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1 次ページへ続く BioResource Now ! Issue Number 6 October 2010 BioResource Now ! Vol.6 No.10 木原生物学研究所は、木原均博士(当 時京都帝国大学教授)によって財団法人木 原生物学研究所として 1942 年 5 月 5 日京 都府乙訓郡向日町物集女に創設されました。 以来、幾多の変遷を経て、1984 年横浜市 立大学に移管され、1995 年横浜市戸塚区舞 岡の地に現在の研究所施設が建設されました 写真1)。 木原生物学研究所は、京都大学農学研 究科を中核機関とする NBRPコムギ(ナショ ナルバイオリソースプロジェクト-コムギ 統合データベース)のサブ機関として、 のリソースを保持し、NBRP コムギの分担機 関として保存・配布事業の一翼を担ってい ます。実験系統には、突然変異系統、組換 え近交系、同質遺伝子系統、染色体置換系 統など遺伝学研究に利用される基本的な系 統を、在来種は東アジアを中心とした収集 系統を、その他の六倍性コムギには、世界 の主要な実用品種や交配母本など歴史的に 用いられた系統を保存し、国内外からの分 譲リクエストに対応しています。大部分の 系統は、穂の標本を保存しており、また主 な在来品種について形態・生理形質が記録 され NBRPコムギ Web のデー タベース「KOMUGI」上で公 開されています。 リソースセンター紹介 〈No.36〉 横浜市立大学木原生物学研究所 教授 坂 智広 ゲノム説の先駆である木原博士は、 20 世紀における高等植物の遺伝学や進化 学の研究で数々の業績を残しました。また、 細胞遺伝学を始め、様々な分野で多くの後 継者を育てるとともに、海外に植物探索旅 行を重ねて日本のフィールド科学の道を拓 きました。興味や好奇心の赴くままに日々 疑問を科学することを楽しんだ木原博士の 限りない探究心を、NBRP の木原コレクショ ンと同様に、時代を超えて伝え受け継ぐた めに 2010 年 3 月に木原生物学研究所内に、 『木原記念室』を開設いたしました(写真 2, 写真 3。大学生・大学院生の教育の資料と しての活用に加え、一般市民の方にも限定 公開して社会教育、生涯教育、自然科学へ の理解の一助とする施設となっています。 木原記念室が「温故知新」、木原博士の遺さ れた「生命科学は地球の医師となって働い てほしい」(1976年)の精神を、次代を担 う若い研究者に喚起して、世界が直面する 食糧不足、環境悪化、エネルギー枯渇に病 む地球を救う医師として活躍することを強 く願っております。■ 坂 智広 ( 横浜市立大学木原生物学研究所教授 ) 木原均博士の足跡をたどる「木原記念室」の開設 - The Conference of International Society for Biocuration - 4th International Biocuration Conference 報告 P1 - 2 ホット情報 リソース センター紹介 No.36 P2 Windows 7 活用!「OS まるごとバックアップ」 じょうほう通信 No.54 P2 木原均博士の足跡をたどる 「木原記念室」の開設 木原均博士の足跡をたどる 「木原記念室」の開設 写真1:木原生物学研究所 写真 2: 木原記念室の展示 写真 3: 木原均博士の書斎 の一部を再現 限定公開につき、見学希望の方は下記宛て お問い合わせください。 Tel : 045-820-1900 / Fax: 045-820-1901 『木原記念室』見学のご案内 (木原生物学研究所内、見学無料) 写真: ダルラマン宮殿前のコムギ畑に生 えるタルホコムギ (アフガニスタン、2010 年 6 月) ・コムギの遺伝学実験系統[系統数 : 428] ・在来品種[710] ・その他(二倍体野生種[7]、六倍体その 他[260])と旧提供系統[832] NBRP コムギの種子リソースの中には、 1955 年にパンコムギの発祥地を求めて 5,000km の行程に及ぶ、京都大学カラコ ルム・ヒンズークシ学術探検(木原均隊長) の際に採集されたパンコムギの祖先種である、 タルホコムギやコムギ在来品種の遺伝資源 があります。これらは、世界的にも歴史的 にも重要なコレクションとして、NBRP 事 業の中で活かされています。 最近注目されるものの一つに、 木原博士らがアフガニスタンで採集 した遺伝資源があります。アフガ ニスタンは 20 年もの内戦で国土は荒廃し、 主食であるコムギの生産、品種改良、遺伝 資源の保全のための研究開発基盤が崩壊し てしまいました。国際的復興支援の場面で 近代の多収穫品種が導入され始めているも のの、乾燥地の厳しい気候土壌条件で天水 農業(主として降雨に依存する非灌漑農業) の現場に適応した在来種の利用が期待され ています。半世紀前に木原博士らによって 収集され、日本における研究成果とともに、 NBRPコムギに引き継がれているアフガニス タンのコムギ遺伝資源が、今まさに復興の ために里帰りし、持続的食糧生産に向けた アフガニスタンの農業研究・品種改良を担 う人材を育成する計画が始まっています。 JST/JICA 地球規模対応国際科学技術協 力事業 SATREP:            データベース「KOMUGI」 http://www.shigen.nig.ac.jp/wheat/komugi/ (http://www.jst.go.jp/global/kadai/h2212_ afghanistan.html ) NewsLetter に掲載されているあらゆる 内容の無断転載・複製を禁じます。 すべての内容は日本の著作権法、及び 国際条約により保護されています。 国内外のバイオリソースを巡る様々な問題や取り組みについて、 毎月ホットな話題をこのニュースレターで紹介していきます。

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BioResource Now ! Vol.6 No.10

  木原生物学研究所は、木原均博士(当時京都帝国大学教授)によって財団法人木原生物学研究所として 1942 年 5 月 5 日京都府乙訓郡向日町物集女に創設されました。以来、幾多の変遷を経て、1984 年横浜市立大学に移管され、1995 年横浜市戸塚区舞岡の地に現在の研究所施設が建設されました(写真1)。

  木原生物学研究所は、京都大学農学研究科を中核機関とする NBRPコムギ(ナショナルバイオリソースプロジェクト-コムギ統合データベース)のサブ機関として、

のリソースを保持し、NBRPコムギの分担機関として保存・配布事業の一翼を担っています。実験系統には、突然変異系統、組換え近交系、同質遺伝子系統、染色体置換系統など遺伝学研究に利用される基本的な系統を、在来種は東アジアを中心とした収集系統を、その他の六倍性コムギには、世界の主要な実用品種や交配母本など歴史的に用いられた系統を保存し、国内外からの分譲リクエストに対応しています。大部分の系統は、穂の標本を保存しており、また主な在来品種について形態・生理形質が記録されNBRPコムギWebのデータベース「KOMUGI」上で公開されています。

リソースセンター紹介 〈No.36〉

横浜市立大学木原生物学研究所 教授坂 智広

  ゲノム説の先駆である木原博士は、20 世紀における高等植物の遺伝学や進化学の研究で数々の業績を残しました。また、細胞遺伝学を始め、様々な分野で多くの後継者を育てるとともに、海外に植物探索旅行を重ねて日本のフィールド科学の道を拓きました。興味や好奇心の赴くままに日々疑問を科学することを楽しんだ木原博士の限りない探究心を、NBRPの木原コレクションと同様に、時代を超えて伝え受け継ぐために2010年 3月に木原生物学研究所内に、『木原記念室』を開設いたしました(写真 2,写真 3)。大学生・大学院生の教育の資料としての活用に加え、一般市民の方にも限定公開して社会教育、生涯教育、自然科学への理解の一助とする施設となっています。木原記念室が「温故知新」、木原博士の遺された「生命科学は地球の医師となって働いてほしい」(1976 年)の精神を、次代を担う若い研究者に喚起して、世界が直面する食糧不足、環境悪化、エネルギー枯渇に病む地球を救う医師として活躍することを強く願っております。■

坂 智広 (横浜市立大学木原生物学研究所教授 )

木原均博士の足跡をたどる「木原記念室」の開設- The Conference of International Society for Biocuration -4th International Biocuration Conference 報告

P1 - 2

ホット情報

リソースセンター紹介No.36

P2

Windows 7活用!「OSまるごとバックアップ」じょうほう通信No.54 P2

木原均博士の足跡をたどる「木原記念室」の開設木原均博士の足跡をたどる「木原記念室」の開設

写真1:木原生物学研究所

写真 2:木原記念室の展示

写真 3:木原均博士の書斎の一部を再現

     

限定公開につき、見学希望の方は下記宛てお問い合わせください。Tel : 045-820-1900 / Fax: 045-820-1901

『木原記念室』見学のご案内(木原生物学研究所内、見学無料)

写真: ダルラマン宮殿前のコムギ畑に生えるタルホコムギ(アフガニスタン、2010年 6月)

・コムギの遺伝学実験系統[系統数 : 428]・在来品種[710]・その他(二倍体野生種[7]、六倍体その他[260])と旧提供系統[832]

  NBRPコムギの種子リソースの中には、1955 年にパンコムギの発祥地を求めて5,000km の行程に及ぶ、京都大学カラコルム・ヒンズークシ学術探検(木原均隊長)の際に採集されたパンコムギの祖先種である、タルホコムギやコムギ在来品種の遺伝資源があります。これらは、世界的にも歴史的にも重要なコレクションとして、NBRP 事業の中で活かされています。  最近注目されるものの一つに、木原博士らがアフガニスタンで採集した遺伝資源があります。アフガニスタンは 20 年もの内戦で国土は荒廃し、主食であるコムギの生産、品種改良、遺伝資源の保全のための研究開発基盤が崩壊してしまいました。国際的復興支援の場面で近代の多収穫品種が導入され始めているものの、乾燥地の厳しい気候土壌条件で天水農業(主として降雨に依存する非灌漑農業)の現場に適応した在来種の利用が期待されています。半世紀前に木原博士らによって収集され、日本における研究成果とともに、NBRPコムギに引き継がれているアフガニスタンのコムギ遺伝資源が、今まさに復興のために里帰りし、持続的食糧生産に向けたアフガニスタンの農業研究・品種改良を担う人材を育成する計画が始まっています。

       ※ JST/JICA 地球規模対応国際科学技術協力事業 SATREP:           

データベース「KOMUGI」http://www.shigen.nig.ac.jp/wheat/komugi/

(http://www.jst.go.jp/global/kadai/h2212_afghanistan.html)

NewsLetter に掲載されているあらゆる内容の無断転載・複製を禁じます。すべての内容は日本の著作権法、及び国際条約により保護されています。

国内外のバイオリソースを巡る様々な問題や取り組みについて、毎月ホットな話題をこのニュースレターで紹介していきます。

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Editor's Note

BioResource Now !Issue Number 6 October 2010

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(NBRP) www.nbrp.jp/(SHIGEN) www.shigen.nig.ac.jp/indexja.htm(WGR) www.shigen.nig.ac.jp/wgr/(JGR) www.shigen.nig.ac.jp/wgr/jgr/jgrUrlList.jsp

バイオリソース情報

4th International Biocuration Conference 報告

October 11-14, 2010Odaiba, Tokyo, Japan

ホット情報

木原先生は国立遺伝学研究所の第 2 代所長でもいらしたので、お名前だけは今でもとても身近に感じます。" The History of the Earth is recorded in the Layers of its Crust; The History of all Organisms is inscribed in the Chromosomes" という言葉はあまりにも有名ですね。先生の有形無形の教えが現在のコムギの研究者に脈々と引き継がれているように感じるのは私だけではないと思います。木原研究所の記念室にも行ってみたくなりました。(Y.Y.)

  Windows 7が発売されて一年が経ちましたが、既に7に移行されて使いこなしている方、XPのまま様子を静観されている方、様々だと思います。SHIGEN の Windows 利用者の OS バージョン分布を半年前と比べてみると、依然半数以上が XP であるものの、7の利用者は全体の 22% と増え Vistaを抜いて第 2位となり、移行は少しずつ進んでいるようです。(図1)

  10 月 11 日-14 日に、お台場の東京国際交流センターにて4回目のInternational Biocuration Conference

( 第 1 回目の International Society for Biocuration 会議)が開催されました。前後に2つのサテライトミーティングを加え、Plenary Talk 3題、6つの session と4つの Workshop、ポスターセッションというかなり盛り沢山な内容でした。  プログラムに記載されている参加者リストによると、参加者147名、うち日本人は 58 名、日本以外のアジアの国からは 10 名の参加がありました。1-3回目までの日本人の出席者が全体の5%程度であったことを考えると、今回の東京での開催はこの活動を広めるよい機会になったと思います。

  特に今回はアジアで初めての開催でしたので、Asian Models of Biocuration-Related Activities というセッションが特徴的でした。

  Windows7には新しい機能がたくさん追加されていますが、今回は7に標準で備わっている「バックアップ機能の使い方」について紹介します。  XP の場合、OS バックアップを行うには別にバックアップソフトウェア準備する必要がありましたが、7では標準でバックアップ・リストアの機能が備わっています。バックアップと聞くと、設定が大変で難しそうな感じがしますが、わずか “3ステップ” で OS まるごとのバックアップが可能です。バックアップ先は、USB ハードディスクが簡単でお勧めですが、DVD-R への分割バックアップやネットワーク経由のバックアップ(Professional 版以上)も可能です。以下に、バックアップの手順を解説します。

じょうほう通信 [第 54 回 ] 10分

  USB ハードディスクやネットワーク先のストレージに、バックアップが可能な場合は、バックアップスケジュール設定を行う事で、毎日自分が指定した時間にバックアップさせることも出来ます。

  Windows7を使っていて、まだバックアップを行っていない方は、今回の設定を参考にバックアップを取っておく事をお勧めします。安心して快適に Windows7を使いこなしていきましょう。               (山川 武廣)

BioResource Now ! Vol.6 No.10

  まず、コントロールパネルにある、「システムとセキュリティ」→「バックアップの作成」を開きます。「バックアップの設定」リンクをクリックします。

バックアップ対象の選択2

バックアップ開始3

1 バックアップ先の指定  次にバックアップ先を指定します。USBハードディスク又は、DVD-RWドライブ等を指定します。

  バックアップ対象の選択では、自分で好きなファイルを選択することもできますが「自動選択」がお勧めです。(OS システム領域とデータファイル全てが、バックアップ対象となります。)

  設定を保存すると自動的にバックアップが開始されます。バックグラウンドで処理しますので、バックアップ中も別の作業が可能です。

OSまるごとバックアップ

バックアップの設定をクリック

Windows 7 活用!

● 口頭発表およびポスターの内容は前回同様 nature.preceding から 公開されています。 http://precedings.nature.com/collections/biocuration-10

● プログラムは以下でご覧になれます。 http://hinv.jp/biocuration2010/Program_and_AbstractBookData.pdf

図 1:Windows OS のバージョン別利用者割合(2010 年 10 月現在)Windows OS のバージョン別利用者割合9%

22%

XP

7

Vista

2000

半年前 (2010/4)半年前 (2010/4)

詳細は http://www.nbrp.jp/ からご覧になれます

お 知らせ

日時:2010 年 11 月 30 日(火)-12 月 3日(金)会場:京都大学百周年時計台記念館詳細はこちらから http://www.anim.med.kyoto-u.ac.jp/workshop2010/

第 18回国際ラット遺伝システムワークショップURL: www.shigen.nig.ac.jp/shigen/news/ニュースレターのダウンロード先

現在 (2010/10)

Contact Address連絡先 〒411-8540 静岡県三島市谷田 1111    国立遺伝学研究所 生物遺伝資源情報総合センターTEL   055-981-6885 ( 山崎 ) E-mail [email protected]