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様式9 アジア・アフリカ学術基盤形成事業 平成24年度 実施報告書 1.拠点機関 日本側拠点機関: 筑波大学北アフリカ研究センター (チュニジア)拠点機関: スファックス大学 ( ア ル ジ ェ リ ア )拠 点 機 関: ホウアリブーメディエン科学技術大学 (モロッコ)拠点機関: カディアヤド大学 (エジプト)拠点機関: カイロ大学 2.研究交流課題名 (和文):北アフリカ有用植物の高度利用による地域開発を目指した文理融合型 学術基盤形成 (交流分野:開発経済学、宗教学、文化人類学、文学、バイオサ イエンス、食品工学、生態学) (英文): Establishment of Integrative Research Base by Humanities and Sciences on Valorization of Useful Plants for Regional Development in North Africa (交流分野:Development Economics, Religious Studies, Cultural Anthropology, Literature, Bioscience, Food Science, Ecology研究交流課題に係るホームページ:http://www.arena.tsukuba.ac.jp/ 3.採用期間 平成22年4月1日~平成25年3月31日 (3年度目) 4.実施体制 日本側実施組織 拠点機関:筑波大学北アフリカ研究センター 実施組織代表者(所属部局・職・氏名):北アフリカ研究センター・センター長・中嶋 光敏 コーディネーター(所属部局・職・氏名):北アフリカ研究センター・助教・柏木 健一 協力機関:なし 事務組織:北アフリカ研究センター事務室 相手国側実施組織(拠点機関名・協力機関名は、和英併記願います。) (1)国(地域)名:チュニジア共和国 拠点機関:(英文)Sfax University (和文)スファックス大学

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アジア・アフリカ学術基盤形成事業 平成24年度 実施報告書

1.拠点機関

日 本 側 拠 点 機 関 : 筑波大学北アフリカ研究センター ( チ ュ ニ ジ ア ) 拠 点 機 関: スファックス大学

( ア ル ジ ェ リ ア ) 拠 点 機 関: ホウアリブーメディエン科学技術大学 ( モ ロ ッ コ ) 拠 点 機 関: カディアヤド大学 ( エ ジ プ ト ) 拠 点 機 関: カイロ大学

2.研究交流課題名

(和文):北アフリカ有用植物の高度利用による地域開発を目指した文理融合型 学術基盤形成 (交流分野:開発経済学、宗教学、文化人類学、文学、バイオサ

イエンス、食品工学、生態学) (英文):Establishment of Integrative Research Base by Humanities and Sciences on Valorization of

Useful Plants for Regional Development in North Africa

(交流分野:Development Economics, Religious Studies, Cultural Anthropology,

Literature, Bioscience, Food Science, Ecology)

研究交流課題に係るホームページ:http://www.arena.tsukuba.ac.jp/

3.採用期間 平成22年4月1日~平成25年3月31日 (3年度目)

4.実施体制 日本側実施組織 拠点機関:筑波大学北アフリカ研究センター 実施組織代表者(所属部局・職・氏名):北アフリカ研究センター・センター長・中嶋 光敏 コーディネーター(所属部局・職・氏名):北アフリカ研究センター・助教・柏木 健一 協力機関:なし 事務組織:北アフリカ研究センター事務室 相手国側実施組織(拠点機関名・協力機関名は、和英併記願います。) (1)国(地域)名:チュニジア共和国 拠点機関:(英文)Sfax University

(和文)スファックス大学

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コーディネーター(所属部局・職・氏名):(英文)National Institute of Environmental Science,

Professor,

Hamed Ben Dhia

(2)国(地域)名:アルジェリア民主人民共和国 拠点機関:(英文)Houari Boumedine University

(和文)ホウアリブーメディエン科学技術大学

コーディネーター(所属部局・職・氏名):(英文)Headquarters, President and Professor,

Benali Benzaghou

(3)国(地域)名:モロッコ王国 拠点機関:(英文)University of Cadi Ayyad

(和文)カディアヤド大学 コーディネーター(所属部局・職・氏名):(英文)Faculty of Agricultural Sciences, Professor,

Abdellatif Hafidi

(4)国(地域)名:エジプト共和国 拠点機関:(英文)Cairo University

(和文)カイロ大学 コーディネーター(所属部局・職・氏名):(英文)Faculty of Agriculture, Professor,

Hany El-Shemy

5.全期間を通じた研究交流目標 本研究交流の日本側拠点機関である筑波大学北アフリカ研究センターは、北アフリカ地

域を地中海沿岸から半乾燥、乾燥地帯へと変化する高い乾燥傾度に適応した貴重かつユニ

ークな生物資源の宝庫として重視し、北アフリカ在来の有用植物を持続的発展に有効利用

する多角的研究を推進してきた。同センターでは、オリーブ、アロマ植物等の北アフリカ

原産の有用植物が持つ機能性の解析によって、食品、化粧品、医療品等の産業育成につな

がるシーズを生命科学の研究者が中心となって分析してきた。 本研究交流では、北アフリカ地域固有の産業化シーズを高度利用することによって、地

域に埋め込まれた伝統・文化、イスラームの人間観・世界観と整合的な開発、地域開発か

らイスラーム社会の持続的発展と北アフリカ地域の安定を導くメカニズムの探求を研究課

題の軸とし、人文社会科学分野の研究者が主導して文理融合型研究交流を展開する。 特に、産業化シーズ開発と北アフリカの伝統・文化との整合性、シーズ開発技術の地域

社会への定着性・持続可能性を多面的に解析し、①文系主導による共同研究の実施、②文

理融合研究の素養を持つ若手研究者の派遣・招聘、③共同研究の成果を報告する文理融合

型国際セミナー開催を通し、若手研究者が主導して北アフリカ総合研究の基盤を形成する。 これにより、高度の専門性と文理融合研究の素養、専門性の高度化に必要な俯瞰力・実践

力・構想力を持つ若手研究者の育成を図る。また、筑波大学が平成 21 年度に採択された国

際化拠点整備事業(グローバル 30)が平成 23 年度より「大学の国際化のためのネットワ

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ーク形成推進事業」として強化・発展されるのに伴い、同事業とも連動して、北アフリカ

と日本をつなぐ教育・研究・知的国際協力のネットワークを完成させる。 6.平成24年度研究交流目標 本研究交流では、共同研究の実施およびセミナーの開催によって、北アフリカ地域を共

通のフィールドとした文理融合型研究の基盤を発展させることを平成 24年度の目標とした。

具体的には、以下①-③を同年度の目標に据えた。

①研究協力体制の構築:過去 2 年間における研究交流により、協力体制はほぼ構築できて

いる。研究課題や交流相手国によって相違はあるが、学会、シンポジウム等における共

同研究の成果報告は実現できている。平成 24年度では、本研究交流によるセミナーに加

え、国際学会、シンポジウム等において共同研究の成果を報告するとともに、共著論文

刊行等を目指して、協力体制をより実質的に機能させることを目標とした。

②学術的観点:昨年度実施した共同研究においても、課題ごともしくは二国間の枠組の域

を超えることは困難であったが、平成 24年度は、課題横断的、多国間の枠組に共同研究

の成果を共有・拡大し、より融合的研究成果を生み出すことを目指した。また、川上の

伝承情報や生育状況研究から川下のマーケティングや市場開拓研究までの研究を融合し

た有用植物の高度有効利用のモデルを構築することを目指した。特に、平成 24年度末に

発行する報告論文集では、個別の課題を融合させた研究成果を生むことを目指した。

③若手研究者養成:昨年度に引き続き、若手研究者が事業実施の主体となり、共同研究・

セミナー開催の主導的役割を果たすことにより、自らも実践的人材育成を展開した。ま

た、若手研究者の招聘を積極的に行い、分野融合的視角から共同研究を実質的に進めた。

これらにより、若手研究者主導による文理融合研究の素養の育成と醸成を図った。

(a)共同研究の実施:北アフリカ諸国の研究者と乾燥地有用植物を活用した持続的発展モ

デルの構築を共通の到達目標として、共同研究を引き続き展開した。また、その実施の

ために、北アフリカの拠点機関の研究者を日本に招聘し、日本人の研究者を拠点機関に

派遣し、若手研究者がイニシアティブをとって共同研究を開始すると同時に、文理融合

的素養を持つ人材の育成を図った。

(b)セミナー等の開催:北アフリカ諸国から招聘した若手研究者が中心となり、筑波大学

北アフリカ研究センターにてセミナーを開催し、共同研究の成果を発表した。平成 23 年

度は、課題横断的かつ多国間の枠組にセミナーを拡張したが、最終年度は、本研究交流

の成果を多国間・多分野間で総括する。これにより、日本国内において、北アフリカ有

用植物の研究に関するネットワークと基盤を強化・発展させた。

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7.平成24年度研究交流成果 本年度で終了する本事業では、共同研究 5 件を実施し、セミナーを 1 件開催した。共同

研究実施のために、モロッコ、エジプトおよびチュニジアに、本事業経費によるものだけ

でも計延べ 6 人の日本人研究者を計延べ 70 日派遣した。また、交流相手国であるチュニジ

ア、エジプトおよびモロッコから計延べ 7 人研究者を延べ 152 日招聘した。これにより、

研究課題によって達成状況に相違があるものの、共同研究を展開させた。また、多分野・

多国間の枠組でモロッコ、チュニジア、エジプトとのセミナーを開催した。以下のとおり、

目標達成状況を具体的に述べることにする。

7-1 研究協力体制の構築状況

相手国側拠点機関と締結した国際交流協定を基に、本事業で共同研究とセミナーを実施

することにより、協力体制を強化し、学術基盤を確立した。特に、モロッコとはハッサン

II 世大学、エジプトとはカイロ大学との協力体制が更に強化された。ただし、アルジェリ

アについては、平成 24年 5月にシンポジウムを共同開催したが、翌年 1月における治安情

勢の悪化に鑑み、現地調査を延期せざるを得なかった。また、共同研究の成果を、国際学

会、シンポジウム等において報告することができた。現地調査型研究課題においては、相

手国からは、調査許可取得、調査同行、データ収集、解析、解釈、論文作成等によって調

査実施の貢献があった。日本側からは、調査実施、調査結果解析、論文作成において貢献

した。一方、実験型研究課題では主として、相手国からは有用植物資源のサンプル入手、

実験に必要な情報、データ等の提供および筑波大学での実験実施、論文作成による貢献が

あり、日本側からは、実験計画立案・決定、実験スペース、機器、試薬等の提供を含めた

実験の実施、実験結果解析によって貢献した。本研究交流によるセミナーに加え、国際学

会、シンポジウム等において共同研究の成果を報告するとともに、共著論文刊行等を目指

して、協力体制をより実質的に機能させ、確立することができた。

7-2 学術面の成果

平成 24 年度に相手国研究者と実施した共同調査・解析によって、北アフリカ地域の広範

にわたって自生する薬用・アロマ植物やモロッコ特有のアルガンについても文理融合のア

プローチから分析を展開することができ、調査・研究対象を拡大することができた。

伝統的植物の使用法や民間伝承についての調査研究では、エジプトとチュニジアに自生

する多くの伝統的植物に関して、植物体の利用部位に関する伝統的使用方法や服用方法(抽

出方法、服用量・回数)、健康面・医療面での伝統的効用、イスラームや民間儀礼、宗教行

事における意味や使用法に関する情報が広範に得られた。また、かかる伝統的植物の薬効

は、バイオアッセイ(生理活性機能評価法)による機能性解析に大きなヒントを与え、人

文科学と生命環境科学の融合的アプローチが実現された。

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生理活性機能の評価研究においては、エジプト産の有用植物の抽出物について、バイオ

アッセイを駆使してその機能性を解析した。抗酸化性と総ポリフェノール含量の測定をは

じめ、脂肪細胞の分化促進効果や脂肪細胞分化を調節する重要遺伝子の特定、その分子レ

ベルでの作用メカニズムを解析した。他方で、エジプト原産のカモミール、タイムなどか

ら抽出した 13 種類のエッセンシャルオイルについて、ヒト腸管上皮細胞にて細胞内 ATP 生

産促進効果や抗腫瘍抑制効果があることを明らかにした。また、モロッコ原産のアルガン

オイル成分の美白効果について、機能性の分子レベルでの作用メカニズムの解析を行った。

これらの分析結果は、論文にとりまとめた。

モロッコのアルガンについては、食薬資源植物の持続的利用研究において、モロッコ特

有の資源植物であるアルガン林の生育環境、アルガン林に関する研究の現状、アルガン実・

油の利用等について情報を収集し、アルガン林の野外調査を実施した。特に、アルガンの

生育状況を定量的・定性的に把握し、生育に関係する土壌物理性、土壌化学性、気象条件、

人為的影響などの環境因子との関係を解析し、その地域特性を把握した。これにより、種

子発芽やクローン定着の最適条件を探索し、活着率の高い稚樹の育林技術開発や現在は形

態学的分類のみであるが、アルガン天然林の遺伝的多様性や地域間の遺伝的違いを分子レ

ベルで把握する課題も導き出された。 また、先端技術を応用した高付加価値化製品製造システム開発研究において、アルガン

のサンプルを入手し、アルガン油の効率的抽出方法開発と搾油残渣の有効利用のための成

分分析を行った。特に、アルガンの搾油残渣が家畜の飼料や燃料等にしか利用されていな

い現状に対して、残渣の成分分析を実施し、日本の先端的発酵技術を用いてアルガン醤油

を製造する研究課題を導き出した。また、美白効果等の機能性エビデンスが実証されたア

ルガン油の製造、アルガン実からの油の効率的抽出方法、有効成分の分離精製、搾油残渣

の高度利用など、アルガン実・油の高度利用システム開発における課題を精査した。

他方、アルガン農家のアルガン実の生産基盤、アルガン油精製女性協同組合の生産基盤

調査、精油技術について現地調査を実施し、個票データを収集した。収集した個票データ

を用い、アルガン農家のリスク分析と費用便益分析を実施し、降雨量の変動と土壌劣化に

よるアルガン実収量の変動が最も高いリスクを持つが、近代的加工設備導入がリスクを軽

減し、費用便益面でも実現可能であることを検証した。また、収集したアルガンオイル精

製女性協同組合の個票データを用いて生産性と効率性を解析したところ、範囲の経済が働

く可能性が示唆され、経営の多角化が重要との開発の方向性を得た。このように、現地調

査によって、アルガンの生育環境や伝統的利用法、オイルの加工技術水準、精油能力、生

産性が明らかになり、アルガンの伝統、生育・生産基盤解析、新規機能性解析、加工技術

開発、製品化による高度化とスケールアップというアルガンを軸とした一連の融合研究を

展開することができた。

他方、チュニジアをはじめとする北アフリカの有用植物としてオリーブに着目し、新規

機能性が発見されているオリーブオイルに関し、同製品を精製する地場産業の生産性・輸

出競争力・新製品開発能力を分析し、他方で同新製品の日本における潜在的需要を分析し

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た。チュニジアにおけるオリーブ農家の生産基盤を調査する一方で、また、チュニジア産

オリーブオイルの機能性を含む製品および生産者情報が日本人の消費行動や嗜好に与える

影響を分析し、機能成分を含むオリーブオイルの高付加価値化について分析を展開した。

チュニジアのオリーブ農家に関する生産面の分析においては、労働者の熟練度に加えて、

生産者の知識・経験が生産技術改善の重要な要因であるが、灌漑技術導入については、最

良慣行(ベスト・プラクティス)が実現できていないことが明らかとなった。また、オリ

ーブ油の日本における消費面の分析では、機能性情報、原産地ラベル表示、生産地情報提

供のインパクトが欧州産のオリーブ油に比べて、日本人消費者の支払意欲を有意に増加さ

せることが明らかとなり、新市場を拓く要因となりうることが示唆された。

以上のように、北アフリカの食薬植物を広範に探査しつつ、オリーブやアルガンを軸と

して文理融合による研究を展開し、北アフリカにおける伝承医療・食文化の分析、食薬資

源の生育・生産環境の分析、機能性と経済性の分析からなる多面的解析を実現できた。特

に、北アフリカ固有の伝統的植物資源が持つ民間伝承レベルの効能・機能について情報を

収集し、その伝承レベルの機能性情報をバイオアッセイによって分子レベルでの科学的エ

ビデンスを加え、新規機能性と加工技術開発によって伝統的植物資源の高付加価値化を図

り、伝統的地場産業の再生・新製品開発能力向上・安定的供給基盤確立のための条件を解

析した。このような多面的解析アプローチをもって、有用植物の高度利用モデルを構築し

た。

7-3 若手研究者養成

本事業では、若手研究者が共同研究を主導し、セミナー開催でも主体的役割を果たすこ

とによって、自ら実践的人材育成を展開した。特に、現地調査においては、文理融合チー

ムで日本人の若手研究者を北アフリカ諸国に派遣し、若手研究者がイニシアティブをとっ

て共同調査を実施した。また、北アフリカ諸国の若手研究者を日本に招聘し、日・北アフ

リカの若手研究者が共同で実験を行った。データ解析、シンポジウム等での成果報告、論

文執筆なども若手研究者が実質的に貢献した。また、日本、北アフリカともに助教クラス

の若手研究者が文理融合の枠組みでセミナー開催を主導した。これらにより、若手研究者

主導による文理融合研究の素養の育成と醸成を図ることができ、他分野の研究方法や着眼

点、研究結果等を生かして、自らの専門分野を深化・発展させ、新しい研究分野を切り拓

く素養と能力が向上した。

7-4 社会貢献

本事業では、北アフリカの伝統的植物資源の広範なスクリーニングからコアの分析対象

をオリーブやアルガンに絞り込み、文理融合アプローチによって、地域開発を目指した高

度利用モデル構築に取り組んだ。特に、理系分野の研究者が特定した伝統的植物の機能性

情報を人文科学的研究実施の過程で北アフリカ現地に還元した。一方、理系分野の研究者

が現地社会のニーズと技術水準を把握しつつ、伝統的植物資源の機能性解析と加工技術に

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関する先端的研究を共同研究として実施した。筑波大学に若手研究者を招聘した際には、

バイオアッセイや加工技術に関する共同実験を実施し、先端的研究技術の移転につながっ

た。これにより、北アフリカ相手国への研究技術協力と研究能力の向上という知的国際貢

献も展開できた。また、高機能性を持つオリーブ油やアルガン油の製品開発の観点から、

チュニジアのオリーブ農家やモロッコのアルガン油精製女性協同組合が新規機能性やそれ

を基にした新製品開発や新市場開拓に関する情報を得ることができ、社会貢献につながっ

た。また、北アフリカの地域開発を目指した本研究課題の実施を通して、北アフリカ地域

やイスラーム独自の生活習慣、伝統文化、住民意識などの理解を深めることができ、相手

国と効果的な協力関係が強化された。

7-5 今後の課題・問題点

①研究課題や交流相手国によって相違はあるが、国際学会、シンポジウム等において、共

同研究の成果を報告することができた。引き続き、国際ジャーナルでの共著論文刊行に関

して、協力体制をより機能させることが課題である。

②平成 24年度に実施した共同研究においても、二国間の枠組を超えた成果を生み出すこと

は、依然として困難であった。北アフリカの有用植物を軸に、多国間の枠組に共同研究の

成果を共有・拡大することが課題である。

③有用植物の高度有効利用モデル構築については、川上の伝承情報や生育状況研究から川

下のマーケティングや市場開拓研究までの研究を融合させることが重要である。本事業で

は、5つの共同研究を展開し、個々に成果は得られたが、個別の課題を融合させた融合的成

果を生み出すことは依然として大きな課題である。

7-6 本研究交流事業により発表された論文

平成24年度論文総数 18本

相手国参加研究者との共著 17本

8.平成24年度研究交流実績概要

8-1 共同研究

共同研究の実施:北アフリカ地域における乾燥地有用植物を活用した持続的発展モデル

の構築を共通の到達目標として、北アフリカ有用植物探査、北アフリカ有用植物機能性解

析および北アフリカ有用植物高度利用の 3 分野に取り組むために、チュニジア、モロッコ

およびエジプトの研究者と以下の共同研究を実施した。

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①共同研究「北アフリカの伝統的植物の近代的価値に関する調査研究(R-1)」の実施のた

めに、エジプトとチュニジアに研究者を派遣した。本研究課題では、チュニジア(ベン・

アルース、ビゼルト、メドニン)およびエジプト(ミニヤ)を主な調査地とし、現地の農

業従事者や薬草商等、薬用・アロマ植物に対する深い知識を持つと思われる在野の人々に

対し、調査地における食薬資源植物の民衆的利用法に関するインタビューと参与観察を行

った。その結果、下記のような情報を得ることができた。

以下、具体例として、植物のラテン名(括弧内は効能)の順に挙げると、チュニジアで

は、Capparis spinosa(抗頭痛、抗骨内寄生虫)、Peganum harmala(抗高血圧、抗血糖、抗尿

管感染症)、Nitaria retusa(抗湿疹、抗眼の腫れ)、Mauricandia arvensis(抗皮膚アレルギー、

抗腫瘍)、Allinum roseum(解熱、抗洟)、Hernaria fontanseii(抗皮膚裂傷)、Artemisia herba-alba

Asso.(抗高血圧、抗腹痛、抗寄生虫)、Rosmarinus officinalis(抗高血圧、抗頭痛、抗高熱)、

Thymus capitatus(抗高熱)、Thymus hirtus(抗咳、解熱)、Juniperus phoenicea(抗咳、解熱、

抗昆虫によるラクダの皮膚の疥癬)、Ruta chalepensis(抗骨痛、抗耳痛)、Artemisia compestris

(抗咳、抗爬虫類毒および蠍毒)、Polygunum equisitiform(抗人パロマウィルスによる吹き

出物)、Retama raetam(抗骨折、抗皮膚の腫れ)、Zizyphus lotus(抗湿疹、抗毛髪の頭垢(フ

ケ)、抗腹部潰瘍、洗顔)、Lavandula multifida(抗背骨痛、尿管の洗浄、抗月経不順、神経

リラックス、抗高血糖、血圧安定、皮膚洗浄)、Matricaria recutita(抗腹部潰瘍、抗肝炎、

血管拡大、抗皮膚アレルギー、洗顔)、Teucrium pollium(抗関節痛)などについての伝承情

報が得られた。

エジプトでは、 Trigonella foenum-graecum(解熱、抗腹痛)、Psidium(咳止め)、Pimpinella anisum

(抗咽痛、抗腹痛)、Hordeum vulgare(抗腎臓障害)、Carum carvi(抗便秘)、Cuminum cyminum(抗

下痢)、Allium sativum(抗寄生虫)、Hibiscus(抗高血圧)、Allium porrum(抗肩以上の部位の病、抗

腎臓障害、抗腹痛)、Mentha(抗下痢)、Apium petroselinum(抗風邪)などについての伝承情報が

得られた。 上記結果で明らかなように、チュニジアの方がエジプトより、多くの薬用・アロマ植物

が用いられていると同時に、一般的に民衆の薬用・アロマ植物に対する知識が高い。この

理由はチュニジアの方が自生もしくは育成している薬用・アロマ植物が多いことにあると

示唆された。また、エジプトでは、いわゆる薬用・アロマ植物の範疇外の植物(大蒜、葱

パセリ等)を薬として用いることも明らかになった。現在、上記のような薬用・アロマ植

物の伝統的効用に関する伝承情報を論文にとりまとめている。

②共同研究「北アフリカ食薬資源植物の持続的利用に関する研究(R-2)」を実施するため

に、エジプトおよびモロッコにて野外調査を実施し、エジプトの薬用植物やモロッコのア

ルガンなど地域特有の資源植物の採集と同定を行い、生育環境や利用状況に関する分析を

展開した。特に、エジプト首都カイロの市場(香辛料販売店、香水販売店等)における植

物資源(シナモン、グローブ、ローズマリー、タイム等)の加工利用状況を調査した。 また、ナイルデルタ、ナイルデルタの上流域のファイユーム地域における野生植物資源

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の生育状況調査を行った。ナイルデルタはナイル川によってもたらされる地下水が豊富な

扇状地であり、現地農民は組み上げた地下水を利用し広大な平野に農地を作っている。農

作物も様々で、小麦や玉ねぎを栽培し、休耕時には大気中の窒素を固定する能力を持つア

ルファルファを作付けして肥沃度の回復を行なっていた。また、地下水の組み上げが難し

い台地上ではナツメヤシとオレンジの複層プランテ-ションを行なっていた。ナイルデル

タ地帯の大半は農地として開墾されており、デルタ地帯で野生生物資源を採集する場所は

制限されると考えられた。他方、古くから農業生産が行われてきたファイユーム地域は、

砂漠気候に属するため、河川や運河の周辺でない限り、野生植物資源の採集は難しいと考

えられた。また、カイロ大学の薬用植物資料室において、北アフリカの伝承的な植物資源

の利用に関する情報収集を実施し、薬草に関する試料や植物標本、文献情報を収集した。 モロッコではハッサン II世大学の研究協力者と、モロッコ特有の資源植物であるアルガ

ン林の生育環境、アルガン林に関する研究の現状、アルガン実・油の利用等について情報

を収集し、アルガン林の野外調査を実施した。特に、アルガンの生育状況を定量的・定性

的に把握し、生育に関係する土壌物理性、土壌化学性、気象条件、人為的影響などの環境

因子との関係を解析し、その地域特性を把握した。これにより、年間降水量の変動、ラク

ダ、山羊等の過放牧などが、アルガン林保全を阻害する要因として明らかになった。 また、アルガン林地帯は、アルガンを優占種とする天然林で占められており、現地住民

が集めたアルガンの果実を女性協同組合が買い取り、原料の管理から製品加工まで組合が

一元管理している。アルガン林地帯は限界乾燥地にあたるため、年によっては少雨の影響

でアルガン実の収量が激減し、現地住民の収入確保が課題である。また、現地住民の安定

した収入のためにアルガンの収量を増やすだけでなく、アロマ植物のような資源植物を増

やすことにより気候変動によってアルガンが不作の時にも一定の収入を確保できる体制を

作ることも重要であった。多角的経営を踏まえたアルガン林の利用体制をいかに構築する

かが、今後の研究課題となった。

③共同研究「北アフリカ由来食薬資源の生理活性機能の評価(R-3)」を実施するために、

エジプトより若手研究者を招聘し、エジプト産の有用植物を対象に新しい生理活性機能性

の探索を行った。特に、Chorisia chodatii Hassl と Chorisia speciosa A. St.-Hil 抽出物の抗肥満

効果を分析した。本研究では Chorisia chodatii Hassl と Chorisia speciosa A. St.-Hil の部位や抽

出溶媒による機能性への影響を確認するため、葉、枝、花などの部位とメタノール、エタ

ノールなどの異なる溶媒にて抽出を行った 20 種類の抽出試料を対象にした。まず、DPPH

消去能評価試験にて各抽出試料の抗酸化性における影響を調べ、フォーリン・チオカルト

法による各抽出試料の総ポリフェノール含量測定を行った。抗肥満活性においては、前駆

脂肪細胞である 3T3-L1 を用いて脂肪細胞分化に及ぼす各抽出物の影響を分析した。その結

果、Chorisia chodatii Hassl と Chorisia speciosa A. St.-Hil 抽出物は高い抗酸化性や高い総ポリ

フェノール含量を示した。さらに、脂肪細胞分化においては分化促進効果を示し、脂肪細

胞分化を調節する重要遺伝子である PPAR(peroxisome proliferator-activated receptor)γのア

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ゴニストとして作用する可能性が示唆された。また、これまでに分析したエッセンシャル

オイルの細胞内 ATP 生産促進効果や抗腫瘍抑制効果やアルガンオイル成分の美白効果につ

いて、機能性の分子レベルでの作用メカニズムの解析を行い、分析結果を論文にとりまと

めた。

④共同研究「北アフリカにおける先端技術を応用した高付加価値化食品製造システムの開

発(R-4)」を実施するために、モロッコに研究者を派遣し、アルガンオイルに対する日本

の先端的加工技術の適用可能性を精査した。また、アルガンのサンプルを入手し、筑波大

学にて、アルガン油の効率的抽出方法開発と搾油残渣の有効利用のための成分分析を行っ

た。特に、これまでに有効利用されていない搾油残渣の成分分析を実施し、日本の先端的

発酵技術を用いてアルガン醤油を製造する課題を導き出し、アルガン新製品開発の市場規

模も推計した。また、アルガン実・油の高度利用システム開発について、美白効果等の機

能性エビデンスが実証された高機能性アルガン油の製造、アルガン実からの油の効率的抽

出方法、有効成分の分離精製、搾油残渣からの醤油の製造などを検討した。これにより、

伝統的アルガンオイル加工技術の高度化、精油能力・生産性の向上およびアルガンオイル

製品および副産物の有効利用を図るための技術的問題について分析を展開し、アルガン加

工による高付加価値化の課題を明らかにした。なお、本共同研究の実施実績を基に、平成

25 年度地球規模課題対応国際科学技術協力プログラム「スマート加工技術によるアルガン

プレミアムの製造と持続的社会開発」を現地の研究者と共同で申請した。

⑤共同研究「北アフリカにおける有用植物の高度利用と地域発展モデルの構築(R-5)」を

実施するために、チュニジア、エジプトおよびモロッコに研究者を派遣した。また、モロ

ッコから若手研究者を招聘した。同研究では、チュニジアの有用植物としてオリーブ、ナ

ツメヤシに、モロッコの有用植物としてアルガンに着目し、オリーブ農家、オアシス農業

(ナツメヤシ等の栽培)、アルガン農家とアルガン油精製女性協同組合の生産基盤を調査し

た。また、チュニジア産オリーブオイルの機能性を含む製品および生産者情報が日本人の

消費行動や嗜好に与える影響を分析し、機能成分を含むオリーブオイルの高付加価値化に

ついて分析を展開した。他方、モロッコでは、収集したアルガン農家の個票データを用い、

リスク分析と費用便益分析を実施し、降雨量の変動と土壌劣化によるアルガン実収量の変

動が最も高いリスクを持つが、近代的加工設備導入がかかるリスクを軽減し、費用便益面

でも実現可能であることが明らかとなった。また、アルガンオイル精製女性協同組合の個

票データを用いて生産性と効率性を解析し、規模の経済は働いていないが、範囲の経済が

働く可能性が示唆された。他方、チュニジアのオリーブ農家に関する生産面の分析におい

ては、労働者の熟練度に加えて、生産者の知識・経験が生産技術改善の重要な要因である

が、灌漑技術導入については、最良慣行(ベスト・プラクティス)が実現できていないこ

とが明らかとなった。また、オリーブ油の日本における消費面の分析では、機能性情報、

原産地ラベル表示、生産地情報提供のインパクトが欧州産のオリーブ油に比べて、日本人

11

消費者の支払意欲を有意に増加させることが明らかとなり、新市場を拓く要因となりうる

ことが示唆された。

8-2 セミナー

セミナーの開催:エジプト、チュニジアおよびモロッコから研究者を招聘し、筑波大学

北アフリカ研究センターにてセミナーを 1 件開催し、共同研究の成果と展望を発表した。

①平成 25 年 2 月に筑波大学にて、セミナー「北アフリカの伝統的植物の高度利用による産

業化シーズ開発と新市場創出(S-1)」を開催した。同セミナーでは、北アフリカ地域固有の

有用植物に地域発展につながる新たな産業化シーズを開発することを目指し、これまで展

開した研究の総括を行うことを目的とした。特に、エジプト、チュニジアおよびモロッコ

の食薬植物に関する生育環境調査から分子レベルの機能性解析、加工・製品化、生産基盤

解析、消費行動分析と市場創出に至るまでの一連の高度利用プロセス(価値連鎖)につい

ての議論を深め、人文社会科学、生態学、農芸化学等の各分野を連携させ、食薬産業化シ

ーズの高付加価値化と新規市場開発を図る共同研究の成果を報告した。

②北アフリカ研究センターが、平成 24 年 5 月に本事業の拠点機関であるホウアリ・ブーメ

ディエン大学と協力し、オラン科学技術大学と「第 2 回アルジェリア・日本学術シンポジ

ウム:先端科学による持続的社会の構築」を共同開催し、研究成果の一部ならびに共同研

究の展望を報告した。また、平成 24 年 11 月に、北アフリカ研究センターがチュニジア国立

農業学院と協力して「チュニジア-日本 2012 シンポジウム:食品科学研究を通じた持続的

社会の形成」を開催した際に、共同研究の成果を報告した。

以上により、二国間および多国間の枠組でセミナーを開催した。これらにより、日本国

内において、北アフリカ有用植物の研究に関するネットワークと基盤を強化した。

上記のように、北アフリカの拠点機関の研究者を日本に招聘し、日本人の研究者を拠点

機関に派遣することで、若手研究者がイニシアティブをとって共同研究を展開した。また、

同時に文理融合的素養を持つ人材の育成を図った。なお、平成 25 年度の成果として、報告

論文集を刊行した。また,過去 3 年間の成果報告書を基に、外国の出版社による書籍の出

版計画を立案した。

8-3 研究者交流(共同研究、セミナー以外の交流)

なし

12

9.平成24年度研究交流実績人数・人日数 9-1 相手国との交流実績

派遣先

派遣元

日本

<人/人日>

チュニジア

<人/人日>

エジプト

<人/人日>

モロッコ

<人/人日>

アルジェリア

<人/人日> 合計

日本

<人/人日>

実施計画 1/10

(4/34)

3/30

(2/14)

4/40

(1/7)

1/10 9/90

(7/55)

実績 0/0

(4/35)

2/27

(2/21)

4/43

(3/20)

0/0 6/70

(9/76)

チュニジア

<人/人日>

実施計画 1/5

(2/10)

0/0 0/0 0/0 1/5

(2/10)

実績 2/14

(1/7)

0/0 0/0 0/0 2/14

(1/7)

エジプト

<人/人日>

実施計画 3/40

(1/5)

0/0 0/0 0/0 3/40

(1/5)

実績 3/74

(0/0)

0/0 0/0 0/0 3/74

(0/0)

モロッコ

<人/人日>

実施計画 3/65 (1/5) 0/0 0/0 3/65

(1/5)

実績 2/64

(1/7)

2/10

(0/0)

0/0 0/0 4/74

(1/7)

アルジェリア

<人/人日>

実施計画 0/0 0/0 0/0 0/0 0/0

実績 0/0 0/0 0/0 0/0 0/0

合計

<人/人日>

実施計画 7/110

(3/15)

1/10

(5/39)

3/30

(2/14)

4/40

(1/7)

1/10 16/200

(11/75)

実績 7/152

(2/14)

2/10

(4/35)

2/27

(2/21)

4/43

(3/20)

0/0 15/232

(11/90)

9-2 国内での交流実績

実施計画 実 績

13/130<人/人日> 19/69<人/人日>

13

10.平成24年度研究交流実績状況 10-1 共同研究

整理番号 R-1 研究開始年度 平成 22年度 研究終了年度 平成 24年度

研究課題

(和文)北アフリカにおける伝統的植物の近代的価値に関する調査研究

(英文)Study of Modern Values on Traditional Usage of Bio-resources in North Africa 日本側代

表者

氏名・所

属・職

(和文)岩崎真紀・北アフリカ研究センター・研究員

(英文)Maki Iwasaki, Researcher, The Alliance for Research on North Africa, University of Tsukuba

相手国側

代表者

氏名・所

属・職

・チュニジア:Hajer Ben Hadj Salem, Faculty of Letters, University of Sfax ・モロッコ:Majid Benabdellah, Professor, Department of Social Sciences, Hassan II

University Institute of Agronomy and Veterinary Medicine ・エジプト:Mohamed Salah Kamel, Professor, Faculty of Pharmacology, Minia

University ・アルジェリア:Benali Benzaghou, President and Professor, Headquarters, Houari Boumedine University

交流人数

(※日本

側予算に

よらない

交流につ

いても、カ

ッコ書き

で記入の

こと。)

① 相手国との交流

派遣先

派遣元

日本 チュニジア エジプト モロッコ アルジェリア 計

<人/人日> <人/人日> <人/人日> <人/人日> <人/人日> <人/人日>

日本 <人/人日>

実施計画

(1/10) 1/10 1/10 1/10 3/30 (1/10)

実績 (1/11)

1/20 (1/14)

0/0

0/0

1/20 (2/25)

チュニジア <人/人日>

実施計画

0/0 0/0

0/0

0/0

0/0

実績 0/0 0/0 0/0 0/0 0/0

エジプト <人/人日>

実施計画

(1/5) 0/0

0/0

(1/5)

実績 0/0 0/0 0/0 0/0

モロッコ <人/人日>

実施計画

0/0 0/0

0/0

0/0

0/0

実績 0/0 0/0 0/0 0/0 0/0

アルジェリア <人/人日>

実施計画

0/0 0/0

0/0

0/0

0/0

実績 0/0 0/0 0/0 0/0 0/0

合計 <人/人日>

実施計画

(1/5) (1/10) 1/10 1/10 1/10 3/30 (2/15)

実績 0/0 (1/11)

1/20 (1/14)

0/0 0/0 1/20 (2/25)

② 国内での交流 実施計画:2人/10人日 実施実績:(2人/2人日)

24年度

の研究交

流活動

日本側研究者と相手国側研究者がエジプトとチュニジアにて共同現地調査を行

い、北アフリカの伝統的植物に関する民間伝承や伝統医薬、伝統的使用法、食

文化について聞き取り調査と文献研究を展開した。チュニジアでは、ベン・ア

ルース、ビゼルト、メドニンを、エジプトではミニヤを主な調査地とし、現地

の農業従事者や薬草商等、薬用・アロマ植物に対する深い知識を持つ在野の人々

に対し、調査地における食薬資源植物の民衆的利用法に関するインタビューと

参与観察を行った。これにより、チュニジアとエジプトにおける植物の伝承情

14

報や伝統的効用を比較しつつ、北アフリカの固有の食薬植物の伝統的価値や利

用法、効用を分析した。

研究交流

活動成果

北アフリカの伝統的植物に関する民間伝承や伝統医薬、伝統的使用法、食文化

について、相手国研究者と共同で聞き取り調査と文献研究を実施した。特に、

チュニジア北部・南部および上エジプトを主な調査地として、現地の農業従事

者や薬草商等、薬用・アロマ植物に対する深い知識を持つ在野の人々に対し、

伝統的植物の民衆的利用法に関するインタビューと参与観察を行った。インタ

ビュー調査と参与観察の結果、チュニジアとエジプトとそれぞれにおいて、伝

統的植物の機能性情報と伝承情報が得られた。また、エジプトよりもチュニジ

アの方が、薬用・アロマ植物が多く用いられていると同時に、民衆の薬用・ア

ロマ植物に対する知識が高く、その理由としては、チュニジアの方が自生もし

くは育成している薬用・アロマ植物が多いことが示唆された。また、エジプト

では、いわゆる薬用・アロマ植物の範疇外の植物(大蒜、葱パセリ等)を薬と

して用いている実情も明らかになった。このように調査対象地域をチュニジア

からエジプトに広げ、比較研究を展開することにより、北アフリカの伝統的植

物の利用方法、服用方法、儀礼的使用方法、効用等における共通点と相違点を

分析し、伝統的植物が持つ近代的価値を明らかにすることが可能となった。 日本側参加者数

3 名 (12-1 日本側参加者リストを参照)

チュニジア共和国側参加者数

2 名 (12-2 エジプト共和国側参加研究者リストを参照)

エジプト共和国側参加者数

4 名 (12-5 チュニジア共和国側参加研究者リストを参照)

モロッコ王国側参加者数

1 名 (12-4 モロッコ王国国側参加研究者リストを参照)

アルジェリア民主人民共和国側参加者数

2 名 (12-3 アルジェリア民主人民共和国側参加研究者リスト

を参照)

15

整理番号 R-2 研究開始年度 平成 22年度 研究終了年度 平成 24年度

研究課題

(和文)北アフリカ食薬資源植物の持続的利用に関する研究

(英文)Research on Sustainable Use of Bio-resources in North Africa 日本側代

表者

氏名・所

属・職

(和文)川田清和・北アフリカ研究センター・助教

(英文)Kiyokazu Kawada, Assistant Professor, The Alliance for Research on North Africa, University of Tsukuba

相手国側

代表者

氏名・所

属・職

・チュニジア:Abderrazak Smaoui, Professor, Borj Cedria Science and Technology Park

・モロッコ:Mokhtari Mimoun, Professor, Department of Agronomy, Hassan II University Institute of Agronomy and Veterinary Medicine ・エジプト:Wafaa M. Amer, Professor, Faculty of Science, Cairo University

交流人数

(※日本

側予算に

よらない

交流につ

いても、カ

ッコ書き

で記入の

こと。)

① 相手国との交流

派遣先

派遣元

日本 チュニジア エジプト モロッコ アルジェリア 計

<人/人日> <人/人日> <人/人日> <人/人日> <人/人日> <人/人日>

日本 <人/人日>

実施計画

0/0 (1/10)

1/10 1/10 0/0 2/20 (1/10)

実績 0/0 1/7

1/12 (1/7)

0/0

2/19 (1/7)

チュニジア <人/人日>

実施計画

0/0 0/0

0/0

0/0

0/0

実績 0/0 0/0 0/0 0/0 0/0

エジプト <人/人日>

実施計画

1/5 0/0 0/0

0/0

1/5

実績 0/0 0/0 0/0 0/0 0/0

モロッコ <人/人日>

実施計画

0/0 0/0

0/0

0/0

0/0

実績 0/0 0/0 0/0 0/0 0/0

アルジェリア <人/人日>

実施計画

0/0 0/0 0/0 0/0 0/0

実績 0/0 0/0 0/0 0/0 0/0

合計 <人/人日>

実施計画

1/5 0/0 (1/10)

1/10 1/10 0/0 3/25 (1/10)

実績 0/0

0/0 1/7 1/12 (1/7)

0/0 2/19 (1/7)

② 国内での交流 実施計画:2人/10人日 実施実績:(2人/2人日)

24年度

の研究交

流活動

日本側研究者と相手国側研究者が、北アフリカ地域の生育する食薬資源植物の

持続的な利用を目的として、エジプトとモロッコおいて食薬資源植物の利用状

況や生育環境に関する野外調査と文献調査を実施した。また、現地生産体制の

基盤形成を目指して、その持続的利用のための条件を解析した。特に、上エジ

プト・ファイユームにおける薬用植物、モロッコ・アガディールにおけるアル

ガン林の生育状況・利用・保全状況について共同調査を展開した。これにより、

北アフリカにおける食薬資源植物とその利用に関する情報を追加・整理し、共

同研究の成果と今後の展望を総括した。

研究交流

活動成果

エジプトおよびモロッコにて野外調査を実施し、エジプトの薬用植物やモロッ

コのアルガンなど地域特有の資源植物の採集と同定を行い、生育環境や利用状

16

況に関する分析を実施した。特に、エジプト首都カイロの市場における植物資

源の加工利用状況、ナイルデルタ、ナイルデルタの上流域のファイユーム地域

における野生植物資源の生育状況調査を行った。また、カイロ大学の薬用植物

資料室において、北アフリカの伝承的な植物資源の利用に関する情報収集を実

施し、薬草に関する試料や植物標本、文献情報を収集した。モロッコでは、モ

ロッコ特有の資源植物であるアルガン林の生育環境、アルガン林に関する研究

の現状、アルガン実・油の利用等について情報を収集し、アルガン林の野外調

査を実施した。特に、アルガンの生育状況を定量的・定性的に把握し、生育に

関係する土壌物理性、土壌化学性、気象条件、人為的影響などの環境因子との

関係を解析し、その地域特性を把握した。また、現地住民の安定した収入のた

めに、アルガンの収量増だけでなく、アロマ植物のような資源植物を増やすこ

とによる多角的経営を導入し、アルガン林の利用・保全体制を構築することが

新たな課題となった。 日本側参加者数

2 名 (12-1 日本側参加者リストを参照)

チュニジア共和国側参加者数

3 名 (12-2 エジプト共和国側参加研究者リストを参照)

エジプト共和国側参加者数

1 名 (12-5 チュニジア共和国側参加研究者リストを参照)

モロッコ王国側参加者数

1 名 (12-4 モロッコ王国国側参加研究者リストを参照)

アルジェリア民主人民共和国側参加者数

0 名 (12-3 アルジェリア民主人民共和国側参加研究者リスト

を参照)

17

整理番号 R-3 研究開始年度 平成 22年度 研究終了年度 平成 24年度

研究課題

(和文)北アフリカ由来食薬資源の生理活性機能の評価

(英文)Screening of Physiological Function of North African Origin Plants 日本側代

表者

氏名・所

属・職

(和文)礒田博子・北アフリカ研究センター・教授

(英文)Hiroko Isoda, Professor, The Alliance for Research on North Africa, University of Tsukuba

相手国側

代表者

氏名・所

属・職

・エジプト:Hany El-Shemy, Professor, Faculty of Agriculture, Cairo University ・モロッコ:Chemseddoha Gadhi, Professor, Faculty of Agricultural Sciences, University of

Cadi Ayyad ・チュニジア:Sami Sayadi, Center of Biotechnology of Sfax

交流人数

(※日本

側予算に

よらない

交流につ

いても、カ

ッコ書き

で記入の

こと。)

① 相手国との交流

派遣先

派遣元

日本 チュニジア エジプト モロッコ アルジェリア 計

<人/人日> <人/人日> <人/人日> <人/人日> <人/人日> <人/人日>

日本 <人/人日>

実施計画

(1/7) (1/7) (1/7) 0/0 0/0 (3/21)

実績 0/0 0/0

1/9

0/0 1/9

チュニジア <人/人日>

実施計画

0/0 0/0

0/0

0/0

0/0

実績 0/0 0/0 0/0 0/0 0/0

エジプト <人/人日>

実施計画

1/30 0/0 0/0

0/0

1/30

実績 1/62 0/0 0/0 0/0 1/62

モロッコ <人/人日>

実施計画

1/30 0/0

0/0

0/0

1/30

実績 0/0 0/0 0/0 0/0 0/0

アルジェリア <人/人日>

実施計画

0/0 0/0

0/0

0/0

0/0

実績 0/0 0/0 0/0 0/0 0/0

合計 <人/人日>

実施計画

2/60

0/0 (1/7)

0/0 (1/7)

(1/7) 0/0 2/60 (3/21)

実績 1/62 0/0 0/0 1/9 0/0 2/71

② 国内での交流 実施計画:3人/60人日 実施実績:(5人/28人日)

24年度

の研究交

流活動

エジプトから若手研究者を日本に招聘し、上エジプト産の薬用資源やエジプト

由来薬用植物のエッセンシャルオイルの機能性解析・評価について共同研究を

行った。具体的には、ヒト由来細胞等を用いたバイオアッセイを活用し、抗腫

瘍活性、抗酸化性などの機能性評価を行った。また、モロッコとの共同研究を

更に進め、バイオアッセイによってモロッコ原産のアルガンオイルの機能性を

解析した。これにより、上エジプト産薬用植物の抗酸化性と抗肥満効果、エッ

センシャルオイルの細胞内 ATP生産促進効果や抗腫瘍抑制効果、アルガンオイ

ルの美白効果について、機能性の分子レベルでの作用メカニズムの解析を行っ

た。

18

研究交流

活動成果

エジプトより若手研究者を招聘し、エジプトの特有の有用植物を対象に新しい

生理活性機能性の探索を行った。特に、エジプト産の薬用植物(Chorisia chodatii Hassl と Chorisia speciosa A. St.-Hil)の葉、枝、花などの部位からの抽出物とメ

タノール、エタノールなどの異なる溶媒にて抽出を行った 20 種類の抽出試料を

対象にし、抗肥満効果への影響を解析した。また、各抽出試料の抗酸化性にお

ける影響を調べ、各抽出試料の総ポリフェノール含量測定を行い、脂肪細胞分

化に及ぼす各抽出物の影響を分析した。分析の結果、同植物の抽出物は高い抗

酸化性や高い総ポリフェノール含量を示した。さらに、脂肪細胞分化において

は分化促進効果を示し、脂肪細胞分化を調節する重要遺伝子である PPAR(peroxisome proliferator-activated receptor)γのアゴニストとして作用する可能性

が示唆された。また、これまでに分析したエッセンシャルオイルの細胞内 ATP

生産促進効果や抗腫瘍抑制効果やアルガンオイル成分の美白効果について、機

能性の分子レベルでの作用メカニズムの解析を行い、分析結果を論文にとりま

とめた。 日本側参加者数

3 名 (12-1 日本側参加者リストを参照)

チュニジア共和国側参加者数

2 名 (12-2 エジプト共和国側参加研究者リストを参照)

エジプト共和国側参加者数

4

(12-5 チュニジア共和国側参加研究者リストを参照)

モロッコ王国側参加者数

1

(12-4 モロッコ王国国側参加研究者リストを参照)

アルジェリア民主人民共和国側参加者数

0 名 (12-3 アルジェリア民主人民共和国側参加研究者リスト

を参照)

19

整理番号 R-4 研究開始年度 平成 22年度 研究終了年度 平成 24年度

研究課題

(和文)北アフリカにおける先端技術を応用した高付加価値化食品製造システ

ムの開発

(英文)Use of Advanced Technology for Development of High Value-Added Food Production System in North Africa

日本側代

表者

氏名・所

属・職

(和文)中嶋 光敏・北アフリカ研究センター・センター長・教授

(英文)Mitsutoshi Nakajima, Director and Professor, The Alliance for Research on North Africa, University of Tsukuba

相手国側

代表者

氏名・所

属・職

・モロッコ:Hafidi Abdellatif, Professor, University of Cadi Ayyad

交流人数

(※日本

側予算に

よらない

交流につ

いても、カ

ッコ書き

で記入の

こと。)

① 相手国との交流

派遣先

派遣元

日本 チュニジア エジプト モロッコ アルジェリア 計

<人/人日> <人/人日> <人/人日> <人/人日> <人/人日> <人/人日>

日本 <人/人日>

実施計画

0/0 0/0 (1/7)

1/10

0/0 1/10 (1/7)

実績 0/0 0/0 1/9 (1/5)

0/0

1/9 (1/5)

チュニジア <人/人日>

実施計画

0/0 0/0

0/0

0/0

0/0

実績 0/0 0/0 0/0 0/0 0/0

エジプト <人/人日>

実施計画

0/0 0/0 0/0

0/0

0/0

実績 0/0 0/0 0/0 0/0 0/0

モロッコ <人/人日>

実施計画

1/30 0/0

0/0

0/0

1/30

実績 0/0 1/5 0/0 1/5

アルジェリア <人/人日>

実施計画

0/0 0/0

0/0

0/0

0/0

実績 0/0 0/0 0/0 0/0 0/0

合計 <人/人日>

実施計画

1/30 0/0 0/0 (1/7)

1/10

0/0 2/40 (1/7)

実績 0/0 1/5 0/0 1/9 (1/5)

0/0 2/14 (1/5)

② 国内での交流 実施計画:2人/30人日 実施実績:(3人/3人日)

24年度

の研究交

流活動

モロッコに食品加工の研究者を派遣し、アルガンオイルの精油・加工・製品化

における生産技術水準と安定的供給能力について調査を展開した。また、アル

ガン油の効率的抽出方法開発と搾油残渣の有効利用のための成分分析を行っ

た。これにより、アルガンオイルの高付加価値化を図り、日本の先端的食品加

工技術の適用可能性を精査した。特に、高機能性アルガン油の製造、アルガン

実からの油の効率的抽出方法、有効成分の分離精製、搾油残渣からの醤油の製

造などを検討した。これにより、現地の生産技術水準と供給能力に適応した先

端的加工技術を開発し、モロッコ産アルガンオイルの高付加価値化とスケール

20

アップを図る手法についての分析を展開した。

研究交流

活動成果

モロッコに研究者を派遣し、アルガンオイルに対する日本の先端的加工技術の

適用可能性を精査した。また、アルガン油とアルガン搾油残渣のサンプルを入

手し、油の効率的抽出方法開発と搾油残渣の有効利用のための成分分析を行っ

た。また、美白効果等の機能性エビデンスが実証された高機能性アルガン油の

製造、アルガン実からの油の効率的抽出方法、有効成分の分離精製、搾油残渣

からの醤油の製造など、アルガン実・油の高度利用システム開発を検討した。

特に、これまでに有効利用されていない搾油残渣の成分分析を実施し、日本の

先端的発酵技術を用いてアルガン醤油を製造する課題を導き出し、アルガン新

製品開発の市場規模も推計した。これにより、伝統的アルガンオイル加工技術

の高度化、精油能力・生産性の向上およびアルガンオイル製品および副産物の

有効利用を図るための技術的問題について分析を展開し、アルガン加工による

高付加価値化の課題を明らかにした。

日本側参加者数

2 名 (12-1 日本側参加者リストを参照)

チュニジア共和国側参加者

0 名 (12-2 エジプト共和国側参加研究者リストを参照)

エジプト共和国側参加者数

0

(12-5 チュニジア共和国側参加研究者リストを参照)

モロッコ王国側参加者数

2

(12-4 モロッコ王国国側参加研究者リストを参照)

アルジェリア民主人民共和国側参加者数

0 名 (12-3 アルジェリア民主人民共和国側参加研究者リスト

を参照)

21

整理番号 R-5 研究開始年

平成 22年度 研究終了年度 平成 24年度

研究課

題名

(和文)北アフリカにおける有用植物の高度利用と地域発展モデルの構築

(英文)Valorization of Useful Plants for Regional Development in North Africa 日本側

代表者

氏名・所

属・職

(和文)柏木健一・北アフリカ研究センター・助教

(英文)Kenichi Kashiwagi, Assistant Professor, The Alliance for Research on North Africa, University of Tsukuba

相手国

側代表

氏名・所

属・職

・エジプト:Hany El-Shemy, Professor, Faculty of Agriculture, Cairo University ・チュニジア:Fathi Akrout, Professor, Faculty of Economics and Management,

Sfax University ・モロッコ:Majid Benabdellah, Professor, Department of Social Sciences, Hassan II University Institute of Agronomy and Veterinary Medicine

交流人

(※日本

側予算に

よらない

交流につ

いても、

カッコ書

きで記入

のこと。)

① 相手国との交流

派遣先

派遣元

日本 チュニジア エジプト モロッコ アルジェリア 計

<人/人日> <人/人日> <人/人日> <人/人日> <人/人日> <人/人日>

日本 <人/人日>

実施計画

1/10 (1/7)

1/10

1/10

0/0 3/30 (1/7)

実績 0/0 (3/24)

0/0 (1/7)

1/13 (1/8)

0/0

1/13 (5/39)

チュニジア <人/人日>

実施計画

0/0 (1/5)

0/0

0/0

0/0

0/0 (1/5)

実績 0/0 0/0 0/0 0/0 0/0

エジプト <人/人日>

実施計画

0/0

0/0 0/0

0/0

0/0

実績 0/0 0/0 0/0 0/0 0/0

モロッコ <人/人日>

実施計画

0/0 0/0 (1/5)

0/0

0/0

0/0 (1/5)

実績 2/64 1/5 0/0 3/69

アルジェリア <人/人日>

実施計画

0/0 0/0

0/0

0/0

0/0

実績 0/0 0/0 0/0 0/0 0/0

合計 <人/人日>

実施計画

0/0 (1/5)

1/10 (2/12)

1/10

1/10 0/0 3/30 (3/17)

実績 2/64 1/5 (3/24)

0/0 (1/7)

1/13 (1/8)

0/0 4/82 (5/39)

② 国内での交流 実施計画:4人/20人日 実施実績:(7人/34人日)

2 4 年

度 の 研

究 交 流

活動

日本側研究者と相手国側研究者がチュニジア、エジプトおよびモロッコにて農家

や農産物加工工場に対する質問票調査を行い、また、モロッコから若手研究者を

招聘し、北アフリカ原産の食薬植物の生産基盤・供給能力・効率性・輸出競争力

を解析し、新たな付加価値を生み出すための条件を分析した。チュニジアの有用

植物としてオリーブ、ナツメヤシに、モロッコの有用植物としてアルガンに着目

し、オリーブ農家、オアシス農業(ナツメヤシ等の栽培)、アルガン農家とアル

ガン油精製女性協同組合の生産基盤を調査した。また、チュニジア産オリーブオ

イルの機能性を含む製品および生産者情報が日本人の消費行動や嗜好に与える

22

影響を分析し、機能成分を含むオリーブオイルの高付加価値化について分析を展

開した。他方、モロッコでは、収集したアルガン農家の個票データを用い、リス

ク分析と費用便益分析を実施した。これにより、北アフリカの生産側面と日本の

消費側面の両者から、新規市場を開拓・創出するための要因を分析した。

研 究 交

流 活 動

成果

チュニジア、エジプトおよびモロッコに研究者を派遣し、モロッコから研究者を

招聘した。相手国研究者と収集したチュニジアのオリーブ農家、ナツメヤシ農家

およびモロッコのアルガン農家とアルガン油精製女性協同組合の個票データを

用いて、オリーブ農家とアルガン油精製女性協同組合の生産性・効率性分析、ア

ルガン農家のリスク分析と費用便益分析を実施した。また、チュニジア産オリー

ブオイルの機能性を含む製品および生産者情報が日本人の消費行動や嗜好に与

える影響を分析した。分析の結果、チュニジアのオリーブ農家の生産においては、

生産者の知識・経験が生産技術改善の重要な要因であるが、灌漑技術導入につい

ては、最良慣行が実現できていないこと、モロッコのアルガン農家では、近代的

加工設備導入がリスクを軽減し、費用便益面でも実現可能であること、アルガン

油精製女性協同組合の生産では、範囲の経済が働く可能性があることが示唆され

た。また、オリーブ油の日本における消費面の分析では、機能性情報、原産地ラ

ベル表示、生産地情報提供のインパクトが欧州産のオリーブ油に比べて、日本人

消費者の支払意欲を有意に増加させることが明らかとなり、新市場を拓く要因と

なりうることが示唆された。 日本側参加者数

6 名 (12-1 日本側参加者リストを参照)

チュニジア共和国側参加者数

8 名 (12-2 エジプト共和国側参加研究者リストを参照)

エジプト共和国側参加者数

1 名

(12-5 チュニジア共和国側参加研究者リストを参照)

モロッコ王国側参加者数

4 名

(12-4 モロッコ王国国側参加研究者リストを参照)

アルジェリア民主人民共和国側参加者数

0 名 (12-3 アルジェリア民主人民共和国側参加研究者リストを参

照)

23

10-2 セミナー 整理番号 S-1

セミナー名 (和文)日本学術振興会アジア・アフリカ学術基盤形成事業:北ア

フリカの伝統的植物の高度利用による産業化シーズ開発

と新市場創出 (英文)JSPS AA Science Platform Program: Development of Seeds for

Technology and New Market based on Valorization of Traditional Plants in North Africa

開催時期 平成 25 年 2 月 27 日 ~ 平成 25 年 2 月 27 日(1日間)

開催地(国名、都市名、

会場名) (和文)日本、つくば市、筑波大学 (英文)Japan, Tsukuba, University of Tsukuba

日本側開催責任者 氏名・所属・職

(和文)柏木 健一・筑波大学北アフリカ研究センター・助教 (英文)Kenichi Kashiwagi, Assistant Professor, The Alliance for

Research on North Africa, University of Tsukuba 相手国側開催責任者 氏名・所属・職 (※日本以外での開催の場合)

参加者数 派遣先 派遣元

セミナー開催国 (日本)

日本 <人/人日>

A. 0/0

B. 0/0

C. 10/10

エジプト

<人/人日>

A. 2/12

B. 0/0

C. 0/0

チュニジア

<人/人日>

A. 2/14

B. 0/0

C. 1/7

モロッコ

<人/人日>

A. 0/0

B. 0/0

C. 1/7

アルジェリア

<人/人日>

A. 0/0

B. 0/0

C. 0/0

合計

<人/人日>

A. 4/26

B. 0/0

C. 12/24

24

A.セミナー経費から負担 B.共同研究・研究者交流から負担 C.本事業経費から負担しない(参加研究者リストに記載されていない研究者は集計しない

でください。) セミナー開催の目的 本セミナーでは、北アフリカ地域固有の有用植物に地域発展に

つながる新たな産業化シーズを開発することを目指し、これまで

展開した研究の総括を行うことを目的とした。エジプトのカイロ

大学から Wafaa Amer 教授と Hany El-Shemy 教授を、チュニジアの

高等農業学院から Lokman Zaibet 教授を、チュニジアのボルジュ・

セドリア・テクノパークから Mohamed Kefi 助教を、モロッコのハ

ッサン II 世大学から Mokhtari Mimoun 教授を招聘し、エジプト、

チュニジアおよびモロッコの食薬植物に関する生育環境調査から

分子レベルの機能性解析、加工・製品化、生産基盤解析、消費行

動分析と市場創出に至るまでの一連の高度利用プロセス(価値連

鎖)についての議論を深め、人文社会科学、生態学、農芸化学等

の各分野を連携させ、食薬産業化シーズの高付加価値化と新規市

場開発を図る共同研究の成果を報告した。特に、北アフリカ側の

研究者は、エジプトの伝統的食薬植物の生産基盤調査と抗酸化、

抗癌等の作用を持つ機能性物質の解析結果、チュニジア産小麦と

機能性オリーブ実の生育・生産・国内流通の解析結果、モロッコ

産アルガン実の生産と搾油の最適化についての共同研究の成果を

報告した。日本側からは、北アフリカ産伝統植物の生育基盤解析

と持続的管理、ローズマリー、アルガン油等の機能性解析、オリ

ーブ実とアルガン油の生産基盤調査とオリーブ油消費行動調査に

ついての共同研究の成果を報告した。かかるセミナー開催により、

アロマ植物、オリーブ油、アルガン油等の機能性と持続的有効利

用について学内外の有識者と広く議論と意見交換を行い、エジプ

ト、チュニジア、モロッコと日本の共同研究を更に深化させた。

かかる文理連携・融合型研究型のセミナー開催を通して、若手研

究者が主導して、北アフリカ地域における食薬資源研究を基軸と

した文理融合の研究基盤を形成した。これにより、高度の専門性

に加え、他分野との連携によって自らの専門性を高度化できる能

力を強化し、文理融合研究の素養を持つ若手研究者の育成と醸成

を図った。 セミナーの成果 本セミナーは、若手研究者が事業実施の主体となり、北アフリ

カ原産の食薬資源の高付加価値化と新規市場開拓・創出を図る方

途を提案することにより、同食薬資源を基軸とした文理融合の共

同研究を総括したものであった。同セミナー開催により、北アフ

リカをフィールドとした文理融合の研究基盤を強化することがで

きた。若手研究者は、かかるセミナー開催等の実働を通して、自

らも実践的人材育成を展開できるだけでなく、文理融合研究の素

養を醸成することができた。また、本セミナーでは、①各研究課

題の成果を共有し、かつ他研究課題との連携・融合研究の成果を

報告することにより、北アフリカの食薬資源を基軸とした文理融

25

合研究の拠点を構築すること、②人文社会科学、農芸化学、食品

工学等の各分野が連携し、北アフリカ原産の食薬資源の高付加価

値化を図る方途を提案することにより、地域発展の具体的モデル

を構築すること、③若手研究者が各分野における専門性を習得、

深化すると同時に、異なる専門分野の知見・思考方法を理解し、

自らの専門性の高度化に役立てることができる文理融合研究の素

養の育成と醸成を図ること、④北アフリカ原産の有用植物の機能

性・有効性・高度利用について学内外の有識者と広く議論と意見

交換を行った。これにより、北アフリカと日本の共同研究を更に

深化させ、かつ研究活動の総括を行うことができた。

セミナーの運営組織 ・責任者兼コーディネーター:柏木健一(筑波大学北アフリカ研

究センター助教) ・事業推進委員会:中嶋光敏(筑波大学北アフリカ研究センター

教授)、礒田博子(筑波大学北アフリカ研究センター教授)、森

尾貴広(筑波大学北アフリカ研究センター准教授)、韓畯奎(筑

波大学北アフリカ研究センター准教授)、川田清和(筑波大学北

アフリカ研究センター助教)、岩崎真紀(筑波大学北アフリカ研

究センター助教) ・事務局:飯田正三(筑波大学北アフリカ研究センター次長)、 小屋一平(筑波大学北アフリカ研究センター主任)

開催経費

分担内容

と概算額

日本側 内容 国内旅費 204,510 円

外国旅費 760,600 円

外国旅費・謝金に係る消費税 38,030 円

合計 1,003,140 円

( )国(地域)側 内容 金額

( )国(地域)側 内容 金額

10-3 研究者交流(共同研究、セミナー以外の交流) なし。

26

11.平成24年度経費使用総額

経費内訳 金額(円) 備考

研究交流経費 国内旅費 1,514,700

外国旅費 2,852,485

謝金 0

備品・消耗品購入費 0

その他経費 476,689

外国旅費・謝金に係る消費税

156,126

計 5,000,000

委託手数料 500,000

合 計 5,500,000

12.四半期毎の経費使用額及び交流実績

経費使用額(円) 交流人数<人/人日>

第1四半期 0 1/13(3/3)

第2四半期 2,912,074 6/114 (4/30)

第3四半期 649,859 4/79 (11/72)

第4四半期 1,438,067 4/26 (12/54)

計 5,000,000 15/232 (30/159)