『まるごと』を使用した 初級コースの実践 ·...
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文型シラバスとCan-doシラバス
みんなの日本語「6課」
【文型】 わたしは ジュースを 飲みます。
わたしは 駅で 新聞を 買います。
いっしょに 神戸へ 行きませんか。
ちょっと 休みましょう。
【語彙】 動詞:食べる、飲む、吸う、見る、聞く、読む、書く、撮る、会う
名詞:上記動詞の目的語(肉、映画など)、場所(食堂など)
その他:誘うやりとりに必要な表現(いっしょに、いいですね等)
【その他】 食べもの語彙リストと食料自給率
文型シラバスとCan-doシラバス
まるごと「6課」
【目標】 好きな料理が言える
昼ごはんをどこで一緒に食べるか、友達と話すことができる
ハンバーガーの店のメニューを読むことができる
ハンバーガーの店で簡単な注文をすることができる
【文法】 好きな(きらいな)Nは、Nです / ~で食べます /
~いです・~くないです / ~ましょう / ください
【語彙】 料理名(ラーメン等)、形容詞(安い、早い、おいしい等)、~屋
一つ~五つ、メニュー名
【文化】 写真とイラスト、日本のファーストフードの店の写真と問いかけ
Can-doシラバスと文型シラバス
Can-doシラバス 文型シラバス
目標 Can-doの達成 文型と、文型を使った会話の習得
言語材料の集め方
目標Can-doに必要なもの 文型理解と習得に必要なもの
トピック 限定的 限定しない
文法項目 限定しない 限定的
言語以外の要素
写真、イラスト、生活文化情報など
?
レベルとCan-do
A1のCan-do
飲食店で、サンプルやメニューの写真を指差しながら、料理や飲み物を、
「これをください」など簡単な言葉で注文することができる。
A2のCan-do
レストランなどで友人に、おすすめの料理について、味や食材などの簡単
な情報を、質問したり、質問に答えたりすることができる。
レベルとCan-do
A1のCan-do
一緒に外食するとき、好きな料理は何か、友人にたずねたり、答えたり
することができる。
A2のCan-do
お互いの国や地方の文化や習慣について、挨拶のしかたや食事の作法
などの簡単な情報を、友人に質問したり、答えたりすることができる。
『まるごと』 かつどうの特徴
・コミュニケーション行動が目的
・聴解先行、音声重視
・場面や文脈の中でインプット→アウトプット
・トピックから離れない、文法に深入りしない
・異文化理解の機会をふんだんに
(文化の話は脱線じゃない)
Can-doシラバスの教材に共通
・活動を支える文法や語彙を体系的に学ぶ
・場面や文脈と切り離さずに導入・練習
・練習や確認にも音声を利用
・文法の導入・練習は、必要な時に必要なだけ、
ただしスパイラルに何度でも
『まるごと』 りかいの特徴
『まるごと』の特徴:2分冊
<かつどう>
・特定の場面や文脈で、日本語を
使って活動する。
・背景となる文化を理解する
<りかい>
・活動と同じ場面、文脈の中で、
体系的に言語を学ぶ
(文字、語彙、文型、文法、読解、
作文)
必要最低限の材料で活動
文法はさらりと
活動との重なりを生かして
文法、語彙を広げる
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外交官・公務員日本語研修
• 研修目標
① 日本語能力の習得
・日常生活に必要な日本語能力の習得
・業務に必要な日本語能力の習得
・継続学習の基礎となる日本語能力の習得
② 日本の社会や文化についての一般的な知識を得る
③ 日本人との交流を通した人的ネットワークの形成
コース概要
カテゴリー 科目と活動 △は選択科目
1学期 2学期 3学期
一般的な日本語
異文化理解
活動、理解、かな漢字、生活と文化
△日本語バラエティ
スピーチ1
専門日本語
スピーチ2 プレゼンテーション
専門語彙 △専門語彙
社交の日本語、 △日本のニュース
ICT タイピング、メール作成、情報検索、発表資料作成、学習サイト紹介など
自律学習支援 プログラムオリエンテーション
チュートリアル
ポートフォリオ(PF)オリエンテーション
チュートリアル
PF作成、自己目標設定
調査実習、チュートリアル
PF作成、自己評価
今後の学習計画作成
日本文化社会の理解
社会文化講義、省庁訪問、
見学、訪問、研修旅行、
伝統文化体験
社会文化講義、見学、訪問、
自主研修旅行、伝統文化体験
社会文化講義、省庁訪問、見学、
訪問、研修旅行、伝統文化体験
交流
ネットワーク
外務省担当者との面談
大学生交流会
会話パートナー
ホームビジット
DLGL感謝祭
(スピーチ、ポスター発表会)
みん日コースからの変更点:コース概要 カテゴリー
科目と活動 △は選択科目
1学期 2学期 3学期
一般的な日本語
異文化理解
文法、会話、聴解、読み書き、かな漢字、日本事情
スピーチ1 △読解
専門日本語
スピーチ2 プレゼンテーション
語彙、専門語彙 △専門語彙
社交の日本語
PC タイピング、メール作成
自律学習支援 プログラムオリエンテーション
チュートリアル
チュートリアル
自己目標設定
調査実習、チュートリアル
今後の学習計画作成
カテゴリー 科目と活動 △は選択科目
1学期 2学期 3学期
一般的な日本語
異文化理解
活動、理解、かな漢字、生活と文化、 △日本語バラエティ
スピーチ1
専門日本語
スピーチ2 プレゼンテーション
専門語彙 △専門語彙
社交の日本語、 △日本のニュース
ICT タイピング、メール作成、情報検索、発表資料作成、学習サイト紹介など
自律学習支援 プログラムオリエンテーション
チュートリアル
ポートフォリオ(PF)オリエンテーション
チュートリアル
PF作成、自己目標設定
調査実習、チュートリアル
PF作成、自己評価
今後の学習計画作成
『まるごと』1トピックの流れ
1日目(奇数課)2日目(偶数課) 3日目(2課分)
科目名
クラス活動
(100分)
かつどう
各課の課題
かつどうチャレンジ
課題の復習と応用、課外活動の準備
自己評価(2課分のCan-doチェック)
科目名
クラス活動
(50分)
文字
かなと漢字の導入、練習
生活と文化
トピックのテーマに沿った日本事情の紹介、参加者に
よる各国事情の紹介、ディスカッションなど
文化的気づきの記述
科目名
クラス活動
(100分)
りかい
文字と言葉、会話と文法、会話、
作文の導入
りかいチャレンジ
語彙と文法の復習、読解、作文の推敲と共有、
文法のまとめ
『まるごと』以外のタスクリーディング
自己評価(2課分のにほんごチェック)
テストの概要
内容 時間
かつどうテスト
インタビューテスト(一人ずつ)
① Q&A
② ロールプレイ
(③ ショートスピーチ)
5-8分
りかいテスト 筆記試験
文法、聴解、読解、語彙、作文 90-100分
漢字テスト
筆記試験
ひらがな・カタカナ(1学期中間)
漢字(1学期期末以降)
15-20分
まるごと トピック
1-5 中間試験
まるごと トピック
6-9 期末試験
「かつどう」の授業のポイント
・目標とGOALを意識づける
・わかる語彙、言える語彙、忘れてもいい語彙
・インプットもアウトプットも、場面設定を明確に
・まず聞いてみる、まず類推してみる
(教師が先に教えない)
・文法の質問が来たら、さらっと説明。練習しない
「りかい」の授業のポイント
・練習にバリエーション
→一人で / ペアで / 全体で
・答え合わせにもバリエーション
→ペアで / 全体で / 音声で
・読解は必要な情報以外は読み飛ばす
・全体構成を考えて、アウトプットの時間を調整
授業例(A2-1 トピック1 妻と夫の役割)
① 写真・イラストを見てトピック確認 ② クイズでブレーンストーミング ③ データや実際の例を紹介
④ ビデオ(英語字幕)を見てインプット ⑤ グループでディスカッション 自国での夫婦の役割について
⑥ 話し合ったことを発表
まるごとの授業 生活と文化
日本の生活と文化について知り、自分の国や自分自身と比較して話し合う。
授業の目的 1)日本の生活と文化について「気づき」を持つ 2)自国の生活と文化について「内省」してみる 3)日本と自国の違いを「比較」し「分析」する 4)1~3を基に新たに「行動」する 5)外交官・公務員として自国の生活と文化について「発信」する 6)研修参加者の国についても知る 「異文化コミュニケーション」
まるごとの授業 生活と文化
内容 23トピック Term1 [来日~3か月目] 日本についての知識を増やす Term2 [4~6か月目] 自国と比較し共通点・相違点を探す 発表:「自主研修旅行ビデオ発表」 各自が旅行先で撮影したビデオ(街並・観光地・名産等)を発表
Term3 [7か月目~帰国] 日本での経験に基づいて話し合う 最終授業:「私のクールジャパン」 8か月の滞在中に見つけたクールな日本の物・人などを紹介し合う
Term1
名刺交換、ファーストフード、和室、日本人の一日、サービス 季節のイベント、お土産、観光地
Term2
妻と夫の役割、暖かい冬、街並み、時間感覚、弁当、就職活動、健康法 贈り物、自主研修旅行ビデオ発表
Term3
作りながら食べる料理、自然を楽しむ観光地、東日本大震災、 正月遊び、伝統文化、私のクールジャパン
まるごとの授業 生活と文化
• オリエンテーション
• チュートリアル
• ICTクラス
• ポートフォリオ作成
• 自己目標設定と自己評価
• 勉強方法の共有、グッドラーナーインタビュー
• コースアンケート 結果
• 調査実習
• 今後の学習計画作成と継続学習支援
4.自律学習支援
• 口頭運用能力(口頭試験)
• 言語知識(筆記試験)
Good(70%以上の達成度)以上
86.1% → 89.1%
日本語能力 テスト結果
Excellent Successful Good Fair Acceptable Survival 目標達成者
H24~26年度平均
23.6% 34.5% 27.3% 15% 0.1% 0% 84.9%
H27年度 45.9% 29.7% 21.6% 0.2% 0% 0% 97.2%
過去3年間と今年度の口頭運用能力比較
日本語能力 教師の観察
話すこと
• 話すことにためらいがない
• 間違えないようにきっちり話すより、目的を果たす ためにとにかく話すという人が多い
• 準備なしで話さなければならないような状況でも 気楽に話している
• 正しいかどうかは別として、助詞を飛ばそうが間違えようが、活用を多少間違えようが、臆せずに相手に意図が伝わるように話そうという姿勢が見られた
間違いを恐れず積極的にコミュニケーションしよう
という姿勢
日本語能力 教師の観察
書くこと
• 書くことについて抵抗感がない
• 作文で長い文をどんどん書いてくる
• スピーチ(ドラフト)でも話したいことをどんどん 書いてくる
• SNSにも臆せずどんどん日本語で書き込んでいる
間違いを恐れず積極的に書こうという姿勢
日本語能力 教師の観察
聞くこと
• 全部わからなくてもいいという雰囲気がある
• 自然な話し言葉に対する抵抗感が少ない
• 必要なことだけに集中すればいいと割り切っている
• これまではターゲットの文型以外の表現は理解の 邪魔になったり、難しいと感じさせる要因になって いたが、今年は下位グループも聞き飛ばすことに 慣れている
情報を選別して聞く態度
日本語能力 教師の観察
文法理解
• 以前の学習者ではしないような助詞の間違いがある
• 上のクラスでも、復習すると、ごく基本的なところで 覚えていなかったり、よくわかっていないことがあった
• 動詞の活用や普通形など、体系的な理解まで至らなかった人も多かったと思う
不安を感じる声
日本語能力 教師の観察
文法理解
• 活動クラスではできるのに、理解クラスで文法説明を加えるとわからなくなるケースがあった
• 文法理解が苦手なタイプは『みんなの日本語』の 場合、苦労していたのかと思った
• 連体修飾を導入した際、普通形の説明に固まっていたのに、課題では使えているので驚いた
文法はわからないが課題は達成できるという
学習者の姿
日本語能力 教師の観察
ストレスとモティベーション
• 一番大きな違いは、語彙が覚えられない、文法が苦手な学習者のストレスが軽減されたこと
• 一番下のクラスでも最低限の課題はできるので、 モティベーションが維持できている
• 話せるという実感があるからか、学習に対する不安やストレスが少なく、楽しく学習しているように見受けられる
特に下位レベルの参加者のストレスが軽減
満足度
大変満足 まあまあ満足 やや不満 不満
研修全体 73.0% 27.0% 0% 0%
日本語プログラム全体 73.0% 24.3% 2.7% 0%
科目評価(活動) 62.2% 32.4% 2.7% 2.7%
科目評価(理解) 64.9% 32.4% 2.7% 0%
研修修了時の満足度調査
満足度 コメント
日本語プログラム全体
• 私たちのニーズに合っていた
• こんなに日本語ができるようになるとは思っていなかった
肯定的な意見が大勢を占める
• もっと仕事に関する内容を学びたい
• もっとインテンシブな内容で中級まで学びたかった
学習能力の高い数名の参加者は、カリキュラムの
進度や内容に物足りなさを感じていた
満足度 コメント
クラス活動(活動・理解)
• 会話例はみな、日常生活で必要なものだった
• 作文をシェアするのは楽しかった。世界を旅するようだった
• 自分の国について紹介する機会があったのがよかった
『まるごと』が提供するクラス活動を楽しんでいた様子
がうかがわれる
満足度 コメント
クラス活動(活動・理解)
• 活動では語彙が制限されているのが不満
• もっといろいろなトピックについて学びたい
• もっと長い読解をしたい
より多くの学習内容を望む声
• 理解は難しかった。混乱することが多かった
言語知識の学習に苦労する声
教師の気づき
• これまでは「文型が入っているかどうか」を話題にしていたが、今期は「できているかどうか」が話題の中心だった。「何を教えるか」という意識が変わった。
• いい意味で細かい部分の助詞や文法などにこだわらなくなった気がする。日常生活で多少間違っても 気にしないレベルの部分では、授業中もこだわりすぎなくなったと感じる。
• 普段の自身の発話も「生の会話」に近い、コントロールしていないものになった。
教師の気づき
• 学習者たちの学びをナビする役割に徹することができるのがおもしろい。
• 学習者同士で会話を広げていくということは、初級ではなかなかできないと思っていたが、状況が分かっていればバリエーションのある会話が生まれていくものだと実感した。
まるごとコースの成果
従来の問題点の解消
• 下位レベルの動機付け
• 研修開始時の文字学習の負担感
• 研修中のストレス
中位下位レベルの参加者の口頭運用能力の向上
課題遂行を重視する姿勢
専門日本語学習への好影響
「生活と文化」クラスによる文化社会理解のカリキュラムの改善
研修を「まるごと」見直す機会
まるごとコースの課題
上位レベルの参加者のカリキュラム
• 漢字や専門語彙などのシラバスの一部削減
• アウトプットのレベルは維持されているものの、 インプット量の減少への物足りなさが見られる
業務や生活に役立つ課題を目標として必要な言語
知識の充実を図り、参加者の学習意欲に応えていく
まるごと+ marugotoweb.jp
Quizlet まるごとA1 語彙 https://quizlet.com/kentarojapan/folders/a1-japanese-english
まるごとA2-1 語彙 https://quizlet.com/kentarojapan/folders/a2-1-japanese-english
まるごとA2-2 語彙 https://quizlet.com/kentarojapan/folders/a2-2-japanese-english
6.オンラインツールの活用
自習用としても授業内での+αとしても活用
• イントロダクション
日本語のオリエンテーションに最適。Japan knowledge
はクイズにすると盛り上がる。
• ドラマでチャレンジ
Can-doとシチュエーションの確認、チャレンジ練習、シャドー
イング、例を使って内容確認クイズなど
• 会話
パートごとに練習、ドラマよりも短くCan-doごとに練習
まるごと+の活用
• 生活と文化研究所
英語/日本語で読んできて内容確認。自分/国ならどうか
をお互いにシェア
• 文法・語彙
宿題として使用。授業終わりの理解確認、または翌日に
前日の復習として使用
• リスニング
音声を聞いて解答、スクリプトを見て内容確認、シャドー
イングなど
まるごと+の活用