様々な環境変化やリスクに対してレジリエントな組織とは? Arise Japan...

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事業組織はレジリエンスをどうマネージするか ~ いかなる環境変化や危機によっても廃業に追い込まれないために~ 10年後も、その先も、継続して事業運営できているようにするには ~ なぜ? 誰のために? どうやって? 2016510ariseジャパン・コラボレーション委員会事務局 レジリエンスジャパン推進協議会 参与 PwCあらた監査法人 パートナー 宮村 和谷

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事業組織はレジリエンスをどうマネージするか

~ いかなる環境変化や危機によっても廃業に追い込まれないために~

~ 10年後も、その先も、継続して事業運営できているようにするには ~

なぜ? 誰のために? どうやって?

2016年5月10日

ariseジャパン・コラボレーション委員会事務局レジリエンスジャパン推進協議会 参与

PwCあらた監査法人 パートナー宮村 和谷

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Content

1. 事業組織のレジリエンスって何?

2. 環境変化やリスクって何?

3. レジリエンスマネジメントの要素とは?

4. 何が課題なのか?

5. 廃業に追い込まれないための、レジリエンスマネジメント

6. これからの活動への招待

Appendix

1. 内外環境変化とリスクの動向

2. ariseジャパン・コラボレーション委員会とは

3. ariseジャパン・コラボレーション委員会のこれまでの取り組み成果の紹介

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危機や環境変化への適応力、つまり、様々な環境変化や危機に対して、自らを変化・適応させることでこれを乗り切る力、つまり危機や環境変化によっても廃業に追い込まれることなく、事業を永続できる力を、レジリエンスということができる。10年後、その先も継続して事業運営するため(将来、環境変化や何らかの危機で廃業に追い込まれないよう)に、今何を行うべきか考え、取り組むことがレジリエンスの強化につながる。

1. 事業組織のレジリエンスって何? ~解釈~

なぜ? 将来にわたって自組織のミッションを果たすべく、

誰のために? ステークホルダー(顧客、地域社会、取引先、従業員、行政、金融機関 等)のために、

どうやって? 組織と業務機能(バリューチェーン)の危機や環境変化への適応力を高めること

*東日本大震災後5年間での関連倒産企業累計: 1,703件*FTSE100社(ロンドン市場上場企業上位銘柄100社、同市場上場企業時価総額の約8割を占める)のうち、

1999年~2015年(7年間)の間に、上位100銘柄から外れた企業:半数以上

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ISOやBSI、Airmic等においても、レジリエンスの定義に関する議論が進められている。その中では、将来にわたって廃業に追い込まれぬよう、マルチハザード(多様化する危機)に対する事業組織のレジリエンスとして何が求められるかに関する議論が進められている。

1. 事業組織のレジリエンスって何? ~国際基準の動向~

* ISOにおいて、組織レジリエンスと事業継続の標準化を所管する、テクニカルコミッティーTC292のWG2のチェアを務める、James Crask <PwC UK,Risk Assurance所属>が、2015年11月に行われたBCIコンファレンスで利用した資料より抜粋。

ISO22316:不確実な状況下、複雑かつ変化する環境に適用する能力・・・

BS65000:・・生き残るために、増加する変化や、急なディスラプションに対応・適応する能力・・・

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将来にわたっての持続的な事業運営を脅かす(つまり廃業につながる)危機や環境変化としては、災害をはじめとして4つのタイプが存在する。これらの危機に対して、上手く適応していくために必要となる組織のレジリエンスの要素は、危機のタイプによって異なるのだろうか?

2. 環境変化やリスクって何?

① 外部環境より被る危機(急に来るものと、じわじわ来るもの)

災害、テロ、戦争、気候変動、金融危機等

② 業務執行の混乱・失敗による危機

IT障害、投資・プロジェクトの失敗、運転資金ショート、売上低減、サプライチェーンの管理態勢不備等

③ 組織内に隠れた危機

不正、偽装、コンプライアンス違反等

④ 中長期戦略の誤りによる危機

戦略ミス、後継者不在等

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PwCも関与しているISOやAirmic等各種業界団体における検討状況と、PwC独自の知見をもとに、レジリエンスに求められる要素を検討した結果、組織のレジリエンスは、組織内で発揮される3つの要素と、組織外に向けて発揮される3つ要素がポイントになると考えられている。

3. レジリエンスマネジメントの要素 ~組織のレジリエンス~

対組織外 External

Relevance Trust Reliability

適切性・妥当性~ニーズに応じた

(整合した)サービスの提供能力~

信頼関係~価値ある関係性の構築・維持に投資する能力・ステークホルダーエンゲージ

メント~

提供価値の信頼性

~一貫して期待される品質の価値を時間通りに提供

する能力~

組織内部 InternalAdaptive Capacity Coherence Agility

適応できる力~変化に応じて自己変革できる力~

筋が通っていること(経営

理念の一貫性)~ステークホルダーの期待に沿っており、連携して相互に支持できる意思決定ができる能力~

俊敏性~意思決定事項を適切なスピードで

適用できる能力~

【オペレーション(運営)・BCM等に関連する要素】リスクマネジメント、BCM、セキュリティ管理、ITレジリエンス等、業務機能(バリューチェーン)のレジリエンスに関する能力→ 企業が事業を営む業態やミッションによって力を入れるべき重要

なポイントは異なってくる。

【クライシスマネジメントに関連する要素】将来にわたっての重要テーマに関する概念検討・将来動向予測(Horizontal Scanning)やイノベーション、またそれによる戦略変更、予兆管理、クライシスマネジメント等、想定外のリスクに対するレジリエンスに関する能力

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危機に直面しても廃業に至ることなく、事業を継続できるよう、レジリエンスの強化を進めるために、まずあらゆる事業活動・投資において、リスクに配慮できる環境(“リスク配慮型投資”を促進できる環境)を整えていく必要がある。2012年よりariseジャパン・コラボレーション委員会において、継続して進めている事例調査の中で、リスク配慮型投資を進めるには、以下の6つの要素が重要であることが見えてきている。

経営理念・ミッション・戦略等において、リスクレジリエンス強化に向けた方針を考慮し、組織内でリスクマインドを発揮できる文化を醸成する。

→ビジネスレジリエンス分科会

顧客、地域社会、取引先、従業員、行政、金融機関をはじめとした利害関係者(ステークホルダー)との対話や有効なガバナンスが、投資や事業運営におけるリスク認識の向上と、意思決定上の配慮を促進する。

→ビジネスレジリエンス分科会

中長期的な視点で事業運営を検討できる人材や後継者の育成や、管理態勢強化、社員のモチベーションアップをリスク配慮型投資を通じて促進する。

→ビジネスレジリエンス分科会

リスクに配慮した投資を行うための、情報・知識、資金、人材、資産、リレーションといった活用できる経営資源を確保し、適切に配分し、活用させる。

→ビジネスレジリエンス分科会

事業投資を行う際に、リスクに配慮するような機会や、検討プロセスを組織内に設定し、これを継続運用する。

→リスク分科会

重大なリスクの認識や、事象の発生、レギュレーション等とのギャップといった、深刻度合を明らかにする。

→リスク分化会

経営理念と中長期戦略、及びリーダーシップと文化

利害関係者との対話とガバナンス

組織力向上のニーズ(必要性)

利用可能なリソースの活用(経営資源:人、もの、カネ、情報、リレーション)

機会とプロセス 深刻度合

【レジリエンス向上に向けた、リスクに配慮した事業活動・投資につながる6つの要素】

3. レジリエンスマネジメントの要素 ~強化への第一歩~

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<参考> 英国ロンドンにおける調査結果

http://www.continuitycentral.com/index.php/news/resilience-news/886-enterprise-resilience-survey

BS650000の1周年記念として、英国の首都ロンドンを世界で もビジネスを行うに適した都市にすることをミッションとしたLondon Firstと、PwCとで行った組織のレジリエンスに関する調査の結果レポートにおいて、以下のようなポイントが明らかになっている。

何が組織のレジリエンスを一層高めるかについて明らかに理解していると答えた参加者は、37%であった。 自身の組織がレジリエントであると信じている参加者は、28%であった。 自身の組織が、ディスラプション(混乱)や重大なインシデントにおいても生き残るための策を完備していると信じてい

る参加者は、22%であった。 自身の組織が、常に同じコアとなるサービスを提供しつつけていくと信じている参加者はわずか22%であった。

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<参考> 英国ロンドンにおける調査結果

これに対する対応上の重要な発見事項として、以下のようなものが挙げられている。

シニアリーダーは、レジリエンスに対して戦略的なアプローチをとっているが、彼らが受け取っている経営情報は、オペレーション(運営)にフォーカスしたものになりがちになっている。

もレジリエントな組織は、マーケットや利害関係者の期待に対して適切で、存続し続けるために進化している。

組織のカルチャーはレジリエンスにとって非常に重要なものである。

組織内外で連携(Joined up)しての検討と行動が、レジリエンスにつながる。

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広域にわたる活断層のずれによる直下型地震 前震に続く本震(2度の震度7規模)と、続く多数の余震 家屋倒壊と、多数の避難者、避難所強度の劣化、震災関連死 地域コミュニティにおける共助、情報格差、避難所への物資供給難 交通手段の寸断と、水道や都市ガス等のインフラ寸断 都市部と山間部、双方での被害 製造業と農業のサプライチェーンへの影響 震災直後の日常品や人手の不足、避難所の衛生

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<参考> 熊本地震での経験

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東日本大震災からの復旧対応や、熊本地震における危機管理対応状況から見えてきている課題には、以下のようなものがある。その根本課題として、レジリエンス戦略の検討・実効性向上が挙げられ、本質的課題として、広域産業構造と地場密着産業構造の両立が挙げられる。

4. 何が課題か? ~企業の抱える課題~

復旧のための人手確保 売上確保、資金繰り、売掛金回収 各種業界団体や行政等との連携 経営者のモチベーション 後継者と事業継承 管理態勢強化と、中長期的に事業運営

を考えられる人材の確保 リスクマインドを発揮できる文化の醸成

(リスクカルチャー)

危機が発生した際、広域サプライチェーンを継続するために他地域に組み替えられた生産を、如何にして被災地域に戻すか?

想定外・想定以上の危機に対する対応戦略(クライシスマネジメント戦略)や事業継続戦略といった、レジリエンス戦略の明確化と実効性の向上

【地域に根ざした事業組織、産業における課題】

解決に向けてのHow toは比較的に明らか。広域販路開拓支援や、後継者による時価での株式獲得支援策等の追加検討課題は存在するものの、危機発生時の事後的な助成等の制度は整備されており、ハンズオンでのサポートをどうするかが課題。

【根本課題】

リスクシナリオに拘わらず、重大な環境変化や危機に応じた組織的な対応力、情報連携・意思決定力を如何にして向上させるかが課題。

【本質的課題】

広域産業構造と地域密着産業構造構造の両立の手段につき、マルチセクターでの真剣な議論と、課題の識別、対応方針の検討が必要。

課題2 課題3課題1

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熊本地震の状況から、建物の耐震基準は生命を脅かすリスクに対して一定の効果があり、日常的な地域コミュニティのつながりの強さが効果を発揮すること、またクライシスマネジメントシステムの基本は現場主導であり、中央機関の役割は現場のサポートを行うことであるとの方針・認識共有が重要であることが明らかになっている。今後、民間セクターが協力して、より一層レジリエントなコミュニティを実現していくには、以下のような課題に対応していくべきことが見えてきている。

4. 何が課題か? ~市民コミュニティと産業の抱える課題~

【国、地方行政、市民】

【産業】

地方のコミュニティの共助能力は高く、またインシデントコマンドシステムの基本概念は浸透しはじめているが、首都圏におけるコミュニティの共助能力向上や、実被害が出た場合のラストワンマイルを有効に機能させるインシデントコマンドシステムの実現には課題が残る。

広域サプライチェーンの継続能力は徐々に高まっている反面、想定外の変化やリスクへの適応能力や、地場中小企業のBCM能力については課題が残る。

必要物資供給のラストワンマイルのコントロールに課題がある。

地域コミュニティと地方行政間のクライシスマネジメント態勢は万全とはいえない。

(100年に1度のリスクに関する)リスク認識が充分とはいえない。

産業構造(コネクターハブとなっている企業等)を把握できていない。

如何にして地域密着型産業構造と、広域産業構造を両立させるかに課題がある。

日常的に利用されている民間サプライチェーンの利活用。

危機状況下のコミュニティ情報連携基盤構築等、クライシスマネジメントの支援体制強化。

リスクに関する教育の充実や、地域のクライシスマネージャー育成等、リスク認識向上のための施策。

産業構造を日常的に把握・連携できる情報基盤(RESAS等)の整備・活用。

マルチセクターでの議論と、課題の識別、対応方針の検討が必要。

現状 課題 対応案

課題3

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2012年からariseジャパン・コラボレーション委員会で継続的に行っている事例研究の結果、共有価値の創造につながる要素として、以下の6つが見受けられた。先に記載した広域産業と地域密着産業の両立を実現していくためには、事業組織とステークホルダーが、以下のような視点を考慮しつつ、事業組織の活動・投資を評価・判断していくことが重要となる。

4. 何が課題か? ~本質的課題の解決に向けて~

共有されたリスク・課題(ギャップ)認識

共有可能な目標としてリスクやギャップ認識を関係者間で共有することが共有価値創造の第一歩である。

• 官民連携の会合や枠組みを構築・運営することで、レジリエンス上の共有課題を官民で共有し、これを解決するようなアイデアの提案につなげている。

• 国や自治体の戦略・計画が明確化され、公開されていることで、国や地域として重視するリスク・ギャップに応じたアイデアの提案につながっている。

• 本来求められるレベルの有事の対応計画をガイドライン化し、グループ内で共有することで、必要な対応をグローバルでグループワイドに適用している。

• マルチステークホルダーダイアログを開催することで、リスク認識の共有と、個人的なつながりにレバレッジをかけて連携・ネットワーキングを加速させている。

様々な境界を越えた(クロスバウンダリーでの)戦略的共助・協力

セクターや組織等の境界を越えて、計画的に共助・協力を行うことが、共有価値の創造につながる。

• サプライヤーや競合他社と戦略的に協力・情報交換することで、取引先を含めてのサプライチェーンBCPを構築している。

• 複数のメーカーで、同一の自社(リテール)商品を生産するモデルを構築・運営していることで、有事における急激な需要増に対しても、複数メーカーの協力と負担分散により、必要な供給を継続できている。

• ライフラインの担い手である複数セクターの企業間で情報交換を行う場を持つことで、連携しての有事への対応策を検討している。

• 海外新興国メディアとの連携を構築することで、クロスボーダーで情報を収集する基盤を構築している。

三方良しや複数目的(Dual Purpose)達成を念頭においたイノベーションやビジネスモデル作り

売り手、買い手、社会の三方にとっての共有価値、共有可能な副次的効果の達成を念頭におくことで、共有価値の創造に必要なイノベーションやビジネスモデル作りにつながる。

• リテールビジネスにおいて、日常的にカスタマーセントリックな個品単位・現場主義でのデマンドベースのサプライチェーンモデルを機動的に運営・維持していることが、有事におけるサプライチェーンレジリエンスに寄与している。

• 移動手段としての車だけでなく、移動型電源として活用可能な自動車のコンセプトと製品を開発することで、エコロジーや災害対策にも貢献している。

• ミッションクリティカルな役割を担うクライアント等に対しては、優先的な災害時対応につき合意することで、売り手と買い手双方にとって安心かつ強固なリレーションを構築している。

ブランディング、企業価値向上、人材育成との紐づけ 経験と教訓の参照(歴史に学ぶ)

投資を、関与組織のブランディングや企業価値向上、人材育成といった効果に紐づけて検討することで、共有価値の創造につなげやすくなる。

• 災害リスクに取り組んでいるインフラを担う企業ブランドが、クライアントがクリティカルな業務を依頼するにあたってのサービスクオリティに関する信頼につながっており、さらにはそのクライアントからの期待がサービスレジリエンスの維持に寄与している。

• 災害リスク管理の国際的取組に積極的に参画することで、それに関連する自社業務に係る人員の業務意義の認識向上によるモチベーションアップ、及び国際人材育成の機会としている。

• マルチステークホルダーダイアログの成果を社内訓練等で共有することで、社員の意識向上につなげている。

歴史から、過去の経験や教訓を、投資において参照することで、共有価値の創造を目的とした活動が進めやすくなる。

• 震災の教訓を活かし、公共団体との有事の協定を結ぶことで、有事におけるサプライチェーンの確保を図っている。

• 発生した災害から得られた教訓・求められる共有価値の要求事項をもとに、それに対応すべく災害リスク配慮の投資を実行し、サービスレジリエンスの向上、及び地域社会のレジリエンス向上に貢献している。

• 災害の経験を通じて、自社内のレジリエンスを高めるべく、各種研究センターの拡充をおこなった。

• 震災により被災した建物については、その被災経験から、ビルドバックベタ―で耐震確保を実現することができた。

共有価値創造につながる機会への参加障壁を取り除くことで、共有価値の創造を目的とした投資が進めやすくなる。

• 自治体から指定をうけることで、有事においても自治体や複数業者の間で混乱せずスムースにサプライチェーンを確保し、食糧を被災地域に提供する。

• 自治体の防災会議に参加することで、都市のレジリエンス強化に必要とされる対策を把握、対応を行っている。

• 災害対応ソリューションを提供している企業間のコラボレーションの枠組みを構築、参画することで、新興国で求められている災害対応のニーズを把握している。

<共有価値の創造につながる6つの要素>

機会へのアクセシビリティ(共有価値創造のチャンスへの接触機会)

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重大な環境変化やリスクに直面しても廃業に追い込まれることなく、 事業運営を継続していくために、まず、今の組織、業務機能のありのまま・実態を客観的に見て、このままで良いのかを考え、必要かつ重要と思われる課題への対応、適応力の強化を継続的に実施していく必要がある。つまり、事業組織の攻めと守り双方の執行機能を統括するトップマネジメントや、そのガバナンスを行う取締役のコミットメントのもと、現状分析を行うことで重要課題を見極め、これに対応していくためのレジリエンス戦略を策定、実行していくことが求められる。

4. 廃業に追い込まれないための、レジリエンスマネジメント

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前述のような、これまでの研究活動や、熊本地震等の経験から見えてきた課題を解決すべく、ariseジャパン・コラボレーション委員会では、個々の課題の特性に応じて、以下のような分科会を進めていく予定です。

6. これからの活動への招待

リスク分科会過年度まで進めてきた、ディザスターレジリエンススコアカードを用いた都市の課題抽出とビジネスソリューションマッチング活動、及びTRUCのプロジェクトを、リスク・ナレッジに関する分科会に発展させ、以下を目標として、情報(関係専門家、リスク、影響、適応)の収集と整理と、それらをつなぐネットワークづくりを行う。短期)一般には伝わっていない有識者のリスク常識(突発性・慢性/自然由来・人為的/上流・下流)を整理し企業や社会一般に伝える中長期)研究を基礎として人材育成・資格制度の創設(義務教育への組込み、認証制度との連携)座長:東京大学 山室教授、メンバー:横浜国立大学 佐土原教授、立教大学 野田教授、新日鉄住金物産 野中氏、三井住友化学 伊藤氏

ビジネスレジリエンス分科会企業の持続的な成長に資するビジネスレジリエンス強化の取り組みにつながるリスク配慮型投資、及び地域と広域サプライチェーンの両立に資する共有価値創造につながる取組の促進に向けて、求められる仕組み作り等につなげるための活動の検討・推進を行う。座長:名古屋工業大学 渡辺教授連携: ISO TC292 WG2 Chair James Crask 氏

医療連携分科会各種医療機関や企業、自治体等と連携して、マルチセクターによる災害リスクに応じた地域医療連携のガバナンスに関する検討を行う。

海外・グローバルバリューチェーンのレジリエンス分科会日本に限らず、海外・アジア諸国においても、ディザスターリスクに対する都市やバリューチェーンのレジリエンス向上は、重要な課題となってる。ディザスターの固有リスクが高い日本では、これに対すべくレジリエンスを強化することで、残余リスクを低減化・管理してきた実績がある。これらのレジリエンス強化のためのベタープラクティスやソリューションを活かし、海外諸国のレジリエンス強化、ひいては日本のかかわるバリューチェーンのレジリエンス強化への展開を検討する。

Operational ResilienceEnterprise Resilience Tool Overall Results

課題6課題5課題1

課題3課題2課題1 課題4 課題6 課題7

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‘Build trust in society and solve complex problems’Creating risk-resilient societies by making investments risk-sensitive

Sustainable development cannot be achieved unless disaster risk is reduced*

Climate change will increase expected future losses*

Most disasters that could happen have not happened yet*

The continuous “mispricing of risk” threatens our future survival as a species

To manage risks rather than manage disasters it is essential that disaster risk

reduction is reinterpreted to focus on changing the way investment and development decisions are made

*UNISDR Global Assessment Report on Disaster Risk 2015

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グローバル化の進展やアウトソーシング、業界等の境界を越えたビジネス展開等により、組織はより複雑化してきている。

1. 内外環境変化とリスクの動向

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そのような環境下、自然災害は引き続き、発生可能性のあるリスクのトップ5に入っており、その経済的インパクトは年間250~300米ドルに上ると推定されている。

1. 内外環境変化とリスクの動向

•Economic losses due to disasters triggered by natural hazards now reach an annual average of USD 250 to 300 billion

•Global levels of risk due to natural hazards annualized over the long term have increased to an estimated USD 314 billion on an annual basis in the built environment alone (see left)

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①急速な都市化の進行、②気候変動と資源不足、③人口構造の変化、④世界の経済力のシフト、⑤テクノロジーの進歩といった、5つの世界的なメガトレンドの動向により、レジリエンスについても、再考する必要性に迫られている。

Demographic and social change

Shift in global economic power

Rapid urbanisation

Climate change and resource

scarcity

Technological breakthroughs

3.3additional workers – The 65+ labour force in the US almost doubled between 1990 and 2010

million

68%of companies will have at least one global businessunit head based in Asia by 2017

China’s urban population alonehas increased by

400million peoplesince 1980

By 2030, the demand for energy will increase by

50%The Sony Playstation of today, which costs

$300has the computing power of a military supercomputerof 1997

Environment

The increasingly complex and interconnected operating environment requires organizations to reconsider their approach to governance and what constitutes success beyond short-term measures

Opportunity

Disaster Risk Management, resilience and resilient thinking are, at their core, about risk and complexity; and while traditionally complexity is seen as a barrier, resilient thinking embraces complexity

Source: Five megatrends and possible implications, PwC, April 2014

1. 内外環境変化とリスクの動向

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Global Legal Technological / Intellectual Operational Human Capital Financial Reputational

Natural hazards Man-made hazards

• War• Terrorism• Food system

collapse• Pandemic

• Sanctions• OCI• Compliance

failures• Regulatory

violations, ex: FCPA and antitrust

• Cyber • Breach• Intellectual

property theft• R&D • Technology

failures

• Supply chain disruption

• Infrastructurefailure

• Facilities breach• Quality

breakdown

• Talent wars• Retention,

Union strikes• Succession• Insider threat,

tampering

• Global financial crisis

• Commodity price spike

• Bankruptcy, insolvency

• Fraud and financial crime

• Brand• Market position• Communications• Public

misconduct by key personnel

These disaster impact areas provide a way to organize thinking about the types of crisis that can affect any company, country, or industry to drive proactive, preventative actions to address underlying factors before a crisis occurs

Dis

aste

r im

pac

t ar

eas

危機は、自然発生的なものだけではなく、人に起因するものもあり、その影響するエリアは間接的なものも含めると、多岐にわたる。レジリエンス強化にあたっては、2重投資とならぬよう、マルチハザードでの対応が望まれている。

1. 内外環境変化とリスクの動向

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様々なセクターが自由に参加し、レジリエンス強化を目的とした具体的な活動・プロジェクトを企画・推進する場(ariseの一つのプロジェクト)です。2014年3月11日より、国土強靭化計画を推進するレジリエンスジャパン推進協議会と連携しつつ、ariseにつながる活動を行っています。

2. ariseジャパン・コラボレーション委員会とは

【概要】 委員長:レジリエンスジャパン推進協議会副会長京都大学大学院工学研究科教授藤井聡 副委員長:名古屋工業大学教授渡辺研司 参加者:様々なセクターから50以上の組織や団体、専門家が参加し、隔月開催の会合を基点として各種活動を推進中

【沿革】 2008年から取り組まれてきた企業の事業継続性に関する研究(PwCあらた基礎研究所)の活動・成果・ネットワークを基礎として、2012年よ

りUNISDRと連携した活動を実施(PwCあらた基礎研究所R!SEコラボレーションオフィス) 2014年3月11日のローンチイベントを持って、国土強靭化計画を推進するレジリエンスジャパン推進協議会とUNISDR、多様なセクターとが連

携してレジリエンス強化に向けたプロジェクトを企画・推進する場としてR!SEジャパン・コラボレーション委員会を立ち上げ 2015年のUNISDRのPSPとR!SEの統合によるariseのローンチに伴い、ariseジャパン・コラボレーション委員会して継続活動中

【機能】 幅広く様々なセクターから自由に参加可能 具体的な活動やプロジェクトを企画・推進

ariseジャパンコラボレーション委員会

UNISDR arise

Public sector Private sector

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2008年にスタートした「企業の事業継続性に関する研究」の成果とネットワークを活かしつつ、多様なセクターから50以上の組織や団体、専門家が継続的に連携し、レジリエンス向上のための具体的活動・プロジェクトを実施し、その成果を各種イベントやアウトプットでデモンストレーションしています。

3. ariseジャパン・コラボレーション委員会のこれまでの取り組み成果の紹介

PwCあらた基礎研究所:企業の事業継続性に関する研究(2008年~2014年) PwC and UNISDR:Working together to reduce disaster risk(2012年) R!SE Japanシンポジウム:リスクレジリエンスの向上と持続的成長に向けて~マルチセクターの連携と災害リスク配慮型投資のあり方~(2015年3月12日) Bi-Monthly meeting(R!SE 2014年→arise 2015年~)

• RI Asia 2014 : The mis-pricing of risk. Strategic asset allocation in Asia and Japan. Introducing the Initiative for Risk Sensitive Investment (RISE). (2014年)• 企業におけるリスク配慮型投資・共有価値創造 事例研究(2014年)• Disaster resilience scorecardを用いた都市の課題洗出し、及びビジネスソリューションマッチング(2015年~)• TRUC (Transformation and Resilience on Urban Coast), G8 Research Council Initiative 国際研究プロジェクト(2016年)

2012 2013 2014 2015 2030

Create a ‘Safe Space’

to collaborate

Develop the DRM

Business Case 共有価値の創造につながる6つの

要素

リスク配慮型投資の意思決定につながる6つの要素

20162008

From shared Risk to shared

Value

Risk sensitive investment

Multi HazardMngmt. of DR

持続的な

企業価値の創造に向けて

Resistance, Resilience,

Transformation

3. 今後の活動と機会(次頁)

リスク

ビジネスレジリエンス

地域医療連携

海外・グローバルサプライチェーン

その他

All Level

Across allSectors

R!SEジャパン・コラボレーション委員会 ariseジャパン・コラボレーション委員会企業の事業継続性に関する研究( PwCあらた基礎研究所)

DRM-F

R!SEへのコミットメント

R!SEジャパンの枠組みと

活動成果の紹介Multi-Hazard From

Disruption

DRM-F

Multi-sector collaboraiton

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連絡先:ariseジャパンコラボレーション委員会e-mail: [email protected]

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宮村 和谷| PwCあらた監査法人 ビジネス・レジリエンス・アドバイザリー担当 パートナーKazuya Miyamura | PricewaterhouseCoopers Aarata, Business resilience advisory, Partner