A Consideration to Make Use of Sports Test Record...
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兵庫教育大学学校教育学研究, 2017, 第30巻, pp.127-131 127
ス ポーツ テス ト の記録 を走り 幅跳 びの学習に生かすための一考察- 長座体前屈 と50m 走、 立ち幅跳びの相関をふまえ た走り 幅跳びの日標記録の作成一
A Consideration to M ake Use of Sports Test Record for Learning of Long Jump : Creation of Running Long Bending, 50 m Running, Standing Wide
伊 藤 秀 郎* ITO Syuro
Jump Running
Targets from Long Seat Front Jumping Records
森 田 啓 之** MORITA Hiroyuki
近年、 運動 をす る児童 ・ 生徒と し ない児童 ・ 生従の2極化が進み、 学校の体育の授業以外では 「ほと ん ど」 ・ 「全 く 」 運
動 し ない児童 ・ 生徒が多 く い る こ と が明 らかに さ れてい る。 現在の子 ども たちには、 よ り 限ら れた場所 ・ 時間で効率 よ く
「運動」 ・ 「生活活動」 を行 う こ と が求めら れてお り 、 その点で柔軟性 を高める運動は他の運動よ り 場所や時間 を選ばず手
軽に行え る と いう 利点があ る。 本研究では、 小 ・ 中学校のス ポーツ テス ト の記録において長座体前屈の記録 と 立 ち幅跳び
の記録の相関関係について検討 ・ 考察 を行 っ た。 その結果、 長座体前屈 と 立 ち幅跳 びの記録には、 小学生では男女 と も
0.4以上、 中学生では男女 と も0.67以上 と いう 相関係数がみら れた。 そこ で、 長座体前屈の記録が どの程度あれば、 立 ち幅
跳 びで どの程度の記録が得 ら れるのかについて推測値 を得て、 さ ら にそこ か ら、 実際の授業で も使え る、 走り 幅跳びの目
標値 を算出 ( ノ モ グラ ムの作成) す るこ と がで き た。
キーワ ー ド : 長座体前屈 , 立 ち幅跳 び, 走り 幅跳び, スポーツ テ ス ト , ノ モ グラ ム
1 . 目的近年、 児童 ・ 生徒の生活環境や生活習慣の変化によ り 、
児童 ・ 生徒の運動習慣に変化が生 じ、 運動 をする児童 ・
生徒 と し ない児童 ・ 生徒の 2 極化が進んでおり 、 学校の
体育の授業以外では 「ほと んど」 ・ 「全 く 」 運動 し ない児
童 ・ 生徒が多 く い るこ と が明 ら かに さ れてい る (文部科
学省 : 『平成25年度 全国 ・ 運動能力、 運動習慣等調査
報告書』) 。 そこ で現在の子 ども たちには、 よ り 限ら れた
場所 ・ 時間で効率よ く 安全に 「運動」 ・ 「生活活動」 を行
う こ と が求めら れてお り 、 その点で柔軟性 を高める運動
は他の運動よ り 場所や時間 を選ばず安全かつ手軽に行え
る と い う 利点があ る。
著者らは以前に、 『児童期の長座体前屈 と 反復横跳び、
50m 走の関係につい て』 に おい て、 身体の柔軟性 と 反
復横跳 びお よ び50m 走のパ フ ォ ーマ ンス に相関関係が
あ るこ と を明 ら かに し た (伊藤 ・ 森田, 2015) 。 その中
で、 児童がよ り 明確な目標 を も っ て運動で き る よ う に、
どの程度の柔軟性があ れば どの程度の記録 (50m 走 ) が期待で き るのかノ モ グラ ムを作成 し た。
本研究は、 前回の研究 を路まえ た一連の流れに位置づ
いてい る (図 1 .) 。 「長座体前屈」 と 「立ち幅跳び」 の
記録の相関関係について考察 をおこ ない、 「長座体前屈」
の記録から類推 さ れる 「立ち幅跳び」 の記録と 、 前研究
で得 ら れた 「長座体前屈」 と 「50m 走」 の関係式 を基
に, 「長座体前屈」 の記録から期待で き る 「走り 幅跳び」
の記録 を得 ら れる ノ モ グラ ムを作成す る こ と を目的 と し
た。 こ れを授業等で用い る こ と で、 児童 ・ 生徒がよ り 明
確な目標 を も っ て、 効果的に体力 を伸ばす よ う にで き る
こ と を ねら い と し てい る c
2 . 方法本研究では、 小 ・ 中学校等のス ポーツ テ ス ト のデー タ
を活用す る。 ス ポーツ テス ト では、 次のよ う な項目が計
測 さ れており 、 小学 5 年生 (10-11歳児童) ・ 中学 2 年生 (13-14歳生徒) では、 全国の悉皆調査 と な っ てい る。
そ し て、 その結果は毎年文部科学省 (現在はスポーツ庁) から 「全国体力 ・ 運動能力、 運動習慣等調査報告書」 と
し て纏め ら れてい る。
ス ポーツ テス ト で測定す るのは、 ①長座体前屈 ・ ②反
復横跳 び ・ ③50m 走 ・ ④立 ち幅跳 び ・ ⑤上体お こ し ・
⑥20m シ ャ ト ルラ ン (中学校では20m シ ャ ト ルラ ンか
持久走の選択) ・ ⑦ ソ フ ト ボール投げ (中学校ではハ ン
ド ボール投げ) ・ ⑧握力の 8 項日 である。 こ れらの項日
によ り児童の運動能力 ・ 運動習慣が経年的に調査 さ れて
いる。 本研究では、 よ り 下半身の柔軟性 ( 建や筋) の影
響が記録と し て現れやすい ①長座体前屈の記録と 、 ④
立ち幅跳びの相関関係について明 らかにす る。 そ し て、
長座体前屈の記録から立ち幅跳びの推測値 を見出 し、 前
の研究で明 ら かに し た ③50m 走の記録 と 合 わせて、
走り 幅跳びの目標値 を算出する。
なお、 近年、 「月建コ ン プ ラ イ ア ンス」 と い う 観点か ら
運動のパ フ ォ ーマ ンス を指摘す る研究が行 なわれてい る c
月建コ ン プラ イ ア ンスが高い方が、 垂直跳 びや短距離走の
記録が良い、 と す る も のであ る (福永, 2010) 。 本研究
におい ては、 主に、 「月建」 や 「筋」 の柔軟性 を測 っ てい
る 「長座体前屈」 と その他の運動項目 と の関係に着目 し
* 堺市立向丘小学校 * * 兵庫教育大学大学院教科教育実践開発専攻生活 ・ 健康 ・ 情報系教育 コ ース 准教授 平成29年 6 月26 日受理
128
てい るが、 本研究では、 児童 ・ 生徒一人ひ
や 「筋」 の状態 を超音波画像診断な どはで
学校教育学研究, 2017, 第30巻
と り の
き ない
簡便かつ大規模に調査 さ れている 「長座体前屈」
「月建」
ので、
の測定
結果 を使用 し てい る。 も っ と も、 その測定結果が 「月建 コ
ン プ ラ イ ア ン ス」 を直 ち に反映 し て い る も の で は な い
(長座体前屈 では主にハムス ト リ ングと腰部の柔軟性 を
みてい る ) 。
・ 検討 1長座体前屈 と 立ち幅跳びの記録に相関関係が見 ら れる
のか どう かについ て検討 を行 っ た。 調査 1 では、 一つの
学校につい て、 調査 2 では、 よ り 正確な データ を得 る
めに、 全国のデー タ を用い て相関関係の検討 を行 つ
0 調査1大阪府下の A
男女別 に、 ス ポ
記録から散布図
線 を追加 し、 R る こ と で、 相関
市 a小学校の児童 ( 6 年生) にっ
ーツ テス ト の長座体前屈 と立ち幅跳
た
た
(、
、のび
を作成 し た。 さ ら にその散布図に近似直
2値 を求め、 ピ ア ソ ンの相関係 数 を求 め
関係を検討 し た。
O 調査 2 調査 1 では、 A 市の 1 校から得 ら れたデー タ で、 長座
体前屈 と その他の運動項目に相関関係 を調査 し たが、 よ
り一層、 研究の妥当性を増すために、 全国の小学 5 年生 ・
中学 2 年生を対象にし た、 文部科学省 : 「平成26年度
全国体力 ・ 運動能力、 運動習慣等調査報告書」 の都道府
県別平均 データから、 調査 1 と同 じ手法によ り 散布図 を
作成、 R 2値 を求め、 相関係数を求めた c
・検討 2さ ら に、 児童が目標設定を しやすいよ う 、 検討 1 で得 ら
れた結果に基づ き、 長座体前屈の記録から立ち幅跳びの
推測値を推測 し、 前回の研究で示 さ れた長座体前屈 と50 m 走の相関関係か ら 、 走 り 幅跳 びの日 標値 を算出す る
ための ノ モ グラ ムを作成す る こ と を試み
3 .
・ 結果
検言
O 調査
1
1
長座体前屈 と 反復横跳 び、
た 0
長座体前屈 と 50m 走の記
録の関連について男女別に調査 し た散布図 を以下に示す
スポーツテス ト
(長座体前屈 ・ 反復横跳び ・ 50m 走 ・ 立ち幅跳び ・ 上体おこ し
・ 20m シャ トルラ ン ・ ソ フ ト ボール投げ ・ 握力)
r - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - ,, l
図 1 , スポーツ テ ス ト を活用 し て目標値 を設定する研究の流れ
l l
l l
l l
l l
l l
l l
l l
l l
l l
l l
l l
l l
l l
l l
l l
1
(0-
電
) (
-
田
) (-m
J)) (
-)
スポーツ テ ス ト の記録 を走 り 幅跳 びの学習に生かす ための一考察
(図 2 .~ 図 3 .) 。 こ れらの結果は、 大阪府下の A 市 a小
学校 6 年生 (男子 : n = 60、 女子 : n = 56) のものであ
る (H27年 6 月測定)。
250 cm
200 cm
150 cm
100 cm
50 cm
0 cm0 om
立ち幅とび (6年男子) n=60
◆◆
y = 0.5727x + 150.03R2 = 0 0417
20 cm 40 cm 60 orr
◆ 立ち幅とび
線形 (立ち幅とび)
r = 0.2042
(長座体前屈)
図 2 . a 小学校 小学 6 年男子 長座体前屈と 立 ち幅跳
びの記録の散布図と相関 ( n = 60)
図 2 . の結果から、 6 年生男子児童では、 長座体前屈
の記録と立ち幅跳びの記録では、 相関係数は r = 0.2042 であ っ た (無相関検定では有意ではなかっ た) 。
m
〇
m
m
m
m
m
m
m
m
m
m
mo
0
C
C
C
0
C
C
0
0
C
0
0
0
0
0
0
0
0
0
0
0
00
8
6
4
2
0
8
6
4
22
1
1
1
1
-
立ち幅とび (6年女子) n=56
◆
y = 0.5385x + 133.64R2 = 0 0327
20 om 40 om 60 om
◆ 立ち幅とび- 線形 (立ち幅とび)
r = 0.1808
(長座体前屈)
図 3 . a 小学校 小学 6 年女子 長座体前屈と 立 ち幅跳
びの記録の散布図と 相関 ( n = 56)
図 3 . の結果から、 6 年生女子児童では、 長座体前屈
の記録と立ち幅跳びの記録では、 相関係数は r = 0.1808 であ っ た (無相関検定では有意ではなかっ た) 。
O調査2 調査 1 は小規模な調査である ため、 よ り 一層、 研究の
妥当性を増すために、 文部科学省 : 「平成26年度 全国
体力 ・ 運動能力、 運動習慣等調査報告書」 の都道府県別
160
158
156
154
152
150
148
146 30 31
立ち幅跳び (小学5年男子 )H26
・
y = 1 .053x + 117.4R = 0.2076
・ ・ ・ ・
・
・
32
・
・
33
r = 0.4556 34 35
(長座体前屈) 36
(cm)
図 4 . 小学 5 年男子 長座体前屈と立 ち幅跳びの記録の
散布図と 相関
(文部科学省 : 『平成26年度全国体力 ・ 運動能力、 運動習慣等調査』 よ り作成)
(imJ))
(-
田
、-_ / (u1o)
(-
重
) (u1o)
(-
田
)
129
平均 データ から、 調査1 と同 じ手法によ り 散布図 を作成、
R 2値 を求め、 相関係数 を求めた。 以下にその結果 を示
す (図 4 .~ 図 7 .) 。 なお、 こ のデータは、 先に も述べた
と おり 、 全国の小学 5 年生 (10-11歳児童 男子 : n = 550,573 ・ 女子 : n= 526,222) と中学2 年生 (13-14歳
男子 : n= 513,440 ・ 女子 : n= 486,975) の悉皆調査であ
る。 大規模な調査であれば、 生ま れ月の影響 も受けに く
いものと判断し た (小学 5 年男女 : 図 4 .、 図 5 .、 中学
2 年男女 : 図 6 .、 図 7 .)。
小学 5 年生では、 相関係数が男女共 に0.4以上、 中学
・4, 2
5
5
1
1
150
148
146
144
142
140 34
立ち幅跳び (小学5年女子)H26
y = 1.3597x + 94.766 R2 = 0 2872
・
・
35
・
36
・ ・・
37 38 39
r = 0.5359 (長座体前屈) 40
(cm) 図 5 . 小学 5 年女子 長座体前屈と立 ち幅跳びの記録の
散布図と 相関
(文部科学省 : 『平成26年度全国体力 ・ 運動能力、 運動習慣等
調査』 よ り作成)
204
202
200
198
196
194
192
190
188
186 39
立ち幅跳び ( 中学男子) H26
y = 1.422x + 133.2 R2 = 05235 ・
・
40 41 42
r 43 44
0.7235 45 46 47
(長座体前屈) 48
(cm)
図 6 . 中学 2 年男子 長座体前屈と立 ち幅跳びの記録の
散布図と相関
(文部科学省 : 『平成26年度全国体力 ・ 運動能力、 運動習慣等
調査』 より作成)
176
174
172
170
168
166
164
162
16C
158 41
立ち幅跳び ( 中学女子) H26
42 43
・
44 45
r = 0.7034 46 47 48
(長座体前屈) 49
(cm) 図 7 . 中学 2 年女子 長座体前屈と立 ち幅跳びの記録の
散布図と 相関
(文部科学省 : 『平成26年度全国体力 ・ 運動能力、 運動習慣等
調査』 よ り作成)
130 学校教育学研究, 2017, 第30巻
生では0.7以上 と い う 高い値 にな っ てい る。 調査 1 よ り
も相関係数が大き く 、 長座体前屈 と立ち幅跳びの記録に
は、 相関関係があ る と 考え ら れる。
中学生の相関係数が高い値である こ と から、 平成25年
度の 『全国 ・ 運動能力、 運動習慣等調査報告書』 を基に
同様の調査 を行 っ た と こ ろ、 小学男子 r = 0.4329、 小学
女子r= 0.5047、 中学男子r= 0.6844、 中学女子r= 0.6779、
と いう 同様の傾向 を示す結果を得た。 小学生よ り も中学
生の方が高い相関係数を示 し てお り 、 原因ははっ き り し
ないが、 成長期には様々な身体の特性や 「 コ ツ」 のよ、つ
な因子が相俟つて記録を伸ばし ているこ と が推察 さ れる。
・ 検討 2 検討 1 の調査 2 で長座体前屈 と立ち幅跳びの記録の間
に相関関係がみら れたので、 前回の研究で示 さ れた, 長
座体前屈 と50m 走の間の相関関係 と併せて、 長座体前
屈の記録から 、 走り 幅跳びの目標値 を算出す る こ と がで
き た。 考察4-2. に詳 し く 記述する。
4 . 考察4-1 . 長座体前屈と立ち幅跳びの記録の相関関係について
図 1 .~ 図 2 . (調査 1 ) の調査結果はデータが少な く 、
長座体前屈の記録も立ち幅跳びの記録も、 良い記録を持
つ数名の児童の結果に大き く 結果が左右 さ れてい るこ と
が考え ら れる。 なお、 人数が少 ない デー タ では、 児童の
年齢 (生まれ月) の影響 も受けやすい ものと考え ら れる。
しか し、 調査 1 に対 し て、 調査 2 で行 っ た、 全国の小
学5年生 (男子 : n = 550,573 ・ 女子 : 526,222) , 中学2 年生 (男子 : n= 513,440 ・ 女子 : n= 486,975) では, はっ
き り と し た相関関係が表れてい る (小学生 r> 0.4、 中学
生 r> 0.67 :こ れ ら の
平成25年度の結果を加味)。
こ と から、 長座体前屈 と立ち幅跳びの記録に
相関関係が認めら れる と いえ る。 なお、 小学生よ り も中
学生の方が高い相関係数 を示 し てい る原因ははっ き り せ
ず、 成長期におけ る運動生理学や 「 コ ツ (技能ポイ ン ト )」の修得 と い っ た観点からの考察が必要である と 思われる。
運動生理学の面から言えば、
①児童期お よ び生徒期には各種運動器官が統合 さ れ、
運動に適 し た体はよ り 一層、 運動に適 し た体に深化
し てい く 。
②筋が柔ら かい と 、 そ う で ない場合に比べ、 体 を動か
す時に弾力性が有利に働 く 。 また、 同 じ動き をする
時のエ ネルギー消費が少な く て済むこ と で、 効率よ
く 他の必要 な部分 にエ ネ ルギー を尸由け ら れる。 こ の
こ と は、 体が大き く な るほ ど顕著に現れる。
③長座体前屈 と立ち幅跳びの記録が、 相関関係だけで
な く 因果関係で も あ る と すれば、 柔軟性は、 他の運
動能力の獲得に大き く 影響 し てい る と考え ら れる。
その最適期が中学生 く ら いで あ る と 思われる。
と い っ た仮説が成 り 立つ。
4-2. 長座体前屈の記録 から推測 さ れる走 り 幅跳びの目
標値について
さ ら に、 児童が目標設定 を しやすい よ う 、 3 . の検討
1 で得 ら れた結果に基づ き、 前回の研究で示 さ れた, 長
座体前屈 と50m 走の間の相関 と 併せて、 長座体前屈の
記録から立ち幅跳びの推測値 を求め、 走り 幅跳びの日標
値 を算出 し、 走り 幅跳びの目標値 を算出する ための、 簡
便 な ノ モ グラ ムを作成す る こ と を試みた。 目標を持 っ て
運動するこ とで よ り 一層の運動の効果を期待で き るため
であ る。 こ こ では実際に学校の授業な どで日標値と し て
と ら え る事がで き るこ と を意識 し てい る。 児童 ・ 生徒 を
取 り 巻 く 環境は個人によ っ て異な り 、 ト レ ーニ ン グ方法
も様々であるが、 仮に長座体前屈で 「 こ れく らい」 の記
録 を示 し てい る な ら ば、 立 ち幅跳びで、 「 こ れ く ら い」
の記録を日標にで き る と明示す るこ と を意識 し てい る。
長座体前屈の記録と 、 立ち幅跳びの記録は相関関係であ
り 、 因果関係ではないが、 意識性の原則から、 数値目標
にあ る根拠あ る目安 を設け る こ と には意味があ る と 考え
てい る。 ま た、 本研究では、 柔軟性 と 他の運動種日の関
係か ら考察 を進めてい る ため、 筋力 の影響は考え ら れて
い ない点には注意が必要であ る。
まず、 小学 5 年生につい ては以下のよ う に考え る こ と
がで き る。
・ 小学 5 年生男子 ( 高学年)
図 4 . よ り , A= (長座体前屈の記録) , B= (立ち幅跳
びの推測値) と する と、 B= 1.053 X A十117.4………①
と こ ろで, 平成26年度の研究(伊藤 ・ 森田, 2015) より
c = (50m 走の推測値) と する と 、 C= -0.039 XA十10.7 ………………………………………………………②
であ る。
さ て , 一般に
(走り幅跳びの目標値) = { (立ち幅跳びの記録) X1 5} - { (50m 走の記録) X25} 十280 …………………………③
と いわれる。
よ っ て , ③式 に , ①式およ び②式 を代入す る と ,D= (走 り 幅跳びの目標値 ) と し て、 D= (B X 1 5) - (C X25) 十280………………………………………………④
と な る。
よ っ て , ④式 を ま と める と ,D (走り幅跳びの日標値) = { (1.053XA十117.4) X15}- { ( -0.039 XA十10.7) X25} 十280= (1.58XA十176.1) - ( 0.975 XA十267.5) 十280 = 1.58 XA十176.1 十0.975 XA-267.5十280 = (1.58十0.975) XA十176.1 267.5十280= 2.555 X A (長座体前屈の記録) 十188.6 ……………⑤
と な る。
平成27年度, 小学校 5 年生男子の長座体前屈の全国平
均は32.87cm であるので , ⑤式に代入する と ,2.555X32.87十188.6= 272.58 (cm) となる。平成27年度, 小学校 5 年生男子の50m 走の全国平均
は9.38秒, 立ち幅跳びの平均は151.71cm であるので, ④式 に ダイ レ ク ト に代入す る と ,151.71 X15 9.38 X25 十280= 273.065 (cm)
と な
筋力の
り ,
ス ポーツ テ ス ト の記録 を走 り 幅跳 びの学習に生かす ための一考察
かな り 妥当性のあ る数値日標と な る。 但 し , 影響 を考慮 し ていないこ と に注意が必要であ る c
同様に、 図 5 .よ り 導 く と、
小学 5 年生女子 (走 り幅跳びの目標値)= 3.09X (長座体前屈の記録) 十142.149
と こ ろで、 平成27年度、 中学 2 年生の50m の記録は、
男子 (50m走の記録) = -0.0355 x (長座体前屈の記録) 十9.551 (R2= 0.4974, r= 0.7053)女子 (50m走の記録) = 0.0408 x (長座体前屈の記録) 十10.709 (R2= 0.3654, r= 0.6045) で あ る。 よ っ て
中学 2 年生男子 (走 り幅跳びの目標値)= 3.0205X (長座体前屈の記録) 十241.025
・ 中学 2 年生女子 (走り幅跳びの目標値)= 3.0938X (長座体前屈の記録) 十169.01
と 考え る こ と がで き る。
こ れら上記の算出式 ( ノ モ グラ ム) によ り 、 児童 ・ 生
徒にと っ ての日安がで き たと 考え る。 こ のよ う に他の運
動 と 関連のあ る目標 をは っ き り さ せる こ と で、 場所や時
間
チ
にあま り と ら われず、 比較的取 り 組みやすい ス ト レ ツ
な どの柔軟運動に も一層、 意識性の原則 を取り 入れ
運動が可能にな る と考え ら れる。
5 . ま と め
本研究では、 児童 ・ 生徒の長座体前屈の記録と 、
た
立ち
幅跳びの記録に相関関係がある こ と が示 さ れた。 特に、
理由は明 ら かにで き なかっ た も のの、 小学生よ り も中学
生において相関係数が高 く 、 r> 0.67 と な るこ と が分かっ
た。 も ち ろ ん、 本研究で明 ら かにな っ たのは相関関係で
あり 、 因果関係ではない。 しか し、 長座体前屈で測 ら れ
る柔軟性は児童 ・ 生徒の運動パ フ ォ ーマ ンス に何 ら かの
影響 をおよぼ し てい る可能性は大き い と 考え ら れる。
さ ら に、 長座体前屈の記録から立ち幅跳び ・ 走り 幅跳
びのノ モ グラ ムを授業等で も生かせる よ う に作成 し たこ
と によ り 、 児童 ・ 生徒 を対象 と し た目標値 を明 ら かにす
る こ と がで き た。 こ のこ と によ り 、 効果的で限ら れた場
所で も 安全 に行え る、 ス ト レ ッ チ な どの柔軟運動 に も、
よ り 一層意識性の原則 を取り 入れた運動が可能にな り 、
様々な運動の目標設定が しやす く な る (心がけやす く な
る ) も のと 考え ら れる。
< 引用文献
・
・
藤田育郎
・ 参考文献>, 池田延行. 体育授業におけ る
の手法に関する研究一小学校高学年の走り
対象と
2011. 樋口
ツ ・
樋口
ツ ・
伊
し て一 . 体育 ・ ス ポーツ科学研究,
目標設定
高跳びを
第11号, 国士舘大学体育 ・ ス ポーツ科学学会,
満 , 福永哲夫. 放送大学大学院教材
35-39 . ス ポ ー
健康科学. 2010年 2 月20日, 第 2 刷. pp52-58.満 , 福永哲夫. 放送大学大学院教材 ス ポー
健康科学. 2010年 2 月20日, 第2 刷. pp51-52. 藤秀郎 , 森田啓之. 児童期の長座体前屈 と反復横
・
・
・
・
・
跳 び、
目標 を
校教育
50m 走の関係 につい て 一 児童がよ
131
り 明確な
も っ て運動でき る よ う に . 兵庫教育大学学
学研究 , 第28巻, 101-106.文部科学省, 平成25年度
2015, 兵庫教育大学 ,
全国体力 ・ 運動能力、
動習慣等調査報告書. 2013, 11.文部科学省, 平成26年度 全国体力 ・ 運動能力、
動習慣等調査報告書. 2014, 11.堺市教育委員会, 堺市初等教育研究会体育部会.
PP
運
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