第1章 理念・目的・教育目標 1. 大学の理念・目的 大学の理念 ......第1 章...

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1 章 全学 第 1 章 理念・目的・教育目標 1. 大学の理念・目的 大学の理念・目的・教育目標とそれに伴う人材養成等の目的の適切性、並びにその達成状況につ いて(項目№1[現状] 東海大学は、創立者松前重義の教育に対する情熱と理想を基に創設されたもので、身体を鍛え、知 能を磨くとともに、人間、社会、自然、歴史、世界等に対する幅広い視野をもって、一人ひとりが人 生の基盤となる思想を培い、人生の意義について共に考えつつ希望の星に向かって生きていくという 創立者の「建学の精神」を受け継ぎ、明日の歴史を担う強い使命感と豊かな人間性をもった人材を育 てることにより、「調和のとれた文明社会を建設する」という考えを理念としている。(詳細について は序章を参照) 本学は、湘南・代々木・清水・沼津・伊勢原の 5 つの校舎に、人文・社会・自然科学のあらゆる学 問領域にわたる 13 学部 68 学科・専攻・課程を、大学院に 12 研究科 44 専攻を擁する総合大学で、知 識や技術の単なる修得にとどまらず、ヒューマニズムに立脚した教養を重視し、人生の基礎となる確 かな思想を身につけ、豊かな人間性を培うことを教育の指針としている。 [点検・評価(長所と問題点)] 次に示す評価の視点および項目に沿って、評価を行った。 1) 目標:本学の理念・目的・教育目標を明確に示し、その充実向上に努めること。 2) 評価の視点および評価項目 a 理念・目的は、本来あるべき「大学」として適切妥当か。またその中に、教育研究に関わる基 本方針が明示されているか。 b 個性・特徴が理念・目的に反映されているか。 c 理念・目的が公的刊行物等で明確にされているか。 d 理念・目的の実現に向けて改善・改革の努力がなされているか。 3) 評価 a 現状で述べたように、大学基準協会の定める「大学は、高度の教育機関として、また学術研究 の中心機関として、学問の自由を基礎に、有為な人材を育成し学問の進歩と社会の発展に貢献 するという使命を担っている。」という大学基準の要件を充たしている。また、教育研究に関 わる基本方針も明碓に示されている。 b 知識や技術の単なる修得にとどまらず、ヒューマニズムに立脚した教養を重視し、人生の基礎 となる確かな思想を身につけ、豊かな人間性を培う全人教育が大きな特徴であり、個性・特徴 が理念・目的に反映されている。 c 東海大学学則、大学院要項、東海大学教育研究年報、授業要覧、東海大学ホームページ等に、 建学の精神、理念・目的・教育目標について明示されている。 d 建学の精神を具現化した全学生必修の授業科目「現代文明論」において、国際化・情報化時代 に求められる幅広い視野と総合的な判断力を培うよう工夫しているほか、半年ごとに授業が完 結する半期型の単位修得制度「セメスター制度」をはじめ、年間の授業計画「シラバス」の提 示、独自の授業評価システムを導入するなど常に時代の先を見据えた教育・研究システムの改 革を進めている。 [将来の改善に向けた方策] 理念・目標が、優れたものであっても、時代の変化に即応できなければ、直ぐに色褪せたものとな ってしまう恐れがある。従って、常に柔軟な発想と対応がとれるような大学の運営を心掛けなければ ならない。 7

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第 1 章 全学

第1章 理念・目的・教育目標

1. 大学の理念・目的 大学の理念・目的・教育目標とそれに伴う人材養成等の目的の適切性、並びにその達成状況につ

いて(項目№1) [現状] 東海大学は、創立者松前重義の教育に対する情熱と理想を基に創設されたもので、身体を鍛え、知

能を磨くとともに、人間、社会、自然、歴史、世界等に対する幅広い視野をもって、一人ひとりが人

生の基盤となる思想を培い、人生の意義について共に考えつつ希望の星に向かって生きていくという

創立者の「建学の精神」を受け継ぎ、明日の歴史を担う強い使命感と豊かな人間性をもった人材を育

てることにより、「調和のとれた文明社会を建設する」という考えを理念としている。(詳細について

は序章を参照) 本学は、湘南・代々木・清水・沼津・伊勢原の 5 つの校舎に、人文・社会・自然科学のあらゆる学

問領域にわたる 13 学部 68 学科・専攻・課程を、大学院に 12 研究科 44 専攻を擁する総合大学で、知

識や技術の単なる修得にとどまらず、ヒューマニズムに立脚した教養を重視し、人生の基礎となる確

かな思想を身につけ、豊かな人間性を培うことを教育の指針としている。 [点検・評価(長所と問題点)] 次に示す評価の視点および項目に沿って、評価を行った。 1) 目標:本学の理念・目的・教育目標を明確に示し、その充実向上に努めること。 2) 評価の視点および評価項目

a 理念・目的は、本来あるべき「大学」として適切妥当か。またその中に、教育研究に関わる基

本方針が明示されているか。 b 個性・特徴が理念・目的に反映されているか。 c 理念・目的が公的刊行物等で明確にされているか。 d 理念・目的の実現に向けて改善・改革の努力がなされているか。

3) 評価 a 現状で述べたように、大学基準協会の定める「大学は、高度の教育機関として、また学術研究

の中心機関として、学問の自由を基礎に、有為な人材を育成し学問の進歩と社会の発展に貢献

するという使命を担っている。」という大学基準の要件を充たしている。また、教育研究に関

わる基本方針も明碓に示されている。 b 知識や技術の単なる修得にとどまらず、ヒューマニズムに立脚した教養を重視し、人生の基礎

となる確かな思想を身につけ、豊かな人間性を培う全人教育が大きな特徴であり、個性・特徴

が理念・目的に反映されている。 c 東海大学学則、大学院要項、東海大学教育研究年報、授業要覧、東海大学ホームページ等に、

建学の精神、理念・目的・教育目標について明示されている。 d 建学の精神を具現化した全学生必修の授業科目「現代文明論」において、国際化・情報化時代

に求められる幅広い視野と総合的な判断力を培うよう工夫しているほか、半年ごとに授業が完

結する半期型の単位修得制度「セメスター制度」をはじめ、年間の授業計画「シラバス」の提

示、独自の授業評価システムを導入するなど常に時代の先を見据えた教育・研究システムの改

革を進めている。 [将来の改善に向けた方策] 理念・目標が、優れたものであっても、時代の変化に即応できなければ、直ぐに色褪せたものとな

ってしまう恐れがある。従って、常に柔軟な発想と対応がとれるような大学の運営を心掛けなければ

ならない。

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第 1 章 文学部

【文学部】

2. 学部・センターの理念・目的・教育目標 学部・センターの理念・目的・教育目標とそれに伴う人材養成等の目的の適切性、並びにその達

成状況について(項目No.3) 〔現状〕 文学部は「人類の叡智を糧に豊かな発想を培い、現代社会に的確に対応し、未来を切り開く人材の育

成を教育目標として掲げ、学生一人一人の多様で斬新な発想とアイデアの結晶化を促すことをめざし、

ひいては時代を変革してゆく原動力としての新たな社会観、世界観の創造に貢献すること」(学部ホー

ムページより)を教育理念としている。 〔点検・評価(長所と問題点)〕 学部の教育理念と教育目標は、東海大学の教育理念に基づくものであり、もちろん学校教育法第 52条の趣旨と整合するものである。また、現状の理念と目標は文学部の教育体系の特徴にも合致してい

る。学部の教育理念と教育目標は、学部ホームページに掲げられて学部の教職員および学生の共通認

識となっており、特に問題にすべき点はないと判断する。 〔将来の改善に向けた方策〕 理念とは物ごとのあるべき状態についての基本的な考えを示したものであり、簡単に変えるべきも

のではない。文学部は 2001 年に改組し、各学科・専攻の協力のもとに理念の具現化をめざしている。

大事なことは、文学部の理念をより積極的に周知させ、学生・教職員の共通認識とし、学生・教職員

の相互協力のもとで、理念の実現をめざして教育現場における改善を積極的に重ねてゆくことである

と考える。

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第 1 章 政治経済学部

【政治経済学部】

2. 学部の理念・目的・教育目標 学部・センターの理念・目的・教育目標とそれに伴う人材養成等の目的の適切性、並びにその達

成状況について (項目№3) 〔現状〕 本学部は発足当初から、人間・自然・社会の共生という建学の精神に則り、科学的手法による社会

科学の研究・教育の理念を掲げてきた。現在もその趣旨に沿って教育・研究活動を行っている。教育

目標としては、世界の政治・経済・経営の諸事象を科学的に探求し、それらに立脚して政策提言ので

きるような人材の養成である。しかも、上記の建学の理念に照らせば、そうした科学的な精神(「冷静

な頭脳」)と人間愛(「温かい心」)を兼ね備えた卒業生を輩出し、もって日本および世界人類のために

貢献しうることは、本学部の重要な使命とも言える。この理念・目的は当然、学校教育法第 52 条に

合致している。 さらに、大学の個性との関連で言えば、本学は、理工系の大学として発足し、その後逐次文系学部

を加えて現在に至っているが、その学生数の比率は文:理が約 4:6 であり、総合大学としてはきわ

めて稀な存在であると言えよう。しかも、全学必修の科目「現代文明論」に象徴されるように、元来

「文理融合」を掲げてきた歴史があり、こうした実践は上記の人間・自然・社会の共生という建学の理

念の具現化に寄与しており、本学部の人材養成方針とも合致しているのである。 こうした理念・目的は本学発行の入試文書等において広く周知せられていると考える。さらに、2001年度から導入された新カリキュラムにおいては、文理融合の一層の展開を図るべく、2 つの改良を行

っている。すなわち、第 1 は必修の「現代教養科目」として、政治経済学部の学生は理系科目を 2 科

目修得しなければならないようにしたこと、第 2 に「副専攻」として、他のいかなる学科の専門科目

も 20 単位まで卒業要件として認めたことである。これらの改善によって、学部の掲げている理念の

一層の実現が望まれる。 〔点検・評価(長所と問題点)〕 学部創設以来、ダイナミックに変化してきている世界の政治・経済環境を科学的に研究し、かつ政

策提言をしうることを目標に活動を行ってきたし、教育の面では、専門的知識・技法の修得のために

それぞれの教員を配置し、その教育に務めてきた。建学の理念に沿った「冷静な頭脳と温かい心」を

持った人材を養成すべくゼミナールなどできめ細かい指導を重ねてきている。また、今日の情報化社

会の到来を見越して、それに対処すべく、学生に情報処理能力をつけることを企画すると同時に、本

学部の入学者全員にパーソナルコンピュータを配布し、情報処理教育を実践してきた。しかし加速度

的に増してきた情報化、グローバリゼーション、そして環境の悪化等に目を向けたとき、それらに対

処して問題解決の提案をする人材を育てるためには現在の教育システムでは必ずしも充分ではない。

第 1 に専門知識の修得と同時に広い視野の獲得が望まれ、しかもそれに立脚して自らの考えを表明す

る能力が必要である。第 2 に、情報処理能力の一層の強化が要求される。そして第 3 に、有資源を用

いて人類が生き延びていくためには、さまざまな面で高い倫理性が求められる。これらを、本学部独

自の方法で研究・教育することは緊急の課題であろう。 〔将来の改善・改革に向けた方策〕 上記のように、課題として挙げたことを今後改善していかなければならない。専門的知識の涵養に

関しては、各学科のカリキュラムをその授業における工夫をも含めて 2005 年度に向けて見直すこと

が必要である。視野の拡大の点では、一方で大学全体の 2001 年度からの新カリキュラムに沿った「現

代教養科目」による文理融合の強化と「副専攻」の奨励、他方では実践との連携の点で考えたい。今

年度は学部 3 学科の学生に対して「野村證券提供講座」を開講したが、そこでは実践家による経済・

経営の情報が伝えられた。また、政治学科は近隣自治体の協力で行政実習を行ってきているが、他の

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第 1 章 政治経済学部

2 学科についても、インターンシップを組織化することが必要であろう。さらに、従来のともすれば

3 学科の縦割り的並存から、3 学科間の有機的連携への道も探らなければならない。これはカリキュ

ラムの面と研究面の双方で考えなければならない。教育面ではいわば「政治経済経営科目」を新設し

て必修とし、研究面では、むしろこうした科目を念頭においた政治経済学部独自の研究テーマを模索

することも必要であろう。学生のプレゼンテーション能力の強化は、今後の世界で真に重要であろう

と考えるので、そのための施策を行いつつある。今年度、学部内に対面式-階段式のディベート・ル

ームを設置し、ここでそうした訓練を始める。情報処理に関しては、従来の方法を見直して、新たな

視点に立って考えたい。

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第 1 章 法学部

【法学部】

2. 学部の理念・目的、教育目標 学部の理念・目的、教育目標とそれに伴う人材養成等の目的の適切性、並びにその達成状況につ

いて(項目№3) 〔現状〕 本学部は、総合大学としての東海大学の特徴を生かして、隣接諸科学との連携を重視した法学部で

あることを目指している。法学教育は、ややもすれば形式的な法の解釈と運用に追われ、法の体系の

中に埋没し、法に関わる様々な隣接諸科学との連携を軽視しがちであるが、多くの情報が氾濫し、価

値観が多様化している現代社会において、とりわけ、多感な精神的成長期にある若者にとっては、自

分の専門を相対化し、その上でそれを強力なものにできる広い視野をもつことが必要だからである。 法を学ぶことは、法の理念と正義を学び、変化してやまない複雑な社会に発生する諸問題を法的思

考(リーガルマインド)に基づいて解決する能力を身に付けることである。IT 化、個人情報の保護、

医療技術の進歩、民事紛争の国際化等々、かつての法学が予期しなかった新たな法律問題が日々生じ

ている。こうした新しい問題に、他の社会科学その他の隣接諸科学との連携・協力の下に鋭い切り口

で迫る法的思考を学生に身につけさせることが本学法学部の最も大事な教育目標である。 また、本学部は国際性を重視した法学教育をも目指している。人、物、資本、サービスの国境を越

えた自由移動により、そしてインターネットの未曾有の発達により法的紛争も国際化しつつある現在、

その解決のためには、法的思考も国際的感覚を身につけたものでなければならない。もちろん法学教

育の国際化は、単に教員や学生の人的交流に留まるのではなく、教育カリキュラム内容自体について

検討がなされねばならないことを自覚している。 これらの教育目標を達成するために、本学部では学生の個々のニーズに応じた、個性ある教育を実

施すべく、以下の三つのコースに即して、学生が自分に適した学習計画をたてられるように、推奨科

目を明示している。 <法職コース> 各種法律専門職や国家・地方公務員などを目指す学生にとって便宜であろうと思われる開講科目を

推奨してある。 <国際コース> 外国の法文化、国際機関に関する基本的知識のみならず、国際的センスを身につけて実業界で活躍

できる人材の育成に必要と思われる開講科目を推奨してある。 <経営法コース> 一般企業において、実践性のある法律知識を生かして活躍することを目ざす学生に便宜と思われる

開講科目を推奨してある。 〔点検・評価(長所と問題点)〕

1) 上記「理念・目的」は本来あるべき「大学」として適切・妥当か。 現代日本にあって「あるべき大学」は、最高学府として学問を追究する一方、それを通じて、可能

な限り多くの市民に高度の知的訓練を施し、グローバル化した社会の各分野における中堅的担い手を

育成する教育機関である。その中で、「在るべき法学部」は、社会において法の果たす役割に対する深

い認識に基づいて、法制度全体を見渡しながら具体的な問題を解決する能力を備えた有為な人材を官

公庁、法曹界、経済界に輩出することを目的とした機関である。 本学部は、1986 年の創立以来、上記の理念・目的を掲げて教育を実践してきたが、それは、まさに

この「在るべき大学」「在るべき法学部」の理念・目的としてふさわしいものと自負している。 2) 上記「理念・目的」の中に、その教育研究に関わる基本方針、教育を通じた人材育成に関わる

基本方針が明示されているか。 本学部は、学問はただそれ自体を追求するだけでは社会的に有意味ではなく、その営為を通じて、

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第1章 法学部

そして、その成果を広範な市民に還元する教育を通じてこそ意味を持ち得る、との信念の下に、上記

「理念・目的」を掲げてきた。法学教育を通じて、社会の安定運行を可能にする多数の水先案内人を

育成し輩出することこそ本学部の存在意義と考えているからである。 3) 上記「理念・目的」は、学校教育法第 52 条の趣旨と整合しているか。

学校教育法第 52 条は、「大学は、学術の中心として、広く知識を授けるとともに、深く専門の学芸

を教授研究し、知的、道徳的及び応用的能力を展開させることを目的とする」と規定している。 本学部は、その「理念・目的」に謳ったように、総合大学としての特徴を生かし、隣接諸科学との

連携を重視して広く知識を授けつつ、専門の法律学を学習させ、しっかりした正義観と共感能力を基

礎に、新しい法的諸問題に柔軟に対応できる人材の育成に努めてきた。この規定の趣旨とまさに整合

した目的を追求してきたといえよう。 4) 上記「理念・目的」に大学の個性・目的が反映されているか。

本学の校旗は「愛と正義が交わるところに真理あり」との、創立者の思想を表している。3)で述べ

たように、本学部の「理念・目的」はこの、校旗に象徴された本学の建学の思想を文字通り体現して

いると言ってよい。 5) 上記「理念・目的」は公的刊行物などで明確にされているか。

上記「理念・目的」は本学部が開設しているホームページで明示してはいるものの、いわゆる「学

科パンフレット」や「進学ガイド Perfect」では、学部学科のより具体的な特徴のアッピールに重点

が置かれているため、必ずしも明確には示されていない。 6) 上記「理念・目的」の実現に向けて改善・改革の努力がなされているか。

2004 年度の法科大学院設立に合わせて、本学部も全面的なカリキュラムの見なおしに着手したとこ

ろである。その中で、当然、学部発足以来掲げてきた上記「理念・目的」の妥当性は議論の中心とな

った。新時代に通用する法学部とはどのようなものでなければならないか、を十分に検討した結果、

我々は基本的にこの「理念・目的」は維持されるべきであるとの一応の結論に達した。しかし、それ

を実現するための教育体制、教育カリキュラムは、全面的に見なおし、直接的な法曹養成という呪縛

から解き放たれた純粋な目的達成のための、無駄のない教育プログラムを現在鋭意検討中である。 〔将来の改善に向けた方策〕 上記 6)で述べたように、法科大学院時代の法学部への脱皮のために、「理念・目的」のより純化さ

れた実現を図る作業は現在進行中である。さらに、これまで、それほど重視してこなかった広報につ

いても多いに意を用い、在学生、同窓生、そして受験生諸君に本学部の教育理念を理解してもらうこ

とにしたい。

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第1章 教養学部

【教養学部】

2. 教養学部の理念・目的・教育目標 学部・センターの理念・目的・教育目標とそれに伴う人材養成等の目的の適切性、並びにその達

成状況について(項目№3) 「現状」 本学部は、自然、社会、人文科学から特色ある専門分野を配し、総合大学ならではの独自な学際的

性格をもっている。そして、実際の人間生活と掛け離れぬところで各専門を学び、それを背景にして

あらゆる分野に活躍でき得るゼネラリストの育成を目指している。 人間を取り巻く環境、人間の内面表出の創造と表現、そして地球上の各地域における人間社会とい

った各専門の問題点を切り口として、人間を総合的に探求する学部ということができる。 人間環境学科では 2001 年度に名称変更して、その前年度よりカリキュラムにおいて人間環境領域

を設置し、自然と社会科学の両面から総合的に環境問題を追求している。芸術学科では音楽、美術、

デザインの各専門性の深化を、実技と学問との総合化の中で行っている。国際学科では、人間の安全

保障を主軸にして国際社会に必要な次世代の人材を育てるべく、国際政治・経済、国際協力、国際文

化などの視点から総合的に探究している。 「点検・評価(長所と問題点)」 目標実現のため、以下のような取り組みの評価の視点および項目を設定して評価を行った。

1) 目標:教養学部独自の総合的な特色が学内外から積極的に理解されること。 2) 評価の視点および項目

a 学外からの理解と端的な評価として、ここ数年の志願者動向はどうであるか。 b 各教員は、学部の理念にそって研究・教育を行っているか。 c 組織とカリキュラムは、学部の理念を具現化しているか。 d 学生は学部の理念を理解し、特色を活かして学習しているか。

3) 評価 a 過去 3 年間の一般入試における志願者の推移は、2000 年度 1174 名、2001 年度 1206 名、2002年度 1208 名と 18 才人口の減少にも関わらず、倍率 3 倍程度の範囲で増大傾向にあり評価はで

きる。 b 各教員の研究・教育において、全般に渡って学部の特色が反映された総合的な活動が行われて

いる訳ではなく、2001 年度学部研究費助成された専門分野を超えた共同研究も 2 件に過ぎな

い。外部へ説得力のある学部・学科の活動を、一層推進する必要がある。 c 2001 年度の新カリキュラムにて現時点での各学科の体制が整ったが、完成年度の 2004 年度に

向けて改めて各専門性と総合性のバランスを図る必要性がある。 d 人間環境学科の人間環境領域設置や芸術、国際学科の履修モデルとしてのコース表示などによ

って、特色を活かし多角的に学習範囲を拡げる学生もいるが、残念ながら全般的とは言い難い。

そうした中で国際学科では外部語学力試験による客観的評価なども実施し、卒業生に国際公務

員も輩出している。卒業後の就職先は専門分野に限定されずに広範囲に渡っており、学部の特

色が反映されている面は見られるが、今後は環境問題、芸術制作、国際公務などのより特化さ

れた総合的専門性を持った人材を多く輩出することも望まれる。 「将来への改善・改革に向けた方策」 現在改善へ向けて各学科の教育目標、カリキュラム等の内容が、学部としての整合性をもってより

わかりやすく明示されるよう検討を続けている。学部教員の教育目標への意思統一、特色をより鮮明

にするカリキュラム、そして学生の特色への理解を促し動機付けなどの実現の為、学部長と専任教員

全員との個別面談、主任教授会を中心とした改革協議、研究活動の促進、学部共通主専攻科目の改革、

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第 1 章 教養学部

広報活動の積極的展開などに取り組んでいる。 各学科でもそれぞれの学科会議を中心に、人間環境学科では人間環境領域運営会議、将来構想委員

会、芸術学科では学科改革委員会、国際学科でも学科改革委員会を別途設置して各々将来への改善・

改革に向けた対策に専心している。

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第 1 章 体育学部

【体育学部】 2. 学部の理念・目的・教育目標 学部の理念・目的・教育目標とそれに伴う人材養成等の目的の適切性、並びにその達成状況につ

いて(項目No.3) 〔現状〕 東海大学は建学の精神を基本理念として、歴史観、世界観、人生観を培い、社会に対する強い使命

感と豊かな人間性を備えた人材の育成を教育の目標に掲げている。体育学部では、学部の特色を生か

しながら大学の目標を実現すべく、以下のような教育目標を掲げている。 1) 教育や社会活動の場で優れた指導力を発揮する人材の育成 2) 学際的研究領域に立って体育・スポーツの近代化を目指す人材の育成 3) 強い精神力、卓越した肉体、高度な競技力の練磨・向上に全力を注ぎ、自らの潜在能力を開発

できる人材の育成 4) 国際性豊かな教養と視野を身につけ、世界平和に貢献できる人材の育成

体育学部では上記の学部教育目標が達成できているかを検討し、必要であれば改善策を提案する役

割は、学部将来構想委員会が担っている。そこでは、学部の教育理念や目的とそれに伴う人材育成の

成果などについて検討・検証するだけでなく、改組改編や人事構想をも視野に入れた学部の将来に関

わる事項について検討している。 〔点検・評価(長所と問題点)〕 目標の実現に向けた取り組みを評価の視点および項目を設定して評価を行った。以下に示す。 1) 目標:学部の理念・目的教育目標とそれに伴う人材養成等の目的の明確化と適切化を図り、そ

れらを達成する。 2) 評価の視点及び項目:

a 大学の個性・特徴が学部の教育目的に反映されているか。 b 東海大学ガイドブック、学科案内パンフレット、大学のホームページなどに学部の教育目標や

方針が明示されているか。 c 人材育成の達成状況は明確か。 d 理念・目的の実現に向けての改善・改革のための自己点検・評価方法は整備され、機能してい

るか。 3) 評価

a 大学の教育目標や方針に従い、体育学部の教育目標を設定していることは、上記の学部の教育

目標からも推察でき、整合性があると言える。 b 体育学部の教育目標は、東海大学ガイドブック、学科案内パンフレット、大学のホームページ

などに掲載しているので、明確になっていると考える。 c 人材育成の達成度は、卒業の合格率(卒業予定者数に対する合格者の割合)で推察できる。他

学部の合格率が 70%から 80%台が多いのに対し、体育学部は 90%以上の合格率を示している

ので、大学内で比較した場合一応の成果を得ていると言える。ただ、体育学部の閾値が低けれ

ば合格率は高くなるので、より詳細な検討・点検が必要だと考える。 d 学部では点検評価項目に応じて担当者を決め、点検・報告することになっている。点検結果は

学部評価委員会に報告され、学部評価委員会で再度点検することになる。本年 2002 年度は点

検項目や点検基準を学部で議論し、統一案を提示するまでには至っていない。現在は学部将来

構想委員会が、学部の理念・目的及びそれに伴う人材育成の目的と方法が適切か、学部に必要

な人材は確保できているかなど、学部の将来に関わる事項について検討している。検討した議

事録は教授会で公表し、その説明をすることにより学部の教員全員への周知徹底を図っている。 ア

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第 1 章 体育学部

〔将来の改善に向けた方策〕 学部の理念・教育目標をより確実に実現すべく、2004 年度を目処に学部の改組改編を準備している。

2002 年度 7 月の教授会で 5 学科、9 コースの 2 学科増設案が提案され了承された。同時に改組改編プ

ロジェクト委員会が発足し、学部の名称変更や教育目標に沿った学科の増設、カリキュラム内容の検

討などにあたっている。具体的には、現在の体育学科を体育学に関わる研究・教育を学ぶ体育学科と、

競技力の向上を主題とする競技スポーツ学科(ともに仮称)に分け、学生募集の段階から人材育成の

方向性を明確にする計画である。また、社会体育学科を生涯スポーツ学科とスポーツ&レジャー・マ

ネジメント学科(仮称)に分け、生涯スポーツの指導者とスポーツやレジャーの経営・管理に関わる

人材の育成を目指す予定である。 このように、体育学部では学部の理念・教育目標をより明確にするため、改組改編をも含めた改革を

進めている。全国体育系大学の動向を考慮し、学部受験生や就職先のニーズに対応する上でも、必要

な改革であると考える。 学部の特徴ある人材の養成が達成できたかを検証するには、学部で養成した人材が社会で充分に貢

献できているかを検証して初めて、教育の目的・方法・成果を確認できる。今後は卒業学生の就職先

におけるアンケートを実施し、学部の人材育成の基礎にしたいと考えている。 また、人材養成の達成度を点検評価するための点検項目や点検方法などを検討し、点検システムが

学部の方針や目的の決定に示唆できるものにしたいと考える。

16

Page 11: 第1章 理念・目的・教育目標 1. 大学の理念・目的 大学の理念 ......第1 章 文学部 【文学部】 2. 学部・センターの理念・目的・教育目標

第 1 章 理学部

【理学部】

2. 学部の理念・目的・教育目標 学部の理念・目的・教育目標とそれに伴う人材育成等の目的の適切性、ならびにその達成状況に

ついて(項目No.3) 〔現状〕 【理学部】 理学部は、1964 年に数学科・物理学科・化学科の 3 学科で発足した。その後、1974 年に情報数理

学科が増設され、1984 年に基礎教育研究室が開設され、現在に至っている。理学部の設立の理念は、

本学理工系の学問の基盤を支え、さらに、全学理工系の基礎教育を担当する本学独自のシステムを実

現することである。この理念は現在に継承され、実行されている。 数学・物理学・化学は学問としての歴史も古く、人間の思索に大きな転換を与え、今日の科学技術

文明の基礎を形成する。また、情報化社会で情報科学の果たす役割の大きさは論を待たない。理学部

は、数学・情報科学・物理学・化学の基礎および応用の研究と教育を行い、現代科学の課題に取り組

み、科学の進歩・人類の福祉に貢献する。 平和、産業、経済、環境等すべてに地球規模での設計が必要となった現在、自然科学の基礎を学び

研究する学生には 自由な精神のもとに研究心を持ち続ける、 異なる学問分野や異なる文化を理解できる、 広い視野に立ち人類の進むべき方向を絶えず模索する、

ことが要求される。本学部はこれらの要求に応えることができる人材を育成する。学生の専門分野で

の基礎学力を充実させ、自ら問題を発見し解決できると共に、特定の専門分野に閉ざされず豊かな教

養と人間性に培われた人材を育成する。 これらの目標の達成に向けて、次のような教育方針を採る。

1) 自ら問題を見つけ解決することが可能な教育システムを構築し、カリキユラムの編成に当って

は、学生が自らの意志で授業を選択できるよう選択科目を多くする。選択科目は、他学部・他

学科の科目を履修してもよく、異なる学問分野を体験する機会を設ける。 2) 実験・演習・卒業研究等で教員と学生が直接ふれあう機会を設け、単なる知識教育に止まらず、

人間教育を重視する。 3) 社会の情報化に対応するため、授業や実験に情報処理による支援を取り入れ、情報処理そのも

のの教育にも積極的に取り組む。 4) 現代文明論は本学における建学の精神の根幹を表す授業科目であり、さまざまな授業メニュー

が用意されている。これらの科目を通して、幅広い視野を有し豊かな人間性を備えた人材を育

てる。 5) 国際性豊かな人材を育成するため語学を重視する。 6) 本学の特徴として、理工系学部学科の数学・物理学・化学・情報処理に関する基礎教育を理学

部が担当している。理学部の教員はこれらの教育にあたり、各学部・学科の特質を考慮して十

分な基礎教育を行うように努める。また、全学部全学科に共通して、コンピュータを利用した

CAI 科目を開講し、文系の学生にも十分理解できる基礎の自然科学を教える。 本学部の理念・目的の達成状況を述べる。過去 9 年間の卒業生の進路状況は、下表の通りである。

就職希望者の中での就職決定者の割合は 90%前後であり、最近は、大学院への進学者数が増加してい

る。

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Page 12: 第1章 理念・目的・教育目標 1. 大学の理念・目的 大学の理念 ......第1 章 文学部 【文学部】 2. 学部・センターの理念・目的・教育目標

第1章 理学部

1993 1994 1995 1996 1997 1998 1999 2000 2001 合計381 379 331 345 378 340 328 319 372 3173301 287 248 277 313 237 213 203 238 2317288 259 230 250 281 210 181 197 221 211795.7 90.2 92.7 90.3 89.8 88.6 85 97 97.9 91.4

一般会社 267 240 215 239 274 202 175 189 206 2007公務員 7 8 7 3 4 7 2 6 2 4公庫・公団 1 0 0 0 0 0 0 0 0教員 13 11 8 8 3 1 4 2 13 6

2 7 4 3 3 1 1 2 2 238 34 38 35 29 49 46 54 60 38353 79 59 57 65 80 100 66 89 648その他

6135

卒業年度

理学部

卒業者数就職希望者数就職決定者数就職決定率(%)

卒業者内訳

就職者内訳

自営進学

本学部の教育・研究の達成状況については、本報告書を参照されたい。また、工学部・電子情報学

部等の理工系基礎教育には、各学科と基礎教育研究室が一丸となって取り組んでいる。詳細は、本報

告書の項目 No.6 を参照されたい。 〔点検・評価(長所と問題点)〕 【理学部】 1)理念・目的の中に教育研究に関わる基本方針、人材育成に関わる基本方針が明示されているか、 2)理念・目的は、学校教育法第 52 条の趣旨と整合しているか、 3)大学の個性・特徴が理念・目的に反映されているか、 4)理念・目的が公的刊行物等で明確にされているか、 5)理念・目的の実現に向けて改善・改革の努力がなされているか、 6)理念・目的の達成状況はどうか、 を視点として点検・評価する。

1) 理学部の教育研究方針は、数学・情報科学・物理学・化学の基礎と応用の研究と教育であるこ

とが明示されている。また、人材育成の基本方針は、学生の専門分野における基礎学力を充実

させ自ら問題を発見し解決できる人材の育成であること、特定の専門分野に閉ざされず豊かな

教養と人間性に培われた人材を育成することであることが明示されている。 2) 1)で述べた理学部の理念・目的は、学校教育法第 52 条の趣旨に整合している。 3) 東海大学の教育方針は、知識や技術の単なる修得にとどまらず、ヒューマニズムに立脚した教

養を重視し、人生の基礎となる確かな思想を身につけ、豊かな人間性を培うことである。理学

部の理念・目的には、大学の理念・目的が反映されている。また、理工系学部の基礎教育を理

学部が担っていることは、本学の特徴の反映であると評価できる。 4) 理念・目的は、授業要覧、学科案内パンフレット等で明確にされている。 5) 1997 年度および 2001 年度にカリキュラム改訂を行った。1997 年度にはセメスター制度を取

り入れ、学生の学修動機の多様化に対応して科目選択の自由度を広げ、学生が履修を自己設計

できるようにカリキュラムを編成した。また、週 2 回授業を行うことで、授業の密度を高め学

修効果の増大を図った。2001 年度には、東海大学型リベラルアーツ教育の方針の下、専門教育

において基礎を重視したカリキュラムを編成し、特に高校から大学への接続に十分配慮した科

目を設けた。また、現代市民としてもつべき知識体系を備えた人材育成のため、副専攻科目等

自由選択科目 30~32 単位を卒業要件とした。 カリキュラム改訂と並行して FD 活動の一環として組織的教育活動を行い、教育内容や授業

方法の改善に取り組んでいる。 また、今年度からは、教員の教育・研究・学内外活動の実績を認めこれらの活動に対する教

員の意欲と実績を高めることを目的として、総合的業績評価システムを構築している。研究業

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Page 13: 第1章 理念・目的・教育目標 1. 大学の理念・目的 大学の理念 ......第1 章 文学部 【文学部】 2. 学部・センターの理念・目的・教育目標

第 1 章 理学部

績に止まらず、教育業績、学内外活動業績をも業績評価に加えるものであり、教育業績の中に

は学生の授業アンケート結果を取り入れ教育改善を図っている。 これらは、学部の理念・目的の実現に向けた改善・改革であると評価できる。

6) 就職希望者の中での就職決定者の割合は 90%前後(過去 2 年間は 97~98%)であり、最近の

経済状況を見れば、良い方である。本学部の理念・目的が社会に認められている結果である。

大学院進学者が増加していることは、本学部の教育・研究の成果の現れである。一方で、進路

を決めかねている学生数も増加しており、進路指導を改善・強化する必要がある。 全学にわたる理工系基礎教育については、新入生の学力の多様化に対応して、教育内容・教

育方法を見直す必要がある。 〔将来の改善に向けた方策〕 【理学部】

1) 高等学校のカリキュラム変更に伴い、多様な学修歴をもった学生に対応した教育体制を構築す

る必要がある。特に、理学部が担当する工学部・電子情報学部の理工系基礎教育を見直す。 2) 社会が要求する専門性を身につけた人材の育成を目指して、大学院教育へ関連づけた学部教育

の取り組みを行う。 3) 進路指導体制を整備し、強化する。

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Page 14: 第1章 理念・目的・教育目標 1. 大学の理念・目的 大学の理念 ......第1 章 文学部 【文学部】 2. 学部・センターの理念・目的・教育目標

第 1 章 電子情報学部

【電子情報学部】

1. 学部の理念・目的・教育目標 (1) 学部・センターの理念・目的・教育目標とそれに伴う人材養成等の目的の適切性、並びにそ

の達成状況について(項目NO.3) [現状]

1) 本学部の理念・目的 本学部の理念および目的は「将来展望と社会的要請に応えるべく、情報に関する基礎科学から、コ

ンピュータのハードウェアとソフトウェア、および応用技術までを総合的に取り扱うことができ、か

つ人間の幅広い知的活動と自然環境を配慮した人間性豊かな社会の実現を目指す電子情報科学技術教

育を行う」となっている。これを噛み砕いて言うならば、広い知識を授けること、深い専門技術を教

授研究すること、そして人間性豊かな能力を開拓することを通して道徳的な人材を育成することであ

り、学校教育法第 52 条にも謳われているように、本来あるべき「大学」の姿をきちんと明示した適

切妥当な理念・目的となっている。 2) 本学部の理念・目的を具体化する教育目標 教育研究に係る本学部の教育目標の基本方針は「電子情報技術分野に共通の基礎学力の修得を重視

すると共に、高度の科学技術にも対応し得る専門知識を身に付けさせることが肝要である。また、単

なる専門知識だけでなく独創力の発揮を前提とした問題発見・解決能力、豊かな表現力、国内外におけ

る社会への順応性を兼ね備えた人材の育成」としている。このように、本学部では理念・目的を具体

化するために、教育を通じた人材養成を行っており、その養成内容は将来を展望し、かつ社会的要請

に応えられるように幅広い知識、高度な専門性そして学術の中心となるべきことを謳っている。これ

は学校教育法第 52 条の趣旨と十分に整合しており適切妥当であると言える。 3) 本学の個性・特徴との関係 本学部の理念・目的・教育目標を述べる大前提は、「本学の創設者である松前重義博士は、通信技

術者、また技官として逓信省(現総務省)で活躍された経験から、わが国は科学技術立国を目指すべき

であるとの考えと文理融合の教育の必要性を示した。この考えは日本という枠を越えて、21 世紀の地

球全体を視野に入れた思想に発展し、その受容性はますます大きくなっている。」に基づいている。こ

の本学創設者の考え方そのものが本学の個性・特徴を定義しているものである。この個性・特徴を本

学部の理念・目的の中では、次のように展開している。「今日の電子情報革命は、人間の知的活動の一

部を電子技術を駆使した機械に代行させているだけである。人間の知的活動の本質に迫る電子情報科

学技術の進展が望まれている。<中略>。以上述べたように、わが国が 21 世紀に於いても科学技術

立国として世界に貢献していくためには、科学技術と人間との係りを十分に認識し、省エネルギーや

リサイクル技術など自然環境に配慮した人間性豊かな社会の実現を目指し、将来にわたって科学技術

の成果について責任をとることができ、しかもますます多様化していく電子情報科学技術分野に携わ

る電子情報技術者の育成が必要不可欠である。」以上のように、本学の個性・特徴は本学部の理念・目

的の中に完全に反映していると言える。 4) 学部の理念・目的と学科の理念・目的との整合性 本学部には 7 つの学科がある。そして、各学科の理念・目的は本学部の理念・目的を継承しつつ、

さらに個々の専門分野の中でこれらを具体化した内容になっている。 各学科の理念・目的は次の通りである。 1) 情報科学科においては、「“人間と機械(コンピュータ)が相補的に機能を分担しながら環境に適

応して進化する人間味のある情報処理システム”の構築を目指し、骨太のエンジニアを世に輩

出することを念頭に教育・研究活動に邁進すること」となっている。 2) 情報メディア学科においては、「来るべき高度情報メディア社会の実現に貢献できる創造性豊

かで実務能力のある人材を育成すること」を目的とし、この目的達成に向けて、「情報メディ

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Page 15: 第1章 理念・目的・教育目標 1. 大学の理念・目的 大学の理念 ......第1 章 文学部 【文学部】 2. 学部・センターの理念・目的・教育目標

第 1 章 電子情報学部

アが社会に及ぼす影響を十分に理解し、情報メディアの応用・開発に携わる人間としての社会

的倫理観を持った上で、情報メディアに関する確固たる技術的思想をもち、豊かな創造性、優

れた研究能力および実務能力を持てるように教育する」こととなっている。 3) 経営システム工学科においては、「企業システムを戦略的な事業活動単位と認識するだけでな

く、人類の福祉に貢献するための社会的・文化的な活動体として認識することを前提に、生産

性の向上や効率の追及に加えて、人間の感性と合理性の統一、科学技術と人間社会の融合、さ

らには経済効率と自然環境の調和を目指す、新しい経営システム工学に関する研究とマネジメ

ントエンジニアの育成を行う」こととなっている。 4) コンピュータ応用工学科においては、社会、環境、産業システムなどあらゆる分野において根

幹をなす重要な技術としてコンピュータ応用技術を位置付け、さらにコンピュータを 21 世紀

における最強、最大のツールと位置付けた上で、「これからの高度情報化社会、高福祉化社会

の技術基盤として必要とされている、機械と人間の融合に関連したコンピュータの応用に関す

る学際的な学問・技術を掌握できる人材を育成する」こととなっている。 5) エレクトロニクス学科においては、地球環境の問題(温暖化、エネルギー消費、廃棄物等)の深

刻化していることを指摘した上で、「これらの問題解決に向けて、人間にやさしい電子情報媒

体製品を含むエレクトロニクス技術の革新(高集積化、高スピード化、低消費エネルギー化)を行う必要があること」。そのために、単に技術や知識の修得にとどまらず、科学技術立国を目

指した「人道主義・人格主義に基づいて、国際社会(人類社会)に貢献できる人材の養成すなわち

広い世界観・歴史観・人生観をもち、世界に通用する創造性豊かな科学技術者の育成を目指す」

こととなっている。 6) コミュニケーション工学科においては、21 世紀を担う創造性豊かな情報通信技術に携わる技術

者を育成することを目標に、先ず、「科学技術と人間の係りを十分に認識し、より豊かな社会

の実現を目指し、将来にわたって科学技術の成果について責任をとることができる倫理観、社

会観、正義感、責任感にあふれ」さらに、「自分の将来を自分の意志と責任において設計し、

社会の中で主体的に行動できる人材、すなわち人生観、歴史観、世界観を有し」、「スポーツを

通して体力の保持・増進を図り、自己の健康を管理しつつチームワーク力やリーダーシップ力

を体得し」、最後に「豊かな知識、コミュニケーション力、国際感覚を有する」人材の養成を

目指すこととなっている。 7) 電気電子工学科においては、「幅広い視野に立った調和のとれた人間性豊かな人材を育成する

こと」であり、具体的には「エネルギーや情報のキャリアとしての電子の振る舞いや電磁現象

を工学的に応用する電気電子工学の立場から、これらに広く係る技術者や研究者を養成し」、

さらに「経済・技術の発展とエネルギー・資源との関係、あるいは地球環境問題との関係、さ

らには高度情報化時代を迎えての産業構造の転換等といった問題を見据え、21 世紀における技

術者、研究者は如何なるモラルのもとに、何をなすべきかどのような役割を果たすべきかが問

われていることを認識し、学生にこのような問題意識と問題発見解決能力をもたせる」ことと

なっている。 [点検・評価(長所と問題点)] 目標の実現に向けた取り組みを評価の視点および項目を設定して評価を行った。以下に示す。 1) 目標: 将来展望と社会的要請に応える技術者を育成する教育を行うこと。

2) 評価の視点および問題点: 教育理念・目的を具体的にどのように教育目標に展開しているか。

3) 評価: 上記に述べたように本学部では学科毎にその特徴を生かしつつ全体としてその理念・目的達成を

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Page 16: 第1章 理念・目的・教育目標 1. 大学の理念・目的 大学の理念 ......第1 章 文学部 【文学部】 2. 学部・センターの理念・目的・教育目標

第 1 章 電子情報学部

目指している。また、毎月主任教授会を開催して直接各種問題を話し合い、またインターネット上

でも主任教授会を行い、緊急を要するものや事前の打ち合わせをタイムリーに行うことで学部の理

念・目的の実現に向けた努力を行っている。さらに、学部評価委員会、研究推進委員会など各種委

員会を設け、学部長からの答申を受けて常に活発に活動している。さらに学科の中にもこれら学部

の委員会に対応する委員会を設け、常に学部と学科が一体になって理念・目的の実現に向けた点検

を行うなど、常に改善・改革の努力に努めている。 [将来の改善に向けた方策] 本学部は、改組からまだ 2 年経過したところであるが、学科毎にアンバランスな面があり(入試競争

率、学生定員に対する教員数など)完成年度に向かって更なる改組を検討して行く必要がある。 参考資料: 1)2002 年度履修の手引き 2)2003 年度情報科学科紹介パンフレット 3)2003 年度情報メディア学科紹介パンフレット 4)2003 年度経営システム工学科紹介パンフレット 5)2003 年度コンピュータ応用工学科紹介パンフレット 6)2003 年度エレクトロニクス学科紹介パンフレット 7)2003 年度コミュニケーション学科紹介パンフレット 8)2003 年度電気電子工学科紹介パンフレット

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第 1 章 工学部

【工学部】

1. 学部・センターの理念・目的・教育目標 (1) 学部・センターの理念・目的・教育目標とそれに伴う人材養成等の目的の適切性、並びにそ

の達成状況について(項目No.3) 1) 工学部の理念・教育目的

「現状」 創立者松前重義博士は、内村鑑三の教えを受け、内村の思想と人類の救済を説く情熱的な訴えに深

く感銘した。なかでもプロシアとの戦争に敗れ、疲弊したデンマークの再興にN.F.S.グルント

ヴィの提唱した国民高等学校の役割が大きかったことを知ったことである。後に、デンマークの国民

高等学校を視察した創立者は「国づくりの基本は教育にあり、教育を基盤として平和国家日本を築く」

ことを決意し、1943 年科学技術の振興を通じて産業立国に寄与することを目指し、本学園の前身であ

る航空科学専門学校を清水市に開校した。そして 1946 年には、旧制東海大学が文部省から認可され、

さらに 1950 年には工学部、文学部からなる新制大学として学校法人東海大学が発足した。当初、工

学部には電気工学科、応用理学科、建設工学科が開設され、その後順次学科が増設され、電気工学科、

制御工学科、通信工学科、電子工学科、応用物理学科、原子力工学科、工業化学科、金属材料工学科、

光学工学科、建築学科、土木工学科、動力機械工学科、生産機械工学科、精密機械工学科、航空宇宙

学科、経営工学科の 16 学科から成る日本最大規模の学部に成長した。 近年、国内外の政治、社会、経済の動きはボーダレス化あるいはグローバリゼーションの進展に相

俟ってきわめて不安定となり、産業界は低迷を帰すこととなった。資源の乏しいわが国にあっては、

今後も科学技術創造立国を目指すべきことは言うまでもないが、近年の世界情勢に合わせて産業界は

構造的変革を余儀なくされており、「工学」ならびに「工学教育」も抜本的な変革期にさしかかってい

ると考えなければならない。 すでに初等中等教育における学習内容は、自由度の高い複線的なもの

へと変化し、学生の意識は従来と異なったものになってきた。学修歴や学習目的が多様化した学生に

適切に対応することも、大学の責務として受け止めなければならない。これらの要請に応えるために、

東海大学工学部は、学部学科組織の見直しを行った。その結果、001 年 4 月に電気工学科、制御工学

科、通信工学科、電子工学科および経営工学科を中心に改組転換され「電子情報学部」が誕生した。

他の学科についても再編され、新しい工学部が発足した。新工学部は、受験生の多様な志望動機、科

学技術の急激な進歩と変化を考慮し、生命化学科、応用化学科、応用理学科光工学専攻・エネルギー

工学専攻、材料科学科、建築学科、土木工学科、精密工学科、機械工学科、動力機械工学科および航

空宇宙学科の 10 学科 2 専攻に再編した。各学科はそれぞれの学術の中心となる基礎知識と専門の学

問を教授研究し、本学の建学の理念を基本として単に科学技術の知識のみに通じた技術者教育ではな

く、個々の学生が世界の歴史、多様な文化、価値観を学び、広い視野から事の正否を判断し、科学技

術を通じて社会に貢献し得る人材を養成することを教育目的としている。

「点検・評価」 工学部各学科は、工学部の理念・教育目的に基づき、その実現のためにカリキュラムを構成し、組

織的教育活動を推進している。 本学部の理念・目的は、学校教育法第 52 条の趣旨に整合している。

「将来の改善・改革に向けた方策」 東海大学の建学の理念・教育目標を常に確認し、広い視野と世界観をもつ人材の育成が使命である。

2) 工学部の教育目標

「現状」

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Page 18: 第1章 理念・目的・教育目標 1. 大学の理念・目的 大学の理念 ......第1 章 文学部 【文学部】 2. 学部・センターの理念・目的・教育目標

第 1 章 工学部

本学部では、個々の学生の人格と個性を尊重し、学生自身の自主選択学習の機会を多くするために

必修科目を軽減し選択科目を多くし、教育目的を達成するカリキュラムを編成している。一般教養科

目は「建学の精神」を基本としてその教育の原点である「現代文明論」を中心に「文理融合科目」、「現

代教養科目」を配置し、これらの履修を通して広く社会、文化に対する関心を醸成し、現代文明に対

する正しい認識と批判力を体得させ、工学専門知識に偏らない人格形成を目標としている。 専門教育においては、各学科の基本的専門科目と時代に即応した先端的科目を配置し、演習科目、

実験科目および卒業研究等で問題発見・解決に導く能力の養成を目標としている。 「点検・評価」 工学部の教育目標に基づき、各学科の教育目標の実現を図るために構成されたカリキュラムおよび

学科運営は適切である。学部の教育目標は学部の理念・目的を具体的に反映したものとなっている。 工学部の教育目標は学校教育法第 52 条、大学設置基準 19 条に照らし適切である。

「将来の改善・改革に向けた方策」 学部・学科の教育目標は、本学の理念・目的および社会の要請を実現する上で適切かつ妥当である

か常に検討が必要である。

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Page 19: 第1章 理念・目的・教育目標 1. 大学の理念・目的 大学の理念 ......第1 章 文学部 【文学部】 2. 学部・センターの理念・目的・教育目標

第1章 第二工学部

【第二工学部】

2. 学部・センターの理念・目的・教育目標 学部の理念・目的・教育目標とそれに伴う人材養成等の目的の適切性、並びにその達成状況につ

いて(項目№3) 〔現状〕 第二工学部は 1961 年に恵まれない勤労学生に過大な経済的負担を強いることなく、高等教育の機

会を与えるため、工学部と密接な連携のもとに設立された学部である。その理念・教育目標は、思想

を培い、体躯を養い、かつ智能を磨けという「建学の精神」に基づき、単に科学技術の知識のみに通

じた技術者を養成するのではなく、自己の確固たる人生観、歴史観および世界観に基づいて、事の正

否を判断し、科学技術を通じて社会に貢献し得る総合的な人材を養成することにあり、その成果によ

って豊かで人間を尊重する社会を積極的に実現することにある。 本学部は情報システム学科、建築デザイン学科および機械工学科の 3 学科よりなり、収容定員は 640

人である。授業時間は 17:30~21:40 であり、4 年間で卒業できる。 〔点検・評価(長所と問題点)〕 一学年あたりの定員は情報システム学科 60 人、建築デザイン学科 40 人、機械工学科 60 人であり、

少人数クラスによるきめ細かい密度の濃い指導がなされている。一般教育科目、基礎教育科目、専門

教育科目の全てにわたり、勤労学生が最短履修期間で十分に卒業が可能である様、充実したカリキュ

ラムが編成されている。勤労学生、社会人、中高年勤労者に高等教育、先端技術の教育の機会を提供

することを目的とする本学部の理念は、多様な教育を提供すべき学部として妥当なものであると判断

できる。しかし、かつてのいわゆる勤労学生は減少しており、その代わりにフレキシブルな授業を望

む若者、新たな教育機会を求める社会人、高齢者などが増加してきており、これらのものへの積極的

な対応が求められている。

〔将来の改善・改革に向けた方策〕 本学部は都心にあることより、これからは勤務形態の多様化でフレキシブルな授業を望む若者、最

新の科学技術を大学で学び本職に生かす社会人、新分野への転進を求める中高年勤労者、また社会人

や高齢者の生涯学習の受け皿として、幅広い知識をつけさせる基礎教育と実社会で役立つ先端技術の

教育に力を入れた人材育成を目指さなければならない。そのために相応しいカリキュラムを検討し、

昼間での開講時間帯の設置などを推し進めたい。

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Page 20: 第1章 理念・目的・教育目標 1. 大学の理念・目的 大学の理念 ......第1 章 文学部 【文学部】 2. 学部・センターの理念・目的・教育目標

第 1 章 開発工学部

【開発工学部】

2. 学部の理念・目的・教育目標 学部の理念・目的・教育目標とそれに伴う人材養成等の目的の適切性、並びにその達成状況につ

いて(項目№3) [現状] 東海大学の建学の理念に基づき、開発工学部は 1991 年 4 月、食糧、エネルギー、地球環境、健康・

福祉、安全などの直面する地球的・人類的課題を解決し、より良い文明社会を建設するために求めら

れる人材養成を目指して、情報通信工学科、素材工学科、生物工学科、医用生体工学科という従来の

工学の枠にとらわれない学際的な 4 学科で構成される学部として開設された。その教育目標は人類及

び社会の発展のために、産業界の先端技術分野で活躍する幅広い知識と深い専門知識を併せもった中

堅技術者の育成にある。このことは学部英語名称の“School of High‐Technology for Human Welfare”に示している。教育方針は、(a)ヒューマニズムに立脚した教育を重視し、自主的思考力

の育成、(b)教員と学生の対話をベースとした多様な個性の伸張、(c)幅広い知識と国際的視野の涵

養においている。 これらの教育目標・教育方針を基盤に学部全体として教育・研究を重ねて大学教育の改革に取組み、

カリキュラム改訂等を積極的に進めて現在に至っている。 [点検・評価(長所と問題点)] 主たる評価の視点および項目は以下の通りであり、これらを中心に学部並びに各学科における意見

を踏まえて点検・評価を実施した。 1) 学部・学科の理念・目的は本来あるべき「大学」として適切妥当か。またその中に、教育研究、

人材養成に関わる基本方針が明示されているか。 2) 大学の個性・特徴が理念・目的に反映されているか。 3) 学部・学科の教育課程は、学校教育法第 52 条や大学設置基準第 19 条に照らして適切妥当か。 4) 理念・目的を学生に理解させ、主体的に学習に取り組ませるための指導が充分に行われている

か。 5) 理念・目的の実現に向けて改善・改革の努力がなされているか。 評価結果:上記 1)から 3)について、当該学部はその理念・目的が明確に示され、その中に教育研究、

人材養成に関わる基本方針も明確に謳っているとともに、各学科においてもそれぞれ教育研究、人材

養成に関わる基本方針を明確に示しており、本来あるべき「大学」として適切である。当該学部は従

来の工学の枠を越えた学際的な学科構成からなっており、極めて個性的であるとともに、開発工学部は

国内唯一の学部として特徴付けられる。また、21 世紀を迎えて人類・社会が直面する課題解決の重要

性は益々増大し、よって学部の理念・目的の実現・実践の重要性は一層高まっている。また、学部・学

科の教育課程は、知識や技術の単なる教授に止まらず、ヒューマニズムに立脚した教養を重視し、人

間、社会、歴史、世界、文明などについて自ら考える力を養う教育に努めていることから、学校教育

法第 52 条や大学設置基準第 19 条に照らして充分に適切妥当と判断させる。 上記 4)、5)について、先ず、教育理念・目標を徹底させるための学生指導については、学部、学科、

教養教育系で実施するガイダンスの充実を図りつつ指導を行っている。特に、新入生に対しては少人

数指導体制による懇切丁寧な指導に努めている。シラバスの作成とその充実は、学生の主体的学習を

促進する上で極めて重要な役割を果たしている。次に、当該学部は全学的な改革と歩を併せる形で、

1997 年には「セメスター制」を導入し、また 2001 年には、これからの時代に求められるのは、偏っ

た専門性より複眼的な思考と柔軟な発想力を有する人材こそ重要、をモットーに、「現代文明論」、「文

理融合科目」、「副専攻制度」などを柱とした新しい教育プログラムを導入するなど学部・学科の理念・

目的の実現に向けて常に改善、改革の努力を払っている。

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Page 21: 第1章 理念・目的・教育目標 1. 大学の理念・目的 大学の理念 ......第1 章 文学部 【文学部】 2. 学部・センターの理念・目的・教育目標

第 1 章 開発工学部

[将来の改革・改善に向けた方策] 21 世紀に入り、社会は“もの”中心の技術文明から、真に心の豊かさを求める“人”中心の技術文

明、いわば「感性の時代」を迎えている。近年の IT の急速な発展はそのコンテンツやインターフェ

イスにおいて、人間の感性を考慮し、これを組み込みつつ、人間生活に適合した IT 環境を設計(デ

ザイン)することを求めている。現在、当該学部を構成する「情報通信工学科」「素材工学科」「生物工

学科」「医用生体工学科」では、その教育・研究は十分行えない分野であるため、「感性デザイン学科」

(仮称)を新たに設置して、いわゆる“思いやりを工学する”新領域を開拓すべく検討中である。

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Page 22: 第1章 理念・目的・教育目標 1. 大学の理念・目的 大学の理念 ......第1 章 文学部 【文学部】 2. 学部・センターの理念・目的・教育目標

第 1 章 海洋学部

【海洋学部】

2. 学部の理念・目的・教育目標 海洋学部の理念・目的・教育目標とそれに伴なう人材養成等の目的の適切性、並びにその達成状

況について(項目№3) 〔現状〕 海洋学部は 1962 年に海洋の持つ諸問題を多角的に研究・解明し、海洋が持つ資源を有効に開発す

ることを目的として、東海大学 3 番目の学部として設立された。開設当時は海洋工学科(海洋計測工

学専攻、海洋土木工学専攻)と海洋資源学科(海洋資源学専攻、海洋生物資源学専攻)の 2 学科 4 専

攻(入学定員 160 名)で学生の教育を行ってきた。その後、科学技術の発展と進歩により海洋の地球

環境へのかかわりが明らかになるにつれて専門の細分化と海洋学部への社会的期待に応えるため、学

科増設と入学定員の増員が行われた。その結果、現在、海洋学部には工学系、理学系、水産学系およ

び商船学系からなる地球環境工学科、海洋土木工学科、海洋資源学科、水産学科(水産資源開発課程、

増殖課程)、マリンデザイン工学科、海洋科学科、航海工学科の 7 学科 2 課程(入学定員 710 名)で

構成されることとなった。しかし、このような専門分野の分化はともすると、“海洋を総合的に解明す

る”とした学部の創設の理念を失わせることが懸念されたため、学部では所属学科に関わらず、全て

の学生を対象として海洋学の基礎的科目を学部共通科目として開設し、学部の理念を教育するととも

に、他学科科目の履修を活発に行うことにより、学際的領域の解消に努めている。また、海洋の研究

は陸上と異なり、厳しい環境条件であるため、海の自然を体験することは非常に重要であるとの認識

のもと、学部創設時より全学生を対象として調査・観測船を用いて洋上観測を行っている。

〔点検・評価〕 1962 年に学部創設以来、2万4千余の卒業生を世に送り出している。本学部の卒業生は企業はもと

より、官庁、大学研究機関の国内外で活躍している。 大学の大衆化に伴い、大学への進学率は増加しているが、一般に、進学率が増加するにつれて、大学

教育は高等専門教育から高等普通教育へと推移するといわれ、そのため、高等普通教育に相応しい教

育方法の開発が望まれている。 海洋学部においても、その傾向に変わりはなく、進学率の増加とともに入学生の進学目的も学修履

歴も多様化し、学部でも1993年以来「学部等評価委員会」を設置し、現場主義を基盤として継続

的に、教育の活性化を目指して、学部の点検・評価を行っている。その内容は「学生による授業評価」

「シラバスの点検」「組織的教育活動の評価」等である。学生による授業評価では、教員の講義方法の

改善に活用される機会も見られるが、その効用は必ずしも学生には充分に理解されておらず、むしろ、

真面目に評価していない例が少なくない。こうした授業評価の設問内容或いは実施方法については、

学部独自の視点も含めて今後の課題である シラバスの点検では、以前に比べて学生が履修したい科目の選択が容易になり、授業内容、成績評

価方法の理解が可能になった。 海洋に関して総合的な研究と教育を展開する事がその第一義である。当初、海洋学部は、主として

海洋の理学、工学および水産学の自然科学的立場で研究と教育を行ってきた。しかし、1962年に

創立してから現在に至るまで、研究と教育をおしすすめる中で、海洋と人類との関りを探求する人文

科学および社会科学の内容を理解させる必要性が必然的に生じ、海洋学部の各学科の授業科目の中に

人文科学および社会科学の両者を取り入れる形での教育を既に行ってきている。 このような観点から現代を見る時、当初より企図していた総合科学としての海洋学は、さらに強化

されなくてはならないと考えるに至った。環境、技術、資源開発等に関して、複雑化した現代におい

て文理融合的な視点から考えなければならないからである。 以上を鑑み、海洋学部に、ふさわしい、新しい国際物流および海洋文明に関する専攻あるいは学科を

新たに立ち上げるべく努力している。

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Page 23: 第1章 理念・目的・教育目標 1. 大学の理念・目的 大学の理念 ......第1 章 文学部 【文学部】 2. 学部・センターの理念・目的・教育目標

第 1 章 海洋学部

〔改善・改革の方策〕 海洋の持つ諸問題は学部の発展とともに解明されてきたが、今後の課題としては、得られた知識を

どのように利用するかが重要な課題となっている。特に人類の生活にとって必要な資源は、長い年月

を経て地球に蓄積されたものである。環境を損なうことなく、海の資源をどのように利用するかは海

洋学の新しい課題となっている。そのため、自然科学を中心とした海洋開発から人文・社会科学を含

めた海洋開発への幅広い知識の習得が指摘されている。そこで、本学部においても、今後の海洋学部

のあり方を検討するべく海洋学部将来計画委員会を設け、新しい社会のニーズに対応し、より魅力的

な学部に再編することを中心として議論が進められている。その過程として、 2003 年度には航海工

学科に航海専攻と国際物流専攻を設け、船舶職員の養成とともに海国日本の物流システムに携わる人

材を養成することとした。また、四面を海で囲まれた日本の文化・文明は海を媒体として作られたも

のであり、歴史と今後の進むべき方向を検討するため、海洋文明について学ぶ専門教育の開設も検討

している。

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Page 24: 第1章 理念・目的・教育目標 1. 大学の理念・目的 大学の理念 ......第1 章 文学部 【文学部】 2. 学部・センターの理念・目的・教育目標

第1章 医学部

【医学部】

2. 学部の理念・目的・教育目標 学部の理念・目的・教育目標とそれに伴う人材育成等の目的の適切性、並びにその達成状況につ

いて(項目No.3) [現状] 医学部は、東海大学の建学の精神である「科学とヒューマニズムの融合」に基づき、人間性と感

性の豊さを備えながら、科学の発展に貢献できる能力を身につけた「良医」の育成を目的に 1974年 4 月に開設された。 「良医」とは医学的知識・技能はもとより、優れた倫理観を有し、常に自分で問題解決をしてい

く能力を有することで、時代に合った適切な医療を満足のいく形で患者に提供できる医師であり、

こうした医師の育成を目的としている。 医学部の果たすべき役割は、「良医」の育成のための医学教育と医療の進歩に貢献できる基礎と

臨床の融合した広範囲な研究活動である。 1) 医師となるモチベーションの向上

本学部では、新入学生を対象に一泊ニ日で研修会を実施しグループ討論を通して医師となる意

識向上を図っている。また、その他以下の教育を通してモチベーションの育成に努めている。 a 1 年次末に医学教育ワークショップの開催(対象:1 年次生約 20 名) b 初期病院研修による病棟・救急当直の実施(対象:1 年次生および学士編入生全員) c 「人間関係学」科目における社会福祉士施設実習(対象:1 年次生および学士編入生全員) d 「医学英語」科目における米国医学書の講読を通して早期に医学知識を習得(対象:1 年次生

および学士編入生全員) 2) 医学教育

本学部の教育理念は、「良医の育成」であり、医学知識および技能の修得はもちろん、問題

解決能力、コミュニケーション能力、基本的臨床技能の修得を目標としている。 また、医師の臨床能力は厳しく評価される傾向にあり、このような社会的ニーズに対応できる

臨床医の育成をも目的としている。本学部のカリキュラムは次のとおりに要約される。 a 1 年次から臨床と社会福祉の現場に触れる。 b チューター制によるケーススタディーを導入し、能動的学習を重視する。Problem Based

Learning(PBL)の実践。 c 統合カリキュラムによって基礎医学と臨床医学を統合し病気ではなく病人について学ぶ。 d 自己学習を重視し問題解決能力をつける。 e 高学年のクリニカルクラークシップでは医療チームの一員として医療の現場で学ぶ。 f コンピュータ教材による Evidence Based Medicine(EBM)の導入。

具体的には次のような教育方法を取り入れている。 a チューター制の導入:1 年次より医学英語の場で少人数(7~8 名)に対して 2 名のチューター

を付け教育することで、より細かい学生の資質に応じた教育を行うようにしている。更に懇話

会制度により、これらチューターは医学英語以外の学生個人の問題に対しても良き相談者とし

ての機能を持たせている。その学年を統括する学年指導教員も指定しており、学生の勉学態度

等、知識の教授以外の人間性の育成にもその重きを置いている。 b ケーススタディーの導入:医学知識の取得が中心となる 3~4 年次においては、ケーススタデ

ィー等にも重点を置き、単なる知識の修得ではなく、生きた知識の修得に留意している。 c クリニカルクラークシップの導入:さらに優れた臨床医の育成のため、診療参加型の臨床実習

であるクリニカルクラークシップを導入しており、診療技術の評価には 3 年次および 4 年次に

Objective Structured Clinical Examination(OSCE:客観的臨床能力試験)も導入している。 d 海外留学制度の推進:5 年次の学生を 1~6 ヶ月の期間アメリカ、イギリス、オーストラリアに

交換留学制度として派遣し、また学生を受け入れている。

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Page 25: 第1章 理念・目的・教育目標 1. 大学の理念・目的 大学の理念 ......第1 章 文学部 【文学部】 2. 学部・センターの理念・目的・教育目標

第 1 章 医学部

e 国試対策プログラムの導入:医師国家試験を合格することが最低限の目標であるが、そのため

の国試対策のプログラムも 6 年次に設けられており、最近の医師国家試験合格率の上昇という

結果を得ている。 3) 医学研究

本学部では、基礎系および臨床系が統合した研究体制による社会に還元できる研究開発を実

施することを目標としている。現在も多様な研究グループを有しており、その成果は国内外に

おいて高い評価を受けている。取得した大型プロジェクト研究および開設寄付講座は以下のと

おりである。その他多数の外部資金による研究を実施中である。 a 文部科学省学術フロンティア推進事業(遺伝子工学・細胞移植研究センターの設置(1997~2001年度・継続申請中))

b 文部科学省ハイテク・リサーチ・センター整備事業(遺伝子工学・実験動物研究センターの設

置(1999~2003 年度) c 厚生労働省未来開拓学術研究推進事業(5 件) d 大型受託研究(3 件) e 寄付講座「在宅医療科学」(1997~2004 年度) f 寄付講座「腎不全病態科学」(1997 年 7 月~2002 年 6 月) g 寄付講座「組織再生工学」(2000 年 10 月~2002 年度) h 寄付講座「東洋医学講座」(2002 年 10 月~2005 年 9 月) また、学部内では、研究活動活性化のため毎年次の研究支援を実施している。

a 医学部プロジェクト研究制度(2002 年度統一テーマ:ポストゲノム) b 医学部研究助成金制度 その他、文部科学省科学研究費補助金等公的資金および外部資金の獲得がなされている。

医学研究者の育成として、研究員・研修員制度、特定研究員制度、医学部奨励研究員制度等があ

る。これらは特定の教員の指導に基づき共に研究を行うことを主としている。 また、特定研究プロジェクトに参画することにより研究成果の向上に貢献している。

[点検・評価(長所と問題点)] 1) モチベーションの向上

入学後さらに、医師となる目的達成のための資質形成を行うことが非常に重要であるとの認

識により、モチベーションの向上をはかるべく体制の充実を図っている。しかしながら、医学

専門教育課程におけては学生のモチベーションの低下が見うけられる。そのため、若干ではあ

るが成績低下に陥る学生がいる。 2) 医学教育

チューター制によるケーススタディーの導入、PBL の実践、クリニカルクラークシップの充

実、学士編入学制度の推進、海外留学制度の推進、など日本の医科大学の医学教育において常

に先進的試みを行うなど本学の個性・特徴を活かした教育改革を実施してきたことは充分評価

できる。しかしながら、全国的には共用試験の実施等医学教育を取り巻く教育環境は急変しつ

つある。こうした中で教育計画部を中心として、具体的カリキュラムの絶え間ない評価・改善

の検討が行われていることは評価できる。また、さらにその理念・目的を教員に周知徹底する

ための Faculty Development(FD)が毎年、複数回実施されているなど、改善・改革の努力

がなされていると評価することができる。 3) 医学研究

外部資金の獲得状況は評価できると判断できる。しかしながら、その研究分野および教員に

偏りがあり、総体的に活性化しているとは言い難い状況である。近年、各部門に配算される大

学予算は減少状況にあり、外部資金に依存しすぎている傾向がある。また、時代に合った研究

プロジェクトは活発な研究活動を行っているが、一方で純粋な基礎研究を推進する研究グルー

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Page 26: 第1章 理念・目的・教育目標 1. 大学の理念・目的 大学の理念 ......第1 章 文学部 【文学部】 2. 学部・センターの理念・目的・教育目標

第1章 医学部

プが比較的少ないことが感じられる。基礎・臨床にかかわらず全体的なレベルアップを図るこ

とが必要である。

[将来の改善・改革に向けた方策] 医学教育カリキュラム等においてクリニカルクラークシップの導入など先駆的な試みを実施し

多くの成果をあげてきたが、2004 年度からの共用試験の本格実施、卒後臨床研修の義務化、現行

の3年次学士編入生への変則カリキュラムの是正並びに学生のモチベーションの低下等に対応する

ため、2003 年度入学生より大幅なカリキュラム変更を実施することとしている。概略としては、1・2 年次において基本的学習態度の育成を図り、3・4 年次で医学基礎から専門知識を修得、5・6 年

次にクリニカルクラークシップを中心とする臨床実習をおこなう。この中で本学部が従来から行っ

てきた、チューター制、ケーススタディー、クリニカルクラークシップ、海外留学制度、国試対策、

FD、および学士編入学制度は継続し、更に進化・発展させる予定である。 医学研究においては、研究者が自発的に積極的な活動が実施できるよう以下の改善策を実施し全体

的なレベルアップを図る必要がある。 a 学内研究費の重点的配分制度の確立 b 本学部が推進する研究方法の策定 c 研究支援組織および設備の改善 d 研究分野における任期制と外国人研究者の採用

2002年度から研究体制は従来の学部主体体制から大学院医学研究科に移行するとともに5研究セン

ターを設置した。同時に先進医学研究運営委員会を置き全体的レベルアップをはかるとともに研究活

動の活性化を図ることとした。また、従前の医学部研究委員会は先進医学研究運営委員会と連携を強

化し、さらなる活性化を図る対策を検討する必要がある。

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Page 27: 第1章 理念・目的・教育目標 1. 大学の理念・目的 大学の理念 ......第1 章 文学部 【文学部】 2. 学部・センターの理念・目的・教育目標

第 1 章 健康科学部

【健康科学部】

2. 学部の理念・目的・教育目標 学部の理念・目的・教育目標とそれに伴う人材養成等の目的の適切性、並びにその達成状況につ

いて(項目No.3) 〔現状〕 東海大学健康科学部は、私立では始めての総合大学のなかに看護学科と社会福祉学科を併設した学

部として 1995 年 4 月に開学し、第一期卒業生を送り出す時期に合わせた 1999 年 4 月に大学院健康

科学研究科修士課程(看護学専攻、保健福祉学専攻)を開設した。 健康科学部の理念は、建学の精神を基盤に開学時に趣旨とした科学とヒュ-マニズムの融和、自然

と人間の調和を目指し、人道主義の理念のもとに、健康で生きがいに満ちた福祉社会の実現に貢献で

きる人材の育成を目的としている。 健康科学部の教育目標は、以下のように集約される。 1) 「健康科学」が対象とするのは、「人間」とくに「人の心」である。従って、暖かい人間の謙

虚さ、幅広い教養を身につけた人材の育成を目指す。 2) 卒業後、それぞれの分野の専門家、実践家としての役割を担うために、自己学習(self-learning)

と問題解決(problem-solving)能力を育成する。 3) 保健医療福祉が一体となったチ-ムの一員として活躍でき得る人材を育成する。 4) 国際的な分野で活躍し得る人材の育成を目指す。 以上の目標を達成するため、次のような教育を実施してきた。 1) 「現代文明論」を中心とする『基礎教育科目』を重視し、一般教養知識の向上を図る。 2) 指導教員制を採用し、学生を 10~15 名の小集団に分け、指導教員による学生生活の指導、相

談を行う。 3) 演習・実習科目に重点を置いた系統的、段階的カリキュラムを通して、より統合的、実践的学

習を行う。 4) 1 年次においては、レポ-トや論文作成の技術と方法、図書館の効率的な活用等についての講

義、演習を行い、自己学習能力の育成に努める。 5) 「健康科学論」「人間科学論」「人間関係論」等、健康科学の基礎となる科目を両学科に開講す

るとともに、医学部及び看護学科・社会福祉学科で教員・カリキュラムの相互乗り入れを行い、

将来の保健医療福祉が一体となったチ-ムの一員としての基礎を学ぶ。 6) 春期休暇あるいは夏期休暇において数週間、米国のミシガン大学、メイヨメディカルセンター、

オーストラリアのグリフィス大学等と学生交換留学を実施し、国際交流を重視した教育を行う。 7) 臨地実習は、医学部付属病院、地域の医療機関、社会福祉施設・機関、企業の健康管理部門な

ど、幅広い実習機関で実施する。 〔点検・評価〕

1) 理念と目的の明示性と妥当性について 健康科学部の教育理念は、授業要覧(全学共通編)に明示され毎年教職員および入学生(3

年次編入生を含む)に配布されている。学生手帳に明示されている学則の総則に、「人道に根

ざした深い教養をもつ有能な人物を養成すると同時に、高度の学問技術を研究教授することに

より、人類社会の福祉に貢献することをもって目的とする」とある。健康科学部は看護学科と

社会福祉学科から構成されているので、この理念は後述する両学科の教育目的と一致する。入

学時の宿泊研修会において、学部の教育理念について説明を行っているが、生命の尊重と人間

の尊厳を重視した考え方は理解と同意を得やすい内容である。 2) 理念・目的の周知性と浸透性について

本学部学生は、自己学習と問題解決的学習能力の修得に力点を置いている。その目的の周知

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Page 28: 第1章 理念・目的・教育目標 1. 大学の理念・目的 大学の理念 ......第1 章 文学部 【文学部】 2. 学部・センターの理念・目的・教育目標

第 1 章 健康科学部

と浸透性は日常の学習活動によって培われる。入学後早い時期に図書館ガイダンスを実施して

いるので、インタ-ネット活用方法や文献検索法を駆使することができる。その成果はレポ-

ト作成やプレゼンテ-ションの為の資料作成の能力に明確に現れている。 3) 教育課程の特徴を生かした保健医療福祉チ-ムとしての学習活動について

看護学科と社会福祉学科の学生は、「健康科学論」「人間科学論」「人間関係論」等の健康科

学の基礎を必修科目として履修している。さらに、演習科目「看護福祉特講」やその他の選択

科目履修、自治活動を通じて交流を深める機会をもっている。しかし、こうした教育課程の設

定条件に比して十分な効果が出ているとは言い難い。 〔将来の改善に向けた方策〕 本学部の教育理念・目的の具現化の為に、下記の 3 点を検討し、進めようとしている。 1) 建学の精神と学部理念の再確認を全教職員に浸透する方略の検討

健康科学部の教育理念は 10 年前の開設準備段階で作成されたものであるが、東海大学の建

学の精神とより融和されていることが認識されつつある。しかし、具現化のためのアプローチ

は、教職員と学生集団によって改善する必要があると考える。将来構想委員会および FD 委員

会において、全学的理解を深めるための方略と新たな発展を検討する。 2) セメスター制度と教育理念を生かした教育課程の再編成の準備

看護学科は、医療の安全と質を保証するために専門的な技術能力の育成が社会から求められ、

コアカリキュラムの編成を準備しつつある。社会福祉学科は、多様な専門コースに応じた臨床

実践能力育成の為に、2005 年の全学的教育課程再編に向けた準備を行う。 将来的には、医学部・他学部・他学科の科目履修の相互乗り入れが簡便になるような改善が

必要である。 3) 倫理的判断能力と問題解決能力を高める教授方略の開発

Web 登録によって学生は履修科目の選択の幅を考えやすくなってきている。また、情報科学

の発達によって情報検索能力や研究の素地と知的関心は高められつつある。 将来、保健医療福祉分野で活躍する者は、情報収集や活用の段階において、倫理的手続きを

熟知しておくことは重要である。卒業論文作成やゼミナール等で学習してゆくことであるが、

教員も含めて倫理的審査委員会や両学科会議において今後の検討課題とする。

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第 1 章 総合教育センター

【総合教育センター】

2.学部の理念・目的・教育目標

学部・センターの理念・目的・教育目標とそれに伴う人材養成等の目的の適切性、並びにその達

成状況について)(項目№3) [現状] 東海大学では、学生が専門的な学問のみに偏らず、より広範な視野や文脈から知的洞察力を働かせ、

柔軟な思考のもとに個々が対応すべき課題に挑む知的センスを培うことを期し、学問分野間の連携や

接合を通じて、教養的資質の向上を図っている。「東海大学型リベラルアーツ」として大学が標榜する

この教育理念を、教養教育の授業科目全体を通じて組織的に展開することが、総合教育センターの主

要な任務である。東海大学型リベラルアーツが目指す人材育成のかかる趣旨にしたがえば、現代文明

論科目(現代文明論・文理融合科目)および現代教養科目(文系・理系科目)は、専門分野と対置さ

れるものではなく、学生が専攻する学問分野での探求を知的に深化させる科目と捉えられる。東海大

学型リベラルアーツが掲げる「問題発見・解決」および「文理融合」という概念は、かかる科目への

認識に基づき、総合教育センターが提供する授業科目においてもっとも先鋭に提示されている。 現在、総合教育センターでは、大学の教育理念に準拠した教養教育の組織的実践のために、下記の

ような教養教育の 2 つの骨子をうち立て、現代文明論科目(現代文明論・文理融合科目)と現代教養

科目(文系・理系科目)の各科目群を編成している。すなわち、 1) 人間の歴史の中で蓄積された知のあり方、またその有用性について学び、そうした知の活用に

対して自らの判断力と想像力を養うこと。学生には、判断力ならびに想像力の自己養成を通じ

て、取り組むべき課題やアイディアを自ら見出し、その探求を通じて実践する姿勢や感性を培

うことを期す。 2) 系統学習を通じた諸学問の訓練・理解のもとに、事実や知識に基づいた論理的かつ柔軟な思考

力を育てること。こうした骨子のもとで、学生に対して、学問的な思考習慣を身につけ、持続

的に考える姿勢や自信を培うことを期す。 学生個々人が人材として学識を活かし社会の多様な状況へ関与し挑戦していく姿勢と活力は、今日

社会が若い人材に期待するところである。そうした期待に適う人材に学生が育っていくためには、学

生自身が特定のディシプリン(学問分野)にとらわれず、人間の知それ自体を対象化し、その思考過

程のもとで作られ蓄積された資産の活用を図るとともに、それらの歴史的意義を伝達することを自覚

することが重要である。そうした知的活動の姿勢が、21 世紀に生きる人間として解決が求められるで

あろう諸問題への認識と挑戦の姿勢を培うことにつながる、と考える。現代文明論科目(現代文明論・

文理融合科目)は、かかる人材育成の要請に鑑み、特色ある授業を展開するものである。各授業は、

基本的に専門分野の異なる教員がそれぞれにテーマ設定し担当(あるいは分担)するが、教員は科目

担当にあたり、以下の点を共通の了解事項として授業編成に当たることが義務づけられている。ⅰ)

文系・理系の学生双方に共通提示できる問題設定を図る。ⅱ)そのために、自前のディシプリンを中

心に据えながらも、より広い学問的視野から踏み込んだ授業を展開する。ⅲ)各教科の担当教員が共

有する問題設定のもとで学生に対して明確な達成課題を打ち出す。ⅳ)かかる授業展開の実現にむけ

て自分が担当する科目の授業研究会に出席し、何を達成目標に据えて質の高い教育メニューを提供す

るかについて継続的な検討や改善に関与する。 他方、現代教養科目(文系・理系科目)は、知的活動の基礎、とりわけ科学的認識への障害となっ

ている学生の「慣習的思考」や「感情的固執」を取り除き、合理的な判断力や説明力の基礎を作り上

げることを目指す授業科目群である。学生個人が教育環境に適応する上でベースとなる思考力を培う

目的を達成するために、系統学習を学部・学科における教育目標の特性に併せて編成される。これは、

高校段階での基礎的な教科学習を系統立てて十分に行う環境に置かれていなかった学生たちに対して、

事象の科学的理解に不可欠な基礎知識を学ばせるとともに、系統的な思考力を身につけさせることを

目的としている。そのため現代教養科目(文系・理系科目)の担当教員には、自らが専門とするディ

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Page 30: 第1章 理念・目的・教育目標 1. 大学の理念・目的 大学の理念 ......第1 章 文学部 【文学部】 2. 学部・センターの理念・目的・教育目標

第 1 章 総合教育センター

シプリンに基づき、その分野での科学的認識に必要な基礎的な学習項目を系統的に講じることを要請

するとともに、授業編成に当たる教員に対しては、以下の点を共通の了解事項として義務づけている。

ⅰ)教員のディシプリンの基礎にあって不可欠な知識を系統的かつ分りやすく教える。ⅱ)ディシプ

リンを支える基礎的知識を網羅して教え込むのではなく、高校段階で未習熟や未消化であった学問分

野に学生を招き入れつつ、ベーシックな課題に向き合わせ、解釈・解析する能力を培う。ⅲ)そのた

めに、学生が分かりやすさ、面白さや新しさが発見できるような工夫を考える。 また総合教育センターでは、現代文明論・文理融合科目において提供された教育内容をより深く探

究する授業パッケージとして副専攻科目「現代文化研究」を整備し、少人数生によるインテンシヴな

授業を実施している。 [点検・評価]

1) 目標 「現代文明論科目(現代文明論・文理融合科目)」、「現代教養科目(文系・理系科目)」およ

び「副専攻科目」を通じて、東海大学型リベラルアーツの教育理念が目指す人材育成に資する

教育内容を整備かつ機能させ、相応の教育成果によって、問題発見・解決型の人材の輩出に寄

与する。 2) 評価の視点および項目

a 大学の教育目標に適合した授業科目を設置し、授業内容を質的に高めているか。 b 授業科目の質を高めるために、教員の教育・研究能力を引き出し、組織化しているか。

3) 評価 総合教育センターは、文系・理系という日本の慣習的な学問分類によって細分化されがちな

知識・思考を柔軟に統合・活用するために、問題発見解決型人材の育成の観点、すなわち、文

系・理系の枠にはめられた学生の思考方法を解きほぐし、文系的・理系的という解決の指向性

では回収できない問題を発見するとともに、解決に向けた発想や実践へのプランニングの活性

化という問題設定から、知的な思考ならびに発話の基本的な能力の獲得と、課題設定・解決へ

の動機づけの醸成を目指している。この方針は、「幅広い視野と明確な目標に基づく自ら知識

を活用する人材を養成する」との東海大学建学以来の理念に基づくものであり、大学設置基準

第 19 条、「幅広く深い教養及び総合的な判断力を培い、豊かな人間性を涵養」することに沿っ

たものである。 総合教育センターでは、2001 年度に新しい教育プログラムが施行されるのに備え、2000 年

5 月、文明研究所評価委員会(現総合教育センター評価委員会)より、上記の教育方針に基づ

く具体的なアクション・プランが打ち出され現在に至っているが、かかる組織的教育活動は、

実質的に大学改革の方向を先取りし、2001 年度のカリキュラム改訂・授業科目や授業内容の変

更に対し迅速かつ柔軟な組織的対応を果たし、なおも人材育成にむけた高品質の教育運営にむ

けた組織改革の継続を可能にしている。 [将来の改善に向けた方策] 今日教養教育においては、具体的かつ説得的な教育成果が社会的に要請されている。特に、事実を

論理的に組み立て立論する力、持続的に思考する力、また多様化する社会・文化的現実についての認

識や知的アイディアの実体化にそれらの力を結びつける全体的思考力など、教育を受けた専攻分野に

関わりなく、学生がさまざまな社会的機会に柔軟に対応できる知的適応力の育成が求められている。

かかる人材養成の実現は、単に「教員が学問的知識をわかりやすく伝え、理解させること」によって

のみ達成できることではない。教養教育を担当する総合教育センターに要請されていることは、組織

として自らが担当する教育過程の射程において、学生の知的適応力の訓練に資する知的内容と方法を

提供し、その目標達成度を十分に測定し、説明できるかどうかという点、そして知的内容と方法の適

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Page 31: 第1章 理念・目的・教育目標 1. 大学の理念・目的 大学の理念 ......第1 章 文学部 【文学部】 2. 学部・センターの理念・目的・教育目標

第 1 章 総合教育センター

切な提供ならびに目標達成に向けた有効な教育実践にむけて、各教員が教育課程全体の中で占める自

らの位置や役割を明確に自覚し、他の教員が担う役割や実践と関連づけることができる透明性の高い

教育態勢を整備していくことである。 したがって、教養教育運営に当たっては、教員個人の教養的資質を所与として見直すことなく、各

人の個別的な授業計画や運営に委ねてきた慣習的な方法を再点検し、次の二つの側面から教員の資質

や能力と教育態勢との適正な接続が試みられる必要があるだろう。 すなわち、第一に、各教員が学生に対し知的な思考や表現のもとで達成できる課題や行動方針を提

示する姿勢を示し、その方針の下で知的訓練を実行すること、第二に、各教員の下での知的訓練が他

の教員による教育実践の内容や方法等と有効に結びつく組織的連携を整備することである。 総合教育センターでは、東海大学のリベラルアーツ教育の独自性を教員個人の資質やその発揮ばか

りでなく、教員のスキルやパフォーマンスを相互にリンクさせる組織性・体系性の実現を念頭におい

て、教育・研究・業務を統轄する柔軟な教育運営システムの整備を図る方向で組織風土の醸成を図り

つつある。今後もそうした方針のもとで、組織レベルとしての集合的な教育成果の向上を図る上で各

教員の教育・研究両面にわたる資質や能力の向上を本センターの組織的教育活動の中核に据えて、各

教員の教育・研究の諸活動を支援する態勢を整備していくべきであろう。

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Page 32: 第1章 理念・目的・教育目標 1. 大学の理念・目的 大学の理念 ......第1 章 文学部 【文学部】 2. 学部・センターの理念・目的・教育目標

第 1 章 外国語教育センター

【外国語教育センター】 2. 学部の理念・目的・教育目標 学部・センターの理念・目的・教育目標とそれに伴う人材養成等の適切性、並びにその達成状況

について(項目No.3) [現状] 教育・芸術・政治・経済・科学技術などの各面で世界の他の国々との交流がますます盛んになって

いる今日、学生にとって外国がこれまでよりもずっと身近な存在になっている。こうした国際化時代

に対応していくためには、外国語の運用力が不可欠となる。それも、外国語の文章が読めるだけでは

十分ではなく、外国語を聞いて理解したり、外国語で話したり書いたりする能力も必要である。すな

わち、国際化時代を生き抜くためには、受信も発信もできる、いわゆるコミュニケーションできる外

国語能力が求められている。 外国語教育センターでは、上記の現代社会の要請に応えられる外国語教育を理念としており、英語

のほか、フランス語、ドイツ語、ロシア語、スペイン語、中国語、コリア語、イタリア語、インドネ

シア語、タイ語、ベトナム語の 10 ヵ国語を修得できるよう、科目設定や教授法などに工夫を重ねて

きている。 [点検・評価(長所と問題点)] 目標の実現に向けた取り組みについて、評価の視点と項目を設定し評価を行った。

1) 目標:理念の点検 2) 評価の視点および項目:

a センターの理念は大学全体の理念と同じ方向性を持っているか。 b 理念は社会の要請に応えたものであるか。 c 理念は学内の学生のみならず、広く東海大学に関心を持つ人々に公開されているか。

3) 評価 a 公開されている理念では、大学全体の理念である、「リベラルアーツ的」な「自己発信」で

きる「国際的」人材の養成を目標としている。この点では大学全体の理念と一致する。これは

当然のことで、もともとセンターの理念は大学全体の理念を踏まえ、それにさらにセンターの

独自性を付加し構築されたものであるからである。センター独自の理念としては外国語の技能

を高め、それをもとに、外の国々を自主的な視点から理解する事に尽きるが、そのために、様々

な施策が示されている。 このように外国語教育センターの理念は十分に検討されたものといえる。

b 外国語教育に対する批判で最も多いのは、「長い間『英語』の授業を受けたにもかかわらず、

まったく《しゃべれない》。」現状の『外国語教育』は「《役に立たない》」というものであろう。

理念的な「外国語教育」と具体的な「英語教育」とを混同し、「会話ができない」を「役に立

たない」と短絡するのはおかしな考え方である。ターヘルアナトミアの時代から近年にいたる

までの暗号解読的な教育は十分に「役に立ち」、今日の日本の繁栄をもたらしてくれたのであ

る。我々はこうした根拠のない批判に惑わされてはならない。しかし、それらの批判に潜在的

に認められる、国際化した現在の社会におけるコミュニケーションの重要性の指摘は謙虚に受

け止めなければならない。 この点については、第一類、第二類、さらにセンターの公表されている理念およびカリキュ

ラムは十分に対応している。 c センターの理念は「授業要覧」、「学科案内」等にしばしば述べられて、学生が周知するよう

図られている。また、対外的には「インターネットホームページ」にも掲載され、英語版もあ

るので、全世界から閲覧することができる。

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Page 33: 第1章 理念・目的・教育目標 1. 大学の理念・目的 大学の理念 ......第1 章 文学部 【文学部】 2. 学部・センターの理念・目的・教育目標

第 1 章 外国語教育センター

[将来の改善に向けた方策] センター全体の理念は法人のホームページ上に掲載されているが、更に周知を図るため、センター

独自のページにも掲載する必要がある。

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Page 34: 第1章 理念・目的・教育目標 1. 大学の理念・目的 大学の理念 ......第1 章 文学部 【文学部】 2. 学部・センターの理念・目的・教育目標

第 1 章 課程資格教育センター

【課程資格教育センター】 2. 学部の理念・目的・教育目標 学部・センターの理念・目的・教育目標とそれに伴う人材養成等の目的の適切性、ならびにその

達成状況について(項目№3) 「現状」 課程資格教育センターの教育目的は、生涯学習における教育・文化の担い手として、資格が求める

資質能力を形成し、職務に関わる現代的課題に積極的に取り組む姿勢を養うことである。当センター

は、中学校・高等学校教員の養成課程(教職課程)、及び社会教育主事資格取得課程、司書・司書教諭

課程、学芸員課程から構成されている。各課程は、資格取得のための学修にとどまらず、実際にそれ

ぞれの専門分野で活躍できる資質能力の形成と、そうした職務に必要な動機づけを行なう。その資質

能力とは、基本的知識、技能を修得した上で、幅広い視野・教養を、その職業活動に積極的に生かす

能力であり、わが国の教育・文化に責任を持つ職務に求められる高い人格・識見を備えたものでもあ

る。さらに時代の変化、社会の変化に的確に対応できる能力、たとえば教員志望の者は、学級崩壊、

不登校などの現代的問題に対しても強い関心を持ち、主体的に取り組む態度が要求される。このよう

な資質能力をもつ人材養成は、課題探求型の教育活動によって可能となる。 この理念は記述量に制限のあるホームページや東海大学ガイドブック(perfect2003)のみでは学生に

真に理解させることは困難であるため、各課程のガイダンスで、必要単位のとり方を説明する前に、

時間をかけて明らかにしている。教職課程では、ガイダンス、及び「教職論」の授業を通して、上記

の資質能力を形成するための計画的履修の意味と方法を具体的に提示している。司書・司書教諭課程

では、「資格でも取得しておこう」といった甘い考えで履修しようとする学生に、ガイダンス時に、図

書館学の単位修得基準の厳しさを説明し、大学生としての幅広い教養、文化に対する強い関心が司書・

司書教諭としての資質に必要不可欠であることを強調している。学芸員課程では、ガイダンス時に、

資格取得に必要な単位の取り方の指導に止まらず、実際に博物館に就職するための動機づけ、進路指

導を行なっている。また社会教育主事課程でも、そのための法定単位を修得することと、社会教育に

関わる職業との関連性を説明し、幅広い教養を身につける必要性を強調している。以上のように、当

センター全体として、資格・免許状さえ取得できればよい、という履修態度を戒め、資格課程履修開

始時から、学習への動機づけを行なっている。 「点検・評価(長所と問題点)」 当センターの教育理念、目的の妥当性、その提示方法、改善の努力について、評価を行なった。 教育目的を、単に資格取得の最低基準を達成させることに置くのではなく、それぞれの資格が求める

専門性や、高い資質能力の形成を目指す当センターの教育理念は、本学の建学の精神と合致し、しか

も学校教育法第 52 条に従うものである。 上記の理念・目的に関しては、東海大学ホームページ、東海大学ガイドブック(perfect2003)に基本

的方向が明示されている。その具体的説明を、入学後に開かれる各資格課程のガイダンスで詳細に行

なっているが、担当者によって、説明内容に差が出ないように、あらかじめ周到に打ち合わせを行な

い、その結果については、直後に反省会で明らかにしている。 資格社会にあって、学生の資格志向は年々強まっている。その結果、当センター管轄の各課程の履修

者は増加の一途をたどっている。その反面、資格・免許状取得自体が目的化する傾向も否定できない。

このような現状に鑑みて、ガイダンス資料及び公共刊行物で、当センターの理念・目的をさらに明確

に提示する必要があると思われる。 センターで行なっているガイダンス時の指導は、こうした資格・免許状を取得することのみに関心を

持つ学生に厳しい指導を行なうことに一定の成果をあげている。結果として、履修を直ちにあきらめ

る者もいるが、大部分は新たな決意で履修を開始している。1 年次からの指導の結果、2 年次に引き

続き当該課程を履修する学生で、資格取得という目標を中止する者はきわめて少ない。この事実は、

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Page 35: 第1章 理念・目的・教育目標 1. 大学の理念・目的 大学の理念 ......第1 章 文学部 【文学部】 2. 学部・センターの理念・目的・教育目標

第 1 章 課程資格教育センター

初年度におけるガイダンスや授業における指導が、履修者に達成すべき目標に対する主体的態度を形

成させること、意欲や真の目的意識のない者が安易に資格課程を受講する傾向を阻止することに、一

定の成功をもたらしていると解釈できる。2001 年度において、第 1 年次に教職課程は、1100~1200名、社会教育主事課程は、約 70 名、司書・司書教諭課程は約 130 名、学芸員課程約 200 名が受講し

ているが、教職課程で 6・7 割、その他の課程で 4・5 割程度が資格・免許状を取得している。資格指

導室が中心となって夏期・秋期・春期に実施している教員採用試験講座の受講者は、平均 60~80 名

おり、実際に教職に就く者は、この 2・3 年は、既卒者を含め、20 数名から 30 数名(本学で把握し

ている分)である。司書・司書教諭、学芸員になる者は、多くはないが年に数名いる。最近の傾向と

して、関連学部の大学院に進学する者も漸増している。しかし、近年のきわめて低い需要を考慮すれ

ば、教員等の採用率・就職率は、達成目標の参考資料となるが、評価の直接的指標とはなりにくい。 「将来の改善・改革に向けた方策」 当センターの教育理念・目的を具体化するための科目履修条件や、諸科目の学習内容・順序につい

ての検討は、教職課程運営委員会、司書・司書教諭課程運営委員会、学芸員課程運営委員会、社会教

育主事課程運営委員会、教職課程運営委員会の下部組織としての教育実習委員会、及び常任教務委員

会で行なわれる。最近の各学部の改組改編によって本学全体のカリキュラムも履修年度によってかな

り異なっている。こうした状況の中で、一貫性のある組織的な資格教育体制を堅持するためにも、2002年度から運営委員会等により、全学的なカリキュラムにおける資格教育科目の配置をとくに注意深く

点検する予定である。また、センターの教育方針については、東海大学ホームページ、ガイダンスに

おける指導だけでなく、各セメスターにおける実習等の事前指導を通して説明を重ね、現職者や専門

家による特別講義や質疑応答等によって学生の理解を深めていく計画を立てており、2002 年度春学期

には一部、実施済みである。

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Page 36: 第1章 理念・目的・教育目標 1. 大学の理念・目的 大学の理念 ......第1 章 文学部 【文学部】 2. 学部・センターの理念・目的・教育目標

第 1 章 留学生教育センター

【留学生教育センター】

2. 学部・センターの理念と目的 学部・センターの理念・目的・教育目標とそれに伴う人材養成等の目的の適切性、並びにその達

成状況について(項目№3) 〔留学生教育センターの理念・目的・教育目標〕 東海大学は、学術・文化・スポーツ等の交流を通じて世界の平和と発展に資するために、創立当初

から国際的な活動を展開してきた。そして多くの国々から留学生を迎え入れてきた。こうした本学の

国際的な交流活動の源流は、本学創立者故松前重義博士が、かつて戦争に突入し悲惨な結末を迎える

に至った日本の現代史を直視したとき、未来を担う若い人々の教育と国境を越えた相互の交流こそが、

世界の平和と発展に欠くべからざるものであると確信したところに発している。その国際交流活動の

目的とするところは、若者たちが勉学や生活を共にしつつ互いの言語や文化に触れ、国際的な視野に

立った世界観・人生観の確立を目指すことであり、幅広い人間形成を図ることである。国や文化・人

種・宗教など、さまざまな違いを越えて世界の若者が集い、語り合い、共に学び合う場としての大学

が、東海大学の理想とする姿である。 冷戦構造が崩壊し、世界はいまやボーダレスの時代を迎えた。地球規模の環境汚染や食糧危機・南

北問題、民族や宗教をめぐる地域紛争やテロの恐怖など、以前にも増していっそう大きな困難に直面

している。世界中の研究者や政治家が今こそ手を携えて取り組まねばならぬときである。そして国境

や文化を越えて若い世代が交流することの意義と必要性がこれまで以上に高まっていると言ってよい。 留学生教育センターは上述の目的実現のために各国から留学生を受け入れ、日本語教育をはじめと

する種々の学修上の支援を行うために設けられている。 〔歴史と現状〕 本学の留学生受入れの歴史は、留学生受け入れ制度としては、別科日本語研修課程が認可・設置さ

れた 1964 年に遡ることができるが、それ以前にすでに数十名の留学生が総ての学年にわたって在籍

していた当時から数えれば、すでに 40 年に及ぶ。 別科日本語研修課程において日本語および基礎教育のための制度を確立し、それにより留学生の本

格的な受け入れを軌道に乗せた。その後、学部に入学した留学生が専門の課程にスムーズに移行しそ

の教育が効果的に受けられるよう配慮した、大学設置基準の特例に基づく留学生のための特別のカリ

キュラム「留学生課程」が設けられ(1969)、本学における留学生受け入れの事業は、制度的にも内

容的にも整い、発展してきた。 その後のモスクワ大学との交流協定による日本語・日本学研修生の受け入れを始めとするいくつも

の特別講座の開講など、東西冷戦の時代を超えて、本学独自の息の長い交流の歴史を刻んで今日に至

っている。 留学生教育センターはこうした留学生のための種々の課程や講座を受け持ち運営してきた。これま

でに別科日本語研修課程を修了した留学生は 1,900 名に達し、学部を卒業した者は 1,200 名に及んで

いる。その多くが自国の各界で活躍しているのはもちろん、本学で得た日本語や専門の知識・経験を

生かして自国と日本とを結ぶ仕事に携わっている者も少なくない。また、近年は卒業後も日本に留ま

って、日本の経済・産業界に貢献する人材も増えている。 本学の教育の理想と国際交流の理念を実現するために、留学生の抱えるさまざまな障碍や問題につ

いても、全学的に取り組み支援できるような態勢が必要である。そのために留学生教育センターは積

極的にイニシアチブを取って教育交流実践への提言や施策を行ってきている。 先頃当センターは『ポスト 2000 年留学生交流 近未来構想』をまとめ、学内に公表した。そこで本

学の留学生受け入れについての理念・歴史と現状・必要な施策とその展開等々について具体的に述べ

た。特に今後の施策として、本学の国際的な活動とスケールに見合う留学生数として全学生の 5%す

なわち約 1,500 人という大目標を設定し、その前段階の中期目標としてこの半分すなわち約 750 人を

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Page 37: 第1章 理念・目的・教育目標 1. 大学の理念・目的 大学の理念 ......第1 章 文学部 【文学部】 2. 学部・センターの理念・目的・教育目標

第 1 章 留学生教育センター

達成したいとの目標を掲げた。すでにこれらについては全学的な理解が得られ各方面で受け入れ態勢

が整備されつつある。私たち留学生教育センターは、関係各所と連携しつつ十分な受け入れ態勢整備

のもと、これの実現に向け取り組んできている。 〔点検・評価(長所と問題点)〕 当センターが受け持つ課程や講座のカリキュラム・教育内容の点検・評価については次節以降の記

述に譲る。センターの活動の全般的かつ端的な評価指標として、湘南校舎全体に占める留学生数を見

てみたい。 1998 年度:253 名、'99 年度:294 名、'00 年度:339 名、'01 年度:365 名、'02 年度:450 名と毎

年確実な伸びを見せている(各数字は 5 月 1 日現在の調査による)。しかしその中身は、別科日本語

研修課程在籍者の伸びが大きく、学部や大学院への入学者は満足には伸びていない。今後さらに入試

の改革、広報活動、留学生のための納入金削減措置、留学生のための宿舎の建設等、さまざまの施策

の提言を行っていく予定である。しかし、現実には「大学冬の時代」と言われる厳しい財政事情があ

り各学部の事情や意向があるため、必ずしも私たちだけで解決できる問題ではない。それにしても、

私たちの活動の結果を測る明解な数値として、上に記したような全留学生数がある。今後も現在の伸

び率を維持または向上させていくために努力したい。 〔将来の改善・改革に向けた方策〕 今後の私たちの活動の改善・改革に向けた検討課題は、以下のようなものである。

1) 留学生入試の方法について、特に「日本留学生試験」の採用に関係する事項の調整 2) 募集活動の方法と展開について(国内・国外、ネット上での情報発信等も含む) 3) 協定大学等からの短期日本語研修生の受け入れ方法の整備と拡充 4) 留学生用新宿舎の建設、留学生数に見合う部屋数の確保に向けた取り組み 5) 奨学金の拡充と、より公平かつ広範な受給のための検討 6) さらに多くの異なる国から多様な留学生を受け入れるための施策 7) 海外の協定大学等から日本語研修生をさらに受け入れること 8) 当センターに大学院修士課程「日本語教育研究課程」を開設するための準備

当センターはこうした課題について学内関係部署に積極的に提言し、解決のために鋭意働きかけて

いく。 その施策の進展状況については、留学生教育センターの自己点検評価委員会、留学生教育センター

運営委員会、留学生教育センター教職員研修会等において点検・評価が行われる。

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Page 38: 第1章 理念・目的・教育目標 1. 大学の理念・目的 大学の理念 ......第1 章 文学部 【文学部】 2. 学部・センターの理念・目的・教育目標

第 1 章 総合情報センター

【総合情報センター】 2. 学部・センターの理念・目的・教育目標 学部・センターの理念・目的・教育目標とそれに伴う人材養成等の目的の適切性、並びにその達

成状況について(項目№3) 〔現状〕 近年の情報科学、情報技術のめざましい進歩はさまざまな学問分野の発展に多大な影響を与えると

共に、生活様式、社会構造や産業構造等にも急激な変化をもたらし、高度情報社会を実現した。 このめざましい情報科学・技術の進展に対応して大学の研究教育の多様化・高度化を推進する、す

なわち「大学の情報化」を推進する組織として総合情報センターは運営されている。総合情報センタ

ーは、情報科学・技術の分野に関して研究を推進しその成果をもって人材育成に務めると共に大学の

研究教育環境に必要な情報基盤の整備とその運営を行っている。 研究面では、先端の情報科学・技術の研究を積極的に推進している。たとえば、総合情報センター

の教育職員を主体として「未来科学研究センター」のプロジェクトに参加しプロジェクト研究「クリ

エイティブコミュニケーション」を展開し、新しい情報科学・技術の発展とその普及に積極的に関係

している。 他方教育活動では、この高度情報社会すなわち新しいマルチメディアとグローバルコミュニケーシ

ョンの時代に即応できる人材を育成するために「総合メディア教育」を実施している。総合メディア

教育は、学問として情報に関する基礎的・専門的な知識技術を授けると共に、創造性と想像力を伸ば

すデジタルメディアの活用法の習得やメディアによって伝達される情報(メディア情報)を評価する力

を身につけることも目標として実施しており、以下のように「メディアガイダンス」、「メディア情報

副専攻」および「メディアテクノロジー講座」から構成されている。また、総合情報センターは独自

の「総合メディア情報」教育に加えて学部・学科から依頼された多くの情報関連科目を担当している。

その一部は、副専攻科目との合併授業の形態をとっている。 〔総合メディア教育〕

1) メディアガイダンス:新入生全員を対象として学内にあるデジタルメディアの利用法、利用上

の注意事項、総合メディア教育の説明など学内の情報サービス全般を紹介すると共にコンピュ

-タやインターネットの基本操作実習を実施し、受講者には学内のデジタルメディアを利用す

るためのアカウント(利用者 ID とパスワ-ド)を発行する。 2) メディア情報副専攻:主専攻に加えて他分野の知識を吸収し視野の広い人材の育成を目指す副

専攻制度の一環として、高度情報社会を主体的に生きる基礎として「メディア情報副専攻」を

開講する。 3) メディアテクノロジー講座:メディアテクノロジー講座は単位としては認定されないが、最新

の情報メディア技術を短期間に集中して学習し、学部の授業やメディア情報副専攻を先導ある

いは補完する役割を担っており、メディア情報活用系、メディア情報技術系、マルチメディア

技術系から構成している。 以上の研究教育活動に加え学内の研究教育のための情報基盤の整備と運営に務めている。各校舎の

研究教育のためのコンピュータとネットワーク(LAN)の整備および校舎間とインターネット環境の整

備・運営である。

〔点検・評価(長所と問題点)〕 目標の実現に向けた取り組みを評価の視点および項目を設定して評価を行った。以下に示す。 1) 評価の視点および項目

a 研究活動:分野が先端的であるか?研究業績は十分なものであるか? b 教育活動:大学生活を送るためのリテラシー。現代の社会に必要な知識。技術 c 環境整備・運用:先端的な研究教育のための機能と利用環境

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Page 39: 第1章 理念・目的・教育目標 1. 大学の理念・目的 大学の理念 ......第1 章 文学部 【文学部】 2. 学部・センターの理念・目的・教育目標

第 1 章 総合情報センター

2) 評価 a 研究活動:プロジェクト研究「クリエイティブコミュニケーション」を施設の教員に加え学外

の研究者の参加を得て開始したばかりであるが、今後の成果が期待できる。 b 教育活動:必要な情報リテラシーの教育は十分な成果をあげている。 開講した初年度ではあ

るが、副専攻科目の受講者が春セメスターと秋セメスターを比較しても増加傾向にあり期待で

きる。 c 環境整備・運用:少ない予算(他大学に比して)の範囲では、質的・量的にも目的を達成してい

る。今後は、通信トラフィックの増加への対応や電子教材開発支援などの強化が求められる。

〔将来の改善・改革に向けた方策〕 1) 大学の情報化への取り組みは、各論として貧弱である。すなわち、教育活動を支える組織的対

応や施設・設備・予算面での対応が不十分でありトップマネージメントの理解を得る活動と努

力が求められる。 2) 全学が対象であるが、校舎間あるいは学部間に設備や教育支援体制に格差があり早期に是正す

る必要がある。

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Page 40: 第1章 理念・目的・教育目標 1. 大学の理念・目的 大学の理念 ......第1 章 文学部 【文学部】 2. 学部・センターの理念・目的・教育目標

第1章 文学研究科

【文学研究科】

3. 大学院研究科の理念・目的・教育目標 研究科の理念・目的・教育目標とそれに伴う人材養成等の目的の適切性、並びにその達成状況に

ついて(項目No.66)[現状] 学則の定める理念・目的であるが、修士課程・博士課程前期は、「広い視野に立って精深な学識を

授け、専攻分野における研究能力又は高度の専門性を要する職業等に必要な高度の能力を養うこと」

(大学院学則第 4 条)を目的にしている。一方、博士課程後期は「専攻分野について研究者として自

立して研究活動を行い、又はその他の高度に専門的な業務に従事するに必要な高度の研究能力及びそ

の基礎となる豊かな学識を養うこと」(大学院学則第 5 条)を目的としている。 上記の学則に加え本大学院では、修士課程・博士課程前期の教育目的をより明確化することを検討

している(2001 年度大学院改革ガイドライン)。本研究科もその明確化とはすなわち、①高度専門職

業人教育と②博士課程後期への進学を前提とする研究者養成教育である。本研究科は、これを教育目

標としている。 本専攻は、文明研究・史学・日本文学・英文学・コミュニケーション学の各専攻で構成されている。

各専攻それぞれが、修士課程・博士課程前期と博士課程後期を開設している。これらの専攻では教育

目標を、学則の定めるところ及び大学院改革ガイドラインの示すところにおき、カリキュラムを構成

して、その具現化、人材育成にあたっている。 [点検・評価(長所と問題点)] 研究科の教育目標が達成されているかのチェックであるが、第 1 に点検すべきは、院生に多様な学

習機会と幅広い視野を与えることが保証されているか、それを具現化する制度があるかという点であ

る。 本研究科の各専攻は、他専攻、他研究科の授業科目の履修を積極的に薦めている(学則第 15 条 2

項に基づく)。さらに、協定を結んでいる他大学院(国内 19 大学)での授業履修についても、奨励し

ている(学則第 16 条 2 項)。加えて本学は、大学と交流協定を結んでいる 13 カ国 22 大学・機関に対

して派遣留学を実施し、大学院生にも開放している。制度は整備されており、評価できる。 第 2 の点検は、「高度専門職業人教育」「研究者養成教育」が、並行して円滑におこなわれているか

についてである。後者、すなわち「研究者養成教育」については、研究科各専攻はカリキュラムの上

で、それを十分意識して取り組んでいる。一方、「高度専門職業人教育」については、近年ようやく、

一部の専攻(コミュニケーション学専攻)が資格取得を前提としたカリキュラムを修士課程・博士課

程前期に設置したばかりで、他専攻はその具体的取り組みは遅れている。 第 3 の点検は、学位取得についてである。これは博士課程後期の教育目標「高度の研究能力及びそ

の基礎となる豊かな学識を養う」(学則第 5 条)とかかわる部分である。従来、文系の専攻では学位

取得年齢が比較的高い傾向にあり、必ずしも博士課程後期在籍中に博士論文の作成を行わない傾向に

あった。しかしながら近年では、文系大学院全体の傾向として、課程博士を増やす傾向にある。本研

究科の学位取得者は、過去 5 年間のデータをみると、5 年間で 7 名(年間 1~3 名)に留まっており、

今後改善が必要な点である。 第 4 の点検点は、上であげた大学院改革ガイドラインの①高度専門職業人教育、②研究者養成教育

についての問題である。大学院での教育指導にあたっては、①、②を行なっているが、どのような人

材育成を目指すための教育かについて、現状では具体的な目標を定めきれずにいる。 [将来の改善に向けた方策] 教育目標を達成する基本的な制度は、一応整備されていると判断する。問題は、カリキュラムや個々

の制度が、相互に連関しながら円滑に機能しているかであり、それを総合的にチェックするシステム

46

Page 41: 第1章 理念・目的・教育目標 1. 大学の理念・目的 大学の理念 ......第1 章 文学部 【文学部】 2. 学部・センターの理念・目的・教育目標

第 1 章 文学研究科

をどう構築するかである。 改善すべき点としてあげた学位取得の問題は、博士課程後期の成果目標の一つと位置づけ、研究指

導強化に取り組むべきである。また人材育成については、今後、教員間での議論を活発に行なう必要

がある。

47

Page 42: 第1章 理念・目的・教育目標 1. 大学の理念・目的 大学の理念 ......第1 章 文学部 【文学部】 2. 学部・センターの理念・目的・教育目標

第 1 章 政治学研究科

【政治学研究科】

3. 大学院研究科の理念・目的・教育目標 研究科の理念・目的・教育目標とそれに伴う人材養成等の目的の適切性、並びにその達成状況に

ついて(項目№66)

〔現状〕 政治学研究科は、1971 年 4 月に修士課程、1973 年 4 月に博士課程が開設され、時代の進展のなか

で教育科目、教育体制の面において拡大されてきた。しかし、その理念とするところは、今日にいた

るまで堅持されている。以下、研究科の理念を示す。 1) 行動科学的研究・教育手法の導入:政治学全般にわたる各分野の伝統的研究の対象と方法をふ

まえつつ、行動科学研究に基づく政治分析を導入し、双方にわたる研究動向の総合をめざして

いる。行動科学と言う用語は、一定の明確な定義がなされているわけではないが、政治学研究

科が発足当初から用いてきた意味は、脱イデオロギー(特にマルクス主義)、脱観念論、計量

化、システム論、学際的などを特徴としている。 2) 学際的手法の導入:行動科学の手法である学際的見地から幅の広い科目編成を行っている。 3) 動態的研究・教育手法の導入:政治現象を動態的に研究し、かつ、応用しうることを目指して

いる。

〔点検・評価(長所と問題点)〕 政治学研究科の理念、教育目標の評価は、①歴史的観点からの評価、および②現実社会における機

能的側面(役に立つかどうか)の観点から評価を行う。 1) 歴史的評価

政治学研究科が目指した教育理念・目標は、歴史的に唯物史観的政治学の崩壊のなかで正し

かったことが立証された。 2) 機能論的評価

高度情報化時代、グローバリゼーション化、社会の多様化、都市化のなかで、システム論、

政策学などの見地からの研究・教育が重要視されてきている。 〔将来の改善・改革に向けた方策〕

政治学研究科は、次のような点で検討、改革が必要である。 1) 研究科が掲げた理念、教育目標は、今後においても有効であろうか。構成教員間における研究

会、頻繁な討論が必要である。 2) 学園コミュニテイを考えるとき研究科学生、また一般学生にも研究科が掲げている理念、教育

目標をインターネットやパンフレットなどの広報手段、また公開研究会、講演会などを通じて

周知徹底する必要がある。

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Page 43: 第1章 理念・目的・教育目標 1. 大学の理念・目的 大学の理念 ......第1 章 文学部 【文学部】 2. 学部・センターの理念・目的・教育目標

第 1 章 経済学研究科

【経済学研究科】

3. 大学院研究科の理念・目的・教育目標 研究科の理念・目的・教育目標とそれに伴う人材養成等の目的の適切性、並びにその達成状況に

ついて(項目NO.66) 〔現状〕

1) 歴史・理念: 経済学研究科の歴史は、1979 年に、応用経済学専攻の修士課程(入学定員 10 名)の開設によって始

まった。1981 年には、同課程に博士課程(入学定員 5 名)が開設され、経済学研究科の陣容が整っ

た。以来、経済学、経営学分野の専門的研究者および高度専門職業人の養成をめざして、先端的な研

究と高度な専門知識の教育・指導を推進してきた。すなわち、学部卒業レベルの経済学や経営学の基

礎知識を基盤として、より高度な理論的研究を展開するとともに、科学的・実証的研究方法の実践的

体得を通じて、学生ひとり一人に、高資質な応用経済分析の能力と優れた洞察力を身につけさせるた

めの教育と研究を行なってきた。 2) 目的・教育目標: 本研究科の目的とするところは、社会科学を真剣に学ぼうとする学生に、今日のような高度技術・

情報化社会において、一層複雑化し、グローバル化する経済・社会現象を、広く、深く理解するため

の知識を習得せしめ、問題解決のための洞察力を涵養せしめることである。また、こうした教育・指

導を通じて、専門分野での高度な理論研究を推進するとともに、実務界における難易度の高い社会・

経済問題に、的確な解決策を提示し、実施していく能力のある人材を育成することである。 3) 組織・運営: 2001 年度現在、本研究科担当教員は、12 名で、全員が政治経済学部の専任教員である。このうち,

1 名は、特任教授である。本研究科は、学部を基盤として組織され,運営されているので、本研究科

のみの専任教員として雇用されているものはいない。また、本研究科には、現在のところ、学外から

の非常勤講師も学内の他の学部や研究教育機関からの兼担教員も雇用されていない。なお、上記 12名のうち、11 名が、博士課程前期および後期の講義と演習を担当している。1 名は、博士課程前期の

講義と演習、および博士課程後期の講義を担当している。来る 2003 年度には、博士課程前期の講義・

演習を担当する 3 名の教員が、これに加わることになっている。本研究科は、委員長、主任教授、常

任教務委員の各 1 名、合計 3 名が研究科の運営に責任を持って当たっている。具体的には、平素の教

育・指導業務のほかに、毎月一回の研究科委員会を開催し、大学院における教育・研究に関する審議

をおこなっている。委員会の議長は、研究科委員長がつとめ、主任教授と常任教務委員が委員会記録

と議事録の発行をおこなっている。このほかに、大学院教員資格再審査委員会、奨学金支給学生審査

委員会などの、常設・臨時の各種委員会が設置されている。 4) 学生数: 本研究科の学生数および近年の動向は、〔付表-1〕に示された通りである。ごく例外的な時期を除

いて、大部分は、入学定員以内の学生数に落ち着いている。現在のところ、本研究科に在籍する学生

数は、博士課程前期に 7 名、博士課程後期に 1 名、合計 8 名である。また、学生一人当たりの教員数

は、博士・前期の場合、1.5 人である。近年の入学生の特徴は、留学生と女子学生の比率が高まって

いることである。留学生の国籍は、中国を筆頭に,東南アジアがほとんどである。女子学生の大部分

は、留学生である。

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第 1 章 経済学研究科

(付表―1)経済学研究科の在籍学生数(博士課程前期・後期)

( )内は、女子学生数(内数) 1997

年度

1998

年度

1999

年度

2000

年度

2001

年度

2002

年度

博士

(前期)

10(5) 11(6) 6(3) 6(3) 8(4) 7(4)

博士

(後期)

1(0) 1(0) 1(0) 1(0) 1(0) 1(0)

総 数 11(5) 12(6) 7(3) 7(3) 9(4) 8(4)

〔点検・評価(長所と問題点)〕 本研究科は、応用経済学専攻の 1 コース制であるが、経済学と経営学の両分野にわたって、高度で

幅広い知識が学修できる。これまでの傾向としては、税理士、公認会計士などの資格取得をもくろん

で入学してくる学生が目立ったが、最近では、これに加えて、学部卒業後の進路が未決定であったり、

就職試験に失敗した学生も、入学してくるようになった。これに対して、学術的研究や高度に専門的

な研究を目指して入学してくる学生は、きわめて少数になった。学生にとっては、学部卒業後の生き

方に、事実上、様々な選択肢が用意されているのが現代の特徴であり、そのことは、就職した後の社

会人にとっても同様である。こうした傾向を考えると、本研究科のカリキュラムの在り方や教育方針

などについて、再検討をすべき時機にさしかかっているものと思われる。 学校教育法第 65 条は、「大学院は、学術の理論及び応用を教授研究し、その深奥をきわめて、文化

の進展に寄与することを目的とする」とある。本研究科の理念と目的および教育目標は、いずれも、

この条文の内容に合致したものであり、同時に、本学の建学の理念・目的と軌を一にするものである

思われるが、教育の内容や指導方法などに関しては、改善のための努力を続けていかねばならない。

なお、本研究科の理念・目的は、本学の「大学院学則」、「大学院要項」および「大学院ガイド」など

に、明記されている。 〔将来の改善・改革に向けた方策〕 本研究科は、来る 2004 年には、修士課程が開設されて 25 周年になる。これを記念した行事をおこ

なうとともに、今後の更なる発展に向けて教職員ともども努力していきたいと思う。このため、具体

的には、 1) 研究科創設 25 周年記念行事準備委員会の発足 2) カリキュラム・人事委員会を発足させ、中・長期的視点から、研究科の在り方を検討する。

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第 1 章 法学研究科

【法学研究科】

3. 大学院研究科の理念・目的・教育目標 研究科の理念・目的・教育目標とそれに伴う人材養成等の目的の適切性、並びにその達成状況に

ついて(項目№66) 〔現状〕 本研究科は、博士課程前期に公法・経営法・国際法比較法の三専攻を擁し、同後期にはそれらを統

合する形で法律学専攻を設けている。 前期課程では、現代社会の急速な技術化と国際化、現代法の高度の専門化と広い日常化に対応して、

各分野における法学の高度な研究をこころざし、後期課程への進学希望を持つ教育研究職志望者の基

礎的育成を行うとともに、とりわけ法律の分野における、社会の中堅的な担い手を指導する専門家を

養成することを目的としている。 後期課程では、教育研究職志望者に対して、前期課程での教育研究を継続させるとともに、隣接諸

学科の専門的知識とのより高度のレベルでの統合を実現するために、狭い専攻を越えた幅広い法律学

的知識の獲得と、複眼的な発想能力の涵養を目的としている。 〔点検・評価(長所と問題点)〕

1) 上記の「理念・目的」は、本来あるべき「大学院」として適切か。 大学の大衆化の進んできた現代日本において、「あるべき大学院」とは、一部、かつての大学が果

たしてきた社会的な役割、ある意味で世俗的な役割を果たすとともに、従来どおり、最先端の研究成

果を生み出しつつ、次代の教育研究を担う人材を育成することのできる大学院である。また、「あるべ

き法学研究科」とは、現実的に言えば、4 年間の学部での法学教育のいわば補充と発展を二つながら

行い、学部卒以上の法的処理能力と法に関わる資格を得させる一方、各分野の法学の専門教育研究を

担う人材を再生産することもできる法学研究科である。 本研究科は、1990 年の修士課程発足、1993 年の博士課程(後期)の発足以来、高度の職業人の養

成と教育研究者の再生産をその使命と考え、上記の「理念・目的」を掲げ教育を行ってきた。

2) 上記「理念・目的」の中に、その教育研究に関わる基本方針、教育を通じた人材育成に関わる

基本方針が明示されているか。 1)で述べたように、本研究科の「理念・目的」は法律分野の人材育成にこそ焦点を合わせたもので

ある。

3) 上記「理念・目的」は、学校教育法第 65 条の趣旨と整合しているか。 学校教育法第 65 条は、「大学院は、学術の理論及び応用を教授研究し、その深奥をきわめて、文化

の進展に寄与することを目的とする」と規定している。 法律学は優れて実践的な学問である。その意味で理論とその応用を分離して研究教育することは不

可能であるか、少なくとも無意味に近い。法律学の深奥をきわめる、ということは、法実践に通暁す

ることでもある。本研究科は、そのような観点から、実社会で活躍できる高度職業人の育成と将来の

教育研究者の育成にあたってきた。そうすることによって、わが国のみならず世界の文化の進展に寄

与したいからである。

4) 上記「理念・目的」に大学の個性・目的が反映されているか。 上で述べたように、本研究科は普遍的に「あるべき法学研究科」に近づくべく、その「理念・目的」

を構想した。そこには、特に当大学の個性・目的というものが反映されていない、ということを認め

ざるを得ない。

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Page 46: 第1章 理念・目的・教育目標 1. 大学の理念・目的 大学の理念 ......第1 章 文学部 【文学部】 2. 学部・センターの理念・目的・教育目標

第 1 章 法学研究科

5) 上記「理念・目的」は公的刊行物などで明確にされているか。 学部に比べると、決して十分とは言えないが、ホームページや「進学ガイドブック Perfect」、「大

学院パンフレット」で一応の広報は行われている。ただ、後二者は明らかに、高校生向けのものであ

り、大学院進学の直接的ニーズに訴求するものではない。

6) 上記「理念・目的」の実現に向けて改善・改革の努力がなされているか。 ここでもやはり、大学院あるいは研究科の存在アピールの必要が痛感される。教育研究者のリクル

ートという「目的」はそうではないが、高度職業人の育成という「目的」が十分に広く理解されてい

るとは言いがたい状況である。 しかし、2004 年度の法科大学院開設、及び、それに伴う現行大学院の改革は、そのような「目的」

の根本的見直しを迫るかもしれない。法科大学院を含む法学研究科は、法曹養成と教育研究者養成を

主たる任務とし、それ以外の法律専門職の育成には、少なくとも直接にはコミットしなくなるかもし

れない。とはいえ、法律分野の高度職業人の育成という社会的任務自体は、大学が果たすべきものと

して依然残るはずである。それを法科大学院がなんらかのかたちで担うべきか、はたまた、学部が担

うべきか、現在、鋭意検討中である。 〔将来の改善に向けた方策〕

上記 6)でも述べたように、法科大学院という、法曹養成に特化したまったく新しい教育機関が出

現することで、従来の大学院の「理念・目的」は大きく再検討されることになる。その中で、法学研

究科がこれまで果たしてきた役割ははっきりとした機能分化を迫られることになるだろう。本研究科

も、学部改革とあいまって、法科大学院時代に自らに与えられる社会的アサインメントを見極める努

力をしていく所存である。

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Page 47: 第1章 理念・目的・教育目標 1. 大学の理念・目的 大学の理念 ......第1 章 文学部 【文学部】 2. 学部・センターの理念・目的・教育目標

第 1 章 芸術学研究科

【芸術学研究科】

3. 大学院研究科の理念・目的・教育目標 研究科の理念・目的・教育目標とそれに伴う人材養成等の目的の適切性、並びにその達成状況に

ついて(項目NO.66) [現状] 芸術学研究科は、芸術並びにその関連領域の学問的研究と教育を目指して、1973 年に設置された。

以来、人間生活の中のあらゆる芸術現象に関わる問題を対象とした教育や、研究活動を展開してきた。 本研究科は、音響芸術専攻と造型芸術専攻の 2 専攻からなり、芸術および関連領域における学問的

研究と実践的研究(演奏、制作、デザイン)を併せ行っている。主な教育・研究領域は、音楽学、美

術学、デザイン学の理論的、及び実践的教育・研究の諸分野であるが、現代の状況から生ずる研究課

題(高度技術・情報社会の中での芸術、コミュニケーション及び環境問題、芸術療法、等々)にも積

極的に取り組んでいる。

[点検・評価(長所と問題点)] 次に示す評価の視点および項目に沿って、目標実現に向けた取り組みがなされているかについて評

価を行った。 1) 目標 社会の諸分野で活躍できる広い意味での芸術の専門家を養成する 2) 評価の視点及び項目

a 芸術学研究科の教育課程は、学校教育法第 65 条及び大学院設置基準第 3 条第一項の目的にか

なうものであるか。 b 個性・特徴が理念・目的に反映しているか。

3) 評価 a 芸術学研究科は、深く専門性を追求する教育とともに、問題を多角的に考察する目を養うよう

専攻を越えた講義を設け、「広い視野に立って精深な学識を授け、研究能力と高度の専門性を

要する職業等に必要な高度の能力を養う」に相応しい教育を行っており、この点では大いに評

価できる。 b 専門性を高めるという意味で、少数の大学院生(音響芸術専攻 9 名、造型芸術専攻 4 名)に対

してそれ以上の数の教員がきめ細かい個人指導を行っている。また、高度な能力を養うために、

研究発表等の機会を通して大学院生の学習の訓練を行っている。 [将来の改善・改革に向けた方策] 以下の様な改善・改革を目指したいと考えている。 1) 従来の学問領域が不明瞭になる状況をふまえて、新しい境界領域の研究に対して柔軟に取り組

む研究環境を作る。 2) 教員も大学院生もともに、外部への働きかけを積極的に行い、評価されるような体制を整備す

る。

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Page 48: 第1章 理念・目的・教育目標 1. 大学の理念・目的 大学の理念 ......第1 章 文学部 【文学部】 2. 学部・センターの理念・目的・教育目標

第 1 章 体育学研究科

【体育学研究科】

3. 大学院研究科の理念・目的・教育目標 研究科の理念・目的・教育目標とそれに伴う人材養成等の目的の適切性、並びにその達成状況に

ついて(項目NO.66) [現状] 研究科の理念・目的・教育目標は、本学の大学院学則、第 1 条「本大学院は東海大学建学の精神に

則り、専門分野における高度にして専門的な学術の理論及び応用を教授研究し、その意義を認識する

と同時に、その深奥を究め文化の創造発展と人類の福祉に貢献することを目的とする」また、第 4 条

「修士課程及び博士課程前期は、広い視野に立って精深な学識を授け、専攻分野における研究能力又

は高度の専門性を要する職業等に必要な高度の能力を養うことを目的とする」と明示されている。こ

れらの理念・目的を実現すべく体育学研究科(修士課程)は、1976 年に設置され現在に至っている。

本研究科は、体育学専攻一専攻しかないが、体育学の研究領域は人文科学・社会科学・自然科学の広範

にわたっているので、専攻を 4 つの専門分野[体育学」「体力学」「体育方法学」「社会体育学」に区分

して対応している。各院生は希望する専門分野で研究指導教員の教授を受け、研究活動に精励してい

る。 [点検・評価(長所と問題点)]

1) 評価項目 a 研究科の理念・目的は、本来あるべき大学院として適切か。また、その中にその教育研究に関

わる基本方針、教育を通じた人材養成に関わる基本方針が明示されているか。 b その理念・目的は、学校教育法第 65 条「大学院は学術の理論及び応用を教授研究し、その深奥

をきわめて、文化の進展に寄与することを目的とする」の趣旨と整合しているか。 c 大学の個性特徴が理念・目的に反映されているか。 d 理念・目的が公的刊行物等で明確にされているか。 e 理念・目的の実現に向け改善・改革の努力がなされているか。

2) 評価 a 研究科の理念・目的・教育目標は、本学の大学院学則第 1 条及び第 4 条に明示されている。これ

らは大学院として適切であると考える。 b その内容は、「本研究科は本学の建学の精神である人道主義、人格主義に立脚し体育学の専門

分野について、高度にして専門的な理論と応用を教授研究し、研究能力の養成をはかり、なら

びにその基礎となる豊かな学識を有する人材を育成し、人類文化の発展に貢献しようとするも

のである」と記されており、学校教育法第 65 条に概ね整合する。 c 東海大学の個性・特徴は建学の精神であり、理念・目的に十分反映している。 d 理念・目的については「大学院要項」及び、広報誌「パーフェクト」「大学院ガイド」に掲載され、

明確にされている。 e 理念・目的の実現に向けて、研究科教員は個々に努力をしている。組織的には、「大学院評価委

員会」や「学部将来構想委員会」の大学院プロジェクトで行おうとしている。しかし、現時点

では改善改革の必要性について論じられているが、具体的な方策についてはまだ明確ではない。 [将来の改善に向けた方策] 理念・目的の実現に向けては、「体育学部将来計画委員会」に大学院プロジェクトを設け、改善・

改革の努力を行っている。その内容は、2005 年度をめどに大学院の改善・改革を行うために、現研究

科の理念・目的の再確認、教育目標の明示、人材養成に関わる基本方針などの再検討とともに「博士

課程」の設立の可能性について検討を進めている。また、大学院は、高度の専門的知識・能力を有する

人材の養成や職業上必要な新しい知識・技術を求めるものの養成に対応する必要がある。大学院はそれ

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Page 49: 第1章 理念・目的・教育目標 1. 大学の理念・目的 大学の理念 ......第1 章 文学部 【文学部】 2. 学部・センターの理念・目的・教育目標

第 1 章 体育学研究科

ぞれの課程の目的・役割を明確化する必要がある。従って、修士課程にあっては研究者養成の一段階ま

たは高度専門職業人の養成などその役割の方向性を明確にする予定である。

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Page 50: 第1章 理念・目的・教育目標 1. 大学の理念・目的 大学の理念 ......第1 章 文学部 【文学部】 2. 学部・センターの理念・目的・教育目標

第 1 章 理学研究科

【理学研究科】

3. 大学院研究科の理念・目的・教育目標 研究科の理念・目的・教育目標とそれに伴う人材養成等の目的の適切性、並びにその達成状況に

ついて(項目No.66) 〔現状〕 大学院の理学研究科は 1968 年 4 月に、修士課程の 3 専攻(数学・物理学・化学)で発足し、1970

年にはこれら 3 専攻の博士課程が増設され、数学専攻は 2002 年度に数理科学専攻と名称変更がなさ

れ、現在に至っている。本大学院の理念・目的は東海大学大学院学則第 1 章第 1 条において『本大学

院は東海大学建学の精神に則り、専門分野における高度にして専門的な学術の理論及び応用を教授研

究し、その意義を認識すると同時に、その深奥を究め文化の創造発展と人類の福祉に貢献することを

目的とする。』ことが明記されている。また、その教育研究に関わる基本方針、教育を通じた人材養成

に関わる基本方針は、東海大学大学院学則第 1 章第 4 条、第 5 条、大学院要項、大学院ガイドに明示

されている。特に、理学研究科は科学の研究・教育に比重が置かれ、主体性をもって研究を行い、問

題発見解決することを教授している。また、理学研究科は理学と他分野の境界領域にも目を向けてお

り、博士(学術)の学位取得者も出している。その他、教育者の養成を目的として、教育機関(中学・

高校・大学)の実務者や研究者養成のカリキュラムも整備されている。(東海大学大学院学則、大学院

要項、大学院ガイド) 〔点検・評価(長所と問題点)〕 東海大学大学院理学研究科の理念・目的・教育目標は東海大学大学院学則、大学院要項、大学院ガ

イド等の公的刊行物で明確にされており、その理念・目的は学校教育法第 65 条の趣旨と整合してい

る。本学大学院理学研究科の理念・目的は東海大学建学の精神に則ったものであり、東海大学として

の個性・特徴が充分に反映されている。また、近年の世界の流れに沿う改革として、数学専攻は 2002年度に数理科学専攻(数学コース、情報数理学コース)と名称変更され、カリキュラムもそれに合わ

せて変更された。 〔将来の改善に向けた方策〕 理学研究科は科学の研究・教育に比重が置かれ、主体性をもった研究をより推進し、問題発見解決

することができる人材養成を推し進める必要がある。今後、より多くの修士、博士(学術を含む)の

学位取得者を養成し、教育者・研究者・実務者として多くの人材を社会に輩出することが不可欠であ

る。

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Page 51: 第1章 理念・目的・教育目標 1. 大学の理念・目的 大学の理念 ......第1 章 文学部 【文学部】 2. 学部・センターの理念・目的・教育目標

第 1 章 工学研究科

【工学研究科】

3. 大学院研究科の理念・目的・教育目標 研究科の理念・目的・教育目標とそれに伴う人材養成等の目的の適切性、並びにその達成状況に

ついて(項目NO.66) 【現状】 本学では、1963 年 4 月に大学院工学研究科を開設し、電気工学および応用理学の 2 専攻の修士課

程を設置した。これと同時に東海大学大学院学則を制定したが、以降、研究科・専攻の増設あるいは博

士課程の設置などにより随時学則の改訂を行い、最近では 2002 年 4 月に改訂し、今日に至っている。 その学則の第 1 章総則第 1 条において、「本大学院は東海大学建学の精神に則り、専門分野におけ

る高度にして専門的な学術の理論及び応用を教授研究し、その意義を認識すると同時に、その深奥を

究め文化の創造発展と人類の福祉に貢献することを目的とする」として、その設置目的を明記してい

る。また、2002 年度大学院要項(Ⅱ)において、工学研究科の理念、設置目的、教育目標として「工

学研究科は、工学に関する学術の深奥を究めようとする学部卒業生の熱意並びに産業界から要請され

た技術者・研究者を育成するため、先の 2 専攻の修士課程を設置した」ことを示している。 先の 2 専攻設置の後、教授陣の充実と教育研究施設の拡充に応じて専攻を増設し、1976 年 4 月に

経営工学専攻博士課程後期を開設した。これを最後に、現在の電気工学専攻、電子工学専攻、応用理

学専攻、光工学専攻、工業化学専攻、金属材料工学専攻、建築学専攻、土木工学専攻、機械工学専攻、

航空宇宙学専攻、経営工学専攻の博士課程前期・後期の 11 専攻体制を整え、今日に至っている。 工学研究科各専攻においては、上記の教育目標を達成するため、各専門領域の特性に合わせた独自

のカリキュラムを編成し、これに基づいて教育研究を行っている。まず博士課程前期では、学部教育

に続いて、より高度な専門的学識を授け、指導教員による研究を中心とした個別指導によって、問題

発見解決型の能力と研究に関する基礎的素養を備えた人材を育成している。そして博士課程後期では、

指導教員による指導のもとに博士論文作成のための研究を中心とした独創的研究開発能力を備えた人

材を養成している。 【点検・評価(長所と問題点)】 目標の実現に向けた取り組みを評価の視点および項目を設定して評価した。これを以下に示す。 1) 目 標:研究科の理念・目的・教育目標を明確にするとともに、問題発見解決型の能力と独創

性を備えた人材を養成する。 2) 評価の視点および項目

a .研究科の理念・目的・教育目標は明確に示されているか。 b .研究科の理念・目的・教育目標に沿った人材の養成は適切に実施されているか。

3) 評 価 a .東海大学大学院学則第 1 章総則第 1 条には「本大学院は東海大学建学の精神に則り、専門分

野における高度にして専門的な学術の理論及び応用を教授研究し、その意義を認識すると同時

に、その深奥を究め文化の創造発展と人類の福祉に貢献することを目的とする」とし、大学院

研究科の理念・目的・教育目標を明記している。また、工学研究科の理念・目的・教育目標と

して「工学研究科は、工学に関する学術の深奥を究めようとする学部卒業生の熱意並びに産業

界から要請された技術者・研究者を育成するため、1963 年 4 月に電気工学専攻と応用理学専

攻の修士課程を設置した」ことを明示している。 b .本研究科では、専門家としての学識、研究能力の開発に最重点を置いていることはもちろん

であるが、これと同時に本学の特色である正しい歴史観、世界観に基づく全人的な人間形成も

重視し、大学院教育にあたっている。大学院教育は奥深く真理を探究することが第一であり、

自らの興味ある研究課題を持つ指導教員のもとで研鑚に励むことになるが、分野の異なる教員、

院生との交流は研究上のヒントが得られるばかりでなく、自らの人間的な幅を広げるという点

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第 1 章 工学研究科

でも大切である。本研究科ではこのような意味で積極的にこの交流を勧めており、博士課程前

期においては修了に必要な単位数のうち、10 単位を限度に他専攻の科目を履修することを推奨

し、必要単位数に算入できるシステムを導入している。これは本研究科の長所のひとつである。

また、神奈川県内他大学の大学院との間でも受講機会を設けるなどして、学生の勉学・研究意

欲を掻き立てるような工夫もすでに取り入れている。以上のことから、人材養成は適切に実施

されているものと判断する。 【将来の改善・改革に向けた方策】

現在、大学院修了生に対する企業側の期待は極めて高い。一方、科学や技術の進歩は著しく、教

育内容、とりわけ講義科目の講義内容については不断の見直しや検討が必要である。本研究科では

このような立場からこれまでも必要なカリキュラムの改訂を行ってきた。この努力は現在も継続し

て行っており、2003 年度には光工学専攻において、光工学コースおよび画像情報工学コースの 2コース制をあらたに採り入れることにしている。さらに、他の専攻でも同様な検討を進めており、

2005 年度より実施する予定である。博士課程前期にあっては、社会・企業側からの期待にこたえる

ため、受け入れ定員の増員もあわせて検討している。しかし、博士課程後期の学生については、漸

増傾向にある専攻もあるが、入学定員を満たさない専攻がかなりある。従って当面の間は、入学者

数を増加するための努力をする必要がある。このため、本研究科では 2001 年度より社会人入学試

験制度を導入するなどの努力をしている。その結果、2002 年度より電気工学専攻など一部の専攻で

その効果が現れ始めている。

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第 1 章 開発工学研究科

【開発工学研究科】

3. 大学院研究科の理念・目的・教育目標 研究科の理念・目的・教育目標とそれに伴う人材養成等の目的の適切性、並びにその達成状況に

ついて(項目№66) [現状] 東海大学大学院開発工学研究科は、開発工学部の各学科の上に専攻をおいた修士課程として 1995

年に発足した。ここでは先端技術の中で特に重要とされ、進歩の著しい情報通信工学、素材工学、生

物工学および医用生体工学を専門分野とする高度の専門科学技術者を育てることを目的としている。 これからの時代に求められる科学技術者像は、真に人類の福祉に貢献する科学技術の開発を目標と

し、できるだけ幅広い分野への適応性を専門性と併せ持った技術者である。 その育成に向けて本研究科は次の教育方針の下に運営している。(1)問題解決能力の涵養:基本的な

法則性や概念の体系的把握は勿論のこと、それを応用・展開するなかで自ら問題や課題を発見し、そ

れを解決する方法を考え、実行するという問題解決能力を研究実験や研究室ゼミ等を通して修得に努

める。(2)専門性と総合性の養成:各専攻はそれぞれにさらに細かな専門分野(学系)を含んでいる。

よって、それぞれの学系に応じた組織的カリキュラムによる教育を一つの柱としているが、同時に狭

い専門分野に閉じこもることなく広い視野と見識を育てるため、各専攻の全分野で核となる講義科目

を設け、これを必修として課している。(3)産業界との連携:高度で幅の広い専門的な見識は大学の中

だけでは不十分である。幸い本研究科には産業界出身の教員が多いことと独自に設けている産学連絡

協議会の企業会員による特別講義などを通して、産業界の最新の技術開発状況などを学べるように努

めている。また、正規科目として特許法・企業経営特論も開講している。(4)大学院生活の充実:研究

指導教員による日常的指導に加えて、自習室として大学院学生合同研究室を設置し、データ整理や自

主的勉学に使用できるようにし、また、コンピュータ実習室の 24 時間開放や図書館の利用時間延長

など、学習環境の充実に努めている。 [点検評価(長所と問題点)] 本研究科の理念・目的は、上述した通りであり(大学院要項等に明示)、本来あるべき「大学院」

として適切である。また、その中に教育研究に関わる基本方針、教育を通じた人材養成に関わる基本

方針が明示されている。同時に、その理念・目的は学校教育法第 65 条の趣旨と整合しているものと評

価できる。 21 世紀を迎えて、人類・社会が直面する、食糧、エネルギー、地球環境、健康・福祉、安全などの

課題解決の重要性は益々増大しており、このことはとりもなおさず、本研究科の理念・目的の実践の

重要性が高まっていると考えられる。2001 年度にはセメスター制の導入、シラバスの作成などを実施

したところであるが、本研究科の理念・目的の実現に向けて、より一層の改善・改革の努力を払っていく

必要がある。 [将来の改善・改革に向けた方策] 時代の変化や社会の高度化・複雑化などが進む中で、学部教育ではより基礎・基本を重視し、教養

教育と専門教育の有機的結合を図っていく必要がある。それに伴って、大学院教育においても、従来

からの役割である高度の専門的能力を有する人材の養成、研究者の養成において、学術研究の著しい

進展や社会・経済の変化に対応できる幅の広い視野と総合的な判断力を備えた人材の養成が望まれる。

このような基本認識に立って、本研究科の将来を考えた場合、本研究科が修士課程であることから、

今後より一層、学部教育と大学院教育との連携を密にしたカリキュラム構成を図って、社会の要請に

応え得る高度な専門的能力を有する人材を養成することとしたい。また、本研究科の修了生の中には、

さらに研究者を目指して本学内他研究科博士課程や他大学の博士課程に進学するものがいることと、

本研究科の教員にも、十分に研究者養成指導のできる教員のいることから、本研究科内でも研究者を

養成できる博士課程の設置の可能性を検討することとしたい。

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第 1 章 海洋学研究科

【海洋学研究科】

3. 大学院研究科の理念・目的・教育目標 研究科の理念・目的・教育目標とそれに伴う人材養成等の目的の適切性、並びにその達成状況に

ついて(項目№66) 〔現状〕 東海大学大学院は東海大学建学の精神に則り、専門分野における高度にして専門的な学術の理論お

よび応用を教授研究し、その意義を認識すると同時に、その深奥を究め文化の創造発展と人類の福祉

に貢献することを目的とする。修士課程及び博士課程前期は、広い視野に立って精深な学識を授け、

専攻分野における研究能力又は高度な専門性を要する職業等に必要な高度の能力を養うことを目的と

する。博士課程後期は、専攻分野について研究者として自立して研究活動を行い、又はその他の高度

に専門的な業務に従事するに必要な高度の研究能力及びその基礎となる豊かな学識を養うことを目的

とする。海洋は地球表面の約 70%を占めており、地球の資源や環境を考えるとき、広大な海の存在は

ますます重要性を増している。本研究科は海洋にかかわる全ての科学と工学の学問領域を、その研究

対象としている。すなわち、海洋、海洋生物、海底地質ならびに固体地球科学などの理学的研究、水

産資源の研究、海洋資源開発、海洋利用技術、海洋環境保全、海洋調査などの工学的研究がその対象

となっている。本研究科は昭和 42 年に誕生したが、当時は「海洋工学専攻」(海洋に関する電子工学、

計測工学、土木工学、船舶工学など)と「海洋資源学専攻」(海底鉱物資源、同地質学、水産学など)

の 2 専攻であった。学部学科の整備と専門教員の充実によって徐々に変革され、現在は「海洋工学専

攻」(海洋に関する電子工学、計測工学、土木工学、船舶工学、航海工学など)、「水産学専攻」、「海洋

科学専攻」(海洋物理学、海洋科学、海底鉱物資源、海底地質学など)、「海洋生物科学専攻」の 4 専

攻から成る。各専攻では学部教育を基礎として、研究者の養成ならびに高度の専門的能力を有する人

材の育成を教育方針としている。特に自ら課題を探求し、柔軟かつ総合的に思考・判断し、解決する

能力の育成に重点を置き、海洋に関する幅広い視野の育成と総合的な判断力の育成を海洋学研究科の

理念としている。 〔点検・評価(長所と問題点)〕 目標の実現に向けた取り組みを評価の視点および項目を設定して評価を行った。以下に示す。 1) 目標:研究科の理念・目的・教育目標が適切なものであって、その実現のための方策が立てら

れているか。 2) 評価の視点および項目:

a 研究科の理念・目的は、本来あるべき「大学院」として適切か。またその中に、その教育研究

に関わる基本方針、教育を通じた人材養成に関わる基本方針が明示されているか。 b その理念・目的は、学校教育法第 65 条(大学院は、学術の理論及び応用を教授研究し、その

深奥をきわめて、文化の進展に寄与することを目的とする)の趣旨と整合しているか。 c 大学の個性・特徴が理念・目的に反映されているか。 d 理念・目的が公的刊行物等で明確にされているか。 e 理念・目的の実現に向けて改善・改革の努力がなされているか。

3) 評価 a 専攻分野における研究能力または高度な専門性を要する職業等に必要な高度の能力を養うこ

とを目的とすることは、本来あるべき大学院として適切である。また、研究者の養成ならびに

高度の専門的能力を有する人材を育成するという教育方針が明示されている。 b 専門的学術の深奥を極め文化の創造発展と人類の福祉に貢献することを謳っており、学校教育

法第 65 条の趣旨と整合している。 c 東海大学は、知識や技術の単なる教授に留まらず、ヒューマニズムに立脚した教養を重視して

いる。また、人間各自に内在する特性の開発伸張を重視し、多様な個性ある人材を社会に送り

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第 1 章 海洋学研究科

出すことを目指している。これらのことは、海洋に関する幅広い視野の育成と総合的な判断力

の育成という教育理念に合致するものである。また、本研究科は駿河湾に面し、海洋の研究に

は絶好の地理条件に恵まれており、高度の専門的能力を有する人材の育成に活かされている。 d 毎年大学院入学生に配布する大学院要項、および進学パンフレットである東海大学大学院ガイ

ドに掲載されている。 e 大学院指導教員の資格再審査制度を導入して、研究・教育のレベルアップを図るほか、海洋科

学技術センターとの連携大学院協定に基づき、大学院生は、海洋科学技術センターの優れた研

究施設・設備を使用して、教授等(非常勤)の資格を得た研究員の指導により、研究を行うこ

ともできるようにしている。 〔将来の改善に向けた方策〕 本研究科は海洋にかかわる全ての科学と工学の学問領域を、その研究対象としている。また、海洋

の研究は組織的に行われるようになってから日も浅く、今後の解明が必要な分野は多い。しかも、最

近の地球環境問題に関する社会の関心度の増大や研究・教育の重要性・必要性から考えると、本研究

科の教育・研究の体制を一層強化しその守備範囲も広める必要がある。このように広範な分野で高度

な研究教育を実施するためには多くの優れた教員を必要とする。今後、幅広く人材を募り、大学院の

理念に沿った内容の充実を図る必要がある。

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第 1 章 医学研究科

【医学研究科】

3. 大学院研究科の理念・目的・教育目標 研究科の理念・目的・教育目標とそれに伴う人材養成等の目的の適切性、並びにその達成状況に

ついて(項目№66) 〔現状〕 本医学研究科は、日進月歩の科学と情報社会に対応した、基礎医学から臨床医学にまたがる領域に

おける独創的な研究能力と高度な専門知識を有し、真のヒューマニズムに支えられた広い視野を備え、

人類福祉に貢献しうる人材を育成することを目的とし、相互連携による研究教育を主体とする博士課

程 5 専攻 38 分野に加えて、学問のグローバル化に対応すべく医学以外の分野から医学の発展に寄与

しうる人材を養成する修士課程を 1995 年より設置した。修士課程においては、1999 年に大幅なカリ

キュラム変更を行い、専門分野に留まらず広く関連領域についての学修が可能となるよう配慮したカ

リキュラムに変更した。また、2002 年度より医学研究科に付属する 5 つの研究センターを設け研究

拠点について整備しつつある。 〔点検・評価(長所と問題点)〕 本医学研究科では上記に示した理念・教育を目的としながらも、日進月歩の目覚しい発展を遂げて

いる医学分野において、常に時代に呼応した体制を心がけ実践すべく努力している。上記にある 5 つ

の研究センターは、従来的な縦割り型の専攻や部門(講座)単位での活動を打破することをねらいと

し、大学院学生を含む若手の研究者の育成を目指すとともに基礎と臨床での研究教育に関する種々の

情報を共有していくことにより、有機的連携をさらに明確に発展させていくことが可能であると考え

ている。大学院学生に限ったことではないが、近年の若手研究者の多くは自発的な研究意欲に乏しく、

初歩的な研究能力に欠ける傾向にある。特に臨床系の学生にあっては日々の診療・臨床実習に追われ、

研究に没頭する時間的余裕に恵まれていないのも原因の一つである。研究センターは 2002 年から設

置のため評価できるほどの実績は未だない。近い将来、大きな効果が得られると期待される。 その他、大学院学生の学修のため研究費補助制度、セミナーなどによる国際交流の充実、国内外に

おける学会発表に関わる諸経費の一部負担など、人材育成のサポートを行っているが、研究費用面な

ど未だ十分ではないと思われる。より理想的な環境を提供できるよう、多面において整備する必要が

あると考える。 〔将来の改善に向けた方策〕 研究施設は、新設されたセンターなど、現在のところ充分な体制にあると認識するが、将来に向け

ては、大学院学生が各研究部門や施設内での中枢として、大いに活躍できるような環境作りを目指し

たい。そのためには、更なる基礎臨床間の有機的連携が高められるよう、講義と研究の一体化、そし

て分野の壁を越えた大学院作りを行うべく、具体的にカリキュラムの整備を検討中である。

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第 1 章 健康科学研究科

【健康科学研究科】

3. 大学院研究科の理念・目的・教育目標 研究科の理念・目的・教育目標とそれに伴う人材養成等の目的の適切性、並びにその達成状況(項目№.66) [現状] 東海大学大学院健康科学研究科は、わが国の高齢化、少子化の急速な進展や核家族化等による家族

形態の変化、疾病構造の変化等に起因して急激に増大しつつある保健医療福祉サービスに対する社会

のニーズの応えるために、1999 年 4 月に設置された。本研究科は看護学専攻と保健福祉学専攻の 2専攻で構成されている。 今日の社会のニーズに対応するためには、保健、医療、看護、福祉の領域が従来の専門性の枠を乗

り越え、より総合的な視野に立って保健医療福祉を統合することが望まれており、そのためには、保

健医療福祉の実践の場で指導的な役割を担う専門職の人材を育成することのみならず、看護・福祉系

大学、専門学校等の高等教育機関における教育要員育成の期待に応える必要があると考えている。 本研究科は東海大学伊勢原校舎に位置し、本校舎はこれまで医学部付属病院の本拠地として地域医

療に大きな貢献をしてきた。今後の社会のニーズの変化に即した柔軟で有機的な保健医療福祉の実践

の場を創設していくことが求められていることを考えると、これまでの実績を踏まえながら、さらな

る展開を行う場として非常に恵まれた環境にあるといえる。実際、看護、保健、福祉分野と医療との

有機的な連携によって、従来の医療の枠を乗り越えた具体的な成果も生まれつつある。また、設立目

的に沿って、両専攻では教員、専門職などの人材を着実に社会に送り出してきている。この 2 年間

(2000,2001 年)で看護学専攻:大学教員 6 名、実践の場で活躍する専門職 15 名、保健福祉学専攻:

大学教員および専門学校教員計 6 名。 [点検・評価(長所と問題点)] 本研究科の理念・目標・教育目標について検証してみると、一般的に看護においても主として医療

補助に中心を置き、福祉においては社会的弱者の救済といった従来の縦割りとも言える比較的狭い領

域、組織での専門性を求める傾向があるが、それぞれの枠を越えた総合的見地に立つ指導的高度専門

職を育成することを目的とする本研究科の理念・目標・教育目標は、学校教育法第 65 条に合致する

と評価することが出来る。ただし、社会人の大学院での再教育希望者の増加が予測されるが、彼らの

ニーズに対応したカリキュラムへの配慮が不足していると思われるので、今後その検討が早急に求め

られている。 [将来の改善に向けた方策] 今後、教育・研究活動の充実はもとより、社会人の専門職のニーズに対応したカリキュラムを編成

し、その内容に関する積極的な広報活動の必要があると考える。現在、インターネットを利用した広

報活動を推進しており、今後周辺地域に対しても、研究発表やセミナーの開催などを通じて、その教

育理念や存在意義の周知に努める必要がある。 教員の研究の質的向上のために、さらなる専門性の追求と、教員相互の共同研究プロジェクトを企

画し、教育においても共同企画の可能性を探ることが必要であろう。

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