なぜアセットマネジメントで

「整合」なのか

財務と非財務の機能を

整合させることで

組織のより良い価値を

実現する

Briefing Note アセット

マネジメント

第1版

2018年4月

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ISO/TC 251について 私たちは、国際規格ISO 55000シリーズの策定を担当するISOのアセットマネジメ

ントの技術委員会（TC: Technical Committee）です。これらの規格はアセットマ

ネジメントのベストプラクティスおよびマネジメントシステムの要求事項を定義し

ます。

詳しくはcommittee.iso.org/tc251をご覧ください。

ISO/TC 251のワーキンググループ5は、すべてのメンバー、特に本記事の執筆およ

び見直しに意見をくれたDaniel Pairon、Norberto Levin、Kerry Brown、Ed Sing-

er、Richard Culbertson、Rhys Daviesに感謝を伝えたいと思います。

Peter Way PSM

Convener of ISO/TC 251 WG5

Peter.Way@ipwea.org

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エンジニアリング、財務、運営の各チームが、異なる言語を話しているように感じたことは

ありませんか？3つの部門がそれぞれ、意思決定のプロセスにおいて一定の役割を果たして

いるとわかっていても、視点、用語、目標を整合させるのは難しいようです。互いに会話を

することなく断片化されたシステムやプロセスによって、意思決定のプロセスが妨げられ、

目標が達成されたかどうかを見極めるのも難しいというような困難にぶつかった人はどれく

らいいるでしょうか？

組織には、多くのプロセスと、洗練され、整備されたシステムがあり、異なる部門や組織の

要求事項を管理できる、非常に優れた人材がいるにも関わらず、それらを取りまとめ、統一

された全体として機能させるのには多くの困難が伴います。

多くの組織で、財務と非財務のアセットマネジメントの機能は異なる部署に存在していま

す。その結果、次のようなことが起こります。

• これらの機能の分野間のコミュニケーション手段の不足

• 透明性の欠如

• 財務収支と技術帳票との不整合

• 組織内部の一貫性の欠落

• アセットについてステークホルダーに報告する際の情報不足

組織の経営陣は、財務・会計に関連するアセットの問題に悩まされることがよくあります。

典型的な問題として、次のようなものが挙げられます。

• 組 織 の 目 標 達 成 の た め に 、 短 期 お よ び 長 期 的 に

（CAPEX、OPEXの両面で）、アセットにどのくら

いのレベルの支出や資金提供をする必要があるか。

この支出の優先順位をつけるにはどうすればよいか。

• 顧客に製品やサービスを提供するためにかかるコスト

はいくらか。また、その情報を使ってどのように価格

を設定したらよいか。

• 主要なアセットまたはアセットグループそれぞれの総

所有コストと、短期的な意思決定が長期的な総所有コ

ストに与える影響を、にどのようにして知ることがで

きるか。

• 現場での活動が財務収支に正確、完全かつ適時に記録

されているということを、どのようにして保証するこ

とができるか。

• アセットに関して、報告の目的のため、もしくは適切

なタイミングで正確な決定を行うために、十分な情報

を得られない

• 異なるリソースから、矛盾した情報が入ってくる

こうした課題を踏まえた上で、アセットマネジメントに

ついてより良い決定を行うために、様々な機能間の重要

な 関 係 を よ り う ま く 管 理 す る に は ど う し た ら よ い で し ょ う か 。 こ こ で 「 整 合

（Alignment）」が登場するのです 。

はじめに

機能の整合の課題

例

ロジスティクスの変化の速い組織の、エンジ

ニアチームと運営チームは、生産のためのア

セットの交換が必要であると確信していま

す。エンジニアチームが交換を望むのは、劣

悪な状態のアセットを生産に使えるような状

態に保つために、修理や故障対応により多く

の労力を割かなければいけないからです。そ

れにより、他のアセットの計画されたメンテ

ナンスがおろそかになり、劣化の悪循環が起

こります。生産チームが交換を望むのは、そ

れが頻繁に故障して信頼がおけないからで

す。そこで彼らは、他のアセットをより集中

的に使用するようになり、アセット全体での

さらなる劣化の悪循環につながります。とこ

ろが、財務チームはアセットを交換するため

に必要となる資本支出（CAPEX）を却下しま

した。財務諸表からそのアセットの減価償却

が完了するまであと数年も残っていたからで

す。これが、財務および非財務の整合の必要

性がわかる、「縦割り（Silo）」思考の典型的

な例です。

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組織の中のアセットマネジメントのプロセスや機能の整

合は、この問題の解決へと踏み出すための方法です。こ

の整合の概念は、単なるアセットの管理にとどまらず、

組織の目標やゴールを達成し、より総合的な方法でより

良いパフォーマンスを実現するのに役立ちます。

この達成に資するため、アセットマネジメントのISO規

格では、アセットからの価値を実現化するための重要な

要素として、整合に重点を置いています。ISO55001に

は、組織がこれらの機能をより良く整合できるようにす

るための要求事項が明確に記載されています。

アセットマネジメントの機能の整合は、アセットのライ

フサイクルに渡って、サービス性能の要求事項を満たし

ているかを理解しながら、より正確にコストを計算する

ことに役立ち、財務面でもより正確な視点やイメージを

持つことができます。さらに、組織は、目の前の決定

が、ライフサイクル全体の合計コストに対してどんな影

響を与えるのか、そしてそれらが組織の目標達成に対す

るリスクにどのように影響するかをより深く理解しやす

くなります。

こうした考え方をしているのはISOだけではありませ

ん。オーストラリアのインフラ財務マネジメントマニュ

アル（Australian Infrastructure Financial Management Manual）でも、組織内の共同作業を

通じた整合の重要さを指摘しています。

「アセットマネジメントの実務者（財務および非財務の両方）が、合意されたレベルのサー

ビスを、適切なライフサイクルコストで提供し、その成果を、サービスのパフォーマンスと

財務の観点で、正確に報告するという共同の目標をもって、密に連携することが欠かせな

い。」（抜粋：Australian Infrastructure Financial Management Manual, 2015 Edition,

www.ipwea.org/aifmm）

アセットマネジメントにおける会計

アセットマネジメントの機能の整合

組織は、その地域の会計基準（おそらくは、IFRSまたはその国の一般会計原則（Generally

Accepted Accounting Practices：GAAP）に基づくもの）に、従う必要があります。しかし

ながら、優れたアセットマネジメントとは単に会計基準に従うことだけにとどまりません。

財務および非財務の機能が整合し、協働して、アセットの最適な支出（OPEXとCAPEX）

を通じたベストプラクティスについて、経営陣にアドバイスを行う必要があるのです。

このアプローチでは、組織がその目標を達成するために、現在および将来に渡って、要求さ

れる製品やサービスのレベルを、可能な限り少ないライフサイクルコストで実現するよう

に、アセットが適切に維持管理、更新、交換、強化、廃棄されることが求められます。

アセットマネジメントの能力は、アセットマネジメントに関連する意思決定を行うための

データや情報を提供または活用する、すべての部門の整合と調整されたチームワークにか

かっているのです。

ISO 55000

ISO 55000のアセットマネジメントは、組織が

以下のことを可能にするツールを提供する。

…組織の目標の達成において、アセットから

の価値を実現することができる。アセットマ

ネジメントは、アセットに関連する財務、環

境及び社会のコスト、リスク、サービスの質

及びパフォーマンスのバランスを保ちつつ、

価値の実現化を支援する。 (ISO 55000, 2.2)

組織は、組織全体を通じてアセットマネジメ

ントに関連する財務的及び非財務的な用語の

整合性のための要求事項を決定しなければな

らない。(ISO 55001, 7.5 d))

組織は、そのステークホルダーの要求事項及

び組織の目標を考慮しつつ、法令及び規制上

の要求事項を満たすために必要とされる程度

まで、財務的及び技術的なデータとその他の

関連する非財務的なデータとの間の一貫性、

および追跡可能性があることを確実にしなけ

ればならない。 (ISO 55001, 7.5 e))

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整合によって、組織の様々な部門が情報を共有、活用でき、組織の目標達成を向上させるこ

とが可能になります。

財務および非財務のアセットマネジメント機能の効果的かつ効率的な相互作用は、次のよう

な結果をもたらします。

• アセットと組織のパフォーマンスをより効率的に測定し、組織の目標達成をより確実に

実証する

• 情報の利用可能性が向上し、より効率的で効果的な意思決定をサポートする

• アセットに関して共通に同意された用語によって、情報の効率性が上がり、組織内部の

縦割り構造を克服する助けとなる

• 内部統制を改善する

• 透明性と完全性の高い報告ができる

• チームワークを改善し、部門間の同意を得、部門ごとではなく組織全体での目標を追及

するようになる

会計の観点からは、一貫性があり、信頼に値する統合的なデータと知識のマネジメントは、

財務および非財務のアセットの登録情報と、財務諸表上の価値とが正確かつ完全であるとい

う保証を与えます。

「整合を達成する方法」についてアドバイスを提供する記事も執筆中です。これは近日中に

TC 251ウェブサイト（committee.iso.org/tc251）に掲載される予定です。

TC251は本トピックのより総合的な内容について、新しい技術仕様であるISO/TS 55010

「アセットマネジメント-アセットマネジメントにおける財務および非財務の機能の整合に

関するガイダンス」も作成中です。これは、2019年の上半期に発行されることが見込まれ

ています。

整合を行うべき理由