Biotechnology ゲノム工学・細胞工学に 基づく微生物情報学...2018/12/01  · 84...

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応用生物情報学講座 教授  西田 洋巳 研究分野 研究内容 リポート 私達の研究のポイント ゲノム工学・細胞工学に 基づく微生物情報学 応用生物情報学講座 准教授  大島 拓 ゲノム工学、細胞工学、微生物インフォマティクス、生物情報学 ゲノム工学、比較ゲノム学、ゲノム進化学に基づく機能性ゲノムDNAの設計 細胞工学に基づく微生物細胞の巨大化および巨大化細胞への設計されたゲノムDNAの導入 細胞の脱巨大化誘導による設計されたゲノムを持つ微生物の創生 環境における細胞外DNAの収集、塩基配列決定、および機能解析 本研究室の大量並列型DNAシーケンサーは1回のランで150億塩基のデータを産出するこ とが可能です。このデータを解析するためには、コンピュータが必要不可欠です。また、 世界の多くの研究室で産出される塩基配列情報は国際的なデータベースに登録されます。 これらの情報を効率良く利活用するためにも、コンピュータを使った生物情報学(バイオ インフォマティクス)が不可欠です。現在、幅広い分野においてバイオインフォマティク スの重要性が認識されています。今後、バイオインフォマティクスによって、私たちがま だ知らない生物の仕組みが次々と明らかになるでしょう。また、バイオインフォマティク スは次の研究方針や方向性を考える際にとても役に立ちます。 バクテリアのゲノムDNAの塩基組成(グアニン・シトシンの割合、GC含量)は生物種 によって異なり、GC含量13.5%から74.9%にばらついています。バクテリアや アーキアのゲノムGC含量の分布がいくつものピークを持つのに対して、ユーカリア のゲノムGC含量の分布は40%付近にピークを持つ正規分布に近いものとなってい ます。バクテリアやアーキアにおいては、核様体タンパク質がゲノムワイドにDNAに 結合し、ユーカリアにおいては、ヒストン8量体がゲノムワイドにDNAに結合していま す。核様体タンパク質は生物種間で多様性が高く、ヒストンは極めて保存性が高く なっています。ゲノムDNAにおける塩基組成の偏りはDNAとDNA結合タンパク質 との相互作用の進化と深くかかわっていると考えています。 GC% Frequency 20 30 40 50 60 70 0 20 60 GC% Frequency 20 30 40 50 60 70 0 5 10 15 GC% Frequency 20 30 40 50 60 70 0 10 20 30 物種 アや リア てい Aに いま 高く ク質 バクテリア巨大化細胞 巨大化細胞への マイクロマニピュレーション操作 ゲノム塩基組成の分布 84 Biotechnology

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応用生物情報学講座

教授 西田 洋巳研究分野

研究内容

リポート

私達の研究のポイント

ゲノム工学・細胞工学に基づく微生物情報学

応用生物情報学講座

准教授 大島 拓

ゲノム工学、細胞工学、微生物インフォマティクス、生物情報学

・ ゲノム工学、比較ゲノム学、ゲノム進化学に基づく機能性ゲノムDNAの設計・ 細胞工学に基づく微生物細胞の巨大化および巨大化細胞への設計されたゲノムDNAの導入・ 細胞の脱巨大化誘導による設計されたゲノムを持つ微生物の創生・ 環境における細胞外DNAの収集、塩基配列決定、および機能解析

本研究室の大量並列型DNAシーケンサーは1回のランで150億塩基のデータを産出することが可能です。このデータを解析するためには、コンピュータが必要不可欠です。また、世界の多くの研究室で産出される塩基配列情報は国際的なデータベースに登録されます。これらの情報を効率良く利活用するためにも、コンピュータを使った生物情報学(バイオインフォマティクス)が不可欠です。現在、幅広い分野においてバイオインフォマティクスの重要性が認識されています。今後、バイオインフォマティクスによって、私たちがまだ知らない生物の仕組みが次々と明らかになるでしょう。また、バイオインフォマティクスは次の研究方針や方向性を考える際にとても役に立ちます。

バクテリアのゲノムDNAの塩基組成(グアニン・シトシンの割合、GC含量)は生物種によって異なり、GC含量13.5%から74.9%にばらついています。バクテリアやアーキアのゲノムGC含量の分布がいくつものピークを持つのに対して、ユーカリアのゲノムGC含量の分布は40%付近にピークを持つ正規分布に近いものとなっています。バクテリアやアーキアにおいては、核様体タンパク質がゲノムワイドにDNAに結合し、ユーカリアにおいては、ヒストン8量体がゲノムワイドにDNAに結合しています。核様体タンパク質は生物種間で多様性が高く、ヒストンは極めて保存性が高くなっています。ゲノムDNAにおける塩基組成の偏りはDNAとDNA結合タンパク質との相互作用の進化と深くかかわっていると考えています。

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バクテリアのゲノムDNAの塩基組成(グアニン・シトシンの割合、GC含量)は生物種によって異なり、GC含量13.5%から74.9%にばらついています。バクテリアやアーキアのゲノムGC含量の分布がいくつものピークを持つのに対して、ユーカリアのゲノムGC含量の分布は40%付近にピークを持つ正規分布に近いものとなっています。バクテリアやアーキアにおいては、核様体タンパク質がゲノムワイドにDNAに結合し、ユーカリアにおいては、ヒストン8量体がゲノムワイドにDNAに結合しています。核様体タンパク質は生物種間で多様性が高く、ヒストンは極めて保存性が高くなっています。ゲノムDNAにおける塩基組成の偏りはDNAとDNA結合タンパク質

バクテリア巨大化細胞

巨大化細胞へのマイクロマニピュレーション操作

ゲノム塩基組成の分布

84 Biotechnology