかった。20 世紀 90 年代は中国の再生銅工業発展の黄金時代であった。激しい

市場競争後小さい郷鎮企業は淘汰され、なくなった。一部の民営企業が前例のない発展を

遂げ、我が国の再生銅企業において軽視できない勢力となった。

2.我が国の廃棄銅くずの回収利用量と再生銅生産量

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我が国の廃棄銅くず回収と利用の統計数字は計画経済時期には比較的に正確だった。市

場経済時期に入ってから廃棄銅くずの回収及び再生銅生産の管理体制が極めて大きいな変

化が発生されたので廃棄銅くずと再生銅の統計数字の数はある程度の違いがあった。現在、

有色金属工業協会から得た再生銅生産量は元非鉄冶金系統に所属する企業が廃棄銅くずか

ら生産された電解銅の数字だけで、”改革開放”政策実施後発展してきた民有企業が生産

された電解銅の生産量の統計(資料)はほとんどなかったからだ。2002 年の統計数字を例

として、中国有色金属工業協会の廃棄銅くずから生産された電解銅の統計数字は 36 トンで

あり、かつ実際ははるかにそれを超える量を生産していた。2002 年廃棄銅くずの推定利用

量は約 100~120 万トンと考えられ、再生利用の過程の回収率を 97%として計算すれば、生

産可能な電解銅、銅材及び各類の銅合金製品の量は 97~116 万トンになる。そのうち、電

解銅はすくなくとも 45~50 万トンを占めている。

2002 年の我が国が利用した廃棄銅くずのうち、国内発生量は約 56 トン、輸入は 300 万

トン以上に達していた。そのうち、銅の含有量は 60~70 万トンであった。輸入量は 2001

年より明らかに減少しており、それは 2002 年の夏頃に、国が第 7類の廃棄物の輸入分野に

対して 3か月にもわたる「整理(整頓)」を行ったのが原因であった。

3.中国再生銅工業の問題点

(1)伝統再生銅産業が直面している問題

我が国の再生銅工業は半世紀近くを経て発展してきた。これまで、大きな成果を収めた

が、産業の成長速度はゆるやかで、再生銅の加工工程と技術的な進展は少なかった。いく

つかの企業の廃棄銅くずの利用技術はもっと悪いことに後退している。廃棄銅くずから電

解銅を生産する分野のみから見れば、伝統的な一段法、二段法、三段法はいまだに盲目的

に採用されているだけである。そのため、廃棄銅くず中に含まれる銅合金成分の有効利用

の程度も低くなり、エネルギーの無駄も多く、加工コストも高くなっている。新技術の研

究は、再生銅新工程と設備の研究成果はほとんどないに等しい。また、特に熔冶設備の研

究制作の面でも、伝統的な反射炉は明確な改良もなされなかった。遅れた再生銅工程と設

備はすでに厳しく再生銅工業の発展を制約している。

(2)再生銅製品の品質が悪い

現在、廃棄銅くずの利用には二つのルートがある。一つは熔冶後電解銅を作ることであ

り、正規の企業なら品質はほとんど保証できる。もう一つは直接利用すること、すなわち

廃棄銅くずから明確に分類できるものを直接利用して銅材または合金製品を生産すること

である。我が国は計画経済の時代からすでに廃棄銅くずの直接利用を唱導してきた。分類

がはっきりしている廃棄銅くず及び合金は厳密に分類し、雑多物を除く等の前処理をする。

その後、相応な銅及び合金製品を直接生産することはエネルギーを節約できるだけではな

く、更に合金成分を有効利用することもでき、廃棄銅くず利用の一つの傾向となっている。

しかし、ごく一部の企業は盲目に利益を追求するため、上述した原則に違反して、低級品

の廃棄銅くずを直接使用し銅材と銅合金製品を生産するため、夾雑物が多すぎ、製品は成

分複雑で、偽物や劣等品が比較的多い。これは再生銅業界において比較的突出した問題で

ある。これは業界の評判に大きく影響した。

(3)銅及び銅合金の”二次加工(深加工)”技術は改良の余地がある

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ごく一部の再生銅企業は、すでに”二次加工(深加工)”を行う方向に発展し、生産され

た電解銅、あるいは分類がはっきりした廃棄銅くず及び合金を利用して、銅材や銅合金製

品を生産している。これは非常に良い発展動向である。しかし、いくつかの企業は 60から

70 年代にかけて淘汰された技術と設備を引き続き使用しており、いくつかの小規模企業は

まだ手工作業場方式の生産を行っている。効率は低く、コストが高く、製品品質も低い。

ここ数年、銅及び銅合金の”二次加工(深加工)”方面に新技術と設備が登場したが、そ

れらの技術や設備は科学的な検証と評価が欠けており、標準シリーズにも達してない。こ

のため、これらの技術と設備で生産された製品の性能が懸念される。我が国の再生銅の”

二次加工(深加工)”分野には先進的な工程技術と設備の研究し、広く普及させることは

極めて重要である。また、相応する基準も制定しなければならない。

(4)環境保全問題を楽観視してはならない

我が国の廃棄銅くずの分解回収や再生加工利用産業が排出する汚染物は、主に排気ガス、

残渣、廃水や再利用不可能な雑多物である。廃棄銅くずの排出元、スクラップの種類や汚

れ方の度合いにより、処理技術や設備、燃料、添加物もそれぞれ異なり複雑である。従っ

て、作業後に排出される汚染物も複雑である。汚染物は、主に原料の前処理(解体を含む)、

精錬過程と二次加工(深加工工程)に発生する。排気ガスのみについて言えば、硫黄(S)、

炭素(C)及び窒素(N)の酸化物と、揮発しやすい金属の酸化物を含んでいる。煙とちり

の中に、各種の金属酸化物と非金属酸化物及び大量の有機化合物の粉じんが含まれている。

以上のような汚染物の環境に対する影響は、比較的重大である。現在、業界には汚染に対

する認識は比較的浅く、環境への認識も不足している。そのため、環境保全設備の設置も

非常に足りない情況である。環境に対する影響は割合大きく、我々はこれらの問題をきち

んと認識しなければならない。

二、再生銅工業は有色金属工業を発展させる早道である

1.再生銅工業の発展は中国の銅資源の不足を補うことができる

中国は銅鉱資源が不足しており、長年にわたり精銅鉱石、精銅、粗銅、銅材及び銅製品

を大量に輸入して、その不足を補ってきていた。例えば 2002 年に精銅鉱から生産された銅

は 55万トンで、その年の電解銅生産量のわずか 34%であり、これは全国精錬銅の総消費量

の 20%に相当する。よって、中国銅鉱資源は厳しい現状にあるといえる。

しかし、中国は原生鉱物資源の埋蔵量は豊富であること言えなくもないが、現在の時点

においてはまだ発見されていない。たとえ新しい銅鉱が発見されたとしても、鉱山の建設、

精錬工場の建設等たくさんの問題があるため、比較的長い建設サイクルを考えなくてはな

らない。中国の資源、エネルギー源、環境、資金力等、すべての面から考えると、規範的

に再生銅工業を発展させることは中国銅工業を発展させる早道であると同時に、国家の持

続発展の戦略を完全に適合させる道であると言える。

2.中国における潜在的な銅消費市場は巨大である

2002 年の統計データによると、中国の銅(銅材を含む)のおおまかな保有量は約 80 万

トンであった。在庫量や統計漏れ等を無視すると、その年の銅の消費量は約 350 万トンで

あるが、民営と郷鎮企業の再生銅及び銅製品の生産量は計算されてない。そのため、これ

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らを考慮すると、2002 年の国内における銅の実際消費量は 350 万トン以上となり、中国は

すでに世界最大の銅消費国になったとも言える。

銅消費量の増加のスピードを見ると、中国はいくつかの工業先進国を遥かに引きはなし

ている。1995 年から 2000 年までの 6年間における、銅の消費量増加率は、ドイツ 22%増、

アメリカ 17%増、フランス 7.5%増、日本 4%減であるのに対し、中国は 64%増であった。

中国の銅消費量は大幅に増加したが、人口が非常に多いため一人当たりの消費量はまだ

かなり低い。ここ数年の精銅の一人当たり消費量から見ると、アメリカ約 11 キロ、日本約

10 キロ、ドイツ約 15 キロ、フランス約 9 キロに対し、中国はわずか 1.4 キロであり、ま

だまだ少ない。中国はすでに WTO に加入しており、今後は工業の飛躍的な発展にともなっ

て、中国の一人当たり銅消費量の増加も加速するであろう。一人あたりの消費量が一キロ

増加すれば、全国的に 130 万トン以上の増加になる。したがって、中国の銅消費市場は巨

大な潜在力を持っていると言える。

3.再生銅工業の発展は中国の国情に合ったものでなければならない

中国の銅資源と消費市場の間には比較的大きい矛盾が存在する。これを緩和する手段の

一つとしては、銅資源の現地調査を早期に実施し、できるだけ新しい銅鉱山を探すことが

挙げられる。しかし、これには長い時間が必要であるため、急場を切り抜けるには役に立

たない。二つ目の手段は、銅精鉱を輸入することである。一部の大企業は、現在すでに大

量に輸入をしているが、利益は極めて薄くならざるをえない。三つ目の手段は、精銅と銅

材を輸入することである。値段が非常に高いため、特に鋼材の輸入する場合は外国に利益

をもたらすのみで、不経済的といえる。四つ目の手段は、国内外の廃棄銅資源を充分に利

用して再生銅や製品の生産量を高めることである。以上のように、中国の資源、環境への

利益とその弊害の観点から分析すると、再生銅工業を発展させることは比較的中国の国情

に適合しているといえる。

4.輸入銅を含む廃棄物原料は中国の銅資源不足を補う早道である

輸入銅を含む廃棄物原料はすでに中国の銅資源不足を補う重要な手段となっている。中

国は輸入銅を含む廃棄物原料を利用する優勢をかなりの面で持っている。輸入した銅くず

の大部分は廃棄処分した設備、施設や部品であるため、直接利用できない。このため、分

解選別を行う必要がある。現在、分解と選別は機械ではなく、人の手で行なっている。中

国の豊富でかつ安価な労働力は、先進国には真似出来ない優位な点である。中国の廉価な

労働力は、手作業での銅くずの分解加工と選別作業に適している。細かいところまで選別

することができるため、高質な銅くずを直接利用することができる。銅の再生利用工程を

簡略化し、エネルギー源を節約することで、経済効果と利益を高めることができた。

現在、規範的に銅くずを輸入し、かつ規範的に分解、加工・利用を行うことは、中国の

銅資源不足を補う重要な手段となっている。

三、中国の再生銅資源の予測

1.今後 10 年間で銅くず排出量を増加させる傾向

中国の国力増強と社会での銅貯蓄量の増加に従って、廃棄銅の発生量が高まる可能性が

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ある。現在、国内で発生した銅くずの排出元は、主に鋼材加工(新品の廃棄料)、機械加工

製造や廃棄処分された機械設備によるものである。このうち新品廃棄料の多数は再び生産

に投入されるため、国内銅くずの排出元は機械製造業と設備廃棄処分の二業種から構成さ

れる。これらから、2002 年国内銅くずの産出量が算出できる。最近 5年間の銅消費量成長

率の平均値を取って 11.6%とし、機械加工製造過程で発生する廃棄率を 10%とすると、2002

年における加工製造業が排出する銅くずは 21 万トンとなる。また設備と銅製品の減価償却

期間を 15年で計算すると、1987 年に消費した銅製品や設備 58 万トンは、2002 年にすでに

廃棄処分する時期に入っていると考えられるが、すべて廃棄するわけではないため係数

0.6 をかける。すると、2002 年の国内の廃棄処分量はおおよそ 35万トンとなる。最終的な

結論は、次のようになる。2002 年国内発生した銅くずは約 56 万トン、同様に計算すると

2003 年は約 55万トン、2013 年は 200 万トンほどに達するはずであろう。

2.銅くずの輸入は 10年後においてもなお再生銅原料の主要ルーとなる

再生銅工業の発展は安定した資源ルートの確保が需要である。中国工業の基礎は比較的

弱いため、銅の社会における蓄積量は少ない。利用されるサイクルが長いため、銅くずの

発生量も非常に低いため、供給が需要に追いつかない。このため、目下、輸入銅くずが中

国の再生銅工業の主な原料ルートとなった。

2002 年、中国の輸入銅くず混合物の実質量は 300 万トン余りであり、およそ銅くず資源の

50%くらいを占めた。しかし、需要量にはまだほど遠い。資料や情報による分析から、今後

三年間で、中国が銅くずで生産する電解銅量は 20~30 万トン増加すると思われる。目下、

少なくとも 10万トン規模の生産に達している。このように大量な再生銅の需要量を満たす

ためには充分な資源の保障が必要である。これは中国工業の飛躍的な発展と設備の更新速

度に頼るところが大きい。また同時に大量な海外資源も必要である。予測では、2008 年ま

では銅くずの輸入量は上昇し、海外の銅くずへの依存度が増加する傾向になるであろう。

およそ 8~10 年後には、つまり 2010 年前後には、国内で発生する銅を含む廃棄物が銅資源

の主な発生源となり、その時は、銅くずの輸入量が下がる傾向になるであろう。

四、中国の再生銅工業の発展傾向

1.中国の再生銅技術市場は広い

中国再生銅工業と世界先進レベルとの差はとても大きい。今後、10 数年間に、再生銅技

術市場は活気を呈し、伝統的な工程技術と設備は激しい技術競争に直面するであろう。再

生銅の新しい工程技術(例えば銅くずを直接電解する技術)、新精錬技術、新設備が市場に

押し広められて、特に精錬設備や高効率電解技術がこれから優先的に発展していくであろ

う。

2.前処理技術が今後優先的に発展を遂げる

銅くずの事前処理技術は再生銅工業の中で重要な位置を占め、直接再生銅の回収率と合

金成分の綜合利用率、エネルギー源の消費量、生産コストと製品の品質に波及する。中国

の再生銅工業は着手された時期が比較的におそいため、銅くずの前処理技術の発展がゆる

やかで、ほとんど空白の状態である。激しい市場競争により、すでに多くの企業は前処理

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技術の重要性を認識させられた。よって、将来の 10 年間においては、銅くずの前処理技術

が迅速に発展し、広く展開していくであろう。機械化率の高い銅くず選別設備、多機能の

電線、ケーブル剥線機、銅くず洗浄技術や電動機の分解技術等は優先的に発展し、広く普

及していくであろう。

3.再生銅工業は新製品開発分野に進む

先進国の経験から見ると、再生銅工業の効果と利益の増加は主に二次加工(深加工)分

野にある。よって、この分野が、市場に提供する銅製品の品質や品種等に直接製品の平価

切上げレベルにも影響を与える。今後 10数年中に、再生銅及び純粋に分類されたきれいな

銅くずは、例えば電子材料、電工材料、冶金粉末製品、純度の高い電解銅、精度の高い鋳

物等の新製品開発に大量に使用されるであろう。

4.コンピューターは再生銅工業に使用される

コンピューターは再生銅業にまもなく取り入れられ、大きな効果を発揮するであろう。

長期に渡って、中国再生銅工業の前処理、精錬、電解操作等はほとんど人の経験に頼って

いた。そのため、効率が低く、精密度が低く、コストが高いという問題があった。再生銅

工業のコストと品質の競争によって、コンピューターが早く導入されれば、これからの銅

くず選別、溶鉱炉に入れる鉱石やその他の原料の配合、精錬の制御(例えば温度等)、電解

工程の操作制御(例えば電流、電圧、温度、溶液成分及び濃度)等に応用できる。コンピ

ューターの使用により、再生銅は最小限の原料投入量と最低限のコストで、最高の品質と

最高の実益を得ることができる。

5.産業技術の成長速度が早まる

再生銅工業はここ 10年、発展が著しい。しかし、産業の成長速度はおそく、その原因は

主に企業の古い管理体制や、生産技術の遅れ、製品の品質レベルが低いことにも表れてい

る。中国はすでに WTO に加入しているため、これからいくつかの海外企業も早速再生銅産

業に参入してくるであろう。中国の現在のような古い管理方式と後れた生産技術では競争

に参加することは難しく、もうすでに業界の発展に適応できなくなっていることを、我々

ははっきり認識しなければならない。幸いなことに、いくつかの企業はすでに産業成長速

度の重要性を認識し、続々と成長速度を早めたことは喜ばしいことである。管理方面では、

次第に国際的な先進的レベルに近づき、多くの再生銅企業は ISO9000 認証と ISO14000 認証

を取得した。一部の先見の明がある企業は、すでに企業技術力を高めることに努め、企業

の生産工程技術や設備に大規模な改革を行い、遅れた精錬・加工技術を廃止して、銅くず

の前処理設備や電解銅生産ラインの建設を進めている。これらの企業はさらに発展する可

能性がある。2010 年までには中国におけて銅くずを利用して生産された電解銅の比例は

60%以上に達し、業界を一つ新しいレベルへ向上させるであろう。

このほか、いくつかの新しい技術を採択・採用し、特に精錬設備、原料の前処理設備、

二次加工(深加工)技術と設備等に間もなく応用されるであろう。再生銅工業の技術向上

の速度が加速することは、その分野の技術開発部門に広い市場を提供したといえる。いく

つかの企業は、現在積極的にこの方面の研究プロジェクトを開発中であり、パソコンのソ

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フトウエアの開発メーカーもこの分野へ意欲を見せて取り組もうとしている。総体的に見

ると、再生銅工業の産業成長の速度が高まり、WTO 加入後の新しい情勢に適応しようとし

ていると言える。

6.環境は更に改善される

国が環境をさらに重視し、また企業の環境保全意識が一層強まったため、特に企業の意

思決定者は、すでに環境保全が企業の生き残りにおいて重要であることを認識している。

これからの業界の環境保全業務も明らかに進展するであろう。現在、ごく一部の企業はす

でに ISO14000 認証を取得しており、一部企業も認証申請のため積極的に準備している。第

7 類輸入廃棄物加工企業の環境問題を解決するため、第 7 類輸入廃棄物の分解加工企業の

「建設基準」「環境基準」や「技術基準」を作成する研究は、すでに再生協会と研究所の業

務計画の中に取り入れられた。これらの基準が普及されれば、第 7類輸入廃棄物の分解加

工企業の生産設備建設や環境保全設備の建設に統一した基準を示すことができ、業界全体

の水準を向上させることもできる。このほか、再生銅企業と再生アルミ企業の「環境基準」

の作成についても準備されている。この基準は、企業の環境保全措置や設備等について具

体的に規定する。以上のことから、再生非鉄金属分野の環境業務はまさに良い方向に発展

しているといえる。

7.大規模な原生銅精錬工場は今後再生銅分野に参入するであろう

一部の大規模原生銅精錬工場は再生銅も分野に参入するだろう。これは一つ重要な情報

であるといえる。中国の銅精錬工業は、将来 10 年間に著しいの発展を遂げるであろう。原

生銅が資源、エネルギー源、環境等一連の問題に影響を及ぼすため、いくつの原生銅精錬

企業は輸入銅精鉱と利用銅くずの利益とリスクを分析し、再生銅を生産することを考えて

いる。

輸入銅精鉱の利益が極めて薄く、輸入銅精鉱の数量はこれからどんどん減っていくため、

原生銅精錬工場の生産能力が過剰になる。ここ最近の 10 数年間は、一部の銅精錬工場はす

でに少量な銅くずをを利用している(原料に一定比例の銅くずを加える等)。原生銅精錬工

場は、銅くずを利用する優位な好条件、豊富な精錬経験を持っている。また同時にランク

の違った原料を用いて充分に各種精錬炉の優位性を発揮できる。原生銅企業は再生銅分野

に参入することにより再生銅の水準を高めることができるが、銅くず資源市場が逼迫する

ことになるであろう。

8.海外資源の開発と利用速度を速める

中国が世界の原材料加工基地になることは、あるいみ発展傾向の成り行きであるといえ

る。非鉄金属から言えば、現在、中国はもうすでにいくつかの非鉄金属の加工及び輸出国

となっている(ただし原料は輸入に頼っている)。例えば、中国は大量に酸化アルミ二ウム

を輸入し、2002 年から中国はすでにアルミの輸出国となった。中国は鉛亜鉛の輸出大国で

あるの同時に鉛亜鉛鉱石の輸入国でもある。出たり入ったりの局面を改善するため、最近

十数年中国は新しい原生非鉄金属産業を行う道を開拓した。それは国を出ることだ。外国

の原生金属鉱産資源を利用し現地で鉱山を採掘し、製錬工場を建設することだ。外国の資

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源とエネルギー源、中国の技術と人材を利用して生産された金属は直接国際市場へ投入す

る。10 数年の実行でかなりの経験を積んだ。

中国が非鉄金属くず原料を大量に輸入するにあたって、一部の専門家は大胆的にも一種

新しい構想を打ち出した。それは再生銅工業を海外で行うことである。目下、中国はまた

1社の企業も本当に国を出ていないが、一種の合図は与えられた。経済のグローバル化時

代において、現在、資源のグローバル化の実現ももはや発展すべき時に来ている。中国の

再生銅工業の発展を早めるもう一つの早道は、廃棄物原料生産国あるいは第三国で工場を

建てることである。現地で解体,加工や”二次加工(深加工)”を行う。海外の資源とエ

ネルギー源を充分に利用できると同時に、国内の一部の人材や技術をも利用できるため、

中国と外国の優位な点をそれぞれ十分に発揮し、エネルギー源を節約し、大幅に生産コス

トを下げることができる。充分に海外資源を開発することは、今後、中国の再生利用銅工

業が探索する価値のある方向であろう。現在、中国はすでに一定の条件を備えているとい

える。一つ目は原生非鉄金属の海外工場を建てた経験があること、二つ目は中国の廃棄非

鉄金属の分解加工業もすでにある程度の経験と人材を有していること、三つ目は中国の非

鉄金属くずの分解加工技術はすでに一部機械化操業を実現している。それらはすべて中国

の廃棄非鉄金属工業が世界へ向けて行くための良い基礎になる。

9.企業の自律

再生銅工業は環境保全産業である。その発展のためには国の支持と社会の理解が不可欠

であり、また安定な政策や環境も必要である。しかし、長い間人々は銅くずの回収利用に

対する偏見を持っており、特にごく一部の企業による違法行為が、更に全体のイメージを

損ない、業界に巨大な損失をもたらした。よって、業界を自己防衛するもっとも良い対策

は、業界の自律を強化することである。業界の自律の重要性は、ますますより多くの企業

に重視され、今後何年間はだんだん盛んになるであろう。業界の自律向上のためには、よ

り多くの企業の参加と、厳しい自律規則の作成が必要である。法律に従い、規則を守り、

環境保全に尽くし、納税義務の履行等から企業のイメージを高め、全社会の支持と理解を

求めることが、業界の生存と発展により良い環境を作ることにつながる。

最後に

銅は消費量が大きく、用途範囲も広い非鉄金属である。天然鉱物資源の不足と需給が差

し迫った状況にある中国は、再生銅工業の発展を重視していくべきである。未来の 10年は

中国の再生銅工業が急速な発展を遂げる時期になるであろう。中国は再生銅の大国になり、

生産量は世界一、総合的な再生銅の大中企業も発展していくであろう。2013 年に中国の銅

くずの利用量が 300 万トンとなれば、6 億トンの銅鉱石採掘の減少による資源の実益が得

られ、600 万トンの二酸化硫素と 6 億トン以上の産業廃棄くずの減少という環境面での実

益に相当する。国家関係部門は再生産業育成のために長期安定のための政策を提供すべき

であり、それは中国の非鉄金属工業が持続な発展を図るための長期的戦略方針でもある。

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著者紹介

張希忠

教授クラスの高級エンジニア、再生有色金属回収利用技術と管理に携わって 25年。国

家物資総局金属回収局科学技術課(課長)、中国金属回収総公司科学技術管理課、中国物資

再生利用総公司科学技術課(課長)、科学技術諮問部(取締役)、現在は北京中色再生金属

研究所所長。

国家、省(部)に委託された再生有色金属に関する科学技術研究プロジェクトを数多く

担当。主要責任者として国家科学技術委員会から名誉証書を授与された。

難関を挑む国家”八五”科学技術プロジェクト「固形廃棄物資源化技術研究」の責任者

兼研究員、

中国 21世紀第一期優先課題プロジェクト「廃棄アルミくず再生利用技術」の責任者。

元国家物資部、国内貿易部、中国有色金属工業総公司から科学技術成果賞を数回受賞さ

れ、その中に二等賞 2回(第一発明者)、三等賞 3回(主要研究者)

著書

『再生資源学』 〔共著〕

『当代物資流通』 〔共著〕

元国内貿易部(省)特別貢献のある中年・青年専門家として再生有色金属管理、回収利用

技術に関する論文を 40回以上発表。

2003 年に再生有色金属技術と管理に関する論文を 7回発表。

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業界の自律意識を高め、第 7類の輸入廃棄物の加工産業を規範的発展させる

呉振仁

要約

中国経済と社会の高速な発展に伴い、各種資源に対するニーズが急激に増加してきてい

る。深刻な国内資源の不足は、国内外の再生資源開発利用産業を盛んに発展させた。しか

し、第 7類廃棄物の輸入加工産業に関する法律の整備は十分ではなく、業界の自律は混乱

し、市場競争も無秩序なままである。本文は海外の第 7類廃棄物、分解加工業界の先進的

な経験を参考にし、わが国の第 7類廃棄物業界の自律に対する規範的な内容を提起し、い

かに業界の自律を進めていくべきかについて自らの意見を述べた。

中国経済と社会の高速発展に伴い資源、環境、エネルギー等の問題が益々重要になって

きている。資源が日増しに緊迫し、環境保全の必要性が生じていることから、再生資源の

開発利用は既に不足した資源を補うための重要な手段となっており、国内外を問わず、再

生資源の回収利用を主とした産業が盛んになってきている。

国内と国外、この二つの市場を活用して再生資源を開発することは、現在及び今後の基礎

原料の需給を解決する一つの重要な手段である。国外再生資源の大量流入は、中国の基礎

原料産業に豊富な原料をもたらす一方で、同時に中国の環境にも一定の影響を及ぼしてい

る。科学的、合理的に再生資源を利用しながら、生態環境を保護することは、再生資源を

利用する業者に課せられた義務である。

再生資源産業を健全的かつ安定的に発展させる為には、業界全体が目の前の利益と局部

的利益、そして長い目で見た利益を結びつけて考えなければならない。一企業の利益を追

求するために、業界の長期な利益や社会全体の利益を軽視してはならない。ここ数年来、

一部の第 7類廃棄物輸入業者による法律や規定に背いた行為が時折発生しており、結果、

深刻な事態、悪い影響をもたらしている。業界全体の名誉が傷付けられ、法を遵守してい

る企業が莫大な経済損失を被っている。よって、われわれ資源再生利用産業は、早急に業

界の自律を強める必要がある。多くの企業の自律的行為が業界の名誉を高め、業界全体に

その良い影響を広めることができるならば、この業界を、国家資源を保護し、エネルギー

を節約し、環境を保全する重要な産業の一つにし、資源と環境の持続発展を実現させるこ

とができるのである。

一、国外業界の自律についての概況

業界の自律は業界自身を守るために重要なことであり、特に一部の先進国では業界の自

律組織が迅速に発展し、業界の自律意識が比較的高く、業界の自律がすでに業界全体の発

展に大きな影響を及ぼしている。自律とは、自らが自身を躾ることである。第 7類廃棄物

の輸入加工業界の自律とは、一連の基準を取りまとめて、皆が共に遵守することによって、

規範的な経営生産を行う目的を達成することができる。

フィンランドとアメリカは比較的業界の自律を重んじる国で、業界の自律組織(一般的

には協会)が業界の協調を図り、政府部門との疎通を図る。企業の経営を規範化し、市場

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秩序を維持・強化する等において重要な役割を果たし、同時に業界全体の利益をまもる目

的を達成している。

アメリカでは、再生資源を回収利用する企業は、皆アメリカ EPA に指定された廃棄物回

収地域で業務活動を行い、指定された回収分類ごとに営業許可証を申請し、営業範囲を超

える活動は決して行わない。例えば廃鉛ケーブルを処理する企業は必ず鉛処理の営業許可

証を持っていること、廃電気製品の分解企業は必ず廃電気製品の分解営業許可証を持って

いることが必要である。廃棄物の分解を行う企業は環境保全、資源の総合利用、従業員の

安全作業と労働保険措置等を完璧にすると共に、自覚を持って定期的に工業安全局の検査

を受け、定期的に環境保護局に水質検査、空気分析及び廃棄物の回収、輸送状況等の報告

書を提出する。再生資源の回収、リサイクル、経営の段階に法規違反の発生は大変少なく、

同時に環境汚染の重大事件の発生も極めて少ない。

アメリカの再生資源回収に従事する企業は従業員の養成も非常に重視している。これも

業界の自律の一部分であるからである。例えば職業訓練、安全のための訓練、廃棄物処理

技術訓練、環境保全訓練等がある。訓練を通して、従業員が仕事の原理と技術を把握し、

同時に従業員の安全と環境保全に対する意識を高められる。

二、我が国における第 7類廃棄物の輸入加工産業の自律に関する主な内容

第 7類廃棄物の輸入加工産業は、その特有の特殊性ゆえに、業界自律の内容も一般業界

と異なる。以下の幾つかの点にまとめられる。

1.国や地方の法律法規を自覚的に遵守する

第 7類廃棄物輸入加工産業はその他の業界と比べ、一つの大きな特徴がある。それは関

連している法規が比較的に多いことである。例えば第 7類廃棄物輸入加工企業は必ず国の

環境保護局の指定を受けられた企業であり、関係部門の環境保護評価証書を持っているこ

と。一部の地域では、企業は又必ず関係部門が交付した特殊産業営業許可証を持っていな

ければならない。この他、輸入加工する原料は必ず《原料で利用可能な廃棄物の国家輸入

制限品目リスト》の第 7類輸入廃棄物の範囲内のものでなくてはならない等、第 7類輸入

廃棄物の分解加工企業は一般の企業より高い法律意識と環境保全意識を持つことが要求さ

れる。さらに十分に法規を理解し把握し、厳格に法に基づいて仕事し、また同時に法律に

よって自らを守らねばならない。

第 7類廃棄物の輸入については、素質と誠意があり信頼できる海外の資源回収企業と品

質保障が保てる供給関係を築き、断固として第 7類輸入廃棄物の中に、禁止された部品を

混ぜて密輸してはならない。第 7類輸入廃棄物が国の法律・関連基準に適合するよう確保

しなければならない。第 7類廃棄物の輸送過程においては、汚染を軽減させるため、コン

テナまたは防護装置つきの運輸設備を採用し、運輸しなければならない。第 7類廃棄物の

分解加工においては、企業は必ず厳格に関連規定に従って全分解作業を行うこと、国内で

の第 7類廃棄物の闇取引は禁止する。

第 7類廃棄物の輸入、加工や貿易を行う際、企業は必ず厳格に国の税関、環保総局、商

業検査局等部門の関連規定を守らなければならない。これも業界が生存・発展していく基

礎であり、公平かつ秩序のある競争の基盤でもある。

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2.環境保全事業の重視

(1)企業が第 7類輸入廃棄物の分解加工するにはインフラ設備が不可欠である。例えば、

合法的に決まった作業場、耐久性のある分解加工作業場の建物、比較的進んだ加工設備と

施設、加工前の原材料を全部収納できる原料倉庫を保有し、原料が露天に放置されたり、

風雨に晒されたり環境汚染を引き起こす原料流失が起こらないよう防止しなければならな

い。廃棄物の分解加工は必ず基準に合った仕事場で行い、作業過程で環境汚染を起こさな

いよう防止する。

(2)第 7類の輸入廃棄物の分解加工企業は加工する原料と使用する加工技術の特徴に合

った環境整備を拡大し、下記のように環境保全に有効な施設を建設しなければならない。

A,雨水の収集、沈殿と排出システムを導入し、基準に達した排水を排出すること

B,粉塵対策については粉塵回収システムを作り上げること

C,騒音の大きい作業地域に関しては必ず一定の騒音を下げる対策を講じて、従業員に一

定の労働保護を与えること。周囲の環境汚染を避けるため騒音を下げ、隔離設備は国の関

連基準に達すること。

D,作業中汚水が出る場合は汚水沈殿池或いは濾過システムを建設し、なるべく汚水を循

環使用できるようにすること。排出水は国の排出基準に達すること。

E,加工過程でなるべく固形廃棄物の発生量を減らし、発生した固形廃棄物は勝手に捨て

ず、リサイクルして二次汚染が出ないよう防止しなければならない、また汚染の存在が潜

在してはならない。

3.技術の改善に力を入れる

第 7類輸入廃棄物の分解・加工業は、労働集約型の産業であり、これまでいくらかの労

働問題は解決された。しかし加工技術が遅れており、技術性も低い。よって企業は常に技

術の改善に力を入れ、常に先進技術や現代化の設備を取り入れて、企業の技術レベルと加

工レベルを高めて、回収加工業における技術的作業を増やすことで資源の再生利用率を高

める必要がある。

4.規範的管理、誠実な経営により企業の信用をさらに高める

企業内部は品質管理、環境保全管理、生産安全管理等の部門を含めた完璧な組織体系を

構築し、会社製品の品質、環境保全と従業員の健康等の問題を効率的に保障できるように

する。このほか、企業は健全な管理制度と技術制度を作り、その中にも製品の品質管理制

度、環境管理制度と生産安全管理制度等を含むべきである。企業の各項目の業務を法制化

とシステム化の軌道にのせて、各項目の業務は法律に基づいた、根拠のある規則であるよ

うにする。

経営の面では、企業は特に業界の道徳を重視して以下の面から良好な企業イメージを作

る必要がある。まずは製品の品質を保証し、偽物、劣等品を作らないこと。製品の品質が

一定の基準に達すること。二つ目は、企業は良い信頼と約束を誠実に守ること。三つ目は、

競争を公開し、公平に秩序に沿った形で行うことである。これらによって社会に認められ

るような業界にしなければならない。

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5.従業員の安全と健康を重視し、従業員の合法権利と利益を保障する

第 7類輸入廃棄物の分解加工産業の性質から、従業員の労働保護と安全制度は極めて重

要で、厳格に国の関連規定と基準に従った制度を作るべきである。同時に従業員に安全と

衛生教育を行い、事故と職業病の発生を防止する。生産作業の一つ一つの工程において安

全を保障し、労働環境と環境汚染等の問題点を考慮し、必要な安全設備と環境保全設備を

配備するだけではなく、従業員には国の基準に合った労働保護用品を割りあてる必要があ

る。企業は定期的に生産設備と安全施設の安全検査を行い、確実に従業員の作業の安全を

保証しなければならない。また、従業員の健康を確保するために、毎年定期的に健康診断

を受けさせる必要がある。

三、第 7類の輸入廃棄物業界の自律への提案

1.業界基準の制定を加速させる

業界の自律意識を高め、秩序ある再生資源市場の競争体系を作り上げるため、業界は基

準の制定を加速すべきである。これは市場経済の要求だけではなく、業界の自律のために

重要な内容である。第 7類輸入廃棄物の加工企業は、新興産業であるため、各種基準の制

定が十分でない。業界としての地位確立も、ようやく行われたばかりで、市場の管理は秩

序がない状態である。第 7類輸入廃棄物の加工企業を規範的に発展をさせ、業界の自律を

高めるため、我々は「科学的計画、正確なガイドライン、完璧な法規、規範的発展」の原

則を堅持し、積極的かつ着実に我が国の第 7類輸入廃棄物の加工企業を発展させていかな

ければならない。

我が国第 7類輸入廃棄物の分解加工分野における問題点に焦点をあて、以下の基準の作

成を重視することを提案する。

(1)第 7類輸入廃棄物の分解加工企業の設計基準

この基準は工場の建物、倉庫、作業場、供給電力,上下水道の設計等に具体的に規定する。

(2)第 7類輸入廃棄物の分解加工企業の加工技術基準

これは第 7類輸入廃棄物の分解加工の工程、加工程度及び各種の分解余剰部品の利用技

術等の一定レベルを規定する。

(3)第 7類輸入廃棄物の分解加工企業の環境基準

この基準は異なる種類の企業の環境保全施設に関する設計と建設、固形廃棄物や排ガス、

廃水の排出基準及び点検方法を具体的に規定する。

(4)第 7類輸入廃棄物の分解加工設備の系列基準

現在、我が国の第 7類輸入廃棄物の分解は手分解が主である。生産効率を高めるため、

いくつかの企業では各種の分解と選別設備を設置しているが、これらの設備はレベルがバ

ラバラで、設備の製品品質が劣るものもある。また、同時に環境にある程度の汚染も及ぼ

している。よって、第 7類廃棄物の分解加工設備について、一連の基準を作るべきである。

例えば電線剥離機、燃焼ストーブ、磁選機、分別機等の設備基準を作成することは業界の

技術向上にも良いし、業界の自律にも必要なことである。

2.従業員研修の強化

従業員の研修は、従業員全体の素質を高めることであり、業界自律の重要な部分である。

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主な内容としては、一つは専門技術の育成によって従業員の技能を高めること、二つ目は

企業の専門性とその特徴に対応した環境保全の研修によって従業員の環境意識を高めるこ

と、三つ目は安全操業の研修を行うこと、四つ目は資格研修で、特に特殊職の従業員には

国の関連規定に基づいた研修訓練を行い、資格を取得してから現場に入るようにすべきで

ある。

3.協会は業界自律の中でその役割を果たすべきこと

計画経済の時代には、業界自律の多くの業務は、事実上みな政府の管轄であった。計画

経済から市場経済へ転換した後、行政と企業は分離し、政府機能もだんだん変化していっ

た。直接企業を管理することはもう出来なくなり、マクロ的な調整を行うだけとなった。

しかし、めまぐるしく変化する市場経済の動きの中で、不正な手段で利益を得る企業が、

市場の正常な秩序を壊わしてしまった。市場競争の規範を公平かつ秩序をもって維持する

ためは、政府のコントロールのみに頼るだけでは不充分である。業界も自ら自律して進ん

でいかなければならない。業界の自律対策は非政府機関である業界の協会が引き受けるべ

きである。協会は非営利で企業と意識を疎通することが容易であるし、最も業界の発展状

況に通じている。また業界全体の利益を一番代表することができる。中国においては第 7

類輸入廃棄物の分解加工業界の自律が、今まさに必要である。再生金属協会は、業界自律

の実現のために貢献しなければならない。

4.業界の自律基準を制定する

業界自律の強化は、一企業だけではなく、より多くの企業が積極的に参与してこそ実現

できることである。そうでなければ業界自律の実際の意義がなくなってしまう。まず最初

に、国外の業界自律の先進なやり方を参考にして、再生金属協会が筆頭になって業界自律

の規準を作成する。その作成は協会の組織下にある企業が自発的に行う。規準には、企業

の第 7類廃棄物の輸入、分解加工、経営過程において国の法規定を遵守すること、環境を

保全し、法に基づいて納税すること、生産技術と製品品質を向上に努めること、誠実に取

引を行うこと、信用のある貿易と公平な秩序ある競争等の推進等の面で、具体的な規定を

作ることを盛り込む。

自律規準は必ず客観的で、公正で、合理的で、国情に合ったものであり、企業が受け入

れられるものでなくてはならないため、国の利益を重んじまた全業界の利益にも気を配り、

両者が協調して発展させなくてはならない。

我が業界の社会的イメージを良くするためにも、自律に参加する企業は、共に社会に対

して誓約し、共に自律の規定を遵守することを誓い、また同時にお互いに監視し合い、業

界の社会的イメージの向上させる必要がある。また協会は業界の自律状況を常にチェック

し監視を行わなければならない。優良企業・部門は奨励し、広報を行う。出来が悪い企業

は、期間を決めて整備させる。期間内に整備しない企業あるいは整備が徹底されてない企

業は、自律組織から脱退するよう勧告する。

業界の自律は業界の発展に重要かつ深い戦略的な意義がある。全業界から注目されるよ

う、業界の自律事業が健全かつ着実に発展させていこうではないか。

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著者紹介:

呉振仁 南京金澤金属材料有限会社理事長。資源の再生利用に携わって十数年。第 7類

固定廃棄物の規範的回収に豊富な経験がある。呉振仁氏は企業の科学的管理に十分に注意

をはらい、企業の技術レベルを高めると同時に企業の環境管理も心がけている。企業の環

境投資を拡大し、ISO9000 と ISO14000 の認証を取得。呉振仁氏は、従業員の安全作業と労

働環境の保護、従業員の合法的権利と利益の維持にも力を尽くし、業界で非常に信望が厚

い企業に成長させた。

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再生資源加工工業団地を建設する経験と提案

寧波再生資源加工園区管理委員会常務副主任 胡明杰

要約

本文は、再生資源加工工業団地の建設による資源回収、環境保全、管理強化に対する重

要性を詳細に述べた。また、寧波市鎮海区で加工団地を作る有利条件と優勢、加工工業団

地を建設する実際状況から具体的な提案を打ち出した。

浙江省寧波市再生資源加工工業団地(寧波再生資源加工園区)は寧波市鎮海区人民政府

が設立した港に隣接する物流工業団地であり、寧波市鎮海区の港に位置する。工業団地の

計画面積は 3,000 ムー(200ha)であり、うち緑地面積は 990 ムー(緑化率は 33%)、道路用地

は 480 ムーと団地周囲の隔離外堀と合わせると 1,530 ムーを占める。

団地は 2001 年 4 月に計画され、12 月正式に建設を始めた。2003 年 8月末までに投入資

金画 2.87 億元、計総面積の 41.3%の 1,239 ムーが開発された。国家税関国検監督管理区、商

務管理区、従業員生活区、汚水固形廃棄物処理区及び 18の生産加工区が整備完了し、既に

生産も開始された。さらに 13の生産加工区は建設中で、年末までに 31の生産加工区が全

面的に竣工する予定であり、最終的に生産加工能力は 100 万トン以上に達する。

再生資源加工業に対し団地管理方式を実施する一年以上の体験から初歩的経験を得た。

ここで自分の未熟な見解を述べ、皆さんと議論を深めたい。同業者との交流検討を通して、

今後ますます再生資源加工利用業の健全かつ持続な発展を促進させたいと思う。

一、工業団地の管理方式は再生資源加工業を発展させる

我が国は巨大な人口を抱える発展途上国である。一人当たりの資源量、特に非鉄金属、

黒色金属は極めて乏しいため、経済成長は厳しく制限されている。統計資料によれば 2002

年銅、アルミ、鉛、亜鉛の四品目の自給率はそれぞれ 35%、62.5%、44%、71%であった。現

在、我が国で採掘できる銅鉱の埋蔵量は 1,670 万トンで、これは世界の 5.7%にあたり、静

態分析によると国内 8 年の需求にしかならない。アルミ鉱から採掘できる埋蔵量は 69.6

億トンである。しかしアルミとケイ素の比率が 10 以上の比較的高品質の鉱石はわずか

6.9%しかない。我が国 2002 年の酸化アルミニウムの生産量は 540 万トンである。しかし、

その年の国内の電解アルミニウム販売量はすでに 462 万トンに達しており、酸化アルミニ

ウムは 300 万トンほど不足した。鉛鉱の埋蔵量は 688 万トンであり、静態分析によるとこ

れは 6年か 7年しか採掘出来ない量である。純亜鉛鉱石は 1996 年から一部輸入していて、

2000 年は輸入国に変わった。国は毎年ニーズに応じて非鉄金属を大量に輸入している。

2002 年輸入非鉄金属鉱物原料だけでも 56.6 億米ドルに達している。再生利用廃棄物原料

の輸入と加工は、すでにある程度の資源不足を緩和でき、また鉱石の製錬で生じる環境汚

染も大幅に減少できるため、自然資源とエネルギー源も節約できたと思われる。統計資料

によれば我が国 2002 年再生非鉄金属生産量は 210 万トンに達し、非鉄金属総量の 20%以上

を占めた。そのうち再生銅 60万トン、再生アルミニウム 113 万トン,再生鉛 15万トンで

あった。2002 年再生非鉄金属の生産量は少なくとも各種の鉱石 1~1.2 億トンの採掘の手

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間を省くことができ、工業残渣 1億トン、二酸化硫黄ガス等有害物質も 160 万トン以上も

減少したことに相当する。”三廃”(排気ガス,排水、固形廃棄物)の発生量と排出量が

顕著に減少し、有効に生態環境を保全した。投資の面から比較すると、原生銅 1トン当た

りの投資額は 2万元なのに対し、再生銅はわずか 0.8 万元で、さらに原生銅製錬工場の建

設ライフサイクルの 2分の 1しかなく、石炭 5.9 トンのエネルギー源が節約できる。よっ

て、輸入再生資源原料の加工利用産業は国民経済の中で重要な地位を占め、大きな力を発

揮している。専門家が二つの保護(社会資源の保護、社会環境の保護)、三つの効果(経済

効果、環境効果、循環効果)があるとまとめている。再生資源加工利用産業は現代社会に

利益をもたらす事業で、その功績はいつまでも称えられる社会的な公益事業でもある。こ

の産業は国連で 21世紀のグリーン産業の一つに列記されている。国の政策により再生資源

産業はいつまでも衰えることがないだろう。

しかし色々な要素の影響で各地では、廃棄物原料を輸入するという名目で密輸、闇取引

が頻繁に行われている。税関の検査と税金徴収を逃れ、経済の秩序を乱している。また一

部の企業では高額な利益に目がくらみ、国が禁止した汚染のひどい廃棄物を輸入し、その

土地の環境に重大な汚染を招いている。

現在、全国で 400 余りの指定加工企業は全国各地に分散しており、有効な監督方法がな

い状況である。日増しに国が環境保全業務を重視するにつれて、輸入廃棄物の環境保全監

督業務もしだいに強化されてきた。再生資源加工産業を規範的発展させ、管理制度を完全

にし、環境保全を強化する。また便利性を向上させるため、港、市場、土地資源、環境施

設、地方政府の支持等の条件が揃った地域にリサイクル工業団地(再生資源加工工業園区)

を創設する必要がある。管理、加工,汚水固形廃物処理施設が一体となった団地では、資

源の恵みを共に受けると同時に環境も保全され、市場が繁盛し、物資の流通、商業の流通、

情報の流通も促進され、現地だけではなく各地にとっても有利になり、さらに国家の関係

管理機関にとっても有利になる。工業団地式の科学的、規範的な管理は、緑色環境産業の

持続健全な発展を促進させるであろう。

二、地域の優勢を発揮して団地を建設するのは加工利用業の健やかな発展に有利である

考察と調査研究を経て、我々は、寧波市リサイクル工業団地には、その業界が強い生命

力を備えている共通な優勢を持っていること以外に、4 つの恵まれた条件があることが分

かった。

1.寧波市は港の優勢があり、交通便利

寧波は中国大陸海岸線中程の、上海の南、長江三角洲経済区に位置している。寧波港は

国際的な深水の積み替え港の一つで、大陸沿海と長江黄金T型航路の合流点に位し、扇型

に世界各港へ連接している。港岸線は豊富な資源に恵まれている。2000 年寧波港の貨物の

輸出入量は初めて 1億トンを突破し、上海、広州に続いて我が国第三番目の億トン級の港

となった。21 世紀に入ってからは、寧波港は継続してめざましい発展の勢いを維持して

2002 年には輸出入量 1.53 億トンに達し、連続 3年全国第二位になった。世界の港でも第 6

位に挙げられた。現在、寧波港は 96 カ国・地域の 560 以上の港と貿易をしている。寧波港

のコンテナ運輸の国際航路は 42 本で、月の就航ダイヤは平均 400 以上,コンテナの運輸は

大幅増加で 4年連続高水準を保持し、全国の沿海港では第一位であった。現代化した埠頭

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は世界最先端のパナマ超大型第六代コンテナ船が停泊できる。また国道、省道、沿海の高

速道路は寧波市境界内を通り抜け、杭州湾から寧波まで海を跨いだ大橋が建設されれば 2

時間で上海へ行くことが可能になる。6 車線の一級自動車道路は市の中心とつながってい

て、寧波櫟社国際空港までは 30 キロの距離にある。リサイクル工業団地の東側は寧波湾と

接し、港までの距離は「ゼロキロ」である。鉄道は工業団地へ直通、便利な交通運輸条件

がある。

2.寧波市は市場の優勢があり、非鉄金属の需求量が大きい

寧波は工業が発達し、経済も繁栄している。12年連続GDP増大幅は全国平均より5%高い。

経済総量は 2002 年全国副省級都市の第四位になった。工業の急速増長で、寧波は現在、約

60 社の銅、アルミ、亜鉛、ステンレス等を生産する工場において大量の銅、アルミ、ステ

ンレス等金属原料の需要がある。目下、広東省一帯の輸入再生金属がかなりの割合で江蘇、

浙江一帯に流れ込んでいる。台州の輸入廃棄金属市場で分解された銅、ステンレス、アル

ミ等は、大量に寧波へ売りさばかれている。寧波のリサイクル工業団地建設後は、単なる

運輸コストの大幅な値下がりだけで、需要側と供給側の双方が極めて大きな利益が得るこ

とができるため、顕著な価格競争優位があるといえる。目下、寧波は湾岸工業の発展に力

を入れ、寧波市第二期人民代表大会で承認された政府業務報告によると、今後 5 年間で

1,000 億元を投資し臨港型工業を建設する。第一期工事では、年間生産量 300 万トンの寧

波建龍鋼鉄工場、年間生産量 60 万トンの寧波宝新ステンレス工場の第五期工事、年間生産

量 25万トンの華揚アルミ工業等が建設中で、年間生産量 30万トンの華光ステンレス工場

と年間生産量 30 万トンの神龍特殊鋼工場も年末に竣工予定している。杭州鋼鉄工場は寧波

に移転し、投資 150 億元で年間生産量 600 万トンの新鋼場を建設することで 6月 20 日正式

に調印された。数年後寧波は年間生産量 1,000 万トンの鋼鉄生産基地となり、毎年は数十

万トンの廃鋼鉄が需要。その外、寧波金田銅工業等の大企業も毎年 50 万トンの廃銅スクラ

ップの需要が見込まれる。寧波市リサイクル工業団地は全国地域へ港、鉄道を利用して金

属原料を提供でき、寧波は輸入廃棄物原料の供給基地となるであろう。

3.寧波市は環境保全施設が整えていて、国家環境保全基準に達した

再生資源加工業において環境保全は非常に重要である。工業団地も厳格な環境保全規定

に沿って計画、施工及び管理を行っている。政府は大量の資金を投入し、現在すでに工業

団地の隔離外堀と一部区域の緑化を完了させた。世界銀行から貸付金 3,000 万ドルを得て

建設中の汚水処理施設は一日汚水処理量 3万トンの規模のものを予定している。工業団地

からわずか 0.6 キロで、工業団地から出た汚水はパイプを通して直接汚水処理場で処理さ

れる。現在、総投資 4億元を投じ、全国でも比較的大規模なゴミ発電所の一つである甬江

南岸の寧波市ゴミ発電所は、工業団地から 8キロ離れている。ドイツから導入した高温焼

却炉でさまざまな固形廃棄物を一日 1,000 トン処理できる。今後は一日処理量 2,000 トン

を目指している。工業団地内で処理できない固形廃棄物はこの処理場へ移送して完全に処

理することができる。また、環境保全のため、化学的精錬方法は絶対に使用しない。

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4.寧波市は土地使用資源の優勢

寧波市リサイクル工業団地は上海の南にある東海の浜辺に位している。総計画面積

3,000 ムーの土地は海岸の浅瀬を埋め立てた田畑で、農地を占用してないので、国の耕地保

護政策と合致している。工業団地に選んだ場所は、住宅地域から遠く離れているため、市

民の生活環境への影響は比較的少ない。鎮海海岸線は 10 数キロの長さがあり、毎年新たに

1,000 ムーの埋立地ができるので、寧波リサイクル工業団地は広々とした拡張空間といえる。

三、工業団地の経営は科学的計画、協調統一、厳格管理とサービスの強化が必要

1.科学企画、合理的配置、高スタートライン、高標準での建設

工業団地には分解地区と精錬地区の二つがあり、分解地区は寧波港区に位置し、製錬地

区は化工区に位置し、二つの地区は化工大通り(化学大道)で繋がっている。

団地は周囲の隔離外堀と緑地で外部と仕切られ独立している。団地内部は税関検査監督

管理地区、商務管理地区、生産加工地区,従業員生活地区と汚水固形廃棄物処理地区の五

つの機能区域に分かれ、緑地率は 33%以上になる。

税関、国検監督管理区は総敷地面積 70 ムー、輸入貨物コンテナを監管区内で税関検査を受

け,通関手続きを取る。通関速度を速めるため 300 万元余りの IBM 計算機二台を取り入れ、

専用光ケープル、監視カメラシステムで税関、国検のネットワークを実現し、現場監視録

画、データ資料の保存、検査漏れや間違いを防止できる。

生産加工地区は分解、選別、生産経営する主な場所である。工業団地に入る各企業の要

求に応じオフィス、作業棟、倉庫とコンクリート床の置き場を建設する。各加工区の間は

塀と 8~50メートルの緑地で隔りをつけた。

従業員生活地区には五階建ての宿舎ビル 6棟、共同食堂、風呂屋、幼稚園、日用品店、

医務室と文化娯楽施設を建設する予定である。工業団地内では生産加工地区と生活地区を

分けるため、生産加工地区内には従業員宿舎を作らない。また従業員の生活安全を保証す

るために警備を強化し、守衛室も設置する予定である。

商務管理地区は工業団地の管理機構が執務する場所で、工業団地関係の各管理部門はサ

ービス窓口を開き、金融部門は銀行の出張所を開設する。コンピューターネットワークに

より工業団地内の映像スクリーンに随時マーケット情報と商品相場を提供する。工業団地

内にはクレーンカー、フォークリフト、トラック、ポント秤等の設備により 24 時間サービ

スを行う、通関手続きを済ませた貨物を工業団地内の各企業の経営場所へ運送サービスも

随時に応じる運輸チームがある。

汚水固形廃棄物処理地区は敷地面積 13,040 平方メートル、主に汚水と利用出来ない廃棄

物の集中処理を行う。工業団地は 1,270 万元の資金を投じて汚水処理システムを設置し,

各加工地区に 31 箇所、油分離沈殿池を造り、長さ 3,700 メートルの地下汚水パイプを通じ

て汚水処理場へ流し化学薬品で集中処理して排出する。二次汚染を減少するため各加工地

区から出た解体後の廃棄物、泥及び油残渣等を収集して寧波ゴミ発電所で焼却処理する。

2.健全な制度、規範な管理

①工業団地の環境保全等各項目の完全な規程制度を作り、ハンドブックにする。輸入、

生産、分解、販売の各段階の責任者と責務を明確にして、市場化の法律を確実に守れる体

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制を作り、工業団地管理者と入居企業みんなが守り従う規準を作る。

入居企業の条件は、業界で数年の経験があり、信用があり、環境保全意識を持っており、

違反記録のない経営者であることである。入居した経営者は 3~20 年の借地契約した後、

商業登記簿と営業許可証書の交付を受けられ、独立した法人と見なされる。

②工業団地と入居企業の環境保全部門を作り上げ、組織、職務、措置と人員を確定す

る。環境保護業務が各階層で着実に遂行可能になるようにする。

③工業団地のインフラ建設を加速させる。工業団地の正門と港区域からの入口扉の建

設は直ちに着手し、厳格な封鎖管理を実行する。また先進的なコンピューター制御システ

ムを導入し、すべての貨物の出入りをパソコン知能による管理を実現させる。

④放射線物質測定検査計器及び附属設備を買い備える。国の検査部門の検査基準に達

するようにする。同時に工業団地の周囲に観測点を選定し、環境保全観測機関と協力して

定期的に工業団地周囲の土地,水質環境の変化を監視する。

⑤工業団地企業は必ず統一した生産台帳制度を設立して、毎回の輸入貨物の種類、数

量及び分解後の各種構成要素の行方や受け入れ部門の名称、詳細住所、責任者と利用出来

ない残渣の処理方法等も記録する。工業団地は人員を配置し、関係データを工業団地コン

ピューターのネット管理システムに入力する。また随時、環境保全機関の現場検査を受け、

求められれば、ありのままに台帳を提示する。

⑥工業団地は関係機関と協力して定期的、不定期に企業管理者と作業員に環境保全業務

の教育、育成訓練を行い、再生資源産業が国民経済の中で重要な役割を果たしていること

を充分認識させ、資源意識と環境保全意識を高める。また同時に団地内の各企業の従業員

に対し ICカードの管理を行う。

⑦精錬作業は必ず二次加工区内で行い、焼却分解は行わないようにする。分解後の固

形廃棄物はその場で焼き捨てることを禁止し、これについては入居企業に特に強調してい

る。同時に生産効率を高め、汚染を減少するために必要な、先進的分解工程技術と設備の

導入を奨励する。

3.意見を統一して、サービスを強化する

寧波市リサイクル工業団地は、寧波市鎮海区人民政府の指導のもと、環境保全、税関、国

検、公安、港、工商、国税局、地方税局、対外貿易、企画、都市建設、土地管理等の部門

で構成された管理委員会を置き、人民政府の区長が主任委員を務める。各関係部門の間を

うまく調整して、困難を解決し、工業団地の発展を扶助する。日常事務は、政府経済部門

(購買販売協同組合)から成る工業団地開発有限会社で処理する。工業団地管理委員会と

開発会社は、一方ではあらゆる方法を尽くして経営者のためにサービスを改善し、ゆった

りした経営環境を提供する。もう一方では監督管理を強化し、日常の検査監督業務を行う。

不合格な再生資源が混り込むことで、環境汚染が発生するのを未然に防止する。

工業団地管理者は必ず国家の輸入廃棄物関係の政策を熟知し、税関、国検、環境保全等

の部門と常に連絡を取り、機を逸せず廃棄物輸入の新しい動向を把握する。常に経営者に

国の関係政策・法規を広報し、規則に従い、法律を守って、合法な経営をするよう教育す

る。

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四、リサイクル工業団地建設に対する提案

以上まとめると、我が国の再生資源加工利用業界の発展現状から、管理強化のもとでこ

の業界を団地方式で管理することは、必要かつ実行可能であると考える。ただし、以下の

点を堅持することが必要である。

1.工業団地の土地の選定には合理性が必要で、港に近隣することは必須である。交通の

利便性、耕地の占用量を最小限にする。住宅地域から遠く離れた場所で、行政施設との一

元化が必要である。

2.工業団地には環境保全措置を必ず講じなければならない。長期的な視点で見た地方の

環境保全による利益を犠牲にして、近視眼的に加工工業団地による利益を取ることは絶対

避けるべきである。再生資源としての廃棄物原料の管理に対する環保総局の改革措置に協

力し、斬新な「団地式」管理方式を健全化させ、環境管理において新しい構想を探求する。

これによって再生資源加工利用業界の持続発展の実現を促進する。

3.再生資源加工団地は必ず高水準で、他の工業団地と同じように科学的な計画と合理的な

設計でイメージと品格アップを図る必要がある。社会の人々の再生資源加工利用業界に対

する印象を改善する。

4.国内での工業団地の配置・分布は合理的に行われなければならない。各地での必要以上

の投資による浪費を避けるべきである。再生資源加工利用団地の建設については投資額が

大きく、回収期間も長いため、団地の建設は単純な経済利益を追求するだけではなく、社

会的効果と利益も加味した上で注意を払うべきである。そうしなければ悪循環を起こし、

逆効果になってしまう。今後の発展に目をつけて、鎮海区人民政府が開発された工業団地

の投資額は 3.2 億元であり、投資回収期間は15 年に決められた。隔離と密閉管理するた

めにはまず境界をなす堀(河)を掘らなければならない。それだけでも 1,660 万元が計上

され、総面積の 33%の緑化にも 1,850 万元も必要になる。その他、道路の修築、供水、電

力の供給、雨水の排出、汚水輸送システム等の基礎設備もすべて大量な資金を投入する必

要がある。

5.我々は国家の関係部門に対し、工業団地の発展に政策上の配慮と適切な再生利用資源の

輸入許可品目(例えば車の Aプレス等)の増加を懇願した。同時に、例えば廃車や廃家電

のリサイクル等、今後国内の再利用可能資源の分解加工が増加することを想定し、受け入

れの準備も行う予定である。

国家が再生資源加工利用業界に対する管理整備によりリサイクル工業団地は益々の優勢

と重要な役割を演じるであろう。社会の各層及び同業者の支持のもと、再生資源加工利用

業界は健康持続な発展を遂げて行くであろうと確信する。

著者紹介

胡明杰 寧波市鎮海区人民政府リサイクル工業団地管理委員会常務副主任、寧波リサイク

ル工業団地開発有限会社理事長。寧波市鎮海区購買販売協同組合主任。2003 年 3月寧波市

12 期人民代表大会代表、寧波市鎮海区第 7期政治協商議会委員

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