と感じたものについて執筆してもらいました。...特集・怖い話...

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特集・怖い話

あなたの「怖い」ものはなんですか?幽霊?オバケ?それとも職場の上司?人によって様々な「怖い」があると思いますが、今回は会員の方に「怖い」と感じたものについて執筆してもらいました。自分がなんとも思っていないことでも人からすれば恐怖の対象になったりする…「怖い話」の面白さはそういったところにもあるのではないでしょうか。それではどうぞ、お楽しみ下さい。

山鬼

土佐国本川郡「寺川郷談」による

山鬼というものがおったといいますのう

それはほんとのことですろう

たれかのさぶしいすがたとおもいまするが

そんなら

山鬼とはたれのたましいですろうか

目ひとつ

足いっぽん

それでなんでもことたらす

そんならなおさらのこと 

山鬼とは

たれのたましいですろうか

山鬼はたれかわからんのですが

山爺とも本川のひとはいうたのです

ちくしょうにはなれませんきに

生きんといけませんきに

ひとのすがたにかえろうとして

咳をしながら降りてくるのです

そんならいったい 

山鬼は

たれのたましいですろうか

山鬼は 

やっぱし

ちくしょうぢゃありませんろう

にひゃく年もせんから

つけもの石かなんぞのように

ひとに取りついて離れん

ありゃあ 

もしやおまえさんの

ひきちぎれたたましいではありますまいか。

(片岡文雄『いごっそうの唄』より抜粋)

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特集「怖い話」「河童」 『妖怪談義』 柳田國男

 「かっぱ」ときいて、あの姿を想像で

きないという人に出会ったことがない。

いったい、いつの間に刷り込まれてい

るのだろう。容貌のみならず、皿の水が

こぼれると妖力が失われるとか、川に引

きずり込んだり、しりこだまを抜いたり

するとか、キュウリが好物だとか、プロ

フィールもかなり浸透している。そんな

ことを考えながらふとつけたカーラジオ

から「私は、二度河童に遇ったことがあ

ります。」と、博識者らしき男性の声。

「えっ!」パーソナリティの声が素で驚い

ている。「川のそばで悪いことをすると遇

うんですよ。一度目はカエルに爆竹詰め

てたら、後ろに立ってましてね、二度目

は遊泳禁止のところで泳いで川底を見た

ら、河童がこちらに向かって手を振るん

ですよ。二足歩行するカワウソ(川恐カ

ワオソが語源だとか)だという人もあり

ますが、あれは河童でした。」

 確かに、河童は川や沼や私たちの心の

奥深くに棲んでいる。そして、他の妖怪

や魔物とよばれるものとは一線を画して

いる。第一には古くから目撃者がいたり、

ミイラや足跡、証文が残っていたりする

ということだ。第二には、怖いものでも

あり、アイドル(もしくはゆるキャラ)

的存在でもあるというということ。子ど

もに河童の絵をかいてもらうと、実に可

愛いカッパがそこに現れる。そもそも、

人間に角力(すもう)を挑んでくるとか、

懇意になると家に遊びに来たり山仕事を

手伝ったり、こんなに親和的な存在が何

故怖いのだろう。時に淵に引きずり込ん

だり、魂を抜いたり、発狂させたり・・・。

 もしかしたら、河童は人間と自然(水)

との境のようなものかも知れない。豊か

で美しい恵みをもたらす水、時に得体の

しれない力で襲い掛かってくる水。「わ

れわれの畏怖というものの、最も原始的

な形はどんなものだったろうか。―

略―

 幸か不幸か久しきにわたってさまざま

の文化を借りておりましたけれども、そ

れだけではまだ日本の天狗や河童、幽霊

などというものの本質を解説することは

できぬように思います。」と柳田は言う。

日本のグリムと呼ばれる佐々木喜善が他

国との比較研究したのに対し、柳田は頑

として比較することを否定した。日本の

その土地に生まれ育ったその人にしか見

えない心象風景。

 さて、あなたの後ろに河童が立ってい

たら…鳥型?カワウソ型?そしてその河

童は何色?

『遠野物語』柳田國男

『聴耳草子』佐々木喜善

『河童の日本史』中村禎里

『河童よ、きみは誰なのだ』大野芳

『河童』芥川龍之介

『かはたれ』朽木祥

『おっきょちゃんとかっぱ』長谷川摂子

皿が乾いてきたのでこの辺で。(澄)

『犬神家の一族』横溝正史

                  

  

 横溝正史の代表的な長編推理小説「犬

神家の一族」は、もはや金田一耕助シ

リーズとして映画化もされていて、知ら

ない人はまずいないだろう。水面から突

き出た足、のシーンは印象的であったし、

白いマスクを首まで被った犬神佐清(す

けきよ)の顔は、さすがにコワクてゾッ

とする。ストーリーとしてはよくあるパ

ターンだが、犬神家の相続争いがもとで

の複雑怪奇な連続殺人事件である。信州

財界の大物の犬神佐兵衛が莫大な遺産を

残して亡くなった。彼は正妻を持たず、

母親の異なる三人の娘がいたが、佐兵衛

の遺言状は「相続権を示す犬神家の家宝、

斧(よき)・琴(こと)・菊(きく)の三

つを野々宮珠世(佐兵衛の恩人の孫娘)

に与え、遺産は珠世が佐清(すけきよ・

長女松子の息子)、佐武(すけたけ・次女

竹子の息子)、佐智(すけとも・三女梅子

の息子)の3人の中から婿に選んだ者に

与える・・・」という、いかにも血が流

れるのが見え見えの内容だった。

 当然のことながら、3人の姉妹の仲は

険悪になり、やがて残忍な殺人が次々に

行われる、といった、いかにも横溝らし

い展開である。「良き事聞く」や「松竹梅」

などのキーワードが潜んでいて、なかな

か面白い内容だったが、もちろん映画や

小説もコワイのだが、最近はネット上で、

とんでもない画像を見つけることができ

るのだ。この作品は映画やテレビで幾度

となくリメイクされた。その都度、配役

も異なってはいるのだが、例えば白い仮

面の佐清役は今まで、犬丸二郎、あおい

輝彦、田村亮、石黒賢、椎名桔平、西島

秀俊、尾上菊之助らが演じて話題になっ

たが、「スケキヨマスク」として検索する

と、例の恐ろしい仮面姿の顔がズラリと

並んでいるのだ。単体でも不気味なのに、

これだけ揃うとかなりビビってしまう。

それぞれのマスクは微妙に違うし、俳優

さんが違うのだから、当然ながら目つき

も異なっている。さらにコワイのは、「マ

スクを取ったスケキヨ」一覧までアップ

されているのだ!これにはまいった。夜

中に見ると多分、眠れませんよ。

郷田三郎 (路上観察隊員)

「河童」がコワイ !?

「仮面」がコワイ !?

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特集「怖い話」

楳図かずおの怪奇漫画

 古賀新一もコワイが、やはりホラー漫

画といえば、グワシ!でおなじみの楳図

かずおだろう。子供の頃に「肉面」とい

う短編を見て以来、私は楳図かずおのコ

レクターでもある。「へび少女」、「おろ

ち」、「赤んぼ少女」、「イアラ」、「恐怖」、「猫

目小僧」、「漂流教室」、「神の左手・悪魔

の右手」、「14歳」、「洗礼」、「わたしは慎

吾」など、新装版が出ると必ず買ってし

まうという、かなりの重病患者だ。しか

もラブコメディからギャグ漫画まで描い

ているのに「ロマンスの薬」、「アゲイン」、

「まことちゃん」などは、どこかコワイ

のである。笑いがあるのに、背中は凍っ

ているような不思議な感覚なのだ。それ

にしても楳図先生はバンド活動をやった

り、テレビに登場しても、めちゃ楽しく

て、本当にこの人があのコワイ漫画を描

いているのか、疑いたくなるのだった。

 なんと最近では吉祥寺の自宅の外壁が

楳図先生カラーの「紅白の縞模様」だと

いうニュースが巷に流れてファンを驚か

せた。しかもこの建物が景観上、問題が

あるということで一部住民からクレーム

がつき、あげくは訴訟問題にまで発展し

た。その後、景観上は何ら問題はない、

という判決が下り、ファンもやれやれと

安心したのだが、本当に楳図邸は、それ

ほどヒドイ建物なのだろうか。

 てなわけで、すぐさま私は武蔵野市ま

で飛んで行ったのだった。実際に行って

眺めてみたが、確かにユニークな建物に

は違いないが、赤と白の模様が特に景観

の調和を乱すものではないことは誰が見

てもわかる。なるほど第一種低層住宅専

用地域になってはいる。が、外壁の色彩

にはなんら法的な規制があるわけでもな

い。むしろ赤は赤でも落ち着いた色調だ。

一番コワイのは、「あのド派手な外壁を撤

去せよ」と騒ぎ立てた近隣住民の方だろ

う。裁判では「不快感を抱かせても、受

忍限度を越えてはいない・・・」と住民

側の主張は退けられた。さすがの怪奇漫

画家も今回だけは自室でブルブルと震え

ていたのやも知れない。そんな楳図先生

の姿を想像していたら、私はむしろ痛快

になった。

勅使河原麗美(詩人)

妖怪 NEIBORHOOD

 子どもの本の世界では、一方ではおど

ろおどろしい怪談話が科学力への絶対的

信頼を支えにその恐怖感を増幅させて語

り続けられている。それに対し、お化け

や妖怪が恐ろしくも、妖しくもなくなっ

たのはバーバパパの登場からだと聞く。

オバケちゃん、オバケのQ太郎と子ども

たちの周りには友だちお化けが相次いで

登場し迎えられた。科学偏重の人間世界

の優位を前提に、超自然現象の象徴的化

身お化けや妖怪、幽霊は生き残るために

(

?)人間と仲良くする道を選んだとい

うわけだ。

 

そして今や妖怪たちはお隣りさんに

なった。「九十九さん一家は、化野原団地

の東町三丁目のB棟・地下十二階に住ん

でいます。家族といったって、九十九さ

んちの七人は、本当は血のつながった家

族ではありません。というより、そもそ

も血なんて流れていないのです。だって、

みんな妖怪なんですからね」と始まる『妖

怪一家九十九さん』(理論社)は子どもた

ちに人気の作家、富安陽子の作品である。

 草ぼうぼうの野っぱらと深い雑木林が

広がっていたこの土地に、住人3万人規

模の巨大団地建設が始まった。驚いたの

はこの地にずーっと暮らしてきた妖怪た

ち。「喰ってやる!」と息巻く過激派もい

たが、ヌラリヒョンがその場を収め、妖

怪を代表して町と交渉することにした。

ところが役所の担当窓口がはっきりしな

い。それもそのはず【妖怪なんていない】

が人間たちの大前提だから。たらい回

し対応の果て、ようやくたどり着いた地

下室窓口の地域共生課。すでに既成団地

で先住妖怪との問題を解決してきたとい

う。話し合いの結果、池や森を残し妖怪

たちの生活の場とし、共生の協定を結ぶ。

ヌラリヒョン初めろくろっ首、やまんば、

一つ目小僧ら単独妖怪七人(?)は一家

族を形づくり、団地地下の特設室に住む

ことにし、小さな騒動を起こしながらも、

人間たちの良き隣人になっていく。

 血のつながりを基礎としない小さな生

活共同体。それぞれがありのまま個性的

に、持ち味を出しながら暮す。九十九一

家の在りようはこれからの社会のひとつ

の在り方を模索しているのかもしれな

い。それにしても、ひょっとしたらすで

にあなたの家のお隣りにも…

「隣人」がコワイ !?

「住民」がコワイ !?

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特集「怖い話」『怖い絵』中野京子

 数年前から“恐怖”という切り口で

絵画を読み解く本が売れている。中野京

子さんの「怖い絵」シリーズがそれだ。

世界中の絵画を、陶板画ではあるが一堂

に会してみられる大塚国際美術館でも怖

い絵ツアーが人気だったと聞く。

 怖い絵には大きく2つの型があると思

う。一つは見る者にも実際に肉体の苦痛

を呼び覚まさせる〝見るからに怖い絵〟、

そしてもう一つは〝精神的になんだかわ

からない不安を感じさせる怖い絵〟だ。

前者においては数人の画家が頭に浮かぶ

のだけれど、一人で何作もとなるとその

筆頭はやはりなんといってもゴヤだと思

う。「わが子を食らうサトゥルヌス」は、

ギリシア神話で父親である天空の神ウラ

ノスを殺して宇宙を支配する神となった

クロノス(ローマ神話ではサトゥルヌス)

が、「お前も息子に王座を奪われる運命」

という父の予言に恐怖を抱き、生まれて

くるわが子を次々と飲み込んでしまう話

を題材にした絵で、一度見たら忘れられ

ない表情で、子をがりがりとむさぼり噛

んでいるリアルな描写をご記憶の方も多

いと思う。

 およそゴヤという人は、貧しい小村か

ら成りあがって憧れのスペイン宮廷画家

にまでなったのに、嫉妬と悪意が渦巻く

宮廷生活を経験し、聴覚を失ってからは、

画風ががらりと変わってしまい、人間が

隠し持っている醜悪さやグロテスクさを

抉り出すような作品群を残している。こ

のサトゥルヌスの絵は「大雄山羊(魔女

の集会)」なども含む14枚から成る黒い絵

シリーズ作品群の1枚で、ゴヤはこれら

を自宅のサロンや食堂に飾り、その下で

ご飯を食べていたというのだからそれこ

そ恐るべしなのだけれど、堀田善衛さん

の著書「スペインの沈黙」には、梅毒の

せいで20人あるうちの19人までの子ども

を死なせてきた自責の念と自らの老いか

ら来る死へのひっ迫感がこの絵を書かせ

たとあり、なかなか説得力がある。

 ゴヤには犬が流砂に飲み込まれる一瞬

前を描いた「犬」という作品もあるがこ

れも得体のしれないものに呑み込まれて

いく蟻地獄のような怖さを感じる。

 見る者の肉体の苦痛をよびさます怖い

絵でもう1枚思い浮かぶのは、やはりス

ペインの画家ダリだ。ダリは、チーズの

ように溶けていく時間の表現にぞっとさ

せられる「記憶の固執」という作品が有

名だが、今日ご紹介したいのは、「茹で

た隠元豆のある柔らかい構造(内乱の予

感)」だ。自分の分身のごときわが子を

食らうゴヤの絵に対し、こちらは巨大

な人体が錯乱をおこしてなんと我と我が

身を引き裂いている狂気の絵だ。これは

1936年に勃発したスペイン戦争(内

乱)にモチーフを得ているようで、おな

じモチーフでもピカソのゲルニカとは

まったく印象が異なるのが興味深い。

 国がかわってドイツになると即物的な

怖さより、精神的な、実体のともなわな

い不気味さのほうが勝っているような気

がする。黒い森から出現した民族だから

かしらないが、なんとなく薄気味悪いの

だ。かのホロコースト(大量虐殺)も頭

をよぎる。ベルリン美術館が蔵するフ

リードリヒが描いた「樫の木の森の修道

院」に繰り広げられているのは墓、十字

架、枯れた樫の木、廃墟、葬列と不気味

なモチーフのオンパレードだ。ベルリン

にはほかにベックリンの「死の島」とい

う作品もある。静かでぞっとする絵だ。

アメリカで思いつくのは、ホッパー作「線

路脇の家」だろうか。4階建ての家が一

軒ぽつんとたっていてそのわきを線路が

横切っている、それだけなのだがこの家

からはなにかが起こりそうな一種独特の

ものを感じてしまう。かのサスペンス映

画の巨匠ヒチコックはこの絵を見てサイ

コの構想を思いついたというのだから推

して知るべしだ。

 百聞は一見にしかず、図書館でもその

気になれば画集で怖い絵ツアーが組めま

す。あなたも一度この恐怖をあじわって

みませんか?(杏理子)

「マタンゴ」の怪

 

東宝の特撮映画「マタンゴ」は

1963年に封切られた。ホラー映画

ファンなら知らない人はいないだろう。

この作品が子供の時のトラウマになって

いる方も少なくない。あらすじを書いて

おくと、ヨットで遭難した男女7人が南

海の孤島にたどり着く。そこにはマタン

ゴという奇妙なキノコが群生しており、

それを食べた者は不気味なキノコ人間に

なってしまうというもの。しかもゾンビ

化したキノコの化け物が島中をウヨウヨ

と歩き回っている・・・。

 現在、この映画はDVDで発売されて

いるので、容易に見ることは可能なのだ

が、監督は本多猪四郎、特撮監督はあの

円谷英二だった。ヒロイン水野久美の妖

艶さがひかっていたが、この作品のオリ

ジナルは、英国の作家ウィリアム・H・

ホジスンの短編作「闇の声」である。海

洋小説が多いホジスンではあるが、これ

も船が遭難して、人を取り込んでいくキ

ノコが密生している島にたどり着いた男

「絵画」がコワイ !?

「キノコ」がコワイ !?

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特集「怖い話」

女のカップルを描いたもの。ホジスンの

短編集「海ふかく」(国書刊行会)や、「夜

の声」(創元推理文庫)に収録されている

ので、ぜひお読み下され。また、この恐

怖映画「マタンゴ」のオマージュとして、

「マタンゴ 

最後の逆襲」吉村達也・著

(角川ホラー文庫)も出ているが、子供の

頃に見た映画の恐ろしさには到底及ぶま

い、と思いきや、これがまたコワイ小説

で、アタシはびっくりたまげた。絶対に

夜中にトイレに行けなくなるから・・・。

でもドラキュラからゾンビものまでい

ろいろ海外のホラー映画を見てきたが、

やっぱりコワイのは邦画だな。

竹内ともこ (茶人)

赤光

 歌人で精神科医でもあった斎藤茂吉は

本名を守谷茂吉といい農家の三男として

生まれた。神童の誉れ高く、その噂を聞

きつけた東京で医師をしていた斎藤紀一

が自身の次女照子の婿にすべく養子に迎

える。照子さんは「楡家の人々」で知ら

れる作家北杜夫さんのお母上でもある

が、その奔放な性格と生涯はつとに有名

だった。その照子さんをして“茂吉には

初めから我慢できないことがしょっちゅ

うでした。なにしろカミナリもカミナリ、

あんまり異常なのでとうとうお父様に愚

痴をこぼしたことがありました。そした

らお父様はこうおっしゃいました。茂吉

はたしかに常軌を逸したところがある

が、将来名を成す男だ。あれを常人と思っ

てはいけない。患者さんと思いなさい。

そしてお前は自分を妻ではなく看護婦と

思いなさい”といわしめるほどの大変な

癇癪の持ち主だった。

この心 葬り果てんと

秀ほ

の光る

錐きり

を畳に 刺しにけるかも

この歌などはまさに茂吉のありのままの

激情を伝えているように思われる。

茂吉はアララギ派の優れた歌人として有

名だが、処女歌集「赤しゃっこう光」

をひも解いて

みると、その迫力にただただ圧倒されて

しまう。

めん鶏の

砂あび居たれ

ひっそりと

剃かみそりとぎ

刀研人は

過ぎゆきにけり

常に死と隣り合わせにある束の間の生の

描写には戦慄すら感じる。

ほかにも秀歌は多いが、中でも一連の〝し

にたまふ母〟の挽歌は怖いまでの母への

想いのその濃密さゆえに強烈な印象を残

す。これらの短歌は、茂吉が母の危篤の

報をうけ、ただひたすらに帰郷の途を急

ぐ切迫感から来る「其の一」、母の臨終前

後の「其の二」、野辺の送りから骨揚げま

での「其の三」、葬儀をおえてからの「其

の四」という四部構成からなる。

みちのくの

母のいのちを

一目見ん

一目見んとぞ

ただにいそげる

死に近き

母に添い寝の

しんしんと

遠田のかはづ

天にきこゆる

のど赤き

玄つばくらめ鳥ふたつ

屋は

り梁にゐて

足たらちね乳根の母は

死にたまふなり

星のゐる

夜空のもとに

赤赤と

ははそはの母は

もえゆきにけり

歌集のタイトルとなった赤光とは、茂吉

が野辺の送りの夜空に見た光なのだそう

だ。茂吉のみた星と同じかどうかは知ら

ないが、全天稀にみる真紅をはなつ星座

にさそり座のアンタレスがある。その喘

ぐように激しくまたたくさまを〝星空の

ロマンス〟の著書で知られる野尻抱影氏

は〝あの1秒もじっとしていない輝きは、

死期を知ったものの焦燥をみせているの

だという印象を捨てることができない、

闇の力を有する星〟と記している。アン

タレスはさそり座の心臓部分にあたるら

しい。

死は、死に行く人の物のみならず、其れ

を見守る私たちの砂時計も確実に死に向

かって落ち続けている。そのリミットも

知らされずに営まれる生のはかなさを思

うと、私たちは何とも頼りない存在だ。

墓はらの

とほき森より

ほろほろと

上るけむりに

行かむとおもふ

あかあかと

一本の道 とほりたり

たまきはる我が命なりけり

その頼りない生を茂吉は、その激情のな

せるわざか、未知のとほき森、一本道に

向かって突き進んでいく。

赤光の

中に浮かびて

棺ひとつ

行き遥けかり

野は涯はて

ならん

 そしてその果てにあるものは・・・。

 茂吉はこわい・・・。(杏理子)

トンネルにて

 南越前町今庄に「ふれあい会館今庄サ

イクリングターミナル」がある。自転車

で自然を満喫するも良し、365スキー

場から届いているお湯に入ってゆっくり

泊まるも良しの、知る人ぞ知る近場のレ

ジャー施設である。「リトリートたくら」

との間は、レンタサイクル乗り捨て自由

というのも嬉しいサービスである。

 私が大学生のころ、この今庄サイクリ

ングターミナルを利用したときのことで

ある。季節は夏、「サイクリング合宿」と

銘打った集まりは、約三十人という大人

「歌人」がコワイ !?

「トンネル」がコワイ !?

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特集「怖い話」

数。昼過ぎに現地に到着し、説明を受け

たあと、早速サイクリングに行くことに

なった。北国街道を南下して日本海を眺

めるコースである。

 途中、旧国鉄の名残だというトンネル

がいくつかあった。長短はあるものの、

どれも電灯などない素朴な作りである。

人の手で掘り抜いたようなゴツゴツした

岩壁には、雨が染み込んだのか、ぬめっ

とした苔が生えている。中に入ると、汗

ばんだ体がひんやりした空気に包み込ま

れ、気持ちのいいことこの上ない。中で

も、施設の人のいう「途中で左にカーブ

しているため、出口が見えないトンネル」

は一番長くてスリル満点、皆、歓声・奇

声を上げて通りすぎた。

更に走り続けてようやく見えた海は、や

や西に傾き始めた日の光を反射して、遠

く山の上にいる私たちにまでその輝きを

届けてくれた。その美しさに、誰かが

言った。海に沈む夕日はもっと綺麗なん

だろうな。若さは無謀と隣り合わせであ

る。私たちは、なんの迷いもなく、急な

坂道を一斉に降り始めた。転げるように

してたどり着いた海と、そこに沈んでい

く真っ赤な夕日を目に焼きつけて、私た

ちは海を後にした。

 しかし、行きは良い良い・帰りは怖い

とはよく言ったものだ。往路ではあんな

にスピードが出た急坂も、帰路は自転車

を押して行くしかない。登りきった後も

道は長く続いている。疲れた体にだらだ

ら坂を走るうちに、私たちは大小いくつ

ものグループに分かれていた。ふと気づ

くと私は一人になっていた。一緒に走っ

ていた友だちは先に行ってしまったのだ

ろうか。街灯もない山道である。日没後、

急速に暗くなりつつある行く手を照らす

のは、自分のこぐ自転車のライトだけ。

そこにぽっかりと黒い穴が現れた。どう

やら、あの一番長いトンネルに差し掛

かったらしい。

 真っ暗な闇に飲み込まれないよう、ペ

ダルを力いっぱいにこいでトンネルに

入った。『確かしばらく走って左にカー

ブすれば出口が見えるはずだよな。あと

少し頑張れば……』?

前方の右側の壁に

ぼんやりと白いものが浮かび上がって見

える。何、あれ。思わず足がすくみ、ラ

イトの光が弱くなった。その白い影から

どうしても目が離せない。確かに、それ

はゆらゆらと動いて次第に近づいてき

た。足が止まった。不意に辺りが真っ暗

になったその途端、闇を切り裂くごとき

悲鳴が聞こえた。二時間ドラマではない。

現実の叫び声だ。自転車ごと倒れそうに

なり、思わずかべに手を付いた。冷たい

何かどろりとしたものがべったりとはり

付いたのが分かった。

 

どれくらい時間が経ったのだろうか、

立ちすくんでいる私の耳に、後方から調

子っ外れの鼻歌が聞こえてきた。後ろを

走っていた男子が追いついてきたのであ

る。油が切れているのだろうか、キイキ

イと軋むペダルに合わせ、ライトの光が

強くなったり弱くなったりしている。そ

れは、メンバーの中でも人一倍体の大き

なのんびり屋の乗った自転車だった。私

はホッとして、ただその広い背中だけを

見てトンネルを抜けた。

 サイクリングターミナルに戻った私た

ちが、施設の人から大目玉を食らったの

は言うまでもない。懲りない私たちは、

翌年、台風の最中に海辺でキャンプをす

るという暴挙に出るのだが、あの闇に浮

かんだ白い影の正体とともに、今となっ

ては良い思い出である。

(YA倶楽部  石原淳子)

怖~い話

「この話はすべて遠野の人佐々木鏡石君

より聞きたり。昨明治四十二年の二月ご

ろより始めて夜分おりおり訪ね来たりこ

の話をせられしを筆記せしなり。」

 これは、民俗学者柳田國男が著した有

名な『遠野物語』の冒頭である。

 『遠野物語』といえば、収められた全

百十九話のうち約四分の三は、幽霊や妖

怪、神仏の霊威、動物の怪、心霊現象を

テーマとした、いわば「怪談実話集」で

ある。そのため、一般的な伝説、伝承や

説話とは一味違った現実味があって、そ

こがこの物語を有名にした所以ではない

だろうか。

 物語は、先に述べたとおり聞き書きで

あるため、「こういうことがあった」とし

か書かれておらず、その不思議な現象の

原因や背景は読者の想像や推測をするほ

かはないが、いずれにしても山や川など

の自然に対する畏怖がその根底にあるこ

とは間違いがないだろう。

 さて、本題の怖い話であるが、物語に

は、オシラサマ、天狗、カッパ等々、お

馴染みの神様や妖怪がたくさん登場する

が、その中で特に著名なものとしては、

座敷童(ザシキワラシ)があげられる。

座敷童は精霊的存在とも福の神とも、昔

間引きされた子どもの霊ともいわれ、普

段奥座敷に住み、たわいのない悪さはす

るが、人に大きな害は与えない。しかし、

座敷童が出て行くと家は没落するとい

い、神様に見限られるという、考えよう

では、これも怖い話ではないだろうか。

このような神(霊)が、家の座敷にひっ

そりと立っていることを、皆さん想像し

てほしい。

 都会の人達には実感としてわからない

と思うが、田舎で大きいだけが取り柄の

古い家に住んでいる私にとっては、妙に

ありそうで、とっても怖~い話である。

(ただし私の家は裕福ではないので、座敷

童はどうやらいないようだ)(小林博之)

「座敷童」がコワイ !?

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― 8 ―

平田篤胤の「稲生物怪録」

これはコワイ!﹇

文﹈三田村善衛 

  

そもそも平田篤胤(ひらたあつたね 

一七七六~

一八四三)とは一体、何者であったのか、そこから始めね

ばなるまい。江戸時代後期の国学者であった彼は、秋田藩

士大和田家の子に生まれたがわずか二十歳で脱藩してい

る。一説では虐待を受けていたというから、不遇な少年時

代を送っていたようだ。当時の秋田藩も例にもれずかなり

の財政難で、そうした状況に嫌気がした彼はすぐさま江戸

に逃亡し、あれこれアルバイトを続けながら学問に励んだ。

一八〇〇年には備中松山藩士の平田篤穏に見込まれ、やが

て養子として迎えられて結婚もしている。篤胤は本居宣長

の著作に深い感銘を受け、次第にのめりこむようになって

いった。夢の中で宣長に会って、なんと弟子入りを許可さ

れて、彼の没後には勝手に門人と言いふらしていたようだ。

とても一途な面があり、時に思い込みで虚言をばらまく性

格でもあったようだ。いささか子供じみた性癖に近いもの

が彼にはあって、こうした風変わりな人物がのちに宇宙論

や幽瞑思想にまで走っていくのだから面白い。結果、エキ

セントリックな独自の死生観、世界観を持つに至るわけだ

が、こうなると一種の宗教ともいえるわけで、そんな彼が

一方では民間伝承の分野にも興味を持ち、広くフィールド

ワークを実践していく。このことはその後の民俗学に少な

からず影響も与えてはいるのだが、平田国学は平田神道と

も呼ばれ、現代では少々、アブナイ世界観とも取れる。

 篤胤は一時は医師として開業はしたものの、性格上の問

題もあってか、すぐに廃業。国学の弟子からのわずかな収

入やカンパで生計を立てていたようだ。当然、生活は困窮

を極め、やがて妻や息子も亡くしている。こうした幕末の

武士の極貧生活には目を覆うものがある。食うためには自

説も曲げて奔走した篤胤の学問は、時として危険な面もち

らつかせて、ひとときは幕府からもマークされていたらし

い。

 さて、彼の著述には、先程言ったように民間での怪奇体

験談の採集が多く、妖怪に襲われた若者の話を「稲生物怪

録」に、天狗と共に異次元世界を見たと言う少年のSF話

を「仙境異聞」に、あげくは前世の記憶があるという少年

の話を「勝五郎再生記聞」に、それぞれをまとめあげている。

さらに古代史に言及したトンデモ本「古史成文」などもあ

るが、今回は代表作の「稲生物怪録」だけを取り上げたい。

 篤胤は幽霊や妖怪などの怪異譚、いわゆる怪談の類に著

書が多いが、特に有名なのがこの「稲生物怪録」。だいた

いのストーリーは、寛延二年(一七四九)に、備後三次藩

(現在の広島県)の藩士であった稲生武太夫(幼名・平太郎)

が、隣人の権八と肝だめしをして、俗にいう「百物語」を

した。この百物語というのは杉浦日向子らのマンガでもお

なじみだろうが、百本のロウソクを灯してみんなで次々に

怪談話をしていきながら、一本ずつロウソクを消していく。

最後の百本目のロウソクが消えた時に、ホンモノの妖怪が

現れる、といった、じつにロマン溢れる優雅なお遊びなの

だが、なんとその数日後に、平太郎の家にはいろんな妖怪

が出現してくるのだった。

 そこらあたりを少し要約して引用しよう・・・。笑い声

を上げ﹆髪の毛を足のように逆立ちして歩き回る女の生首﹆

寝ている平太郎の顔をなめまわす天井いっぱいにはりつい

た巨大な老婆の顔﹆拍子木を打つ三つ目小僧。さらには行

灯が突然燃え上がるは﹆ほうきが勝手に動き出して掃除を

始めるはで﹆連日連夜﹆これでもかと不思議な現象が平太

郎を襲う。しかし﹆この平太郎﹆少しも驚かず﹆怯えるこ

ともなく平然と怪異現象に向き合うこと三十日。ついに妖

怪たちは平太郎に降参し﹆去っていった・・・。(引用終

わり)

 それぞれの妖怪の解説などは、ぜひとも水木しげる大先

生あたりにお願いしたいものだが、この他にも、一つ目の

童子や大男の怪、ちり紙飛び回るの怪、ひょうたんぶらり

の怪、塩俵空を飛ぶの怪、自殺した友人亮太夫幽霊となる

怪、友人貞八の頭が割れて赤子はいでる怪、串刺し頭ぞろ

ぞろの怪、女の首から手が伸びて動き回る怪、壁に目・口

の怪、など妖怪・化け物、魑魅魍魎のオンパレードなので

ある。むしろ篤胤は平太郎の精神力、意志の強さにまずひ

かれたのだろう。「稲生物怪録」は、平太郎と同じく三次

藩士の一人が聞き取りをして書いた本を、のちに篤胤自身

が校正し、平田本としてまとめあげたものだ。他にもいく

つか写本が発見されている。その後も泉鏡花や折口信夫ら

が作品としている。最近では水木しげるも漫画化した(「木

槌の誘い」参照)。なお、タイトルはジブリ風に「いのう

もののけろく」と読む人が多いが、「いのうぶっかいろく」

と音読みするのが正解らしい。興味のあられる方はお調べ

あれ。あなおそろしや。

 さらに恐怖をお求めの方におすすめなのは、この恐怖の

物語が絵巻や絵本となって数多く現存しているのだ。いず

れも三次市の重要文化財に指定されているので、なかなか

お目にはかかれないが、うってつけのカラー印刷の完全収

録版が出ているので紹介しておこう。絵金なみの血なまぐ

さい絵が満載で、これまたコワイ!!荒俣解説版も図版が

多数、入っていて面白い。ちなみに稲生武太夫を祭ってい

る広島市内の稲生神社には、水木しげる、荒俣宏、京極夏

彦三人の巨大な寄進旗が飾られている。これには大いに笑

える。

参考文献

 「稲生物怪録絵巻集成」杉本好伸編 (国書刊行会)

 「稲生物怪録」 荒俣宏(角川書店)

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― � ―

 「あなたは、霊感はありますか?」

 誰かにそう聞かれた時、皆さんならどう応えますか。

 正直に言いますと、僕に霊感は、ないのか、あるのか・・・。

「ない」と言えるのは、はっきりオバケが見えるわけでも

なく、人の体のまわりに色が見えるわけでもなく、三途

の川を渡って帰ってきたわけでもないからです。「ある」

と言えるのは、〝金縛り〟には結構かかりますし(福井に

来たばかりの時には、短期間で5回もかかりました。一

度などは、足元でラップ音がしてからでした)、〝デジャ

ブ〟もよく感じますし、〝予知夢〟もよく見るからです。

あと、疲れた時には黒い影などを見ますが、「疲れている

からさ!」とか「ついに僕にもシックスセンスが?」な

どと言って恐怖をごまかしています。

 心霊現象を体験したこともあります。あれは、母の実

家にお墓参りに行った時のことでした。お墓を綺麗にし、

お花をかえ、お供えをし、お線香をつけて。うちでは、

お経を読むのは母の役目です。そこで、いつもどおり母

が読みだしたのですが、そこに別のご家族がやってきま

した。すると、母は恥ずかしくなったそうで、それまでちゃ

んと読んでいたのに、いきなり「ムニャムニャムニャ~」

と言い出したのです。その途端です。母が手にしていた

数珠がブチっと切れたのです! そこで皆で「ちゃんと

読まんでやにぃ」と母をたしなめた事がありました。①

さて、「こわい話」です。

②「幽霊滝の伝説」

(ラフカディオ・ハーン『怪談』より)

※「耳なし芳一」で、お風呂で兄に泣かされたこともあ

りますが、こちらは最後の最後、仲間のところに帰っ

てきたお勝さんが見たものが―

、非常に、こわい。

③『高瀬舟』森鴎外

※舟の上で語る、弟が死ぬ間際の描写が、こわい。とい

うか、痛い。痛すぎる。

④「水門で」

(フィリパ・ピアス『幽霊を見た10の話』より)

※教科書にも載った一作。ずぶぬれになって帰ってきた

後、二日間何も食べようとしなかった愛犬ジェスはいっ

たい何を見たのか? こわい、けれど心にしみる話。

⑤『葬儀を終えて』アガサ・クリスティ

※殺されたコーラの顔が〝薪割り〟でめちゃめちゃになっ

ていた理由。そして、その凶悪犯の正体と犯行の動機

のあまりの意外さが、こわい話。

⑥「善知鳥」世阿弥

※「三執心物」と呼ばれる謡曲の一。生前、卑劣な手段

で猟をしたために地獄で責められ、また、わが子に近

寄ることもできないという、執心の報いのこわさを伝

える曲。

⑦「時鳥と兄弟」(昔話)

※小鳥前生譚の一。地域によって形がいろいろあるが、

目の見えない兄が夜中に弟の腹をかっさばき、山芋が

あるか確かめるところが、こわい。

⑧「波切の不動さん」

(偕成社『三重県の民話』より)

※荒波を鎮めたたつ姫はどこから来たのか? どうして

殺されなければならなかったのか? 謎と短刀と不動

明王の絵だけが残る、不可解でこわい伝説。

⑨「キジムナー」

(世界文化社『日本の民話16 沖縄』より)

※話を聞いた酒屋の主人が、みるみるガジマルの木を燃

やされたキジムナーになり、男の目に火箸を突き刺す

最後がこわい、沖縄の民話。

⑩『だいふくもち』田島征三

 ※欲張りすぎたごさくの最後もこわいが、実は田島は

水俣病事件を下敷きに、村ごと廃墟にしようと考えて

いたという、こわい絵本。

おまけ「怪談ランプ」

(藤子・F・不二雄『ドラえもん』より)

※のび太にせがまれて語ったママのこわい話。

 ママ「……七日目にとうとう」のび「死んじゃったの?」

ママ「なおったのよ」ママ「七日ぶりに、ごはんを食

べたの」のび「このはなし、こわくないなあ」ママ「七

日前につくったごはんだったので、こわくてこわくて

(爆笑)」のび(大激怒)

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― 10 ―― 10 ―

もうずいぶん前になるが、旅の途中、不在の友人の本

棚から黙って本を借りてきたことはよくあったが、本当

に本が旅をすることがあるんだ。

去年の秋、私はいくつかの負の要因が重なり、深く打

ちのめされていた。その頃、私の元に若き女性から「読

み終えたからみなさんで読んで見てください」と告げら

れ、数冊の本が届いた。その中に中沢新一著 古代から

来た未来人「折口信夫」があった。私は中沢や折口信夫

についていつも気にかけていたが、迂闊にもこの本の存

在は知らなかった。中沢新一は「柳田国男、折口信夫、

南方熊楠の三人の巨人の頭脳と心が生みだしたものは、

日本人に残された最も貴重な宝物である。わたしがこの

宝物をしっかりと護り未来に伝える水中の龍でありたい

と願う。」と語る。折口信夫の思考と文章を奇跡的な学

問とまで中沢は言い切るのである。そして彼の語るこの

奇跡的な学問が遥か遠い旅をするんだ。

十一月には、手の中にも入るこのちいさな本は私の

バッグの中にながくあった。高瀬町にあるイタリアン 

レストラン「デルソーレ」の忘年会の席ではこの本の

良さについて参加者にレクチャーをするつもりが果たせ

ず、赤ワインにまみれてしまっていた。また、その年の

暮れには深夜、三国東尋坊の岸壁を覗き込んでいたこと

もある。凍える海は月の光を受け、黒曜石を敷き詰めた

ように怪しく光っていた。折口の言う「貴種流離」と思

わず口にしてしまった。

また今年の三月には首都から来た陽気な絵かきがこの

本を手に取り、長く探していた本でもあり、帰りの新幹

線の中ですぐにでも読みたいからと言って持ち去った。

そして後日お礼だとして「夜の木」という高価な版画集

と一緒に送り返してきた。その頂いた「夜の木」を自慢

げに私が見ていたとき、ラピュタの才女が訪ねきて、中

沢のこの本を「貸して!」と言って強引に持って行って

しまった。

その後、この本の存在をとっくに忘れた頃、たまたま

蓬莱町のラピュタ事務所を訪れた元の本の所有者である

○○さんが末尾に墨でイニシャルの書きこまれた自らの

本に出会うのである。なんとその時ラピュタの某所長が

この本を深く読み込んでいて、本の持ち主に向かって、

この本がどれだけ優れているかという意味のことを自慢

げに彼女にレクチャーしたというのである。

本が勝手に旅をしているのである。去年この友の会の

冊子に森浩一が編集した「鉄」という本に白崎町の泥田

の中で出会ったと私が書いたことがあるが、優れた本は、

その本の力で遠くまで旅をするんだ。

角はもうすっかり擦り切れてしまったが、装丁の美し

い一冊の本が真夜中、確かに私のテーブルの上にそっと

置かれている。

中沢新一著 古代から来た未来人「折口信夫」である。

トラベリング・ブック

栗波和男 武生クラフトセンター代表   ブックカフェゴドー店主

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子どもたちが本を喜んで読む

ようになる、自分から手を伸

ばして読む―

そこを目指して

子どもたちに対するならば、

あなた自身が面白いと感じ、子どもたちに

紹介したいと思う本を採りあげましょう。

子どもたちに人気のあるものを入れた方が

いいのかと悩むことでもなく、入れてはい

けないと制限する必要もありません。

 私たちボランティアが子どもたちを前に、

本を読んだり、紹介したりすることは、子

どもたちの読書にとってどんな意味、役割

を持っているのでしょうか。今、あふれる

ばかりの出版物の中で、何を読んでいいの

か戸惑い、迷う子どもたちに、あるいは、

お気に入りの本にどっぷり浸り、次はどう

しようかと立ち止まったり、躊躇している

子どもたちに、「

この本おもしろそうだよ」

「こんな本があるよ」と紹介する、謂わば、

本に光を当てる役回りと考えます。 ただ、

限られた時間の中で紹介できる本の数は限

られます。ですから折角の機会なのだから、

子どもたちの知らない本を採り上げたいと

は思うのです。それでも、第一線の現場で、

子どもたちとの間に隔たりを感じた時など

には子どもたちに人気の本に敢えてスポッ

トを当てることで距離を縮めることができ、

結果、子どもが耳を傾け、心を開いてくれ

ることもあります。私はその方法を「信頼

回復の奥の手」と呼んでいます。面白い本

を教えてくれる、という聞き手の演じ手に

対する信頼感と期待感が、ブックトークの

効果を左右するのですから。

 読むも読まないも決めるのは子どもたち

です。「ほらね、おもしろかったでしょう」

と子どもたちの読書傾向に影響を与え得た

ことを密かに自己満足し、楽しみにする、

それくらいの気概で臨みましょう。その解

放感こそが子どもたちを本に誘う強い力に

なると思います。そのためにも、もっともっ

と本を読みこんでいきたいものです。

去年の夏の1番人気の絵本は『地獄』で

した。また、宮部みゆき、京極夏彦、加

門七海らによる『怪談絵本』シリーズも

大ヒットしました。以前講習会で、よく

売れている本は放っておいても子どもが

手に取る本だから、ブックトークやおは

なし会で紹介しなくてもいい、というよ

うなことを言われました。けれど、子ど

もたちに人気のある本を1冊くらい入れ

た方が・・・、という考えは邪道でしょ

うか?

回答者/鈴木晴代氏

(元・京都ブックトークの会代表)

本は私の宝島

 さあて、会報にのせる原稿をМさんにせがまれ、今パソコンの前

にきて打ち始めました。本について話せと言えばまああるにはあり

ますが、いざ文章にするとなると金縛りにあいちっとも進みません。

華麗なる一本指打法もなかなかスムーズにスタートがきれず、何の

話題にするか迷っている次第です。

 部屋の周りの本の山を見渡して、よおしこの本について書こうと

思ったやつのタイトルは『菜根譚』という漫画風に描かれた本です。

サブタイトルとして―

今も昔も大切な100のことば―

と書かれて

います。中身はかるた風に標語が書いてありますから読みやすいと

いうか、眺めていればいい本です。

 でもことばはなるほどということばかりで、自分を見つめ直すに

はうってつけの本ですよ。この本あのサンリオが出していますから、

たあ坊君も出てきます。そもそもこの菜根譚とは中国の学者が人の

生きる道をまとめた物で、さらに今回は子供にも分かりやすくまと

め出版されました。今私が持っているのは文庫本ですが、もう少し

大きく絵本みたいになったやつもでていました

 出版当時直接サンリオからまとめて買って、知り合いへのプレゼ

ントとかお客様への御遣い物にも使っていました。今は私自身これ

をもじって、会社で仕事を楽しく行う100のことばというやつを

書いています。なかなか100にはいきませんが、100までいっ

たら私も本でも出しますかな。みなさん買って買って。

 印税がっぽ がっぽは 夢のゆめ。

     

(いま突然地震が起きると

 間違いなく本に押しつぶされるおやじ

                林直樹) 

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子どもの本を楽しむ会 

第2回

「かえるの絵本 

この1冊」5月17日(金)

 カエルの本がこれほど多種多様あるとは。ネットで

探すのもいいけれど、やはり、実際に図書館の中を歩

き回るのが一番。「この1冊」に巡り合うために歩き回

る。鞄のひもが肩にくい込む。「あともうちょっとだけ

…。」そう覚悟を決めた時、「おっ!これは!」という

出会いが待っていたりする。

 しっとりした質感、小ささの割に命を感じさせる重

み、雨を知らせる予知能力、水陸両用、じっと待ちこ

こぞという時に一発で仕留める賢者の風格、そして「か

える」という名前からくるダジャレ。谷出先生の用意

して下さった贅沢な資料に酔いしれ、参加者の皆さん

が選んでこられた本に心動かされ、1時間半はあっと

いう間に過ぎてしまう。(澄)

子どもの本を楽しむ会 

第3回

「七夕絵本 

この1冊」6月21日(金)

 6月の第3金曜日に、越前市中央図書館・学習支援

室にて『第3回子どもの本を楽しむ会』が開催された。

 今回は、テーマが「七夕絵本 この1冊」とあり、参

加された方々は、自分がふだん七夕の時に読んでいた

り、読み聞かせに使っていたりする絵本や児童書など

を持って来られていた。そしていつものように、講師

である谷出千代子先生が、昔から読みつがれている七

夕の絵本や話題作を紹介・解説されていくのだろうと

思っていた。が、しかし。今回は、いつもと切り口が違っ

ていた。なにしろ最初が、『五節供の楽しみ』という大

人向けの本より、かの冷泉家で行っている伝統行事の

紹介から始まったのである。

 さらに『春夏秋冬えごよみ事典』『しばわんこの和の

こころ』『いまは昔むかしは今』と、次々に取り上げて

いくのは、それらの本の中で解説される行事や祭のこと

ばかり……。先生、これはいったい? と思ったその時、

谷出先生の口から意外な“裏テーマ”が告げられた。

それは―

―、「七夕で終わらない」というものであった。

 先生は言われた。

 「学校に行って絵本を一冊読んで終わるのではなく、

それに関連する絵本や事典を紹介することは、〝ボラン

ティアの親切〟です。そこから子どもたちは、図書館に

借りに行く、調べに行く。そういった〝きっかけ〟や〝チャ

ンス〟を提供することです。絵本を読まなくてもよい

朝読があっても良いのではないでしょうか」

 なるほど―

。きっとこれは、読み聞かせをする側

にも通用することである。天ぷらの美味さを知らずに、

天ぷらの本を美味そうに読めるであろうか。そこにさ

らに、天ぷらの由来や歴史、取り巻く環境すらも知っ

ていれば、絵本の行間をより深く想像し、読むことが

できるのではないだろうか。それは、言葉には出さな

くとも、滲み出るモノとなるであろう。そう思うと、

今回はいちだんと深い講座であった。

 もちろん絵本の解説もあった。七夕に関するおはな

しの中から、 「天人女房型」である『たなばたむかし』

と、「お伽草子」の中の『天稚彦物語』を田辺聖子氏が

訳した『田辺聖子のたなばた物語』である。両者とも

プロジェクターを使った、興味深くも楽しい、余談す

らもためになる解説であった。

 そして最後の最後に、「七夕」と書いてなぜ〝たなばた〟

と読むのかを、「棚機女(たなばたつめ)」という酷使

された女性たちの歴史をもって説明された。ただ楽し

い紹介・解説だけでなく、こういった物事に隠された

真実をきちんとお話しされるのも、谷出講座の大きな

特徴であり、谷出先生の真骨頂と言えるところである。

 今回参加された方々はきっと、いつもと違った目と

耳を持って今年の七夕を迎えられることであろう。

 どうか、晴れますように―

(岡田)

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 五月下旬から六月にかけての庭

には、春の草花と夏の草花が混在

し、とてもカラフルで華やかです。

シャクヤクやクレマチス(鉄仙)

には、その花の大きさと付ける花

の数の多さに圧倒されます。

クリスマスローズ、カーネーショ

ン、バラ、サツキ、ポピー、マー

ガレット、ガーベラなど次次と目

を楽しませてくれています。

先日スイートピーのツルが伸びて

きたので、支柱を立てたのですが、

そのときふと感じたこと。

 一年草のスイートピーやポピー

は毎年種を撒き、多年草のシャ

クヤクやクレマチス、クリスマス

ローズやカーネーション、ガーベ

ラなどは毎年同じ場所で楽しませ

てくれているなって。

 

花に限ったことではありませ

ん。家庭菜園では、多年草のアス

パラやウドは毎年収穫できます

が、夏野菜の代表格・トマトやキュ

ウリ、ナス・ピーマンは毎年苗を

植えて世話をしています。

 でも、花にしても野菜にしても

多年草のものはまったく世話が要

らないかというとそうでもありま

せん。多年草のものは放っておく

と株が肥大化して花や実が小さく

なったり、植えっぱなしの菊など

は、下葉や花が傷んだりします。

やはり、株分けや刺し芽、植え替

えなどで世代交代をしないと弱く

なったり退化したりしていくよう

です。

 さて、人間を植物に当てはめる

とどうでしょうか。もちろん、生

まれてから一年でその生涯を終え

ることは日本では稀ですが、命を

いただいてから生涯を閉じる様子

は、一年草に似ている気がします。

『一生涯草』とでもいいましょう

か。一生涯の中で、花を付け、実

(子)を残す………。

 

IPS細胞の研究が進み、ク

ローン人間が生まれると、人間は

『多生涯草』に変わってしまいま

すね。

恋する相手も、感動することも、

悲しむことも、喜ぶこともずっと

同じことが未来で続くのでしょう

か。

 いじめられっ子は、いつまでも

特定の子にいじめられ続ける?優

等生は、ずっと優等生で、劣等生

はずっと劣等生?

 学問はクローンからクローンに

正確に伝えられ積み重ねられてい

くことから、科学は今以上に加速

度的に進歩し、人類は『神』の領

域に限りなく近づいていくので

しょうか。

 いいえ、答えは植物が教えてく

れています。

 クローン世界、人間が『多生涯

草』になっても、きっと株分けや

刺し芽のように世代交代をしない

と『種』はだんだんと弱くなった

り退化したりしてしまうのでしょ

う。

話を戻しましょう。

 『一生涯草』である人の新しい

命の誕生から終焉までを、種の命

の連鎖の中での一つの輪っかに喩

えるならば、その輪っかは、種の

未来にとってとても大切なもの。

たった一つの輪っかがちぎれてし

まえば、もう後には鎖は繋がらな

いのですから。

 「世界に一つだけの花」、あの詩

は『一生涯草』として生きる大切

さを伝えてくれていたのでしょう

か。

♪♪♪ 土をいじりながら、「も

ともと特別な 

Only on

e」♪♪

夏の日記

一年草・多年草

O2

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 芹川貞夫氏の講座終了しま

した。たくさんのご参加と2

時間に及ぶ講座のご静聴に感

謝申し上げます。

 今後、講座のシリーズ化を

検討しています。(m)

 6月20日・木曜日の午後7

時から「ミケランジェロとそ

の時代」講座を開催しました。

 元・県立美術館館長の芹川

貞夫氏をお招きし、ミケラン

ジェロ展に向けての前知識を

興味のある方のみに…と思っ

ていたところ、当日は座る場

所がないほどの大盛況。さす

が巨匠・ミケランジェロ…と

変なところで感心してしまい

ました。

 

講座のほうは、ミケラン

ジェロの生きたルネサンス期

を包括的に解説。ところどこ

ろで笑いを取りつつ講義を行

う芹川氏の豊富な知識量と話

術に、ただただ感服するばか

り。この講座をシリーズ化し

て、図書館でも美術関連の図

書の貸出が増える…といいで

すね。(図書館員・小林)

 

講座風景。満員です。

ミケランジェロ展プレ講座

  「ミケランジェロとその時代」

 この作品は、今からちょうど三十年

前、寺山修司が亡くなって一ヵ月後に

封切られた怖い映画です。8ミリ映画

出身の森田芳光監督の5作目の商業映

画で、キネマ旬報ベストテンの第一位

を獲得し話題となりました。当時、日

本国内は高度経済成長に終わりを告げ

て、バブルの時代へ突き進むといった

ご時世だったでしょうか。映画のなか

では、校内暴力・受験戦争・いじめ・

家庭崩壊のようなものが登場してきま

す。

 映画に登場するのは、東京湾に望む

高層団地に住む四人家族。父親は会社

一筋の仕事人間で金属バット殺人事件

におびえる受験パパ、母親はそんな父

親に愛想を尽かしつつある息子溺愛マ

マ、一流受験高校に受かって目的を失

い失恋する兄、高校受験を控える成績

の悪い問題児の中学三年生の弟(主人

公)。そんな主人公に家庭教師 

(

松田

優作) を雇うことになるが、彼はい

つも船に乗ってやってきて、植物図鑑

を小脇に抱えている。

 ものを食べたり飲んだりするシーン

がやたら多く、音楽を使わずに食事の

際に出る音をそのまま強調して聞かせ

る。卵の黄身をすする音、皿とフォー

クのあたる音、飲み物は熱いコーヒー

も一気飲み。五人の食事は、最後の晩

餐のように横一列にすわり、肩と肘を

寄せ合って競うように食べつくしてい

く。セリフはあくまでも囁くように、

つぶやくようにで、見るものを不安に

させ、不快にさせていく。登場人物も

ほとんどが不快で、言うことやること

全てがどうかと思うことばかり。

 しかし、三流大学7年生の家庭教師

だけは圧倒的で、主人公の成績を上げ、

主人公の敵である担任といじめっ子を

恫喝し、最後に家族との食事の席で全

員を殴り倒して、テーブルをひっくり

返して船に乗って去っていく。後には、

ひっくり返された食器や料理を膝まづ

いて黙々と片付ける四人の姿が。

 時は流れて、兄と同じ一流高校に受

かった主人公が、けだるい午後に部屋

で眠っている。兄も床で寝ている。そ

れを見ていた母親も、手芸テーブルに

突っ伏して眠る。上空には不気味なヘ

リコプターの爆音が、いつまでもいつ

までも続いている。母親の最後のセリ

フは、「ねえ、今日何かあったのかし

ら?」 

 三十年前の不安は、今の時代にどう

重なるのか、どうぞ中央図書館で借り

てみてください。

(T.K.)

「家族ゲーム」第1シリーズ 

1983 年 106 分(にっかつ撮影所+ NCP + ATG 作品) 原作:池波正太郎 制作:松竹株式会社ビデオ事業室

Page 15: と感じたものについて執筆してもらいました。...特集・怖い話 あなたの「怖い」ものはなんですか?幽霊?オバケ?それとも職場の上司?人によって様々な「怖い」があると思いますが、今回は会員の方に「怖い」

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 図書館に訊いてみよう

       質問コーナー

今年度は越前市が読書のまち宣言を行ったこ

ともあり、友の会としてもより一層図書館を

支えていきたいと思っています。そこで、友

の会運営委員会が図書館の今後について質問

してみました。

Q.野球場の取り壊しの後、図書館が拡張さ

れるときいています。具体的な進捗状況を

お知らせ下さい。また、利用者の意見を取

り上げる機会は設定されるのでしょうか。

A.現在、図書館を含めたスポーツ施設や

中央公園、文化センターなどの再配置計

画が検討されていますが、都市計画法等

により、図書館が拡張されることはあり

ません。しかし、今後計画を検討する中

で、駐車場の拡張や導入路などの周辺整

備を要求して、来館者がより利用しやす

い環境になるよう、検討していきたいと

考えています。

Q.図書館コンピュータシステムがこの秋更

新されるときいています。現在のシステム

と比べて、どのように変わるのでしょうか。

県立図書館のような、利用者へのお便りは

届くようになるのでしょうか。また、イン

ターネット予約利用の現状と課題を。

A.本年11月1日に図書館システムを更新

します。しかし、現時点ではシステムが

決まっておりませんので詳細については

お答えできません。また、利用者への案

内等のメール配信につきましては、利用

者側の受信希望の有無等の確認が必要と

なりますので、現在検討中です。

インターネット予約利用は、平成24年度

は全予約件数27721件中9196件

で、全体の約33%となっており、年々そ

の割合が大きくなっています。

Q.選書システムについて。現在の工程を。

A.選書は、全職員が選んだ図書を館長、

選書担当職員が週1回選定し購入してい

ます。また、利用者からのリクエストも

協議の上購入しています。ただし、県内

の図書館で所蔵している図書については

相互貸借で対応する場合があります。

Q.読書宣言セレモニーの後、図書館として

の具体的な事業について。2013年度の

開催予定。

A.これまでも実施している土曜日の子ど

も向け行事を、これからも実施していき

ます。また、今後は、

①図書館友の会との共催で「オペラコン

サート」(8月17日)

②越前市学校図書館研究会との共催で

「福井県学校図書館研究大会」の支援

(10月8日)

③生涯学習課と連携し、地区公民館図書

コーナーの充実支援。

                  

         を行う予定です。

Q.図書館友の会との協働について。

A.図書館を楽しく使っていただくために、

これまでと同様に友の会と連携して様々

な事業を実施していきます。

これまでと同様に友の会と連携して様々

な事業を実施していきます。

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編集後記

▼僕の車のナンバーは、666です。

今に悪魔の報復があるでしょう・・・。

(善)

▼原稿集まるかな?こわごわ〝怖い話

特集〟を皆さんにもちかけたところ

出るわ出るわ、ぞくぞくと。友の会

編〝未知との遭遇〟。どうぞお楽しみ

ください。(杏理子)

▼好きな楳図作品は「おろち」ですね。

(麗)

▼「マタンゴ」を見たら、シイタケが

よけいにオイシイ! (茶舗)

▼会報の文芸的レベルがすごい。いろ

いろな処で耳にする。私はひたすら、

お知らせに・・・。(M)

▼表紙は河鍋暁斎の「百鬼夜行図」で

すが、ただ怖いだけでなく、こういっ

たユーモアとともにあるのが日本の

怪談の良さだと思います。(小林ヤ)

会報に関するご意見・お問合せ先

越前市図書館友の会〒 915-0832越前市高瀬二丁目 7-24(越前市中央図書館内)

電話:0778-22-0354Mail:[email protected]

― 次 号 予 告 ―

次号は

「アガサ・クリスティ」特集~クリスマスにクリスティを~

を予定しています。

どうぞお楽しみに!