4-4 緩衝材を設置しない処分施設における変質挙動 …...4 2.1.3.2 拡散係数...
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4-4 緩衝材を設置しない処分施設における変質挙動の解析結果(4.4.2.2(2))
1. はじめに
第 2次 TRUレポートの4.4.2.2(2)において緩衝材を設置しない処分施設における変質挙動の解
析検討を実施し,化学環境の維持期間の評価を行っている。ここでは,解析検討の詳細な解析モ
デルとともにその解析結果を示し,第 2 次 TRU レポートにまとめた結果の根拠を示す。
2. 緩衝材を設置しない施設における長期的なバリア性能の変化に対する想定
処分坑道では鉄筋コンクリートの使用が想定される構造躯体,鉄筋を含まない充填モルタル,
また廃棄体パッケージを含む廃棄体定置領域があり,部位毎にセメントの使用量が異なる。また,
含まれる廃棄体の種類によって化学環境が異なることとなる。しかし,ここではこれらの違いに
ついては考慮せず,単純化することの不確実性を認識しつつ領域全体をモルタルの均一な材質と
してモデル化した。
またセメント系材料の透水性に関しては,良好に施工されひび割れが生じていない箇所では透
水係数が低く良好な止水性を有する。しかし,セメント系材料においては,鉄筋の腐食,打ち継
ぎ目などへの応力の集中,地圧の作用などによってひび割れが生じ,物質移行特性が変化するこ
とが想定される。しかし,ひび割れの発生に関しては,その規模,時期の予測は困難である。よ
ってここでは処分施設内の透水性に関して砂並みの透水係数を設定し,ひび割れありのケースと
した。また,最大の化学環境維持期間を評価するために透水係数,拡散係数に経験式を適用し,
長期的に低透水性が維持されるケースについてもひび割れなしのケースとして検討を行った。
2.1 解析モデル
2.1.1 解析対象施設
セメント系材料のみからなる処分施設ではベントナイト混合土からなる緩衝材が設置されず,
人工バリアによる長期の低透水性が期待されていない。そのため,物質移行は移流が卓越するこ
とも考えられるため,処分坑道全体をモデル化して解析対象領域とした。ここでは廃棄体グルー
プ 3 の処分概念(φ12m)の坑道断面を等価な面積の正方形に置き換え,長さ 10m の 1 次元モデル
として解析領域とした。モデルの上流端,下流端において地下水濃度および水頭を固定して解析
を行った。図-1 にモデル化した解析領域図を示す。
図-1 解析体系
セメント系材料厚 10m
地下水濃度固定
地下水濃度固定地下水流動条件に従い水頭設定
セメント系材料厚 10m
地下水濃度固定地下水濃度固定
地下水濃度固定地下水流動条件に従い水頭設定地下水濃度固定地下水流動条件に従い水頭設定
2
2.1.2 セメント水和鉱物の設定
処分施設内は支保,構造躯体,廃棄体などの部位ごとにモルタルが使用される部位とコンクリ
ートが使用される部位があり,それぞれ異なる示方配合となると考えられるが,本検討において
はすべてのセメント系材料をモルタルとして取り扱うこととした。モデルモルタルの鉱物組成,
および想定する鉱物を表-1~表-2 に示す。また地下水組成は降水系地下水,海水系地下水の 2 種
類を設定した。表-3 に地下水組成を示す。
表-1 セメント鉱物組成 (mol/dm3-water)
モデルモルタル
水セメント比(W/C%) 55
C3AH6 1.132
C3FH6 0.416
Mg(OH)2 1.247
C6As3H32 0.211
C-S-H ゲル 16.426
Ca(OH)2 7.447
NaOH 0.195
KOH 0.305
間隙率(-) 0.19
表-2 バリア材において考慮する鉱物
バリア材 初期鉱物 二次鉱物
モルタル
Ca(OH)2(ポルトランダイト)
C-S-H ゲル
C3AH6(ハイドロガーネット)
C6As3H32(エトリンガイト)
MH(ブルーサイト)
C3ASH4
C4AH13
C4AH19
C2ASH8
C3AS3
カオリナイト
パイロフィライト
セピオライト
フリーデル氏塩
モノサルフェート
カルサイト
アナルサイム
ローモンタイト
カルセドニ
ハイドロタルサイト
3
表-3 解析に使用する地下水組成(核燃料サイクル開発機構,1999)
2.1.3 物質移行特性
2.1.3.1 透水係数
廃棄体グループ 3,4の処分施設ではベントナイト混合土による緩衝材が設置されないため,周
辺岩盤の透水性によっては処分施設中の物質移行は移流の影響を強く受けることになる。そのた
め,処分施設中の物質移行特性が処分施設の長期安定性に大きく影響すると考えられる。
廃棄体グループ 3,4 の処分施設では,セメント系材料にひび割れが生じる可能性を考慮して,
施設内部の止水機能は無いものと仮定することができる(ひび割れありケース)。このケースでは
処分施設全体に砂並みの大きな透水係数を設定した。
対して,処分施設を構成するモルタルが初期の低透水性を維持し,また鉱物の変質による間隙
率(ε)の変化に従って透水係数(kw)が変化するケースも設定した(ひび割れなしケース)。こ
こではセメントペースト硬化体(0.5≦ε≦0.8)を用いた通水試験によって算出された間隙率と
透水係数の関係式(三原ほか,2003)を低間隙率の領域(初期の間隙率 ε=0.19)まで拡張して
用いることとした。
ひび割れありケース:kw=4.0×10-6 m/s
ひび割れなしケース:kw=4.34×10-9×ε3×(1-ε)-2 m/s
4
2.1.3.2 拡散係数
廃棄体グループ 3,4の処分施設では緩衝材のような低透水性のバリア材を設置しないため人工
バリアの機能によって処分施設内の物質移動が拡散支配になるとは考えにくい。しかし,周辺母
岩の透水性によっては移流の影響が小さくなると考えられる。
ひび割れありケースでは処分施設内のモルタルが低拡散性を持たないものとした。対して,ひ
び割れなしケースではモルタルの低拡散性を考慮して設定した。ひび割れありケースでは実効拡
散係数(De)を自由水中の拡散係数に間隙率を乗じた値を設定し,ひび割れなしケースでは実験
で得られた値をフィッティングして求めた式(Mihara and Sasaki,2005)を設定することとした。
ひび割れなしケース:De=4.0×10-9×ε m2/s
ひび割れありケース:De=4.0×10-9×ε3.05 m2/s
なお,各ケースにおける透水係数および拡散係数の間隙率に対するパラメータの変化は図-2 の
ようになる。
図-2 物質移行パラメータの間隙率依存性
2.1.3.3 水理条件
本検討では処分施設内の物質移行特性はひび割れの出現の有無によって異なる水理特性を設定
している。ひび割れありケースでは,処分施設内の透水係数が大きいことから周辺岩盤からの集
水を考慮して設定した。ここでは第 2 次 TRU レポート 4.4.4 で実施した水理解析の結果から施設
内の流速を天然バリアの 2 倍と設定した。対して,ひび割れなしケースでは初期の間隙率では天
然バリアよりも低透水性を有することとなるため,処分施設自体に動水勾配(0.01)が作用する
こととした。表-4 に水理条件の設定をまとめた。
1.E-15
1.E-14
1.E-13
1.E-12
1.E-11
1.E-10
1.E-09
1.E-08
1.E-07
1.E-06
1.E-05
0 0.1 0.2 0.3 0.4 0.5 0.6
空隙率 [-]
透水係数 [m/s]
1.E-15
1.E-14
1.E-13
1.E-12
1.E-11
1.E-10
1.E-09
1.E-08
実効拡散
係数
[m
2/s]
透水係数_ひび割れあり
透水係数_ひび割れなし
拡散係数_ひび割れあり
拡散係数_ひび割れなし
間隙率 [-]
5
表-4 緩衝材を設置しない処分施設の変質解析における物質移行特性に関する設定
ケース名 ひび割れケース ひび割れなしケース
施設(モルタル)領
域の透水性
止水性を見込まず,砂程度の大きな透
水係数 4×10-6[m/s]を設定
(4.4.4.2(2)c 参照)
間隙率の関数として透水係数を
設定した経験式による比較的良
好な止水性を設定
施設(モルタル)領
域の実効拡散係数
自由水中の拡散係数に間隙率を乗じ
た値を設定
自由水中の拡散係数と間隙率の
関数で表される低拡散性を設定
天然バリアの透水
性の反映方法
周辺岩盤からの集水を考慮して施設
内流速を天然バリアの2倍として設定
動水勾配 0.01 を設定
2.2 解析ケース
解析ケースの設定においては,地下水水質の違い及びセメント系材料の透水性の設定の違いを
考慮した設定を行った。表-5 に解析ケースを示す。
表-5 解析ケース
地下水水質 透水性 解析
ケース 降水系地下水 海水系地下水 ひび割れあり ひび割れなし
Case-1 ● ●
Case-2 ● ●
Case-3 ● ●
Case-4 ● ●
2.3 解析結果
2.3.1 鉱物の変質
解析結果として液相濃度の分布と鉱物相の濃度分布を図-3~図-6 に示す。
周辺岩盤の透水係数を 2.0×10-10m/s,動水勾配 0.01 として水理条件を設定しているため地下
水流速は小さく,処分施設内の透水性の違いによらず,物質移行は拡散が支配的となった。拡散
係数の設定が異なるため,ひび割れなしのケースはひび割れありのケースと比較すると変質が進
展していない。
鉱物の変質としては,降水系地下水のケースでは周辺地下水の影響を受けて両端から徐々に変
質が進んでいる。ポルトランダイトの溶脱,ハイドロガーネットからゲーレナイトハイドレイト
などへの変質,変質末期の鉱物として設定したアナルサイム,ローモンタイトなどの生成などが
生じている。また,Mg を含有する鉱物としてセピオライトが境界付近にわずかに生成している。
海水系地下水のケースでは Cl 濃度が高いため,全体にフリーデル氏塩が生成した。時間の経過
に伴い,施設の両端から変質が進み,カルサイト,アナルサイム,カルセドニが生成している。
最終的にアナルサイムは処分施設全体に生成し,C-S-H ゲル,フリーデル氏塩と置き換わった。
Mg を含有する鉱物としてはセピオライトが境界から生成している。
6
降水系地下水:100 年 1,000 年
10,000 年 100,000 年
図-3 液相濃度,鉱物濃度の空間分布(Case-1 降水系地下水 ひび割れあり)
1.0E-05
1.0E-04
1.0E-03
1.0E-02
1.0E-01
1.0E+00
1.0E+01
0 1 2 3 4 5 6 7 8 9 10
Distance [m]
Con.
[m
ol/
L-w
ate
r]
8
9
10
11
12
13
14
pH
NaKCa
MgCSCl
Al
SipH
処分施設
1.E-03
1.E-02
1.E-01
1.E+00
1.E+01
1.E+02
0 1 2 3 4 5 6 7 8 9 10
Distance [m]
Conc.
[m
ol/
L-w
ate
r]
ポルトランダイト
C-S-Hゲル
C3AH6
C3ASH4
C2ASH8
C3AS3
カオリナイト
パイロフィライト
エトリンガイト
フリーデル氏塩
カルサイト
ブルーサイト
アナルサイム
ローモンタイト
カルセドニ
セピオライト
ハイドロタルサイト
処分施設
Con.[mol/dm3-water]
Con.[mol/dm3-water]
1.0E-05
1.0E-04
1.0E-03
1.0E-02
1.0E-01
1.0E+00
1.0E+01
0 1 2 3 4 5 6 7 8 9 10
Distance [m]
Con.
[m
ol/
L-w
ate
r]
8
9
10
11
12
13
14
pH
NaKCa
MgCSCl
Al
SipH
処分施設
1.E-03
1.E-02
1.E-01
1.E+00
1.E+01
1.E+02
0 1 2 3 4 5 6 7 8 9 10
Distance [m]C
onc.
[m
ol/
L-w
ate
r]
ポルトランダイト
C-S-Hゲル
C3AH6
C3ASH4
C2ASH8
C3AS3
カオリナイト
パイロフィライト
エトリンガイト
フリーデル氏塩
カルサイト
ブルーサイト
アナルサイム
ローモンタイト
カルセドニ
セピオライト
ハイドロタルサイト
処分施設
Con.[mol/dm3-water]
Con.[mol/dm3-water]
1.0E-05
1.0E-04
1.0E-03
1.0E-02
1.0E-01
1.0E+00
1.0E+01
0 1 2 3 4 5 6 7 8 9 10
Distance [m]
Con.
[m
ol/
L-w
ate
r]
8
9
10
11
12
13
14
pH
NaKCa
MgCSCl
Al
SipH
処分施設
1.E-03
1.E-02
1.E-01
1.E+00
1.E+01
1.E+02
0 1 2 3 4 5 6 7 8 9 10
Distance [m]
Conc.
[m
ol/
L-w
ate
r]
ポルトランダイト
C-S-Hゲル
C3AH6
C3ASH4
C2ASH8
C3AS3
カオリナイト
パイロフィライト
エトリンガイト
フリーデル氏塩
カルサイト
ブルーサイト
アナルサイム
ローモンタイト
カルセドニ
セピオライト
ハイドロタルサイト
処分施設
Con.[mol/dm3-water]
Con.[mol/dm3-water]
1.0E-05
1.0E-04
1.0E-03
1.0E-02
1.0E-01
1.0E+00
1.0E+01
0 1 2 3 4 5 6 7 8 9 10
Distance [m]
Con.
[m
ol/
L-w
ate
r]
8
9
10
11
12
13
14
pH
NaKCa
MgCSCl
Al
SipH
処分施設
1.E-03
1.E-02
1.E-01
1.E+00
1.E+01
1.E+02
0 1 2 3 4 5 6 7 8 9 10
Distance [m]
Conc.
[m
ol/
L-w
ate
r]
ポルトランダイト
C-S-Hゲル
C3AH6
C3ASH4
C2ASH8
C3AS3
カオリナイト
パイロフィライト
エトリンガイト
フリーデル氏塩
カルサイト
ブルーサイト
アナルサイム
ローモンタイト
カルセドニ
セピオライト
ハイドロタルサイト
処分施設
Con.[mol/dm3-water]
Con.[mol/dm3-water]
7
海水系地下水:100 年 1,000 年
10,000 年 100,000 年
図-4 液相濃度,鉱物濃度の空間分布(Case-2 海水系地下水 ひび割れあり)
1.0E-05
1.0E-04
1.0E-03
1.0E-02
1.0E-01
1.0E+00
1.0E+01
0 1 2 3 4 5 6 7 8 9 10
Distance [m]
Con.
[m
ol/
L-w
ate
r]
8
9
10
11
12
13
14
pH
NaKCa
MgCSCl
Al
SipH
処分施設
1.E-03
1.E-02
1.E-01
1.E+00
1.E+01
1.E+02
0 1 2 3 4 5 6 7 8 9 10
Distance [m]
Conc.
[m
ol/
L-w
ate
r]
ポルトランダイト
C-S-Hゲル
C3AH6
C3ASH4
C2ASH8
C3AS3
カオリナイト
パイロフィライト
エトリンガイト
フリーデル氏塩
カルサイト
ブルーサイト
アナルサイム
ローモンタイト
カルセドニ
セピオライト
ハイドロタルサイト
処分施設
Con.[mol/dm3-water]
Con.[mol/dm3-water]
1.0E-05
1.0E-04
1.0E-03
1.0E-02
1.0E-01
1.0E+00
1.0E+01
0 1 2 3 4 5 6 7 8 9 10
Distance [m]
Con.
[m
ol/
L-w
ate
r]
8
9
10
11
12
13
14
pH
NaKCa
MgCSCl
Al
SipH
処分施設
1.E-03
1.E-02
1.E-01
1.E+00
1.E+01
1.E+02
0 1 2 3 4 5 6 7 8 9 10
Distance [m]C
onc.
[m
ol/
L-w
ate
r]
ポルトランダイト
C-S-Hゲル
C3AH6
C3ASH4
C2ASH8
C3AS3
カオリナイト
パイロフィライト
エトリンガイト
フリーデル氏塩
カルサイト
ブルーサイト
アナルサイム
ローモンタイト
カルセドニ
セピオライト
ハイドロタルサイト
処分施設
Con.[mol/dm3-water]
Con.[mol/dm3-water]
1.0E-05
1.0E-04
1.0E-03
1.0E-02
1.0E-01
1.0E+00
1.0E+01
0 1 2 3 4 5 6 7 8 9 10
Distance [m]
Con.
[m
ol/
L-w
ate
r]
8
9
10
11
12
13
14
pH
NaKCa
MgCSCl
Al
SipH
処分施設
1.E-03
1.E-02
1.E-01
1.E+00
1.E+01
1.E+02
0 1 2 3 4 5 6 7 8 9 10
Distance [m]
Conc.
[m
ol/
L-w
ate
r]
ポルトランダイト
C-S-Hゲル
C3AH6
C3ASH4
C2ASH8
C3AS3
カオリナイト
パイロフィライト
エトリンガイト
フリーデル氏塩
カルサイト
ブルーサイト
アナルサイム
ローモンタイト
カルセドニ
セピオライト
ハイドロタルサイト
処分施設
Con.[mol/dm3-water]
Con.[mol/dm3-water]
1.0E-05
1.0E-04
1.0E-03
1.0E-02
1.0E-01
1.0E+00
1.0E+01
0 1 2 3 4 5 6 7 8 9 10
Distance [m]
Con.
[m
ol/
L-w
ate
r]
8
9
10
11
12
13
14
pH
NaKCa
MgCSCl
Al
SipH
処分施設
1.E-03
1.E-02
1.E-01
1.E+00
1.E+01
1.E+02
0 1 2 3 4 5 6 7 8 9 10
Distance [m]
Conc.
[m
ol/
L-w
ate
r]
ポルトランダイト
C-S-Hゲル
C3AH6
C3ASH4
C2ASH8
C3AS3
カオリナイト
パイロフィライト
エトリンガイト
フリーデル氏塩
カルサイト
ブルーサイト
アナルサイム
ローモンタイト
カルセドニ
セピオライト
ハイドロタルサイト
処分施設
Con.[mol/dm3-water]
Con.[mol/dm3-water]
8
降水系地下水:100 年 1,000 年
10,000 年 100,000 年
図-5 液相濃度,鉱物濃度の空間分布(Case-3 降水系地下水 ひび割れなし)
1.0E-05
1.0E-04
1.0E-03
1.0E-02
1.0E-01
1.0E+00
1.0E+01
0 1 2 3 4 5 6 7 8 9 10
Distance [m]
Con.
[m
ol/
L-w
ate
r]
8
9
10
11
12
13
14
pH
NaKCa
MgCSCl
Al
SipH
処分施設
1.E-03
1.E-02
1.E-01
1.E+00
1.E+01
1.E+02
0 1 2 3 4 5 6 7 8 9 10
Distance [m]
Conc.
[m
ol/
L-w
ate
r]
ポルトランダイト
C-S-Hゲル
C3AH6
C3ASH4
C2ASH8
C3AS3
カオリナイト
パイロフィライト
エトリンガイト
フリーデル氏塩
カルサイト
ブルーサイト
アナルサイム
ローモンタイト
カルセドニ
セピオライト
ハイドロタルサイト
処分施設
Con.[mol/dm3-water]
Con.[mol/dm3-water]
1.0E-05
1.0E-04
1.0E-03
1.0E-02
1.0E-01
1.0E+00
1.0E+01
0 1 2 3 4 5 6 7 8 9 10
Distance [m]
Con.
[m
ol/
L-w
ate
r]
8
9
10
11
12
13
14
pH
NaKCa
MgCSCl
Al
SipH
処分施設
1.E-03
1.E-02
1.E-01
1.E+00
1.E+01
1.E+02
0 1 2 3 4 5 6 7 8 9 10
Distance [m]C
onc.
[m
ol/
L-w
ate
r]
ポルトランダイト
C-S-Hゲル
C3AH6
C3ASH4
C2ASH8
C3AS3
カオリナイト
パイロフィライト
エトリンガイト
フリーデル氏塩
カルサイト
ブルーサイト
アナルサイム
ローモンタイト
カルセドニ
セピオライト
ハイドロタルサイト
処分施設
Con.[mol/dm3-water]
Con.[mol/dm3-water]
1.0E-05
1.0E-04
1.0E-03
1.0E-02
1.0E-01
1.0E+00
1.0E+01
0 1 2 3 4 5 6 7 8 9 10
Distance [m]
Con.
[m
ol/
L-w
ate
r]
8
9
10
11
12
13
14
pH
NaKCa
MgCSCl
Al
SipH
処分施設
1.E-03
1.E-02
1.E-01
1.E+00
1.E+01
1.E+02
0 1 2 3 4 5 6 7 8 9 10
Distance [m]
Conc.
[m
ol/
L-w
ate
r]
ポルトランダイト
C-S-Hゲル
C3AH6
C3ASH4
C2ASH8
C3AS3
カオリナイト
パイロフィライト
エトリンガイト
フリーデル氏塩
カルサイト
ブルーサイト
アナルサイム
ローモンタイト
カルセドニ
セピオライト
ハイドロタルサイト
処分施設
Con.[mol/dm3-water]
Con.[mol/dm3-water]
1.0E-05
1.0E-04
1.0E-03
1.0E-02
1.0E-01
1.0E+00
1.0E+01
0 1 2 3 4 5 6 7 8 9 10
Distance [m]
Con.
[m
ol/
L-w
ate
r]
8
9
10
11
12
13
14
pH
NaKCa
MgCSCl
Al
SipH
処分施設
1.E-03
1.E-02
1.E-01
1.E+00
1.E+01
1.E+02
0 1 2 3 4 5 6 7 8 9 10
Distance [m]
Conc.
[m
ol/
L-w
ate
r]
ポルトランダイト
C-S-Hゲル
C3AH6
C3ASH4
C2ASH8
C3AS3
カオリナイト
パイロフィライト
エトリンガイト
フリーデル氏塩
カルサイト
ブルーサイト
アナルサイム
ローモンタイト
カルセドニ
セピオライト
ハイドロタルサイト
処分施設
Con.[mol/dm3-water]
Con.[mol/dm3-water]
9
海水系地下水:100 年 1,000 年
10,000 年 100,000 年
図-6 液相濃度,鉱物濃度の空間分布(Case-4 海水系地下水 ひび割れなし)
1.0E-05
1.0E-04
1.0E-03
1.0E-02
1.0E-01
1.0E+00
1.0E+01
0 1 2 3 4 5 6 7 8 9 10
Distance [m]
Con.
[m
ol/
L-w
ate
r]
8
9
10
11
12
13
14
pH
NaKCa
MgCSCl
Al
SipH
処分施設
1.E-03
1.E-02
1.E-01
1.E+00
1.E+01
1.E+02
0 1 2 3 4 5 6 7 8 9 10
Distance [m]
Conc.
[m
ol/
L-w
ate
r]
ポルトランダイト
C-S-Hゲル
C3AH6
C3ASH4
C2ASH8
C3AS3
カオリナイト
パイロフィライト
エトリンガイト
フリーデル氏塩
カルサイト
ブルーサイト
アナルサイム
ローモンタイト
カルセドニ
セピオライト
ハイドロタルサイト
処分施設
Con.[mol/dm3-water]
Con.[mol/dm3-water]
1.0E-05
1.0E-04
1.0E-03
1.0E-02
1.0E-01
1.0E+00
1.0E+01
0 1 2 3 4 5 6 7 8 9 10
Distance [m]
Con.
[m
ol/
L-w
ate
r]
8
9
10
11
12
13
14
pH
NaKCa
MgCSCl
Al
SipH
処分施設
1.E-03
1.E-02
1.E-01
1.E+00
1.E+01
1.E+02
0 1 2 3 4 5 6 7 8 9 10
Distance [m]
Conc.
[m
ol/
L-w
ate
r]
ポルトランダイト
C-S-Hゲル
C3AH6
C3ASH4
C2ASH8
C3AS3
カオリナイト
パイロフィライト
エトリンガイト
フリーデル氏塩
カルサイト
ブルーサイト
アナルサイム
ローモンタイト
カルセドニ
セピオライト
ハイドロタルサイト
処分施設
Con.[mol/dm3-water]
Con.[mol/dm3-water]
1.0E-05
1.0E-04
1.0E-03
1.0E-02
1.0E-01
1.0E+00
1.0E+01
0 1 2 3 4 5 6 7 8 9 10
Distance [m]
Con.
[m
ol/
L-w
ate
r]
8
9
10
11
12
13
14
pH
NaKCa
MgCSCl
Al
SipH
処分施設
1.E-03
1.E-02
1.E-01
1.E+00
1.E+01
1.E+02
0 1 2 3 4 5 6 7 8 9 10
Distance [m]
Conc.
[m
ol/
L-w
ate
r]
ポルトランダイト
C-S-Hゲル
C3AH6
C3ASH4
C2ASH8
C3AS3
カオリナイト
パイロフィライト
エトリンガイト
フリーデル氏塩
カルサイト
ブルーサイト
アナルサイム
ローモンタイト
カルセドニ
セピオライト
ハイドロタルサイト
処分施設
Con.[mol/dm3-water]
Con.[mol/dm3-water]
1.0E-05
1.0E-04
1.0E-03
1.0E-02
1.0E-01
1.0E+00
1.0E+01
0 1 2 3 4 5 6 7 8 9 10
Distance [m]
Con.
[m
ol/
L-w
ate
r]
8
9
10
11
12
13
14
pH
NaKCa
MgCSCl
Al
SipH
処分施設
1.E-03
1.E-02
1.E-01
1.E+00
1.E+01
1.E+02
0 1 2 3 4 5 6 7 8 9 10
Distance [m]
Conc.
[m
ol/
L-w
ate
r]
ポルトランダイト
C-S-Hゲル
C3AH6
C3ASH4
C2ASH8
C3AS3
カオリナイト
パイロフィライト
エトリンガイト
フリーデル氏塩
カルサイト
ブルーサイト
アナルサイム
ローモンタイト
カルセドニ
セピオライト
ハイドロタルサイト
処分施設
Con.[mol/dm3-water]
Con.[mol/dm3-water]
10
2.3.2 化学環境の維持期間
処分施設の化学環境はセメント系材料との化学反応に強く影響される。間隙水の化学的条件は、
セメントペースト構成鉱物の溶解過程の遷移に伴い Na,K に富む pH13 以上の RegionI から,ポル
トランダイト平衡にある pH12.5 の RegionII,C-S-H ゲルの溶解反応に影響され,pH が徐々に低
下する RegionIII へと時系列的に変化する。
ここでは化学環境の維持期間を評価するために pH の経時変化を示す。図-7 に解析結果の一例
としてCase-1の結果での処分施設内の位置の違いによる比較を示す。経過時間の初期段階でNa,
K が拡散によって周辺岩盤へ移行するため,図-7 に示すように処分施設全体で 700 年程度までに
RegionII へ移行した。RegionII の継続期間は処分施設内の位置による違いが大きく,坑道の支保
に相当する処分施設最外層ではポルトランダイトの溶解が進むため 1,000 年程度で RegionIII と
なった。ポルトランダイトが溶解する範囲は徐々に処分施設内へ拡大し,廃棄体定置領域中心部
においても数万年後に RegionIII となった。このように施設領域の pH は時間とともに低下してい
き,かつ廃棄体定置領域中心部よりも処分施設最外層から pH の変化が進展する。この傾向は全て
のケースで同様であった。
図-7 処分場上流側の各点における pH の経時変化(Case-1)
以上のように,化学環境の維持期間を評価する上で pH の経時変化は評価する点の違いによって
その期間は大きく異なることとなる。そのため,本検討においては廃棄体定置領域中心部におけ
る pH の変化と廃棄体定置領域の最外部(図-7 における 1.25m の点 「廃棄体定置領域最外部」と
する)における pH の変化をともに示し,化学環境維持期間設定に関する幅を示すこととした。
図-8 にひび割れありのケース(Case-1,2),図-9 にひび割れなしのケース(Case-3,4)での処
分施設内の pH の経時変化を示す。また,図-10,図-11 にそれぞれポルトランダイトの存在量の
経時変化を示す。
グラフに示すように物質移行に関する設定によって化学環境維持期間は大きく異なる結果とな
った。RegionII となるまでの期間はひび割れありとしたケースでは約 1,000 年,ひび割れなしと
したケースでは約 1~2万年となった。また,地下水組成の影響については海水系地下水の方が降
9.5
10.0
10.5
11.0
11.5
12.0
12.5
13.0
13.5
10 100 1000 10000 100000
経過時間 [y]
pH
処分施設最外層
1.25m
2.5m
廃棄体定置領域中心部
11
水系地下水よりも早く pH が低下する傾向となり,ひび割れありのケースでは RegionII 維持期間
は降水系地下水の場合の約半分となった。なお,海水系地下水のケースではフリーデル氏塩の生
成による pH の上昇が見られた。また処分施設内の評価点の観点では,RegionI の維持期間は評価
点の位置に係らず同じ結果となったが,RegionII の維持期間は評価点によって 10 倍程度の違い
となった。
図-8 ひび割れありケースの pH の経時変化(Case-1,Case-2)
図-9 ひび割れなしケースの pH の経時変化(Case-3,Case-4)
10.0
10.5
11.0
11.5
12.0
12.5
13.0
13.5
14.0
10 100 1000 10000 100000
経過時間 [y]
pH
降水系地下水_廃棄体定置領域中心部
海水系地下水_廃棄体定置領域最外部
海水系地下水_廃棄体定置領域中心部
降水系地下水_廃棄体定置領域最外部
10.0
10.5
11.0
11.5
12.0
12.5
13.0
13.5
14.0
10 100 1000 10000 100000
経過時間 [y]
pH
降水系地下水_廃棄体定置領域中心部
降水系地下水_廃棄体定置領域最外部
海水系地下水_廃棄体定置領域中心部
海水系地下水_廃棄体定置領域最外部
12
図-10 ひび割れありケースのポルトランダイト存在量の経時変化(Case-1,Case-2)
図-11 ひび割れなしケースのポルトランダイト存在量の経時変化(Case-3,Case-4)
表-6 化学環境維持期間
RegionII 維持期間 地下水組成と透水係数の組み
合わせ RegionI 維持期間
施設外部 施設中央
降水系地下水-ひび割れあり 約 1×103年 約 8×103年 約 7×104年
海水系地下水-ひび割れあり 約 1×103年 約 4×103年 約 4×104年
降水系地下水-ひび割れなし 約 1×104年 約 7×104年 1×105年以上
海水系地下水-ひび割れなし 約 2×104年*1 約 7×104年 1×105年以上
*1:海水系地下水ではフリーデル氏塩の生成に伴う pH の上昇がある。
1.E-03
1.E-02
1.E-01
1.E+00
10 100 1000 10000 100000
経過時間 [y]
鉱物
体積割
合 [-] 降水系地下水_廃棄体定置領域中心部
海水系地下水_廃棄体定置領域最外部
海水系地下水_廃棄体定置領域中心部
降水系地下水_廃棄体定置領域最外部
1.E-03
1.E-02
1.E-01
1.E+00
10 100 1000 10000 100000
経過時間 [y]
鉱物
体積割
合 [-] 降水系地下水_廃棄体定置領域中心部
海水系地下水_廃棄体定置領域最外部
海水系地下水_廃棄体定置領域中心部
降水系地下水_廃棄体定置領域最外部
13
3. 結論
検討の結果,ひび割れの有無によらず物質移行は拡散によるものが支配的となり,鉱物の変質
は処分施設の上流側,下流側の両方から変質する結果となった。化学環境の維持期間としては
RegionII となるまでの期間は処分施設の場所によらず一定であるが,RegionII の維持期間は評価
する地点による違いが大きく,またその地点におけるポルトランダイトの存在量と関連すること
が示された。計算結果に基づいて設定した各ケースの化学環境維持期間は表-6 のようになり,第
2 次 TRU レポートでは表-6 を示すことで化学環境維持期間の評価とした。
参考文献
核燃料サイクル開発機構(1999c):わが国における高レベル放射性廃棄物地層処分の技術的信頼
性-地層処分研究開発第 2 次とりまとめ-総論レポート,JNC-TN1400-99-020.
三原守弘,大澤勉,大井貴夫,藤田英樹,根岸久美,横関康裕,渡邉賢三(2003):TRU 廃棄物処
分における N.F.水理場の変遷に関する研究(6)-セメント系材料の変遷と水理・力学特性の
変化-,日本原子力学会,2003 年秋の大会予稿集(第Ⅲ分冊), p.580.
Mihara, M. and Sasaki, R. (2005): RAMDA;Radio-nuclides Migration Datasets(RAMDA) on cement,
bentonite and rock for TRU waste repository in Japan, JNC TN8400 2005-027.