何∞ 関する研究 一人乳汚れの洗浄について ー M OTOI...

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たん白質汚れの 洗浄 K 関する研究 一人乳汚れの洗浄について ー ) 11 RernovalofProteinsfrornFabricsbyProtease -WashingofCottonSoiledwithHurnanMilk- M OTOI MINAGAWA 緒言 乳は乳腺IC よって分泌される白色不透明の液体で,徴 枝子状の脂肪とカゼインたん白賓と現績とが分散し, ビ タミン類,酵素類,カルシウムおよびリンなどの無機物, それに少量の有機化合物が含まれており,成分中のカゼ インたん白質とカルシウム盗のコロイドによって特有の 乳白状態が保たれている。 衣績に付着する人乳の汚れは一般に牛乳の汚れに比 し,除去しにくく ,特 IC 汚れが古くなるほどその傾向が 顕著IC 偲められる。 また人乳の汚れはI 血液の汚れのように着色していない ために,多く の場合見逃されて細菌,かび類の発生をま ねきやすく,衣類を賞褐変ならびに脆化させたり,害虫 類の影響を受けやすい乙とが知られている。 そ乙で本線においてはまず木綿,羊毛.絹,ア セ テ - hナイロンおよびテトロンなどの 6 種類の織物を用い, 人乳による汚染布を作製してその性状を検討し,一方主 として人乳木綿汚染布を用いてJ 酵素洗浄におけるプロ テアーゼの基質特異性や基本的な洗浄条件が洗浄効果に およl ます影響について基礎的な研究を試みた結果につい て記す。 材料 汚染用車li としては木綿布(洗浄力民験問標準木綿布 ), 絹布(印g付羽二重入学毛布(染色斌験用織物).アセ テー ト 布( 鉄色試験用織物). ナイロン布(染色試験用 織物〉およびテトロン布(染色試験用織物)などの 6 類の布を用い,使用 IC 先だって今一度炭酸ナト リウム お よびアミラーゼによる十分な仕上げのり抜きを施して合 塗系物の除去と繊維表面の均一化をはかり ,のち言車留水 で十分なすすぎを行なって試料とした。 プロテアーゼとしてはBa cillusSubtilisvar.を生ll: i1;jとする細菌プロテアーゼ AおよびB などの 2 種の中性 細菌プロテアーゼ. Rbizopusvar. を生産菌とする中性 糸状m プロテアーゼ, Streptomycesgriseus を生産磁 とする中性放線菌プロテアーゼ,Ba c il1 ussubt i1 is var' を生産目白とする細菌プロテア ーゼC およびD などの 2m のアルカリ性細菌プ ロテアーゼ, Aspeg il1 usorgzae 異性, pH特性お よび温度特性の異なる 7 種のプロテア ーゼを使用し た。 実殿方法 l 入手l 汚染布の作製法 人乳 (6 人分の人乳混合被) 1 ζ下記の条件で試布を浸 せき汚染して,マンクツレl ζより約 1 %IC 絞り上げて'{ri・ 染の均一化をはかり室内IC 直射 日光を避けて風乾し, 5 0 Cの冷暗所t ι貯蔵する。翁製後, 5 X1 ()c m 2 1 ζ民布 : 10X15cm 2 汚染被 : 1 d 当り試布15 汚染時間: 10 分間(1分間毎IC 反転) 汚染温度:5 ....... 10 o C 2. 牛事l 汚染布の作製法1) 2) 市販 Y:}. 土のホモジナイズド牛乳を蒸留水で %1 ζ希釈 し,下記の条件で駒市を浸せき汚免して,< ングJ IC り約 1 %IC 絞り上げて汚染の均一化をはかり ,のち室 内lCiilI射日光を避けて風乾し, 0-5 0 Cの冷暗所l ζRit する。翻製後,少なくとも 7日以上経過したものを汚銑 布として使用し,5XICcm 2 IC 裁断し,洗浄l ζ供した。 布 :標司自木綿布 10X15cm 2 汚徐被 : 100 .t当り試布お枚 (1 7)

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  • 何∞

    たん白質汚れ の洗浄 K関する研究

    一人乳汚れの洗浄について ー

    皆 ) 11 基

    Rernoval of Proteins frorn Fabrics by Protease

    -Washing of Cotton Soiled with Hurnan Milk-

    MOTOI MINAGAWA

    緒言

    乳は乳腺ICよって分泌される白色不透明の液体で,徴

    枝子状の脂肪とカゼインたん白賓と現績とが分散し,ビ

    タミン類,酵素類,カルシウムおよびリンなどの無機物,

    それに少量の有機化合物が含まれており,成分中のカゼ

    インたん白質とカルシウム盗のコロイドによって特有の

    乳白状態が保たれている。

    衣績に付着する人乳の汚れは一般に牛乳の汚れに比

    し,除去しにくく ,特IC汚れが古くなるほどその傾向が

    顕著IC偲められる。

    また人乳の汚れはI血液の汚れのように着色していない

    ために,多く の場合見逃されて細菌,かび類の発生をま

    ねきやすく,衣類を賞褐変ならびに脆化させたり,害虫

    類の影響を受けやすい乙とが知られている。

    そ乙で本線においてはまず木綿,羊毛.絹,アセテ-

    hナイロンおよびテトロンなどの6種類の織物を用い,

    人乳による汚染布を作製してその性状を検討し,一方主

    として人乳木綿汚染布を用いてJ酵素洗浄におけるプロテアーゼの基質特異性や基本的な洗浄条件が洗浄効果に

    およlます影響について基礎的な研究を試みた結果につい

    て記す。

    材料

    汚染用車liとしては木綿布(洗浄力民験問標準木綿布),

    絹布(印g付羽二重入学毛布(染色斌験用織物).アセ

    テー ト布(鉄色試験用織物). ナイロン布(染色試験用

    織物〉およびテトロン布(染色試験用織物)などの6種

    類の布を用い,使用IC先だって今一度炭酸ナト リウムお

    よびアミラーゼによる十分な仕上げのり抜きを施して合

    塗系物の除去と繊維表面の均一化をはかり,のち言車留水

    で十分なすすぎを行なって試料とした。

    プロテアーゼとしてはBacillusSubtilis var.を生ll:

    i1;jとする細菌プロテアーゼAおよびBなどの2種の中性

    細菌プロテアーゼ.Rbizopus var.を生産菌とする中性

    糸状mプロテアーゼ, Streptomyces griseusを生産磁とする中性放線菌プロテアーゼ,Bacil1us subti1is var'

    を生産目白とする細菌プロテアーゼCおよびDなどの2m

    のアルカリ性細菌プロテアーゼ, Aspegil1us orgzaeを

    生~閣とするアルカリ性糸状蘭プロテアーゼなど滋賀特

    異性, pH特性および温度特性の異なる 7種のプロテア

    ーゼを使用した。

    実殿方法

    l 入手l汚染布の作製法

    人乳 (6人分の人乳混合被)1ζ下記の条件で試布を浸

    せき汚染して,マンクツレlζより約1∞%IC絞り上げて'{ri・染の均一化をはかり室内IC直射日光を避けて風乾し,

    ト 50Cの冷暗所tι貯蔵する。翁製後,5 X1()cm2 1ζ議

    断し~rPlC供した。

    民布:10X15cm2

    汚染被 :1∞d 当り試布15枚汚染時間:10分間(1分間毎IC反転)

    汚染温度:5.......10oC

    2. 牛事l汚染布の作製法1),2)

    市販Y:}.土のホモジナイズド牛乳を蒸留水で %1ζ希釈

    し,下記の条件で駒市を浸せき汚免して,

  • - 66- 被

    汚染時間:5分間 (30秒毎に反転)

    汚染温度:10土20C

    3. 洗浄方法お

    LaunderーQ-meterを用い,下記の条件で洗浄およ

    びすすぎ (3回)を行なった。

    (洗浄条件)

    汚染布 :5x1Ccm2

    洗浄液量 :100!fll

    回転数:42土1rpm

    スチーJレボール:10個

    洗浄時間:30分間

    洗浄温度:40士2"C

    (すすぎ条件〉

    汚染布 :5X10cm2

    蒸留水 :100lllt

    回転数:42土Irpm

    スチーJレボール:10個

    洗浄時間:1分間

    洗浄温度:40:t2"C

    すすぎを終った布は室内に直射日光を避けて風乾する。

    4. 汚染綿布に付着しているたん白貨の定量方法ω

    分解フラスコ 11:5X5cm2の検体を入れ, 濃硫酸2.t

    硫酸カリを0.7g,酢酸第一水銀を 0.025g加えて加熱し,

    液が赤色透明になってから一度冷却後,過硫酸カりを

    0.5g入れ, さらに少量の蒸留水を加え, 無色透明にな

    るまで加熱し,その後 1.5時間分解を続行する。つぎに

    常法によりケJレグール窒素定量装置を用い,蒸留物を10

    IIIlの0.02規定の塩酸液に捕集し, 過剰に存在する塩酸

    !lOC 戸叫ナ

    液(酸性緩衝剤一TCA混液)5111lを加え, 漉液中の分

    解生成物濃度を Casin-275mp吸収B法で測定した。

    乙の基準条件下で 1分聞にチロシン 1r相当量の 275

    mp吸収を示す非たん白性物質を生成する酵素活性をl

    単位として表わした。なお比活性皮は0.6%ミルクカゼ

    イン基質溶液, pH7.4で, 35"C, 10分間作用の時の活

    性を100%とした

    7. レプり力紙料の作製法3>

    汚染布をオスミウム酸またはエチルアルコール・ホJレ

    7 リン混液で処理し,その表面に完全重合させたエチル

    メタクリレートのフィルムを約100"C, 2"""3 kgjcm2の

    圧力で圧着すると,フィルム面lζ汚染布の構造を転写す

    ることができるので,常法によりカーボンを蒸着し,さ

    らにクロムシャドウを施したのちプラスチックをアセト

    ンで溶解して電子顕微鏡用試料を作製した。

    8. 織物の強力・伸度の測定

    ショッパー型抗張力試験機を用い,汚染布(5X30cm,

    たて糸方向, 10枚)の強力・伸度を標準混湿度状態 (20

    土20C,RH65土2%)で測定した。

    実験結果およびその考察

    A 人事i汚染布の性状について

    人乳は牛乳(市乳 Citymilk)に比し,たん白質なら

    びに無機物がYa"""弘盆とかなり少ないが,脂質はほとん

    ど変らず,糖質は逆に多く含まれている山(第1表)。

    をメチルレッドを指示薬として, 0.02規定の水酸化ナ ト 人

    リウムで滴定し,綿布 19Iζ対するたん白質の付着量ま

    たは綿布5x1Ccm2 Iζ対するたん白質の付着量を Nmg

    で表わした。

    5. たん白質の除去率の求め方自)

    洗浄前・後の汚染布の窒素量と綿布自体の室素量をそ

    れぞれケルダーjレ法により定量し,次式により洗浄に伴

    なうたん白質汚れの除去~を求めた。

    Ns-N たん闘の除去率-Ns-N子XI00(%) Ns:洗浄前の汚染布 (lg当り)の Nmg

    Nw:洗浄後の汚染布 (lg当り〕の Nmg

    Nc:標準木綿布 (lg当り)の Nmg

    6. プロアアーゼのカ価測定法3)

    0.696ミルクカゼイン基質溶液5/IJtと酵素液l!f1tとを

    10分間, 350C,最適 pH下IL反応させたのち,除たんi討

    ( 18 )

    人乳および牛乳に含まれる糖質(乳糖)や無機物(カ

    ルシウム,りんなど)がカゼインたん白質と懸濁コロイ

    ドとなり,脂質(ラク酸,カプロン酸,カプリJレ酸,カ

    プリン酸,オレイン酸などをはじめ多くの脂肪酸のグリ

    セライド)が乳濁質 (emulsoid)となってコロイド溶液

    を形成している。

    人乳汚決液を用い,各種繊維の織物を前記の規定条件

    下で,浸せき汚染して各種織布への入手したん白質の付着

    震についてみる と,第2表のどとく,親水性の天然繊維

    の織物ではたん白質の付着量が多く,アセテート布,ナ

    イロン布,テトロン布のJI聞と付着量が低下し,特lとテト

    ロンなどの疎水位繊維の織布では付着量が著しく少ない

  • - 67-

    着量は織物の吸水性K伴なう影響が少なくなるものと恩

    われる。

    人乳および牛乳の各汚染液で作製した各汚染布(いず

    れも木綿 19に対するたん白質量を 10mg前後に揃えた

    もの)を同一条件下で室温に放置し,その放置日数と汚

    染布lこ付着するたん白賓の7]

  • -68ー 被

    すると,Plate 1"'"' 6のどとくになる。

    まずirj'認さ前の標準木綿布の単繊維と汚染後の2ト,t;'il単繊

    維の表面についてみると,Plate 1のごとく,汚染前lζ

    Plate 1 人乳木綿汚染布の繊維表面

    A:汚染前の繊維

    B 汚染後の繊維

    Carbon-Replica, Cr-shadowing電子顕微鋭

    は木綿繊維の一次機造が完全に除かれた ミクロフィ プリ

    Jレ精造と繊維軌方向iζ一定の斜角をもって配行した二次

    局のフィプリ Jレ層構造とが明確に観察される。 一方人乳

    汚染布の単繊維の表面には光学顕微鏡下では比較的むら

    なく汚染されている状態が認められるが,定子顕微鏡下

    では木綿繊維特有のフィプリ Jレ構造とラメル構造とが完

    全に消火したかなり不均一な状態で, 多量に汚染されて

    いる状態が認められた。

    同様に人乳紡汚・染布についてみると,Plate 2のどと

    し汚染JiiJの単繊維の表而では繊維軸方向に配行した桁

    繊維特行のミクロフ ィブリルの ~network が観族される

    が,i'l染後の単繊維の表面ではその構造が完全に消火し,不均一な状態で人乳が汚染されているのが認められた。

    また人乳羊毛汚染布についてみると,Plate 3のどと

    し汚染訴lの矧繊維の表面では繊維軸方向iζ配行した寺三

    毛繊維特有のウロコ状の scale鱗造が観察されるが,

    汚染後の単繊維の表面では scale構造がほとんど消失

    sfl. 学

    Plate 2 人乳絹汚染布の繊維表面A:汚染前の繊維 B:汚染後の繊維

    Carbon-Replica, Cr-shadowing電子顕微鏡

    μ Plate 3 人乳羊毛汚染布の繊維表面A:汚染前の繊維 B:汚染後の繊維

    Carbon-Replica, Cr-shadowing 電子頻徽鋭

    ( 20 )

  • 告)1¥:たん白質汚れの洗汀t

    して起状の少ない比較的平沼なH:r'1状態が認められた。

    - 69一

    また入手Lアセテー卜汚染布,入手Lナイロン川沿布およ

    び入手Lテトロンl'i'!:.i~,{Jjについてみると, Plate 4 ~ 6の

    どとし人 乳l'jれ自体がきわめて復紺な組成を有するた

    めに, ミクロ((~,とは必ずしも均一なイJ若状態を示してい

    ないが,前記木綿,紡下毛などの天然繊維に比し琵的

    ICも少なく ,i汚ち

    る状態が認められた。

    -噛圃醐・晶砿

    Plate 4 入手Lアセテー 卜汚染布の繊維表面

    A 汚染前の繊維 B:汚染後の級料

    Carbon-Replica, Cr-shadowing電子顕微鏡

    以上のように各程繊維の人乳汚染布においては繊維の

    微細構造ならびに糸布の吸水性などの相違!とより,汚れ

    の付着呈および付着状態にかなりの差異が認められた。

    B プロテアーゼの基質特異性が入手L木綿汚染布の;先

    浄効果におよぼす影響について

    まず基質特異性の異なる 7砲の微生物プロテアーゼを

    用いて,人乳汚染布を規定条件下で洗浄し,その洗iJ.効

    果を比較すると,第 2図のごとくなる。

    微生物プロテアーゼ?による洗浄においては一般に80必

    以上の比較的高い洗14'効率を示し,4-'fI(アルカリ性細I泊プロテアーゼCおよび'iJtt放総菌プロテアーゼ?などの丞質特異性の広いプロテアーゼを用いた窃合にはすぐれ

    ( 21 )

    一 ー 略}忌uL

    ~‘--A γs

    Plate 5 人ずしナイロン汚染布の繊$11表iliiA: iq*有力の繊維 B:汚染後の繊維

    Carbon-Replica, Cr-shadowing電子顕微鏡

    -,~-ニーム~~忌』品よ • ‘ -‘か

    倒閣.~

    A

    Plate 6 入手iテ トロン汚染布の繊維表面A:汚染前の繊維 B:汚染後の繊維

    Carbon-Replica, Cr-shadowing iie:子顕微鏡

  • - 70ー 被

    たん alfo除 去 事 〈 前

    ーー〈制ーー

    ψ銚・..プロテァ-.., A

    B

    小佐糸状!被ヲ aテアーゼ

    "'銑2主総蘭プロテアーゼ

    アルカ9縫a岡高プ白テァ-.., c

    D

    アルIdti:糸状翻プ0'アーゼ

    20 .(Q 60 80 100

    洗浄液の酵素活性 :100PU/.t

    洗浄条件:40土 Z'C, 30分間

    第2図 プロテアーゼの基質特異性が人乳木

    綿汚染布の洗浄効果におよlます影響

    た洗浄効果を示すことが認められた。

    つぎにプロテアーゼ以外にも洗剤に利用するととが可

    能なアミラーゼ,セルラーゼ,ペクチナーゼ, リパーゼ

    などの加水分解酵素 (hydrolase)を用いて, 入手L汚染

    布を規定条件下で洗浄し,その洗浄効果を比較すると,

    第3図のどとく,アミラーゼ,セルラーゼ,ペクチナー

    ゼ, リパーゼなどによる個々の洗浄においては水のみに

    たん自民の除去恥(9))

    《水》ーー

    プ ロテアーゼ

    アミラ同ゼ

    イヒ ル ラ ー ゼ

    ペクチナ-..,'

    リ バ ー ゼ

    〈プ冒テアーゼ)+eアミ歩 ーゼ〉

    〈プ回 テγーゼ)+(~ N ラーゼ〉

    〈プロテア』ゼ)+(ペクテナーゼ〉

    tプDテアーゼ)+【~ ,守【ゼ〉

    洗浄液の酵索活性

    プロテアーゼ:100 P U /.wl (Casein-275mμ 吸収B法)

    アミラーゼ:100 P U Iml (Blue value法)

    セJレラーゼ: 25PU/.wl (B. M. C粕度法)

    ペグチナーゼ: 25Pu/.l (ペクチン粘度法)

    リパーゼ :25PU/.l (アルカリ t滴定法)

    洗浄条件:40土 Z"C, 30分間

    第3図 各種酵素が人乳木綿汚染布の洗浄効果iと

    およぽす影響

    mt 学

    よる洗浄の場合と大差なく,ほとんど洗浄効果が認めら

    れないが,各磁の百字訟を用いた洗浄放にプロテアーゼを

    配合すると,アミラーゼおよびリパーゼなどの洗浄にお

    いてはプロテアーゼ単独の場合に比し,きわめてすぐれ

    た洗浄効率を示すζ とが認められた。 ζのように人乳汚

    染布の洗浄においてはプロテアーゼにアミラーぜならび

    にリバーゼなどを配合する ζ とにより,洗浄効果が高め

    られる乙とが認められたが,汚れの組成や織物の仕上げ

    糊の残存によってはセノレラーゼ,ペクチナーゼなども洗

    浄効率の増大に関連するものとJ思われる。

    C 洗浄液のプロテアーゼ活性が人事L木綿汚染布の洗

    浄効果におよlます彫響について

    中性細菌プロテアーゼAおよびアルカリ性細菌プロテ

    アーゼCなどの基質特異性の異なる 2種類のプロテアー

    ゼを用い,洗浄液中のM:索活性が人乳汚染布の洗浄にお

    よlます影響についてみると,第4図のどとく,基質特異

    fi

    }

    , 1 1 I I I I 1 40 160 200 自0 120

    洗浄液の酵素活性 (PU/.t)

    0:中性細菌プロテアーゼA

    .:アルカリ性細菌プロテアーゼC

    洗浄条件:40土 Z'C, 30分間

    第4図 洗浄液中の酵素活性が入手L木綿汚染布の

    洗浄効果におよぽす影響

    ( 22 )

  • -71ー

    10以上lζおいて最大除去率を示す乙とが認められた。ま

    た洗浄温度が高くなると,一般にたん白質の除去率li泡

    大するが,アルカリ側においては低温洗浄でもきわめて

    すぐれた洗浄効率を示し,中性細菌プロテアーゼとはか

    なり異なる傾向を示す乙とが認められた。

    {ム一方本実験iζ用いた中性細菌プロテアーゼAならびに

    アルカリ性細菌プロテアーゼCのpHー温度特性および

    pH 安定性についてみる と,第 7 ~10 図のどとく , 中性

    細菌プロテアーゼAでは pH7付近iζ最適 pHを有し,

    アルカリ側においては著しく 活性が低下する乙とが留め

    られ,作用温度が高く なるにつれてプロテアーゼ活性は

    泊し,特に最適pHでは著し くその活性が増大するとと

    が認められた。またpH6 ~ 12. 2~50'Cで.30分間放

    置した際の pH安定性についてみると.pHがアルカリ

    側に高くなるにつれて, プロテアーゼ活性は著しく低下

    し,さ らに作用Ilii',度が高くなるにつれて著しく低下する

    傾向が認められた。

    アルカリ性細菌プロテアーゼCではpH10付近tζ震適

    pHを有し. pH12付近では活性が低下する ととが認め

    られ, 作用温度が高くなると各 pHにおける活性が檎

    11 1

    洗浄液の pH

    0:洗浄温度 2ゆ土2'C

    .: " 40:i:2'C

    洗浄液の醇索活性 :10PU/.t

    1116図 アルカリ性細菌プロテアーゼCを用いた

    洗浄液のpHー温度効果(人乳木綿汚染布)

    皆川:たん白質汚れの洗浄

    90

    貿

    @

    司R

    B V

    ( 23 )

    t1ニの相iさにより汚染布のたん白質汚れの除去率にかなり

    の差異がた{められるが,洗浄械の階;伝活tl,が 10QPUjllt

    以上ではいずれもたん臼質汚れの除去率がほぼ平衡に迷

    して最高の洗浄効率を示す乙とが認められた。

    プロテアーゼの pHおよび温度特性が入手i木綿汚

    議布の洗浄効果におよlます彫響について

    まず pH-温度特性の異なる中性細菌プロテアーゼ A

    およびアルカリ性細菌プロテアーゼCの2種類のプロ

    テアーゼを用い,作用 pH6 ~12 の洗浄液で, 人乳木

    綿汚染布を規定条件により洗浄し,そのたん白質汚れの

    除去率についてみると, 第5. 6図のどとく,中性細菌

    プロテアーゼAでは pH7付近にたん白質汚れの最大除

    去E与を示し,アルカリ側においてはその除去率がかなり

    低下する乙とが認められた。しかし洗浄温度が高くなる

    と,アルカリ保'1におけるたん白質の除去率の低下がかな

    り少なくなると共i乙 各 pHにおける洗浄効率はいずれ

    も増大する傾向が認められた。

    またアルカ リ性細菌プロテアーゼCでは pHが高くな

    るにつれてたん白質汚れの除去率が著しく増大し.pH

    中性細菌プロテアーゼAを用いた洗浄液

    の pHー温度効果(人乳木綿汚染布)

    l I I I

    洗浄液の pH

    0:洗浄温度 20土 2'C

    .: " 40土 2'C

    洗浄液の酵素活性 :10PU/.t

    1115図

    D

    《Mmv

  • JIt

    na

    12

    pH

    11

    - 72ー

    80

    100

    20

    12

    pH

    アルカリ性細菌プロテアーゼCの

    pHー温度特性

    n

    第9図

    中性細菌プロテアーゼAの pH一視度特性

    pH

    各 pH,温度で,30分間放置した後の残存

    活性率を示している。

    第10図 アルカ リ性細菌プロテアーゼCの pH安定性

    20・c

    40・c

    30

    7l-

    踊 60

    場t

    {

    gao

    第7図

    W什

    mMmv

    12

    20 10

    pH

    各 pH,温度で, 30分間放置した後の残存活性E容

    を示している

    官官 8図 中性細菌プロテアーゼAの pH安定性

    9-

    い安定性を示す乙とが認められた。

    乙のように人乳木綿汚染布のプロテアーゼ洗浄におい

    ( 24 )

    し,特tζ最適pHでは著しくその活性が増大する乙とが

    認められた。また pH6 ~ 12, 20~50"Cで , 30分間放置した際の pH安定性についてみると,作用温度が高くな

    るにつれて徐々に安定性は低下するが, pH 6 ~lO にお

    いては上紀中性細菌プロテアーゼAとは異なりかなり高

  • 皆川:たん白質汚れのちtf[. - 73ー

    ては使用したプロテアーゼの pHー温度終併がそのまま

    洗浄効*1ζあらわれるが,一般にt先行・液のがpHアルカリtJょになるほどたん白質的れは泳去しやすくなり,特u::アルカリ側における pH安定性の高いプロテアーゼにお

    いてはその傾向が顕著にu!められた。

    ε プロテアーゼ洗浄における絹ならびに羊毛汚染布の強力 ・伸度について

    商事楽器I;fJ.rc使用するプロテアーゼが紹および羊毛などのたん白rr系鎌維の人乳汚染布の強力,伸度iζおよiます影響についてみると,第4. 5表のごとく iζなる。

    絹織物の洗浄においては洗浄方式(乎もみ洗い,つか

    み淡い,刷毛洗い,電気洗たく機淡いなど)によって布

    の強力,伸皮の低下が多少異なり,さらに洗浄回数を増

    すと, いずれの洗浄方式においても著しく低下する乙と

    が怨められている。引

    そ乙でまず入手t絹汚祭布を氷のみで,規定条件下で洗浄に伴なう機械的作用が汚染布の強力.{I申度Iζおよぼす

    影響についてみると,洗浄回放が織すにつれて汚猿布の

    強力,伸度がともに低下し,特lζ5......10図の反復洗浄で

    その傾向が顕著に認められた。

    一方向一条件下におりるプロテアーゼ洗浄が縞汚祭布

    の強力,仰&ICおよiます影響についてみると,上記水の

    みの洗浄の場合とほとんど大差なく,洗浄lζ伴なう汚染

    布の強}J.{中It.がともに低下し,特iζ絹たん白質lζ対す

    るプロテアーゼ作用の修理Eは企く認められない。

    官官4褒 プロテアーゼ洗浄を施した綿布(羽二重)の強力、{申度

    崎県政|強力(匂)批強力(釧慨(%)I比伸皮(船t也J) 1....,. ,.., r~~ "~' U • . ~,,~, I 。 64. 7 l∞ 31.5 1∞

    1 位。 97.4 31.7 1()()' 6 3 62. 5 96.6 29.4 93.3

    A 5 ω.1 92. 9 28.1 89. 2

    10 5:{.8 83.2 23.2 73. 6

    1 63.6 98.3 32.0 101.6

    3 62. 2 96.1 30.5 96.8 B

    5 61.8 95.5 28.8 91.4

    10 55.0 85.0 23.6 74.9

    A:水のみの洗浄

    B:プロテアーゼ洗浄(中性細菌プロテアーゼA.100PU/.t)

    洗浄条件:40土20C.3的子関

    (お〉

    書官5表 プロテアーゼ洗浄を箆した羊毛事長物の強力、仲

    産融列 強 力(勾)I比強力(第)11慨(鈎 !比伸度帰)

    50.9 1∞ q目M 44410169 11115曲a9 0 48.1 94. 'i

    47.0 92.3

    45.2 88.8

    一38. 7 76. 0

    49. 8 97.8

    47.5 9~ 3

    一44.3 87.0

    10 I 39.2 77.0 || 32.4 72. 6 A:水のみの洗浄

    B:プロテアーゼ洗浄(中性細菌プロテアーゼA.1∞PU/.O

    洗浄条件 :40土20C.ぬ分間

    つぎに入手L羊毛汚染布についても同織にプロテアーゼ

    洗浄が羊毛汚染布の強力,伸度lζおよlます影響について

    みると,水のみの洗浄の際にみられる機滅的作用と洗浄

    回数が汚染布の強力,伸度を?/,:しく低下させ,特IC羊毛

    たん白質Iζ対するプロテγーゼ作用の影響は全く館、めら

    れない。

    このようにプロテアーゼ洗浄においては絹たん白質お

    よび羊毛たん白質などの給品位の高い繊維状たん白質に

    対するプロテアーゼ作用はほとんど認められず,非結晶

    性のたん白質汚れIC!特異的に作用しうるものと思われ

    る。

    総括

    人乳で作製した汚染布を用いて,修業洗浄におけるプ

    ロテアーゼの基質特異性や,基本的な洗浄条件が洗浄効

    泉におよtます影響について基礎的な研究を鼠みた。

    1)各種繊維への人乳たん白質の付着量についてみる

    と.木綿,絹,羊毛などの銀水位の天然繊維では付着量

    が多く,アセテー ト,ナイ ロン,テト ロンの阪に付着量

    が低下する。

    2)織物へのたん白貨の付着置は織物自体の吸水性の

    大小IC影響され,特』ζ糸のより数が多く,糸密度の高い

    織物では付着盈が摺大する。

    3)人乳たん白質汚鋒布においては,牛乳カゼイン汚

    後布IC比し,水lζ対する溶解度金付民く,また室温放置日

  • - 74ー 被

    数lζ伴なうたん白質の溶解性も著しく低下し,かなり安

    定性の低い性質を示す。

    4)汚染布のたん白質汚れの付着状態についてみると

    光学顕微鏡下では一応均一な汚染状態を示すζ とが認め

    られるが,電子顕微鏡下では繊維の種類により付着状態

    にかなりの差異が認められ,必ずしも均一な付着状態を

    示していない。

    5)徴生物プロテアーゼによる人乳木綿汚疑布の洗浄

    においては一般に80%以上の比較的高い洗浄効率を示し,特tζアルカリ性細菌プロテアーゼおよび中性放線菌

    プロテアーゼなどの基質特異性の広いプロテアーゼを用

    いた場合にはすぐれた洗浄効果を示す。

    6)人乳木綿汚染布の洗浄においてはプロテアーゼに

    アミラーゼおよびリパーゼなどを配合するととにより,

    洗浄効果が高められる。

    7)洗浄液中の酵素活性はプロテアーゼの種類によっ

    て多少異なるが, 100PU/.e前後で, 人乳たん 白質汚

    れの除去率がほぼ平衡に達して,最高の洗浄効率を示す。

    8)人乳木綿汚染布のプロテアーゼ洗浄においては使

    用したプロテアーゼの pH,温度特性がそのまま洗浄効

    果にあらわれるが,一般に洗浄液の pHがアルカリ伎に

    なるほど人乳たん白質汚れは除去しやすくなる。

    fi[{ 学

    9)給,羊毛などのたん白質系繊維の人乳汚染布のプ

    ロテアーゼ洗浄においては絹たん白質および羊毛たん白

    質などの結晶性の高い繊維状たん白質に対するプロテア

    ーゼ作用はほとんど認められず,非結晶性の入朝したん白

    質汚れに特異的に作用するととが認められた。

    本稿を御校関頂いた本学被服学科奥山春彦教授lζ深甚

    の謝意を表する。

    文 献

    1)皆川 基:第1田被服義理学セミナー (日本家政学

    会)要旨,117 (1968)

    2)皆川 基 ・所康子・奥山春彦 :日本繊維製品消費

    科学会秋季研究発表要旨,12 (1967)

    3)皆川 基 ・重田美智子 .ijT康子・奥山容彦 ・藤弁

    富美子 :日本繊維製品消重量科学会誌, 10, 2, 8

    (1969)

    4)大後美保 ・庄司 光 :生活科学ハンドブック,朝倉

    書庖, 536 (1966)

    5)皆川 基 ・窪田美智子・奥山春彦 :日本繊維製品消

    費科学会誌, 11, 5, 13 (1970)

    6)斉藤道香 ・菅原珠子 ・皆川 基 :家政学雑誌, 16,

    1, 24 (1965)

    Summary

    Among the various kinds of blood stains on fabrics, such as, human, fish, quadrupeds and birds,

    the most difficult to remove are those of fish.

    ln the washing of fish blood stained fabrics, it was been found that she method in which a pre-

    soaking (two bath method) is performed for a long period (30 minutes to overnight) in order to allow

    the protease to act 00 the blood stains, is more effective than the method in which an enzyme comb-

    ined det疋rgnt(one bath method) is used. Especially effective is the method in which a pre-soaking is

    performed by an alkaline protease (pH9-11, room temperature to 650C). By this process the solubility

    and the degradation of the protein, causing the stains are increased.

    The pre-soaking precedes the main washing. ln this case protease is not used in the main washing,

    only a general detergeot is used.

    The addition of surface active agents, EDT A, and CMC to the prot回 sepre-soaking fluid greatly

    enhances the pre-soaking effect. AIso, it is necesary to select a temperature stable alkaline protease,

    and to immerse the fabric in the detergent solution for a long period.

    ( 26 )

    SKM_C454e16020109500_ページ_065SKM_C454e16020109500_ページ_066SKM_C454e16020109500_ページ_067SKM_C454e16020109500_ページ_068SKM_C454e16020109500_ページ_069SKM_C454e16020109500_ページ_070SKM_C454e16020109500_ページ_071SKM_C454e16020109500_ページ_072SKM_C454e16020109500_ページ_073SKM_C454e16020109500_ページ_074