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AI農業の取組について 食料産業局新事業創出課長 遠藤 順也 2 4 5 1

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AI農業の取組について

食料産業局新事業創出課長遠藤 順也

平 成 2 4 年 5 月

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本日お話しする内容

I. 我が国の農業をめぐる状況II. 農業のIT化によるメリットIII. 農業のIT化に関する各種提言IV. 農業分野でのITの活用事例V. 農業のIT化の集大成~AI農業~ AIシステムによる「匠の技」の継承 平成22年度 AIシステムに関する知的財産の検討 平成23年度第3次補正予算におけるIT活用事例 AIシステムの開発について AIシステムの実用化に向けたロードマップ

VI. 今後の展開2

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昭和35年 55年 平成12年 22年

 農家戸数(万戸) 606 466 312 253

 指数(昭和35=100) 100 77 51 42

 農業就業人口(万人) 1,454 697 389 261

 指数(昭和35=100) 100 48 27 18

うち65歳以上(%) - 25 53 62

資料:農林水産省「農林業センサス」

注:農業就業人口の平成12年以降の数値は、販売農家のもの。

農家戸数、農業就業人口の推移

平成2年4兆8,172億円

平成21年2兆5,946億円▲46%

生産農業所得の低下

0

10

20

30

40

50

60

70

15~29歳

30~39歳

40~49歳

50~59歳

60~64歳

65~69歳

70~74歳

75歳以上

平成7年

平成22年

資料:農林水産省「農林業センサス」注:基幹的農業従事者とは、自営農業に主として従事した15歳以上の世帯員(農業就業人口)のうち、普段の主な状態が「主に仕事(農業)」である者で、主に家事や育児を行う主婦や学生等を含まない。また、上記の図は販売農家のもの。

万人

○平均年齢平成7年 59.6歳平成22年 66.1歳

基幹的農業従事者の年齢構成

資料:農林水産省「生産農業所得統計」

3

農業は暗黙知、経験則が多い

・毎年異なる気象条件の中で、播種、施肥、防除、収穫をベストのタイミングで行う必要があり、マニュアル通りに生産しても、篤農家と一般農家では収量・品質に大きな差がある。

・各地にある経験則の例豪雪の翌年は豊作、雷が多いと豊作など

【農業農村の持続性確保に向けた課題】○ 若年層の担い手をいかにして確保・育成すべきか ○ 熟練農家の高い生産技術(暗黙知、経験則)をどう引き継ぐか○ どうすればもうかる農業ができるのか ○ 消費者ニーズに適時的確に対応できないか

農業・農村は食料供給の役割に加え、国土の保全や自然環境の保全、良好な景観形成など様々な役割を持っている。しかし、農業の就業人口は減少傾向に歯止めがかからず、後継者難が続き高齢化が進展、担い手が不足している。また、耕作放棄地が増加し、生産農業所得が低下している状況にあり、農業・農村の持続性確保が懸念されている。

Ⅰ.我が国の農業をめぐる状況

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Ⅱ.農業のIT化によるメリット 効率化、省力化、低コスト化

農家の高齢化や後継者難に対応するとともに、収益の向上を図ることができる。

データ共通化熟練農家の暗黙知を形式知にすることで、イノベーションの前提となる。

客観化による知財化熟練農家の暗黙知などを客観化することで知的財産として保護できる。

守りの知財、攻めの知財。

職業技術、肥培管理技術等の汎用性の確保技術として汎用性を確保することで、新規就農を促進し、

今後の高付加価値農業の展開に貢献できる。

データ処理の即時性・同時性の確保POSシステムの導入等により、消費者ニーズの把握ができる。

トレーサビリティの確保顔の見える販売が行えるようになり、信頼性の向上に貢献、

高付加価値化を図ることができる。

最先端技術との組合せによる成分分析での選別非破壊センサーによる成分分析による選別を行うことで、

高付加価値化を図ることができる。4

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Ⅲ.農業のIT化に関する各種提言①

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新たな情報通信技術戦略(平成22年5月11日 IT戦略本部決定)

2 地域の絆の再生(4)地域主権と地域の安心安全の確立に向けた取組i )地域の活性化

2010年夏頃までにホワイトスペースの活用など新たな電波の有効利用の実現方策を取りまとめ、地域ニーズに合わせた施策を展開する。また、クリエイティブ産業等を育成するためのふるさとコンテンツの製作・配信基盤の整備、観光分野に適した音声翻訳システムの普及等に加え、地域の中小企業の戦略的な情報通信技術投資の促進、地域・中小企業と情報通信技術関連企業等との連携強化を図る。

また、情報通信技術を用いた農林水産物の国内外の販路拡大や農林水産業・農山漁村の6次産業化(生産・加工・流通の一体化等)を推進するとともに、農地情報(地図情報)や新規参入者等が篤農家のノウハウを活用するためのシステムの開発・整備等を推進する。【総務省、経済産業省、農林水産省等】

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Ⅲ.農業のIT化に関する各種提言②

東日本大震災からの復興の基本方針 (平成23年7月29日東日本大震災復興対策本部決定)

5(3)③農業

(ⅳ)先端的な農業技術を駆使した大規模農業の実証研究や高齢者等による高品質な農産物生産を容易にするAI(アグリインフォマティクス)システムの開発を実施することにより、新たな農業を提案する。

食品産業の将来ビジョン (平成24年3月農林水産省公表)

第1 食品産業に期待される役割(7パラ)食品産業は、生産者と消費者との絆を強める架け橋として、食品産業が有するマーケティング力や情報・通信技術(IT)等を活かしつつ、資源循環から始まるバリューチェーンの形成に貢献することが期待されている。

第4 2 (3) ②IT等を活用した合理的なフードチェーンの構築(1,3パラ)

輸配送の共同化や取引の電子化等により、一層のコスト削減を図る。また、コストの可視化等により、生産・配送・販売等のフードチェーンの各段階の事業者が連携しつつ、商品の特性に応じた輸送容器の普及等の共通化や輸送機器等の合理化を進める。

他方、スマートフォンや多機能端末の普及を踏まえつつ、消費者の多様なニーズに的確に対応するため、流通BMSの導入、情報システムのクラウド化等、卸売市場を含むフードチェーンの各段階の事業者間でITを活用した情報伝達を円滑化させる。特に、商品情報の統一化とネットワーク化による一元管理の導入を図る。 6

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施設栽培

小中学校

農産物加工所

CATV施設等

農産物直売所役 所

農 家

直売所情報の受信

農家

農家

農家

営農指導員

農産物市況情報営農情報営農支援

農産物市況・営農情報の提供

畜舎の監視(出産情報の提供)

栽培履歴の記録

経験・知恵のデーターベース化

情報を蓄積・分析AIシステム

インターネットを活用した産地PR

ブログショッピングサイトなど

ほ場の監視(鳥獣害情報の提供等)

施設の管理

植物工場

ITを活用した新商品の開発・販路の開拓

農商工連携

電子地図でほ場データを管理衛星を活用した収穫適期の提供

交通情報の提供

(道路凍結等の提供)

CATV放送局等施設の活用

選果集出荷情報の提供

種類・等級別出荷情報

特売情報の提供

電子商取引

POS(売上・在庫顧客情報の管理)

一般世帯住民

直売情報の検索

直売情報の提供

直売情報の提供

観光情報の提供

グリーンツーリズムの推進

農業体験

農業体験情報の提供

相談

指導

遠隔健康相談・健康管理

研究開発

電子タグの活用

農 家

大 学

スーパー

市場・集出荷施設

電子せり

食と農の現状や魅力の発信

ほ場の監視(遠距離ほ場情報)

病 院

基地局

樹園地

都市への情報提供(UJIターン支援)

牧 場

ITを活用した多様な連携で情報を共有・蓄積し、さらなる価値を創出→ 6次産業化等を進展

○○体験ツアー

都市部

マルシェインターネット

宅配

センサーによる災害の感知

(災害・防災情報の提供)

6次産業化の推進等農産漁村地域の活性化に向けたIT活用イメージ

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ハウス内に設置する「フィールドサーバ」により気温・湿度等の各種環境データを栽培管理用パソコンで確認。各種計測データを基に灌水量等をコントロール、収穫適期のタイミング等を予測⇒栽培管理時間の効率的生産管理情報をデータベース化⇒栽培作物の品質向上

【施設栽培における栽培管理】[三重県・津市]

【発情発見システムの導入】[愛知県・新城市]

フィールドサーバー本体

データ管理PC画面

万歩計

グラフ化された歩数

無線機を内蔵した万歩計を繁殖雌牛に装着し、運動量(歩数)を計測し、その情報をパソコンへ送信歩数情報を解析し、発情時期を判定⇒受胎率向上による省力化

【さくらんぼ狩り適期案内(インターネット)】[山形県・山形市]

【GPS車両ナビゲーションシステムの導入】[北海道・津別市]

GPS・スプレイヤー高速連動モニター

屋根部分にGPS受信アンテナを取り付けたトラクター

GPSによりほ場の面積、形状、位置を正確に測定。走行経路等が表示されるコントローラーに表示された走行ラインに合わせて農業機械を走行させ、耕起、整地、肥料散布、防除等の作業を実施⇒ 作業効率の向上⇒ 効率的な肥料散布による低コスト化

生産者は自らの果樹園の①開花、②着果、③色付き始め、④収穫中、⑤収穫終わりの5段階の生育状況をパソコンや携帯電話で「さくらんぼナビ」に入力し、ホームページで公開⇒ 消費者へのリアルタイムなPRが可能

HPトップページ

「さくらんぼナビ(R)」の画面

Ⅳ.農業分野での従来のITの活用事例①

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人・物の流れ

データ、通信情報

農産物直売所

金融機関

【出荷予約】品目・数量・単価

消費者

【注文・消費者の意見】電話による問い合わせ

【販売情報】バーコード番号により生産履歴情報をHPにより提供

【売上情報等】・1時間ごと売上情報・販売分析情報・市況情報・気象情報・消費者ニーズ情報 等

【生産者への振込(2回/月)】

オンライン化

生産者

【OCR方式】栽培日誌の登録栽培予定の登録

営農計画(収入計画)

コード12345 農協 太郎

平成9年 平成10年チホク 0 0ホクシン 8500 8700タクネ 0 0計 8500 8700大豆 1600 1450小豆 2650 2780金時 1845 1320

小麦

豆類

農業情報センター

POS

出荷

販売データ

オンライン

【バーコード印刷】

生産者氏名、販売価格、電話番号、履歴情

報 他産業との情報の共有化

農業情報システム(生産者)と販売管理システム(販売者)がネットワークで結びつくことにより、より多くの経営体や他の業種にも情報交流がなされ、互いの利益へつながる新たな価値が生み出されている

農業情報システム 販売管理システム

Ⅳ.農業現場での従来のITの活用事例②(ネットワーク化)

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Ⅴ.農業のIT化の集大成~AI農業~

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センサー

作物の状態、栽培環境

端末

①作業内容を入力 ①

AIシステムとは、1.『日々の情報を記録するデータベース』と

2. 『確立した技術に関する文字情報』と

3. 『AIエンジン』で構成

農業者は、目指す経営の方向をAIシステムに登録

AIシステム

① 過去のある状態(日時、作物、ほ場、気候)の時に

② ある行為(農作業)をした結果、③ どういう状態に変化したかを蓄積

データを解析して一定の判断を行う学習型アルゴリズム

熟練農家の技や農作業に関する過去の文献など

センサーを介して、

日々の情報を送信

「AIエンジン」が過去のデータベースを参照・

解析し、行うべき作業を送信

AIシステムは、農業者から送られてくるデータに基づき、データベースと当該農業者の現在の状態を比較、解析し、最適なアドバイス(将棋の「次の一手」のようなもの)を提供

「○○○」することをお勧めします。

自動モニタリング

送られて来た情報に基づき農作業を実施

①~④のプロセスが、多数繰り返されデータベースが充実、自律的に精度が高まっていく仕組み

② ③

Ⅴ.AI(アグリインフォマティクス)システムによる「匠の技」の継承

センサーによる作物の状態・栽培環境のモニタリングとデータマイニング技術を組み合わせることにより、篤農家の「経験」や「勘」に基づく「暗黙知」を「形式知」化する「AIシステム」を開発中。農業者の技術向上や新規参入者への技術支援に活用。

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Ⅴ.平成22年度 AIシステムに関する知的財産の検討

AIシステムの運用に先立ち、それに係わる知的財産の取扱いについて検討を行い、以下のように項目ごとに関連する知的財産権の整理を行ったほか、システム運用を円滑化するインセンティブのあり方等について検討を行った。

項目 対象者 知的財産権

AIシステム全体 システム開発者 特許権(ビジネスモデル特許)

農業者データの取得方法 システム開発者 特許権

熟練者データ 熟練農家 著作権(財産権、肖像権)

分析アルゴリズム システム開発者 特許権、著作権(プログラム)

AIシステムによるアドバイス

熟練農家 特許権、ノウハウ、著作権

システム開発者 特許権、ノウハウ

システム運用者 特許権、ノウハウ12

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産地を広域で連携し、ITを活用したノウハウの伝承と普及により、品質の面でさらなる競争力を持った亘理のイチゴを復興する

高品質な品種の導入と産地連携による亘理のイチゴの復興 地震と津波により、亘理町イチゴ農家は壊滅。早期の復旧は困難 沿岸部の大規模生産地域の津波による塩汚染と、地域一帯の大規模な灌漑設備の破壊により、早期の復旧は困難

一部の農家は、伊達市に移住したものの、亘理町と全く異なる気候と新しい生産設備・品種によって、早期に収益を得ることは困難

また、「仙台イチゴ」は宮城、北海道市場で一定の知名度を持つものの品種や品質の面で全国的な競争力を持つにはさらなる工夫が必要 主力品種は「とちおとめ」であり、独自の競争力を持っていない

商圏で競合しない他地域の熟練農家との間でノウハウを交換し復興を図る(ITを活用したノウハウの伝承)

伊達市・亘理町とが連携し、リレー出荷などに対応し、さらなる高収益化を図る

復興へ向けて

伊達市

熟練農家(香川県)

亘理町

農家間のノウハウ

の伝承と普及産地連携・販路拡大

Ⅴ.平成23年度第3次補正予算におけるIT活用事例

事業スキームの全体像

デジタルサイネージによるストーリーテリング

香川の農家

流通・卸業者

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14担当機関:国立大学法人 九州大学

担当課題名:「農匠ナビ」全体システム設計・実証および農作業連続計測・可視化・データマイニング基盤技術の研究開発

Ⅴ.農家の作業技術の数値化及びデータマイニング手法の開発(主要機能からみた全体像)

出典:H23年度版 農業人材育成を支援する「農匠ナビ」 農林水産省委託研究「農家の作業技術の数値化及びデータマイニング手法の開発」の概要と成果Ⅱ

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Ⅴ.農家の作業技術の数値化及びデータマイニング手法の開発

今後急速に失われていく可能性のある篤農家の有する「匠の技」(暗黙知)を可視化し、他の農業者や新規参入者等に継承する仕組みを確立する。

各種情報の連続計測・データベース化システムの開発

各種情報の統合化・可視化システムの開発

熟練農作業ノウハウ抽出・継承手法の開発

ICタグや各種センサーを活用した

①農作業情報(作業時刻、視点など)

②環境情報(気温、湿度、水温など)

③生体情報(繁茂度、葉色、草丈など)

の連続計測・データベース化システムを開発

各種センサー等により計測された

農作業情報・環境情報・生体情報を統合化・可視化し、表示するシステムの開発

視線・行動計測

農作業情報の記録携帯機への表示圃場環境データ

得られた情報より熟練農作業ノウハウを抽出し、継承を支援する実用的なシステム・手法を開発

高度な農業技術の次世代継承が加速され、また農業者に対する適時的確なアドバイスを提供

作業ノウハウの抽出

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Ⅴ.農作業時の農家の視点解析に基づく意志決定過程解明のための基盤プラットフォームの構築①

•慶應義塾大学では、農業用技能継承プラットフォーム(【施設栽培用視覚情報測定システム】【農家用状態把握システム】)と、作物生育データとを連携したソリューションのプロトタイプを構築した。

•個々の農家の問題発見能力に資する技能継承を促進する事を目的とした学習支援ツールとしての効果が期待できる。

A. 視線データ(無意識的判断)

D. 圃場環境データ

C. 作物内部状態データ

B. 「気付き」データ(意識的判断)

①技能継承プラットフォームの農業分野への拡張

②作物生育状態の取得手法の検討

データ連係

<基盤プラットフォームの方向性と狙い>方向性:熟練者・非熟練者の「判断」の可視化

人間の認知と外部環境や作物状態のデータを同期 時系列や作物状態に応じた「判断」を可視化することで学習へのフィードバックの仕組み作りを推進

0123456789

10ハウス内

土壌

葉(生長点付近)

葉(生長点

以外)

茎(生長点

付近)

茎(中間

部分)

茎(根元

付近)

果実(未発達の

もの)

果実(収穫前の

もの)

A

B

C

出典:H23年度版 農業人材育成を支援する「農匠ナビ」 農林水産省委託研究「農家の作業技術の数値化及びデータマイニング手法の開発」の概要と成果Ⅱ

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農作業時の農家の視点解析に基づく意志決定過程解明のための基盤プラットフォームの構築

担当機関:慶應義塾大学担当課題名:農作業視覚情報行動分析手法および意思決定支援のためのデータマイニング基盤技術の研究開発

視野画像

動画像差分データ結果:

再生速度

気付きのプロット

農家が気づいた内容をスマートフォンを活用し、簡単にメモ

時系列データとして蓄積。上段ツールとの連携 複数人のデータを比較することで、個々に異なる気付きを相対的に比較

個々人の問題発見能力の違いを議論する為のツールとして活用

<入力端末(スマートフォン)>

①技能継承プラットフォームの農業分野への拡張

人間の視野の動きを解析し、注視点を抜き出す

複数の人間の視野を比較することで、個々人の注視点の違いを比較

動画像差分フィルタを調整可能。屋内外の環境変化はフィルタ調整により対応

• 慶應義塾大学が介護・福祉分野において取組んできた【技能継承プラットフォーム】を農業用に拡張し、実証実験を通じて、気付きの差異の可視化を進め、プロトタイプシステムのパッケージング化に取り組んだ。無意識的判断の視線データと、意識的判断の気付きデータが、時系列に沿って可視化されることで、熟練者・非熟練者が、その相関性や活動内容などを明示的に把握・分析できることで、それぞれの技能向上に資する事が期待される。A. 視線データ(無意識的判断)

B. 気付きデータ(意識的判断)<入力項目案)>

出典:H23年度版 農業人材育成を支援する「農匠ナビ」 農林水産省委託研究「農家の作業技術の数値化及びデータマイニング手法の開発」の概要と成果Ⅱ

Ⅴ.農作業時の農家の視点解析に基づく意志決定過程解明のための基盤プラットフォームの構築②

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農作業時の農家の視点解析に基づく意志決定過程解明のための基盤プラットフォームの構築

担当機関:慶應義塾大学担当課題名:農作業視覚情報行動分析手法および意思決定支援のためのデータマイニング基盤技術の研究開発

②作物生育状態の取得手法の検討

<C:作物内部状態データ:分光計測による特定成分の定量分析> 分光計測による定量分析

作物の特定成分の吸光度等を計測 作物の成分同定用の波長を選択 統計処理により定量化のデータ補正方法を確立

作物の価値を形成する高付加価値成分の定量化モデルを構築

• ほ場のセンシングデータなどによる環境データと、分光計測等による作物そのものの状態を同時に可視化し、前述のプラットフォームに統合・表示する仕組を開発した。これにより、作物の状態や環境の変化に対して、どのような視線や気付きに基づく判断を行っているかを、一元的に把握でき、それぞれの因果・相関性の詳細な検証・分析を可能にする基盤プラットフォームのための基盤技術を開発した。

C. 作物内部状態データ

D. ほ場環境データ

出典:H23年度版 農業人材育成を支援する「農匠ナビ」 農林水産省委託研究「農家の作業技術の数値化及びデータマイニング手法の開発」の概要と成果Ⅱ

Ⅴ.農作業時の農家の視点解析に基づく意志決定過程解明のための基盤プラットフォームの構築③

統合

統合

<D:ほ場環境データ>

土壌温湿度、大気温湿度、EC値、日照などのデータを時刻同時性を担保しつつ取得

ほ場環境データと生育状況の分析データを連係

「気付き」を得たときのほ場環境と作物の生育状況を同期することで、新たな気付きや発展を促す

<各データの連携・統合>

作物内部状態データとほ場環境データ、【技能継承プラットフォーム】の時間軸に沿ったデータ連係ツールによる統合

一元的可視化の実現

ほ場・作物のデータを表示

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農作業時の農家の視点解析に基づく意志決定過程解明のための基盤プラットフォームの構築

担当機関:慶應義塾大学担当課題名:農作業視覚情報行動分析手法および意思決定支援のためのデータマイニング基盤技術の研究開発

まとめ・今後の展望• 今後、様々なデータとの動的連携を実現するマッシュアップ型のプラットフォーム基盤としての発展を図り、個々の農家の技能の違いを各人が認識

し、改善に努める際に有効なソリューションとして實フィールドにおいて有用性を検証する予定。

出典:H23年度版 農業人材育成を支援する「農匠ナビ」 農林水産省委託研究「農家の作業技術の数値化及びデータマイニング手法の開発」の概要と成果Ⅱ

Ⅴ.農作業時の農家の視点解析に基づく意志決定過程解明のための基盤プラットフォームの構築④

•PDAを用いた気付きの入力•入力データの解析

•アイカメラ等の機器を活用した注目点の把握

•個々人の注視点の抽出•差異解析

•土壌温湿度•大気温湿度•風速・風向•CO2•日照

データ

連携

施設栽培用視覚情報測定システム

ほ場データ

農家用状態把握システム

非侵襲計測による作物内部状態の取得

ほ場環境の変化と作物生体内変化の相関性分析

パッケージング:様々な農家への

提供ソリューションの連携・検討

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Ⅴ.農業技術に係る支援ツール(AIシステム)の実用化に向けたロードマップ

普及

モデル実証

研究開発

プロトタイプのシステム/データベースのスペック等の検討・標準化

AIシステムの研究開発・実用化のロードマップの作成

協力農家の調査・選定

プロトタイプのシステム/データベースの開発

○知的財産関係の整理

対象作物の選定

農業経営マネージメント支援

システムを活用した先進的な経営の実現

H21年度(後半) H22年度 H23年度 H24年度~

データマイニング技術の開発

センサーの開発

測定項目の検討・決定・農業者の意志決定プロセス、農作業の内容など・農作物の生育状況や生育環境の状況・経営的側面も勘案測定方法の標準化

データの蓄積

データマイニング結果を受けたハウス等の環境制御技術の開発

経営関連情報との結びつけ

モデル事業における実証

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Ⅵ.今後の展開①

先端技術を用いた被災地の農林水産業の復興技術革新を通じた成長力のある新たな農林水産業の育成

◆被災地域では農業生産者が被災しており、一日も早い地域農業の再生に向け、先端技術を駆使した新しい農業技術が必要とされる可能性。

◆従来にない規模で先端技術の実証を行い、成長産業としての新たな農業を提案する必要。

◆震災により激変した海洋生態系を解明し、科学的知見を活用して漁場や資源の回復を促進する必要。

背景

◆被災地域内に「農業・農村型」「漁業・漁村型」の研究・実証地区を設定、地域住民と協力しつつ研究を実施。

◆この際には、既に確立された技術シーズを組合せ、実用化研究により最適化し、速やかにその成果を復旧・復興に活用。また最適化された技術を体系化し、新しい産業としての農林水産業を支える技術として発信。

研究方法

被災地域を新たな食料生産地域として再生するため、先端的な農林水産技術を駆使した大規模実証研究を実施する。

食料生産地域再生のための先端技術展開事業

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AIシステムを構成する要素技術のうち、実用化段階にある技術を生産現場に導入して実証することにより、熟練農家の生産管理やノウハウ(暗黙知)を継承するシステムの普及を図る。

AIシステムの普及熟練農家の匠の技の継承を促進

・現場での実証試験の設計及び指導・実証試験結果の評価・AIシステムの高度化に向けた検討・報告書の作成 等

○データ収集・複数の地域・作物を対象に、実証試験を実施・気温・日照等とあわせて農作業データを収集

○データの活用・収集したデータを基に、熟練農家の匠の技を「見える化」し、一般農家に継承

Ⅵ.今後の展開②

複数の地域・作物を対象に農業の現場で実証試験を行い、熟練農家の匠の技を継承するためのAIシステムの普及を図るとともに、データを蓄積し、AIシステムの高度化に貢献

大学等において開発された、AIシステムを構成する要素技術のうち、実用化段階にあると考えられる技術

全国検討会

現場での検証

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AIシステム実証事業