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第10章公共財の理論 - Waseda University · 2006. 6. 22. · 公共財の特性...
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第10章 公共財の理論
公共財
= 誰でも利用可能
所有権・使用権が不明確
市場での取引きが成立しない
公共財の特性
非排除性:その財を1人の消費者に供給するときには,他のいかなる消費者もその消費から排除できない
→すべての消費者に同量供給
非競合性:1人の消費がその財をいくら消費しても他の消費者の消費可能量は減少しない
公共財の分類
排除性 非排除性
競合性 (1) (2) 純粋私的財
非競合性 (3) (4) 純粋公共財
(2):混雑現象→街路など(3):容易に排除可能→電波など
公共財の最適供給
2人のケース:個人A, B公共財は両者に等しく利用可能
公共財1単位の増加による社会的限界便益
=2人の私的限界便益の和 MBA + MBB
公共財1単位の追加的生産
=限界費用 MC公共財の最適供給条件
MC=MBA+MBB
公共財の最適供給条件(図解)
MBMC C
A
B
D
0 y1 y* y
MC
E
MBA+MBB
MBA
MBB
公共財による市場の失敗各個人が私的限界便益と公共財の限界費用を等しくすれば,非効率
政府による供給←申告限界便益の集計
(1)費用負担が申告限界便益と無関係過大申告によって利益を受ける
(2)費用負担が申告限界便益で決まる過少申告によって利益を受ける
フリー・ライダー問題
=虚偽の申告によって利益を得る行動が制度
的に引き起こされること
一般均衡分析2消費者2財2企業1要素のモデル2人の消費者A,Bの効用関数
uA=uA(xA, y), uB=uB (xB, y)2回連続微分可能な厳密な準凹関数
→限界代替率逓減の法則
私的財:xA,xB 公共財:y2企業の生産関数は
x=f(zx), y=g(zy) 2回連続微分可能な厳密な凹関数
:生産要素の制約z z zx y+ =
限界変形率MRT
最適供給条件の導出生産可能性曲線ーAの無差別曲線=残余曲線
Bの無差別曲線 → 最適点
最適供給条件
→ ボーエン=サムエルソン条件
公共財の供給メカニズム(Ⅰ):リンダール・メカニズム
2消費者2財1企業のモデル2人の消費者A,Bの効用関数
uA=uA(xA, y), uB=uB (xB, y)限界代替率逓減の法則
私的財:xA,xB 公共財:y生産関数: y =f(x) = x
MRT=1所得(私的財単位で)
MA,MB
2個人A,B→公共財の費用負担を交渉によって決める
Aの負担率=h (0≦ h ≦ 1)Bの負担率=1−hAの予算制約: xA+hy=MA
Bの予算制約: xB+(1-h)y=MB
公共財需要の決定
所与の負担率のもとで,各人の負担率と限界利益(限界代替率)とを等しくする
公共財の需要曲線:DA, DB
→交点=リンダール均衡
リンダール・メカニズム需要量の不一致が個人間で生じたとき,需要量が多い人の負担率を引上げ,少ない人の負担率を引下げることで全員の需要量が一致するように調整するメカニズム
2人の公共財需要が一致する負担率
→リンダール均衡
メカニズムの作動費用負担率h1→需要量DA
1, DB1
DA1>DB
1→Aの負担率引き上げ,Bの負担率引き下げ負担率h2 →需要量DA
2, DB2
DB2> DA
2→Bの負担率引き上げ,Aの負担率引き下げリンダール均衡 L=(h*,y*)
嘘をつくインセンティブ2個人,2財のケース
限界代替率
最適条件よリ
予算制約より
Aによる虚偽の行動
θ>1:私的財の評価が真の選好より高いように嘘をつくθ<1:私的財の評価が真の選好より低いように嘘をつく
最適条件よリ
予算制約より
個人Bは正直に行動 (1-h)y=10リンダール均衡
嘘をついたときの効用
正直と嘘の効用差
虚偽の選好表明の問題
公共財の供給メカニズム(Ⅱ):クラーク・メカニズム
政府は1単位の公共財を供給するか決定各消費者の費用負担のルール公共財1単位の供給費用-他の消費者の公共財に対する効用の総和
各消費者は費用負担のルールを知ったうえで公共財1単位に対する効用を政府に表明政府は各消費者の表明した効用の総和が供給費用を上回れば公共財を供給し,下回れば供給しない
虚偽の選好表明
消費者はn人(1,2,…,n)消費者iの公共財1単位に対する効用=u*i
公共財1単位の供給費用=p消費者iは政府に対して虚偽の効用を表明できる結果的に自らの真の効用u*iを表明する
消費者i(i=1,2,…,n)が政府に表明する効用=ui
消費者iの費用負担=p-∑≠ij
ju
① puuij
ji >+∑≠
*
i の表明するuiが
puuij
ji ≥+∑≠
を満たす限り,公共財は供給
puuij
ji −+∑≠
*
この値は正.一方,uiとして puuij
ji <+∑≠
を表明すれば,公共財は供給されない利得は0.i にとっては公共財は供給されるのが望ましく,また,あえて真の効用であるu*
i以外
を表明する誘因はない
の場合
iの利得は
② puuij
ji =+∑≠
*
iの表明するuiが puuij
ji ≥+∑≠
を満たすならば公共財は供給.iの利得はちょうど0.一方,uiとして puu
ijji <+∑
≠
を表明すれば公共財は供給されずに利得は0.i がどのようなuiを表明しようとも,公共財が供給されようがされまいが,i の利得は0.したがって,真の効用u*
i以外のものを表明する
誘因はない.
の場合
③ puuij
ji <+∑≠
*
i の表明するuiが puuij
ji ≥+∑≠
公共財は供給されるが,i の利得はpuu
ijji −+∑
≠
*
であり,負となる.一方,uiとして
puuij
ji <+∑≠
を表明すれば,公共財は供給されず利得は0.i にとっては公共財は供給されない方がよい.真の効用であるu*
i を表明するのが最適.
の場合
を満たすならば
公共財の供給メカニズム(Ⅲ):ボーエンの投票モデル
多数決投票による公共財供給量の決定
2財n人モデル(公共財と私的財)効用関数:
限界代替率を求める.効用関数を全微分すると
よって
初期保有:私的財1単位生産関数:y=z, (0≦ z≦n)限界変形率 MRT=1
パレート最適条件
MRT=1より∴
投票による公共財供給量の決定
平等主義が支配→全員に同一の税金
税金= t, (0<t<1):私的財単位税金によって公共財を生産:y=nt効用:
微分して
∴
2階の条件
中位投票者仮説
中位投票者の選好による決定
nが奇数のとき,多数決投票においては選好パラメータθiが全体の真ん中の値である中位(メジアン)が選ばれる
中位投票者均衡:一般にパレート最適でない
のとき
→ パレート最適になる