4 業務目的に対する業務処理プロセスの効率性・合理性の分析 ... · 2018. 6....

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要旨-6 要旨 業務目的に対する業務処理プロセスの効率性・合理性の分析(要旨) 業務における情報システム利用の現状(2章) DMMレベル1の業務を細分化した業務プロセス(レベル2)について、ヒアリングにより労働基準行政情報システムの利用、作業特性分析の把握を行っ た。 DMMレベル1の業務を細分化した業務プロセス(レベル2)について、ヒアリングにより労働基準行政情報システムの利用、作業特性分析の把握を行っ た。 システム利用の割合から見た業務特性と今後のシステム化による業務効率化の可能性 都道府県労働局、労働基準監督署ともに労働基準行政情報システムを使う業務の割合が低いのが特徴である。庁内業務ではない現場での業務に多く の時間を割いているという業務特性に起因している。 また、現在システム構築が進展中であり、対象業務とシステムがカバーしている業務が未だ一致していない状況もある。 一方、業務アプリケーションの他に業務支援ソフト(ワープロ、表計算等)も搭載されており、システムの利用範囲が広いことも特徴である。 監督、安全衛生業務共に、定型処理型の業務のウエイトが極端に少ないこと、また発生した事案に業務内容が左右される受動型業務が多いことで、業 務の手順そのものを自動化するという形でシステムを活用することは難しいという業務特性があり、これを反映したものともいえる。 しかし、システムによる業務の自動化が困難でも、調査、判断、資料作成などをシステムによって支援できる要素は多分にある。たとえば以下のような例 を想定することができる。 都道府県労働局 監督課においては一般監察における業務処理状況等データ作成 賃金課室においては審議会関係業務における情報収集、分析及び資料作成 安全衛生主務課においては免許管理業務、検査・検定業務における結果入力 労働基準監督署 監督関係では、臨検監督時の結果入力、届出・報告処理の受付及びシステム登録、申告処理における申告処理台帳索引簿及び申告 処理台帳などの作成、未払賃金立替払における書類作成、閲覧・検索機能のシステム化 安全衛生関係では個別指導時の結果の現地入力、集団指導における情報収集、分析及び資料作成、検査・検定業務における結果入 各組織共通業務 行政運営方針策定業務における外部情報収集及び情報分析・加工 相談業務における相談記録の作成

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要旨-6 要旨

■4 業務目的に対する業務処理プロセスの効率性・合理性の分析(要旨) 業務における情報システム利用の現状(2章)

DMMレベル1の業務を細分化した業務プロセス(レベル2)について、ヒアリングにより労働基準行政情報システムの利用、作業特性分析の把握を行った。

DMMレベル1の業務を細分化した業務プロセス(レベル2)について、ヒアリングにより労働基準行政情報システムの利用、作業特性分析の把握を行った。

システム利用の割合から見た業務特性と今後のシステム化による業務効率化の可能性

都道府県労働局、労働基準監督署ともに労働基準行政情報システムを使う業務の割合が低いのが特徴である。庁内業務ではない現場での業務に多く

の時間を割いているという業務特性に起因している。

また、現在システム構築が進展中であり、対象業務とシステムがカバーしている業務が未だ一致していない状況もある。

一方、業務アプリケーションの他に業務支援ソフト(ワープロ、表計算等)も搭載されており、システムの利用範囲が広いことも特徴である。

監督、安全衛生業務共に、定型処理型の業務のウエイトが極端に少ないこと、また発生した事案に業務内容が左右される受動型業務が多いことで、業

務の手順そのものを自動化するという形でシステムを活用することは難しいという業務特性があり、これを反映したものともいえる。

しかし、システムによる業務の自動化が困難でも、調査、判断、資料作成などをシステムによって支援できる要素は多分にある。たとえば以下のような例

を想定することができる。

都道府県労働局

監督課においては一般監察における業務処理状況等データ作成

賃金課室においては審議会関係業務における情報収集、分析及び資料作成

安全衛生主務課においては免許管理業務、検査・検定業務における結果入力

労働基準監督署

監督関係では、臨検監督時の結果入力、届出・報告処理の受付及びシステム登録、申告処理における申告処理台帳索引簿及び申告

処理台帳などの作成、未払賃金立替払における書類作成、閲覧・検索機能のシステム化

安全衛生関係では個別指導時の結果の現地入力、集団指導における情報収集、分析及び資料作成、検査・検定業務における結果入

各組織共通業務

行政運営方針策定業務における外部情報収集及び情報分析・加工

相談業務における相談記録の作成

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要旨-7 要旨

■4 業務目的に対する業務処理プロセスの効率性・合理性の分析(要旨)

 システム刷新により効率化が見込める業務(2章)

都道府県労働局 労働基準監督署

監督課(労働時間課含む)

賃金室(課)

安全・衛生課

各課共通業務

監督(賃金含む)関係課

安全・衛生関係課

各課共通業務

一般監察一般監察

審議会審議会

検査・検定検査・検定

窓口・電話相談等窓口・電話相談等

運営方針策定全般運営方針策定全般

免許管理免許管理

事業場など現地に出向く指導・監督等事業場など現地に出向く指導・監督等

指導・監督等の事業場選定全般指導・監督等の事業場選定全般

申告処理申告処理

未払賃金立替払未払賃金立替払

臨検監督臨検監督

届出・報告処理届出・報告処理

集団指導・自主点検集団指導・自主点検

検査・検定検査・検定

個別指導個別指導現

業務の作業特性からシステム化による効率化が期待できる場合とあまり期待できない場合があるため、特に大きく効率化が期待できる業務(DMMレベル1またはその類似集合体)を抽出した。

抽出の条件は、業務量が延べ人工(工数)換算で100人日以上あり、かつ、各業務(DMMレベル1)における労働基準行政情報システムの利用業務プロセス(DMMレベル2)、または、IT利用で業務効率化が期待できる業務プロセス(DMMレベル2)のどちらかが、その業務における業務比率の20%以上の業務(DMMレベル1)とした。

抽出された業務(DMMレベル1)は、以下のとおりであり、労働基準行政情報システムの利用業務プロセスが、20%以上の場合は、刷新の効果が大きいものとして   と表示し、また、IT利用で業務効率化が期待できる業務プロセスが20%以上の場合は、未システム化業務のシステム化の効果が大きいものとして    と表示している。

業務の作業特性からシステム化による効率化が期待できる場合とあまり期待できない場合があるため、特に大きく効率化が期待できる業務(DMMレベル1またはその類似集合体)を抽出した。

抽出の条件は、業務量が延べ人工(工数)換算で100人日以上あり、かつ、各業務(DMMレベル1)における労働基準行政情報システムの利用業務プロセス(DMMレベル2)、または、IT利用で業務効率化が期待できる業務プロセス(DMMレベル2)のどちらかが、その業務における業務比率の20%以上の業務(DMMレベル1)とした。

抽出された業務(DMMレベル1)は、以下のとおりであり、労働基準行政情報システムの利用業務プロセスが、20%以上の場合は、刷新の効果が大きいものとして   と表示し、また、IT利用で業務効率化が期待できる業務プロセスが20%以上の場合は、未システム化業務のシステム化の効果が大きいものとして    と表示している。

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要旨-8 要旨

■ 4 業務目的に対する業務処理プロセスの効率性・合理性の分析(要旨) 業務改善の方向性(2章)

前ページで抽出された複数課題の解決に共通的な業務改善の方向性および組織対応の可能性の提言を以下に示す。前ページで抽出された複数課題の解決に共通的な業務改善の方向性および組織対応の可能性の提言を以下に示す。

N o . 業 務 刷 新 の 方 向 性 (案 ) 概 要

A事 業 場 デ ー タベ ー スの 向 上(更 新 、検 索 分 類 な ど )

 監 督 、指 導 な どの 計 画 策 定 あ るい は 調 査 の た め の 事 業 場 選 定 、事 業 場 へ の 連 絡 、問 い 合 わ せ な どに よ り 、タ イムリー か つ 正 確 な事 業 場 情 報 が 求 め られ る 。これ ら事 業 場 デ ー タベ ー スの 更 新 の 迅 速 化 、そ の た め の ル ー ル 作 り 、他の 監 督 ・検 査 な ど で 把 握 (シ ス テ ム 登 録 )した 最 新 事 業 場 情 報 との 情 報 連 携 な どの 検 討 が 必 要 で あ る 。

B 検 索 処 理 の 改 善 上 記 の 事 業 場 デ ー タベ ー ス で の 検 索 ・照 会 に お い て 、事 業 場 の 属 性 区 分 の 不 適 正 (業 種 な ど )等 の 是 正 、自 由 な検 索 キ ー 、あ い ま い な 検 索 キ ー での 検 索 な どが で き る よ うに す る必 要 が あ る と考 え られ る 。

C 外 部 情 報 収 集 の 充 実

 運 営 方 針 策 定 、外 部 環 境 ・動 向 把 握 に お い て さま ざ ま 外 部 情 報 源 が 活 用 され て い る 。書 籍 、文 献 等 の ほ か 今 日 では イ ン ター ネ ッ ト検 索 、オ ン ラ イ ンデ ー タベ ー スサ ー ビス の 活 用 が 一 般 化 して い る 。ど の 職 員 も自 由 に イ ン ター ネ ッ ト検 索 で き る環 境 や 外 部 デ ー タベ ー スサ ー ビス 利 用 の 促 進 が 今 後 必 要 で あ る と考 え られ る 。

D臨 検 ・現 地 指 導 等 に お け るモ バ イル 端 末 の 活 用

 事 業 場 な ど現 地 に 出 向 く業 務 では 、現 地 での 情 報 提 供 ・検 索 、現 地 調 査 ・指 導 ・監 督 結 果 の 記 録 な ど モ バ イル 端 末を利 用 した 実 施 が 業 務 効 率 化 に つ なが る 。ま た 、昼 間 は 現 地 、夕 方 署 に 戻 って 書 類 作 成 ・シ ス テ ム 入 力 とい うパ ターンに お い て H T2端 末 の 稼 働 時 間 延 長 問 題 に 対 す る解 決 に もつ な が る こ とも考 慮 す れ ば 、監 督 官 等 に モ バ イル 端 末(必 要 に 応 じて 省 で持 って い る シ ス テ ム へ の ア クセ ス も可 能 )を 持 た せ る こ とを 検 討 す べ き で あ る と考 え れ られ る 。

E監 督 (賃 金 )と安 全 衛 生 の 指 導内 容 ・監 督 実 績 な どの 情 報 共 有

 署 の 監 督 課 と安 全 衛 生 課 の 監 督 ・指 導 結 果 、計 画 が 相 互 に わ か る よ うに す る こ とで 事 業 場 選 定 の 重 複 や 指 導 の 重複 な どが 避 け られ る 。ま た 、情 報 シ ス テ ム に よ る情 報 共 有 が 、タイム リー な 状 況 把 握 、検 索 等 に お い て有 効 で あ り 、監 督 結 果 登 録 情 報 な どの 監 督 課 、安 全 衛 生 課 の 情 報 共 有 の 可 能 性 を検 討 す べ き で あ る と考 え られ る 。

F都 道 府 県 労 働 局 (本 省 )、労 働基 準 監 督 署 間 の 情 報 連 携(効 果 把 握 、監 察 資 料 な ど )

 都 道 府 県 労 働 局 (あ るい は 本 省 )で の 運 営 方 針 策 定 あ るい は 労 働 基 準 監 督 署 の 監 察 に お い て 、労 働 基 準 監 督 署での 監 督 結 果 等 の 状 況 等 を活 用 して い るが 、定 型 処 理 可 能 な情 報 に 関 して は 、電 子 化 に よ る対 応 が 可 能 で あ る 。労働 基 準 監 督 署 の 監 督 結 果 等 の 状 況 等 を シ ス テ ム 上 で都 道 府 県 労 働 局 等 が 利 用 可 能 とな れ ば 、業 務 での 効 率 化 が見 込 まれ る と考 え られ る 。

G 相 談 の 効 率 の た め の 対 応

 都 道 府 県 労 働 局 や 労 働 基 準 監 督 署 での 電 話 相 談 対 応 は 、件 数 、業 務 量 とも相 当 数 で あ る と同 時 に 電 話 受 付 前 の業 務 の 中 断 とい う非 効 率 が 発 生 す る 。ま た 、相 談 の 内 容 を吟 味 す れ ば 、一 般 の 労 働 関 係 法 令 に 対 す る問 い 合 わ せだ け の 簡 単 な案 件 もあ れ ば 、相 談 者 の 勤 務 す る事 業 場 に お い て 、労 働 条 件 の 引 き下 げ 等 具 体 的 な労 働 問 題 の 問 い合 わ せ もあ る 。前 者 の 一 般 的 な相 談 に お い ては 、法 令 等 の 知 識 を伝 え るだ け で対 応 可 能 な場 合 もあ る と思 わ れ る 。この 場 合 、予 め 録 音 した 電 話 番 号 案 内 に よ る方 式 や イン ター ネ ッ トH Pで 画 面 案 内 を行 う方 式 も考 え られ 、 24時 間 対応 とす る こ とで 、限 られ た 開 庁 時 間 で しか 職 員 が 対 応 で き な い とい う問 題 も回 避 で き る 。この 対 応 窓 口 を集 中 化 す る検 討 が あ って もよい と思 わ れ る 。な お 、相 談 案 内 の デ ー タベ ー ス構 築 に つ い ては 、監 督 署 に お い て 、現 状 の 紙 の 相談 記 録 簿 よ り電 子 的 な デ ー タベ ー ス を設 立 し 、相 談 者 の プ ライバ シ ー を侵 害 しな い 程 度 に お い て 、反 映 させ る こ とも有 効 と考 え られ る 。

H 免 許 事 務 の 集 中 化

免 許 管 理 業 務 自 体 に つ い ては 定 型 的 に 処 理 で き る内 容 も多 く、安 全 衛 生 業 務 の 中 で も集 中 化 して 処 理 を行 うこ とによ り業 務 効 率 化 が 想 定 で き る 。ま た 、申 請 者 の 利 便 性 を考 慮 しつ つ 、発 行 ・管 理 事 務 も集 中 化 して 業 務 を行 うこ とによ り 、全 体 の 業 務 効 率 化 の 可 能 性 が 想 定 で き る と考 え られ る 。

I手 作 業 業 務 の シ ス テ ム 化 早 期実 現

 申 告 処 理 に お け る索 引 簿 、申 告 処 理 台 帳 の 作 成 、未 払 賃 金 立 替 払 に お け る確 認 台 帳 、認 定 ・確 認 復 命 書 、通 知 書の 作 成 、個 別 指 導 の 復 命 書 等 の 作 成 、特 定 機 械 等 の 検 査 台 帳 の 作 成 に つ い ては 、一 部 テ ン プ レー トに よ る様 式 化等 行 わ れ る もの の 、そ の 作 成 作 業 は 復 命 書 等 紙 に よ る記 載 で行 わ れ て い るの が 、現 状 で あ るが 、これ らの 業 務 を シス テ ム 化 す る こ とに よ り書 類 作 成 に お け る効 率 化 、デ ー タベ ー ス構 築 に よ る検 索 、照 会 機 能 の 充 実 化 が 見 込 まれ ると考 え られ る 。

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要旨-9 要旨

■5 業務目的に対するシステム構成の効率性・合理性の分析(要旨) システムの概要(3章)

システムの沿革

労働基準行政情報システムは、平成10年10月に、個別事業場管理システムを再編拡充した分散型ネットワークシステムとして稼働を開始した。平成15年には、蓄積された業務情報の増加や、各種手続の電子化を受けた機能追加が見込まれることから全面更改を行った。更改にあたっては、従来のソフトウェアや分散サーバ方式を継続する一方で、シンクライアント方式を採用して、運用・管理及び保守に関する費用の逓減が図られている。

システムの運用・開発

労働基準行政情報システムの運用・保守は、労災保険業務室の情報システム運用係および支援SE、加えて各局のシステム管理者が担う。ただし、ユーザ情報の管理や端末の移設申請対応およびユーザ教育以外は、業務室とベンダとのデータ通信サービス利用契約に基づいてアウトソースされている。

本省上石神井庁舎には統制席が設置されており、オペレータがシステムの起動・終了処理や局署の各機器の遠隔監視、局署からの各機器の故障及び操作に関する問い合わせ及び保守対応等をはじめとした業務を実施している。一方、局署における保守事務は、運用管理責任者を選任した上で行っている。

なお、センタ設備もしくは基準サーバについては、運用時間の制限が存在する。端末の運用時間については定めがない。

システム技術評価

労働基準行政情報システムの技術評価としては、独立行政法人情報処理推進機構や米連邦政府が作成した技術参照モデル(TRM)を参考に作成したモデルにおいて、本システムの標準技術マッチング率は74%である。

TRMとのマッチング率は高く、他システムとの連携も機能追加によって対応できる可能性は高い。今後もコスト効果やシステム間連携強化の観点から、技術参照モデルの準拠性に配慮してオープン化を進めていく必要がある。また、個人別IDの認証においては、一般的な認証技術のみを利用しているため関連技術の利用検討が必要である。

システムの沿革

労働基準行政情報システムは、平成10年10月に、個別事業場管理システムを再編拡充した分散型ネットワークシステムとして稼働を開始した。平成15年には、蓄積された業務情報の増加や、各種手続の電子化を受けた機能追加が見込まれることから全面更改を行った。更改にあたっては、従来のソフトウェアや分散サーバ方式を継続する一方で、シンクライアント方式を採用して、運用・管理及び保守に関する費用の逓減が図られている。

システムの運用・開発

労働基準行政情報システムの運用・保守は、労災保険業務室の情報システム運用係および支援SE、加えて各局のシステム管理者が担う。ただし、ユーザ情報の管理や端末の移設申請対応およびユーザ教育以外は、業務室とベンダとのデータ通信サービス利用契約に基づいてアウトソースされている。

本省上石神井庁舎には統制席が設置されており、オペレータがシステムの起動・終了処理や局署の各機器の遠隔監視、局署からの各機器の故障及び操作に関する問い合わせ及び保守対応等をはじめとした業務を実施している。一方、局署における保守事務は、運用管理責任者を選任した上で行っている。

なお、センタ設備もしくは基準サーバについては、運用時間の制限が存在する。端末の運用時間については定めがない。

システム技術評価

労働基準行政情報システムの技術評価としては、独立行政法人情報処理推進機構や米連邦政府が作成した技術参照モデル(TRM)を参考に作成したモデルにおいて、本システムの標準技術マッチング率は74%である。

TRMとのマッチング率は高く、他システムとの連携も機能追加によって対応できる可能性は高い。今後もコスト効果やシステム間連携強化の観点から、技術参照モデルの準拠性に配慮してオープン化を進めていく必要がある。また、個人別IDの認証においては、一般的な認証技術のみを利用しているため関連技術の利用検討が必要である。

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要旨-10 要旨

■5 業務目的に対するシステム構成の効率性・合理性の分析(要旨) システム構成および機能における課題(3章)

システム構成および機能における課題は、以下のとおりである。システム構成および機能における課題は、以下のとおりである。

調査結果 評価できる点標準技術の活用 労働基準行政情報システムでは、パッケージソフトウェアの活用

やIP-VPN上でのTCP/IPプロトコルの利用など、標準技術への対応が進んでいる。

調達や運用・管理等に要するコストの低下が期待できる。

分散サーバ方式の採用 労働基準行政情報システムには分散サーバ方式が採用されており、センタには本省サーバ(MS)が、都道府県労働局には基準サーバ(KS)が配置されている。さらに都道府県労働局及び労働基準監督署には、メール装置(MU)やシン・クライアントサーバ(TCS)等が配置されている。

分散サーバ方式では一般に、サーバやネットワークにかかる負荷を軽減することができる。また、労働基準行政情報システムでは上位組織のサーバが下位組織のサーバに障害があった場合のバックアップとして動作するよう設計されており、信頼性の向上に役立っている。

基準サーバ(KS)とシンクライアントサーバ(TCS)の配置

上記のように、アプリケーションサーバであるTCSと、データベースサーバであるKSは署と局に分散されている。

メール装置(MU)の機能 署のMUは、本来の電子メールサーバとしての役割の他に、ユーザIDの管理や共有ストレージエリアの提供、通達・事務連絡情報等の送受信などの機能も担っている。

基準サーバ(KS)とシンクライアントサーバ(TCS)の配置に起因する、パフォーマンス上の弱点を補うことができる可能性がある。

メール装置(MU)のバックアップ MUは上記のように、電子メールサーバとしての役割のほか、個別掲示板機能の提供やユーザIDの管理、あるいは通達・事務連絡情報等の送受信など多くの重要な機能を提供している。その一方、クラスタリングやレプリケーションといった手法で可用性の維持やデータの保全が図られているKSやMSと比較すると、データの保全や可用性の確保の面で十分に配慮されていないようにも見受けられる。

システム化状況 システム機能が対応しているのは、監督関係の業務が中心となっており、安全衛生業務などのシステム機能の対応は、あまり進んでいない。

システム化された業務が多い監督課では、情報の蓄積が着実に進んでいる。

端末の利用 システム化された業務のほとんどは、HT2から行えるようになっている。その一方で、OCIRやLPRを利用する業務は限定されている。 -

登録できる情報 監督結果では、法違反の有無だけでなく、当該事業者に関連した申告の内容や、監督時の状況などといった定性的な情報も入力・管理したい。特定機械等管理システムでは、明細書の内容が不足している。 -

データベースのメンテナンス 事業場データベースが最新になっていない。更新できるのが署のみで、タイミングも限られている。通達等にも、登録されていないものがある。 -

監督署間などの情報共有 監督と安全衛生、監督署相互などでの情報共有・情報交換に対するシステム的な支援が十分でない。

インターネット接続 企業概要等インターネットで調査できるよう、インターネット接続可能な範囲を広げて欲しい。

業務には不適切なサイトやページに接続することを防止することができる。

システム機能

分類

システム構成

問題点、課題

一方で、過度な分散化は運用・管理コストの増大や計算能力の大幅な余剰につながる危険性もあるといわれる。現在と同等の応答時間を維持しつつ、これらサーバの集約を図ることについての可能性の有無について検討する必要がある。

通常、アプリケーションサーバとデータベースサーバはLAN上に存在していることが望ましい。WAN経由で連携させるのは、パフォーマンスに悪影響を及ぼす可能性が大きいため、適切な配置のあり方について検討を行う必要がある。

システム構成の複雑性を招いており、保守性を低下させている可能性がある。

MUについても、KSやMSと同様、二重化をはじめとした信頼性向上策の必要性について検討する必要がある。 また、その他の装置についても信頼性向上のための施策が必要かどうかの検討を行う必要がある。

業務のために必要な情報の蓄積や収集が十分にかつ効率的に行えない可能性がある。

端末の利用頻度に比して、過大な台数が配布されてしまう可能性がある。

運営方針や監督計画等作成する前提となる情報がシステムに十分蓄積されず、適切な行政運営が行いにくくなる可能性がある。

業務のために必要な情報がシステムからだけでは収集できず、業務が非効率になる可能性がある。

他署などからの問い合わせへの対応に業務量を割く必要が生まれ、業務が非効率になる可能性がある。類似案件について、署によって異なる指導等が行われ、行政の公平性の実現に支障を来す可能性がある。類似事例の検索、系列の他事業所での指導状況など把握できることが望まれる。

業務のために必要な情報がシステムからだけでは収集できず、業務が非効率になる可能性がある。

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要旨-11 要旨

■5 業務目的に対するシステム構成の効率性・合理性の分析(要旨) システム運用における課題(3章)

システム運用における課題は、以下のとおりである。システム運用における課題は、以下のとおりである。

調査結果 評価できる点アウトソースの活用 労働基準行政情報システムの運用・保守のうち、ユーザ情報の

管理や端末の移設申請対応およびユーザ教育を除く業務は、業務室とベンダとのデータ通信サービス利用契約に基づいてアウトソースされている。

数年での異動が通常である職員の知識・経験を補うことで、効率的な運用を行うことが可能である。

システム運用時間 センタ設備及び基準サーバの運用時間に制限があるため、データベースへの登録業務は17時、検索業務は20時以降行えなくなってしまう。

システム運用ログの取得 MSおよびKSについて、性能評価に利用できるログが日常的には採取されていない。 -

CPU使用率 CPU使用率はほとんどの時間帯で10%未満であり、50%を超えることはまれであった。

CPUは、十分な性能を確保している。

メモリ利用状況 未使用メモリサイズは、1日を通じて安定して推移している。未使用スワップエリアの減少もあまりみられない。

メモリ容量は、十分なものである。

パフォーマンス 一部の業務アプリケーションについて、反応が遅いことがある。登録されているはずの情報が、検索しても見つからない場合がある。

ネットワーク 赤外線LANが切断されやすく、業務に支障がある。LPRによる免許証印刷が、正しい位置に印字されないことが時折ある。

システム運用実態

分類 問題点、課題システムの発注や開発管理等を適切に行うために必要な能力が、組織内部に蓄積されにくくなる可能性がある。

臨検監督を終えて夕方署に戻ってからでは、監督・指導結果の入力が行えない場合がある地方最低賃金審議会の決定が夜間になった場合に結果をシステムに登録できず、本省に対してはFAXで速報するという二度手間が発生している。

システム更改等の際に、設備や性能等検討するための基礎的データが存在せず、定量的な根拠に基づくシステム設計を行うのが困難になる。

業務が非効率になる可能性がある。また、運営方針や監督計画等作成する前提となる情報がシステムに十分蓄積されず、適切な行政運営が行いにくくなる可能性がある。

業務が非効率になる可能性がある。

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要旨-12 要旨

■6 安全性・信頼性の確保(要旨) 使用者サイドにおける安全性・信頼性に関する課題(4章)

遵守状況に関する現状(局・署等、使用者サイドにおける運用状況)の調査の結果、使用者サイドにおける現状の主要な課題は次のとおりである。 遵守状況に関する現状(局・署等、使用者サイドにおける運用状況)の調査の結果、使用者サイドにおける現状の主要な課題は次のとおりである。 

使用者サイドにおける課題

現行の諸制約(建物・設備、情報システム専門要員の不足等)の中で、職員は業務で取扱う情報の重要性を意識し、情報セキュリティ対策に取組んでいる。しかし、統括管理する機能が弱く、処々でリスクの高い事項が認められながらも抜本的な対策が打ち出せていない面もある。

現行のセキュリティレベルは、労働基準行政情報システムの持つシステムとしての安全性にその多くを依存して保たれており、厚生労働省情報セキュリティポリシーに基づく対策の実施等、職員に対する人的セキュリティ対策で保たれている訳ではない。

職員の安全性に対する意識は十分に高いと考えられるが、正しい情報セキュリティ対策については継続的教育を行う必要がある。研修プログラムに情報セキュリティを盛り込み、情報セキュリティ意識を高める必要がある。

労働基準行政情報システムでは、安全性を強化する一つの手段として、使用者の権限に制限を加えている。一般に制限を厳しくすることで安全性は高まるが使用者の利便性は低くなる。使用者が利便性を回復するために制限を回避するような手段を講じて、本来の意図とは逆に安全性を損ねる結果が生じることがある。本システムにおいても、利便性と安全性のバランスを見直すことで制限を最適化する検討が必要である。

局署に配置されたサーバラックのほとんどにおいて安全管理上の問題があった。基本的な安全管理措置については周知徹底し、定期的な安全確認を行うなどの対策が必要である。

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要旨-13 要旨

■6 安全性・信頼性の確保(要旨) 開発・運用サイドにおける安全性・信頼性に関する課題(4章)

開発・運用サイドにおける現状の主要な課題は次のとおりである。開発・運用サイドにおける現状の主要な課題は次のとおりである。

開発・運用サイドにおける課題

情報システムが高度化しているにも関わらず十分な教育・訓練が不足している、また定期的な人事異動があるため情報技術に関連するノウハウを

発注側で継続的に保有しにくい状況にあること等から、ベンダの作業を十分に監理(内容を理解し、問題点を指摘する等)できる人材の確保が困難

になっている。

センタ設備においては十分な安全性対策がとられていると判断できる。

センタ設備のおかれている庁舎への入退出管理は玄関に置かれる守衛室での記録簿への記入によるもので、十分なものとはいえない。サーバ室

に至るまでの経路に、数段階のセキュリティレベルを持つ複数のゾーンを配置し、より厳しい入退室管理を実施すべきである。

センタ室内の安全性対策、信頼性対策については十分であると考えられる。しかし、外部ネットワークとの接続点にファイアウォールが設置されてい

るといっても、不正行為や侵害事件が100%発生しないということでは無いため、IDS(不正侵入検出装置)の設置、強力な認証機構の採用など、

新しいテクノロジーの採用を考慮して、更なる安全性の強化を図ることが望ましい。

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要旨-14 要旨

■6 安全性・信頼性の確保(要旨) 安全性・信頼性に関する見直し方針①(4章)

安全性・信頼性の見直し方針の方向性は次のとおりである。安全性・信頼性の見直し方針の方向性は次のとおりである。

システムの構成要素と標準的対策とのマッチング分析結果より

信頼性(可用性・回復性)に関する設計目標

– ハードウェア以外のソフトウェア、ネットワークの定性的な目標(許容ダウンタイム、1ヶ月当たりの障害発生率など)を示す必要がある。

信頼性(可用性・回復性)を確保するための各種方策の実施状況

– 方策は十分とられていると考えられるが、局署でのヒアリングでは、Coil、Moilといった光無線における通信障害、シンクライアントシステムのフリーズ現象の発生が見られるとの報告を受けた。使用者側の可用性に影響を与えるこれらの問題の原因を早期に特定し、しかるべき対策を打ち出す必要がある。

脅威の分析と対策のカバレージ分析結果より

下記のセキュリティ要求事項に対応する運用マニュアル類の整備が必要である。

- 職員自身の行う情報セキュリティ対策(クリアデスク及びクリアスクリーンポリシー、複写機、ファクシミリの管理、セキュリティ事件及び事故への対応)

- 重要施設を配置する建物の物理的セキュリティ対策(環境への配慮(災害、障害への対応策)

- 侵入防止措置、防犯措置

- 事業継続計画の策定(管理計画の策定、業務の重要度の識別、事業継続計画の試験及び評価)

なぜなら、明文化された運用マニュアル類の欠如は、関係者間での意識統一や教育に悪影響を与え、安全性・信頼性を低下させる誘因となるだけでなく、システムの刷新可能性を低下させる可能性があるためである。

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要旨-15 要旨

■6 安全性・信頼性の確保(要旨) 安全性・信頼性に関する見直し方針②(4章)

安全性・信頼性に関する推奨事項は、次のとおりである。安全性・信頼性に関する推奨事項は、次のとおりである。

刷新の可否に関わらず実施が望まれる推奨事項

組織的措置

- システムの運用実態に即したセキュリティ運用マニュアルの整備と定期的な見直し(組織、技術、物理環境等の変化への対応)

- 必要に応じた上位規定(対策基準等)への反映

- 対策基準、運用マニュアル等の遵守状況の定期的な把握(監査の実施)

人的措置

- システムの使用者に対する(一定程度の専門的かつ)継続的な個別教育の実施

- システムの開発・運用担当者に対する、専門的かつ継続的な個別教育の実施

技術的措置

- 個人を特定できる本人識別用カードの配布(あるいは生体認証システムの導入)による確実な本人認証の実現

- システムおよびデータへの個人別アクセス記録の採取

- ネットワークへの不正侵入、内部犯行を考慮したセキュリティ対策の実施

刷新(大規模なシステム更改)時に実施が望まれる推奨事項

組織的措置

- 局署で独自に導入している汎用PCに対するセキュリティ対策基準の策定

技術的措置

- 端末における電子データ保管機能の制限の妥当性の見直し

- 個人別アクセスログの分析、警告機能の実現

- 非常勤職員に対するID発行

物理的措置

- 光無線環境の見直し(通信時の信頼性向上、または有線への置き換え)

- 地方局・監督署等におけるサーバラックの安全管理規定の見直し

- 画面からの情報漏洩防止対策、等

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要旨-16 要旨

■7 費用算定方法等の妥当性の分析(要旨) ハードウェア、ソフトウェアの費用算定プロセス及び算定根拠の妥当性(5章)

労働基準行政情報システムに関する平成10年度以降の費用支出の実績と費用構造は、以下のとおり。労働基準行政情報システム(センタ設備・回線設備)

- 平成10年度~16年度の支出は、 8,180百万円である。- 電子申請以外のサーバ費用に関しては、平成15年度のシステム更改における既設サーバの能力向上及び安全性・信頼性の向上により、  約20%費用が増加している。

- システム統制席サーバの費用は、変化がない。

- システム統制席端末の費用は、平成15年度のシステム更改以後、約30%費用が減少している。労働基準行政情報システム(地方局・署端末設備等)

- 平成10年度~15年度の支出は25,033百万円である。- 平成15年度のシステム更改以後、シンクライアントサーバの導入と安全性を高めるためのUPSの導入により、関連費用は2倍となっている。    また、OCIR端末関連費用は、約50%に減少している。

労働基準行政情報システム(全体)

- 平成15年度のシステム更改では、現行システムの主要な枠組みは継承しつつ、シンクライアント方式の採用等の機能強化を図っている。- この結果、費用の総額ではシステム更改後5.7%の増加となっているが、平成14年度約3,000台の端末数が職員1人1台の端末配備として   平成16年度には約8,400台の配備となっており、1台当たりの費用という観点で考えると、システム更改により費用削減が実現できている。

システム構築に係る平成10年度から平成15年度の契約内容について、競争入札、随意契約並びにデータ通信サービスによる契約の3つの区分で調査を行った結果は、以下のとおり。

競争入札による契約: なし

データ通信サービスによる契約: 24,019百万円データ通信サービス以外の随意契約: 3,997百万円

契約プロセスに関する課題として、以下の点を挙げることができる。

次年度契約のための予算策定に当たっては、過年度実績を参照しつつ、見積精度の向上や保守料金、端末価格等の見直しを求める方策がとられている形跡はない。なお、データ通信サービスにおける利用料の支払いについては、いわゆるリース料のような形態で支払われているので、契約期間内での価格の見直しは難しいという見方もできる。

サービスに対する包括的契約であるデータ通信サービスに関しては、サービスレベルに対する価格の説明資料の提示を受けている形跡はない。

IT関連技術の高度化に伴い、調達担当者の予定価格の決定スキル及び見積書に対する評価スキルの持続的な向上が求められている。

労働基準行政情報システムに関する平成10年度以降の費用支出の実績と費用構造は、以下のとおり。労働基準行政情報システム(センタ設備・回線設備)

- 平成10年度~16年度の支出は、 8,180百万円である。- 電子申請以外のサーバ費用に関しては、平成15年度のシステム更改における既設サーバの能力向上及び安全性・信頼性の向上により、  約20%費用が増加している。

- システム統制席サーバの費用は、変化がない。

- システム統制席端末の費用は、平成15年度のシステム更改以後、約30%費用が減少している。労働基準行政情報システム(地方局・署端末設備等)

- 平成10年度~15年度の支出は25,033百万円である。- 平成15年度のシステム更改以後、シンクライアントサーバの導入と安全性を高めるためのUPSの導入により、関連費用は2倍となっている。    また、OCIR端末関連費用は、約50%に減少している。

労働基準行政情報システム(全体)

- 平成15年度のシステム更改では、現行システムの主要な枠組みは継承しつつ、シンクライアント方式の採用等の機能強化を図っている。- この結果、費用の総額ではシステム更改後5.7%の増加となっているが、平成14年度約3,000台の端末数が職員1人1台の端末配備として   平成16年度には約8,400台の配備となっており、1台当たりの費用という観点で考えると、システム更改により費用削減が実現できている。

システム構築に係る平成10年度から平成15年度の契約内容について、競争入札、随意契約並びにデータ通信サービスによる契約の3つの区分で調査を行った結果は、以下のとおり。

競争入札による契約: なし

データ通信サービスによる契約: 24,019百万円データ通信サービス以外の随意契約: 3,997百万円

契約プロセスに関する課題として、以下の点を挙げることができる。

次年度契約のための予算策定に当たっては、過年度実績を参照しつつ、見積精度の向上や保守料金、端末価格等の見直しを求める方策がとられている形跡はない。なお、データ通信サービスにおける利用料の支払いについては、いわゆるリース料のような形態で支払われているので、契約期間内での価格の見直しは難しいという見方もできる。

サービスに対する包括的契約であるデータ通信サービスに関しては、サービスレベルに対する価格の説明資料の提示を受けている形跡はない。

IT関連技術の高度化に伴い、調達担当者の予定価格の決定スキル及び見積書に対する評価スキルの持続的な向上が求められている。

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要旨-17 要旨

■7 費用算定方法等の妥当性の分析(要旨) システムの費用対効果の妥当性(5章)

情報システムは個々にその機能が異なり、また、情報システム投資に対する戦略的、経済的背景もシステムごとに異なるため、単純にその費用の妥当

性を判断することはできない。特に、労働基準行政情報システムは、情報系のシステムであり、今回比較の対象となったシステムとは、機能面でも大きく異

なっている。このため、保守運用費と新規投資額の比較を行った際に、他システムと大きく異なった結果が得られているが、その妥当性を否と判断するため

に十分な根拠資料を収集することはできなかった。

国内民間類似システムとの比較

社団法人日本情報システム・ユーザー協会が平成15年9月~10月に実施した「ユーザ企業IT動向調査」結果を用いて、「保守運用費用」と「新規投資費用」の比率との比較分析を行った。

労働基準行政情報システムについて、平成10年度から平成15年度までの保守運用と新規投資のそれぞれの投資割合を算出すると、保守運用費が85.7%、新規投資が14.3%となり、民間において保守運用費の割合が大きい商社・流通・卸売り(それぞれ73.9%と26.1%)と比較しても、保守運用費の占める割合が高い。

情報システムは個々にその機能が異なり、また、情報システム投資に対する戦略的、経済的背景もシステムごとに異なるため、単純にその費用の妥当

性を判断することはできない。特に、労働基準行政情報システムは、情報系のシステムであり、今回比較の対象となったシステムとは、機能面でも大きく異

なっている。このため、保守運用費と新規投資額の比較を行った際に、他システムと大きく異なった結果が得られているが、その妥当性を否と判断するため

に十分な根拠資料を収集することはできなかった。

国内民間類似システムとの比較

社団法人日本情報システム・ユーザー協会が平成15年9月~10月に実施した「ユーザ企業IT動向調査」結果を用いて、「保守運用費用」と「新規投資費用」の比率との比較分析を行った。

労働基準行政情報システムについて、平成10年度から平成15年度までの保守運用と新規投資のそれぞれの投資割合を算出すると、保守運用費が85.7%、新規投資が14.3%となり、民間において保守運用費の割合が大きい商社・流通・卸売り(それぞれ73.9%と26.1%)と比較しても、保守運用費の占める割合が高い。

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要旨-18 要旨

■7 費用算定方法等の妥当性の分析(要旨) システムの費用対効果の妥当性(5章)

韓国政府労働部「新雇用保険システム」との比較

日本の労災保険制度に相当するものとして、韓国には産業災害補償保険制度が存在するが、産業災害保障保険を対象としたシステムについては、情報が得られなかったため、新雇用保険システムとの事例比較を行う。ただし、労働基準行政システムとはしくみが違うので、直接比較はできない点に留意する必要がある。

新雇用保険システムは、雇用保険業務の情報化を目的としたものであり、機能的には、労働保険適用徴収システムと雇用保険トータル・システムをあわせたものを有する。

新雇用保険システムは、開発費を10年で償還すると考えたときのトータルコストは、約1,350億ウォン(約135億円;ウォンの換算レート1ウォン=0.1円)となり、運用経費と開発経費の構成比は、59.3%対40.7%となる。一方、労働基準行政システムの運用経費と開発経費の比率は、 85.7%対14.3%である。このように、大きな差が出る要因として、2つのシステム間で、ハードウェア費用の扱いの違いを挙げることができる。すなわち、新雇用保険システムではシステム構築で必要となるハードウェア費用を一時金として開発経費に含めているのに対し、労働基準行政システムでは、ハードウェア費用を、一時金とはせずにハードウェア利用料として、利用期間にわたって支払う運用経費としてとらえている。

韓国政府労働部「新雇用保険システム」との比較

日本の労災保険制度に相当するものとして、韓国には産業災害補償保険制度が存在するが、産業災害保障保険を対象としたシステムについては、情報が得られなかったため、新雇用保険システムとの事例比較を行う。ただし、労働基準行政システムとはしくみが違うので、直接比較はできない点に留意する必要がある。

新雇用保険システムは、雇用保険業務の情報化を目的としたものであり、機能的には、労働保険適用徴収システムと雇用保険トータル・システムをあわせたものを有する。

新雇用保険システムは、開発費を10年で償還すると考えたときのトータルコストは、約1,350億ウォン(約135億円;ウォンの換算レート1ウォン=0.1円)となり、運用経費と開発経費の構成比は、59.3%対40.7%となる。一方、労働基準行政システムの運用経費と開発経費の比率は、 85.7%対14.3%である。このように、大きな差が出る要因として、2つのシステム間で、ハードウェア費用の扱いの違いを挙げることができる。すなわち、新雇用保険システムではシステム構築で必要となるハードウェア費用を一時金として開発経費に含めているのに対し、労働基準行政システムでは、ハードウェア費用を、一時金とはせずにハードウェア利用料として、利用期間にわたって支払う運用経費としてとらえている。

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要旨-19 要旨

■7 費用算定方法等の妥当性の分析(要旨) 競争入札の導入、データ通信サービスの利用解消に向けた検討①(5章)

一般競争入札等に移行する場合の考え方は、次のようにまとめることができる。

「データ通信サービス契約」とは、情報システムの設計、開発、運用、保守等を委託するのではなく、ベンダ側の費用で設計、開発、運用、保守を行い、その費用をいわゆるリース料のような形態で、利用料として徴収する仕組みである。

データ通信サービスも、随意契約の一つの形態であり、データ通信サービス以外の方式に移行すること自身に刷新の意味があるのではなく、調達のための要件の明確化、調達前の事前調査と比較検討、調達に応じる意思を持つ企業からの提案の比較検討といった諸作業を、調達側が主体的に実行できる体制を構築することにあると言える。

今後の方向性としては、調達する側の体制の構築や、人材の確保を早急に構築することが必要であり、そのうえで一般競争入札による調達価格の低減が実現できるものと考える。

データ通信サービス以外の方式に移行する際の検討方針

現行のデータ通信サービスによるシステム調達の特徴は、設計から運用にいたるすべてのフェーズを、一業者に対して随意契約による一括請負契約で委託している点である。

したがって、データ通信サービス以外の方式への移行とは、契約方式として、以下の2点を考慮することになる。

- 競争入札方式による業者選定

- 一括ではなく、いくつかの調達単位への分割

データ通信サービス以外の方式に移行する際の課題

既存ソフトウェアの著作権に関する課題

- データ通信サービスに基づいて開発されたソフトウェアに係るすべての著作権は、開発会社が保有することになっており、次期更改時のシステム調達仕様の作成及び効率的なシステム構築作業の推進のためには、既存ソフトウェアに関して開発会社からその知的所有権自身、あるいは利用許諾権を取得する必要がある。さらに、将来的には、すべてのソフトウェアの著作権について調達側が保有、あるいは共有する必要がある。

システム調達体制の整備に関する課題

- データ通信サービス以外による方式でシステム調達を行う場合、調達作業等を実施するために技術的なスキルが求められることになる。

- そのためには、現状の体制に対して、システム調達に関する専門的な内部人材の配置及び外部リソースの積極的な活用を図る必要がある。

一般競争入札等に移行する場合の考え方は、次のようにまとめることができる。

「データ通信サービス契約」とは、情報システムの設計、開発、運用、保守等を委託するのではなく、ベンダ側の費用で設計、開発、運用、保守を行い、その費用をいわゆるリース料のような形態で、利用料として徴収する仕組みである。

データ通信サービスも、随意契約の一つの形態であり、データ通信サービス以外の方式に移行すること自身に刷新の意味があるのではなく、調達のための要件の明確化、調達前の事前調査と比較検討、調達に応じる意思を持つ企業からの提案の比較検討といった諸作業を、調達側が主体的に実行できる体制を構築することにあると言える。

今後の方向性としては、調達する側の体制の構築や、人材の確保を早急に構築することが必要であり、そのうえで一般競争入札による調達価格の低減が実現できるものと考える。

データ通信サービス以外の方式に移行する際の検討方針

現行のデータ通信サービスによるシステム調達の特徴は、設計から運用にいたるすべてのフェーズを、一業者に対して随意契約による一括請負契約で委託している点である。

したがって、データ通信サービス以外の方式への移行とは、契約方式として、以下の2点を考慮することになる。

- 競争入札方式による業者選定

- 一括ではなく、いくつかの調達単位への分割

データ通信サービス以外の方式に移行する際の課題

既存ソフトウェアの著作権に関する課題

- データ通信サービスに基づいて開発されたソフトウェアに係るすべての著作権は、開発会社が保有することになっており、次期更改時のシステム調達仕様の作成及び効率的なシステム構築作業の推進のためには、既存ソフトウェアに関して開発会社からその知的所有権自身、あるいは利用許諾権を取得する必要がある。さらに、将来的には、すべてのソフトウェアの著作権について調達側が保有、あるいは共有する必要がある。

システム調達体制の整備に関する課題

- データ通信サービス以外による方式でシステム調達を行う場合、調達作業等を実施するために技術的なスキルが求められることになる。

- そのためには、現状の体制に対して、システム調達に関する専門的な内部人材の配置及び外部リソースの積極的な活用を図る必要がある。

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要旨-20 要旨

■7 費用算定方法等の妥当性の分析(要旨) 競争入札の導入、データ通信サービスの利用解消に向けた検討②(5章)

システム調達体制を整備するに当たり、以下の体制を構築することを推奨する。

基準局CIO補佐官- 基準局内部の技術者として、システム構築担当業者に対する、技術面でのカウンタパートナーとして、基準局内のシステムに関して、機能面、構成面並びにコスト面での把握を行う。

調達支援業者

- 基準局CIO補佐官の下で、調達システムに関する提案依頼書(RFP)の作成を行うとともに、開発業者の選定に関する支援作業を実施する。監理業者

- 各調達方式の場合において、基準局CIO補佐官の下で、設計/開発業者の実施内容が、当初の仕様書どおりであるかどうかの監理作業を実施する。

システム監査業者

- 構築されたシステムに対して安全性、信頼性、効率性等の観点から総合的な評価を行い、その結果を基準局CIO補佐官に対して勧告する。

システム調達体制を整備するに当たり、以下の体制を構築することを推奨する。

基準局CIO補佐官- 基準局内部の技術者として、システム構築担当業者に対する、技術面でのカウンタパートナーとして、基準局内のシステムに関して、機能面、構成面並びにコスト面での把握を行う。

調達支援業者

- 基準局CIO補佐官の下で、調達システムに関する提案依頼書(RFP)の作成を行うとともに、開発業者の選定に関する支援作業を実施する。監理業者

- 各調達方式の場合において、基準局CIO補佐官の下で、設計/開発業者の実施内容が、当初の仕様書どおりであるかどうかの監理作業を実施する。

システム監査業者

- 構築されたシステムに対して安全性、信頼性、効率性等の観点から総合的な評価を行い、その結果を基準局CIO補佐官に対して勧告する。

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要旨-21 要旨

■7 費用算定方法等の妥当性の分析(要旨) 競争入札の導入、データ通信サービスの利用解消に向けた検討③(5章)

データ通信サービス以外の方式に移行する際の調達方式として、以下の3つの方式が考えられる。システムインテグレータ方式(SI方式)A案- 発注範囲: ハードウェア/ソフトウェアの一括調達、ネットワークの調達

- フェーズ区分: 設計/開発フェーズ、運用フェーズ、改修フェーズ

- 調達側から見た契約業者: SI業者(1社)、運用業者、ネットワーク業者SI方式B案- 発注範囲:ハードウェア/ソフトウェアのサブシステム単位での分割調達、ネットワークの調達

- フェーズ区分:設計/開発フェーズ、運用フェーズ、改修フェーズ

- 調達側から見た契約業者: SI業者(複数)、運用業者、ネットワーク業者個別契約方式

- 発注範囲:サブシステム単位でのハードウェア調達、サブシステム単位でのソフトウェア調達、ネットワークの調達

- フェーズ区分:設計フェーズ、開発フェーズ、運用フェーズ、改修フェーズ

- 調達側から見た契約業者: 設計業者(複数)、開発業者(複数)、ハードウェア業者(複数)、運用業者、ネットワーク業者

上記3方式のいずれを選択するかは、調達プロセスの透明性を高めることと、発注範囲あるいフェーズ区分の過剰な調整作業を抑えることの、いずれを重視するかの判断となる。

SI方式A案は、SI業者がシステム構築に係るすべての業者間の調整作業を実施するため、調達側にかかる調整作業は少なくなる反面、開発作業やハードウェア調達に関する業者選定の透明性は下がる。

一方、個別調達方式の場合、業者選定に関する透明性は高まるが、業者間の調整作業を調達側で実施する必要があり、調達側にかかる調整作業が多くなることになる。

内部体制の強化を図りながら、かつ外部専門業者の協力の下、少なくとも、システムの調達とネットワークの調達を分離することから始め、段階的に調達範囲を分割していくことも考えられる。

データ通信サービス以外の方式に移行する際の調達方式として、以下の3つの方式が考えられる。システムインテグレータ方式(SI方式)A案- 発注範囲: ハードウェア/ソフトウェアの一括調達、ネットワークの調達

- フェーズ区分: 設計/開発フェーズ、運用フェーズ、改修フェーズ

- 調達側から見た契約業者: SI業者(1社)、運用業者、ネットワーク業者SI方式B案- 発注範囲:ハードウェア/ソフトウェアのサブシステム単位での分割調達、ネットワークの調達

- フェーズ区分:設計/開発フェーズ、運用フェーズ、改修フェーズ

- 調達側から見た契約業者: SI業者(複数)、運用業者、ネットワーク業者個別契約方式

- 発注範囲:サブシステム単位でのハードウェア調達、サブシステム単位でのソフトウェア調達、ネットワークの調達

- フェーズ区分:設計フェーズ、開発フェーズ、運用フェーズ、改修フェーズ

- 調達側から見た契約業者: 設計業者(複数)、開発業者(複数)、ハードウェア業者(複数)、運用業者、ネットワーク業者

上記3方式のいずれを選択するかは、調達プロセスの透明性を高めることと、発注範囲あるいフェーズ区分の過剰な調整作業を抑えることの、いずれを重視するかの判断となる。

SI方式A案は、SI業者がシステム構築に係るすべての業者間の調整作業を実施するため、調達側にかかる調整作業は少なくなる反面、開発作業やハードウェア調達に関する業者選定の透明性は下がる。

一方、個別調達方式の場合、業者選定に関する透明性は高まるが、業者間の調整作業を調達側で実施する必要があり、調達側にかかる調整作業が多くなることになる。

内部体制の強化を図りながら、かつ外部専門業者の協力の下、少なくとも、システムの調達とネットワークの調達を分離することから始め、段階的に調達範囲を分割していくことも考えられる。

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要旨-22 要旨

■8 新システムの提案(要旨) 情報技術動向調査(6章)

説明書通達等

個人IDパスワード

処理プログラム

クライアントサーバ方式

担当者

説明書通達等

個人IDパスワード

パッケージWeb

サーバ方式

担当者

eラーニング

(自己研修)

eラーニング

集合研修会

方式移行 統計処理のパッケージ化

現状

将来

脆弱性対策 ① ②③④

【①クライアント・サーバ方式からWebサーバ方式への移行に係わる技術動向】

業務処理プログラムの利用形態を従来のクライアント・サーバ方式とターミナル

サーバ方式を組み合わせた方式から、サーバ方式の最適化をするには、クライ

アントに配置されているプログラムをサーバに移動することで可能になる。

②統計情報処理への統計業務パッケージ製品の適用可能性】

専用業務アプリケーションで行っている統計業務を、一般に利用されている汎

用業務アプリケーションを適用して置き換えることによって専用業務アプリケー

ションには無かった機能を含めた形で利便性や操作性の向上を図ることが可

能になる。

【 ③個人別IDの脆弱性を補うための技術動向】

公共性の高いシステムにおいては、継続的な情報セキュリティ確保するため

に、システム利用者の適切な本人確認が必要である。個人別IDの脆弱性を補

うためには「パスワード認証」や「本人所持物確認」及び「バイオメトリクス認証」

等の要素技術を組み合わせた方式を、簡便な業務運用に配慮して検討するこ

とが必要である。

【 ④業務知識や技能の自己研修のためのeラーニング技術動向】

eラーニングは、各職員が業務を進めるうえで必要となる知識や技能を身につける事をコンピュータを利用して支援する事ができる教育システ

ムである。集合研修などをネットワークによる教材の配信や各自の理

解度に応じて個別に学習できるようにするには、汎用ツールである学

習管理システムを利用することで可能になる。

システム刷新可能性検討の足掛かりとして、現行システムの課題となる以下の項目について情報システムの一般的な動向を調査した。システム刷新可能性検討の足掛かりとして、現行システムの課題となる以下の項目について情報システムの一般的な動向を調査した。

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要旨-23 要旨

■8 新システムの提案(要旨) 課題の整理と刷新の方向性(6章)

課題の課題の整理整理

これまで分析した課題及び技術動向の結果を踏まえた上で課題を整理し、刷新の方向性について検討した結果、以下のようになった。これまで分析した課題及び技術動向の結果を踏まえた上で課題を整理し、刷新の方向性について検討した結果、以下のようになった。

機能面の分析

性能面の分析

保守性・運用管理面の分析

分析の視点 改善すべき課題

技術面の分析

柔軟性・拡張面の分析

契約面の分析

安全面・信頼面

の分析

事業場データベースの機能見直し

統計処理の改善

情報の共有化

モバイル端末の活用による業務効率化

システム機能の拡充

契約方式の見直し

分散している共通業務の集中化

サーバ配置、ネットワーク構成によるレスポンス低下

局・署サーバ構成の最適化

個人別ID管理の標準技術採用検討

運用管理情報の日常的な採取

職員へのセキュリティ教育の継続

LAN環境の信頼性向上

事業場データベース機能の拡充

業務の集中による効率化

情報共有

競争入札への移行

統計処理の操作性改善

刷新の方向性

その他他システム連携強化

サーバ分散処理における保守・運用コストの増大

モバイル端末の導入

システム機能の拡充

局・署サーバの最適配置

個人別ID管理技術の導入

セキュリティの強化

光無線LANの廃止

他システム連携の強化

端末の汎用化

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要旨-24 要旨

■8 新システムの提案(要旨) 刷新の方向性(6章)

刷新の方向性と具体的な施策刷新の方向性と具体的な施策

局・署サーバ装置の集中管理

都道府県労働局、労働基準監督署に分散設置しているサーバについて、負荷分散及び機能統合を行い、センタで集中管理することにより、サーバ利用の効率化、運用費用の削減を図ることが可能である。

上記に伴い、ネットワークを増強する必要がある。現在の専用線からVPN機能付きルータと光ファイバー高速インターネットサービスの組み合わせにより回線費用削減を図ることが可能である。

ネットワーク入替えと増強

シンクライアント端末について、特注品から汎用的なシンクライアント端末に移行することにより、コストの削減を図ることが可能である。

シンクライアント端末の汎用化

局・署に配置されるOCIR装置について、一般的な汎用PCとスキャナ装置、読み取りソフトウェアの組み合わせで代替することにより、コストの削減を図ることが可能である。

OCIR装置の汎用製品への代替

赤外線LANを有線LANへ変更することにより、回線切断による端末停止を無くし、安定性を上げる。また、運用コストの削減を図ることが可能である。

光無線LANから有線LANへの変更

刷新の施策刷新の方向性 刷新の具体的な内容

OCIR入力業務の集中化

大規模署におけるOCIR帳票の入力処理等の大量定型処理について、センタへの一括送付、一括OCIR登録処理等により局署の負荷を削減するとともに、システム構成の調整を行うことにより、業務の効率化を図り、コスト削減を図ることが可能である。

ただし、現行業務処理プロセスを変更する必要があるため、最適化計画で十分検討すべきである。

本項目については、システム刷新の目的である運用コストの削減による効果が定量的に評価できなかったため、ここまでの分析に留めておく。

しかしながら、システム刷新において重要な項目であるため、最適化計画及び刷新におけるシステム設計段階において改めて、対応可否について精査するべきである。

事業場データベース機能の拡充

業務の集中による効率化

情報共有

競争入札への移行

統計処理の操作性改善

モバイル端末の導入

システム機能の拡充

局・署サーバの最適配置

個人別ID管理技術の導入

セキュリティの強化

光無線LANの廃止

他システム連携の強化

端末の汎用化

前ページの刷新の方向性を具体的に実現する方策として、刷新の施策を検討し、整理した結果は、以下のとおりとなる。前ページの刷新の方向性を具体的に実現する方策として、刷新の施策を検討し、整理した結果は、以下のとおりとなる。

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要旨-25 要旨

■8 新システムの提案(要旨) 新システムの設定(6章)

刷新の施策について、新システムの実現方式を以下のとおり設定した。刷新の施策について、新システムの実現方式を以下のとおり設定した。

KSKS

MUMUTCSTCS

HT2HT2OCIROCIR

センタサーバ群

センタサーバ群

MUMU

LLLL

TCSTCS

HT2HT2OCIROCIR 汎用OCIR

汎用OCIR

汎用シンクライアント

汎用シンクライアント

汎用OCIR

汎用OCIR

センタサーバ群

センタサーバ群

TCSTCS KSKS

MUMU

センタ

都道府県労働局

労働基準監督署

現行システム

センタサーバ群

センタサーバ群

TCSTCS

KSKS

MUMU

汎用OCIR

汎用OCIR

LLLL

LLLL

汎用シンクライアント

汎用シンクライアント

汎用シンクライアント

汎用シンクライアント汎用

シンクライアント

汎用シンクライアント

汎用化

汎用化

有線LANへ有線LANへ

有線LANへネットワーク増強

ネットワーク増強

有線LANへ

TCSTCS

KSKS

MUMU

LLLL

バックアップセンタ(新設)への設置

専用線

センタ集中

データレプリケーション

TCSTCS MUMU

新システムの実現方式新システムの実現方式

業務見直しを伴わない 業務プロセスの変更を含む

端末系の刷新

案1 案3サーバ系も含めた刷新

案2

汎用OCIR

汎用OCIR

汎用OCIR

汎用OCIR

半数をセンタへ集中、残りの半数をバックアップセンタに集中

センタ集中

サーバの設置方法は

案2と同様

有線LANへ

有線LANへネットワーク増強

ネットワーク増強

汎用シンクライアント

汎用シンクライアント

汎用シンクライアント

汎用シンクライアント

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要旨-26 要旨

■8 新システムの提案(要旨) 新システムの費用削減効果(6章)

費用費用削減削減効果効果

案1~案3について、それぞれ現行システムとの比較を行い、費用削減効果を試算した結果、以下のとおりとなった。案1~案3について、それぞれ現行システムとの比較を行い、費用削減効果を試算した結果、以下のとおりとなった。

年間運用費用削減効果(案1) 年度別運用費用比較(案1)

案1の費用削減効果

年間の運用費用として、10~15億円(現行運用費用の25~30%程度)の削減が可能である。

ライフサイクル全体を5年とすると、初期投入費用を考慮して40~50億円程度の削減となる。

システム初期投入費用を考慮しても、運用開始後、1~2年程度での回収が可能となる。

年間運用費用削減効果(案2) 年度別運用費用比較(案2)

案2の費用削減効果

年間の運用費用として、25~30%(10~15億円)の削減効果となる。

ライフサイクル全体を5年とすると、初期投入費用を考慮して50~60億円程度の削減が見込める。

システム初期投入費用を考慮しても、運用開始後、1~2年程度での回収が可能となる。

なお、ネットワークやバックアップセンタについては、労働基準局内の他システム(労災行政情報管理システム、労働保険適用徴収システム等)と共用化を図ることにより、費用削減効果をさらに高めることが可能である。

0

5

10

15

20

25

30

35

40

45

50

億円

現行システム 案1

システム監査業者費用(2年に1度)

プロジェクト監理業者費用

基準局CIO補佐官費用

アプリケーション保守費用

運用サポート費用

ネットワーク費用

ソフトウェア

LAN関連設備

プリンタ

端末(HT2)

端末(OCIR)

局署サーバ

センタ設備

0

50

100

150

200

250

300

初期コスト 1年目 2年目 3年目 4年目 5年目

現行システム

案1

0

50

100

150

200

250

300

初期コスト 1年目 2年目 3年目 4年目 5年目

現行システム

案2

0

5

10

15

20

25

30

35

40

45

50

億円

現行システム 案2

バックアップセンタ費用

システム監査業者費用(2年に1度)

プロジェクト監理業者費用

基準局CIO補佐官費用

アプリケーション保守費用

運用サポート費用

ネットワーク費用

ソフトウェア

LAN関連設備

プリンタ

端末(HT2)

端末(OCIR)

局署サーバ

センタ設備

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要旨-27 要旨

■8 新システムの提案(要旨) 新システムの費用削減効果(続き)、刷新可能性の総合判断(6章)

費用費用削減削減効果(続き)効果(続き)

案3の費用削減効果

年間の運用費用全体を見ると、案2とほぼ同額となり、25~30%(10~15億円)の削減効果となる。

ライフサイクル全体を5年とすると、初期投入費用を考慮して50~60億円程度の削減が見込める。

システム初期投入費用を考慮しても、運用開始後、1~2年程度での回収が可能となる。

案3は、案2に比べて、わずかながら費用削減効果が少なくなっているが、これは、開発にかかる費用が案2に比べて増額されているためであり、次のライフサイクルでは、開発費用が削減されるため、案2よりも、さらに、年間運用費用で、約0.5億円から1億円の削減効果が見込める。

なお、ネットワークやバックアップセンタについては、労働基準局内の他システム(労災行政情報管理システム、労働保険適用徴収システム等)と共用化を図ることにより、費用削減効果をさらに高めることが可能である。

年間運用費用削減効果(案3) 年度別運用費用比較(案3)

刷新可能性の総合判断

労働基準行政情報システムを新システムに刷新した場合、現行システムと比較して新たな機能的な制限等が発生するものではなく、むしろ、現状の業務面における課題やシステム構成上の問題点を解決し、更にコスト的にも大幅な改善を図ることが可能なものとなっている。

実施に当たっての検討課題はあるが、これらを差し引いても本システムの刷新は十分に可能であると考える。

刷新可能性の総合判断

労働基準行政情報システムを新システムに刷新した場合、現行システムと比較して新たな機能的な制限等が発生するものではなく、むしろ、現状の業務面における課題やシステム構成上の問題点を解決し、更にコスト的にも大幅な改善を図ることが可能なものとなっている。

実施に当たっての検討課題はあるが、これらを差し引いても本システムの刷新は十分に可能であると考える。

刷新可能性の総合判断刷新可能性の総合判断

現行システムの費用は、データ通信サービスの平成16年度費用の見込みを試算したものであるが、機器等費用にソフトウェア費用、運用サポート費用等が含まれているため、年間費用内訳に関する新システム費用との単純な比較はできない。

0

5

10

15

20

25

30

35

40

45

50

億円

現行システム 案3

バックアップセンタ費用

システム監査業者費用(2年に1度)

プロジェクト監理業者費用

基準局CIO補佐官費用

アプリケーション保守費用

運用サポート費用

ネットワーク費用

ソフトウェア

LAN関連設備

プリンタ

端末(HT2)

端末(OCIR)

局署サーバ

センタ設備

0

50

100

150

200

250

300

初期コスト 1年目 2年目 3年目 4年目 5年目

億円

現行システム

案3