C13(4) (第12回) 薬の生体内運命 薬動学 薬物の排...

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1 C13(4) (第12回) 薬物の排泄② (ネフロン・腎クリアランス) 1 p.164 〜 178) 薬剤学講座(3号館6階) 崔 吉道 平成20年7月3日 13:15〜14:30 355講義室 脳(血液脳関門) 肺臓 心臓 A 吸収 D 分布 薬の生体内運命 -崩壊、分散、溶解 -拡散 -消化管内pH/運動性 -⽣体膜透過 -トランスポーター 薬動学 (薬物動態学、薬物速度論) Pharmacokinetis (PK) 2 肝臓 心臓 腎臓 筋肉,その他の組織 胆管 動脈 静脈 腸管 D 分布 M 代謝 E 排泄 -タンパク結合 -トランスポーター -酸化、還元、加⽔分解 -抱合 -胆汁中排泄 -⽷球体ろ過 -尿細管分泌 -尿細管再吸収 -トランスポーター 薬物の排泄 ・広義の排泄 薬物が体内から体外へ移行する過程 未変化体あるいは代謝物として体外へ消失する 腎臓を介した尿中排泄・・・・・(主要な経路、動態変動要因) ネオメディカル 薬の生体内運命 中島 恵美 編 p.165 (2008) 3 肝臓を介した胆汁中排泄・・・(主要な経路、動態変動要因) 唾液中、乳汁中、呼気中、中排泄 ・狭義の排泄 未変化体の消失過程のみ ネオメディカル 薬の生体内運命 中島 恵美 編 p.181 (2008) 4 5 糸球体 近位尿細管 6 OCTN2 Na + /K + -ATPase 核(DAPI) 遠位尿細管 近位尿細管 マウス腎臓皮質凍結切片の免疫染色像

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C13(4) (第12回)

薬物の排泄②(ネフロン・腎クリアランス)

1

(p.164 〜 178)

薬剤学講座(3号館6階) 崔 吉道

平成20年7月3日 13:15〜14:30 355講義室

脳(血液脳関門)

肺臓

心臓

A 吸収

D 分布

薬の生体内運命

-崩壊、分散、溶解-拡散-消化管内pH/運動性-⽣体膜透過-トランスポーター

薬 動 学(薬物動態学、薬物速度論)Pharmacokinetis (PK)

2

肝臓

心臓

腎臓

筋肉,その他の組織

胆管

動脈静脈腸管

D 分布

M 代謝

E 排泄

-タンパク結合-トランスポーター-酸化、還元、加⽔分解-抱合-胆汁中排泄-⽷球体ろ過-尿細管分泌-尿細管再吸収-トランスポーター

薬物の排泄

・広義の排泄

薬物が体内から体外へ移行する過程

未変化体あるいは代謝物として体外へ消失する

腎臓を介した尿中排泄・・・・・(主要な経路、動態変動要因)

ネオメディカル 薬の生体内運命中島 恵美 編 p.165 (2008)

3

肝臓を介した胆汁中排泄・・・(主要な経路、動態変動要因)

唾液中、乳汁中、呼気中、汗中排泄

・狭義の排泄

未変化体の消失過程のみ

ネオメディカル薬の生体内運命

中島 恵美 編p.181 (2008)

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糸球体

近位尿細管

6OCTN2Na+/K+-ATPase核(DAPI)

遠位尿細管

近位尿細管

マウス腎臓皮質凍結切片の免疫染色像

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原尿量: 180 L/日

ネフロンの構造と機能輸入/輸出細動脈

糸球体

近位尿細管

ヘンレのループ

遠位尿細管

結合尿細管と

集合管

ネオメディカル 薬の生体内運命中島 恵美 編 p.166-167 (2008)

7⾮結合型薬物は、⽷球体ろ過・能動分泌・再吸収を受ける

一日尿量: 1.5 L/日(99%以上が再吸収)

ヒト腎臓の重さ:

約150 g /1個

ネフロンの数:

約60万本/1個

直径: 約100 μm

長さ: 2-4 cm

全長: 約 25 km

老廃物の除去

体液の組成の調整

ホルモン産生

薬物の排泄に寄与

(約20%がろ過)

糸球体ろ過のメカニズム

(cf. 全血流量: 約 5,400 mL/min、 肝血流量: 約 1,500 mL/min)

ネオメディカル 薬の生体内運命中島 恵美 編 p.168 (2008)

分子量5,500程度までは100%ろ過

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(グルコース、アミノ酸なども一旦ろ過される)

分子量50,000を超えると殆どろ過されない

(タンパク結合した薬物はろ過されない)

荷電の影響を受ける(陰イオンは反発)

ネオメディカル 薬の生体内運命中島 恵美 編 p.167-168 (2008)

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ネオメディカル 薬の生体内運命中島 恵美 編 p.168 (2008)

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併用薬のトランスポーター阻害による体内動態の変動

プロベネシド

阻害!

ペニシリンG

有機アニオントランスポーター

ネオメディカル 薬の生体内運命中島 恵美 編 p.171 (2008)

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排泄 ↓

血中濃度推移 ↑

クラリスロマイシン(抗生物質)、キニジン(抗不整脈薬)、イトラコナゾール(抗真菌薬)は、 P-糖タンパク質を阻害する

→ ジゴキシン(強心配糖体)の分泌を抑制し、血中濃度を高める

NSAIDsとの併用でメトトレキサート(抗がん、抗リウマチ薬)の腎排泄が低下する

近位尿細管上皮細胞に発現するトランスポーター

ネオメディカル 薬の生体内運命中島 恵美 編 p.170 (2008)

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プロベネシドでペニシリンの腎排泄阻害

クラリスロマイシンでジゴキシンの

分泌阻害

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近位 ネオメディカル 薬の生体内運命中島 恵美 編 p.170 (2008)

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遠位

ネオメディカル 薬の生体内運命中島 恵美 編 p.173 (2008)

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近位尿細管再吸収の特徴

① 能動輸送である。② 刷子縁膜(管腔側膜)に発現するトランスポーターが関与する。③ Na+勾配(グルコース、リン酸、カルニチンなど)や

H+勾配(オリゴペプチド)を利用して低濃度側から高濃度側へ再吸収する。

④ 高濃度では飽和現象が見られる。⑤ 類縁化合物による阻害効果が見られる。

ネオメディカル 薬の生体内運命中島 恵美 編 p.172-173

(2008)

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図9 水の再吸収の2/3は近位尿細管でのNa+再吸収に伴い起こる

それにより、イヌリンは約125倍に、PAHは約585倍に濃縮される

図7 再吸収により流量が低下

分泌により流量が上昇

トランスポーターの飽和による尿中排泄速度の変化

ネオメディカル 薬の生体内運命中島 恵美 編 p.172 (2008)

16PAHの尿細管分泌が飽和 ブドウ糖の再吸収が飽和

尿のpH:通常4.5〜8.2で変動

単純拡散、pH分配仮説に従った遠位尿細管からの再吸収

ネオメディカル 薬の生体内運命中島 恵美 編 p.174 (2008)

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クリアランスは、消失速度を血中濃度で標準化したもの

消失速度(mg/hr)を初濃度(mg/mL)で割れ!

腎クリアランス ネオメディカル 薬の生体内運命中島 恵美 編 p.174 (2008)

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腎クリアランスと消失速度との関係ネオメディカル 薬の生体内運命

中島 恵美 編 p.175 (2008)

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腎クリアランス(CLr)は、

ネフロン全課程の各クリアランスの総和でもある

= 糸球体ろ過 + 尿細管分泌 ー 尿細管再吸収

GFR・f CLs CLR f : 非結合形分率

ネオメディカル 薬の生体内運命中島 恵美 編 p.176 (2008)

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種々物質のネフロン中の移行パターンと腎クリアランス ネオメディカル 薬の生体内運命

中島 恵美 編 p.177 (2008)

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クリアランス比:

GFR・f/CLr >1 ・・・・・・・ 分泌 > 再吸収

< 1 ・・・・・・ 分泌 < 再吸収

腎機能検査薬(糸球体ろ過速度GFR)

イヌリンは、ほとんどタンパク結合せず、糸球体ろ過のみで排泄される正確な値が得られる。欧米で用いられる方法

CL U V/C ( L/ i )

ネオメディカル 薬の生体内運命中島 恵美 編 p.178 (2008)

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臨床で利用されている方法一部尿細管分泌されるため最大2倍の誤差を持つ簡便法内因性物質のため投与不要①では尿中濃度、尿量、蓄尿時間、血漿中濃度より算出②では、血漿中濃度と年齢、体重、性別係数より求める

CL = U・V/C (mL/min)

血清クレアチニン値男性:0.6-1.2 mg/dL女性:0.4-0.9 mg/dL

PAHクリアランス

p-アミノ馬尿酸

タンパク結合率低い、

糸球体ろ過と尿細管分泌でほぼ全量が排泄

CL = U・V/C (mL/min)

腎機能検査薬(腎血流量、RPF)

ネオメディカル 薬の生体内運命中島 恵美 編 p.178 (2008)

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PSPクリアランス(臨床で利用)

フェノールスルホフタレイン

タンパク結合率は80%

糸球体ろ過されず(< 6%)、ほぼ100%(94%)尿細管分泌で排泄

*PAH、PSPの濃度が高いとき、能動分泌の飽和に注意24