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CO2 大規模排出源
緩く傾斜した地層からなる帯水層への貯留(残留ガストラップに期待)
大排出源近傍に多く本研究の主たる研究対象
背斜構造を示す帯水層への貯留(構造トラップに期待)
海底孔口
パイプライン輸送大偏距掘削 -800m
タンカー輸送
海上プラットフォーム
大規模排出源近傍におけるCO2地中貯留・圧入の概念図 「CCS2020 経済産業省 2006年5月」を基に作成
CO2 を地中に埋める─深部帯水層への貯留に向けて─
■ どれくらいどこに埋めることができるかを評価する■ CO2 の移動と地下水への影響を評価する■ 地上から CO2 を監視する● ひとこと 地球工学研究所 地圏科学領域 主任研究員 田中 姿郎
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どれくらいどこに埋めることができるかを評価する
■ CO2 をトラップする考え方 CO2 は 31℃以上、7.4MPa 以上で超臨界状態となり、液体のような高い密度を持ち、気体のような拡散性を示します。CO2 の地中貯留ではこのような性質を踏まえて、CO2 が超臨界状態となる地下水面下 800m 以深に広がる帯水層中に貯留する方法が一般的な考え方となっています。 CO2 を地下にトラップするメカニズムには、①背斜構造や断層構造といった地質や地層の構造によるトラップ、② CO2 相および地下水相が存在する岩石中の間隙からCO2 が排出される際に、毛管力と濡れ性によりある分量の CO2 が間隙内に捕捉される残留ガストラップ、③地中水への溶解トラップ、④CO2 が炭酸水素イオン化して捕捉されるイオン化トラップ、⑤炭酸塩として沈着する鉱物化トラップ等があります(図 1)。わが国では背斜構造・断層構造等、明確なトラップ構造を示す帯水層が殆ど存在しないことが想定されているので、層位トラップ、残留ガストラップ、イオン化トラップへの期待が大きい。
■貯留可能量を評価する 地中貯留では、圧入された超臨界状態の CO2
は、岩石中の微小な間隙に貯留されます。そのため貯留可能量は、貯留層中の間隙の体積を基に計算されます。図 2 には、当所が提案した概略の貯留可能量評価フローを示します。 貯留可能量の評価では、貯留可能範囲(貯留層の分布・形状)の推定、貯留層・遮蔽層の性能(物性)の推定、関連データの修正・整理を行い、貯留可能量算定因子を設定しなければなりません。これらの情報は文献調査、地表地質調査、ボーリング調査、反射法地震探査、重力探査などの結果に基づいて設定され、総合的な地質構造・水理地質構造が評価されます。 排出源近傍での貯留事業を想定する時には、上記の評価に基づく貯留適地であること、経済的に CO2 の輸送が出来ること等を考慮して、候補地を決定する必要があります。
図 1 CO2 のトラップメカニズムの模式図 図 2 貯留可能量評価法のフロー図
わが国では、世界的に埋蔵量が豊富な石炭を、製鉄、発電等の目的で年約 1 億 9 千万トン輸入(07年実績)しており、この内、火力発電用としては約 9,000 万トンを使用しています。石炭火力発電は、温室効果ガスの一つであるCO2 を多く発生するため、火力発電所の発電効率の改善が図られるとともに、排出される CO2 を捕捉しこれを地中に埋める CCS(Carbon dioxide Capture and Storage;二酸化炭素回収貯留)技術の開発が進められています。地中貯留では一般に、油田、ガス田に見られる背斜構造(地層が凸型に褶曲した地質構造)のように、CO2 の浮力による上昇を物理的にトラップ(捕捉)する構造の帯水層を利用すれば、信頼性の高い貯留が可能となります。しかし、わが国の CO2 の大排出源が立地する沿岸部には、このような帯水層の存在は限られています。CO2 の輸送費や貯留容積の潜在量を総合的に検討した結果、明瞭なトラップ構造を示さない帯水層への貯留が現実的な方法として認識され、実現に向けての開発研究が進められています。
地質分布の概略把握・更新世~古第三紀・堆積岩貯留・遮蔽層の設定・岩相分布貯留・遮蔽層の分布状況の把握・地質構造・堆積相・分布深度・断層との関係 etc.
文献調査
現地確認調査(サイト特性)
貯留可能量の算定
物性値の把握・孔隙率・浸透率 etc.性能の推定・圧入性・強度 etc.
地表地質調査物理探査・反射法地震探査・重力探査 etc.孔井調査その他
物理探査・反射法地震探査孔井調査・孔内試験・孔井試料試験その他
貯留可能範囲の推定 貯留層・遮蔽層の性能の推定
データの収集・整理
貯留層評価因子の設定
貯留可能量算定式圧入停止からの時間(年)
隔離への寄与度(%)
0 10 100 1,000 0
100
残留ガストラップ
溶解トラップ
イオン化トラップ鉱物化トラップ
層位・構造トラップ 構造トラップ1)背斜構造によるトラップ
層位トラップ断層
砂岩層(貯留層)
泥岩層(遮蔽層)
CO2
2)断層構造によるトラップ
CO2の移動と地下水への影響を評価する
図 3 実験と解析の比較 - CO2 移行時間 図 4 CO2- 水 - 岩石加速実験装置と事例実験結果
■ CO2 の地中の移動を評価する 安全、確実に CO2 を地中に貯留するには、貯留層の容量・性状の事前評価、長期にわたる貯留に伴う岩盤・地下水への影響の予測を行うことが必要です。このため、岩盤内に CO2 を注入した時に想定される物理現象を把握し、これを数式に表して数値解析手法を開発しました。 考慮した物理現象は、①多孔質である地盤中の地下水による移動現象と分散現象、②岩盤内において、超臨界 CO2、液体 CO2、気体 CO2 は水と混じった状態で存在すること、③温度、圧力に依存して CO2 が水へ溶解すること等です。 開発した解析手法により、長崎県長崎市の池島炭坑を利用した原位置の岩盤における CO2
注入実験の結果を評価しました。この結果、CO2 注入時のボーリング孔間の圧力の変化、CO2 の移行時間(図 3)を概ね再現することができ、解析手法の妥当性を検証できました。
■ CO2 の化学的影響を評価する 安全性の確保や社会的受容性の観点から、貯留した CO2 が万一漏洩した場合の影響を評価しておくことは重要です。CO2 漏洩の際に環境に影響を与える要因には、①地下水への影響、②排ガスから回収される CO2 と一緒に貯留層に送り込まれる可能性のある NOx、SOx等の影響の 2 つがあります。この内、CO2 中のNOx、SOx 等は、一般的な排ガス処理システムを用いることにより、排ガス中に殆ど残留しないことが試験により既に確認されています。 ①について、CO2 が溶解した地下水が岩石と接触する場合に、重金属等の有害物質を溶出・移行させる影響を室内試験により評価しました。この結果、pHを緩衝する能力の大きいけつ岩や石灰岩では、CO2 の溶解による地下水の pH 低下が抑えられ、重金属を中心とする微量元素の溶出は抑制されました。一方、pHを緩衝する能力の小さい砂岩では、酸性領域で溶解しやすい金属が多く溶出することが分かりました。 このように、CO2 溶存下において、岩石から重金属などの微量元素の溶出を実験的に評価する手法(図 4)を提案しました。
高角度割れ目帯(高透水)
排水量測定
1.E-04
1.E-05
溶解CO2質量割合
1.E-06
1.E-07
1.E-08
1.E-01
1.E-03
溶解CO2質量割合
湧出ガス量(㎥/s)
湧出ガス量(㎥/s)
1.E-04
1.E-06
1.E-05
1.E-02
1.E-08
1.E-04
1.E-05
1.E-06
1.E-04
1.E-05
1.E-07
:試験区間:CO2 の流れ:パッカー
CO2 流量測定
B2孔
B1孔ガス観測
B2孔ガス観測 ⒝
⒜
B2孔湧出水白濁
B1孔 - 計算値B1孔 - 実測値
B5孔
B4孔気相CO2(0.61MPa以上で注入)
B3孔B1孔
9:30 9:40 9:50 10:00 10:10 10:20 10:30
B2 孔 - 計算値B2孔 - 実測値
池島炭坑の現位置実験サイト
(ppb)
100
10
1
0.10.01
ヒ素 ホウ素 セレン
<実験条件>常温状態で、80℃、1MPaにおける飽和濃度相当のCO2を圧入
シリンジ
採水
採水用バルブ
圧力ゲージ圧力計
CO2圧入用バルブ
高圧反応容器
岩塩粉末試料
マントルヒーター
Core1Core8Core3Core6
Core10地表面地下100m地下水水質・水道水水質基準
Core9
高粘度用マグネティックスターラー
攪拌子
超純水
熱電対
CO2 移行の計算結果は、計算値(溶解 CO2 質量割合)と測定値(湧出ガス量)の時間変化が、経時的によく対応していることを示している。
2010 年 2 月 18 日発行〒 100-8126(財)電力中央研究所 広報グループ東京都千代田区大手町 1-6-1(大手町ビル 7 階) TEL.(03)3201-6601 FAX.(03)3287-2863http://criepi.denken.or.jp/ ※この冊子は大豆油インキと
再生紙を使用しています
●「大規模排出源近傍における CO2 地中貯留可能性評価法-深部帯水層貯留に向けた研究開発-」電力中央研究所総合報告:N07
●「CO2 地中挙動モニタリングのための物理探査手法の適用性評価」電力中央研究所研究報告:N06010
関 報告書連
CO2 地中貯留は、CO2 の大気への排出量削減法の一つとして国内外で注目されており、既に外国では地下へのCO2 の圧入が大規模に行われています。しかし、構造トラップに乏しいわが国の地質条件を考慮すると、事業化に向けてはまだ多くの課題が残されています。そこで私たちは、地中貯留可能性を評価する
ために、地中貯留の安全性や技術的・社会的信頼性、そして経済性を確保するために必要な技術開発に取り組んでいます。
地球工学研究所地圏科学領域主任研究員田中 姿郎
● ひとこと
地上からCO2 を監視する
図 5 CO2 注入に伴う比抵抗 ・ 自然電位の経時変化
■モニタリング技術の適用性 地下に CO2 を圧入している間、想定した帯水層内に CO2 が貯留されていることを確認することと、貯留した CO2 の地中における挙動を把握することは、地中貯留システムを維持する上で重要な事項です。このための地上からのモニタリング技術として、測定の簡便さと検知感度の高さを考慮して電気探査法と自然電位探査法を選択し、採取した円柱試験体を用いた室内実験と実際に地下約 1,000mに CO2 を溶存する水 5 ㎥を注入する現場実験により、適用性を検討しました。 室内実験では、岩石の円柱試験体への CO2 の注入に伴い比抵抗が増大すること、自然電位は比抵抗の増大とほぼ同時に増加することを確認しました(図 5)。また、現場実験からは、30トン/日程度の CO2 の注入を行えば、有意な自然電位の変化を検知できることを、数値シミュレーションとの組み合せにより明らかにしました。
■地中貯留の事業化に向けて 構造トラップを示す帯水層への貯留であれば、海外では技術的に実用のレベルに到達しています。しかしわが国のように、排出源近傍に広く分布している構造トラップを示さない帯水層への貯留を想定した場合には、CO2 が貯留層内を長期的に移行して地表付近へ到達することや、断層、割れ目を経由して貯留層から漏洩することを想定した CO2 の環境への影響評価、稼働時のモニタリングが、特に重要となります。このため、残留ガストラップ機能の定量評価、様々な岩種、CO2 注入量でのモニタリング技術の適用性評価、および地下水や地盤への化学的影響の予測技術の開発などを進めて行かなくてはなりません。
300
250
200
150
100
50
0
0 20 40 60 80 100 120 140 160 180 200 220
-50
-100
⒜比抵抗の経時変化(縦軸はCO
2
注入前の比抵抗値に対する変化率(%))
経過時間(分)
0 20 40 60 80 100 120 140 160 180 200 220
⒝自然電位の経時変化(縦軸はCO
2
注入前の自然電位値に対する変化量(V))
経過時間(分)
比抵抗の変化(%)
0.2
0.1
0.0
-0.1
-0.2
自然電位の変化(V)
P1-P2
P2-P3
P3-P4
P2-P3
P3-P4
P1-P2
L-P1
P4-H