RICOH MP 3353/2553 シリーズRICOH MP 3353/2553シリーズ 商品構成 商品名 コピー ファクス 両面 手差し ネットワーク プリンター ネットワーク スキャナー
Agilentベクトル・ネットワーク・ アナライザ用の校正標準/...
Transcript of Agilentベクトル・ネットワーク・ アナライザ用の校正標準/...
Agilentベクトル・ネットワーク・アナライザ用の校正標準/キットの設定
Application Note 1287-11
2
はじめに . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . .3
測定誤差 . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . .3
測定校正 . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . .3
校正キット . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . .4
コネクタ定義 . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . .5
校正標準の定義 . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . .6
クラス割り当て . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . .14
変更手順 . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . .22
PNAの校正キットの入力/変更手順 . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . .23
8510の校正キットの変更/入力手順 . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . .27
付録A:同軸コネクタの寸法に関する注意事項 . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . .30
7 mm同軸コネクタ・インタフェース . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . .30
3.5 mm、2.4 mm、1.85 mm、1.0 mm同軸コネクタ・インタフェース . . . . . . .30
N型同軸コネクタ・インタフェース . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . .31
付録B:同軸校正係数モデルの導出 . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . .32
付録C:導波管校正係数モデルの導出 . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . .35
付録D:データ・ベース校正標準の定義ファイルのフォーマット . . . . . . . . . . . . . . . . . . .37
サンプル・ファイル . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . .37
暫定版#PNAキーワード . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . .39
参考文献 . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . .39
Webリソース . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . .40
目次
3
測定誤差
ネットワーク解析の測定誤差は、ランダム誤差と系統誤差の2種類に分けられます。ランダム誤差も系統誤差も、どちらもベクトル量です。ランダム誤差は再現性のない測定の変動であり、通常は予測不可能です。系統誤差はテスト・セットアップから生じる再現性のある測定の変動です。
系統誤差には、インピーダンス不整合、システム周波数応答、テスト・セットアップ内のリーケージ信号などがあります。マイクロ波測定では、ほとんどの場合、系統誤差が測定の不確かさの最大の原因です。これらの誤差の原因は、用いられる信号分離方式に起因します。
ベクトル・ネットワーク・アナライザ(VNA)の校正手法については、さまざまな文献を入手できます。文献[1]、[2]、[3]、[4]、[5]、[6]、[7]、[8]は、公表されている研究成果の一部に過ぎません。Agilentのアプリケーション・ノート1287-1、1287-2、1287-3でも、VNAとその誤差補正について説明しています。このアプリケーション・ノートを十分に理解するためには、これらの校正手法について理解しておくことをお勧めします。
測定校正
測定校正とは、VNAの系統誤差モデルを数学的に導出するプロセスです。この誤差モデルは、ベクトル誤差係数の配列であり、ゼロ位相シフト、ゼロ反射振幅、無損失伝送振幅、既知インピーダンスの固定基準面を確立するために用いられます。係数の配列を計算するために、固定測定面に接続された既知のデバイス(校正標準)の測定を行います。
用いられる校正手法は、誤差モデルによって異なります。校正標準の定義と種類は、校正手法毎に異なっています。例えば、ショート/オープン/ロード/スルー(SOLT)校正法を使ってフル2ポート12項誤差モデルを解く方法は、さまざまな測定校正手法のうちの1つです。
ユーザが選択する測定校正の種類は、測定するデバイス(1ポートか2ポートかなど)、使用可能な校正標準、必要な確度によって決まります。特定のデバイスの測定において、いくつかの校正の組み合わせが用いられる場合もあります。例えば、ノンインサータブル・デバイスに対するアダプタ除去校正などです。デバイス測定の確度は、テスト機器の確度と安定度、校正標準モデルの確度、誤差補正モデルと組み合わせて用いられる校正手法に依存します。
このアプリケーション・ノートでは、校正標準の定義、校正キットの内容、Agilentベクトル・ネットワーク・アナライザに対する校正キットの構造要件について説明します。また、新しい校正キットのセットアップ方法の例と、既存の校正キットの定義ファイルの変更方法も紹介します。
はじめに
4
メカニカル校正キットは、図1に示すように、標準と呼ばれるデバイスのセットから構成されています。各標準は、周波数の関数としての振幅および位相応答が正確にわかっています。校正キットの標準をVNAで使用するためには、VNAで用いられる校正手法に対応した標準クラスの「割り当て」(分類)が各標準に対して行われる必要があります。Agilentから現在提供されているメカニカル校正キットには、1.0 mm、1.85 mm、2.4 mm、3.5 mm、7 mm、N型50 Ω、N型75 Ω、FD型75 Ω、7-16同軸コネクタ用のものがあります。方形導波管校正キットには、X、P、K、R、Q、U、V、Wバンド用のものがあります。マイクロストリップおよびその他の非同軸媒体の校正については、プロダクト・ノート8510-8A: Agilent Network AnalysisApplying the 8510 TRL Calibration for Non-Coaxial Measurements(カタログ番号5091-3645E)で説明されています。1つの校正キットが複数の校正手法をサポートする場合もあります。
図1. メカニカル校正標準と校正キット
校正キット
5
コネクタ定義
校正キットは、校正標準の定義と標準クラスの割り当てに加えて、コネクタの定義も提供しています。AgilentのPNAネットワーク・アナライザは、コネクタ定義を使用してコネクタを定義しています(図2)。
● 周波数レンジ● オス/メス(オス、メス、オス/メスなし)● インピーダンス● 媒体(同軸、導波管など)● カットオフ周波数(導波管)● 高さ/幅比(導波管)
図2. PNAのコネクタ入力画面
校正キットには複数のコネクタが定義されている場合があります。1ポート校正標準には、それぞれ対応するコネクタ定義があります。スルーやアダプタなどの2ポート標準には、異なる2種類のコネクタ定義が対応する場合があります。
Γ Γ Γ Γ1 2 1==−−+
= −− = −−+
== + =
Z ZZ Z
Z ZZ Z
j
c r
c rT
T r
T r、 、
、 γ α β l ラインの長さ
Z ラインの特性インピーダンス
Z 基準インピーダンス(コネクタ・インピーダンスまたはシステム・インピーダンス) c
r
ラインの伝搬損失定数 αラインの伝搬位相定数 β
^
^
^
^
6
校正標準の定義
VNA校正標準のSパラメータは、用いられる校正手法の要件を満たすのに十分なように正確に定義されている必要があります。校正標準の定義にはいくつかの方法があります。AgilentのVNAは、校正係数モデルとデータ・ベース・モデルの2種類の校正標準定義をサポートしています。
校正係数モデルほとんどのVNAは、2ポート標準に対しては伝送ライン・モデル、1ポート標準に対しては終端伝送ラインを使って校正標準を定義しています(図3参照)。
図3. 終端伝送ライン・モデル
伝送ラインと終端は、図4に示すシグナル・フロー・グラフで表現されます。
図4. 終端伝送ライン・モデルのシグナル・フロー・グラフ
図5は、同じ終端伝送ライン・モデルをカスケード・パラメータ・フォーマット(XIおよびXOを定義)で表したものです。
図5. 終端伝送ライン・モデルのカスケード・パラメータ表現
ここで、
(1.1)
ZTZc、遅延、損失
伝送ライン
G1 G2
1+ G1
1+ G2
GTG2 G1
1+ G2
1+ G1
0 0
e-γ
e-
Gi
γ
[ T XI ] [ T L ] [ T XO ] [ L ]
a
b
G
7
(1.2)
(1.3)
(1.4)
伝送ラインの特性インピーダンスと伝搬定数は、ラインの物理的な性質から求めることができます[9]、[10]。
AgilentのVNAは、オフセット遅延、オフセット損失およびオフセットZ0(ZCの代わり)、glを使って伝送ラインをモデリングしています。これらの「オフセット」定義により、VNAは伝送ラインの特性インピーダンスと、校正標準の伝搬位相/損失定数を、校正標準の伝送媒体の誘電定数(被試験デバイスの誘電定数とは異なる可能性がある)を定義しないで計算できます。ここでは、オフセット損失とオフセット遅延の値が同じ誘電定数を使って導出されたと仮定します。
オフセット遅延オフセット遅延は、分散のないTEMモードの電気遅延(秒単位)です。
同軸コネクタの基準面は、外部導体の接合面です。30ページの「付録A」に、いくつかの同軸コネクタのオフセット長の定義を記載しています。
Γ Γi XO Lba
b
aT T T= = [[ ] ] ][[ ][ ]、 XI L
Te
e
T
XI L
l
l==
++=
−−11
1
1
0
01
1
1ΓΓ
Γ
γ
γ
XXO LT==
−−−−
−−==1
1
1
1 11
1
1ΓΓ
ΓΓ
Γ
( [[)( ) [ ]
]][ ]
[ ]
[ ]
[ ] T
[ ]、
、
、
ΓΓΓ Γ Γ Γ
Γ Γ Γi
T T
T
e e
e e=
− −( ) +
− + −( )− −
− −
12
12
12
12
1
11
γ γ
γ γ
l l
l l[ ]
(オフセット遅延)
基準面からのオフセット長
=
=
l
l
εr
c、
伝送媒体の比誘電率(誘電定数) rε === 1.000649(海水面、湿度50%の空気中)
真空中の光速度=2.99792458×108 m/sc =
(1.5)
8
オフセット損失オフセット損失は、GΩ/s単位で表されます。これは、正規化周波数(1 GHzなど)での伝送ラインの単位長あたりの伝搬損失に、伝送媒体中での光速度を掛けたものです。同軸デバイスの場合は、これは1 GHzでの損失振幅データから計算できます。
S21データ:
S11データ:
(1.7)
最善の結果を得るには、測定データを f—109にカーブ・フィッティングします。
詳細については32ページの「付録B」を参照してください。
方形導波管伝送ラインの場合は、損失は周波数の単純な関数にはなりません。多くの場合、1 GHzデータ・ポイントは得られません。ほとんどの導波管標準は損失がきわめて小さく、カットオフ周波数よりもはるか上で使用されるのが一般的なので、オフセット損失項はゼロと仮定しています。導波管損失モデルは最近まで一部のVNAではサポートされていませんでした。
Agilent PNAシリーズ・ネットワーク・アナライザは、現在では導波管損失モデルを採用しています。35ページの「付録C」を参照してください。
(1.8)
オフセットZ0オフセットZ0は、伝送ラインの無損失の特性インピーダンスです。同軸伝送ラインの場合、無損失の特性インピーダンスは以下のように表されます。
(1.9)
表皮損失効果を含む伝送ラインの特性インピーダンスZCは、オフセットZ0とオフセット損失項から導くことができます。
導波管のオフセットZ0と特性インピーダンスは1に正規化されます。
√
Z0== −− ( )2 21 1* ln S
GHz
(dB): ( ) ==
( )Z0( )dB GHz1
10- ln ( )10( )
Z0= − ( )ln SGHz11 1
( ) =(dB):Z0
( )( )dB GHz1
20- ln ( )10( )
オフセット損失 オフセット損失
( ) ==−− ( )
( )( )( )( )
−−ln@
S f
f
fff c
c21 0
0
1µε
+
2
2
12hw
ffc[ ]
ZDd
c Dd
r
r
r
001
2 2== ==
==
ππµµεε
µµππ
µµεε
µµ
ln ln
伝送媒体の比透磁率
D =
d =
外部導体の内径
中心導体の外径
( ) ( )( ) ( )
(1.6)
9
オフセット項と伝送ライン・パラメータ同軸伝送ラインの場合、オフセット項と伝送ラインの電気パラメータは以下の式で関連付けられます。これらの式の導出については32ページの「付録B」を参照してください。
(1.10)
方形導波管伝送ラインの場合[11]、オフセット項と伝送ラインの電気パラメータは以下の式で関連付けられます。詳細については35ページの「付録C」を参照してください。
(1.11)
導波管インピーダンスは、周波数の関数として変化します。このような場合は、正規化インピーダンス測定が行われるのが一般的です。導波管で校正する場合は、インピーダンス基準として「整合」負荷のインピーダンスが用いられます。この負荷のインピーダンスは導波管の周波数帯域幅内で導波管の特性インピーダンスに一致するようになっています。インピーダンスを正規化するには、各標準に対してオフセットZ0を1 Ωに設定し、システムZ0(SET Z0)を1 Ωに設定します。
f l
ααl ==( ) ( )
) ≡2 Zo
ff
109、
Zo
β π αl == ( ) ++
==( )++ −−(
2
1Zc j))4 fπ
f
109
(
( )
[ ]
β πl == ( ) −−
==
2 12
fff
f
c
c
( )
αεµ
l ≈( ) ( )++
ff
hw
c
0
0
12 ff
f
ff
c
c−−
2
2
1
( ) ( ) ( )( )[ ]
10
終端デバイス
ショート多くのベクトル・ネットワーク・アナライザは、ショートが理想的なショートであり、反射係数が-1であると仮定しています。これは、周波数が低く、コネクタ・サイズが7 mm以上の大きな場合には通常十分です。しかし、周波数が高い場合や、3.5 mm以下の小さなコネクタの場合には、少なくとも3次の多項式インダクタンス・モデルLSが必要です。ショート回路の損失は無視できると仮定しています。
(1.12)
場合によっては(位相応答が周波数に対して直線的な場合)、ショートの応答を等価なincremental長でモデリングできます。
オープンオープン回路は高い周波数で放射が生じます。これはデバイスの電気長を実効的に増加させる効果があり、周波数依存のキャパシタC0(フリンジング・キャパシタンスとも呼ぶ)としてモデリングできます。低い周波数では、固定キャパシタンス値で通常は十分です。ほとんどのネットワーク・アナライザは、3次の多項式キャパシタンス・モデルを使用しています。放射損失は無視できると仮定しています。
(1.13)
場合によっては(位相応答が周波数に対して直線的な場合)、オープンの応答を等価なincremental長でモデリングできます。
固定ロード固定ロードは、完全終端GL=0と仮定しています。ただし、ゼロでない遅延と損失を持つオフセット伝送ラインが指定され、オフセットZ0が基準インピーダンスに等しくない場合は、全反射はゼロになりません。これは式 (1.4) で定義されています。
任意インピーダンス
任意インピーダンス・デバイスは、負荷インピーダンスが完全でない点を除いて固定ロードと似ています。Agilent 8510、87xyシリーズ、PNAの初期のファームウェア・リリースなどの、以前のVNAは、固定抵抗値を使用していました。回路基板やウェーハ上のデバイスのより正確なモデリングを可能にするために、PNAシリーズには複素終端インピーダンスが追加されています。
(1.14)
L L L f L f L f Z j fL
Z ZZ Z
S S S
SS r
S r
== + + + =
==−−+
0 1 22
33 2、 π
Γ
C C C f C f C f Zj fC
Z ZZ Z
0 00
00 r
0 r
== + + + =
==−−+
0 1 22
33 1
2、
π
Γ
Z R jIZ ZZ ZA A
A r
A r= + = −
+、 Γ
11
オフセット・ロード
図6. PNAのオフセット・ロード入力画面
オフセット・ロードは、長さが異なる2つの既知のオフセット(伝送ライン)と負荷エレメントから構成される複合標準と考えることができます(図6)。オフセットの定義はすべてのオフセット伝送ラインと同じです。2つのオフセットのうち短い方は、長さゼロのオフセットでもかまいません。負荷エレメントは、1ポート反射標準として定義されています。オフセット標準の応答の方が負荷エレメントの応答よりも正確にわかっている場合は、オフセット・ロード標準が用いられます。オフセット・ロード標準の測定は、それぞれのオフセットを負荷エレメントで終端した2回の測定から構成されます。オフセット・ロード標準の周波数レンジは、各測定の期待される応答の間隔が20°以上になるように設定する必要があります。3つ以上のオフセットを使用する場合は、周波数レンジを拡大できます。内部アルゴリズムが、オフセットの可能なすべての組み合わせを各周波数で探索し、期待される間隔が最も大きくなる2つの組み合わせを見つけるからです(これを使って、負荷エレメントの実際の応答が求められます)。3つ以上のオフセットを指定する場合は、ユーザは複数のオフセット・ロード標準を定義する必要があります。
複数のオフセット・ロード標準をPNAのSOLTクラスに割り当てる場合は、通常は"use expanded math when possible"を指定する方がよいでしょう。16ページの「SOLTのクラス割り当て」を参照してください。
スライディング・ロードスライディング・ロードを定義するには、長い伝送ラインのさまざまな位置にスライディング・ロード・エレメントを配置して、デバイスに対して複数回の測定を実行します。伝送ラインは反射がゼロで、負荷エレメントのゼロでない反射は最小2乗円フィッティング法によって数学的に除去できると仮定しています。最善の結果を得るには、負荷エレメントの移動方向を途中で変えずに、常に同じ方向に動かすようにします。また、移動量は同じにせず、毎回異なる間隔で移動するようにします。
注記8510では、最初のオフセットが遅延ゼロで、2番目のオフセットが必要な遅延を持つと仮定しています。したがって、オフセット・ロードのオフセット遅延値は、2つのオフセットの遅延の差に等しくなければなりません。
12
データ・ベース標準モデルデータ・ベース標準モデルは、Agilentのネットワーク・アナライザの新機能です。この機能により、周波数データ、Sパラメータ・データ、不確かさデータを記録したデータ・ファイルによる校正標準の定義が可能になります。データ・ファイルは、基準測定ラボによる実測データから作成することも、デバイス・モデリング・ソフトウェアによるモデル・データから作成することも、それらを組み合わせて作成することもできます。データ・ファイル・フォーマットの詳細については37ページの付録Dを参照してください。
図7に示すように、データ・ベース標準はフィッティング・プロセスを省略するので、フィッティングに関連する誤差が生じません。フィッティング誤差は、30GHzより下の周波数では通常無視できます。しかし、これより上の周波数では、フィッティングによる誤差を避けるために、同じ標準に対して複数の周波数帯域別のモデルが使用されてきました。データ・ベース標準では、データを直接補間することにより、この問題を根本的に回避しています。また、データ・ベース校正標準を使うと、同軸または導波管でない標準を、同軸または導波管構造に基づくモデルにフィッティングすることによる悪影響も避けることができます。この柔軟性により、ユーザは既存の校正係数モデルに正確に当てはまらないカスタム校正標準をより簡単に定義できます。これは特に、分散性の伝送ラインの場合に有効です。データは、物理寸法に基づいたデバイス・モデリングから得ることも、正確な測定から得ることもできます。
図7. データ・ベース・モデルと多項式モデル
工場データ・ベース・モデルは、特定のパーツ番号に対する汎用公称モデルである点で、多項式モデルと共通しています。このため、校正キットに対する交換用の校正標準を購入して、データ・ベース・モデルを変更せずに使用できます。
データ・ベース標準を使うと、特定の校正キットの確度を改善できる可能性もあります。例えば、広帯域ロード校正キットによる校正は、TRL校正キットやスライディング・ロード校正キットによる校正よりも通常確度が劣ります。確度が低下する主な原因は、固定ロード・モデルの確度です。固定ロードの汎用モデルでは、反射係数がすべての周波数でゼロに等しくなっています。別の方法として、もっと正確な校正手法を使って固定ロードの特性を評価することができます。得られた評価データとその不確かさを、その特定のロードのデータ・ベース標準の定義として使用します。図8にデータ・ファイルの作成方法を示します。図9は、データ・ベース標準のデータ入力画面です。固定ロードとそれに対応するデータ・ベース・モデルを使った校正の確度は、固定ロードを評価したシステムの確度に近くなります。残留方向性誤差は、ロードの仕様ではなく、評価の不確かさで決まるようになります。
公称寸法から 公称応答を計算
公称応答を多項式 モデルに
フィッティング
公称データ・ ベース・モデル (フィッティング 誤差なし)
公称多項式モデル (フィッティング 誤差あり)
13
図8. 公称データ・ベース・ファイルとカスタマイズしたデータ・ベース・ファイル
図9. データ・ベース標準のセットアップ画面
最大/最小周波数最大/最小周波数入力は、校正標準の適用可能な周波数レンジを定義します。適用可能レンジは、モデル・データ、モデルの確度、校正標準の物理寸法によって制限される可能性があります。例えば、固定ロードは低い周波数で使用されるのに対し、スライディング・ロードは高い周波数で使用されます。
導波管の場合は、最小周波数は導波管のカットオフ周波数です。PNAのSmartCal(ガイド付き校正)は現在では校正標準の最小周波数を分散補正のカットオフ周波数として使用していませんが、従来との互換性のために最小周波数はカットオフ周波数と同じにすることをお勧めします。
公称寸法から 公称応答を計算
データ・ベース・ モデル(特定の標準に 対して有効)
公称データ・ ベース・モデル
(特定のパーツ番号に 対して有効)
特定の標準 (固定ロードなど)の 実際の応答を 評価
14
クラス割り当て
校正キットのクラス割り当ては、測定校正に用いられる誤差モデルに適合するフォーマットに、校正標準を分類します。各校正標準には標準番号が割り当てられます。この番号が、選択した校正手法に必要なクラスまたは校正測定に割り当てられます。標準によっては、異なる校正手法や異なる校正定義に対応した複数の標準番号が割り当てられる場合もあります。これは、与えられた周波数帯域または校正要件に対する標準モデルの確度を最適化するために必要となります。
8510 VNAの場合は、校正キットは最大21個の標準を含むことができます。PNAのSmartCal(ガイド付き校正)には制限はありません。必要な標準の数は、周波数範囲とサポートされる校正手法によって異なります。
1つの標準クラスは、標準(多くのVNAでは7個まで)のグループからなり、1つの校正ステップを構成します。1つのクラスに属する標準は、クラス割り当て表に示すように、場所AからGまでに割り当てられます。すべてのクラスが、周波数レンジ全体で定義されていることが重要です。ただし、測定周波数レンジ全体に対応するには複数の標準が必要になる場合があります。
すべてのVNAが同じ校正手法と校正キットのセットをサポートするわけではありません。それぞれの機器の機能については機器のマニュアルを参照してください。以下の部分では、VNAのさまざまなクラス割り当て構造について詳細に説明します。
VNAの校正は各テスト・ポートに固有で、クラス割り当てはポート番号を中心にして構造化されています。使用可能な校正標準は1ポートと2ポートだけで、校正キットのクラス割り当ては2ポートに基づき、一度に校正できるのは1つのポート・ペアだけです。
標準タイプ校正標準には、以下の標準タイプが割り当てられます(図10)。
OPEN、SHORT、LOAD、THRU、ADAPTER(8510)、DATA BASED STANDARD(PNA)
図10. 校正標準の選択
15
OPEN校正標準は、多項式係数がキャパシタンス・モデルを表すと仮定し、式(1.13) に基づいてその反射係数を計算します。VNAは、各キャパシタンス係数がデフォルトの指数によってスケーリングされていると仮定しています。
AgilentのすべてのVNAモデルが同じスケーリング係数を使用します。
SHORT校正標準は、多項式係数がインダクタンス・モデルを表すと仮定し、式(1.12)に基づいてその反射係数を計算します。インダクタンスのデフォルトの指数は以下のとおりです。
LOAD標準には4種類あります。固定ロード、スライディング・ロード、任意インピーダンス、オフセット・ロードです。固定ロードのデフォルト設定は、遅延=0、損失=0、Z0=50 Ωの完全終端です。スライディング・ロードでは、複数のスライド位置と測定の入力が求められます。最低6個のスライド位置を使用するようにお勧めします。任意インピーダンスでは、終端インピーダンスの入力が求められます。これはほとんどのVNAでは実数値のみですが、PNAでは複素数値も入力できます。オフセット・ロードの要件については、10ページの「終端デバイス」で説明しています。
DATA BASED STANDARDはデータ・ファイルで定義されています。データ・ファイルの要件とフォーマットについては、37ページの「付録D」を参照してください。
校正とクラス割り当て
標準のクラスへの割り当て校正キットは、SOLT校正、TRL校正、またはその両方をサポートするように作成できます。クラス割り当てとは、校正キット・ファイルが校正プロセス中に標準の選択をガイドする方法です。
PNAのSmartCal(ガイド付き校正)で標準をクラスに割り当てる場合、標準が表示される順序は校正キットにおけるデフォルトの優先順位を示します。PNAの内部ファームウェアは、与えられた周波数で使用する校正標準を検索する際に、リストの先頭から始め、その周波数で使用可能な標準が見つかるまで検索します。このため、優先すべき標準を先にリストに記載することが重要です。例えば、スライディング・ロードを含む校正キットには広帯域ロードも含まれています。広帯域ロードがスライディング・ロードよりも先に記載されていると、スライディング・ロードはデフォルトの選択肢としては表示されません。
8510およびその派生モデル(87xyおよびPNAのガイドなし校正)では、与えられたクラス内の標準割り当ての順序は重要ではありません。重要なのは標準測定の順序です。2つの標準の周波数帯域が重なっている場合は、後で測定された標準が用いられます。異なるクラス間の標準測定の順序は制限されていませんが、8510では与えられたクラスのすべての標準を測定してから次のクラスに進むことが要求されています。
マルチポート校正は、1ポートおよび2ポート校正標準を使用し、2ポートSOLTまたはTRL校正から構成されています。
C sxx xxx F C sxx xxx F Hz s
C sxx x
0 10 2 10
1
15 36 2== = + −
==
− −. 、 . / ( )
. xxx F Hz C sxx xxxx F Hz10 3 1027 45 − −==/ 、 . /
≡3
、
L sxx xxx H L sxx xxx H Hz
L sxx x
0 10 2 10
1
12 33 2== =
==
− −. 、 . /
. xxx H Hz L sxx xxxx H Hz10 3 1024 42 3− −==/ 、 . /
s + −( )≡、
(1.15)
(1.16)
16
SOLTのクラス割り当て最も単純なSOLT校正では、2回の1ポート校正の後で、スルー標準の順方向/逆方向伝送/反射測定を行います。スルー標準は、定義済みのスルーでも「未知のスルー」でもかまいません。最も単純なスルー標準は長さゼロのスルーで、これは単にポートiとポートjを接続するだけです。特定のクラスに対応するラジオ・ボタンを選択すると、クラスに含まれる標準と、クラスに対応するユーザ定義ラベルを変更できます。ユーザ定義のクラス・ラベルは、PNAのガイドなし校正の際に表示されます。
1回の1ポート校正には、少なくとも3個の既知の異なる標準の反射測定が必要です。S11A、S11B、S11Cはポートiに対する3つの反射標準クラスを表し、S22A、S22B、S22Cはポートjに対する3つの反射標準クラスを表します。ほとんどの場合、S11AとS22Aは同じ標準を持ち、S11BとS22Bは同じ標準を持ち、S11CとS22Cは同じ標準を持ちます。各クラスに割り当てられた標準は、異なるコネクタ定義、異なる周波数範囲、異なる標準タイプを持つ場合があります。一部の校正キット、例えばAgilent85059A 1.0 mm精密校正キットなどでは、オープン、ショート、ロード、オフセット・ショート標準の組み合わせにより、きわめて広い周波数レンジの校正を可能にしています。図11に示すように、ショートとオープンはともにS11Aクラスに割り当てられます。ラベルは単にそのクラスに割り当てられた名前です。このラベルは、校正測定プロセス中に、画面上のプロンプトやソフトキー・ラベルとして用いられます。
図11. 例 : 同じクラスのオープンとショート
スルー標準測定には、FWD TRANS、FWD MATCH、REV TRANS、REV MATCHの4つの校正クラスが関連付けられています。まれな場合を除いて、これらのクラスはすべて同じ標準を含んでいます。LINK FWD TRANS, FWD MATCH, REVTRANS, REV MATCHチェック・ボックスは、これらのクラスに対する共通の操作を容易にします。
"LINK"オプションのチェックを外すと、各クラスに対して異なる標準を定義できます。このオプションは、外部テスト・セットでスルー標準の各測定を区別して扱う必要があるまれな場合に使用します。この場合、各クラスに異なる標準を割り当てることにより、校正中に別々のプロンプトが表示されます。通常は、1つのスルー標準をFWD TRANSおよびFWD MATCHクラス、同じモデルの別のスルー標準をREV TRANSおよびREV MATCHクラスに割り当てます。これにより、校正シーケンス中に2つの異なるプロンプトが表示されます。
17
未知スルー校正は、PNAで選択できるスルーの内の1つです。これにはスルー標準の定義が不要です。任意の2ポート・パッシブ・レシプロカル・デバイスが「未知スルー」デバイスとして使用できます。損失が-20 dBより小さい低損失のデバイスを推奨しますが、必須ではありません。
アダプタ・クラスは、8510のアダプタ除去校正で用いられます。アダプタの電気遅延を定義することにより、アダプタのS11およびS22応答を正しく求めることができます。遅延値は厳密に正確でなくてもかまいません。ただし、すべての周波数ポイントに対して±90°以内の正しい位相を指定する必要があります。
クラス割り当て表は、データ入力のために校正標準の割り当てを整理するのに非常に役立つツールです。すべての校正キットの操作/サービス・マニュアルには、割り当て表の例と書き込み用の表が付属しています。SOLTのクラス割り当て表(表1)とPNAの校正キット・エディタのSOLTのクラス割り当て編集画面(図12)を比較して、対応関係を確かめてください。SOLTのクラス割り当て表は、8510の校正クラス変更入力フォーマットに直接対応します。
表1. SOLTのクラス割り当て表
クラス A B C D E F G クラス・ラベル
S11A 1 4 Open
S11B 2 5 Short
S11C 3 6 Load
S11A 1 4 Open
S22B 2 5 Short
S22C 3 6 Load
順方向伝送 10 11 12 Thru
逆方向伝送 10 11 12 Thru
順方向マッチ 10 11 12 Thru
逆方向マッチ 10 11 12 Thru
アダプタ 15 Adapter
図12. PNAの校正キット・エディタのSOLTのクラス変更画面
18
従来、反射校正は各周波数での3つの校正標準の応答測定を使って計算されていました。ポートiに対して、各周波数で、S11A、S11B、S11Cにそれぞれ対応する3つの標準が選択され、ポートiに関連する系統誤差項の計算に用いられます。同様に、ポートjに対してはS22A、S22B、S22Cが用いられます。各クラスは複数の標準を含むことができ、各標準に指定された最小/最大周波数により、特定の周波数で使用する標準が決まります。クラスに複数の標準が記載されている場合は、通常その周波数レンジが重なり合います。8510およびPNAのガイドなし校正の場合は、重なり合う領域では最後に測定された標準が用いられます。スライディング・ロード・キットのロード・クラスには、ロー・バンド・ロード、スライディング・ロード、広帯域ロードの3つのロード標準が定義されています。ロー・バンド・ロードと広帯域ロードは同じ物理デバイスの場合もあります。ロー・バンド・ロードは、周波数レンジが狭く、スライディング・ロードと組み合わせることでキットの周波数レンジ全体をカバーする役割を果たします。広帯域ロードは、確度は低いがより簡単な校正を望むユーザのために用意されており、周波数レンジ全体をカバーするように定義されています。8510およびPNAのガイドなし校正では、ユーザがスライディング・ロードを測定した後で広帯域ロードを測定した場合は、校正の計算には広帯域ロードだけが用いられ、スライディング・ロードは完全に無視されます。PNAのSmartCal(ガイド付き校正)では、この問題を解決するために、クラス内に記載された順序に基づいて標準が選択されます。このため、スライディング・ロードが広帯域ロードよりも前に記載されていれば、スライディング・ロードの方が常に優先されます。
拡張校正は、3つ以上の標準の測定の重み付き最小2乗法を使用します。最小2乗法が適しているのは、すべての測定値が同じ信頼度を持つ場合です。すなわち、各標準の実際の応答が同じ確度でわかっている場合です。これはECalに対しては妥当な仮定ですが、他の校正キットの場合には、標準の物理的性質の違いのために有効でない可能性があります。
拡張演算は、重み付き最小2乗法であり、測定値の信頼度が同じでない場合に適用可能な単純な方法です。測定値がすべて独立していて、信頼度が等しくない場合は、最適解は、標準のモデルの確度と、標準の応答と測定された他の校正標準の応答との間の近さをともに反映した重み付け係数を、各式に乗じることにより得られます。標準モデルの確度は、データ・ベース標準の場合は明示的に定義されていて、他の標準の場合は重み付き最小2乗法の相対重みに使用するための公称確度を指定します。表2「校正標準タイプごとのデフォルト相対確度」を参照してください。標準の測定は、標準の確度が定義されている周波数レンジで、重み付き最小2乗法に反映されます。この周波数レンジは、標準の最小/最大周波数で指定される周波数レンジに等しいかそれより大きくなっています。以下の表では、混乱を避けるために、FMin/FMaxは標準に対して指定された最小/最大周波数を表し、UMin/UMaxはコネクタの最小/最大周波数に対応します。また、以下の表では端点が指定されています。与えられた周波数での公称確度は、対応する端点の間のリニア補間で計算されます。
表2. 校正標準タイプのデフォルト相対確度
標準タイプ 公称確度 周波数レンジ
UMin FMin UMax UMin UMax
オープン 0.01 UMax/10 12 最小コネクタ周波数 最大コネクタ周波数
ショート 0.005 UMax/10 13 最小コネクタ周波数 最大コネクタ周波数
固定ロード 0.003 3*UMax/10 12 最小コネクタ周波数 最大コネクタ周波数
スライディング・ 0.01 0.003 0.003 FMin/2 最大コネクタ周波数ロード
注記公称確度は、特定の校正キットの校正標準の確度には対応していません。公称確度は単にデフォルトの重みとしての意味しか持ちません。
19
"use expanded math when possible"がチェックされていると、各周波数において、測定されたすべての1ポート標準が、周波数がUMinとUMaxの間にある場合に解に含められます。例えば、スライディング・ロード校正で、ロー・バンド・ロードとスライディング・ロードの両方の周波数レンジに含まれる周波数を使用する場合を考えます。この場合、オープン、ショート、ロー・バンド・ロード、スライディング・ロードが測定されます。スライディング・ロードのUMinとUMaxの間の各周波数で、拡張演算が用いられます。この例で拡張演算を使用すると、ロー・バンド・ロードの周波数レンジとスライディング・ロードの周波数レンジの間の移行部分が合成されます。もう1つの例として、85058B 1.85 mm校正キットには、ロー・バンド・ロード、オープン、オフセットが異なる一連のショート標準が含まれています。各周波数で3つの標準による校正が可能になるように、最小の標準セットが定義されています。各標準の最小/最大周波数レンジとクラス割り当ての組み合わせにより、各周波数に対して3つの標準のセットが決まり、3つの標準だけが必要な一連の周波数レンジが得られます。VNAの周波数レンジがこれらの周波数レンジの複数にまたがる場合は、3つより多くの反射標準が接続されます。85058Bの場合は、周波数レンジの間の移行部分の合成に加えて、拡張演算を使うと校正の全体的な確度が向上します。"measure all mateable standards in class"というオプションを使うと、すべての標準が測定され、85058Bや85059Bなどのキットでは最高の確度が得られます。すべての標準を測定することは、校正キットによっては意味がありますが、意味がない場合もあります。例えば、前に挙げたスライディング・ロード・キットの場合は、クラスのすべての標準の測定を選択すると、ロー・バンド・ロード、スライディング・ロード、広帯域ロードが測定されます。スライディング・ロード校正で2つの固定ロードを測定しても全く意味はありません。
TRLのクラス割り当てTRL/TRM校正は、TRLスルー、反射、ライン・クラスと、TRLオプションによって定義されています。表3に、代表的なVNAのクラス割り当て表のTRL部分を示します。
表3. TRLのクラス割り当て表
クラス A B C D E F G クラス・ラベル
TRLスルー 11 12 thru
TRL反射 2 4 short
TRLライン/マッチ 14 15 9 10 line/load
TRLオプション:
校正基準インピーダンス:システムZ0 _____ ラインZ0 _____
テスト・ポート基準面:スルー _____ 反射 _____
(PNAのみ)❏ LRLライン自動評価
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図13. TRLのクラス編集画面
TRLは、部分的に既知の校正標準を使用できる校正クラスを表す一般名称です。一般的に、スルー標準は完全整合で完全に既知と仮定しています。反射標準は、振幅が未知で、位相が部分的に既知で、大きな反射を持つと仮定しています。ライン標準は、スルー標準と同じ伝搬特性を持ち、位相が部分的に既知であると仮定しています。表4に、校正タイプとTRLクラスの対応を示します。
表4. TRL標準とTRLクラスの対応
スルー・クラス 反射クラス ライン・クラス
TRL 長さゼロのスルー。 ポートiとポートjで等しい S11=S22=0のライン。(スルー/反射/ライン) S11=S22=0、 未知の反射。位相は 位相は近似的に既知。
S21=S12=1 近似的に既知。 ±20°の位相を避けるために帯域幅を制限。
LRL S11=S22=0のライン1。 ポートiとポートjで等しい S11=S22=0のライン2。(ライン/反射/ライン) S21とS12はともに既知で、 未知の反射。 位相は近似的に既知。位相が
伝搬特性はライン2と同じ。 位相は近似的に既知。 ライン1の位相から±20°以上離れるように帯域幅を制限。
TRM 長さ0のスルー。 ポートiとポートjで等しい ポートiとjに対する固定ロードと(スルー/反射/マッチ) S11=S22=0、 未知の反射。 して定義可能。S11=S22=0。
S21=S12=1 位相は近似的に既知。 非常に長い損失性ラインとしても定義可能。
LRM S11=S22=0のライン。 ポートiとポートjで等しい ポートiとjに対する固定ロードと(ライン/反射/マッチ) S21とS12はともに既知。 未知の反射。 して定義可能。S11=S22=0。
位相は近似的に既知。 非常に長い損失性ラインとしても定義可能。
TRA 長さゼロのスルー。 ポートiとポートjで等しい ポートiとjの間のアッテネータ。(スルー/反射/ S11=S22=0、 未知の反射。 S11=S22=0。損失性ラインアッテネータ) S21=S12=1 位相は近似的に既知。 として定義。
LRA S11=S22=0のライン。 ポートiとポートjで等しい ポートiとjの間のアッテネータ。(ライン/反射/ S21とS12はともに既知。 未知の反射。 S11=S22=0。損失性ラインアッテネータ) 位相は近似的に既知。 として定義。
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一般化されたTRLアルゴリズムでは、ライン標準の特性インピーダンスが、システムの特性インピーダンスと等しいと仮定します。校正基準Z0オプションにより、システムZ0とライン特性インピーダンスZCとの間の小さな不一致を考慮するための調整が可能です。これは、定義されたオフセットZ0とオフセット損失項から導かれます。32ページの「付録B」の式(2B.5)を参照してください。ラインZ0を選択した場合は、調整は行われません。
注意:ラインやマッチ標準のオフセットZ0がシステムZ0と大きく異なる場合は、システムZ0を選択しないでください。
TRL校正は最初、スルーの中央に対応する基準面で計算されます。この場合、ライン標準は、スルー標準と同じ長さを除去した後に残るライン標準の部分と仮定できます。誤差係数が計算されると、係数を調整することにより、スルー標準のモデルまたは反射標準のモデルに基づいてテスト・ポートの基準面が確立されます。テスト・ポートの基準面を設定するために反射標準を選択した場合、反射標準の振幅と位相の両方を使ってテスト・ポートの基準面が計算されるため、反射標準は正確にわかっていると仮定しています。基準面を設定するためにスルー標準を選択するのは、長さゼロのスルーに対しては明らかに可能です。スルー標準が長さゼロでないラインの場合は、スルー標準のモデルを使ってテスト・ポートの基準面が計算されます。同軸や導波管の場合には、スルー標準のモデルだけを使っても優れた結果が得られます。マイクロストリップなどその他の分散性媒体の場合は、スルー標準だけでは最適な結果が得られない可能性があります。1つの方法としては、テスト・ポートがスルーの中央に来るようにテスト・フィクスチャと校正標準を設計する方法があります。もう1つの方法としては、LRLライン自動評価を選択します。TRLアルゴリズムでは、ライン標準の伝搬定数が計算されます。これには、伝送媒体の分散効果が含まれています。LRLライン自動評価を設定すると、ライン標準の伝搬特性の計算値と、スルー/ライン標準の遅延の定義値から、スルー標準の伝搬特性が計算されます。なお、LRLライン自動評価が使用できるのは、スルーとラインの両方の標準が遅延ラインであり、スルーとラインのオフセット・インピーダンスが等しい、周波数に限ります。
表5. TRLオプションとその意味
校正基準面設定
LINE標準がマッチ標準 基準面はTHRU標準定義で設定
LINE標準が遅延ラインで、 基準面はLINE伝搬定数の定義されたオフセットZ0が 予測値とTHRUおよびLINETHRU標準の定義された 標準の仕様遅延から設定 基準面はTHRU 基準面はREFLECTオフセットZ0に等しい 標準定義で設定 標準定義で設定
LINE標準が遅延ラインで、 基準面はTHRU標準定義で設定定義されたオフセットZ0がTHRU標準の定義されたオフセットZ0に等しくない
✓
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校正キットの変更により、測定校正を他のコネクタ・タイプに適合させることができます。適切な標準が使用できる場合は、校正キットの変更を使ってテスト・デバイスと同じ伝送媒体内に基準面を確立できます。さらに、変更機能を使うと、特定の校正キットの標準のより正確な物理定義を入力することもできます。
校正キットの変更または作成には、以下の手順を実行します。
1. Modify Cal Kitを選択します。2. Kit、Import KitまたはCreate Newを選択します。3. コネクタ(同軸、導波管など)を定義します。4. Standardsを選択します。5 標準を定義します。6. Assign Classesを選択します。7. 標準のタイプとクラスを入力します。8. NameまたはRename Kitを選択します。
変更手順
注記Agilent ENAシリーズ・ネットワーク・アナライザの校正キットの入力/変更手順は、ENAユーザーズ・ガイドの校正の章に詳細に記載されています。
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PNAの校正キットの入力/変更手順
PNAの[Calibration]プルダウン・メニューで"Advance ModifyCal Kit Wizard"を使用して、PNA用の校正キットの作成または変更を行います。
または、PCで実行可能なPNA Cal Kit Editorプログラムをダウンロードします。PCバージョンは、PNAの内蔵バージョンよりも更新が遅れる可能性があります。新しいバージョンは、古いバージョンで作成されたキット・データを処理できます。その逆は可能とは限りません。
PNAの組込み校正キット・エディタには、現在使用可能なすべての校正キット・ファイルのリストが表示され、これを選択して変更できます。Agilentの現在のすべてのメカニカル校正キットは、工場校正キット・ファイル・ディレクトリにプリインストールされています。目的のキットがリストにない場合は、キットをインポートします(手順は以下を参照)。キットがリストに表示されたら、キットを選択し、[EditKit]をクリックします。
PCバージョンでは、キットを選択して[Edit] > [Modify]を選択します。
図14. 校正キットの選択と変更
校正キットは、他のディレクトリ、ディスク・ドライブ、USBドライブからインポートできます。以前のバージョンのネットワーク・アナライザ・データ・ファイルはほぼすべてインポートできます。ユーザが作成した8510校正キット・ファイルおよび87xx校正キット・ファイルの一部は、正しくインポートできない可能性があります。ダウンロード後にキットの内容をチェックして、すべてのデータ・エントリが正しいことを確認してください。
Agilent 8510校正キットのPNAバージョンは、すべて工場校正キット・ディレクトリにプリインストールされています。
24
図15. 新しいコネクタ・ファミリの定義
新しいキットをセットアップするには、校正標準を追加する前にコネクタを定義する必要があります。コネクタ定義に対する変更は、校正標準の編集前に実行する必要があります。
校正キットのコネクタ・ファミリの名前を変更できます。APC 7コネクタ・ファミリを7 mmに変更しています。
ファミリ名が変更されると、キットのすべての校正標準のDe s c r i p t i o nフィールドのコネクタ情報と、キットのDescriptionフィールドが、下図のように更新されます。
コネクタの[Add or Edit]機能を選択した場合は、Add or EditConnector画面が表示されます。Mediaセクションは、伝送ラインの種類を定義します。COAX(同軸)、WAVEGUIDE(導波管)、および可能な場合は他の選択肢が表示されます。WAVEGUIDEを選択した場合は、Cutoff Frequency(カットオフ周波数)とHeight/Width Ratio(高さ/幅比)を入力する必要があります。オス型とメス型のコネクタは別々に指定する必要があります。1つのキットに対して複数のコネクタを定義できます。
これは、コネクタ・ファミリ名をAPC 7から7 mmに変更した結果を示しています。
次に、[Add]ボタンを押して標準を追加します。
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サポートされている標準タイプの内の1つを追加します。オープンを選択した場合は、右に示すオープンの編集画面が表示されます。ショート標準の編集画面はオープンの編集画面によく似ています。負荷標準の編集画面を下に示します。
すべてのフィールドに入力します。測定の単位(指数など)が正しいことを確認してください。
負荷には4種類あります。それぞれを選択すると、異なるデータ入力フィールドの組が使用可能になります。固定ロードとスライディング・ロードは似ています。 任意インピーダンスを選択すると、複素インピーダンス入力
フィールドが使用可能になります。
図16. 標準の追加
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オフセット・ロードを選択すると、"Offset Load Definition"フィールドが使用可能になります。
スルー標準を選択すると、スルー/ライン/アダプタ編集/入力画面が使用可能になります。2つのポートに対してコネクタを定義する必要があることに注意してください。これはアダプタを定義するために使用できます。
[Browse]を使ってデータ・ベース・ファイルを見つけ、アップロードします。成功すると、ファイル情報画面にファイルの内容が表示されます。ファイル情報は初期インストール時のみ利用できます。既存の標準を後で表示することは現時点ではサポートされていません。
すべての標準が定義されたら、標準をクラスに割り当てる必要があります。クラス割り当ての詳細については、このアプリケーション・ノートの前の方で説明しています。
最後のステップは、キットの概要を入力してキットを保存します。
図17. 標準定義の完成とクラスへの割り当て
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8510の校正キットの変更/入力手順
8510ベクトル・ネットワーク・アナライザに校正キットの仕様を入力する方法としては、ディスク・ドライブからのロード、フロント・パネルからの入力、外部コントローラによるプログラムがあります。
ディスクの手順8510の内部に保存できる校正キットは2つだけですが、ディスクには複数の校正キットを保存できます。
下に示すのは、ディスク・ドライブまたはディスク・インタフェースを使って校正キットをロード/保存するための一般的な手順です。
ディスクからAgilentネットワーク・アナライザに校正キットをロードする手順
1. 校正データ・ディスクをネットワーク・アナライザに挿入します(または、互換ディスク・ドライブをシステム・バスに接続します)。
2. DISCキーを押します。STORAGE IS: INTERNALまたはEXTERNALを選択し、以下のディスプレイ・ソフトキーを押します。 LOAD CAL KIT 1-2 CAL KIT 1またはCAL KIT 2(この選択により、校正キットがロードされる不揮発性レジスタが決まります)FILE #_またはFILE NAME(ロードする校正キット・データを選択します)LOAD FILE
3. 正しい校正キットが機器にロードされたことを確認するために、CALキーを押します。正しくロードされている場合は、CRTディスプレイの"CAL 1"または"CAL2"の下に校正キット・ラベルが表示されます。
Agilentネットワーク・アナライザからディスクに校正キットを保存する手順
1. 初期化済みの校正データ・ディスクをネットワーク・アナライザに挿入するか、互換ディスク・ドライブをシステム・バスに接続します。
2. DISCを押します。STORAGE IS: INTERNALまたはEXTERNALを選択します。以下に、CRTディスプレイ上の次のソフトキーを押します。 STORE CAL KIT 1-2CAL KIT 1またはCAL KIT 2(これにより、保存される不揮発性校正キット・レジスタが決まります)FILE #_またはFILE NAME(校正キット・データ・ファイル名を入力します)STORE FILE
3. ディレクトリを調べて、ファイルが保存されていることを確認します。これで、校正キットをディスクに保存する手順は完了です。
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新しい校正キットを作成する場合、あるいは既存の校正キットを修正する場合は、フロント・パネルまたはプログラムによる入力が可能です。
このガイドでは、標準の定義とクラスの割り当ての手順をすでに示しました。ここでは、標準とラベルをフロント・パネルから入力するための手順を説明します。
フロント・パネルの手順:(Pバンド導波管の例)
1. 校正キットの変更または作成の前に、不揮発性メモリに記憶された校正キットの1つまたは両方をディスクに保存します。
2. Calメニュー > MOREを選択します。3. 校正キット2を変更する準備をします:MODIFY 2を押します。4. 標準を定義します:DEFINE STANDARDを押します。5. 標準1を変更可能にします:1、X1を押します。6. 標準タイプを選択します:SHORT7. オフセットを指定します:SPECIFY OFFSETS8. 表1の遅延を入力します:OFFSET DELAY、0.0108309、ns9. 表1の損失を入力します:OFFSET LOSS、0、X110. 表1のZ0を入力します:OFFSET Z0、50、X111. 下側のカットオフ周波数を入力します:MINIMUM FREQUENCY、9.487 GHz12. 上側の周波数を入力します:MAXIMUM FREQUENCY、18.97 GHz13. WAVEGUIDEを選択します。14. 新しい標準のラベルを指定する準備をします:PRIOR MENU > LABEL
STANDARD > ERASE TITLEを押します。15. ノブ、SELECT > LETTERソフトキー、SPACEソフトキーを使って、
PSHORT 1と入力します。16. TITLE DONEを押してタイトル入力を終了します。17. STANDARD DONE (DEFINED)を押して標準の変更を終了します。
これで、標準1が1/8 lPバンド導波管オフセット・ショートとして定義されました。残りの標準を定義するには、表1を参照してステップ4~17を繰り返します。標準3のマッチド・ロードを定義するには、"fixed"を指定します。
Pバンド導波管校正キットに対する表2のクラス割り当てをフロント・パネルから実行する手順を以下に示します。
1. クラスを指定する準備をします:SPECIFY CLASS2. 標準クラスS11Aを選択します。3. 11Aクラス校正に対して標準1を使用するようにネットワーク・アナライザに指示します:l、X1、CLASS DONE (SPECIFIED)
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S11Aのクラス・ラベルを変更します:LABEL CLASS、11A、ERASE TITLE
1. ノブ、SELECTソフトキー、SPACEソフトキーを使って、ラベルとしてPSHORT 1と入力します。
2. ラベル入力手順を終了します:TITLE DONE > LABEL DONE
同様の手順で、残りの標準クラスとラベルを下の表のように入力します。
最後に、校正キットのラベルを以下のように変更します。1. LABEL KIT > ERASE TITLEを押します。2. "P BAND"というタイトルを入力します。3. TITLE DONE > KIT DONE (MODIFIED)を押します。"CAL KIT SAVED"というメッセージが表示されます。
これで、フロント・パネル入力による校正キットの変更は完了です。GPIB経由で外部コントローラを使用したプログラムによる変更の例は、8510 NetworkAnalyzer Operating and Service Manual(セクションIII)の"Introduction ToProgramming"のセクションを参照してください。
表6. 8510のクラス割り当て表
標準クラス 標準番号 クラス・ラベル
S11B 2 PSHORT 2
S11C 3 PLOAD
S22A 1 PSHORT1
S22B 2 PSHORT2
S22C 3 PLOAD
FWD TRANS 4 THRU
FWD MATCH 4 THRU
REV TRANS 4 THRU
REV MATCH 4 THRU
RESPONSE 1、2、4 RESPONSE
30
この付録では、オス/メスの区別がある同軸コネクタのオフセット長を決定する際の、寸法に関する注意事項と、必要な規則を説明します。
オフセット長の正確な測定は、与えられた校正標準のオフセット遅延を決定するために必要です。1ポートおよび2ポート標準のオフセット長の定義は以下のとおりです。
1ポート標準:「校正面」と終端インピーダンスとの間の距離2ポート標準:ポート1とポート2の「校正面」の間の距離
校正標準の「校正面」の定義(位置)は、コネクタ・タイプの形状とオス/メスに依存します。「校正面」とは、導体の軸に垂直で、外部導体の接合面と一致する平面と定義されています。この接合面は、テスト・ポートの外部導体と校正標準との接点に位置します。これを説明するために、以下の各コネクタ・タイプ・インタフェースの例を考えます。
7 mm同軸コネクタ・インタフェース
「校正面」は、図18に示すように、内部導体と外部導体の両方の接合面に一致します。このコネクタ・タイプが独自な点は、内部導体と外部導体の接合面の位置が一致する点と、オス/メスの区別のないコネクタである点です。他のすべての同軸コネクタ・ファミリは、この点について異なっています。
3.5 mm、2.4 mm、1.85 mm、1.0 mm同軸コネクタ・インタフェース
これらのコネクタ標準の「校正面」の位置は、オス/メスの両方で、図18に示すように、外部導体の接合面と一致します。
付録A:同軸コネクタの寸法に関する注意事項
31
N型同軸コネクタ・インタフェース
N型標準の「校正面」の位置は、図19に示すように、外部導体の接合面です。
PNAファミリの場合は、デバイス・ラベルの-M-(オス)または-F-(メス)は、テスト・ポートではなく校正標準のオス/メスを表します。
(M)または(F)→テスト・ポートのオス/メス-M-または-F- →校正標準のオス/メス
図18. 同軸コネクタの校正面の位置
図19. N型コネクタの校正面
注記8510およびその派生モデルを使った測定校正の際には、校正標準の標準ラベルが、標準のタイプと、校正テスト・ポートのオス/メス((M)がオスで(F)がメス)を示します。(M)と(F)は、標準ではなくテスト・ポートのオス/メスを表します。校正ポートに正しい校正標準が接続されるように、ポートのオス/メスに関するこのラベリング規則を守る必要があります。これは特に、オスとメスの標準で校正係数が異なる校正キット、例えば、N型、1.85 mm、1.0 mmなどの校正キットの場合に重要です。
校正面
校正面校正面
校正面 校正面
7 mm同軸コネクタ
3.5 mm(メス) 3.5 mm(オス)
N型(メス) N型(オス)
32
図20. 同軸伝送ラインの特性
すべての伝送ラインは、特性インピーダンス(ZC)、伝搬損失定数(a)、伝搬位相定数(b)、長さによって定義できます。これらは、校正係数であるオフセットZ0、オフセット損失、オフセット遅延と以下の関係にあります。
(2B.1)
Rが小さく、G=0と仮定すると、不完全導体の自己インダクタンスを含めて、伝送ライン特性の2次近似は以下のようになります。
(2B.2)
付録B:同軸校正係数モデルの導出
r
dD
e
s
= e - +jα β
α β ω ω
( )
+( ) = +( ) +
l
j R j L G j C(( )= +( ) ++( )
≡
Z R j L G j Cc ω ω
R
L ≡ G
≡CC
2 f;
≡≡ω π f ≡ ≡l
L L L LR
j j L C jRL
ZL
C
o i o
oo
co
= + = +
+( ) ≅ + −( )
≅
ω
α β ωω
1 12
1 + −( )12
jRLoω
([ )( )
][ ]
33
同軸伝送ラインの場合:
(2B.3)
(2B.4)
オフセットの定義を伝送ラインの式 (2B.2) に代入すると:
(2B.5)
ショートのインダクタンスは、参考文献[10]に示されているように、ショート面の物理特性から決定できます。計算結果は3次多項式にカーブ・フィッティングされます。
(2B.6)
=
= =
= +
R
f
L C
Rf
d D
r
ro
c
νε
εν
π µσ ππ
10
1 1
9
0
l
( )L
Dd
CD do
o ro
o
== == ( ) ==µπ
πε ε εµ ν
022
2 1ln 、
ln;
Zo == ==L
CDd
o o
r
µ νπ ε2
ln
( ) ( )( )
RL
f
o2 109ω ω
α
==
==
2 (Offset Zo)
l2 Zo
( ) ( )( )
==
f109
β ωl
Z2o
( ) ++ ≅ +
== ( ) ++ −−
α β ω ν α
ωω
l [ ( ) ]
( )Z jc 1f
109
( ) ( )
( )
[ ]
Z j L L L L f L f L f
e
T T T
T
jL
ZT
r
≈ = + + +
≈ −−−
ωω
、
( )( )arctan
0 1 22
33
2
1Γ
34
インダクタンスが線形と見なせる低い周波数では、以下のように追加の遅延項としてモデリングできます。
(2B.7)
オープンのフリンジング・キャパシタンスは、3次元マイクロ波シミュレータを使って決定できます。ただし、オープン・アセンブリの機械的な構造はきわめて複雑なことがあり、シミュレーションの問題が生じる場合があります。オープンが校正標準として用いられない場合は、TRLまたはオフセット・ショート校正を使ってオープンの応答を測定する方が現実的です。測定結果は3次の多項式キャパシタンス・モデルにカーブ・フィッティングされます。
(2B.8)
キャパシタンスが線形と見なせる低い周波数では、以下のように追加の遅延項としてモデリングできます。
(2B.9)
∆ φ π π== = ( )22
2arctanf LZ
fT
r∆( )
Zj C
C C C f C f C f
e
TT
T
T
jC ZT r
≈ = + + +
≈−−
1
1
0 1 22
33
21
ω
ω
、
( )arctan
Γ ( )
π1
2 f C ZT r∆ φ π== = ( )2 2arctan f ∆( )
35
図21. 方形導波管の寸法と特性
方形導波管の物理特性を図21に示します。
(2C.12)
付録C:導波管校正係数モデルの導出
w
h
r
res
βπ ε
νλ λ== −− ==
21
20
2
0
f
wr
e
、 導波管媒体の波長
w 実効導波管長 = e = − −−w
rh
( )4 2π
( ) ( )
απ µ ρ ε
µ
λ
λ≈
+
−
f
h
hw w
w
e e
e
0 0
0
02
02
12
2
12
= ≡、 ρσ1
導体の抵抗率 ( ) ( )( )[ ]
λ ν λ ν
λ
0
0
2
2
= = ≡f
w
w
e c; 導波管のカットオフ波長 = f
これより、
c
ee
cff
= ≡、 ν 自由空間の光速度
(2C.10) [13]
(2C.11)
36
導波管の損失の式をVNAの校正係数のフォーマットで構成するには、オフセット損失がGΩ/s単位でなければなりません。式は以下のように再定式化されます。
(2C.13)
(2C.14)
結果の伝搬定数は以下のようになります。
απ µ ρ ε
µl
l≈
+
−
f
hff
hw
ff
ff
c
c
e
c
c
0 0
0
2
12
12
( ) [ ]( )( )
( )
letf
hc
r
rオフセット損失
オフセット損失
オフセット遅延
オフセット遅延
=
これより、
( ) == ( )πµ ρ νε
εν
0 、 l
αl ≈ ( ) ( )εµ
+
−
ff
hw
ff
ff
c
e
c
c
0
0
2
12
12
( )
[ ]( )( )
( )
γ α βl l= +( ) ≈ ( )j オフセット損失 cj ff
f+ −−
2
2 1π ( )オフセット遅延 εµ
+
−
ff
hw
ff
ff
c
e
c
c
0
0
2
12
12[[ ] ]( )
( )( ) ( )
(2C.15)
37
校正キット・エディタのbリリースが、http://na.tm.agilent.com/pna/dbcal.htmlから入手できます。このエディタを使うと、データ・ベース標準を含むキットを作成できます。データ・ベース標準は、データ・リストで記述されます。データ・ベース標準には、周波数のリスト、各周波数での各Sパラメータの実際の応答、重み係数を決定するために用いられる実際の応答の確度の見積りが含まれている必要があります。
現時点では、1ポート・デバイスのみがサポートされています。2ポート・デバイスのサポートは今後追加される予定です。
サンプル・ファイル
CITIFILE A.01.01#PNA Rev A.01.00#PNA STDTYPE DATABASEDCOMMENT MODEL: 85058-60101COMMENT SERIAL NUMBER: NOMINAL#PNA STDREV Rev A.01.00#PNA STDLABEL "SHORT 1 -M-"#PNA STDDESC "1.85 mm male [SHORT 1]"#PNA STDFRQMIN 0#PNA STDFRQMAX 70000000000#PNA STDNUMPORTS 1COMMENT "1.85 mm" known so #PNA DEFINECONNECTOR statement non neededCOMMENT #PNA DEFINECONNECTOR "1.85 mm" 0 70000000000 COAX#PNA CONNECTOR 1 "1.85 mm" MALECOMMENT PINDEPTH is optional, only applies to coax devices#PNA PINDEPTH 1 0.007 0.007
NAME DATACOMMENT This section describes the s parameter data and weightingCOMMENT factor for the calibration standardCOMMENT COVERAGEFACTOR is used to scale the weighting factorCOMMENT S[i,j] is sij for the standard. Supported formats: RICOMMENT U[i,j] is the weighting factor for sij.COMMENT Supported U[i,j] formats: RI, MAG#PNA COVERAGEFACTOR 2COMMENT note number of points is 509 belowVAR Freq MAG 509DATA S[1,1] RIDATA U[1,1] MAGVAR_LIST_BEGIN01000000015000000...70000000000VAR_LIST_ENDBEGIN-1,0-0.99976354927,0.00249289367-0.99970950119,0.00367766097...0.9772034982,-0.14575300423ENDBEGIN0.000280.000280.00028...0.005END
付録D:データ・ベース校正標準の定義ファイルのフォーマット
38
暫定版#PNAキーワード
PNAは現時点では、以下のキーワードを認識しません(これらは無視されます)。将来のリビジョンでは、以下のキーワードがサポートされることにより、データ・ベース標準がCITIFILEによって完全に定義できるようになる予定です。
表7. #PNAキーワードの表(暫定版)
ステートメント 概要
#PNA REV s #PNAリビジョン
#PNA STDTYPE s 校正標準のタイプsはDATABASEDでも可
#PNA STDREV s 標準のリビジョン
#PNA STDLABEL s 標準のラベル
#PNA STDDESC s 標準の概要
#PNA STDFRQMIN f 標準選択の最小周波数(使用レンジとは異なっていても可)(Hz)
#PNA STDFRQMAX f 標準選択の最大周波数(使用レンジとは異なっていても可)(Hz)
#PNA STDNUMPORTS d ポート数、デフォルトは1
#PNA PINDEPTH d f1 f2 モデルのピン深さ補正を可能にする同軸コネクタのピン深さd=ポート番号f1=モデル・データに含まれている値(mm)f2=実際の値(mm)
#PNA DEFINECONNECTOR コネクタの定義(既定義の場合は不要)s1 f1 f2 s2 <f> s1=コネクタID
f1=最小周波数(Hz)f2=最大周波数(Hz)s2=コネクタ・タイプ。以下のいずれか
COAX、WAVEGUIDE<f>はコネクタ・タイプに必要な値を指定するオプションのパラメータ・リストCOAXでは<f>は無視WAVEGUIDEでは<f>の最初の要素がカットオフ周波数他のタイプの<f>は未定
#PNA CONNECTOR d s1 s2 コネクタ割り当てd=ポート番号s1=コネクタID。既定義のIDまたはDEFINECONNECTORで定義された
ものに対応s2=コネクタのオス/メス。MALE、FEMALE、NONEのどれか
#PNA COVERAGEFACTOR f 重み付けのための包含係数。デフォルトはf=1
39
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2. D. Rytting. (Mar. 1987). Appendix to an Analysis of Vector Measurement AccuracyEnhancement Techniques, Hewlett-Packard RF & Microwave MeasurementSymposium and Exhibition.
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5. R.A. Speciale. (Dec. 1977). A Generalization of the TSD Network Analyzer CalibrationProcedure, Covering N-port Scattering Parameter Measurements, Affected by LeakageErrors, IEEE Trans. Microwave Theory Tech., vol MTT-24, pp. 1100-1115.
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参考文献
Webリソース
その他のカタログや最新の製品情報については、下記のWebサイトを参照してください。
PNAシリーズ・ネットワーク・アナライザ:www.agilent.co.jp/find/pnaj
8510ネットワーク・アナライザ:www.agilent.co.jp/find/8510
電子校正モジュール(ECal):www.agilent.co.jp/find/ecal-j
www.agilent.co.jp/find/emailupdates-Japan
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電子計測UPDATE
www.agilent.co.jp/find/agilentdirect
測定器ソリューションを迅速に選択して、使用できます。
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AgilentOpen
www.agilent.co.jp/find/openAgilentは、テスト・システムの接続とプログラミングのプロセスを簡素化することにより、電子製品の設計、検証、製造に携わるエンジニアを支援します。Agilentの広範囲のシステム対応測定器、オープン・インダストリ・ソフトウェア、PC標準I/O、ワールドワイドのサポートは、テスト・システムの開発を加速します。
June 19, 2006
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