Autopoiesis 1

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Autopoiesis 1 社社社社 2005/08/22 社社 社 Copyright (C) 2005 Denso IT Laboratory, Inc. All Rights Reserved.

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システム論の一種である、オートポイエシスに関する河本英夫氏の著書の要約。1回目は動的平衡系を紹介。

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Autopoiesis 1

社内教育  2005/08/22増谷 修

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動機動機

自己組織化とは何か?→単に「ひとりでに」機能が創発するという定義

ではあまりにも大雑把ではないか? 新しい視点は?

→自己組織化の技術は様々に応用されているが、クラスタリングや経路誘導のような単純なアプリ以外には何があるのか?

生命の根源って?→単純な自己組織化だけで生命を説明できるのか?

自己組織化とは何か?→単に「ひとりでに」機能が創発するという定義

ではあまりにも大雑把ではないか? 新しい視点は?

→自己組織化の技術は様々に応用されているが、クラスタリングや経路誘導のような単純なアプリ以外には何があるのか?

生命の根源って?→単純な自己組織化だけで生命を説明できるのか?

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出展出展 「オートポイエーシス―第三世代シス

テム 」 /河本 英夫 著者:東洋大学文学部哲学科教授

• オートポイエーシス論を精力的に紹介。 • マトゥラーナ・ヴァレラの本を翻訳。

Amazon :http://www.amazon.co.jp/exec/obidos/ASIN/4791753879/249-7546445-7550750

所感:哲学書ながら非常に読みやすい。著者のウィットの効いた文章が面白い。しかし、内容が圧縮されており難解には違いない。

「オートポイエーシス―第三世代システム 」 /河本 英夫

著者:東洋大学文学部哲学科教授• オートポイエーシス論を精力的に紹介。 • マトゥラーナ・ヴァレラの本を翻訳。

Amazon :http://www.amazon.co.jp/exec/obidos/ASIN/4791753879/249-7546445-7550750

所感:哲学書ながら非常に読みやすい。著者のウィットの効いた文章が面白い。しかし、内容が圧縮されており難解には違いない。

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Autopoiesis とはAutopoiesis とは

システム論の最新のトピック 自己組織化の次のパラダイム 1973 年の Maturana&Varela (M&V)

による共著論文「オートポイエーシス―生命の有機構成 (”Autopoiesis: The organization of the living”) 」で初めて提案された。

ニクラス・ルーマンがシステム論に導入

システム論の最新のトピック 自己組織化の次のパラダイム 1973 年の Maturana&Varela (M&V)

による共著論文「オートポイエーシス―生命の有機構成 (”Autopoiesis: The organization of the living”) 」で初めて提案された。

ニクラス・ルーマンがシステム論に導入

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H. Maturana, F. VarelaH. Maturana, F. Varela

Humberto Maturana• 1924~、神経生理学者。チリ大学医学部の教授

でイギリスやアメリカで動物の神経細胞、神経系の働きを研究。サイバネティクス研究の弟子;フランシスコ・バレーラと共に『知恵の樹』、『オートポイエーシス』など執筆。

Francisco Varela• 1946 ~、生物学者(認知科学)。フランス国立科

学研究センター研究部長。邦訳書に『オートポイエーシス』『知恵の樹』がある。 2001 年 5 月、パリにて死去。

Humberto Maturana• 1924~、神経生理学者。チリ大学医学部の教授

でイギリスやアメリカで動物の神経細胞、神経系の働きを研究。サイバネティクス研究の弟子;フランシスコ・バレーラと共に『知恵の樹』、『オートポイエーシス』など執筆。

Francisco Varela• 1946 ~、生物学者(認知科学)。フランス国立科

学研究センター研究部長。邦訳書に『オートポイエーシス』『知恵の樹』がある。 2001 年 5 月、パリにて死去。

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工学的応用は?工学的応用は?

まだ馴染みが薄いが多方面からの応用が始まっている。

Citeseer ヒット数: 64 まだ基本的なシミュレーションに留

まっている。 自己組織化アプリへの新しい観点には

なりそう。

まだ馴染みが薄いが多方面からの応用が始まっている。

Citeseer ヒット数: 64 まだ基本的なシミュレーションに留

まっている。 自己組織化アプリへの新しい観点には

なりそう。

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構成構成

オートポイエーシスの理解のためには前史とシステム論の理論も理解する必要がある。

1. 動的平衡系(第一世代システム)2. 自己組織化(第二世代システム)3. オートポイエーシス(第三世代シス

テム) 今回は1.

オートポイエーシスの理解のためには前史とシステム論の理論も理解する必要がある。

1. 動的平衡系(第一世代システム)2. 自己組織化(第二世代システム)3. オートポイエーシス(第三世代シス

テム) 今回は1.

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システム論前史システム論前史

機械論と生気論 生気論:物質的要素に還元できない生命特有の現象を扱う

18世紀末 デカルト的機械論に抗して登場(ビシャ、ライル、アウテンリート、ミュラー etc )

有機体をどのように解剖しても実体的要素を有機体内に見出すことができない。

これは不利な証拠ではない( ex. 力学) 機械論と生気論は対立しない。

機械論と生気論 生気論:物質的要素に還元できない生命特有の現象を扱う

18世紀末 デカルト的機械論に抗して登場(ビシャ、ライル、アウテンリート、ミュラー etc )

有機体をどのように解剖しても実体的要素を有機体内に見出すことができない。

これは不利な証拠ではない( ex. 力学) 機械論と生気論は対立しない。

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システム論前史システム論前史 有機体が機械と異なることは自明だが、何故異なるかということ

に答えることは難しい。 心臓=ポンプ、眼=レンズと例えて説明することができるが、

それぞれ機械以上のものが備わっている。 機械論は同時代の水準で生命現象の可能な限りの説明を呈示し、

生気論はそれではすまないと主張する。 機械論はどんどん進化する。

有機体が機械と異なることは自明だが、何故異なるかということに答えることは難しい。

心臓=ポンプ、眼=レンズと例えて説明することができるが、それぞれ機械以上のものが備わっている。

機械論は同時代の水準で生命現象の可能な限りの説明を呈示し、生気論はそれではすまないと主張する。

機械論はどんどん進化する。

17-18世紀 18世紀末 19世紀半ば 20世紀 20世紀後半

機械論の比喩

時計(デカルト、ニュートン、カント)

水車(ヘーゲル)

工場(ベルナール)

フォード型ベルトコンベアー

コンピュータ

説明対象

運動量保存 エネルギー 物質代謝 クエン酸回路

神経、認知Copyright (C) 2005 Denso IT Laboratory, Inc.

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システム論前史システム論前史唯一の争点は生命現象は機械に還元できる

か?という問い

物理的、化学的な説明を使いながら、物質現象と異なる生命現象を明示する。

18世紀末に成立した生物学での、この条件を満たす構想「有機構成」

システム論の中心テーマ

唯一の争点は生命現象は機械に還元できるか?という問い

物理的、化学的な説明を使いながら、物質現象と異なる生命現象を明示する。

18世紀末に成立した生物学での、この条件を満たす構想「有機構成」

システム論の中心テーマ

機械論

生気論 時代?

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有機構成有機構成

特殊な要因を持ち込むわけではないので物理、化学的探求と無理なく接続することができる。

要素に還元できないという点が唯一の要請

多階層性が導入される:要素レベルと複合的構成化のレベル

Ex. 高分子、細胞内器官、細胞、組織、器官、個体

特殊な要因を持ち込むわけではないので物理、化学的探求と無理なく接続することができる。

要素に還元できないという点が唯一の要請

多階層性が導入される:要素レベルと複合的構成化のレベル

Ex. 高分子、細胞内器官、細胞、組織、器官、個体

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システム論システム論

各要素を統合する関係の論理として出発

ベルタランフィ (1901-) などの一般システム論が最も初期の概念

各要素を統合する関係の論理として出発

ベルタランフィ (1901-) などの一般システム論が最も初期の概念

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動的平衡系動的平衡系

有機体は開放系として外界と物質代謝、エネルギー代謝をしながら自己維持するシステムである。

環境が変動しても自己維持が崩れない19世紀半ばまでに構想が明確になる。ベルタランフィー、ラズローら

有機体は開放系として外界と物質代謝、エネルギー代謝をしながら自己維持するシステムである。

環境が変動しても自己維持が崩れない19世紀半ばまでに構想が明確になる。ベルタランフィー、ラズローら

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有機構成有機構成

1. 相互位置不変の法則( ex.器官の配置)2. 相互補填の原理( ex. 知覚機能)3. 平衡の原理( ex.隣接関係による調整)4. 機能的統合( ex.肉食に対するキバ)5. 多態性( ex. 神経組織と網膜)6. 原因性が無い( ex.各要素と全体)7. 生成プロセスの円環

1. 相互位置不変の法則( ex.器官の配置)2. 相互補填の原理( ex. 知覚機能)3. 平衡の原理( ex.隣接関係による調整)4. 機能的統合( ex.肉食に対するキバ)5. 多態性( ex. 神経組織と網膜)6. 原因性が無い( ex.各要素と全体)7. 生成プロセスの円環

第一世代システム 第二世代システム 第三世代システムCopyright (C) 2005 Denso IT Laboratory, Inc. All Rights Reserved.

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ホメオスタシスホメオスタシス 体温調整などの生体内調整機構 環境との影響を緩和するような「内的環境」が備わっている。

両義性 システムの開放性に力点を置く解釈

• 内部要素(細胞)が外部と相互作用するのは媒体(血液)を通してである。

• 内的環境(血液)は外界へと開かれていくための媒体である。外界の変動を緩和するためのバッファー。

システムの閉鎖性に力点を置く解釈• 物質代謝を行っているとはいえ有機体は環境の中には存在

しない。• 内部環境が防御的になるほど独立性が増大

通常は前者の意味

体温調整などの生体内調整機構 環境との影響を緩和するような「内的環境」が備わっている。

両義性 システムの開放性に力点を置く解釈

• 内部要素(細胞)が外部と相互作用するのは媒体(血液)を通してである。

• 内的環境(血液)は外界へと開かれていくための媒体である。外界の変動を緩和するためのバッファー。

システムの閉鎖性に力点を置く解釈• 物質代謝を行っているとはいえ有機体は環境の中には存在

しない。• 内部環境が防御的になるほど独立性が増大

通常は前者の意味Copyright (C) 2005 Denso IT Laboratory, Inc. All Rights Reserved.

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ホメオスタシスホメオスタシス

内的調節機構としての内部環境キャノンが今世紀前半生理学一般に拡大ホメオスタシス:恒常性維持 神経システムが関与

•仙骨神経:老廃物を除去し、有機体の恒常性を維持

•脳神経:消化作用や吸収を調整•交感神経:生じたかく乱に対して作動する

内的調節機構としての内部環境キャノンが今世紀前半生理学一般に拡大ホメオスタシス:恒常性維持 神経システムが関与

•仙骨神経:老廃物を除去し、有機体の恒常性を維持

•脳神経:消化作用や吸収を調整•交感神経:生じたかく乱に対して作動する

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一般システム論一般システム論

ベルタランフィの一般システム論 要素主義の否定 有機構成を様々な現象領域に見出し共通

の法則性を見出す:微分方程式で表現 しかし、このアプローチによるホメオス

タシスの考察は、システムの作動の結果としてみているだけで、作動そのものについては何も説明しない。

ベルタランフィの一般システム論 要素主義の否定 有機構成を様々な現象領域に見出し共通

の法則性を見出す:微分方程式で表現 しかし、このアプローチによるホメオス

タシスの考察は、システムの作動の結果としてみているだけで、作動そのものについては何も説明しない。

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一般システム論の弱点一般システム論の弱点

1. 作動の結果はわかるが、そもそも有機構成はどのように成立したのか説明していない

2. 予想されていないかく乱に対する自己調節はどのように説明するか?

3. 物質代謝を行いながら自己維持することを説明できない。システムの作動そのものを扱わないといけない。

恒常性維持による平衡は観察者からみた特定の層における、システムの作動の結果である。

1. 作動の結果はわかるが、そもそも有機構成はどのように成立したのか説明していない

2. 予想されていないかく乱に対する自己調節はどのように説明するか?

3. 物質代謝を行いながら自己維持することを説明できない。システムの作動そのものを扱わないといけない。

恒常性維持による平衡は観察者からみた特定の層における、システムの作動の結果である。

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階層関係階層関係 階層自体は自明だが階層間の関係をどのように扱うか? ベルタランフィ:多階層が全体性の中で調和していると

論証抜きで前提している アリストテレス:目的ー手段関係。最上階は手段であり目的である必要がある。自己目的。

ケストラー:中間層は自律ー従属関係の両面性を持つ。ホロン。しかし結局究極的全体も要素も説明できない。

キュヴィエ:機能的システム論。機能の階層の上位にはどのような機能があるか説明できない。

ビシャ:各機能を別個のシステムと扱う( ex.脳ー神経、肺ー呼吸、心臓ー循環器)。並立自律。全体性は不要。

階層自体は自明だが階層間の関係をどのように扱うか? ベルタランフィ:多階層が全体性の中で調和していると

論証抜きで前提している アリストテレス:目的ー手段関係。最上階は手段であり目的である必要がある。自己目的。

ケストラー:中間層は自律ー従属関係の両面性を持つ。ホロン。しかし結局究極的全体も要素も説明できない。

キュヴィエ:機能的システム論。機能の階層の上位にはどのような機能があるか説明できない。

ビシャ:各機能を別個のシステムと扱う( ex.脳ー神経、肺ー呼吸、心臓ー循環器)。並立自律。全体性は不要。

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ハルマトンの階層関係論ハルマトンの階層関係論 いまだハルマトンの議論を超え出ているものは無

いと思われる。網羅的。 3つの法則群1. 累層法則:包含関係を扱うが、主に非連続性をあ

らわす。2. 依存法則:規定ー被規定関係。低いカテゴリから

の高いカテゴリの予測不能、低いカテゴリは高いカテゴリが無くても存在可能、など。

3. 凝集法則:各階層内のカテゴリー間の相互関係。同じ階層内のカテゴリーはそれぞれ不可分離的な統一を形成、など。

しかし、安定した階層の間の関係、変様の仕方を問題にしており、階層生成の機構を問わなければならない→第二世代システム

いまだハルマトンの議論を超え出ているものは無いと思われる。網羅的。

3つの法則群1. 累層法則:包含関係を扱うが、主に非連続性をあ

らわす。2. 依存法則:規定ー被規定関係。低いカテゴリから

の高いカテゴリの予測不能、低いカテゴリは高いカテゴリが無くても存在可能、など。

3. 凝集法則:各階層内のカテゴリー間の相互関係。同じ階層内のカテゴリーはそれぞれ不可分離的な統一を形成、など。

しかし、安定した階層の間の関係、変様の仕方を問題にしており、階層生成の機構を問わなければならない→第二世代システムCopyright (C) 2005 Denso IT Laboratory, Inc.

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第一世代システム第一世代システム

有機構成と階層関係論 システムには入力、出力があり、物質代謝を行いながら開放系でかつ平衡を保つ。関係は一定に保たれている。

関係が基本:部分ー全体関係から項と関数の関係。

ただし恒常的関係で規則的関係ではない。動的平衡の結果でしかない。

関係を構造として扱っている、構造主義的。

有機構成と階層関係論 システムには入力、出力があり、物質代謝を行いながら開放系でかつ平衡を保つ。関係は一定に保たれている。

関係が基本:部分ー全体関係から項と関数の関係。

ただし恒常的関係で規則的関係ではない。動的平衡の結果でしかない。

関係を構造として扱っている、構造主義的。

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構造主義生物学構造主義生物学 物理的な要素に還元しえない構造を設定。 多元論と厳密科学を両立させようとしている。例:遺伝子の欠陥による遺伝病。遺伝子の欠

陥からいつでも発病するわけではない。「構造」が成立しないといけない。この「構造」は遺伝子の並び方に還元できない。さらに「構造」から現象が一義的に導出可能。

還元不可能性と厳密科学要求の両者を満たすレベルに「構造」を設定。

無理のある議論だが、池田氏の文体がこの無理を補って余りあるものにしている。

物理的な要素に還元しえない構造を設定。 多元論と厳密科学を両立させようとしている。例:遺伝子の欠陥による遺伝病。遺伝子の欠

陥からいつでも発病するわけではない。「構造」が成立しないといけない。この「構造」は遺伝子の並び方に還元できない。さらに「構造」から現象が一義的に導出可能。

還元不可能性と厳密科学要求の両者を満たすレベルに「構造」を設定。

無理のある議論だが、池田氏の文体がこの無理を補って余りあるものにしている。

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Page 23: Autopoiesis 1

5つのテーゼ5つのテーゼ

1. 実定のテーゼ:「構造」は物質の関係として実定される。

2. 恣意性のテーゼ:「構造」は分節恣意性と対応恣意性を含む。

3. 無根拠のテーゼ:「構造」は無根拠で要素から演繹されない。

4. 閉鎖性のテーゼ5. 可能的多元構造のテーゼ:現象として

発現しない多数の「構造」が存在する。

1. 実定のテーゼ:「構造」は物質の関係として実定される。

2. 恣意性のテーゼ:「構造」は分節恣意性と対応恣意性を含む。

3. 無根拠のテーゼ:「構造」は無根拠で要素から演繹されない。

4. 閉鎖性のテーゼ5. 可能的多元構造のテーゼ:現象として

発現しない多数の「構造」が存在する。Copyright (C) 2005 Denso IT Laboratory, Inc.

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構造主義生物学構造主義生物学 経験科学のようにみえるが、基本概念をほとん

ど定義によって導入している。論理学に近い。実定:実験科学の測定にかなうように関係=構造を設定。

恣意性: ex. DNA の塩基配列の単位の区切り方は恣意性が含まれている。アミノ酸との関係は1対1ではなく対応恣意性が含まれる。

無根拠:「構造」をもはや因果的生成原因や結果のカテゴリでは考えない。

多様な現象に対しそれぞれの「構造」が仮構される。

経験科学のようにみえるが、基本概念をほとんど定義によって導入している。論理学に近い。

実定:実験科学の測定にかなうように関係=構造を設定。

恣意性: ex. DNA の塩基配列の単位の区切り方は恣意性が含まれている。アミノ酸との関係は1対1ではなく対応恣意性が含まれる。

無根拠:「構造」をもはや因果的生成原因や結果のカテゴリでは考えない。

多様な現象に対しそれぞれの「構造」が仮構される。

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構造主義生物学への疑問構造主義生物学への疑問閉鎖性は有機体の作動と折り合わない。 代謝回路などでは構造が現象への一義的根拠に

はなりえない。脳の構造は物質の関係だけでは規定できな

い。 Ex.関係の関係、階層間の関係• 構造の定義を厳密に行ったことで逆に脳の機構を考える上での制約になっている。

• 「物質に還元可能」ではなく「測定可能」という制限で十分か。

上位の構造での創発を認められない。(構造が現象を規定するから)しかし物質から構造への創発は認められる。

閉鎖性は有機体の作動と折り合わない。 代謝回路などでは構造が現象への一義的根拠に

はなりえない。脳の構造は物質の関係だけでは規定できな

い。 Ex.関係の関係、階層間の関係• 構造の定義を厳密に行ったことで逆に脳の機構を考える上での制約になっている。

• 「物質に還元可能」ではなく「測定可能」という制限で十分か。

上位の構造での創発を認められない。(構造が現象を規定するから)しかし物質から構造への創発は認められる。

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まとめまとめ

第一世代システムでは、ホメオスタシスなどを説明しているが、現象の結果を説明しており、その発現については説明しない。

しかし、階層、関係、構造など重要な視点が幾重にも考察され、新しい理論の基盤となっている。

第一世代システムでは、ホメオスタシスなどを説明しているが、現象の結果を説明しており、その発現については説明しない。

しかし、階層、関係、構造など重要な視点が幾重にも考察され、新しい理論の基盤となっている。

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